平成 28 年 12 月 22 日 ( 木 ) 小児在宅医療支援者交流会 在宅療養中のこどもの 発達段階を踏まえた支援 神奈川県立こども医療センター 看護局看護教育科田阪祐子 ( 小児看護専門看護師 )
成長発達する存在である子ども 子どもの成長 (growth) 身長 体重 骨の長さ 太さなどの形態的 量的な変化 子どもの発達 (development) 運動機能 臓器の働き 精神能力などの機能的 質的変化
なぜ成長 発達は大切なの? 子どもは機能自体に未熟性があり 運動 知能 コミュニケーション 情緒 社会性などの諸機能が著しく発達し 各時期によりその能力は異なる 子どもの成長 発達の特徴を知ること 子どもの状態を理解し判断したり ケアを効果的に発展するために欠かせない 健康問題 各時期の発達上の課題が達成されにくかったり 家族の心理状態に変化をきたしたりする 子どもの権利に関する条約 (1994 年批准 ) に子ども一人ひとりが尊重され 健やかに成長子どもの持つ力に合わせて持っている力を最大限にのばす発達する権利を有している
子どもの発達に関する理論 エリクソンの心理社会的発達理論 ピアジェ発達理論 課題対危機 乳児期信頼対不信 0~2 ヶ月 2~7 歳 感覚的運動期 前操作期 幼児期前期自律対恥 疑惑 幼児期後期積極性対罪悪感 学童期勤勉対劣等感 7~12 歳 具体的操作期 12 歳以降形式的操作期 青年期 アイデンティティの確立対役割拡散
乳児期 乳児の認知的能力 乳児は早い時期から白色よりも赤色 赤色よりも複雑な図形 中でも人の顔を好む 生後から母親のにおいを選好する 愛着形成から基本的信頼へ 愛着行動( 目で追うなどの定位行動 泣く 発声などの発信行動 這って近づくなどの接近行動 ) 愛着関係を築くには タイミングよくフィードバックされることが繰り返される必要がある
乳児期 乳児期は 第 1 段階 : 感覚運動期にあたり 感覚と運動により 周囲の世界を認知する 生後 6~7 ヶ月ごろから発達 10 ヶ月頃は 隠されたおもちゃを 1 分後も覚えている ( 注意力 ) 生後 6 ヶ月頃は 同時に両手におもちゃを握っていられるようになる ( 注意力の芽生え ) 乳児期後期は テーブルの周りをつたい歩きしてお菓子を取ったり ひものついたおもちゃを引き寄せることができるようになる ( 思考 )
幼児期 身体の発育 発達 1 歳で歩きはじめ 2 歳になるとジャンプや片足立ち 3 歳で立つ 走るなどの基本的動作は完成 4 歳頃では片足ケンケンなど難度の高い運動ができる ことばの獲得 マンマ お腹すいた などさまざまな意味を表現 幼児期後期では 遊びのなかで話や手紙をかいたり 基本的な読み書き能力を獲得し始める
思考の特徴 幼児期 できごとの見方が自己中心的で 一つの視点からしかとらえることができず 思考は見かけに影響されてしまう 生活習慣の自立や仲間との遊びを通した自己の育ち 生活習慣の獲得は 親からの自立や主体的な行動を促す 遊びを通して 身体 認知 言語 情緒 コミュニケーションスキルの発達を遂げる 同年齢の子どもと接し 仲間と一緒に体験する楽しさと 一人で経験できる楽しさを行き来する体験は 子どもの育ちにつながっていく
学童期 学習を支える認知的能力 学校で知識習得 自律的な学習能力を身につける 友だち関係からの自己の育ち 入園 就学 卒業などの人の生涯で共通して体験するライフイベントの変化がある 社会的スキルやストレス対処法を育み 自己肯定感を支え レジリエンスを高めることが重要
子どもと遊び 子どもの権利条約 第 31 条 子どもの健全な成長 発達を促すために教育への権利と遊びの権利を認めていること 年齢にふさわしい遊びおよびレクレーション活動に自由に参加する権利が保障され ( 第 31 条第 1 項 ) 国などがそのための適当かつ平等な機会を提供することが求められている ( 第 31 条第 2 項 )
子どもの遊び 子どもの生活の中にある遊び 子どもにとって 遊びそのものが生活である 乳幼児期の子どもは 遊びを通して身体感覚を伴う多 くの経験を積み重ね そのことによって 豊かな感性 好奇心 探求心 思考力が養われる 成長に伴い友達と一緒に遊ぶことの楽しさを経験し 仲間との関係を育み 社会性を養う その後の生活や学びの基礎となり 子どもが生涯にわたっていきていくために必要な力が育まれる
重症心身障害児の言葉と情緒の発達 知的 運動発達の遅れ 発達が阻害されている可能性 他者と共に生きていく一人の人間として じっくりかかわり合い 一人ひとりに合ったコミュニケーション支援を展開することが必要
重症心身障害児へのコミュニケーション支援 1. 医療的ケアもコミュニケーションの機会として位置づける 2. 生理的基盤へ配慮する 3. 触覚刺激を活用し いくつかの感覚を組み合わせてはたらきかける 4. リズムやイントネーションなどの音楽的な要素や 繰り返し を活用する 5. 子どもの微細な動きをサインとしてとらえる
子どもの微細な動きをサインとしてとらえる A くん (4 歳 男児 ) 背景 : 出生時に低酸素虚血性脳症を発症 てんかん 四肢麻痺 重度知的障害 視覚的には光が見える程度 聴覚障害の疑い 医療的ケア : 経管栄養 酸素補給 吸引など エピソード : 自分では身体を動かすことができないが 何となく表情が変化したり 呼吸に変化がみられるときがあった A くんの動きを周囲の状況と照らし合わせる 母親の声 じっと動かずに意識を集中 他の人の声 ハアハアと息づかいが荒くなる よく知ってる歌 じっと動かず 歌が終わる ハーと深いため息をつく
重症心身障害児にとっての遊びの意義 1 1. 遊びは子どもの生活を豊かにする 障害をもつ子どもが主体的に活動できる豊かな遊びを経験する環境を増やす 2. 遊びは健康障害や治療にともなう苦痛や不安からストレス緩和につながる 自分に何が起こっているのかわからない環境のなかで 家族以外の人からケアを受けることは 不安やストレスとなるため 遊びを通して気をそらす ( ディストラクション )
重症心身障害児にとっての遊びの意義 2 3. 遊びは子どもの自発性を育む 子どもは必ず自分の欲求を伝える何らかの方法をもっている 子どものサインを読み取り 自発性を大切にしながら 遊びの内容を考えていく 4. 遊びは学習 ( リハビリテーション 教育を含む ) につながる 感覚運動遊び は 聴覚 触覚 固有感覚 前庭感覚 視覚の5つの感覚を刺激しながら 脳の神経回路を形成するため 遊びは 子どものニーズに応じた学習につながる
重症心身障害児にとっての遊びの意義 3 5. 遊びは人との交流の糸口になる : 遊びを通して子ども を理解できる 子どもとの遊びから 家族や周りの人は 子どもがどのような方法で表現できるのか どのような遊びを楽しいと感じているのか 不快に感じているのか 遊びから発せられるサインを読み取り 意味づけしながらコミュニケーションを図る手段とすることができる 実際に遊んで反応が乏しいときには ほかの遊びに変えたり 遊びの内容や遊び方を考え積み重ねていく
子どもが遊べる環境作り 子どもが遊びを体験し 楽しい やってみたいと思えるような遊びを一緒に選び 繰り返し遊んだり そこから新たな遊びを見つけたりできるよう取り組み続け 積み重ねていくこと 子どもがどのようにすれば遊びに参加できるのか いつでもどこでも子どもが遊べる環境を整えていくことが大切
文献 倉田慶子編集 : ケアの基本がわかる重症心身障害児の看護, へるす出版,2016. 東京 五十嵐隆, 林隆, 及川郁子他監修 : こども療育支援 医療を受ける子どもの権利を守る, 中山書店,2014, 東京. 山本智子 : 在宅医療を利用する子どもの遊びに参加する権利 子どもの権利条約 31 条および意見 17 号との関係を中心に 田中恭子他 : 重症の慢性疾患児の病棟での療養 療育環境の充実に関する研究, 多職種連携の検討 1, 療養環境における遊び支援のあり方と子ども療養支援の専門性, 平成 24 年度成育疾患克服等次世代育成基礎研究報告書