NASA 惑星探査データベース (PDS) と その利用の実際 天間崇文 (NASA / JPL)
目次 1. PDSの概要 2. 組織 3. データの取得とフォーマット 読み込み 4. データ処理 5. 日本 欧州での活用 6. まとめ 7. 簡単なデータ読み込み実演
惑星探査データとは 観測データ カメラ 分光器 高度計などによる測定結果 探査機の位置 / 姿勢情報 対象天体の暦 これらが各探査で同一フォーマットだと便利 Planetary Data System (PDS)
PDS とは NASA の惑星探査データの格納方式 基準を満たすための審査 ( 年 1 2 回 ) 詳細な説明文書 (WEB ラベル ) WEB 上でアクセス可 (CD, DVD 配布有 )
PDS で格納するデータの種類 探査データ 観測データ 探査機位置 / 姿勢情報など 地上観測データ シューメーカー レビー彗星の木星衝突など 実験 シミュレーションデータ 例 : 私の PH 3 分子吸収係数表 ( 審査中 )
Node とは PDS を形成している各グループのこと それぞれに担当が決まっている アメリカ中に散在 PDS の構造 本部は Goddard
データの取得と読み込み画像データを例に 1. 観測データの取得 1. どこからダウンロードするのか 2. データフォーマット 3. データの読み方 2. データの各種較正
観測データの取得 1 PDS の WEB からデータサーチ http://pdsimg.jpl.nasa.gov/search 例 ) 土星探査機 CASSINI 分光器 VIMS では 見てみましょう
label.lbl 同じもの header data.qub
観測データの取得 2 各観測機器の推進グループが配信 (Arizona State, Univ. of Arizona など ) PDSのWEBにあるデータと同一 データ取得者の直接管理で更新が早い 例 ) 火星探査機 Odyssey 赤外 可視カメラ THEMIS
PDS 観測データフォーマット ヘッダとデータが同一ファイルにある 天文でお馴染みの FITS に類似 ヘッダはテキスト ヘッダ領域は可変 較正処理情報を随時追加できる ヘッダ内のポインターで データ位置を指定 データ領域 3 次元データ (.qub) 空間 2 次元 + 波長 ( 又は位置情報 )1 次元
ヘッダ例
データ領域
データ読み込み 自作プログラムで データを読む 後ほど IDL で実演 既存ソフトを使う ISIS (Integrated Software for Imagers and Spectrometers) アメリカ地質調査所 (USGS) で作成 / 配布 例 : 火星南極冠の雲 生データ (MOC / MGS)
データ処理の流れ画像データの場合 1. 観測データの取得 1. どこからダウンロードするのか 2. データのフォーマット 3. データの読み方 2. データの各種較正 1. ISIS ソフトの使用 2. SPICE による位置計算
観測データの各種較正 ISIS の利用 ISIS: 主に画像 分光データ用 http://isis.astrogeology.usgs.gov/ 生データから絶対較正 * 幾何補正まで可 較正データ更新時 各研究者が生データを独自に再較正できる ISIS ソフトをダウンロードすると 各探査機器の較正データも取得できる ( ものもある ) Linux, Unix, Mac OS X で稼働 絶対較正済みデータを配信する機器も有 ( 例 : Cassini/VIMS, THEMIS) 例 : 火星南極冠の雲 感度較正済み生データ (MOC / MGS)
SPICE パッケージの利用 1. 観測データの取得 1. どこからダウンロードするのか 2. データのフォーマット 3. データの読み方 2. データの各種較正 1. ISIS ソフトの使用 2. SPICE による位置計算 1. 探査機 / 対象天体の位置 姿勢情報の取得 NAIF が提供する SPICE Kernels SPICE Kernel の例 2. 位置計算ツール SPICE Toolkit
SPICE による位置計算 探査機 / 対象天体の位置 姿勢データが必要 NAIF (Navigation and Ancillary Information Facility) PDS の Node( グループ ) の一つで JPL が管轄 上記データの 計算基盤 (SPICE Kernels) 計算ソフト (SPICE Toolkit) を提供 ISIS の幾何補正もこの SPICE で行われる PDS に留まらない汎用性 例 : 火星南極冠の雲 感度較正済み地図投影 (MOC / MGS)
SPICE の構造 K: kernel の略 探査機 惑星 観測機器 軌道 天体情報機器情報 姿勢 時刻
Spice Kernels (Data) の取得 NAIF WEB からダウンロード http://naif.jpl.nasa.gov/naif/data.html 例 ) 外惑星探査 クリックするとカッシーニの探査機姿勢情報が得られる
SPICE Kernels aareadme.txt 各カーネルのディレクトリー毎にあり ファイル名の意味などを説明 Kernel ファイル バイナリーもしくはテキスト 観測データと同様に ヘッダとデータは同一ファイルに格納 ( ヘッダのみ = ラベル )
SPICE Kernels の例 Instrument Kernel (IK) より抜粋 土星探査機カッシーニの VIMS 分光器 テキストで説明 データ部分 このファイルはテキストデータ
SPICE Toolkit とは SPICE Kernel を読み込み ある時刻の 探査機 対象天体の位置や姿勢 観測機器の視野方向等を計算するサブルーチン 関数の集合体 NAIF WEB から取得可能 http://naif.jpl.nasa.gov/naif/toolkit.html C, Fortran, IDL が存在 ソースコードを公開 サンプルコードも多数 ( 叩き台に利用できる ) PDS に関係なく 観測計画などにも利用可能
処理の流れのまとめ どこかの node から生データ取得 ISIS で輝度 幾何補正 較正済みデータ 基本的に ISIS で全処理するのが効率的 しかし 難点 ISIS の公開版は 問題があっても修正が遅い 幾何補正 : SPICE で独自にできる 輝度較正 : 別途配布コードあり
PDS 向上の余地 長い審査過程 (1995 Galileo データが 一部まだ審査中!?) 特定領域の 複数探査機に跨ってのデータ検索 ( 開発中 特に火星 ) データ検索 一括取得機能が一部使いづらい
日本での PDS 活用 ユーザーとして 特に問題なし 発信者として はやぶさは既に PDS でデータ格納 ( 安部 吉川氏の昨年の発表 ) Selene, Bepi-Colombo など今後の探査でもアーカイブ方式として考えられている のぞみ SPICE Kernel も NAIF に!
欧州宇宙機関 (ESA) の試み PDS 形式で ESA からデータ配信 ESA の惑星探査 火星探査マーズエキスプレス タイタン探査カッシーニ ホイヘンス 金星探査ビーナスエキスプレス http://www.rssd.esa.int/index.php?project=psa
まとめ NASAでは惑星探査に関するデータを同一フォーマットで格納し WEBで配信 PDS 観測データ 配信は NASA サイト or 機器管轄グループサイトから 読み込みは 独自 既存ソフト共に可能 画像 分光データの較正 アメリカ地質調査所 (USGS) が ISIS ソフトを提供 位置情報計算 NAIF が必要情報を SPICE Kernels として配信 ISIS でもできるが SPICE Toolkit + Kernels で独自に計算することも可能 PDS は日欧も採択する惑星探査データの標準格納システムとなりつつあるおわり ( 続いて実演 )