目録情報と 電子リソース ~ 多様な学術情報資源と利用者をつなぐ ~ 第 5 回 中国 四国 九州 沖縄地区大学図書館職員フレッシュパーソンセミナー @ 広島大学平成 25 年 9 月 12 日 島根大学矢田貴史
目次 図書館目録の現在と未来 電子リソースと 利用のためのナビゲーション 2
図書館目録の 現在と未来 3
目録とは 資料組織化 図書館などが その収集 蓄積した資料を利用に供するために 利用者の検索の便を考え 一定の方式に従って体系的に整備すること 目録の作成 分類作業など 目録 あるものについての情報を一定の規則に基づきリスト化したもの メタデータ [ データについてのデータ ] の一種 4
図書館目録 図書館が所蔵する図書や雑誌などの情報を整理 分類して効率的に検索できるようにしたもの 書誌 出版物としての図書の個別情報 ( 書名 著者名 出版に関する事項 形態など ) 所蔵 図書館での所在情報 個別情報 ( 配架場所 請求記号 逐次刊行物においては 所蔵 欠号表示など ) 5
目録規則 目録規則とは 書誌を作成するのに必要な 記述する項目とその記述方法について定めたもの 日本目録規則 1987 年版改訂版 (NCR87R) Nippon Cataloging Rules 英米目録規則第 2 版 (AACR2) Anglo-American Cataloguing Rules ベースとなるのは 印刷体資料 の書誌を カード目録 に記述するという考え方 6
NACSIS-CAT 総合目録データベース NACSIS-CAT NACSIS=National Center for Science Information Systems 全国の大学図書館等が所蔵する図書 逐次刊行物等についての目録所在情報をデータベース化 7 国立情報学研究所 (NII=Natonal Institute of Informatics) 多数の図書館が参加し オンラインによる目録の共同分担入力を行うシステムを提供する図書館向けのサービス機関として 日本では唯一の書誌ユーティリティ 目的 書誌情報の共有 目録業務の負担を軽減 形成された情報をもとに 資料の共有を促進 ILL など 品質の維持 コーディングマニュアル 目録情報の基準 目録システム講習会 セルフラーニング教材
NACSIS-CAT 図書所蔵登録件数 119,557,058 件 参加機関数 1258 件 (2013.3.31 現在 ) 平日 1 日あたりの登録状況 図書書誌 : 約 1,100 図書所蔵 : 約 18,000 雑誌書誌 : 約 14 雑誌所蔵 : 約 350 8 http://www.nii.ac.jp/cat-ill/archive/stats/cat/transition.html
図書館目録の問題点 電子ジャーナル 電子書籍 機関リポジトリ等によるオープンアクセスコンテンツといった電子化されたリソースの急速な増大 従来の図書館目録は 印刷体資料の書誌や所蔵を組織化するために利用されてきたもの 情報資源の多様化に伴い 図書館の扱う資料を 組織化し 利用に供する仕組みとしては不十分 9
最近の動向 AACR2 RDA= Resource Description & Access ( 資源の記述とアクセス ) 2010 年 概念モデルとしてFRBRなどを採用 FRBR=Functional Requirements for Bibliographic Records ( 書誌レコードの機能要件 ) 1998 年発表資料の書誌を記述するのに 著作 表現系 体現系 個別資料のレベルで実体を捉えなおす RDAの目的 ( 序文より ) 資源の発見を支援するデータを形成するためのガイドラインであり 指針を提供する RDAの特徴 対象資料の多様化 多様なコンテンツへの対応 使用地域の拡大 ( 25 言語 45か国 ) 国際化 多様なシステム 入力システムに依存しない メタデータの相互運用性 柔軟性 10
日本の動向 国立国会図書館の書誌データ作成 提供の新展開 (2013) http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/kihon.html 従来の資料も電子情報のいずれにも利用者が迅速 的確かつ容易にアクセスできるよう また広く書誌データの利用を促進するよう 書誌データの作成及び提供を行う 従来の資料と電子情報の一元的取扱い Linked Open Data への対応など ウェブ環境に適したフレームワーク構築 資料の特性にあった書誌データ作成基準 日本目録規則 (NCR) 改訂等の動向に留意 RDA へも対応 利用者の検索に役立つ有意なアクセスポイントを付与 典拠等の拡充 データに一層の付加価値を 書誌データの開放性 出版 流通業界 関係機関と連携 資源 知識 技術を活用 NII とも連携 11
図書館目録の未来 対象のリソース ( 資源 ) から メタデータ ( 書誌的要素 ) を記述する作業である点は 従来の目録作成業務と同じ 図書館の所蔵目録を作成するための規則から 資源にアクセスするためのツールを作成するための規則へとその役割が変わった 第一の原則は 目録利用者の利便性に資することである ( 国際目録原則覚書, 2009) 日本語訳 http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/kokusai.html#02 12
電子リソースと 利用のためのナビゲーション 13
電子リソースの種類 大学図書館が扱う多様な電子リソース 電子ジャーナル データベース ( 書誌 / 全文 / ファクト ) 参考 )Dnavi( 国立国会図書館 ) http://dnavi.ndl.go.jp/ 機関リポジトリ http://www.nii.ac.jp/irp/list/ 電子ブック 電子辞書 辞典 動画 etc 14
電子ジャーナル ( 有料コンテンツ ) 大規模商業出版社買収 合併により肥大化基本的に自社プラットフォーム上で提供 Elsevier, Wiley-Blackwell, Springer, Taylor & Francis その他の出版社 大学出版会 Sage Pub. Nature Pub., MIT Press, LWW, Oxford UP, Cambridge UP アグリゲータ複数出版社 学会の EJ 提供権を買い取り自社プラットフォームで提供 Embergo 付も多い EBSCO, ProQuest 学会系 American Chemical Society, American Medical Association, Royal Society of Chemistry, Institute of Physics 統合プラットフォーム多数の出版社 学会の EJ を統一プラットフォームで提供 Highwire Press, Ingenta Connect 15
電子ジャーナル ( オープンアクセス ) オープンアクセス学術雑誌論文をインターネット上で無料公開し 誰でもが自由に利用できるようにすること 背景出版者の寡占 外国雑誌価格の高騰 SPARC=Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition オープンアクセスの支援 オープンアクセス雑誌 オープンアクセス論文 ( 有料誌 ) 機関リポジトリ 著者所属団体等のウェブサイト 個人のウェブサイトなど 16
データベースの種類 書誌データベース書誌情報 論文情報 所蔵情報等を調べる 書誌のみ ex. Ulrichsweb 書誌 所蔵 ex. OPAC Webcat Plus 書誌 引用 参考文献 ex. WoS Scopus CiNii Google Scholar PubMed 全文データベース電子ジャーナル 新聞記事等を調べる ex. ScienceDirect 聞蔵 Ⅱ ビジュアル ファクトデータベース統計 実験 観測等で得られた情報 数値等を調べる ex. Reaxys Science of Synthesis 17
電子リソースの増加 種類も数も年々増加 人文社会学系のコンテンツ 日本語のコンテンツ 動画コンテンツ 粒度の異なるコンテンツ 電子リソースを一層活用してもらうためのサービス整備 コンテンツの充実だけでなく利用者へのナビゲーションが重要 18
図書館 OPAC/ 電子ジャーナル ( リソース ) 集 冊子の情報 電子リソースの情報を個別に検索 (OPAC に電子リソースの情報を登録している機関もあり ) 19
リモートアクセス 学外からでも 機関で購読しているコンテンツを利用 電子リソース ( 電子ジャーナル データベース等 ) アクセス不可 アクセス 自宅 アクセス 認証 出張先 Shibboleth( 学認 ) EZProxy など 図書館研究室講義室等 20
リンクリゾルバ Link Resolver DB 等の検索結果から 一次情報入手までの流れを簡略化し 利用者の文献入手を容易にする仕組み文献データベース 電子ジャーナル集 OPAC 等 をそれぞれ個別に調べる必要がなくなった SFX(Exlibris) 360LINK(Serials Solutions) LinkSourse(EBSCO) SwetsWiseLinker(TDNet) リンクリゾルバのアイコン 21 フルテキストへのリンク OPAC へのリンク文献複写依頼
文献管理ツール DBの検索結果から文献情報を取り込み文献情報を管理 検索文献リストの共有機能学外からのアクセスも可能参考文献リスト作成 ( 論文作成支援 ) RefWorks(Web) EndNote basic (Web) Mendeley (Web+ デスクトップ版 ) EndNote( デスクトップ ) 22
横断 ( 統合 ) 検索 単一のプラットフォームで 複数のデータベースを一括検索 Stem Cell 検索 OPAC 検索 電子ジャーナル検索 各種 DB 検索 Web 検索 MetaLib(Exlibris) 360Search(Serials Solutions) Meta Searh Federated Searchといった呼び方も 23
ディスカバリーサービス 図書館所蔵の資料 (OPAC) から電子ジャーナル 商用データベース Web 上の情報まで まとめて横断検索 ウェブスケールディスカバリ 1. クラウドサービスとして提供されること 2. 図書館や各種商用データベース等から収集されたメタデータを統合した ウェブスケールな検索用の セントラルインデックス を有してること 3. 商用データベース等の電子リソースに対し 定期的に自動でデータ更新 ( ハーベスト ) を行うための仕組みを持ち 利用者に最新の検索データを提供できること 4. 単一の検索窓で検索が行えるほか 検索結果全てを 関連度順 に表示できること 飯野勝則. ウェブスケールディスカバリの衝撃. カレントアウェアネス (312),18-22, CA1772 http://current.ndl.go.jp/ca1772 Primo Central(Ex Libris) Summon(Sericals Solutions) EBSCO Discovery Service WorldCat Local(OCLC) など 横断検索とディスカバリサービスの違い 次世代 OPACとディスカバリとの違い 24
ディスカバリーサービスって本当に必要? 電子リソースの増大 Google に慣れた利用者 利用者が求めている情報はどこにある? 利用者にとっては きっかけとしてのディスカバリーの価値 多様なリソースの発見とアクセスを保証するためのツールとして ただし ただヒットすればよいわけではないが 図書館にとっては 図書館機能の変化に対応するためのツールとして 自機関の利用者向けにサービスをどうデザインするか 25
電子リソース活用のための トータルサポート 機関リポジトリ 論文公開 文献検索 リモートアクセス リンクリゾルバ 文献入手 OPAC 各種データベース電子ジャーナル集横断検索ディスカバリー 文献管理ツール論文作成支援 論文執筆 文献管理 26
補 )ERDB: 電子リソースの総合目録? ERDB プロトタイプ構築プロジェクト ( 平成 24 年度 ~) 国立情報学研究所 (NII) と大学図書館の連携のもと 電子リソースに関するデータ共有のための基盤構築 ライセンシングにより利用可能となる電子リソースの書誌データ 契約データ 利用統計データ等を一元的に管理 目的紙媒体を中心とした従来の総合目録データベースと併せて 電子媒体および紙媒体の学術情報への迅速かつ的確なナビゲートを実現し 利用者の学術情報のアクセシビリティを向上させる 高橋菜奈子, 大向一輝. 電子リソース管理データベース (ERDB) プロトタイプ構築プロジェクトの1 年大学の図書館, 32 巻 7 号, p.122, 2013 NACSIS-CAT とは別のシステムとして並存 連携 27
ERDB 28 第 14 回図書館総合展フォーラム 日本のナレッジベース構築に向けて 電子リソース管理データベース (ERDB) プロジェクトの現状と将来展望について 資料より http://www.nii.ac.jp/content/event/libraryfair/2012.html#erdb
その他の参考文献 渡邊隆弘 図書館目録をめぐる動向 :2007~2012 http://www.tezuka-gu.ac.jp/public/libsci/kaken2010.html NDL 書誌情報ニュースレター http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bib_newsletter/index.html NACSIS-CAT/ILL 参加館状況調査アンケート結果報告書 (NII) http://www.nii.ac.jp/cat-ill/about/project/enq2011/ 電子的学術情報資源を中心とする新たな基盤構築に向けた構想 (NII) http://www.nii.ac.jp/content/archive/pdf/content_report_h23_with_glossary.pdf 宇陀則彦 ディスカバリーサービスに関する少し長いつぶやき 情報処理学会研究報告. 情報学基礎研究会報告 2012-IFAT-108(3), 1-4, 2012-09-18 http://ci.nii.ac.jp/naid/11000945568 29