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研究成果報告書

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様式 F-19 科学研究費助成事業 ( 学術研究助成基金助成金 ) 研究成果報告書 平成 25 年 4 月 30 日現在 機関番号 :14401 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :2011~2012 課題番号 :23760749 研究課題名 ( 和文 ) ヒト ips 細胞の未分化維持するための培養面の設計および新規増幅培養プロセス開発研究課題名 ( 英文 ) Culture surface design for maintaining undifferentiated hipscs and development of its expansion culture process 研究代表者金美海 (KIM MEE-HAE) 大阪大学 大学院工学研究科 助教研究者番号 :30506449 研究成果の概要 ( 和文 ): ヒト人工多能性幹細胞 ( ヒト ips 細胞 ) を用いた再生医療や創薬などの産業的利用に向けた, 良質な ips 細胞を安定して提供するためには, 未分化維持培養方法としての培養環境の改良や評価手法の確立が不可欠である. そこで本研究では,iPS 細胞培養における未分化状態からの逸脱現象を解明し, 細胞未分化維持における間接着結合と細胞基質間接着結合のバランス制御を検討した. また, 足場 ( 培養面 ) 設計として, デンドリマー培養面を設計し, フィーダー培養下での ips 細胞に対する細胞遊走と未分化維持コロニー形成の関係, さらには, フィーダーレス培養下の ips 細胞の未分化維持への応用を示した. 研究成果の概要 ( 英文 ): Understanding fundamental mechanisms that govern cell fate determination of human induced pluripotent stem cells (hipscs) provides key strategies to maintain their undifferentiated state during cell expansion. hipscs have been extensively applied in industrial and clinical applications. The culture technique for maintenance of hipscs is not sophisticated owing to extremely high cost and tedious labor, leading to developing issues for the culture environment. In this study, we focused on the transformation of hipscs from undifferentiated state to the deviated state in their colonies during the cultures with feeder cells. In addition, we proposed dendrimer-immobilized surfaces designed dealing with the expansion processes of undifferentiated hipscs during the cultures with feeder cells and without feeder cells. These studies provide a novel approach for expansion of hipscs using synthetic surface as a substrate. 交付決定額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 交付決定額 3,400,000 1,020,000 4,420,000 研究分野 : 工学科研費の分科 細目 : 生物機能 バイオプロセスキーワード : バイオ生産プロセス, 再生医療, ヒト ips 細胞, 未分化維持 1. 研究開始当初の背景ヒト人工多能性幹細胞 ( ヒト ips 細胞 ) は,4 つの転写因子 (Oct4,Sox2,c-Myc, Klf4) によって, ヒト体細胞を ES 細胞の主要な特徴を示す多能性幹細胞へと初期化できることが示されたことから, このようなヒト ips 細胞は移植医療への応用のみならず, 新たな疾患モデルの創出や薬剤の開発にお いてその有用性が期待されている. これまでヒトの ips 細胞の培養には, 未分化を維持しつつ細胞数の増加を目指した培養いわゆる継代培養 ( 増幅培養 ) に対し, 培地や基質の開発が行われてきた. しかし, 未分化状態の維持機構については不明な点が多いため, 未分化状態を良好に維持した培養手法の構築が望まれている. ヒト ips 細胞培養において,

未分化状態から必然的または偶発的に分化 が引き起こされる 未分化状態からの逸脱 の現象は 継代培養中に放置すると 逸脱し た細胞 からなるコロニーが多く なり未分化維持が困難となる その結果 未 分化維持には 熟練した操作者の丁寧な培養 ならび継代時のコロニーの選別という煩雑 な操作が必要になるため 細胞培養方法の確 立は ヒトの ips 細胞の実用化にむけ急務の 課題である これまで 我々が考案したグルコース提示 型デンドリマー面では デンドリマーの世代 数による細胞形態の変化を促すことにより 分化 未分化制御の可能性が示唆された 本 培養面上で種々の細胞を培養したところ 細 胞の遊走や骨格を制御し 細胞の足場タンパ クの発現を変化させることを確認した そこで本研究では ヒト ips 細胞の未分化 維持のためのデンドリマー培養面設計およ び新規増幅培養プロセス開発を検討した 2 研究の目的 本研究開発の目標は 1 細胞組織工学に おける基盤技術として ヒト ips 細胞の骨格 形成変化を伴う足場タンパクの制御が可能 な培養面を開発し さらにそれらの技術を用 いて 2 細胞増幅 集積プロセスを確立 するものである 具体的には フィーダー培 養とフィーダー レス 分散培養でデンドリマ ー培養面を用いヒト ips 細胞の未分化維持を 検討する 特に フィーダーレス分散培養に ついては 単一細胞の状態でヒト ips 細胞の 未分化維持培養が実現できる実用的かつ有 効な培養システムの開発を目指す 本研究に おける成果を大きく発展させれば いつでも 幹細胞を安全に供給するシステムが確立さ れる 3 研究の方法 ヒト ips 細胞を用い グルコース提示型デ ンドリマー培養面 世代数を 1 3 5 G1 G3 G5 と略称 にて ReproStem 培地およ び SNL フィーダー細胞を用い培養を行った さらに 対照として ゼラチンをコートした 培養面を用いてヒト ips 細胞のコロニー形成 を評価した 本培養面上で二つのヒト ips 細 胞 Tic 株 201B7 株 の 10 継代培養を行 い 未分化マーカーや初期分化マーカーの蛍 光染色や遺伝子解析により未分化 分化状態 を評価した また デンドリマー面を用いたフィーダー レス分散培養におけるヒト ips 細胞培養は ヒト ips 細胞 Tic 株 と G1 面を用いた ヒト ips 細胞の接種の際に Rho 関連キナー ゼ ROCK 阻害剤を含む mtesr1 培地を用 いで分散培養を行った 対照として 市販の フィーダー レス 培養面 Synthemax 培養 面 Synth と略称 を用いた 5 日間培養し た細胞は western blot 解析と遺伝子解析によ り未分化能を検討した 4 研究成果 1 ヒト ips 細胞培養における未分化逸脱 現象の解明 ヒト ips 細胞の未分化維持培養は 分裂能 を欠如させたマウス胎児組織由来細胞を支 持細胞 フィーダー細胞 とした共培養に より行われている フィーダー細胞は 細胞 成長因子や細胞外マトリックスを産生する が フィーダー細胞によって ips 細胞の増 殖速度や未分化逸脱傾向が異なり 未分化状 態維持に重要である ips 細胞の未分化維持の継代培養は 図 1 に示すように SNL フィーダーの培養におい て 未分化を逸脱した細胞がコロニー中心部 において発生することが知られている 発生 メカニズムは コロニーが大きくなると必然 的に逸脱現象が生じており 中心部分で圧迫 された細胞が一部培養面から剥離すること で 細胞 基質間接着の劣化し アポトーシ スが引き起こされたと考えられる その後 E-カドヘリンを介した細胞 細胞間接着の 崩壊によりが発生し 活発に自己増 幅することで がコロニー内で優勢 となることが観察されている 一方 MEF フィーダー上では ips 細胞の遊走が活発と なり コロニー中心部分での逸脱現象が見ら SNLフィーダー 1 mm Center アポトーシス Periphery E-カドヘリン インテグリン MEFフィーダー 1 mm Center Periphery E-カドヘリン インテグリン 図 1 フィーダー上でのヒト ips 細胞の未分 化状態からの逸脱現象

れないが 周辺部において E-カドヘリン を介した細胞 細胞間接着が崩壊し 脱未分 化細胞が偶発的に発生している現象が見ら れる 以上より 異なるフィーダー上でのヒ ト ips 細胞の遊走反応の違いがコロニー中心 部または周辺部で脱分化細胞を発生させる ことが予想される 2 デンドリマー培養面を用いたフィーダ ー培養下のヒト ips 細胞の未分化維持 これまで デンドリマー培養面にて幹細胞 の形態ならびに遊走挙動を制御することに より Rho ファミリー低分子量 G タンパクの 発現パターンを変化させ 内在的分化シグナ ルを導き出す新規な分化誘導技術として提 案してきた 本研究でのカチオン性ポリアミ ドアミンデンドリマー面の作成は 骨格部と して OH 基の提示 グルタルアルデヒドに よる鎖状構築 トリス(2-アミノメチル)アミ ンによる分枝構築の繰り返しにより デンド ロン 樹状構造 を形成した さらに リガ ンド部ではデンドロンの末端に D-グルコー スを架橋することで グルコース提示型デン ドリマー面を作製した グルコース提示型デンドリマー面におけ 細胞間接着結合 細胞基質間接着結合 G1面 るデンドリマー世代数およびリガンド提示 密度などの知見を基に ヒト ips 細胞の遊走 性の制御を可能とすることが示唆され 未分 化維持培養へ適用した 図 2 に示すように G1 面と G3 面上で SNL フィーダーを伴った ips 細胞を培養したところ 世代数の増加と ともに ips 細胞の遊走性が高くなり G3 面 では 細胞間の接着の崩壊が見られ 未分化 を逸脱した細胞が多く見られた 一方 G1 面では 細胞 培養表面間の接着力と細胞 細胞間接着力が良く E-カドヘリンが強く発 現し Oct3/4 陽性の細胞であった そこで デンドリマー培養面上で培養した ヒト ips 細胞が長期間未分化維持かどうかを 評価するため ヒト ips 細胞を 10 継代にわ たって培養した G1 面では ゼラチン面上 でのと同様に細胞質が小さな丸 い核をもつ小細胞が密集したコロニーを形 成し 輪郭が際立つことが確認された これ らの ips 細胞は 10 継代後もヒト ips 細胞 のの表見型マーカー Oct3/4 Nanog SSEA4 Tra1-60 を保持している ことが免疫蛍光染色により確認された さら に 図 3 に示すように 初期分化マーカー遺 伝子では陰性を示したが 未分化維持マーカ ー遺伝子の発現維持が見られ と して維持できることが示された 以上 ヒト ips 細胞を安定に未分化の状態 を保ったまま長期間の培養が可能となり 本 培養面はヒト ips 細胞の未分化維持基材とし て有効であることがわかった なお 他種の ヒト ips 細胞株にも同様の結果が得られたこ とから 本培養面は天然物のゼラチン面の代 替合成物となることが示された Tic 400 µm NP 1 NP10 201B7 NP 1 NP10 細胞遊走 Oct3/4 Pluripotency Nanog TE CGB7 SOX2 G3面 Ectoderm SOX1 NEUROD1 MESP1 Mesoderm T gene EOMES GATA4 Endoderm GATA6 SOX17 400 µm GAPDH アポトーシス 図 2 細胞遊走性制御によるヒト ips 細胞の 未分化維持とそのシグナル伝達経路 図 3 デンドリマー面を用いた継代培養にお けるヒト ips 細胞の未分化維持 10 継代培養 した ips 細胞の未分化と内胚葉 中胚葉 外 胚葉への分化を示すマーカー遺伝子発現解 析

(3) デンドリマー培養面を用いたフィーダーレス培養下のヒト ips 細胞の未分化維持デンドリマー面を用いたヒト ips 細胞の培養をフィーダーレス分散培養下で行った. 図 4 に示すように, 培養 5 日目のヒト ips 細胞を培養したところデンドリマー面では Synthemax 培養面と比べ半球状の細胞集塊が形成されることが確認された. これらの培養 5 日目のヒト ips 細胞をタンパク発現や遺伝子解析による未分化指標マーカー発現を評価したところ,G1 面上での細胞集塊内では市販の無フィーダー培養面と同様に, ヒト ips 細胞の未分化マーカーである E-cadherin, Oct3/4, Nanog, SOX2 陽性であることが確認された ( 図 5). 以上の結果から, デンドリマー面はヒト ips 細胞培養のための基材として有望であることが示唆された. G1 Synthemax 200µm 図 4. デンドリマー面上でフィーダーレス分散培養したヒト ips 細胞の形態. A E-cadherin B GAPDH Pluripotency 5. 主な発表論文等 Oct3/4 Nanog SOX2 Day5 図 5. デンドリマー面上でフィーダーレス分散培養した hips 細胞の未分化維持.(A) E-cadherin 発現の western blot 解析と (B) 未分化維持を示すマーカーの遺伝子解析. 学会発表 ( 計 12 件 ) 1. Mee-Hae Kim, and Masahiro Kino-oka, Maintenance of human ips cells on dendrimer surface with D-glucose-displaying, International Society for Stem Cell Research 9th Annual Meeting, Toronto, 2011.6.15-18, Poster presentation 2. 金美海, 紀ノ岡正博, 幹細胞の形態制御に基づく内在的文化方向性の制御, 化学工学会第 43 回秋季大会, 名古屋, 2011.9.14-16, ポスター発表 3. 増田英里, 金美海, 紀ノ岡正博, ヒト ips 細胞のコロニー内におけると分化細胞の挙動解析, 平成 23 年度日本生物工学会大会, 東京, 2011.9.26-28, 口頭発表 4. 金美海, 紀ノ岡正博, デンドリマー培養面を用いたヒト ips 細胞の未分化維持, 化学工学会第 77 年会, 東京, 2012.3.15-17, 口頭発表 5. Mee-Hae Kim, Masahiro Kino-oka, Coordination of cell-cell adhesion and migration by the Rho family GTPases is required for maintaining, International Society for Stem Cell Research 10th Annual Meeting, Yokohama, 2012.6.13-16, Poster presentation 6. Mee-Hae Kim,Eri Masuda, Masahiro Kino-oka, Characterization of De-undifferentiation phenomenon in colony of human induced pluripotent stem cells based on kinetic analysis of specific growth rate, International Society for Stem Cell Research 10th Annual Meeting, Yokohama, 2012.6.13-16, Poster presentation 7. Mee-Hae Kim and Masahiro Kino-oka, Culture surface design for regulating morphology and function of stem cells, The 2nd International Symposium of Materials on Regenerative Medicine, Taipei, Taiwan, 2012.8.29-31, Oral presentation 8. Masahiro Kino-oka and Mee-Hae Kim, Surface design for maintenance of ips cells, The 2nd International Symposium of Materials on Regenerative Medicine, Taipei, Taiwan, 2012.8.29-31, Oral presentation 9. 野澤裕太, 増田英里, 金美海, 紀ノ岡正博, ヒト ips 細胞培養における脱未分化現象の速度論的解析, 創立 90 周年記念第 64 回日本生物工学会大会, 神戸, 2012.10.23-26, 口頭発表 10. 紀ノ岡正博, 金美海, 幹細胞の未分化維持 分化誘導を目指したデンドリマー培養面の開発, 日本バイオマテリアル学会シンポジウム 2012, 神戸, 2012.11.26-27 口頭発表 11. Masahiro Kino-oka, Mee-Hae Kim, Surface design for stem cell cultures to

regulate the undifferentiated and differentiated states, The 25th Annual and International Meeting of the Japanese Association for Animal Cell Technology, Nagoya, 2012.11.27-30, Oral presentation 12. 金美海, 紀ノ岡正博, グルコース提示型デンドリマー面を用いたヒト ips 細胞の未分化維持可能な無フィーダー培養, 第 12 回日本再生医療学会総会, 横浜, 2013.3.21-23, ポスター発表 図書 ( 計 1 件 ) 1. 金美海, 紀ノ岡正博, 培養面を利用した細胞骨格の制御と分化誘導, 医学のあゆみ,Vol. 233, No. 13. pp.1176-1180 (2011). 6. 研究組織 (1) 研究代表者金美海 (KIM MEE-HAE) 大阪大学 大学院工学研究科 助教研究者番号 :30506449