子宮頸がん予防ワクチンとヘルスリテラシー

Similar documents
サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

マンスリー・ヘルシートピックス(2015年4月号)

僕が見た21世紀の 産婦人科医療

子宮頸がん死亡数 国立がん研究センターがん対策情報センターHPより

なお, 世間では HPV ワクチンのことを 子宮頸がんワクチン と呼んでいるが, ワクチンの性格上, 本稿では HPV ワクチン ( 正確には HPV 感染症予防ワクチン ) と表現する HPV 感染と子宮頸がんとの関係子宮頸がんの原因のひとつとして,HPV 感染による細胞の癌化が証明されている H

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

婦人科がん検診Q&A

<4D F736F F D20288E518D6C8E9197BF AA82F18C9F90668F64935F8EF390668AA98FA791CE8FDB8ED282CC90DD92E882C982C282A282C AD8F6F94C5817A2E646F6378>

Microsoft PowerPoint - 印刷用 DR児玉2015 K-NET Kodama.ppt [互換モード]

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

JFCI News Letter

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

危機管理論 リスクとクライシスのマネジメント

Microsoft Word - 婦人科がん特に子宮頸癌治療の最近の話題ver.4.docx

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

子宮頸部細胞診陰性症例における高度子宮頸部病変のリスクの層別化に関するHPV16/18型判定の有用性に関する研究 [全文の要約]

スライド 1

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

手術や薬品などを用いて 人工的に胎児とその付属物を母体外に排出することです 実施が認められるのは 1 妊娠の継続又は分娩が 身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れがあるもの 2 暴行もしくは脅迫によって妊娠の場合母体保護法により母体保護法指定医だけが施行できます 妊娠 22 週 0

がん登録実務について

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )


染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

Microsoft PowerPoint - 【参考資料4】安全性に関する論文Ver.6

鎌倉市子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調の変化に関する状況調査結果 実施期間 : 平成 25 年 10 月 3 日から 11 月 22 日着分まで 1 対象者 3,060 人 2 回収者 1,795 人 3 未回収 1,265 人 4 回収率 58.7% 回収率 未回収, 1,265 人, 41.3

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

日産婦専攻医プログラム (HPVワクチン) 提出版.pptx

日産婦誌61巻4号研修コーナー

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

~自分で守ろう、自分のからだ~

平成29年度沖縄県がん登録事業報告 背表紙印字

日本における子宮頸がん検診の時代的背景 1982 年老人保健法にて 20 年かけて子宮頸がんを半減させる 30 歳以上の女性を対象受診間隔は 1 年に 1 回費用は行政が全額負担 1998 年地方交付税による財源措置に変更費用の一部個人負担が必要となる 2004 年子宮頸がん検診の見直し受診対象年齢

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

<4D F736F F F696E74202D208DA196EC90E690B E63589F EA98EA191CC92B28DB882DC82C682DF E392E B315D81408DA196EC205B8CDD8AB B83685D>

1. 来院経路別件数 非紹介 30 他疾患経過 10 自主受診観察 紹介 20 他施設紹介 合計 患者数 割合 12.1% 15.7% 72.2% 100.0% 27.8% 72.2% 100.0% 来院経路別がん登録患者数 がん患者がどのような経路によって自施設を受診し

< E082AA82F1936F985E8F578C768C8B89CA816989FC92F994C5816A2E786C73>

Microsoft Word _ソリリス点滴静注300mg 同意説明文書 aHUS-ICF-1712.docx

Microsoft PowerPoint - 指導者全国会議Nagai( ).ppt

Transcription:

13MN004 寺嶋明子 1

2 子宮頸がんワクチンの推奨中止 2013.6.15 東京新聞朝刊

子宮頸がんワクチン推奨中止! 3 子宮頸がんの一次予防としての HPV ワクチンが 20 06 年に初めて米国で承認されることに遅れて 200 9 年 10 月に日本での使用が承認された 2010 年に国の助成が始まり 予防接種法改正で今年 4 月から定期接種になったばかり 定期接種化した後に 国が推奨を中止する異例の事態になったのは 副作用を訴える声がやまず 厚労省は 原因がきちんと検証 説明できない と判断した 小学 6 年 ~ 高校 1 年の女子が対象 安全性をめぐりこれまでにも懸念の声が出ていた

子宮頸がんワクチンの副反応 4 失神 ( 血管迷走神経性反射 ) が生じる場合がある 発生頻度は 2009 年 12 月から 2011 年 1 月末までの 67 万例の接種で 21 例 (10 万例あたり 3 1 例の発生 ) (2011 年 3 月厚生労働省資料 ) これまで推計 328 万人に接種され 1968 件の副作用が報告されている うち 357 件が呼吸困難 歩行障害 けいれんなどの重い副作用があり 接種した人の 50% 以上で注射した部位の痛みや発赤 腫れ 疲労感などが発生している

原因不明の痛みが続く 5 今回 問題になっている原因不明の痛みが出る複合性局所疼痛症候群は ワクチンが承認された際に行われた臨床試験 ( 治験 ) では報告されていない 一カ所から痛みが広がり ひどいと歩いたり腕を動かしたりするのが難しくなる ワクチンの薬剤の影響なのか 針を刺す接種行為の影響なのかも不明のまま 専門家の会議では 広範で持続する疼痛の副反応症例等について十分に情報提供できない状況にあることを踏まえ 接種を希望する者の接種機会は確保しつつ 副反応についての調査 分析を継続し 国民への副反応についての適切な情報提供ができるまでは控える

子宮頸がんとは 6 日本人が死亡する原因の第一位はがんだが 子宮頸がんは女性のがんとしては乳がんに次いで多く 30 歳では最も多い 毎年 15.000 人が子宮頸がんと診断され 約 3. 500 人が亡くなっている 子宮頸癌の有病率は 30 歳代で 0.29% 40 歳代で 0.13% 50 歳代で 0.08% と若年者に多くみられている ( 日本婦人科腫瘍学会 )

子宮頸がんとは 7 原因 : 子宮頸がんの原因は ほぼ 100% が HPV (human papillomavirus) HPV はすべての女性の約 80% が一生に一度は感染するといわれており すべての女性が子宮頸がんになる可能性をもっている! 多くの HPV 感染は症状を伴わず一過性であるが 子宮頸部に持続感染すると子宮頸がんが発生することがある ハイリスク HPV のごく一部が長期間の潜伏期間を経て 前がん病変となり その一部が子宮頸がんに進行する

ヒトパピローマウイルス :HPV 8 ヒトパピローマウイルス ( ヒト乳頭腫ウイルス :HPV) の観戦は 子宮頸がん及びその前駆病変 尖圭コンジローマなどの発症原因である 100 種以上の遺伝子型のうち 子宮頸がんの原因になるハイリスク HP V は 15 種類 人にしか感染しないウイルスで 感染部位は皮膚か粘膜に限られる 子宮頸がんはハイリスク型 HPV がほぼ 100% に検出され そのうち約 45% が 16 型 15% が 18 型が原因である HPV16 18 型が 20 歳 ~40 歳代の子宮頸がんの半数以上を占めている

9 男の子だから子宮頸がんは心配ない ~

子宮頸がんだけではない 10 HPV はハイリスク型に限ってみても 男性の性器関連癌 咽頭喉頭癌などの男性にも発症するがんの原因となっている アメリカでの研究では HPV 関連の陰茎癌 肛門癌などがそれぞれ子宮頚部癌の 1/10 以下ではあるが発症している 2012 年 8 月の時点では 4 価ワクチンの男性への認可が世界 72 か国に拡大し 男性への接種は世界的な潮流となっている

子宮頸がん HPV ワクチン 11 サーバリックス ガーダシル 接種対象 10 歳以上の女性 9 歳以上の女性 効能 効果 HPV16 型および 18 型感染に起因する子宮頸がん及びその前駆病変の予防 HPV6 11 16 および 18 型感染に起因する子宮頸がんおよびその前駆病変 外陰上皮内腫瘍ならびに膣上皮内腫瘍 尖圭コンジローマの予防 接種間隔および部位 0.1.6 か月筋肉注射 0.2.6 か月筋肉注射 海外での初の承認 2007 年 5 月 2006 年 6 月 日本での発売開始 2009 年 12 月 2011 年 8 月 世界では 114 か国で承認 127 か国で承認 * 日本での承認 100 か国以上の国での承認の後に認められた

子宮頸がんワクチン 12 モデリングによる推計においても 女子に対する接種率が高くなれば必ずしも男子に接種しなくとも子宮頸がん予防のための効率は満足いくものと示されている ワクチンの有効性が女子 > 男子というより 公的費用を投じる際の効率をもとに思春期女子での接種が推奨されている

子宮頸がん予防ワクチン 13 現時点では 子宮頸がんが減少したというエビデンスは得られていないが その前癌病変の減少はワクチン接種群で証明されている 尖圭コンジローマについてはワクチン接種開始から疾患減少が示されている ( 産婦人科の実際 2013 62(2)) このワクチンは すでに感染している HPV を排除したり 子宮頸部の前がん病変を治療する効果はなく あくまで感染予防のワクチン

予防接種したほうがいいのだろうか 14 HPV ワクチンを接種することで HPV16 型と HPV1 8 型の感染をほぼ 100% 防ぐことができるが すべての発がん性 HPV の感染を防げるわけではない 子宮頸がんの有病率は低い すでに起きている感染を防げるわけではない 副反応は怖い HPV ワクチンだけではないとわかっていても 小児の予防接種と異なり集団感染を防ぐという目的ではなく個人の疾患予防という意味合いが強い

子宮頸がん検診という選択肢 予防できる唯一のがん 15 検診をすれば前がん状態での検出が可能であり 子宮頸がんに至るまでに十分に病変発見可能な時期が存在する ワクチンを接種時すでに感染していた HPV により子宮頸がんになる可能性がある 定期的に健診を受けることが大切! 検診受診率は海外と比較して明らかに低い 日本は 32% ( 平成 22 年度厚生労働省国民生活基礎調査 ) LOVE49 http://love49.org/first.html

ヘルスリテラシー 16 自分で意思決定 自己決定 健康法 疾病予防法の選択肢の範囲 各選択の効果やリスクにおける確率の高さを知り 自分で意思決定 ( 自己決定 ) が重視 EBM(Evidence-based Medicine)EBHC(Healthcare) などの根拠 (= エビデンス ) に基づいた保健医療 ( 中山和弘先生看護情報学特論スライドより ) HPV ワクチンの副作用や必要性 子宮頸がん検診 感染暴露しない など選択肢の効果やリスクを考える

ヘルスリテラシー 17 HPV への感染は本人の自覚により感染経路の遮断が可能な感染症であり 感染防止のための健康教育も同時に求められる 接種者本人への健康教育 情報提供とそれに基づく自己決定を促す必要がある

オタワ個人意思決定支援ガイド 18 オタワ個人意思決定ガイド 難しい決断を迫られている人のためのガイド 意思決定に関わる人たちに自分の考えを伝える際の手助けができるツール どんな意思決定なのか いつ 選択肢についての知識 選択肢のメリット デメリット 各選択肢の理由 自分にとってどれくらい大切か 支援体制

子どもの自己決定権 知る権利 19 HPV ワクチンの対象年齢である思春期は年齢や発達段階に応じた適切な説明により自己決定が可能と考えられる 思春期は個人の自立のみならず 社会的自立も確立してくる時期であり 正確な情報を提示し 自身で自分の健康を守る決定を援助することが必要である ヘルスリテラシーのスキルを育めるように関わっていく