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ヶ月間室内で放置した ( 期間中の温度範囲 8 ~ 36 ) また NH 4 濃度が 110ppm の PTA 水溶液中の塩素イオン濃度が 139 375 611 847ppm となるように NH 4 Cl 水溶液 (0.05mol/ dm 3 ) を添加して攪拌した後 密閉容器中で 100 下 6 時間加熱した 処理後に得られた液体は 紫外可視分光測定を光路長 1cm で行った また 40 で乾燥した粉末について X 線回折と FT-IR によって結晶相とペルオキソ基 (900cm -1 ) の同定を行った 2-2. 粉体 TiO 2 複合膜の評価 PTA 水溶液 (0.1mol/dm 3 ) 及び PA ゾル トリコン製エアーブラシを使用して磁器白釉上にコーティングして 600 で 30 分焼き付けた スプレー 1 回の塗布重量は 0.01mg/cm 2 である 光学顕微鏡で膜表面を観察し また 日本分光製色差計を用いてコーティングしない場合との色差を測定した また 液相フィルム密着法 ( 光触媒製品技術協議会 ) 14) に基づき 3cm 3cm の試料表面上で 10ppmメチレンブルー 0.1ml の分解を紫外線強度 1mW/cm 2 で 1 時間行い その脱色変化から光触媒製品技術協議会自主規格光触媒性能基準によって合否判定した (0.1mol/dm 3 ) 中に TiO 2 粉体 ( 日本アエロジル社 製 P25) を加え 攪拌 超音波処理によって分散 させた TiO 2 添加量はコーティング剤中の全チタ BLB ランプ (6W1 本 ) ンを TiO 2 に換算した値に対して 0~50mass% となる ようにした 得られた混合液を 15cm 2 のガラス基 板上に塗布し 100 で 5 時間乾燥した後に塗布量 が 0.25mg/cm 2 となるようにした 膜表面の微構造 磁器製筒反応器 ( 内面積 480cm 2 ) ( 内面に TiO2 コーティング ) は走査型顕微鏡で観察した 複合膜は 20 時間紫外 線照射 (1mW/cm 2 ) と 100 1 時間加熱の前処理を 送風ファン 行い 1300ml のバッチ式反応容器を用いて 100ppm イソプロパノールガス (ipa) を分解させた 紫外線強度は 0.5mW/cm 2 で行った. また この複合膜の実用性を確認するために 以下の実験を行った PA ゾルP25TiO 2 複合液を約 0.15mg/cm 2 となるように内面塗布した円筒形陶磁器 ( 内径平均約 7cm 高さ 22cm 内面積 480cm 2 ) の内部に 6WBLB ランプ 1 本を配し 下部より小型送風ファンで約 0.07m 3 /min の風量を送るだけの簡易空気清浄機を試作した ( 図 1) この装置を 1.68m 3 のアクリル製反応容器内で運転し ホルムアルデ 図 1. 簡易空気清浄機の概念図. 3. 結果と考察 3 1. PTA 水溶液の安定性不純物をほとんど含まないチタン酸へ過酸化水素水を適量添加すると 次のような反応でペルオキソ化が起こる 反応系はpH>3であり ペルオキソチタン錯体アニオンが生成する 13, 15) 合成条件が適当でないと 重合して増粘や濁りを発生する傾向がある ヒド アセトアルデヒド アンモニアのガス分解 試験を行った (TiO(OH) 2 ) H 2 O 2 Ti 2 O 5 (OH) x (x - 2) - (x-2)h (x>2) 2-3. スプレーコーティング膜の評価 PTA 水溶液をディッピング ハンドスプレー 反応が終わって溶解した液体は不安定であり ポリアニオン ((Ti 2 O 5 ) q (OH) (y-2q)- y,(2<q/y)) か 2

表 1 NH 4 濃度と PTA 水溶液の安定性 (Ti=0.1mol/dm 3 ). NH 4 濃度 PTA 水溶液の性状 (ppm) 調整直後 100 6 時間後 室温 6 ヶ月後 110 黄色 透明 240 黄色 透明 380 黄色 透明 510 黄色 透明 650 黄色 透明 780 黄色 透明 白色 半透明 淡黄 半透明 変化なし 変化なし 変化なし 変化なし : 無定形 ( アモルファス ) : 結晶性あり ( アナターゼあるいはルチルを含む ) 白色 沈殿 淡黄 半透明 黄 半透明 変化なし 黄 やや半透明 黄 やや半透明 粘性 て光触媒作用の遮断層としての働きがなくなり コーティング膜が徐々に剥離してしまうことに 100 80 60 40 20 [NH4 ] 511ppm 645ppm 778ppm 0 300 400 500 600 70 らペルオキソチタン水和物 (Ti 2 O 5 (OH) 2 ) へ経時 変化し 時間と共に増粘 微粒子析出 不完全 な結晶化などが起こる 波長 / nm 378ppm 111ppm 245ppm 図 2.100 で 6 時間加熱後の PTA 水溶液の紫外可視光透過率スペクトル. このような液体をコーティング剤として利用 すると 種々の重大な問題が発生する たとえ ば 有機物上への 2 層コーティングにおいて下 地コーティングに利用すると 結晶化が起こっ なる まさに 補償問題にもなりかねないのである また 液体自体が不安定なので性状が刻々変化し コーティング膜の密着性や透明性などに重大な欠点を与えることがある 我々は この液体中の不純物としてアンモニウムイオンやあるいは他の不純物が適量存在すると PTA 水溶液として安定化されることを発見し 一連の化学反応を明らかにしてきた これまでに このような不純物と安定性の関係を明らかにした例はなく その物質や製造方法は佐賀県の技術として実用化されている 一例として 不純物陽イオン (NH 4 ) 濃度と PTA 水溶液の安定性について簡単に説明する 表 1に NH 4 濃度と PTA 水溶液の安定性の関係を 示す NH 4 濃度が少なくなると加熱や長期常温放置によってアナターゼやルチルが結晶化してく ることが判明した また NH 4 濃度が多くなると 長期保存中に増粘や凝集微粒子の析出によって不透明になった 図 2に 100 で 6 時間加熱後の 紫外可視光透過率スペクトルを示す NH 4 濃度が低いとアナターゼ超微粒子が生成して半透明の 3

ゾル状態となった 逆に NH 4 濃度がある値以上の PTA 水溶液は変化せず非常に透明な液体であ った また FT-IR 分析では NH 4 濃度が 245ppm 以下であるとペルオキソ基の量がかなり少ない ことが確認された 以上のことから 適正な NH 4 濃度範囲でないとコーティング剤の劣化が生じ ることが判明した この結果に基づき NH 4 濃度を適正化した長期保存が可能なコーティング剤を開発することができた 一方 PTA 水溶液中の陰イオン不純物濃度 ( 塩素イオン ) の影響を調べるために 塩化アンモニウム水溶液を PTA 水溶液に添加してその安定性を調べた 添加直後にペルオキソチタン水和物の析出ゲル化が起こり まったくの不透明になった この液体を加熱するとアナターゼに結晶化するが凝集沈殿してしまい コーティング剤としては利用できなかった 以上のことから 塩素イオンはなるべく少ない方がコーティング剤の安定性には好都合であることが確認された 3 2. TiO 2 粉体複合膜の特性図 3に PTA 水溶液 TiO 2 粉末の膜の SEM 写真を示す 50%TiO 2 粉末を添加しても膜表面はほぼ平滑であった 以前報告した PA ゾルTiO 2 粉末のように 凝集した TiO 2 粉末が存在すると膜硬度が弱く 20mass% より多く TiO 2 粉末を添加すると触っただけで TiO 2 粉末が微量脱離した しかし 高粘性 PTA を用いた場合は膜強度が高く 布による繰り返し磨耗 100 回でもほとんど変化がなかった PTA 水溶液を用いると 一旦分散した TiO 2 粒子が再凝集しにくく高分散性の膜を形成し PTA 膜の高いバインダー特性のために強固に密着するためであると考えられる 図 4 に PTA 水溶液と PA ゾルに TiO 2 粉末をそれ a c b d 10μm 図 3.PTA 水溶液 P25 粉末複合膜の SEM 写真. P25 粉体添加量 a:0mass%, b:10mass%, c:33mass%, d:50mass%. ipa/ppm 100 10 1 e c, d 0.1-40 -20 0 20 40 60 紫外線照射時間 /min 図 4.PTA 水溶液 P25 粉末複合膜及び PA ゾル P25 粉末複合膜の ipa ガス分解挙動. a:pa ゾルのみ, b:pta33mass%p25, c:pta50mass%p25, d:pa20mass%p25, e:pa40mass%p25. 膜面積 = 15cm 2, ガス容量 = 1300ml, 紫外線強度 = 0.5mW/cm 2. b a 4

ぞれ添加した膜によるイソプロパノールガスの分 解挙動を示す コーティング膜は焼成していないので PTA 水溶液の部分は光触媒活性がない それ 1 b* にも関わらず PTA 水溶液 TiO 2 粉末の膜は PA 0 ゾルのみの膜より高い活性を示し また 50%TiO 2 粉末添加の場合は PA ゾルに 20% 添加した膜と同等な活性を示した 実用性から考えると 高密着性膜のコーティングするのは PTA 水溶液を用いた方が容易である さらに 粉末混合の場合は数 μm 以上の成膜まで行うことができる利点がある 色差 / L*, a*, b* -1-2 -3-4 a* L* 膜自体は両者とも不透明になるが 高活性な膜が必要である大気浄化や水処理にはこれらの方法が非常に有効であることがわかった -5 0 2 4 6 8 10 スプレー回数 3-3. 簡易空気清浄機の VOC ガス分解試験 PA ゾル P25TiO 2 粉末 (20%) を塗布した簡易 図 6. 磁器上への酸化チタンコーティング剤のスプレー回数と色差変化. 空気清浄機による約 1.68m 3 の密閉容器内での VOC ガスの分解試験結果を図 5 に示す ホルムアルデ ヒドガスの分解が最も早く 5 時間で 0.1ppm 以下 まで分解した アセトアルデヒドとアンモニアガ スも徐々に分解し VOC ガス分解用のコーティン グ液として有効であることが示唆された 光触媒 をコーティングは陶磁器釉上のみであり 表面積 を増やした内部構造とすれば さらに光触媒効率 ガス濃度 /ppm 12 10 8 6 4 2 HCHO ブランク NH 3 0-60 0 60 120 180 240 300 360 420 紫外線照射時間 /min CH 3 CHO 図 5. 簡易空気清浄機の VOC ガス分解性能ガス体積 =1.68m 3, 光触媒面積 =480cm 2, BLB6W1 本. が向上するものと考えられる 3 4. 塗布法の相異による色差変化磁器 ( 白釉 ) 上への酸化チタンコーティング剤のスプレー回数と色差変化を図 6に示す 以前 報告したとおり食器洗浄器 1000 回以上の耐久性が得られる焼付け温度は 600 であったので同じ温度で処理したサンプルを用いた また PTA 水溶液のスプレー塗布を 20 回行い 100 で乾燥したときの膜重量は約 0.2mg/cm 2 であったので.1 回の塗布重量は 0.01mg/cm 2 ということになる スプレー回数を増やしても a* と b* の値はそれほど大きな変化はなかったが L*(= 明度差 ) が大きく低下することが判明した 肉眼では 8 回以上塗布すると明度の低下が目立ち意匠性を損なう可 5

表 2. 酸化チタンコーティングした陶磁器の光触媒活性テスト. 液相フィルム密着試験法 ( 光触媒製品技術協議会 ).10ppm メチレンブルー 0.1ml を 3 3cm 2 上で 1 時間分解 紫外線強度 =1mW/cm 2. スプレーコーティング回数 0 2 4 8 メチレンブルーの分解状態変化なし少し残留残留なし残留なし 光触媒活性の判定 ーを完全に脱色させることができ 光触媒製品技 a c e b d f 術協議会の基準値をクリアできることが分かった 図 7にスプレー塗布 ハンドスプレー塗布 ディップコーティングした膜表面の光学顕微鏡写真を示す スプレーコーティングしたものは 100μm 以下の島状に微細コーティングされているものが折り重なっているために生じる微小の凹凸が干渉色の影響を押さえていることが分かる ハンドスプレーやディップコーティングしたものは不均一で膜厚が大きく干渉色が顕著に現れている 実用的には微細スプレーコーティングを行うことが有効であることが分かった 4. まとめ ペルオキソチタン系コーティング剤は ある濃 度範囲の不純物陽イオンで安定化され 長期安定 図 7. 磁器上への酸化チタンコーティング状態. a: コーティングなし, b: 2 回スプレー, c: 4 回スプレー, d:8 回スプレー, e: ハンドスプレー 1 回, f: ディッピング. 能性があるので 実用的には 8 回以下が望ましい と考えられる 表 2 に光触媒製品技術協議会の液 相フィルム密着法でメチレンブルー水溶液を分解 させ 1 時間以内で脱色できるかどうかを調べた結 果を示す スプレー回数 4 回以上でメチレンブル 1mm 化することを明らかにした また ペルオキソチタン系コーティング剤と TiO 2 粉体との複合によって 光触媒性能に優れた膜が形成できることを示し 大容量ガスの分解試験によってその実用性を実証した また 微細スプレー塗布によって基材の意匠性を損なわない良好な光触媒膜が得られることを示し 二次製品化への有効な指針を示すことができた. 6

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