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論文乾燥開始後 5 ヶ月のデータに基づく仕上塗材 表面改質材を施工したコンクリートの乾燥収縮性状 長谷川拓哉 *1 *2 千歩修 要旨 : 本研究では, 乾燥開始後 5 ヶ月の乾燥収縮試験結果に基づき, 各種仕上塗材 表面改質材を施工したコンクリートの乾燥収縮性状について検討を行った その結果として, 今回使用した仕上塗材は, 乾燥開始後 6ヶ月では, 乾燥収縮ひずみの進行抑制効果がみられるが,5 ヶ月ではこの効果が小さくなった また, 今回使用した表面改質材を施工した場合の乾燥収縮ひずみは,6ヶ月時点で表面改質材より小さくなった場合,5 ヶ月でも小さくなった 仕上塗材による乾燥収縮ひずみの進行抑制効果は, 仕上塗材の透湿性と関係が深い等の知見が得られた キーワード : 乾燥収縮ひずみ, 仕上塗材, 表面改質材, 長期データ 1. はじめに実構造物におけるコンクリートの乾燥収縮に起因するひび割れの発生を検討するためには, 実際の使用条件における乾燥収縮ひずみを把握することが重要である コンクリート表面に仕上塗材などの表面被覆材や表面改質材が施工される場合があり, 実構造物における乾燥収縮ひずみを考える場合, これらの影響を考慮する必要があると考えられる 乾燥収縮ひずみに対する仕上材の影響については, 今本らの研究 1), 表面改質材の影響については, 三浦ら 2), 上田ら 3) の研究などがあげられるが, 研究事例は少ないのが現状である 特に, 既往の研究では, 乾燥開始からの期間が6ヶ月までのデータに基づく検討が多く,2 年以上の長期的なデータによる検討事例はほとんどみられない 本論文は, 著者らが文献 4) で検討した砕石および再生粗骨材 Mを用いたコンクリートに各種仕上塗材 表面改質材を施工した試験体の乾燥開始後 5 ヶ月のデータに基づき, 各種仕上塗材 表面改質材による乾燥収縮抑制効果を検討した結果を報告するものである 2. 実験の概要実験計画を表 -1 に, 実験のフローを図 -1 に示す 実験は, 普通コンクリート ( 常磐産砕石を使用 ) と再生骨材コンクリート ( 再生骨材 M 吸水率 4.6% を使用 ) に各種仕上塗材 表面改質材を施工し,2 6%R.H. の雰囲気中に存置し, 乾燥収縮試験を行った 使用したコンクリートの調合 各種性状を表 -2 に, 使用した仕上塗材 表面改質材の種類 各種性状を表 -3 に示す なお, 再生粗骨材コンクリートは, 乾燥時に再生粗骨材に 付着している原セメントペーストからも水分逸散があることが指摘されており 5), 水分蒸発の機構が異なるコンクリートに対する仕上塗材 表面改質材の影響を検討するため使用した 試験体は,1 1 4cm の角柱試験体とし,1 4cm の4 面に仕上塗材または表面改質材をメーカー指定の塗付量で施工し,1 1cm の小口 2 面にエポキシ樹脂のシールを行った 養生は, 図 -1 に示す通り, コンクリート打設後,2 週 2 水中養生を行った その後コンクリート表面を乾燥させるため,2 雰囲気中に存置した 2 乾燥は, 高周波容量式水分計で, コンクリート表層の含水率が 1% 以下となった3 日目に終了し, その後, 仕上塗材 表面改質材を3 日間で施工した 仕上塗材の施工は専門技術者が行った 仕上塗材は一般的な仕上塗材を3 種類選定し, 表面改質材は主に防水剤として使用されている珪酸塩系の2 製品を選定した また, 仕上塗材と表面改質材の組合せの影響をみるため, 両者を組合せたものの検討も行った 両者を組合せたものは, 表面改質材を施工後,1 日 2 気中養生を行い, その後仕上塗材を施工した 乾燥開始乾燥収縮試験は,JIS A 1129-3 ダイヤルゲージ法による長さ変化と質量変化の測定を行った また, 仕上塗材は, 水蒸気透 過性の程度を把握するため, 濾紙下地の仕上学会法 6) に よって透湿量を測定した 測定結果を表 -3 中に示す ここで, 乾燥収縮ひずみの表し方について, 通常 1 週水中養生直後を初期値とするが, 本研究では, 他の試験との相互比較を行うため2 週水中養生としているとともに, 仕上塗材 表面改質材施工の施工期間があるため, 水中養生後 6 日 (2 乾燥 3 日 + 仕上塗材 表面改質材施工 3 日 ) を試験開始日 ( 初期値 ) と設定した なお, *1 北海道大学大学院工学研究院空間性能システム部門准教授博士 ( 工学 ) ( 正会員 ) *2 北海道大学大学院工学研究院空間性能システム部門教授工学博士 ( 正会員 )

表 -1 実験計画 表面処理種類 乾燥収縮試験のコンクリート種別 * * * + + : 普通骨材コンクリート : 再生骨材コンクリート *: 仕上材の透湿試験 ( 仕上学会法 濾紙下地 ) の実施 2 週 2 水中養生 3 日 2 乾燥 3 日仕上塗材 表面改質材施工 *1 乾燥収縮試験 *2 *1 表面改質材 + 仕上塗材は, 表面改質材施工後,1 日 2 気中養生後, 仕上塗材を施工 *2 JIS A 1129-3 ダイヤルゲージ法に準拠 図 -1 実験フロー 水中養生後の 2 乾燥 3 日において, 乾燥収縮ひずみでは全ての試験体で 143 1-6 程度, 質量変化率では普通コンクリート全ての試験体で.8% 程度, 再生骨材コンクリート全ての試験体で 1.3% 程度の減少となった また, 水中養生後から試験開始日までの乾燥収縮ひずみおよび質量変化率を表 -4 に示す 3. 実験の結果および考察 3.1 試験開始後 6ヶ月の結果試験開始後 6ヶ月の乾燥収縮ひずみを図 -2 に示す 仕上塗材 表面改質材を施工したものは, コンクリートのみ ( 以下 ) に比べて, 初期の乾燥収縮ひずみが低減される傾向がみられた しかし, 試験開始後 6ヶ月の乾燥収縮ひずみは, を除いて, とほぼ同程度となった これから, 本研究で使用した仕上塗材 表面改質材は, 乾燥初期において乾燥収縮ひずみの進行を抑制するが, 最終的な乾燥収縮ひずみを低減する効果は期待できないことが考えられる 試験開始後 6ヶ月の質量変化率について, 図 -3 に示す 再生骨材コンクリートは普通コンクリートに比べて質量変化率が大きい傾向となっていることが確認できた また, 仕上塗材を施工した試験体は, よりも質量変化率が小さく, 仕上塗材による水分蒸発を低減する効果が認められた 今本によれば, 仕上塗材によるコンクリートの乾燥収縮の抑制は, コンクリートからの水分蒸発の抑制によるものと指摘している 1) 本結果からも同様の傾向が伺え, 表面被覆を行う仕上塗材は, コンクリート中からの水分蒸発を抑制することで乾燥収縮ひ 表 -2 コンクリートの調合及び各種性状種類 W/C S/A 単位質量 (kg/m 3 ) 空気量スランプ圧縮強度 (%) (%) W C S G (%) (cm) (N/mm 2 ) 普通 185 37 76 96 4.3 19. 35.1 5 44.7 再生 185 37 76 877 4. 18. 32.3 * セメント : 普通ポルトランドセメント ( 密度 :3.16g/cm 3 ) 細骨材 : 勇払産陸砂 ( 表乾密度 :2.61g/cm 3 ) 粗骨材 : 常磐産砕石 ( 表乾密度 :2.66g/cm 3 )/ 再生骨材 M( 表乾密度 :2.21g/cm 3 吸水率:4.6%) 表面処理種類 仕上塗材 表 -3 仕上塗材 表面改質材の概要 種類 外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材 防水形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材 合成樹脂エマルション系複層仕上塗材 表 -4 水中養生後から試験開始までの乾燥収縮ひずみと質量変化率 試験体種類 本論文での呼称 普通骨材コンクリート乾燥収縮質量変化率ひずみ *3 使用量 (kg/m 2 ) 透湿量下塗主材上塗 (g/m 2 24h) - 1.4-188.15 *1 1.4-29.15 *1 1.5.38 *2 81 珪酸塩系表面改質材 (A -.35 - - 社 ) 表面改質材珪酸塩系表面改質材 (B -.2 - - 社 ) *1 水性シーラー *2 水性ウレタン *3 仕上学会法による 再生骨材コンクリート乾燥収縮質量変化率ひずみ ( 1-6 ) (%) ( 1-6 ) (%) -329-1.14-257 -2.9-243 1.3-2.49-157.6-143 -.2-2 1.47-171 1.48-3 -1.34-229 -2.7-257 -1.18-229 -1.92 + -243.95-2.52 + -186 1.49-143 1.31 乾燥収縮ひずみは-が収縮側 質量変化率は-が減少側 ずみの進行を抑制すると考えられる 一方, 改質材を施工した試験体は, に比べ質量変化率が大きくなっている これは表面改質材を施工する際に水を直接塗布するため, に比べ水分を多く含んでいたためと考えられる 3.2 試験開始後 5 ヶ月の結果 (1) 乾燥収縮ひずみの結果乾燥収縮ひずみの試験開始後 6ヶ月と 5 ヶ月の比較を図 -4 に示す について6ヶ月と 5 ヶ月の乾燥収縮ひずみを比較するとほぼ同程度となっている この原因は明らかではないが, 本実験では恒温恒湿室を試験開始後 1 年で設備更新しており, 古い設備で試験体周辺が低い湿度となり早期に乾燥収縮ひずみが進行していたこと等が考えられる 5 ヶ月の乾燥収縮ひずみは, いずれのコンクリートの場合でも, 仕上塗材を施工した場合, に比べ同等か若干大きな結果を示した 6ヶ月では小さな乾燥収縮ひずみとなっていたも同

1 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 1 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 乾燥収縮ひずみ ( 1 6 ) 2 3 4 5 6 7 8 + + 普通コンクリート 乾燥収縮ひずみ ( 1 6 ) 2 3 4 5 6 7 8 + + 再生骨材コンクリート 図 -2 試験開始後 の乾燥収縮ひずみ.5 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2.5 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 1 1.5 2 2.5 3 3.5 + + 普通コンクリート 1 1.5 2 2.5 3 3.5 図 -3 試験開始後 の質量変化率 + + 再生骨材コンクリート 様の傾向となっており, 今回使用した仕上塗材には, コンクリートの最終的な乾燥収縮ひずみを低減する効果はないと考えられる なお, 仕上塗材を施工した場合, 乾燥収縮ひずみが若干大きくなったのは, は, 初期に乾燥収縮ひずみが大きく進行するのに対し, 仕上塗材を施工した場合, 初期は小さく長期的に大きくなっていくことが一因と考えられる コンクリートからの水分蒸発を, 周辺雰囲気との相対湿度の差を駆動力とする拡散現象として捉えるのであれば, 長期的にはコンクリート内部は周辺の相対湿度に近づいていくものと考えられる これは表面に仕上塗材を施工した場合でも同様と考えられる その場合, 仕上塗材はコンクリート内部を周辺の相対湿度となるのを遅らせる効果があると考えられ, 透湿性が低い仕上塗材を用いた場合は, より長い時間遅らせることが可能と考えられる しかし, 今回使用した比較的透湿性が低いでも4 年程度でと同程度となっているとともに, 今本ら 7) が示した防水材を施工した場合の結果でも水分蒸発が進行しており, 一般的に使用されている建築用仕上塗材は, 長期的には乾燥収縮ひずみ進行抑制効果は期待できないと考えられる また, とでは, 表 -3 に示す通り透湿量が異なる仕上塗材であるが,5 ヶ月の乾燥収縮ひずみはほぼ同じとなっている このことから, 最終的な 乾燥収縮ひずみは, 仕上塗材種類によらず下地となるコンクリートによって決定されると考えられる 表面改質材を施工した場合, 再生骨材コンクリートでは,6ヶ月でよりも低減された乾燥収縮ひずみは, 5 ヶ月時点でも低減されていた このことから, 表面改質材によってコンクリート自体の乾燥収縮ひずみを低減できる可能性があると考えられる しかし, 普通コンクリートでは6ヶ月,5 ヶ月ともに, と同等の結果となっており, 表面改質材の乾燥収縮ひずみ抑制効果について, さらに検討が必要と考えられる 表面改質材と仕上塗材を両方施工した場合の乾燥収縮ひずみは, と同等か若干大きい結果を示した 仕上塗材を施工したものと同様の傾向であり, 本実験では, 表面改質材の影響よりも仕上塗材の影響が大きいことが考えられる (2) 質量変化率の結果乾燥開始後 6ヶ月と 5 ヶ月の質量変化率を図 -5 に示す 仕上塗材を施工した場合,6ヶ月よりも 5 ヶ月の質量変化率の差は, よりも大きくなっている これから, 仕上塗材を施工した場合, 長期的には, よりも多くの試験体の水分を蒸発させると考えられる この場合, コンクリート中だけではなく, 仕上塗材自体に含まれていた水分が蒸発したことも考えられ, 本実験ではいずれの水分であるかは明確ではなかった また, 表面改質材を施工したものは,6ヶ月よりも 5 ヶ月の質量

+ + 5 ヶ月 5 ヶ月 1 8 6 4 2 1 8 6 4 2 乾燥収縮ひずみ ( 1 6 ) 乾燥収縮ひずみ ( 1 6 ) 普通コンクリート再生骨材コンクリート図 -4 試験開始後 6ヶ月と 5 ヶ月の乾燥収縮ひずみ + + 5 ヶ月 5 カ月 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1.5 普通コンクリート再生骨材コンクリート図 -5 試験開始後 6ヶ月と 5 ヶ月の質量変化率 変化率の差は, よりも小さくなっている このことから, 表面改質材を施工すると長期的にコンクリートからの水分蒸発が抑制されることが考えられる 再生骨材コンクリートでは, と表面改質材を施工したものは, 6ヶ月よりも 5 ヶ月の質量変化率が小さくなっている 再生粗骨材が影響していることも考えられるが, 本実験の範囲では原因は明らかではなかった 乾燥開始後 5 ヶ月までの乾燥収縮ひずみと質量変化率の関係を図 -6 に示す 今本 1) が指摘している通り, 両者はほぼ比例の関係を示している 同じ乾燥収縮ひずみに対する質量変化率について, 普通コンクリートでは仕上塗材 改質材の有無 種類にかかわらず差は小さいのに対し, 再生骨材コンクリートでは, 仕上塗材 改質材の種類によって差が大きくなっている コンクリートのみの試験体について, 同じ乾燥収縮ひずみで比較すると, 再生骨材コンクリートは普通コンクリートに比べて質量変化率が大きく, 同じ乾燥収縮ひずみになるまでの水分蒸発量が多いと考えられる このため, 仕上塗材 表面改質材のコンクリートからの水分蒸発の抑制効果がより明確となり, 差が大きくなったと考えられる また, 普通 再生骨材コンクリートによらず, 乾燥開始後 5 ヶ月のを施工したものは比例の関係からはずれた結果となった 原因は明らかではないが, 仕上塗材自体の水分が影響したことなどが考えられる 3.3 仕上塗材 表面改質材を施工した場合の乾燥収縮ひずみの進行予測以上の実験事実をふまえ, 簡易な仕上塗材 表面改質材を施工したコンクリートの乾燥収縮ひずみの進行予測を検討する ここでは, 一般的に用いられている, 最終乾燥収縮ひずみに双曲線関数を乗じる形で経時変化を表すこととした 仕上塗材および表面改質材の効果は, 乾燥の進行度を変化させる効果があるとし, その効果を係数 s として乾燥の進行度を表す係数に乗じる形とした ε sh (t)=ε sh t/(sα+t) (1) ここに,ε sh (t): 乾燥開始後 t 日の乾燥収縮ひずみ ( 1-6 ) ε sh : 最終乾燥収縮ひずみ ( 1-6 ) α: コンクリートの乾燥の進行度を表す係数 s: 仕上塗材 表面改質材の係数式 (1) に基づき,の実験結果から最小自乗法によって各係数を決めた乾燥収縮ひずみと実測値を図 -7 に示す 6ヶ月までは実測値を表現できているものの,5 ヶ月の実測値とは 2 1-6 程度異なる結果となった また,5 ヶ月の結果から求めた場合, 実測値を十分に表現できない結果となった 今回の結果では乾燥開始後 6ヶ

乾燥収縮ひずみ ( 1-6 ) -8-7 -6-5 -4-3 -2-1 -.5-1 乾燥収縮ひずみ ( 1-6 ) -8-7 -6-5 -4-3 -2-1 -.5-1 普通コンクリート + + -1.5-2 -2.5-3 -3.5 再生骨材コンクリート + + -1.5-2 -2.5-3 -3.5 乾燥収縮ひずみ ( 1 6 ) 1 2 4 6 8 1 12 14 16 2 3 4 5 6 5ヶ月の結果から求めた場合 7 8 9 1 6ヶ月の結果から求めた場合 図 -7 式 (1) による当てはめの例 ( 普通コンクリート 仕上げ ) 図 -6 乾燥収縮ひずみと質量変化率の関係 表 -5 仕上材 表面改質材の係数 s と実測値との相関係数 試験体 s 相関係数 -.97.96.974 1.82.991 普通 1.2.983 1.8.961 1.4.963 + 1.8.961 + 1.17.97 -.962 1.11.965 2.68.981 再生 1.32.976 1.13.953 1.1.952 + 1.12.955 + 1.26.965 透湿量 (g/m 2 24h) 2 18 16 14 12 1 8 6 4 2 砕石再生骨材.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 仕上材 表面改質材の係数 s 図 -8 仕上材 表面改質材の係数 s と透湿量の関係 月以降, 乾燥収縮ひずみの進行が止まっていると考えられ, このような場合に簡易に長期的な乾燥収縮ひずみを予測するには, 他の手法を考える必要があると考えられる しかし, ここでは, 簡便性を考慮し, 安全側の評価を与える式として式 (1) を検討することとした 最終乾燥収縮ひずみは, 仕上塗材 表面改質材の施工にかかわらず元のコンクリートによって一意に決まると仮定した 実験結果より表面改質材の施工によって, 最終乾燥収縮ひずみを低減できる可能性があると考えられるが, ここでは安全側の評価として, 最終乾燥収縮ひずみに影響を与えないものと仮定した 式 (1) に基づき, 実験結果から最小自乗法によって求めた結果を表 -5 に示す なお, 最終乾燥収縮ひずみは, それぞれのコンクリートの6ヶ月の実験結果から最小自乗法によって求めたものを用いている 実験結果と式 (1) から求めた値との相関係数は, 表 -5 に示す通り比較的高く, 実用的には式 (1) によって安全側の乾燥収縮ひずみの進行を表すことができると考えられる 図 -8 に仕上塗材の係数 s と透湿量の関係を示す 仕上塗材の透湿量が小さくなると係数 s は大きくなる傾向がみられた しかし, 普通コンクリートと再生骨材コンクリートでは, 係数 s は異なった値となり, 透湿量が小さくなると両者から求めた係数 s の差は大きくなった これより, 仕上塗材による進行抑制効果は, 仕上塗材の透湿量だけではなく, コンクリートの影響も考慮する必要があると考えられる 4. まとめ 1) 今回使用した仕上塗材は, 試験開始後半年時点では, 乾燥収縮ひずみを抑制する効果がみられるが, 長期的には抑制する効果は期待できない 2) 今回使用した表面改質材を施工した場合の乾燥収縮ひずみは, 半年時点で仕上塗材よりも小さくなった場合, 長期的にも小さくなる 3) 今回使用した仕上塗材による乾燥収縮ひずみの進行抑制効果は, 仕上塗材の透湿性と関係する 謝辞本研究の一部は, 科研費基盤研究 (C)( 課題番号 : 256513, 代表 : 長谷川拓哉 ) の研究の一部として実施しました また, 実験の実施にあたっては, 本研究室の卒論生 大学院生各位の協力を得ました ここに記して心よりの謝意を表します 参考文献 1) 今本啓一 : 表面仕上げを施したコンクリートの乾燥

収縮性状に関する研究, コンクリート工学年次論文集,Vol.26,No.1,pp.471-476,24.7 2) 三浦興紀他 6 名 : 表面改質材によるコンクリートのひび割れ抑制効果 ( その1. 表面改質材の種類の影響 ), 日本建築学会大会学術講演梗概集,PP.129-13, 25.9 3) 上田賢司他 3 名 : 表面改質材によるコンクリートのひび割れ抑制効果 ( その2. 表面改質材の塗布量の影響 ), 日本建築学会大会学術講演梗概集, PP.347-348,26.9 4) 長谷川拓哉, 千歩修 : 仕上材 表面改質材を施工した中品質再生粗骨材コンクリートの乾燥収縮性状, 日本建築学会大会学術講演梗概集,PP.189-19, 27.9 5) 江口清他 2 名 : 再生コンクリートの乾燥収縮と水分逸散の機構に関する研究, 日本建築学会構造系論文集,NO.573,pp.1-7,23.11 6) 千歩修他 : 透湿性材料の透湿性 透水試験方法( 原案 ), 共通試験の概要及び 透湿性材料の透湿性試験方法 ( 案 ) の提案,FINEX, 1996.3 7) 今本啓一他 2 名 : 下地コンクリートの内部拘束ひずみに及ぼす仕上げ材の影響, 日本建築仕上学会論文報告集,pp.1-6,26.7