_第3回消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ_資料2

Similar documents


2 ( 178 9)

281



-2 -


判例研究 ( 大野 ) X1 X2 X3 M1 M 事案の概要 ⑴ 当事者等 M1 M2 M1 M1 M2 M 1 T&A master

2

⑴ ⑵ ⑶


_第4回消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ_資料3

Microsoft Word - 【技術流出】頁修正.doc

目次 ドイツにおける貸金業等の状況 2 フランスにおける貸金業等の状況 4 米国における貸金業等の状況 6 英国における貸金業等の状況 8 韓国における貸金業等の状況 9 ( 注 1) 本レポートは 金融庁信用制度参事官室において 外国当局 調査会社 研究者等からのヒアリング結果等に基づいて作成した

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

エチオピア 2017 年 2 月 エチオピアは FATF 及び ESAAMLG( 東南部アフリカ FATF 型地域体 ) と協働し 有効性強化及び技術的な欠陥に対処するため ハイレベルの政治的コミットメントを示し 同国は 国家的なアクションプランや FATF のアクションプラン履行を目的とした委員会

< F2D947A957A8E9197BF F81408ED DE092638AD6>


民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資


⑴ ⑵ ⑶ ⑷ 1

仮訳 / JICA 2012 [ 国章 ] インドネシア共和国最高裁判所 仮処分決定に関する インドネシア共和国最高裁判所規則 2012 年第 5 号 インドネシア共和国最高裁判所は a. 意匠に関する法律 2000 年第 31 号第 49 条から第 52 条 特許に関する法律 2001 年第 14

Microsoft Word - アンチ・ドーピング規程(クリーン).docx

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

では ここで 行政 とは具体的にどういうことなのだろうか まず 国家の三権を簡単にいうと以下のようになる 立法 ~ 法律を作ること 司法 ~ 裁判をすること 行政 ~ 法を執行すること この 法を執行すること とはどういうことなのか もっとも身近な行政活動として 税金 ( 所得税 ) の徴収を考えて

PowerPoint プレゼンテーション

⑵ ⑶ ⑷ ⑸ ⑴ ⑵



市町村合併の推進状況について

勧誘行為を効果的に抑止するため, 罰則や必要な行政処分を設けるとともに, 規制に反してなされた勧誘行為により締結された契約につき消費者が無効ないし解除 ( または取消 ) を主張できる旨の規定を設けること 第 2 意見の理由 1 不招請勧誘の規制の必要性契約締結の勧誘を要請していないにもかかわらず行

JPCERTコーディネーションセンター製品開発者リスト登録規約

個人情報保護規定

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行


Microsoft Word _3.docx

に含まれるノウハウ コンセプト アイディアその他の知的財産権は すべて乙に帰属するに同意する 2 乙は 本契約第 5 条の秘密保持契約および第 6 条の競業避止義務に違反しない限度で 本件成果物 自他およびこれに含まれるノウハウ コンセプトまたはアイディア等を 甲以外の第三者に対する本件業務と同一ま

国会への法案提出を目指すこととする としている 同方針をもとにパーソナルデータに関する検討会が立ち上げられ, 平成 26 年 (2014 年 )6 月 9 日付けで パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱 ( 事務局案 ) が示されたところである しかしながら, その結論によっては, 個人に関

<4D F736F F F696E74202D20984A93AD8C5F96F CC837C A815B C F38DFC8BC68ED28D5A90B38CE3816A2E707074>

金融商品取引法の改正 ~ インサイダー取引規制に係る見直しについて 1. はじめに 2013 年 4 月 16 日に 金融商品取引法等の一部を改正する法律案 が第 183 回国会に提出され 同年 6 月 12 日に成立 同月 19 日に公布されました ( 平成 25 年法律第 45 号 以下 改正法

<433A5C C6B617A B615C B746F705C8E648E965C8D7390AD8F918E6D82CC8BB38DDE5C A28F6F91E882CC8FF095B696E291E88F D7390AD A5C95BD90AC E937894C55C D837A A96A28F6F91E882CC8FF

untitled


2

2

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

14個人情報の取扱いに関する規程

12

平成21年6月23日

<はじめに> 退職後, 民間企業等に再就職した者による現職職員への働きかけ規制などにより, 職員の退職管理を適正に行い, 職務の公正な執行及び公務員に対する住民の信頼を確保するため, 地方公務員法が改正され, 平成 28 年 4 月 1 日に施行されました 本市では, 改正法の施行に伴い, 旭川市職

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

日商協規程集

民事訴訟法

<4D F736F F D20938C CC8AEE967B8CA082CC934B977094CD88CD81762E646F63>

1. 欧州連合における意匠検索 ( 調査 ) の必要性 1.1 欧州連合における意匠制度欧州共同体意匠制度とは 欧州連合知的財産庁に 1の出願 登録を行うことで 欧州連合加盟国全部をカバーする意匠権を得ることが出来る制度です 欧州連合は 下の地図のうち 水色及び薄緑色の国が加盟し成立しています スイ

イ -3 ( 法令等へ抵触するおそれが高い分野の法令遵守 ) サービスの態様に応じて 抵触のおそれが高い法令 ( 業法 税法 著作権法等 ) を特に明示して遵守させること イ -4 ( 公序良俗違反行為の禁止 ) 公序良俗に反する行為を禁止すること イ利用規約等 利用規約 / 契約書 イ -5 (

2019-touren1-1

とができます 4. 対象取引の範囲 第 1 項のポイント付与の具体的な条件 対象取引自体の条件は 各加盟店が定めます 5. ポイントサービスの利用終了 その他いかなる理由によっても 付与されたポイントを換金することはできません 第 4 条 ( 提携サービス ) 1. 提携サービスは 次のとおりです

社会保険労務士法.xlsx

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

契約書案

営業秘密管理実務マニュアル

Webエムアイカード会員規約

厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律

制定 : 平成 24 年 5 月 30 日平成 23 年度第 4 回理事会決議施行 : 平成 24 年 6 月 1 日 個人情報管理規程 ( 定款第 65 条第 2 項 ) 制定平成 24 年 5 月 30 日 ( 目的 ) 第 1 条この規程は 定款第 66 条第 2 項の規定に基づき 公益社団法

参加人は 異議申立人が挙げていない新たな異議申立理由を申し立てても良い (G1/94) 仮 にアピール段階で参加した参加人が 新たな異議申立理由を挙げた場合 その異議申立手続は第 一審に戻る可能性がある (G1/94) 異議申立手続中の補正 EPCにおける補正の制限は EPC 第 123 条 ⑵⑶に

1. 元職員による働きかけの規制 ( 第 38 条の 2 関係 )1 1 離職後に営利企業等 1に再就職した元職員(= 再就職者 ) は 離職前 5 年間に在職していた地方公共団体の執行機関の組織等 2の職員に対して 当該営利企業等又はその子法人と在職していた地方公共団体との間の契約等事務 3につい

Microsoft Word - 個人情報保護規程 docx

財団法人日本体育協会個人情報保護規程

改定前 新旧対照表 < カードローン規定 > 改定後 カードローン規定 カードローン規定 第 12 条 ( 期限前の利益喪失事由 ) (1) 借主について次の各号の事由が一つでも生じた場合には 当行の通知催告がなくても 借主は本債務全額について当然に期限の利益を失い 第 8 条に定める返済方法によら

Microsoft Word - 行政法⑤

技術的制限手段に関する現状 BSA ザ ソフトウェア アライアンス 2017 年 2 月 15 日

ロボットショップポイントサービス利用規約

平成 30 年度新潟県自殺対策強化月間テレビ自殺予防 CM 放送業務委託契約書 ( 案 ) 新潟県 ( 以下 甲 という ) と ( 以下 乙 という ) とは 平成 30 年度新潟県自殺対 策強化月間テレビ自殺予防 CM 放送業務について 次の条項により委託契約を締結する ( 目的 ) 第 1 条

2017 年 ( 平成 29 年 )5 月に成立した 民法の一部を改正する法律 が 2020 年 4 月 1 日から施行されます 民法には契約等に関する最も基本的なルールが定められており, この部分は 債権法 などと呼ばれます この債権法については 1896 年 ( 明治 29 年 ) に制定されて

1 資料 1 パーソナルデータの利活用に関する制度改正に係る法律案の骨子 ( 案 ) TM 2014 年 12 月 19 日 内閣官房 IT 総合戦略室 パーソナルデータ関連制度担当室

<4D F736F F D F8E598BC6906C834E D8DDA B837C815B838B95D233817A2E646F63>

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

資料 財産の隠匿 散逸防止策について 第 1 総論 1. 財産保全の必要性 消費者被害事案の中には 事業としての実態がない詐欺的な商法を典型として 早期に財産を保全する必要性の高い事案が存在する 個々の消費者としては 自らの債権の保全や被害の回復のために 民事保全手続や破産申立て等をすることにより

保証契約とは しゅさいむしゃ が 保証契約 とは, 借金の返済や代金の支払などの債務を負う 主債務者 その債務の支払をしない場合に, 主債務者に代わって支払をする義務を負うことを約束する契約をいいます なお, 連帯保証契約 とは, 保証契約の一種ですが, 主債務者に財産があるかどうかにかかわらず,

_第7回オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会_資料1-2

〔問 1〕 抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

UAE における雇用差止 ビザ発給停止処分 2017 年 1 月日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) ドバイ事務所ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課

( 内部規程 ) 第 5 条当社は 番号法 個人情報保護法 これらの法律に関する政省令及びこれらの法令に関して所管官庁が策定するガイドライン等を遵守し 特定個人情報等を適正に取り扱うため この規程を定める 2 当社は 特定個人情報等の取扱いにかかる事務フロー及び各種安全管理措置等を明確にするため 特

物品売買契約書

個人情報保護規程

(3) 始業 終業時刻が労働者に委ねられることの明確化裁量労働制において 使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化する (4) 専門業務型裁量労働制の対象労働者への事前通知の法定化専門業務型裁量労働制の導入に当たり 事前に 対象労働者に対して 1 専

弁理士試験短答 逐条読込 演習講座 ( 読込編 ) 平成 29 年 6 月第 1 回 目次 平成 29 年度短答本試験問題 関連条文 論文対策 出題傾向分析 特実法 編集後記 受講生のみなさん こんにちは 弁理士の桐生です 6 月となりましたね 平成 29 年度の短答試験は先月終了しました 気持ちも

平成  年(行ツ)第  号

Microsoft Word - シャトルロック利用規約+個人情報の取扱いについてver4-1.docx

PYT & Associates Attorney at law

対イラン制裁解除合意履行日以降に非米国企業 が留意すべきコンプライアンス要件 2016 年 11 月 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) ドバイ事務所 ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課

〔問 1〕 Aは自己所有の建物をBに賃貸した

業務委託基本契約書

Transcription:

第 3 回消費者法分野におけるルール形成の在り方検討ワーキング グループ EU 消費者法における民事 行政 刑事的執行の位置づけ および フランス消費者法におけるその連携 2018 年 5 月 24 日 カライスコスアントニオス ( 京都大学 ) 取引法を中心に EU 消費者法において民事ルール 行政処分 刑事処分を通じたエンフォースメント ( 以下 それぞれ 民事的執行 行政的執行 刑事的執行 という ) がどのように位置づけられているのか および フランス消費者法においてこれらがどのように連携しているのかを分析する フランス法を取り上げる理由は EU 主要国の中でも 消費者法における民事的執行 行政的執行 刑事的執行が特にバランスよく連携していることにある 1 EU 消費者法における位置づけ EU 消費者法の執行に関する事項は基本的に加盟国に委ねられている ( 欧州連合運営条約 (Treaty on the Functioning of the European Union, TFEU) 288 条参照 ) 加盟国は EU 法の執行において民事法 行政法 刑事法をどのように用いるのか選択できる 消費者法の体系および EU 消費者法の国内法化に関する基本的なアプローチの違い ⑴ EU 加盟国における異なるアプローチ 加盟国によって採られるアプローチが異なるたとえば ドイツ イギリス フランスにおけるアプローチの主な特徴をみると ドイツ : 民事的執行 ( 集団的なものを含む ) が中心 刑事的 行政的執行の役割は相対的に小さい イギリス : 行政的執行 + 刑事的執行 民事的執行の役割は相対的に小さかった ( 近年強化 ) フランス : 民事的執行 + 行政的執行 + 刑事的執行 1

⑵ 効果的な執行の原則 ( 実効性の原則 principle of effectiveness) ア欧州連合司法裁判所の判決による展開欧州連合司法裁判所 (Court of Justice of the European Union, CJEU) によって展開された (Rewe 事件 1 Comet 事件 2) - 加盟国は EU 法に基づく権利の執行に関する条件を 救済を実質的に不可能あるいは非常に困難とするような形で構成してはならない (Rosalba 事件 3) + 加盟国は EU 法に基づく権利の保護を確保するために 十分な救済手段を提供しなければならないイ EU 第二次法の規定第二次法 : 第一次法である基本条約に基づいて採択される規則や指令 ( ア ) 不公正契約条項指令 93/13/EEC 7 条 (1): 加盟国は 相当かつ効果的な手段 (adequate and effective means) を確保しなければならない Océano Grupo 事件 4: 裁判所が 契約条項の不公正性について職権で審査する権限をもつことは 指令 7 条の目的を達成することにも貢献する 裁判所の職権による審査に関するこの考え方は 後の判決によって 他の領域にも拡張された 消費者信用指令 87/102/EEC(Rampion and Godard 事件 5) 信用提供者に対する消費者の救済権を国内法化する規定について 営業所外契約に関する指令 85/577/EEC(Martín Martín 事件 6)( 同指令は 後に消費者権利指令 2011/83/EU に吸収された ) 営業所外契約に関する撤回権について負う情報提供義務を事業者が履行しなかった場合について 裁判所の権限のみならず 義務でもある この権限の行使については 期間制限はないものとする ( 職権による場合と当事者による主張があった場合のいずれについても Cofidis 事件 7) ( イ ) 金融サービス通信取引指令 2002/65/EC 11 条 : 加盟国は 適切な制裁 (appropriate sanctions) を確保しなければならない + 制裁は効果的 比例的かつ抑止的 (effective, proportional and dissuasive) なものでなければならない 1 Case 33/76 2 Case 45/76 3 Case C-261/95 4 Case C-240/98 5 Case C-429/05 6 Case C-227/08 7 Case C-473/00 2

( ウ ) 不公正取引方法指令 2005/29/EC 11 条 : 加盟国は 相当かつ効果的な手段 (adequate and effective means) を確保しなければならない 13 条 : 加盟国は 不公正取引方法指令を国内法化する規定に対する違反について罰則を定め これを実行化しなければならない 10 条 : 自主行動規準 ( 定義規定は 2 条 (f)) ( エ ) 第 1 号会社法指令 68/151/EEC 6 条 : 適切な罰則 (appropriate penalties) Berlusconi 事件 8: 罰則の選択は加盟国の裁量に属する ただし 一定の制約ありウ刑事的執行が必要となる場合 一般的に 民事的執行 行政的執行 刑事的執行のいずれを用いるのかは加盟国の判断に委ねられている 例外として EU は 刑事的執行を求めることができる 環境保護 9 ⑶ 消費者保護協力規則 2006/2004/EC の影響規則 2006/2004/EC: 消費者の利益侵害が複数の加盟国に関わるものである場合について 各加盟国の所管当局が共同して対応するための枠組みを規定 行政的執行の強化 ⑷ 最新の展開 : 消費者のためのニューディール消費者のためのニューディール (New Deal for Consumers) 2018 年 4 月 11 日に欧州委員会によって提案 :EU における消費者の権利と執行を強化 その一環として EU 消費者法への違反に対する効果的な制裁を可能とするために 加盟国の消費者当局による制裁を強化 = 行政的執行の強化 集団的被害回復 8 Joined Cases C-387/02, C-391/02 and C-403/02 9 Case C-440/05 3

2 フランス消費者法における連携 ⑴ 総論 フランス消費者法の主な特徴 消費者法に関する包括的な立法としての消費法典 (Code de la Consommation) の存在 消費者法の全体像を一覧することが可能 民事的執行 行政的執行 刑事的執行の組合せ 複合的な執行 問題の性質に応じて適切な執行方法を用いることが可能 消費法典では 制裁に関する規定はそれぞれひとつのまとまりとして配置され 民事 刑事 行政に分けられている 基本的に 行為規範と制裁が分けられている 執行についてもひとつの法典に定められていることから それぞれの執行手段の間の関連性を把握し バランスを保つことがより容易 ( ただし 現時点ではまだ徹底がされていない ) 歴史的経緯 2016 年の消費法典改正 ( 再編纂 ) ⑵ 各論 EU 指令の国内法化にみる執行の在り方消費法典の規定を中心に いくつかの主要な EU 指令の国内法化における執行の在り方 (3 つの執行方法の連携 ) を概観するア不公正契約条項指令 93/13/EEC ( ア ) 民事不公正契約条項は書かれていないものとみなす (L.241-1 条 ) ( イ ) 行政デクレ (L.212-1 条に定めるもの ) に規定する不公正契約条項が契約に含まれる場合は 自然人に対しては 3,000 ユーロ以下 法人に対しては 15,000 ユーロ以下の過料 (L. 241-2 条 ) イ不公正取引方法指令 2005/29/EC 誤認惹起的取引方法 攻撃的取引方法 不招請電話勧誘 ( ア ) 誤認惹起的取引方法に対する制裁 A 刑事 2 年の禁固および 300,000 ユーロの罰金 (L.132-2 条 ) 罰金の額は 違反行為によって得られた利益に比例して 行為の時に判明している直近 3 年間の年間売上高の平均の 10% または違反行為を構成する広告その他の取引方法のために支出された費用の 50% まで増額可能 5 年以下の職業制限 (L.132-3 条 職業制限は 刑法典 131-27 条に従ったもの ) 有罪判決の内容の公表 (L. 132-4 条 ) 4

( イ ) 攻撃的取引方法に対する制裁 A 民事攻撃的取引方法によって締結された契約の ( 取消的 ) 無効 (L. 132-10 条 ) B 刑事 2 年の禁固および 300,000 ユーロの罰金 (L. 132-11 条 ) 罰金の額は 違反行為によって得られた利益に比例して 行為の時に判明している直近 3 年間の年間売上高の平均の 10% まで増額可能 5 年以下の職業制限 (L. 132-12 条 ) ( ウ ) 不招請電話勧誘に対する制裁 A 行政 自然人に対しては 15,000 ユーロ以下 法人に対しては 75,000 ユーロ以下の過料 (L. 242-16 条 ) ウ消費者権利指令 2011/83/EU 契約締結前の情報提供義務 営業所外契約 通信取引契約 ( ア ) 契約締結前の情報提供義務 自然人に対しては 3,000 ユーロ以下 法人に対しては 15,000 ユーロ以下の過料 (L. 131-1 条 ) 一部重要な情報 (L. 111-7 条 L.111-7-2 条 ) については 自然人に対しては 75,000 ユーロ以下 法人に対しては 375,000 ユーロ以下の過料 (L. 131-4 条 ) ( イ ) 営業所外契約および通信取引契約 A 民事 契約書面を交付しなかった場合の営業所外契約の ( 取消的 ) 無効 (L. 242-1 条 ) 重要な情報を事前に提供しなかった場合の通信取引契約の( 取消的 ) 無効 (L. 242-2 条 ) 事業者が消費者に返金を行わない場合における遅延利息 (L. 242-4 条 ) B 刑事 契約書面を交付しなかった場合 撤回権を行使するための書式を交付しなかった場合 営業所外契約の締結日から 7 日間が経過する前に支払を受けた場合につき 事業者に対し 2 年の禁固および 150,000 ユーロの罰金 (L. 242-5 条以下 ) 5 年以下の職業制限 (L. 242-8 条 職業制限は 刑法典 131-27 条に従ったもの ) 5

C 行政 情報提供義務違反について 自然人に対しては 3,000 ユーロ以下 法人に対しては 15,000 ユーロ以下の過料 (L. 242-10 条以下 ) 撤回権に関する違反行為について 自然人に対しては 15,000 ユーロ以下 法人に対しては 75,000 ユーロ以下の過料 (L. 242-13 条 ) 民事的執行における消費者団体の役割私訴権 違法行為差止訴権 共同参加訴権 代位損害賠償訴権 グループ訴権 行政当局の調査権限 提訴権限競争 消費 詐欺防止総局 (DGCCRF) の権限を強化する傾向 フランス国内における行政的執行および刑事的執行の評価 6