Ⅲ 林業
Ⅲ 林 業 1. 愛媛県の森林 林業の特徴本県の森林は 県土の 71% に当たる約 40 万 1 千 ha で 先人達の積極的な造林活動により緑豊かな森林 が造成されており 林産物の供給はもとより 水源の涵養や土砂災害の防止 快適な環境の提供 文化の 維持 継承 生物多様性の保全など 多面的な機能の発揮によって 私たちの生活に多くの恩恵をあたえ てくれる県民共有の貴重な財産となっている (1) 森林の現状本県の民有林面積は 36 万 1 千 ha であり そのうちスギ ヒノキを中心とする人工林面積が 22 万 1 千 ha と民有林の約 61% に達しており 全国でも有数の林業県となっている これら人工林資源は 主伐期を迎え 豊富な森林資源を循環利用することで地方創生を図ろうとする気運が高まっているが 木材価格の低迷による林家の経営意欲の低下や林業従事者の減少等 林業を取り巻く状況は依然厳しく 長期間手入れがなされず放置された森林が増加し 森林の持つ公益的機能の低下が懸念されている (2) 林産物の生産状況 本県の木材生産量は 素材 ( 丸太 ) が 60.6 万 m 3 で全国第 10 位 ( ヒノキ 1 位 スギ 11 位 ) 製材品が 51.0 万 m 3 で全国第 5 位となっており 全国でも屈指の木材生産県である 平成 22 年の公共建築物等木材利用促進法制定などにより 公共施設等における木材利用については高 まりを見せているが 少子高齢化に伴う住宅着工戸数の減少が予想される中 県産材の一層の販路拡大と 利用促進による木材の需要拡大が必要である その他の林産物生産では きのこ類や山菜類 木炭等があり 特に乾しいたけは 153 トンと全国第 4 位 である 東日本大震災後 原発事故の風評被害等の影響により乾しいたけ取引価格が数年間暴落したこと に加え 生産者の高齢化 減少が相まって原木伏せ込み量は減少傾向にあり 今後の生産量が懸念されて いる (3) 健全な森林の育成整備これまで県では 平成 13 年を 森林そ生元年 と位置づけ 本県独自の水源林対策や放置森林対策を 実施するとともに 17 年から森林環境税を導入し 県民参加による森林環境の保全に取り組むほか 18 年度からは えひめ森林そ生プロジェクト に取り組み 木材の生産から加工流通に至るコスト縮減を図 りつつ 間伐等を中心として森林整備を推進してきた また 平成 28 年に策定した えひめ森林 林業振興プラン において 間伐等の森林整備面積の目標 を 9,200ha/ 年と定め その達成に向け 市町や森林組合等林業事業体に対して 施業の集約化や路網の整 備 高性能林業機械を導入した計画的かつ効率的な森林整備を働きかけるとともに 国補助事業や森林環 境税を活用した本県独自の事業を展開し 着実な森林整備に努めている さらに 林業の成長産業化に向けて平成 26 年度から実施している 林業躍進プロジェクト では こ れまでの間伐に加えて計画的な主伐の実施による素材生産量の拡大を目指しており 伐採跡地の適確な更 新を確保し 森林の保全と資源の再生を図ることとしており 主伐から造林までを一貫して作業するシス テムの導入やコンテナ苗等の優良種苗の活用などによる効率的な森林整備を推進している (4) 県産材の需要拡大 県産材の需要拡大を図るため 愛媛県産材製品市場開拓協議会と連携して 首都圏等大消費地において 知事トップセールス マッチング商談会の開催や展示会への出展などを行い販路開拓に努めている 14
また 公共施設の木造 木質化や公共土木事業への利用を促進するとともに 県産柱材の無償提供制度 やリフォーム事業により木造住宅の建設促進に努めるほか 製紙用原料やバイオマスエネルギー活用など 新たな分野での利用拡大を図っている また 新たな構造用材料として注目を浴びている CLT については 愛媛県 CLT 普及協議会と連携し CLT 建築物の促進等の普及 一般化を促進するとともに 西条市に全国初となる原木加工から CLT ま での一貫生産工場が完成し 平成 30 年 4 月から本格稼働を開始している 表 1 本県林業の主な指標 生産基盤 林業生産 担い手 木材産業 項 目 県土面積 林野面積 林野率 民有林 面 蓄 人工林 積 積 素材生産量 林業産出額 林業経営体数 森林組合労働者数 森林組合数 素材需要量 外材依存率 製材工場数 民有林林道密度 保安林率 愛媛県全国 全国構成比 全国順位 568 千 ha 37,797 千 ha 1.5% 26 位 29 年国土地理院 400 千 ha 24,802 千 ha 1.6% 23 位 2015 世界農林業センサス 71% 67% - 19 位 361 千 ha 17,389 千 ha 2.1% 19 位林野庁統計データ (H29.3.31)[ 全国民有林 順位 ] 103,866 千 m3 4,015,575 千 m3 2.6% 16 位地域森林計画 (H29.12)[ 愛媛県 ] 面積 221 千 ha 7,916 千 ha 2.8% 10 位 ( 率 ) 61% 46% - - 蓄積 85,049 千 m3 2,795,379 千 m3 3.0% - 606 千 m3 21,279 千 m3 2.8% 10 位 29 年 木材統計 816 千万円 45,181 千万円 1.8% 18 位 29 年 農林水産統計 2,538 経営体 87,284 経営体 2.9% 13 位 2015 年 世界農林業センサス 423 人 17,288 人 2.4% 17 位 27 年度版 森林組合統計 13 組合 592 組合 2.2% 18 位 974 千 m3 26,337 千 m3 3.7% 9 位 29 年 木材統計 23% 19% - - 98 工場 4,814 工場 2.0% 24 位 6.9m/ha 5.1m/ha - 11 位 37% 49% - - 資 料 2. 林業生産の動向 (1) 造林 人工造林は 昭和 30 年代前半には約 1 万 ha の実績があったが年々減少し 平成 24 年度には 70ha まで 落ち込んだが 29 年度は 298ha まで回復した また 間伐については 近年 年間約 8~9 千 ha の森林で実施されてきたが 搬出間伐による県産材の 増産に努めたことなどから 平成 29 年度は 4,624ha となっている 本県の民有林面積 36 万 1 千 ha の約 61% を占める 22 万 1 千 ha の人工林のうち 間伐を必要とする Ⅳ 齢 級から ⅩⅡ 齢級の森林が 16 万 ha あり 今後とも間伐を一層推進する必要がある 表 2 人工造林及び間伐実績 単位 :ha 区分 20 年 21 年 22 年 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 人工造林 175 150 98 88 70 99 128 150 261 298 再造林 79 68 48 39 27 70 87 123 231 288 拡大造林 96 82 50 49 43 29 41 27 30 10 間伐 8,712 9,640 8,907 8,005 5,659 6,120 5,027 4,936 4,832 4,624 (2) 木材需給 木材需要量は 近年の製材工場の規模拡大等に伴い増加傾向で推移しており 平成 29 年の県内需要量 15
は 974 千 m 3 ( 対前年比 126%) となった 表 3 木材 ( 素材 ) 需給量の推移 単位 : 千 m 3 区 分 年 次 15 年 16 年 17 年 18 年 19 年 20 年 21 年 22 年 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 需 県内需要量 899 953 899 859 851 752 725 713 705 723 762 753 755 774 974 要 県外移出量 82 68 82 93 109 147 122 138 100 92 103 118 97 85 82 量 総数 (A) 981 1,021 981 952 960 899 847 851 805 815 865 871 852 859 1,056 供 県内生産量 449 463 449 460 537 521 466 499 470 471 504 530 525 541 606 給 県外移入量 63 58 63 65 53 55 67 62 77 80 106 131 138 129 224 量 外材輸入量 (B) 469 500 469 427 370 323 314 290 258 264 255 210 189 189 226 国産材率 (A-B)/A 52.2 51.0 52.2 55.1 61.5 64.1 62.9 65.9 68.0 67.6 70.5 75.9 77.8 78.0 78.6 (3) 特用林産物 実 特用林産物は 乾しいたけを中心としたキノコ類の生産が多く 林業産出額のうち平成 28 年は 20% を 占めている このうち乾しいたけの生産量は 全国第 4 位の 153 トン (H29) で 中山間地域の貴重な収 入源となっている また 近年 県下各地で乾たけのこ生産が開始され 農家林家の所得向上と放置竹林の拡大防止につな がるものと期待されている (4) 林道整備等 森林資源の整備充実 林業の合理的経営及び森林の集約的管理を図るとともに 森林の有する公益的機 能の発揮と地域林業の振興を図るため 森林基幹道をはじめとする林道網等の整備拡充を積極的に推進し ている 平成 29 年度末における林内道路延長 ( 林道 公道等 ) は 6,171km となり 平成 28 年に策定した えひめ森林 林業振興プラン の目標達成に向け事業を推進している 山地に起因する災害を防止 あわせて森林の保全と水資源の確保を図るため 国が平成 26 年度に策定 した森林整備保全事業計画 ( 平成 26 年度 ~ 平成 30 年度 5 ヶ年 ) のほか 県が策定する地域森林計画に 基づき治山事業を計画的に実施している 績 (5) 林業労働力林業労働者 ( 雇用労働者 ) 数は 1,006 人 ( 平成 29 年 ) で このうち森林組合作業班員が全体の 44% を占めている また 作業労働者の中で 60 歳以上の占める割合が 29% となっている 表 4 林業労働力の現状 総 数 うち森林組合作業班員 60 歳以上比率比率 1,006 人 294 人 29% 440 人 44% 愛媛県林業労働力確保支援センター 林業事業体実態調査 3. えひめ森林 林業振興プラン ( 第 5 次愛媛県総合林政計画 ) の推進 基本理念 林業の成長産業化と健全な森林づくり 県産材の本格的な活用時代に向けて 本県の人工林が本格的な活用期を迎えていることから 従来の間伐に加えて 主伐の計画的 段階的な 導入による森林資源を循環利用する仕組みの構築と新たな木材需要を創出し 林業を地域の成長産業に育 成するとともに 立地条件に応じた適確な更新を図り 森林の有する多面的機能を高度に発揮させるなど 森林を健全な姿で次世代へ継承する えひめ森林 林業振興プランの目標 ( 目標年度 : 平成 32 年度 ) 県産材の利用拡大 : 素材生産量 67 万 m3/ 年 森林整備の推進 : 森林整備面積 9,200ha/ 年 16
(2) えひめ森林 林業振興プランの概要 1. 策定趣旨本県の人工林が本格的な活用期を迎えていることから 従来の間伐に加えて 主伐を計画的 段階的に導入し 森林資源を循環利用することで 林業を地域の成長産業に育成するとともに 立地条件に応じた適確な更新を図り 森林の有する多面的機能を高度に発揮させるなど 森林を健全な姿で次世代へ継承する 2. 基本理念もり 林業の成長産業化と健全な森林づくり ~ 県産材の本格的な活用時代に向けて~ 3. 計画期間 平成 28 年度 ~ 平成 32 年度 (5 ヶ年 ) 県産材の利用拡大 : 素材生産量 67 万 m 3 / 年 森林づくり 磨け! 地域の宝 間伐 主伐 多面的機能の高度発揮 木材生産 持続的な森林経営 管理体制の構築 下刈り 森林 林業 森林の環境保全等に関する研究と普及 植栽 木材市場 木材産業 人づくり 来たれ若人! ネクストフォレスターの育成 製材 加工 担い手の確保 育成 特用林産物 木製品 地域資源を利用できる人材の育成 木造住宅 バイオマス利用 製紙原料 海外輸出 CLT 等新たな需要 公共建築 地域づくり 目指せ! 木材のフル活用 木材需要の創出と利用拡大 川上から川下にわたる一体的な活性化 木材加工 利用技術の開発と普及 目標の達成に向けた取り組み 林業躍進プロジェクトの目標 森林資源の循環利用 山村地域の雇用拡大 県産材の加工流通の拡大 競争力の向上 間伐に加えて主伐の段階的な導入 120ha(H26 36 千 m 3 ) 600ha (H30 18 万 m 3 ) 17
4. 森林環境税を活用した新たな森づくりの推進森林は森林所有者の財産であるばかりでなく 水源のかん養 県土の保全 地球温暖化の防止 生物多様性の確保など様々な公益的機能を有している一方 県民や社会からの多様な要請や森林に 対する深い関わりへの期待が高まりつつあることなどから 県では これまで進めてきた 森林そ 生 の取り組みを更に一歩進め より多くの県民に森林に対する理解を深めていただくとともに 県民の参加 協力 支援をいただきながら県民と一体となって 森林環境の保全 と 森林と共生 する文化の創造 を目指した施策を 県民参加の森林づくり をテーマとして平成 17 年 4 月から 推進している 森林環境の保全と森林と共生する文化の創造を目指して 森林環境税 森林環境保全基金 指定事業 県が使途を定めて実施するもの 積み立て 基金取り崩し 事業方式 公募事業 県民の皆様から取り組みを公募し実施するもの 調査 審議 透明性 効率性の確保森林環境保全基金運営委員会 県民の参加 県民の協力 森とくらす 県民と森との交流促進 森を知る県民活動の推進 県民がふれあう森の設置 森をつくる 水を育む森の創造 貴重な森の保全 環境に配慮した森の育成 木をつかう 木と子供たちのふれあい促進 みんなが集う施設への木材利用 くらしに活かすバイオマスの利用 県民と森との交流を促進させるための拠点づくり 県民の支援 豊かな県民生活の実現 18