心と脳 中村國則 心はどこにある? 古代エジプトでは心臓 バビロニアでは肝臓 古代ギリシアのプラトンは脳, アリストテレスは心臓 近代ではデカルトが脳 心の働き : やっぱり脳? 心の機能の多くは, やっぱり脳が重要な役割を果たしている 脳の特定の部位の損傷が, 特定の心的機能の損傷にもつながる 脳画像測定技術の発展により, 脳と認知機能の関連の検討が進む 侵襲的方法 まさしく脳を侵襲する= 中を直接開けてみる 患者の脳を死後にあける 手術中に調べる 脳画像測定 非侵襲的方法 : 脳画像方法等, 頭を空けないで脳の活動を調べる方法 何か認知的な課題をやらせ, 脳のどこが活性化しているかを調べる いろいろあります MEG (Magneto encephalogr aph) : 磁気を利用して脳画像を測定 MRI 実際の脳画像 NIRS:The Near InfraRed Spectrometer : 近赤外光というものを当てて血流を見て脳の状態を測る 1
fmri の測定風景 脳を スライス した写真 脳の基本構造 微視的 : ニューロンと呼ばれる神経細胞が集まって出来ている ネットワーク構造 大まかにみると, 様々な部位に分ける事ができる, それぞれの部位で担っている機能が異なっている 脳の機能局在 ニューロン (Neuron) : 脳を構成する神経細胞 脳は,neuronと呼ばれる神経細胞が集まって出来ている, 塊というよりネットワークとして理解できる 数 : 成人男性の脳の中には100 億から140 億個ほど 個々の神経細胞ではなく, 細胞群全体の活性化のパターンで表現? ニューロンの仕組み 2
脳の機能局在 様々な場所が 独自の役割を果たしているようにみえる 機能が様々なところに存在している 機能局在 大脳皮質の各部位の機能 頭頂連合野 : どこに を扱う, 空間の把握 側頭連合野 : 何を を扱う, 物体等の把握 前頭連合野 : 一時的に情報を保存する, 行動計画の立案, 行動抑制 視覚連合野, 運動野, 運動前野 : その名もずばり 脳梁 : 脳の中の太い神経右脳と左脳の情報伝達を行なう 脳の大まかな部位と名前 脳梁の位置 頭頂連合野 後頭葉の前方 背側で体性感覚野の後方の領域 Where に関する知識 外界へのアクションに関与 脳の大まかな部位と名前 3
側頭連合野 脳の大まかな部位と名前 後頭葉の前方, 腹側の領域 上は聴覚認知, 下は視覚認知, 形態視覚 What に関する知識を扱うといわれている What の中身によって活性化する部位が違う? 例 : 家具と動物 視覚連合野 その名のとおり, 見ることに関連した部位 脳の大まかな部位と名前 脳の大まかな部位と名前 4
前頭連合野 思考 推論に関連した部位 一時的に情報を保存? 作業記憶に関連するといわれている 脳画像を測定すると, 殆どの場合光るらしい さらに中へ : 系統発生的には古い 偏桃核 (Amygdala): 感情をつかさどる? 小脳 : 筋緊張 身体の平衡 協調運動に関与, ここがやられると体のバランスなどが崩れる 分離脳 左脳と右脳の情報は, 脳梁を介して伝達 特に視覚 : 目の左側で見た情報は右脳で, 目の右側で見た情報は左脳で処理される 脳梁を切断された患者は, 右側に出たものは言葉に出せるが左側に出たものは言葉に出せない こんな顔を見せられても 5
脳と感情 特定の部位が様々な感情の働きと関係をもつ, そこが損傷すると感情がないかのようになってしまう 表情から感情を読み取る, 自分の表情がそうであるかのような脳の反応もあり Somatic Marker 仮説 Phineas Gage 19 世紀末のアメリカの炭鉱労働者 優秀なリーダー, 人望も厚く, 有能 ある時事故によって鉄パイプが頭に突き刺さる, しかし幸運にも一命を取り留める しかし, 人間がすっかり変わってしまう : きまぐれで 非礼で 下品になる 辛抱強さを失い頑固になる 反面, 移り気で優柔不断 将来の行動のプランもきちんと決めることができなくなる Somatic Marker 仮説 Damasio:Gageの骨と標準的な脳のMRI 画像とを重ね合わせる Gage は前頭葉の眼窩面 ( 前頭眼窩回 ) と前頭葉の先端部 ( 前頭極 ) を損傷? この部分が, 人間の意思決定に重要な役割を果たしている? Damasio, A Phineas Gage の損傷部位 Somatic Marker 仮説 情動, 動機づけには常に身体的, 内臓系の反応が付随する Somatic response 前頭葉腹内側部 : 外的な刺激とそれに伴う情動, 動機づけを連合する場所? 連合が成立している場合, 腹内側部でその連合に基づいたソマティック反応を身体, 内臓系に生じさせる信号が出る, その信号は 良い あるいは 悪い という価値を有する, その価値に従って意思決定を下す ギャンブル課題 Bechara et al (1994) で考案 2 種類の賭け,1つは当たると利益が大きいけど全体的には損をする, もう 1 つは利益は小さいけど全体的には得をする 前頭葉腹内側部が損傷した人は前者のか賭けに固執する, 普通の人はちゃんと前者が損である事を学ぶ 6
共感する脳 (empathic brain) 他人の表情を見ると, 自分の表情を動かしているときと同じような部位が活性化する 人の心は, 他人と共感できるように出来ている? 脳のシステムは, 他人の感情とシンクロできるように出来ている? 7
Mirror Neuron 他人の振る舞いに反応する神経細胞 サルで発見 人間でもある Mirror neuron の場所 Mirror neuron の実験 心の理論 (Theory of Mind) 相手の心の内容が推測できれば その動物あるいはヒトは 心の理論 を持つ (Premack, 1978) 相手の心の内容 : 何をするつもりなのか 何を知っているのか 何を考えているのか るか 何を推測しているのか 何が好きなのか 4 才くらいになると出来るようになる 生得的なものが影響しているといわれている 当然入れ替えられた事を知らない 心の理論で用いる課題の説明 心の理論にも 心の理論課題をやらせるときに機能していると思われる場所 独特の神経的基盤を持つ : 自閉症児には心の理論がないといわれる, 自閉症は先天性の脳の機能障害 脳画像をとると一貫して同じ所が光る だいたい頭の後ろの方? 8
集団の大きさ脳の進化 人間の脳は長い時間をかけて作られた 新しい機能を足す形で進化 脳幹 小脳 大脳 人間は大脳がよく発達している 脳の容量は大きくなってきている 人間はこの辺 新皮質の大きさ 9
神経経済学 (neuroeconomics) 心と脳番外編 ~ 神経経済学 ~ 神経の働き 脳活動から人間の経済活動を探る 不確実な意思決定を考えるとき, 脳は何をしているか? ゲーム理論的な相手の出方を伺っている時, 脳は何をしているか? 不確実性を考える脳 曖昧さを考える時とリスクを考える時で脳の働きが違う 曖昧さ : そもそもどの程度の確率か分からない リスク : 絶対ではないが, 確率自体は分かっている 確率的な意思決定を行う問題, 知識を問う問題, 他者の行動を予測する問題, などを用いて曖昧さとリスクを区別 実験で用いられた課題 :3 種類の課題いずれも, 上側が曖昧さ ( そもそもどのような状態か分からない ), 下側がリスク ( 絶対ではないが, 少なくともどのような状態かは分かる ) を表す課題 曖昧さとリスクの場合では線条体 (Striatum) の活性度も違う, また課題によって光る場所も異なる 10
予期された利益と得られた利益 課題に回答することによって利益を得るか損失を避けるかすることが出来る 回答した後, 結果がフィードバックされ, 利益を得ることが出来たか, 損失を避けることが出来たかがわかる やっぱり違うところが活性化する 相手の出方を読む脳 戦略的思考 : 相手がどうするかを考えた上で自分がどうするかを決める ゲーム理論 : 合理的な意思決定者同士の決定がどこに落ち着くか (= 均衡 ) を定義 均衡を考えるには, 相手の出方を伺わなければならない そのとき脳は何をしているか ゲーム理論 相互依存関係にある行動主体の意思決定を数学的にモデル化する理論的枠組み 基本的な概念 プレイヤー : ゲームで意思決定する主体 戦略 : ゲームをプレイするための行動計画 例 : ジャンケンのグー, チョキ, パー 利得 : ある行動に伴う結果を数値化したもの ゲーム状況 基本的な仮定 ( 岡田,2008 より ) B さん A さん 行動 1 行動 2 行動 1 10 5 行動 2 8 6 15 41 45 0 合理的な人間である ある明確な目標を持っていて, それを出来る限り実現しようとする, 目標志向的である 理性的な人間である もし自分が相手の立場だったらこうするだろう と思いをめぐらし, 相手の立場に立って物事を考えることのできる想像力がある 11
色々な話題が本当はあります さまざまな戦略 ミニマックス戦略 純粋戦略と混合戦略 ゲームの分類 ゼロ和 非ゼロ和 協力 非協力 展開系と正規系 完全情報 不完全情報 : 自分の展開の歴史 及び今どのような位置にいるかを知っている 完備情報 不完備情報 : お互いがお互いの利得を知っているかどうか 岡田章 (2008) ゲーム理論入門有斐閣アルマ 自分の利得 相手の利得 最後通牒ゲーム (Ultimatum Game) (1) Werner Guth が考案 Guth, Schmittberger, Schwarze (1982) 社会的意思決定 実験経済学の方面で盛んに用いられている課題 W. Guth 最後通牒ゲーム (Ultimatum Game) (2) 2 人の人が, 財を分け合う 役割分担がある 1. 財の配分を決める人 2. その配分を受け入れるかを決める人 配分を決める人はどんな配分にしてもいい, 受け入れる人はその配分が気に入らなければ拒否できる, その場合 2 人とも一円ももらえない この状況で, 自分が配分を決める時 と 受け入れるかどうかを決める時 で質問する 1 万円をどう配分する? 僕は9000 円, 君どうしょうかな? は1000 円でどう 9000 円貰おうかな? 蹴だい? ろうかな? 1000 円 配分者 0 円 ここで受け入れると ここで拒否すると 受け入れ側 0 円 12
どのようにすればいい? 配分を決める側 :1 円以上相手に与えればよい 相手からすると受け入れるか0 円だから,1 円でも与えられていれば受け入れることが優越選択肢になる 受け入れる側 :1 円以上であれば受け入れた方がいい, 明らかに0 円より優越しているから 1 円与えれば OK 提案者 : 相手からすると 1 円でも与えられていれば受け入れることが優越選択肢, だから 1 円与えればよし 受け入れ者 : 拒否すれば 0 円,1 円さえ貰えれば優越しているから 1 円以上であれば受け入れる 貰った方が得 提案者 X(x>1) 円与える 1 円も与えない 受け入れ者受け入れる ( 全額 -x) 全額貰う円 0 円 X 円受け入れない 0 円 0 円 0 円 0 円合理的な提案者であるならば,1 円 ( あるいは最低単位 ) の配分を相手に与え, 合理的な受け入れ者であるならば1 円以上与えられれば受け入れる ところが, 実際の人間は? 利己的な配分をしない 配分する側 : なるべく公平な分配をしようとする 受け入れる側 : 公平でない分配を拒否しようとする 人間は, 公平性を重視する 寡きを患えず, 均しからずを患う 罰を与える脳 最後通牒ゲームで相手が公平な配分をしなかったときに選択的に活性化する脳の部位がある 13