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平成24年12月10日

ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

25 岡山農総セ畜研報 4: 25 ~ 29 (2014) イネ WCS を主体とした乾乳期飼料の給与が分娩前後の乳牛に与える影響 水上智秋 長尾伸一郎 Effects of feeding rice whole crop silage during the dry period which exp

Ⅰ 収穫量及び作柄概況 - 7 -

あなたの農場に、妊娠牛は何頭いますか?

ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

報告書

平成 29 年 7 月 地域別木質チップ市場価格 ( 平成 29 年 4 月時点 ) 北東北 -2.7~ ~1.7 南東北 -0.8~ ~ ~1.0 変動なし 北関東 1.0~ ~ ~1.8 変化なし 中関東 6.5~ ~2.8

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国産粗飼料増産対策事業実施要綱 16 生畜第 4388 号平成 17 年 4 月 1 日農林水産事務次官依命通知 改正 平成 18 年 4 月 5 日 17 生畜第 3156 号 改正 平成 20 年 4 月 1 日 19 生畜第 2447 号 改正 平成 21 年 4 月 1 日 20 生畜第 1

酪農 TOPICS 全酪連酪農セミナー 2013 開催される! 全酪連は 平成 25 年 5 月にコーネル大学畜産学部教授マイク ヴァンアンバーグ博士を招聘し 全酪連酪農セミナー 2013 を札幌 福島 神戸 熊本の全国 会場にて開催致しました 酪農家をはじめ 会員職員 公的機関研究

徳島県畜試研報 No.14(2015) 乾乳後期における硫酸マグネシウム添加による飼料 DCAD 調整が血液性状と乳生産に及ぼす影響 田渕雅彦 竹縄徹也 西村公寿 北田寛治 森川繁樹 笠井裕明 要 約 乳牛の分娩前後の管理は産後の生産性に影響を及ぼすとされるが, 疾病が多発しやすい時期である この時

p1_10月月報用グラフ

原料情勢 平成 24 年 月の配合飼料の価格改定と原料情勢について ( 平成 24 年 9 月 21 日発表 ) 主原料 主原料である米国産トウモロコシは 9 月 12 日米国農務省の需給予想において 2012 年産の生産量は 107 億 2,700 万ブッシェル (2 億 7,248

Microsoft Word - H26技術資料・輸入乾草の品質・全編原稿

週刊穀物190123 2月は穀物の買い時 .xlsb

参考1中酪(H23.11)

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報告書

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酪農 TOPICS 全酪連酪農セミナー 2018 が開催されました! 講演するフィル カルドーソ博士 ( 東京会場 ) 全酪連は 平成 30 年 2 月にイリノイ大学畜産学部助教授のフィル C カルドーソ博士を招聘し 全酪連酪農セミナー 2018 を帯広 仙台 東京 名古屋 岡山

Milk quality and animal health

島根畜技セ研報 44:1~5(2016) 乳牛の低カルシウム血症予防のためのイネ発酵粗飼料における DCAD 調整手法の検討 1) 安田康明松浦真紀岩成文子 布野秀忠 要約飼料用イネのイオンバランスに着目し 無機成分および DCAD から陰イオン性について分析評価した 結果は 品種として リーフスタ

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報告書

3 特集夏場の乳成分維持顧みて 広酪では二〇十四年三月に みわ 庄原両TMRセンター を統合し老朽化した施設を整備して新生 みわTMRセンター を操業しました この施設では 広酪において初めて飼料用稲WCSを原料に用い 良質で一円でも安いTMR飼料の供給を通じて 酪農家の利益向上への貢献を目的に 年

コントラクター及びTMRセンターの現状

アジア近隣 5 カ国における牛乳乳製品の輸入動向 資料 5-2 各国とも輸入額全体に占める脱脂粉乳及び全脂粉乳の割合が高い 高付加価値商品の販売が見込めるチーズ 育児用粉乳等についても各国で一定の割合を輸入 中国の輸入市場は規模が大きく 最近伸びているが割合の小さい LL 牛乳 (2.6%) 市場で


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新年のごあいさつ 全国酪農業協同組合連合会購買部長 梅岡正人 全国の酪農家並びに会員役職員の皆様 あけましておめで とうございます 日頃より弊会購買 畜産事業に特段のご理解 ご支援を賜り厚くお礼申し上げます 平成 27 年の年頭にあたりまして 一言ご挨拶申し上げます 昨年の酪農環境は 畜産統計から見

平成18年度「普及に移す技術」策定に当たって

(1) 乳脂肪と乳糖の生成反芻動物である乳牛にとって最も重要なのはしっかりしたルーメンマットを形成することです そのためには 粗飼料 ( 繊維 ) を充分に与えることが重要です また 充分なルーメンマットが形成され微生物が活発に活躍するには 充分な濃厚飼料 ( でんぷん 糖 ) によりエネルギーを微

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1. 調査の目的 物価モニター調査の概要 原油価格や為替レートなどの動向が生活関連物資等の価格に及ぼす影響 物価動向についての意識等を正確 迅速に把握し 消費者等へタイムリーな情報提供を行う ( 参考 )URL:

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

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ニュースリリース 農業景況 : 景況 平成 27 年 3 月 26 日 株式会社日本政策金融公庫 農業の景況 DI 稲作をはじめ多くの業種で悪化 ~ 改善したのは養豚 ブロイラーなどの一部の業種に留まる ~ < 日本公庫 平成 26 年下半期農業景況調査 > 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫

報告書

H24/08/00

社団法人日本生産技能労務協会

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第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

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乳牛用の飼料給与診断ソフトウエア「DAIRY ver4.1」は乳牛の飼料給与診断・設計に

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保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用


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(2) 牛群として利活用 MUNを利用することで 牛群全体の飼料設計を検討することができます ( 図 2) 上述したようにMUN は 乳蛋白質率と大きな関係があるため 一般に乳蛋白質率とあわせて利用します ただし MUNは地域の粗飼料基盤によって大きく変化します 例えば グラスサイレージとトウモコシ

<2014年の花粉飛散傾向発表。2月上旬から花粉シーズン到来、対策は1月から>

RTE月次レポート企画

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第 79 回 2017 年 5 月投資家アンケート調査結果 アンケート調査にご協力下さりました皆様 今年 5 月に実施致しましたアンケート調査にご回答下さり誠にありがとうございます このたび調査結果をまとめましたのでお送りさせていただきます ご笑覧賜れましたら幸 いです 今後もアンケート調査にご協力

第1章

2015 1,200 A B J 一般社団法人 J ミルク牛乳乳製品の知識改訂版 001

分析にあたり 血統情報については 導入市場が 北海道 東北および九州と離れ 繁殖牛の母集団の血統情報に大きな差異が予測されるため 種雄牛のみを取り入れることとした ただし 遺伝的要因として取り上げた種雄牛に関して 後代産子牛が 2 頭以下の種雄牛については 本分析からは除外した すなわち 血液成分お

ビール系飲料の輸入

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

中酪情報_表紙01月号01

42

RTE月次レポート企画

IR 活動の実施状況 IR 活動を実施している企業は 96.6% 全回答企業 1,029 社のうち IR 活動を 実施している と回答した企業は 994 社 ( 全体の 96.6%) であり 4 年連続で実施比率は 95% を超えた IR 活動の体制 IR 専任者がいる企業は約 76% 専任者数は平

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

平成10年7月8日

毎回紙と電卓で計算するより パソコンの表計算ソフトを利用して計算されることをすすめます パソコンは計算と記録が同時にできますから 経営だけでなく飼養管理や繁殖の記録にも利用できます 2) 飼料設計項目ア.DMI TDN CP NFC a.dmi( 乾物摂取量 ) 水分を除いた飼料摂取量のことです 飼

輸入バイオマス燃料の状況 2019 年 10 月 株式会社 FT カーボン 目 次 1. 概要 PKS PKS の輸入動向 年の PKS の輸入動向 PKS の輸入単価 木質ペレット

ぐに花粉の飛散シーズンに入らなかったのは 暖冬の影響で休眠打破が遅れたことが影響していると考えられます ( スギの雄花は寒さを経験することにより 休眠を終えて花粉飛散の準備に入ると言われています ) その後 暖かい日や風が強い日を中心にスギ花粉が多く飛びましたが 3 月中旬には関東を中心に寒い日が続

ニュースリリース 農業景況調査 : 設備投資 平成 2 9 年 3 月 24 日 株式会社日本政策金融公庫 農業者の設備投資意欲が過去最高 ~ 生産効率関連の農業機械投資が最多 後継者確保に課題も ~ < 平成 28 年下半期農業景況調査関連 > ( 注 1) 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公

トラック運送事業の経営実態 全日本トラック協会は全国のトラック運送事業者 2,188 社 ( 有効数 ) の平成 25 年度事業報告書に基づき集計 分析した 経営分析報告書 ( 平成 25 年度決算版 ) をまとめた 全日本トラック協会が平成 4 年度から発行しているこの報告書は 会員事業者が自社の

Invesco Premia Plus Fund

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ニュースリリース 食品産業動向調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 2 6 日 株式会社日本政策金融公庫 食品産業景況 DI 4 半期連続でマイナス値 経常利益の悪化続く ~ 31 年上半期見通しはマイナス幅縮小 持ち直しの動き ~ < 食品産業動向調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日

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千葉県 高品質サツマイモの安定供給による産地の強化 活動期間 : 平成 24 年度 ~ 継続中 1. 取組の背景千葉県の北総台地に位置する印旛 香取地域ではサツマイモ生産が盛んであり 当事務所では香取農業事務所と広域連携して サツマイモを中心とした露地野菜産地の振興を図っています 管内では 成田市東

RTE月次レポート企画

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1 食に関する志向 健康志向が調査開始以来最高 特に7 歳代の上昇顕著 消費者の健康志向は46.3% で 食に対する健康意識の高まりを示す結果となった 前回調査で反転上昇した食費を節約する経済性志向は 依然厳しい雇用環境等を背景に 今回調査でも39.3% と前回調査並みの高い水準となった 年代別にみ

1 アライグマの 分布と被害対策 1 アライグマの分布 1977 昭和52 年にアライグマと少年のふれあいを題材とし たテレビアニメが全国ネットで放映されヒット作となった それ 以降 アライグマをペットとして飼いたいという需要が高まり海 外から大量に輸入された しかしアライグマは気性が荒く 成長 す

農研機構畜産草地研究所シンポジウム|世界的なルーメンバイパスアミノ酸の利用

週刊穀物170614 Crop Progress 6月の需給報告(米国内)

2 麦類 ( 子実用 ) (1) 4 麦計平成 24 4 麦の作付面積 ( 子実用 ) は26 万 9,5haで 前に比べて2,2ha(1%) 減少した ( 表 8) 麦種別には 二条大麦は前に比べて7ha(2%) 増加したものの 小麦 六条大麦及びはだか麦は前に比べてそれぞれ2,3ha(1%) 3

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Farmer's Eye WINTER

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031010 乳牛疾病の早期発見応急処置予防対策 酪総研

Transcription:

No.148 2018 夏季 カウ ベル全酪連購買事業情報紙 トピックスフォスターテクニック社と技術提携!! 第 4 回広島大学酪農技術セミナーのご案内 世界一受けたい酪農講座 牛群の暑熱ストレスを管理するラリー E チェイス技術顧問 大場真人の技術レポート 分娩前の飼料設計での Ca 濃度と DCAD パルミチン酸の給与効果 原料情勢 / 粗飼料情勢

酪農 TOPICS 2018.4-6 全酪連とドイツフォスターテクニック社 技術提携!! 現在までに日本には 4,000 台以上の自動哺乳機が 導入されているといわれ 自動哺乳機市場において は フォスターテクニック社の自動哺乳機は全世界の 80% 以上を占めるといわれています しかし 自動哺 乳機システムの導入にあたっては 代用乳および子牛 の栄養 行動学的側面からのより現場に即した技術が 必要です smart FIT TECHNOLOGY そこで この度全酪連とフォスターテクニック社は 自動哺乳機を使ったより適正な子牛の飼養管理技術を 普及するべく 技術提携の契約を取り交わしました 同 社は 一連の技術体系を スマート フィット システ ム と命名し 全酪連の提唱する強化哺育体系と併せ て構築し 全酪連も自動哺乳機に最適な代用乳製品群 を持って 更なる技術普及を図って参ります 今後 フォ スターテクニック社との協力体制の下 まずは 全酪連 の現場スタッフの 教育を行い 次い で全国のロボット 哺乳農場での技術 サービスを提供致 します 是非ご期 待下さい!! ご案内第 4 回広島大学酪農技術セミナーが開催されます! 広島大学酪農技術セミナー 来年に向けて暑熱対策を考える! プログラム基調講演 9:30-10:30 酪農の将来展望 ~ 国際競争力も視野に~ 10:45-11:30 牛舎施設からのアプローチ ( 普及員の視点 ) 暑熱対策 劇的ビフォーアフター 11:30-12:00 ( 事例紹介 ) 全酪連ランチョンセミナー 12:05-13:05 移行期牛の栄養管理 ~DCADコントロール~ 定員 100 名別途昼食費 1,000 円 13:15-14:15 ヒートストレス下での栄養管理 ( 研究者の視点 ) 14:30-15:15 繁殖管理 来年の夏の戦略を考える ( 獣医師の視点 ) 15:15-16:15 乳房炎対策 ( 現場の視点 ) 16:30-17:00 パネルディスカッション 講師 : 渡邉洋一 ( 農林水産省大臣官房国際部長 ) 講師 : 永井秀樹 ( 兵庫県農林水産技術総合センター ) 講師 : 村上聡 ( 熊本らくのうマザーズ ) 講師 : ティム ブラウン ( ランダス協同組合 ) 講師 : 大場真人 ( アルバータ大学 ) 講師 : 鳥羽雄一 ( 知多大動物病院三重分院 ) 講師 : 永井照久 ( 釧路農業協同組合連合会 ) 司会 : 杉野利久 ( 広島大学 ) 日時 2018 年 10 月 1 日月 9:30-17:00 場 所アステールプラザ ( 広島市 ) 中ホール 参加費 ( 資料代 ) 5,000 円 定員 400 名 ( 先着順 ) お申し込み方法 http://www.kntcs.co.jp/ec/2018/rakuno/ よりWeb 申込で受付事前申し込み締め切り 9 月 17 日お問い合わせ広島大学大学院生物圏科学研究科杉野利久 e-mail:sugino@hiroshima-u.ac.jp TEL:082-42-7956 主催 : 広島大学日本型畜産 酪農技術開発センター農林水産省知の集積と活用の場 日本型畜産 酪農研究開発プラットフォーム 共催 : 広島大学大学院生物圏科学研究科協賛 : 広島県酪農協同組合後援 : 全国酪農業協同組合連合会 普及員研修会 酪農徹底討論 ~ 普及員の視点養成講座 ~ 定員 :20 名参加費 :10,000 円日時 :10 月 2 日 ( 火 )~3 日 ( 水 )8:30-17:00 対象 : 経験年数の浅い普及員 若手酪農家 若手獣医師など ( 定員超過の場合は趣旨を考慮し決定 ) ファシリテータ : 村上明弘 中田悦男 ( 全酪連技術顧問 ) 永井秀樹 ( 兵庫県農林水産技術総合センター ) 森本慎思 ( 大分県農林水産部 ) 申込先 : 広島大学大学院生物圏科学研究科杉野利久 (e-mail:sugino@hiroshima-u.ac.jp) 2 COWBELL No.148 夏季号 2018.7

原料情勢 Feed Ingredients 平成 30 年 7 9 月の牛用飼料価格について 主原料 主原料である米国産トウモロコシは 6 月 12 日米国農務省の需給予想において 2018 年産の生産量は 140 億 4,000 万ブッシェル (3 億 5,663 万トン 前年比 96.1%) 単収は 174.0 ブッシェル / エーカー 総需要量 146 億 1,500 万ブッシェル (3 億 7,124 万トン ) 期末在庫 15 億 7,700 万ブッシェル (4,006 万トン ) 在庫率 10.8% と発表されました 米国産トウモロコシは作付面積の減少に伴う減産 南米での高温乾燥気候による減産懸念によりシカゴ相場は堅調に推移していましたが 直近では 米国の天候が生育に良好なことから軟化しています 副原料 大豆粕については 乾燥気候によるアルゼンチンの供給余力の減少 米中の貿易摩擦問題によるブラジルから中国へ大豆輸出量の増加によりブラジル産大豆粕の発生量減少等強含みで推移していましたが 直近ではトウモロコシ同様 米国の良好な天候によりシカゴ大豆粕相場は 軟化しています 脱脂粉乳 脱脂粉乳については オセアニア地域の生乳生産量がピークを過ぎたことから供給余力が減少している状況です ついては 先行きは強含みで推移する見通しです 海上運賃 海上運賃については 活発な石炭需要 南米の穀物需要 原油高による燃料費増加などから堅調に推移しています 外国為替 為替相場は 北朝鮮の地政学リスクは後退しているものの 米国トランプ政権の保護主義的な政策による貿易摩擦問題 欧州の政局不安 米国の金利政策の動向等を受け 方向性の定まらない展開が予想されます 本会が供給する牛用飼料 ( 配合 哺育 ) について 下記のとおり価格を改定することといたしましたのでご案内申し上げます 記 1. 改定額 ( 平成 30 年 4 ~ 6 月期対比 ) (1) 牛用配合飼料トン当たり 1,500 円値上げ ( 全国全銘柄平均 ) (2) 牛用哺育飼料トン当たり据置 ( 全国全銘柄平均 ) ただし 改定額は地域別 品目別 銘柄別に異なります 2. 適用期間平成 30 年 7 月 1 日から平成 30 年 9 月 30 日までの出荷分 3. 安定基金 ( 一社 ) 全国畜産配合飼料価格安定基金からの価格差補塡金の交付につきましては 10 月中下旬頃決定されます なお 発動となった場合 交付日程は従来通りとなります No.148 夏季号 2018.7 COWBELL 3

粗飼料情勢 北米コンテナ船情勢 北米西海岸発アジア向けの航路では 邦船 3 社のコンテナ輸送部門の統合に伴い 一部混乱が起きており 他船社へブッキングが集中しています この影響で 特にバンクーバーやシアトル タコマ出港分で遅延が散見され ブッキングが集中しているいくつかの船社は 6 月 1 日付の GRI( 海上運賃一括値上げ ) を実施しています また 原油価格の上昇から 各船社 燃料コストも上昇しており新たなチャージを設定する動きが見られます さらには 一部の船社では 7 月 1 日付の GRI を通知しており 今後 燃料コストも含めた海上運賃は上昇していく見込みです プサン経由の日本向け航路についても 遅延が多くなっています 韓国では今年 1 月から自国内の船会社でアライアンスを形成し 近海航路中心に これまで各社で運航していたサービスの整理及び集約を始めています このため 以前よりもサービスの総数が減少しています 現在のところ日本向けでは 特に北海道へのフィーダー船において 慢性的に 1 ~ 2 週間の遅延が発生している状況で 今後のスケジュール遅延の回復見込みについては目途が立っていません ビートパルプ 米国産 ほぼすべての工場で 2017/18 年産の生産を終了しています 既報の通り 一部地域の収量が期首の想定を下回ったこと また 一部工場の乾燥機不具合の影響もあり ビートパルプの生産量は当初予想よりも約 30,000 トン低くなりました 新穀については 春先の低温や降雪の影響で予想よりも作付の開始が遅れましたが その後の天候回復で持ち直し 5 月末段階で日本向け主力のミネソタ州及びノースダコタ州ではほぼ作付を終えています 発芽や初期生育に必要な土中水分も適度にあり 作付を終えた現段階においては順調と言えます 作付面積は概ね昨年並みで 平均的なクロップを予想しています 今後は 生育期の天候に注目する必要があります 米国内の市況については 米国内の牧草の在庫が極めて低い水準にあること また 昨年のハリケーンの影響から東海岸では柑橘類系の副産物が不足していることから 競合する繊維源の不足感が強く ビートパルプへの引き合いは旺盛と言えます アルファルファ ワシントン州 主産地コロンビアベースンでは 1 番刈の収穫作業が後半を迎えています コロンビアベースン南部では 早い時期に刈り取りしたものについては 湿度が高い時期であったことからブリーチや変色が見られるものが多く発生しているようです それ以降のものは色目を重視し 刈り取りを遅らせたことから成分値が低い傾向にあるようです コロンビアベースン中部では 刈り取り時期に好天が続いたため 見た目が良く 高い成分のものが多く発生しています 一方 北部では一部で雨あたりが発生しています さらには この降雨を避けた圃場の一部では 刈り遅れの傾向となっています 産地価格については 旧穀の在庫の繰り越しが少ないことに加え PSW( 米国西海岸南部 ) の価格上場を受けて 昨年に比べ高値で取引が開始されています 4 COWBELL No.148 夏季号 2018.7

HAY Business 平成 30 年 6 月 8 日 オレゴン州 オレゴン州南部クラマスフォールズでは 1 番刈が始まったところで 現在進捗は 10% ほどです 直近の天候が不安定なことから 収穫が本格化するのは天候回復後となる見込みです 作付面積に大きな変化はありません 既報の通り 灌漑水不足の懸念はあるものの多くの圃場が地下水を利用しているため 深刻な問題にはならないと考えられます 中部クリスマスバレーでは ごく一部の圃場で 1 番刈の収穫が始まっていますが 6 月中旬から下旬にかけて本格化する見込みです 生育状況は例年通りで作付面積も前年並みと見られています 産地相場は収穫が始まったばかりで特筆すべき動きはありませんが 他産地の相場が軒並み上昇していることから 当地においても昨年に比べ高値でスタートするものと予想されます ネバダ州 / ユタ州 ネバダ州西部のイエリントン周辺では 1 番刈が終盤を迎えています 5 月中 ~ 下旬にかけての断続的な雨でいくつかの圃場が降雨被害にあっているようですが 全体としては概ね例年並みの作柄と見ています ネバダ州のその他の地域では 1 番刈の収穫が始まったばかりです ユタ州の 1 番刈は天候に恵まれ 安定した作柄になりそうです このため 州内外からの買付も旺盛で 他産地と同様に昨年に比べ高値で取引が進んでいます カリフォルニア州 カリフォルニア州南部インペリアルバレーでは 3 番刈が終盤を迎えています 現地では既に日中の最高気温が華氏 110 F 以上 ( 摂氏 43 以上 ) まで上がっており 成分値が低い中級 ~ 低級品の発生が中心となっています 産地価格については 中東や中国の積極的な買付けにより 昨年に比べ高値での取引が続いていますが 今後は中級 ~ 低級品のアルファルファの発生が増えていることから 当初の相場よりも軟化してくる見込みです カリフォルニア州中部サンフォアキンバレーやアリゾナ州など他産地でも収穫が本格化しています 国内向け 輸出向けともに買付が各産地に分散してきていることから 相場は徐々に軟化してくることが期待されますが 依然として需要は堅調なため 産地相場は昨年よりも高値で推移していくものと思われます 米国産チモシー コロンビアベースンでは 5 月下旬から一部の圃場で収穫作業が開始されており 早いところではベーリング作業まで進んでいるところもあるようです 収穫は 6 月上旬から本格化する見込みです エレンズバーグ周辺においても 早い圃場では 6 月上旬から収穫が始まる見込みです 日本 韓国および中東からのチモシーの引き合いは引き続き堅調に推移しています 産地相場は まだ形成されておりませんが 作付面積は 17 年産比で 10% 程度増加しており増産が予想されていることから 昨年と比べ軟化することが期待されます カナダ産チモシー 17 年産は日本および韓国からの需要は引き続き堅調であり 産地在庫はすべて成約済となっています 18 年産については 南部レスブリッジ地区では 17 年産の産地相場が生産農家にとって満足できるレベルであったことから 穀類からチモシーへの転作が進み 作付面積は 17 年産比で 10% 程度増えているようです 中部クレモナ地区では 作付面積は前年並みと見込まれています 今冬から今春に No.148 夏季号 2018.7 COWBELL 5

かけての気温は 例年並みからやや低かったようですが 新穀の収穫は例年並みの 7 月上 ~ 中旬以降に始まると予想されています スーダングラス インペリアルバレースーダン作付面積 (2018 年 6 月 1 日時点 ) 単位 : エーカー 6 月 1 日時点の作付面積は前年同月比 60,000 115% となっています 小麦および野菜相場 50,000 の低迷 休耕地プログラム終了に伴い 生産 40,000 農家の作付意欲が増していることが要因と推 30,000 測できます 20,000 新穀の収穫は例年並みの 5 月中旬から開始 10,000 されており 5 月末以降から本格化していま 0 3月す 作付面積が増加していることに加え 種子 15 日価格が高騰していることから 例年よりも播種量を減らして作付けされている圃場が増えています このため 細めの茎が揃った上級品の発生は例年並みかやや少なく 中 ~ 低級品の発生が多くなると予想されています 産地相場については 生産量が増える見込みから 昨年よりも弱含んでくると予想されています また 上級品に比べ中 ~ 低級品の発生量が増加する見込みであることから 上級品とそれ以外の価格差は例年よりも広がる可能性があります クレイングラス ( クレインは全酪連の登録商標です ) 5月1 日5月15 日4月15 日4月1 日6月15 日6月1 日18 年産スーダングラス (5 月下旬撮影エルセントロ ) 7月15 日7月1 日8月15 日2014 年 2015 年 2016 年 2017 年 2018 年過去 10 年平均9月10 月11 月12 月15 日15 日15 日15 日エーカー 5 月 15 日時点の作付面積は前年同月比で 133% となっており 増産が期待できる状況です 収穫は 4 月下旬より開始されており すでに 1 番刈の収穫は終了し 現在は 2 番刈の収穫が進んでいます 1 番刈の作柄は収穫期の天候にも恵まれたことから 良品の発生が中心となっています 韓国からの引き合いは引き続き旺盛で 良品のみならず 雑草混じりの低級品も高値で取引されています このため産地相場は 昨年の同時期に比べ高値で推移している状況で 生産農家は単収を追う可能性が高く 今後の品質面の低下が懸念されます 2 番刈以降の相場展開としては 収穫が進むにつれ供給力が増し 他の禾本科牧草も生産の最盛期に入ることから 相場は徐々に弱含んでくるものと予想できますが 今後の天 インペリアルバレークレイングラス作付面積 (2018 年 5 月中旬時点 ) 単位 : エーカー エーカー 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1月15 日23月15 日18 年産クレイングラス (5 月下旬撮影エルセントロ ) 5月15 日9月15 日10 月15 日11 月15 日12 月15 日20,000 8月15 日6月15 日7月15 日4月15 日月15 日2014 年 2015 年 2016 年 2018 年 2017 年過去 10 年平均 6 COWBELL No.148 夏季号 2018.7

HAY Business 候や日本 韓国の需要動向によっては 予想外の動きも十分考えられるため引き続き注視が必要と言えます ストロー類 ( フェスキュー ライグラス ) 日本および韓国からのストロー需要は引き続き堅調に推移しています 旧穀はすべて成約済みとなっています 堅調な需要と産地在庫はほぼ成約済みであることを背景に 産地価格は現行価格から下がることなく 新穀まで推移していく見込みです 新穀の状況ですが 今のところ天候等 生産に関して大きな問題は発生しておらず 例年通り 7 月上旬頃から収穫が始まる見込みとなっています 豪州産オーツヘイ オーツヘイへの需要は日本のみならず中 豪州産オーツヘイ類出荷先別数量推移 (2017 年 4 月 -2018 年 3 月 ) 単位 : トン 国 韓国および台湾から引き続き安定的で 50,000 日本 各サプライヤーとも出荷は順調に進んでいる 45,000 韓国 ようです このため 各サプライヤーの出荷スケジュールもかなり先まで埋まってきており 一部サプライヤーでは期近のオーダーが 中国 40,000 台湾 35,000 30,000 25,000 20,000 受けにくい状況となっています 産地では早くも 4 月下旬から 18 年産の 15,000 10,000 5,000 作付けが始まっています 播種後に降雨がな 0 く 乾燥した気候が続いたため初期段階での 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 成育不良が心配されましたが 5 月下旬以降に各産地でまとまった降雨があり 深刻な懸念は解消さ れています 作付面積は 東豪州および南豪州は 17 年産の相場が良かったことから前年並みとなる見通しです 西豪州については降雨被害の影響で 17 年産の相場が低迷したことから 大麦 小麦 菜種など 他の 作物への転作も増えているようです このため 18 年産の作付面積については前年比で減少するもの と予想されています 2018 年 5 月の豪州各地の積算降水量 ( オーストラリア気象局 HP より引用 ) No.148 夏季号 2018.7 COWBELL 7

世界一受けたい酪農講座 牛群の暑熱ストレスを管理する Managing Heat Stress in Dairy Herds ラリー E チェイス技術顧問 牛群の暑熱ストレス管理は益々重要性が増しているが その1 番目の理由は地球環境の変化による夏季の環境温度の上昇である 2 番目の理由は 現代の乳牛の体格が大きくなり 更に高い乳生産 (= 暑熱ストレスに弱い ) をすることである これらの乳牛は低乳量の乳牛よりも暑熱ストレスの影響を強く受けている 温度湿度指数の表 ( アームストロングら 1993 年 ) では 温度と湿度 暑熱ストレスの程度の関係を説明するものである 暑熱ストレスは湿度に応じて概ね気温 22 ~ 26 から始まる 乳牛の乳生産量は 暑熱ストレスの程度と期間に応じて 2 ~ 10kg / 日低下する 暑熱ストレスは乳牛に対しどのように重大な影響を及ぼしているのか? 乾物摂取量および乳生産の減少 ボディ コンディション スコアの損失 咀嚼 反芻 唾液生産の減少 ルーメン ph が低くなり アシドーシスのリスクが高まる 産褥牛の健康障害増加 跛行リスクの増加 妊娠率と繁殖成績の低下 流産リスクの増加 高死廃率の可能性では 乳牛が暑熱ストレスに晒されていたら どうするか? 1 つのアプローチは 温度湿度指数の表を利用して暑熱ストレスの程度を推定することである 乳牛は暑熱環境下では 起立時間増加 横臥時間減少 そして呼吸速度を増加させて熱を放散しようとする 簡単な方法として 8 ~ 10 頭を観察し 30 秒間の呼吸数を数え それに2を掛かけて 1 分間の呼吸数を得て 呼吸数が毎分 60 回以上であれば暑熱ストレスと判定する では あなたの牛群の暑熱ストレスの影響を最小限に抑えるために何ができるか? 暑熱ストレスを低減するには基本的に以下の 2 つのアプローチがある 1 つ目のアプローチは 日除けなどによる日光 ( 直射日光や照り返し ) への対策と乳牛を冷やすための スプリンクラー +ファンの組み合わせによって牛舎環境を改善すること パーラー前のホールディングエリア ( 待機場 ) の乳牛を冷却してやることは 乳生産に対する暑熱ストレスを軽減できる 2 番目のアプローチは 飼料と飼料給与の変更であり 考慮すべき重要なポイントは次のとおり : 1. 水の量 : 暑熱ストレス下にある乳牛の飲水量は一日当たり 20~50% 増加する 給水器などの機能を確認する また スプリンクラーなどの散水装置の動作 能力も確認する 2. 粗飼料 : 良質 (= 高消化率 ) な粗飼料を給与する これらはより簡単に早く消化されるので ルーメン内発酵による熱生産がより少ない 3. 蛋白質 : ルーメン内分解性蛋白の量を必要最小限に抑える 過剰なルーメン内分解性蛋白の給与は 尿中への排泄のために乳牛にエネルギーを消費させる 4. 油脂 : バイパス油脂などの追加はルーメン内の ph を下げることなく 飼料のエネルギー濃度を高めるうえで助けになる 5. 飼料中ミネラルの調整 ( 乾物中 ): マグネシウムを 0.4~0.5% まで増加 カリ濃度を 1.5~1.7% まで増加 ナトリウム濃度を 0.6~0.8% まで増加する なお 塩には陰イオンが含まれているので 塩ではなく バッファーとしての重曹 ( 重炭酸ナトリウム ) の添加が最も効果的である 飼料中 DCAD 値を+35~45meq/100g(+350~ 450meq/kg) まで増加させる ( 注 : 具体的には 重曹の添加 カリ濃度の高い自給粗飼料か アルファルファ乾草の増加 ) 6. 飼料給与管理 : 一日の中で最も気温の低い早朝などに飼料給与時刻 給与量をシフトを検討 場合によっては 給餌した飼料が数時間後に餌槽で発熱することがある 簡単な確認方法は 給餌後 3~4 時間後に手で熱を確認する そして 飼料が高い熱を発しているようであれば 酵母やカビの成長を抑制するためにプロピオン酸の添加を検討する 7. 飼料添加物 : これらの研究結果は様々で一貫性が無い ただし 追加的な酵母 微生物製剤 ルーメンバイパスナイアシンなどのは効果がある可能性がある 暑熱ストレスは農場内の別のグループの牛達の飼料摂取や発育にも影響する ポイントは以下のとおり : 8 COWBELL No.148 夏季号 2018.7

1. 育成牛 ( 後継雌牛 ): 暑熱ストレスは育成牛の飼料摂取の低下と発育鈍化も招くので 日除けやファンのような比較的単純なものの設置は効果がある 2. 哺育子牛 : 暑熱ストレスはスターターの摂取量と成長率を減らすことがある カーフハッチで飼養する場合もまた暑熱ストレスの影響を強く受けるので カーフハッチの上に日除けの設置は改善の可能性がある カーフハッチの後方にブロックを敷いてハッチ内の空気の流れを改善する人もいる 乾乳牛 : 乾乳牛の暑熱ストレスに関する研究はこの 10 年間活発に行われてきた 乾乳牛をファンやソーカーで冷却すると分娩後の日乳量が 2~5kg 増加することに同意されている また 冷却された母牛から生まれた子牛は大きく より良い免疫機能を持つことが報告されている 要約 暑熱ストレスは牛群における莫大な経済損失を招く 暑熱ストレスの影響を最小限に抑えることで救いになるいくつかの低減方法がある 牛舎環境 ( 日陰 ファン スプリンクラー ) の改善は 投資と短期投資回収期間の高収益で通常低コストである 飼料設計と給餌スケジュールの変更も暑熱ストレスの影響を軽減できる あなたの助言者と農場で実際に機能する暑熱対策を検討することを薦める >72 快適 72~79 やや暑い 80~89 暑い! 90~98 厳しい暑さ 98< 危険! 相対湿度 (%) Relative Humidity 気温( )温度湿度チャート表 0 C 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70% 75 80 85 90% 95 100 22.0 72 72 23.0 72 72 73 73 23.5 72 72 73 73 74 74 24.0 72 72 73 73 74 74 75 75 24.5 快適! 72 72 73 73 74 74 75 75 76 76 25.0 Happy Cows 72 72 73 73 74 74 75 75 76 76 77 25.5 72 73 73 74 74 75 75 76 76 77 77 78 26.0 72 73 73 74 74 75 76 76 77 77 78 78 79 26.5 72 72 73 73 74 75 75 76 76 77 78 78 79 79 80 27.0 72 72 73 73 74 75 75 76 77 77 78 78 79 80 80 81 28.0 72 73 73 74 75 75 76 77 77 78 79 79 80 81 81 82 28.5 72 73 73 74 75 75 76 77 78 78 79 80 80 81 82 82 83 29.0 72 73 73 74 75 75 76 77 78 78 79 80 80 81 82 83 83 84 29.5 72 72 73 74 75 75 76 77 78 78 79 80 81 81 82 83 84 84 85 30.0 72 73 74 やや暑い 74 75 76 77 78 78 79 80 81 81 82 83 84 84 85 86 30.5 72 73 73 74 75 76 Mild 77 77 78 79 80 81 81 82 83 84 85 85 86 87 31.0 72 72 73 74 75 76 76 77 78 79 80 81 81 82 83 84 85 86 86 87 88 31.5 72 73 74 75 75 76 77 78 79 80 80 81 82 83 84 85 86 86 87 88 89 32.0 72 73 74 75 76 77 78 79 79 80 81 82 83 84 85 86 86 87 88 89 90 33.0 73 74 75 76 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 86 87 88 89 90 91 33.5 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 85 86 87 88 89 90 91 92 34.0 74 75 76 77 78 79 80 80 81 82 83 85 85 86 87 88 89 90 91 92 93 34.5 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 86 86 87 88 89 90 91 92 93 94 35.0 35 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 35.5 75 76 77 78 79 80 81 82 83 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 36.0 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 91 92 93 94 95 96 97 36.5 76 77 78 80 80 82 83 83 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 98 37.0 76 78 79 80 81 82 83 84 85 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 98 Japan 38.0 77 78 79 81 82 83 84 85 86 87 88 90 91 92 93 94 95 96 98 38.5 77 79 80 81 82 83 84 86 87 88 89 90 92 93 94 95 96 98 39.0 78 79 80 82 83 84 85 86 87 89 90 91 92 94 95 96 97 98 39.5 78 79 81 82 83 84 86 87 88 89 91 92 93 94 96 97 98 40.0 40 79 80 81 83 84 85 86 88 89 90 91 93 94 95 96 98 40.5 79 80 82 83 84 86 87 88 89 91 92 93 95 96 97 41.0 80 81 82 84 85 87 88 89 90 91 93 94 95 97 98 41.5 80 81 83 84 85 87 88 89 91 92 94 95 96 98 42.0 81 82 83 85 86 88 89 90 92 93 94 96 97 98 43.0 81 82 84 85 87 89 89 91 92 94 95 96 98 43.5 81 83 暑 84 い! 86 87 89 90 91 93 94 96 97 44.0 82 83Moderate 85 86 88 90 91 92 94 95 96 98 44.5 82 84 85 87 88 90 91 93 94 96 97 45.0 83 84 86 87 89 91 厳しい暑さ 92 93 95 96 98 危険! 45.5 83 85 86 88 89 92 Severe 92 94Stress 96 97 Dead Cows! 46.0 84 85 87 88 90 92 93 95 96 98 46.5 84 86 87 89 90 93 94 95 97 98 47.0 85 86 88 89 91 93 94 96 98 48.0 85 87 88 90 92 94 95 97 98 48.5 85 87 89 90 92 94 96 87 49.0 86 88 89 91 93 95 96 98 アームストロング 1993 Armstrong D.V.(1993) No.148 夏季号 2018.7 COWBELL 9

大場真人の技術レポート カナダアルバータ大学乳牛栄養学教授大場真人博士 1 分娩前の飼料設計での Ca 濃度と DCAD はじめに低カルシウム血症の予防のために DCAD 値を下げるクロース アップ期の管理は一般的になりましたが 細かい点で様々な疑問 研究者間での意見の食い違いがあります その一つは DCAD 値を下げるサプリメントをどれだけ給与すれば良いのかというものです DCAD 値を下げる試験の多くでは 尿の ph が 7.0 以下になるだけのサプリメントを行っていますが そこまで下げる必要があるのでしょうか? 次に 低カルシウム血症の予防に クロース アップ期の Ca の給与制限 (0.5% 程度 ) を行う酪農家がいますが Ca の給与制限に十分の効果はあるのでしょうか? さらに DCAD 値を下げる栄養管理を行う場合 Ca 濃度の違いは牛の反応に影響を与えるのでしょうか? 今回の技術レポートでは 低カルシウム血症の予防に関する研究の第一人者であるアイオア州立大学のゴフ博士の研究グループがジャーナル オブ デーリィー サイエンスの最新号に発表した論文を解説を交えながら紹介したいと思います 試験の概要 試験 1 この試験では 60 頭のホルスタイン牛を使い (1 区あたり 20 頭 ) 三種類のクロース アップ期用のサプリメントを評価しました 1 ) 低カルシウム 高 DCAD(TMR 中の Ca 濃度を 0.46% にまで下げ DCAD を下げるサプリ メントは行わない DCAD 値 : 167mEq/kg) 2 ) 低カルシウム 低 DCAD(TMR 中の Ca 濃度を 0.46% にまで下げ DCAD 値を下げるサプリメントを行う DCAD 値 :- 13mEq/kg) 3 ) 高カルシウム 低 DCAD(TMR 中の Ca 濃度を下げずに 表 1 アイオア州立大学の試験で使われた飼料設計 ( 試験 1) 低 Ca 高 DCAD DCAD 値を下げるサプリメントを行う DCAD 値 :- 17mEq/ kg) ミネラルのサプリメント以外の T M R 成分は同じで これら 3 種類の試験 TMR を分娩予定日の 4 週間前から給与しました ( 表 1) 高 DCAD の TMR を給与された牛の尿 ph は 8 以上でしたが DCAD 低 Ca 低 DCAD 表 2 アイオア州立大学の試験で使われた飼料設計と尿 ph( 試験 2) 高 Ca 低 DCAD 基礎 TMR 93.8 93.8 93.8 サプリメントA* 6.2 サプリメントB** 6.2 サプリメントC*** 6.2 ミネラル濃度 %DM Ca 0.46 0.46 0.72 K 1.45 1.45 1.44 CI 0.44 1.08 1.10 Na 0.12 0.12 0.12 S 0.21 0.21 0.20 DCAD meq/kg 167-13 -17 可吸収 Ca g/ 日 26 26 46 尿 ph 8.27 7.07 7.41 低 Ca 高 DCAD 低 Ca 低 DCAD 高 Ca 低 DCAD 基礎 TMR 92.2 92.2 92.2 サプリメントA* 6.5 サプリメントB** 6.5 サプリメントC*** 6.5 炭酸カリウム 1.3 1.3 1.3 ミネラル濃度 %DM Ca 0.46 0.46 0.72 K 2.08 2.07 2.07 CI 0.40 1.04 1.06 Na 0.09 0.09 0.09 S 0.21 0.21 0.21 DCAD meq/kg 327 146 140 可吸収 Ca g/ 日 25 25 44 尿 ph 8.51 8.26 8.32 * サプリメント A: DDGS コメ皮 酸化マグネシウム ** サプリメント B: パスチャークロール ( ランダス協同組合 ) *** サプリメント C: ソイクロ ル ( ランダス協同組合 ) 10 COWBELL No.148 夏季号 2018.7

Nutrition&Management 値を下げた TMR を給与された牛の尿 ph は いずれも 7.0 から 7.5 の範囲内でした 試験 2 次に行われた試験では 約 225g の炭酸カリウムを添加して TMR 中のK 含量を意図的に高めた以外は 試験 1 と同じ 3 種類の TMR を給与しました 炭酸カリウムを添加した目的は 研究データを集めるため K 含量の高い粗飼料を給与している状況を意図的に作り出すことです DCAD 値を下げるサプリメントの給与量は試験 1 と同じです この試験では 39 頭のホルスタイン牛 ( 一区あたり 13 頭 ) に分娩前の 4 週間 試験 TMR を給与しました 興味深いことに DCAD 値を下げるためのサプリメントを行っても ( 試験 1 と同量 ) DCAD 値は 140mEq/kg までしか下がらず 尿の ph も 8.0 以上でした これは TMR 中のK 含量が高いのが原因です 私もアルバータ大学で同様の試験を行った経験がありますが DCAD 値は 100mEq/kg 以下まで下げなければ 尿 ph を下げられません 試験結果 試験 1 TMR 中のカルシウム濃度を下げる設計の目的は 意図的にクロース アップ期の牛に Ca 不足を経験させ 分娩後の泌乳開始直後の状況に慣らすことです Ca 不足を経験すると 牛は PTH というホルモンを分泌し エサからの Ca の吸収効率を高めたり 骨から Ca を再吸収したりしようとします しかし この試験では TMR 中の Ca 濃度を 0.46% に下げても PTH の濃度が高くなることはありませんでした つまり TMR 中の Ca 濃度を下げても 牛を Ca 不足の状態まで持っていけなかった ことを示しています その結果 DCAD 値を下げずにカルシウム濃度を下げただけの TMR をクロース アップ期に給与された牛は 分娩日の血漿カルシウム濃度が 低 DCAD の TMR を給与された牛と比較してより低くなりました ( 図 1) このデータからは二つの教訓を学べます 一つは Ca の給与制限を行う という低カル予防のアプローチには限界があることです もう一つは 尿の ph が 7.0 以下になるまで低 DCAD のサプリメントを行わなくても 低カルを予防できるということです この試験では 尿の ph を 7.5 以下に下げる程度で十分の低カル予防の効果が観察されました この試験では DCAD 値を下げて Ca 濃度が 0.46 % と 0.72 % の TMR の比較では 牛の反応に差は見られませんでした DCAD 値を 図 1 分娩前後の血漿カルシウム濃度の変化 ( 試験 1) 血漿カルシウム濃度 mg/dl 下げる栄養管理の場合 尿中の Ca 排泄量が増えるため TMR 中の Ca 濃度を高めるのがセオリーです Ca 濃度を 1.2% 程度まで上げるべきだと言う研究者もいます この試験では TMR 中の Ca の濃度差が少なかったのが原因かもしれません (0.46 vs. 0.72%) 牛の反応に差は見られませんでした この試験では 3 種類のクロース アップ TMR を給与された牛の間で 分娩の 14 日から 3 日前までの乾物摂取量に違いは見られませんでした ( 平均 :13.4kg/ 日 ) 興味深いことに サプリメント A ( 高 DCAD) を給与された牛の分娩日の乾物摂取量が 7kg/ 日近くまで減少したのに対し サプリメント B C( いずれも低 DCAD) を給与された牛の分娩日の乾物摂取量は 8kg/ 日以下まで下がることはありませんでした 一般的に 低 DCAD のサプリメントは嗜好 高 DCAD 設計は 低 Ca 低 DCAD 高 Ca 高 DCADの 設計よりも 分娩日の血漿カルシウム濃度を有意に低めた 10 9.5 9 8.5 a 8 7.5 7 6.5-18 -7 0 1 4 10 分娩日を起点とした日数 図 2 分娩前後の血漿カルシウム濃度の変化 ( 試験 2) 血漿カルシウム濃度 mg/dl 10.5 9.5 8.5 7.5 6.5-16 -14-12 -10-8 -6-4 -2 0 2 4 6 8 10 分娩日を起点とした日数 No.148 夏季号 2018.7 COWBELL 11

性が悪く D M I が下がる心配をする人がいますが サプリメント量が適切である限り この試験で評価された低 DCAD サプリメント ( パスチャー クロール ソイ クロ ル ) に乾物摂取量を低下させるリスクはないことが分かります 試験 2 試験 2 では 試験 1 と同量の低 DCAD サプリメント ( パスチャー クロール ソイ クロール ) をしたにもかかわらず 分娩直後の低カルを防ぐことは出来ませんでした ( 図 2) これは TMR 中の K 含量が高かったためです この試験では 意図的にK 含量の高い TMR を給与しましたが TMR 中のK 含量は 粗飼料のK 濃度に応じて大きく変化します 低 DCAD のサプリメントを行えば 低カルを 100% 予防できるわけではありません ある農場で低カル予防の効果が見られるサプリメント量でも 別の農場では不十分である ケースは多々あります 考えられる一番の理由は 粗飼料の違い 粗飼料のK 含量の違いです K 含量が高い粗飼料を給与されている牛群では DCAD 値を十分に下げるために より多くの低 DCAD サプリメントを行う必要があります 分娩直後の低カルを予防するためには 粗飼料のK 含量を分析し それぞれの農場における低 DCAD サプリメントの効果的な量を把握し 尿の ph が 7.5 以下になっているかどうかをモニタリングすることが求められます まとめ 飼料設計のカルシウム濃度を下げて 血液中の PTH 濃度を高め 分娩直後の血漿カルシウム濃度の低下を防ぐというアプローチは難しい ソイ クロ ルなどのサプリメントを行い DCAD 値を下げれば 飼料設計のカルシウム濃度に関係なく 分娩直後の血漿カルシウム濃度の低下を防ぐことが出来る その場合 尿の ph を 7.0 以下まで下げる必要はない 7.5 以下になれば十分な効果を期待できる ソイ クロ ルなどのサプリメントを行っても もともとの飼料設計のカリ含量が高ければ DCAD 値は十分に下がらず 尿 ph も十分に下がらないケースがある その場合 分娩直後の低カルを防ぐことは出来ない 粗飼料分析を行い クロース アップ牛の飼料設計でのカリ含量を低めることが必要 必要に応じて尿 ph のチェックを行うことも重要 引用文献 Goff, J. P., and N. J. Koszewki. 2018. Comparison of 0.46% calcium diets with and without added anions with a 0.7% calcium aninonic diet as a means to reduce periparturient hypocalcemia. J. Dairy Sci. 101: doi: 10.3168/jds.2017-13832. 2 パルミチン酸の給与効果 はじめに高泌乳牛のエネルギー摂取量を高めるために 乳牛の飼料設計で油脂サプリメントを行うことは一般的です しかし 油脂 と一口に言っても それを構成する脂肪酸には多くの種類があり 脂肪酸の生理的な効果には大きな違いが見られます そのため 油脂サプリメントを考えるときには 脂肪酸のタイプを考えることは大切です これは 炭水化物 と同じかもしれません 糖も デンプンも セ ンイも炭水化物ですが 乳牛の反応には大きな違いが見られるため 炭水化物という大きな区分けをすることは問題です それと同様 これまでは 油脂 という大きなカテゴリーで考えられていましたが これからの油脂サプリメントを考えるうえで 脂肪酸のタイプに注目することは重要になります このような背景から 今 パルミチン酸が注目されています 一般的に 油脂サプリメントには乳脂率を低下させるというリスクがありますが パルミチン酸には そのようなリスクが低く 逆に乳量と乳脂率を同時に高められる脂肪酸であると報告している研究データが多くあります しかし 過去の研究データを詳しく見ると パルミチン酸に対する乳牛の反応 ( 乾物摂取量 乳量 ) にはばらつきがあります その一つの理由として考えられるのは 初産牛と成牛の違いです 今月の全酪連レポートでは パルミチン酸の長期的なサプリメント効果を検証したミシガン州立大学の研究データを紹介したいと思います 12 COWBELL No.148 夏季号 2018.7

Nutrition&Management 試験の概要 この試験では 泌乳中期の泌乳牛 (18 頭の初産牛 22 頭の 2 産次以上の牛 ) に パルミチン酸のサプリメント含む TMR か 含まない TMR( サプリメントの代わりに大豆皮の含量が高い ) かのいずれかを 10 週間給与しました 詳しい飼料設計データは表 1に示しましたが 油脂サプリメントは 飼料設計中の乾物比 1.5% で その 81% はパルミチン酸です 飼料設計中のデンプン濃度 C P 濃度 粗飼料 NDF 含量は同じですが パルミチン酸のサプリメントを含む TMR は NDF 濃度がやや低く 合計脂肪酸含量が約 1.5 % 高くなりました EE 含量という指標で示す油脂濃度は 一般的に脂肪酸含量に 1% を加えたくらいの値になります 飼料設計中の 推定油脂含量 は約 4.4% と 5.9% で 常識的な 飼料設計の範囲内の値だと言えます パルミチン酸のサプリメント効果 試験結果の全体像を簡単にまとめると パルミチン酸をサプリメントされた牛は 乾物摂取量が 1.9kg/ 日 乳量は 3.8kg/ 日 乳脂率は 0.20% 高くなりました ( 表 2) 乳脂率を低下させることなく 乳量を高めていることが理解できます 一般的に 油脂の給与量を増やすと 乳脂率が低下することがよくあります それは 油脂に含まれる不飽和脂肪酸が ルーメンの微生物代謝を受け 悪玉 共役リノール酸になってしまうためです この脂肪酸が体内に吸収され乳腺に行くと 乳腺での脂肪酸生成を阻害してしまいます 乳脂肪を作る原材料は 1) 乳腺で生成される脂肪酸 2) エサから摂取する脂肪酸 3) 体脂肪から動 表 1 ミシガン州立大学の飼養試験で使われた飼料設計 表 2 パルミチン酸サプリメントに対する泌乳牛の反応 員される脂肪酸の 3 種類があります 油脂サプリメントを行い エサから摂取する脂肪酸の量を増やしても 乳腺で生成される脂肪酸の量がそれ以上に減ってしまえば 乳脂率は低下します プラス 1 でも マイナス 2 以上の副作用があれば 結果はマイナスになってしまいます それに対して パルミチン酸は飽和脂肪酸なので 脂肪酸の生成を阻害する 悪玉 共役リノール酸の吸収を高めること 対照区 パルミチン酸サプリメント コーン サイレージ 23.9 23.9 アルファルファ サイレージ 17.7 17.7 麦ワラ 2.8 2.8 粉砕コーン 15.9 15.9 ハイ モイスチャー コーン 14.5 14.5 綿実 4.3 4.3 大豆皮 5.6 4.1 パルミチン酸 サプリメント 1.5 その他の飼料原料 15.3 15.3 飼料設計の成分値 %DM NDF 30.9 29.9 粗飼料 NDF 19.0 19.0 デンプン 26.4 26.3 CP 16.7 16.5 合計脂肪酸 * 3.4 4.9 パルミチン酸 0.58 1.77 ステアリン酸 0.12 0.21 オレイン酸 0.63 0.76 リノール酸 1.65 1.67 リノレイン酸 0.22 0.22 * 油脂含量の推定値は合計脂肪酸濃度に 1% を加えたもの 対照区 パルミチン酸サプリメント 乾物摂取量 kg/ 日 28.4 30.3 乳量 kg/ 日 45.6 49.4 乳脂率 % 3.15 3.35 乳タンパク率 % 2.91 2.92 体重の変化 kg/ 日 0.25 0.36 はありません そのため パルミチン酸のサプリメントは乳脂率を低下させるリスクが低く かつエサからの脂肪酸供給量を高められるので 乳脂率が高くなるのです このように乳牛の全体で見た反応はプラスでしたが 初産牛の反応と 2 産次以上の牛の反応を分けて分析すると 非常に興味深いことが分かりました パルミチン酸のサプリメントによる乳量増が見られたのは 2 産次以上の牛だけで No.148 夏季号 2018.7 COWBELL 13

初産牛は乳量が有意に増加しなかったのです ( 図 1) それに対して パルミチン酸のサプリメントにより初産牛は体重を増やしましたが ( 図 2) 2 産次以降の牛は有意に増えませんでした つまり パルミチン酸給与によりエネルギー摂取量が増えたのは 初産牛も 2 産次以降の牛も同じでしたが 増えたエネルギー摂取量がどのように利用されたかに関して顕著な違いが見られました 初産牛では より多くのエネルギーが体重増に利用されましたが 2 産次以降の牛は乳量増にエネルギーを振り向けることが出来たのです 初産牛と 2 産次以降の牛とのあいだで エネルギー利用のされ方に違いが見られたのはなぜでしょうか パルミチン酸を給与された初産牛は血漿中のインシュリン濃度が高くなりましたが 2 産次以降の牛に有意な差は見られませんでした ( 図 3) インシュリン濃度が高くなると 血液中の栄養成分は 脂肪細胞に取り込まれやすくなります そのため 初産牛は パルミチン酸のサプリメントに対して 乳量増ではなく体重増という反応を示したと考えられます さらに 初産牛は自身が成長を続けているため 相対的にタンパク質の要求量が高いことが考えられます 今回の試験では タンパク質の供給量が需要に対してギリギリだったのかもしれません そのため パルミチン酸のサプリメントにより増えたエネルギー摂取量が乳量増に振り向けられなかったと考えられます これは私見ですが 相対的なタンパク不足のため 増えるはずだった乳量が十分に増えず その代わりに余分のエネルギーが脂肪として蓄積されたのかもしれません 図 1 パルミチン酸のサプリメントが乳量に与えた影響 乳量 kg/ 日 まとめ 60.0 55.0 50.0 45.0 40.0 35.0 30.0 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 油脂サプリメントなし パルミチン酸給与 初産牛 図 2 パルミチン酸のサプリメントが体重の変化に与えた影響 体重の変化 kg/ 日 インシュリン μg/l 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 初産牛 初産牛 P < 0.05 * P < 0.05 * パルミチン酸のサプリメントは 泌乳牛の乾物摂取量とエネルギー摂取量を向上させることに寄与しましたが それにより乳量を増やせたのは 2 産次以降の牛でした 油脂サプリメントに対する初産牛の反応が異なることは注目に値します 初産牛は成長を続けているため エネルギーの給与量を増やす場合は タンパクとのバランスにも注意を払うことが重要 P < 0.05 * 2 産次以上の牛 油脂サプリメントなし パルミチン酸給与 2 産次以上の牛 図 3 パルミチン酸のサプリメントが血漿インシュリン濃度に与えた影響 油脂サプリメントなし パルミチン酸給与 2 産次以上の牛 です さらに 油脂サプリメントがインシュリンなどの内分泌への反応に与える影響もこれから研究の必要があり 注目される分野だと言えます 引用文献 de Souza, J., and A. L. Lock. 2018. Long-term palmitic acid supplementation interacts with parity in lactating dairy cows: production responses,nutrient digestibility, and energy partitioning. J. Dairy Sci. 101:3044-3056. 14 COWBELL No.148 夏季号 2018.7

Information 全酪連購買生産指導部 酪農生産指導室の活動状況平成 29 年 12 月 平成 30 年 5 月月日対象名活動内容実施者担当部署 12 1 2 1 酪農にいがた農業協同組合新発田支所青年部研修会 育成牛管理 成田東京支所 4 酪農とちぎ農業協同組合職員研修会 DMS を利用した酪農経営分析 丹戸東京支所 11 赤城中継基地運営委員会利用会員担当者会議 酪農生産基盤維持拡大のために 山崎東京支所 11 大分県酪農業協同組合日田青年部研修会 確定申告から見る経営戦略 2 丹戸福岡支所 12-14 福島県酪農業協同組合新人職員研修会成田仙台支所 22 広島県酪農業協同組合職員研修会 決算の進め方について 丹戸大阪支所 17 栃酪鹿沼市酪農組合新年講演会 今後の酪農について ~ これからの酪農を考える ~ 置本東京支所 19 新岩手農業協同組合酪農部会研修会 酪農生産基盤維持拡大について 丹戸仙台支所 22 かながわ酪農業協同組合新年研修会 酪農生産基盤維持拡大のために 山崎東京支所 24 福島県酪農業協同組合県南支所研修会 やる気がわく経営計画の作り方 丹戸仙台支所 24 大分県酪農ヘルパー協会酪農ヘルパー職員技術研修猪内福岡支所 25 酪農青年女性会議全国委員研修会グループワーク 農作業中の事故をなくすには? 丹戸総務部 25 熊本県酪農業協同組合連合会酪農後継者育成講座 自給飼料 土壌の基本 久保園福岡支所 5-8 大山乳業農業協同組合春播き種子研修会 強害雑草対策について 三枝大阪支所 6 山形県酪農業協同組合研修会 見直そうトウモロコシ 久保園仙台支所 7 全酪連酪農セミナー 2018 熊本セミナー通訳 効率的な繁殖のための移行期管理 齋藤 購買生産指導部 7 みやぎの酪農農業協同組合本所研修会 牛が良くなり 経営が良くなる飼料の生産と利用 久保園仙台支所 8 みやぎの酪農農業協同組合仙南支所研修会 牛が良くなり 経営が良くなる飼料の生産と利用 久保園仙台支所 9 全酪連酪農セミナー 2018 名古屋セミナー通訳 効率的な繁殖のための移行期管理 齋藤 13 全酪連酪農セミナー 2018 岡山セミナー通訳 効率的な繁殖のための移行期管理 齋藤 15 全酪連酪農セミナー 2018 帯広セミナー通訳 効率的な繁殖のための移行期管理 齋藤 16 全酪連ワークショップ 2018 通訳 繁殖と健康に関する最新研究情報 齋藤 20 全酪連酪農セミナー 2018 東京セミナー通訳 効率的な繁殖のための移行期管理 齋藤 購買生産指導部 購買生産指導部 購買生産指導部 購買生産指導部 購買生産指導部 22 佐賀県農業協同組合佐賀県酪農婦人の集い講演会 儲かる酪農経営をしていくために 丹戸福岡支所 23 酪農とちぎ農業協同組合青年部全体研修会 哺育技術について 猪内東京支所 9 農研機構開発改良試験研究会議畜産分科会アニマルウェルフェアからみた日本型酪農のあり方久保園 購買生産指導部 3 都城地区酪農青壮年部連絡協議会 26 女性部酪農部会 全体研修会 強化 哺育 ~ 健康な子牛を育てる~ 齋藤 福岡支所 29 熊本県酪農業協同組合連合会 酪農後継者育成講座 やる気がわく酪農経営の仕組み作り 丹戸 福岡支所 12 北関東事務所管内酪農家 会員 関係機関 全酪連北関東事務所セミナー 知って楽しい!? 村上酪農塾 村上 東京支所 4 20 大分県酪農業協同組合 研修会 TMRセンターの現状と展開 丹戸 福岡支所 28 名古屋支所酪農生産研究会獣医師部会 全酪連酪農セミナーダイジェスト 齋藤 名古屋支所 5 22-23 中国四国酪農大学校 大学校学生対象特別講義 牛について 牛の観察 成田 人事室 表紙の写真 [ 題名 ] 放牧中の乳牛 CONTENTS No.148 酪農 TOPICS 全酪連とフォスターテクニック社技術提携!! 第 4 回広島大学酪農技術セミナーが開催されます! 2 原料情勢 3 粗飼料情勢 4 世界一受けたい酪農講座牛群の暑熱ストレスを管理するラリー E チェイス技術顧問 8 大場真人の技術レポート分娩前の飼料設計での Ca 濃度と DCAD パルミチン酸の給与効果 10 information 15 全酪連購買事業情報紙 COW BELL カウ ベル No.148( 夏季号 ) 平成 30 年 7 月 10 日発行 発行責任者岡田征雄発行所全国酪農業協同組合連合会購買生産指導部 108-0014 東京都港区芝四丁目 17 番 5 号 TEL 03(5931)8007 http://www.zenrakuren.or.jp No.148 夏季号 2018.7 COWBELL 15