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UIC 世界高速鉄道会議の開催について 1. はじめに 2015 年 7 月 7 日から10 日にかけて 当社はUIC( 国際鉄道連合 ) と協力して 第 9 回 UIC 世界高速鉄道会議 を東京で共催した UIC 世界高速鉄道会議は 高速鉄道をテーマとした会議としては世界最大規模を誇り 1992 年の第 1 回会議以降数年に一度 世界各国で開催されている このたび 高速鉄道誕生から約半世紀を迎えるにあたり 同会議が高速鉄道誕生の地である日本で開催されることとなった 本稿では 世界約 40 ヵ国から1,200 名が参加した 第 9 回 UIC 世界高速鉄道会議 について報告する UIC 活動に積極的に関わっている UICの活動は 地域別の活動とテーマ別の活動の2つに大別され 世界各国で定例会やワークショップが開催されている 当社は発展著しいアジア太平洋地域に属し 清野会長を筆頭として 38の同地域メンバーとともにアジア太平洋地域の更なる発展を目指している また UIC 会員だけでなく 会員以外の行政機関 産業界 あるいは他の業界と広く知見を共有することもUICの重要な活動の一つである UICは 多くの鉄道関係者が集まり 情報共有や意見交換を行う場として国際会議を開催しており その中で最大のものが UIC 世界高速鉄道会議 である 2.UICと当社の関係 UICは 会員相互間の協力を推進し 世界の鉄道の発展に貢献することを目的として 1922 年に設立された世界最大の鉄道国際機関である 本部をフランス パリに置き 現在約 95 ヵ国 200 団体が加盟している 当社は 民営化前の国鉄時代に UIC 設立当初から加盟し 2009 年から2012 年には石田副会長 ( 当時 ) がUIC 会長を務め 現在は清野会長がアジア太平洋地域議長を務めるなど 東日本旅客鉄道株式会社総合企画本部国際業務部国際機関グループ つのだ角 ふみのり 田史記 3.UIC 世界高速鉄道会議 1964 年に日本において世界初の高速鉄道 新幹線 が誕生し 続いて1981 年にフランスで高速鉄道 TGV が開業すると 高速鉄道は都市間をつなぐ大量高速輸送手段として大きな期待と注目を集めるようになった 図 1に示す通り 1990 年前後から欧州各地で建設や計画が開始されるようになり 21 世紀に入るとこの動きは世界に広がった その総距離は 今や全世界で30,000kmに達しようとしている このような高速鉄道への注目の高まりを受け UIC は世界各国の高速鉄道関係者の最新技術や情報の共有化を目的とし 1992 年に国際会議 ユーレイルスピード (Eurail Speed) を開催した ベルギー ブリュッセルにて開催された第 1 回会議以降 同会議は数年に一度欧州各都市で開催され 中国 北京で開催 7 鉄道車両工業 476 号 2015.10

km 図 1 世界の高速鉄道ネットワーク延長と主な開業年 図 2 UIC 世界高速鉄道会議の開催実績 された第 7 回会議より UIC 世界高速鉄道会議 (UIC World Congress on High Speed Rail) と名称を変えた 以降 高速鉄道をテーマとした世界最大の国際会議として 歴史を重ねている これまでの会議開催実績を図 2に示す 同会議は 今回で9 回目を迎えるが 高速鉄道誕生から約半世紀を迎える記念すべきタイミングであることから 高速鉄道誕生の地である日本での開催が実現することとなった 4. 第 9 回 UIC 世界高速鉄道会議 第 9 回 UIC 世界高速鉄道会議 の概要を報告する ( 図 3) 会議構成は オープニングセレモニー パラレルセッション ラウンドテーブル クロージングセレモニー テクニカルビジット となっており さらに鉄道関連メーカーや鉄道会社による展示会が併催された 会議のテーマと特徴今回の会議は 高速鉄道誕生から半世紀という大きな節目となることから 会議全体のテーマを Celebrate the past, Design the future( 過去を祝し 未来を描こう ) とし 会議前半で高速鉄道の過去 50 年の功績や革新を振り返り 後半で今後 50 年の高速鉄道の更なる発展を展望する という構成にした また 幅広いテーマについてバランスよく包括的に発表 議論する場にするため 技術的なテーマのセッションと政策 経営 営業的なテーマのセッションが50% ずつになるよう配慮した この2つの 50/50 コンセプトにより これまでの50 年を網羅的に振り返り 今後 50 年をあらゆる側面から展望する機会を創出した また 地球環境への配慮からペーパーレスの会議を目指すこと 登壇者や発表者からの一方的な発信ではなく 聴講者を巻き込んだ 鉄道車両工業 476 号 2015.10 8

図3 第 9 回 UIC 世界高速鉄道会議の実績概要 インタラクティブな会議とすること この 2 強化など 各国の高速鉄道の課題や今後の計 つを実現するため タブレット端末の利用と 画について発表した いう初の試みを行った 株式会社東芝殿のご さらに 安倍内閣総理大臣 太田国土交通 協力により全参加者にタブレット端末を配布 大臣もオープニングセレモニーに出席され し 聴講者が随時議論に参加できるようにし 日本を代表して 日本の新幹線の技術を広く た このような取組みにより ICT 技術の活 海外に展開し貢献したい と挨拶された 内 用による全員参加型会議の実現に成功し 参 閣総理大臣と国土交通大臣の出席により 日 加者の満足度も高いものとなった 本が官民一体となり 高速鉄道界において世 オープニングセレモニー 界をリードしていくという強いメッセージが 会議冒頭を飾るオープニングセレモニーに 世界に発信された は 世界各国から高速鉄道保有国の鉄道会社 の代表が登壇し 華やかな顔ぶれとなった ( 図 4) 主催者代表として登壇した UIC 会長 ( ロ シア鉄道社長 )( 当時 ) ウラジミール ヤクー ニン氏が 高速鉄道のこれまでの半世紀の経 験と教訓を基に 次の半世紀のあるべき姿を 描きたい UIC 副会長 ( イタリア鉄道社長 ) ミケール エリア氏が 技術革新を追求し 課題や情報を共有していきたい と会議への 思いを述べた 当社の冨田社長は主催者とし て 高速鉄道のあらゆるテーマについて経験 と知見を振り返り 共有し 次の半世紀にお いて高速鉄道が社会で重要な役割を果たすた めに何をすべきなのか 土台を作る機会とし たい と 同会議の意義を述べた 続いて フランス 中国など各国の鉄道会社の代表が ネットワーク拡大 他の輸送モードとの連携 9 鉄道車両工業 476 号 2015.10 図4 オープニングセレモニー

パラレルセッションパラレルセッションは 技術 ( インフラ関係 ) 技術( 車両関係 ) マネジメント 政策 社会 文化 顧客 という大きな5つのテーマに分類され さらに インフラメンテナンス エネルギー 環境 運行 駅 沿線地域との関係 競争 など計 34に細分化された専門テーマで専門家による発表が行われた 発表者は 50/50コンセプト に基づいてUICと当社の協議により選考され 最終的に世界 28 ヵ国 169 名のスピーカーが発表を行うこととなった 発表者数の上位 5か国は 1フランス :31 名 2 日本 :20 名 3スペイン :18 名 4 中国 :17 名 5 米国 : 12 名である 各セッションでは 各分野の専門家が自国の最新の取組みや課題について実績の紹介や問題提起を行い 実りある議論が交わされた ( 図 5) 車両関係においては 高速鉄道におけるブレーキの性能や運行経験からの知見 車両や運行の信頼性の議論 騒音や二酸化炭素排出に関するライフサイクルコストの分析等の環境対策 省エネルギー技術等について報告が 行われた また 将来を見据えて 各国の今後の高速鉄道車両や 車両運用や制御に必要な新技術などの紹介を内容としたプレゼンテーションや議論が行われた ラウンドテーブル会議前半 ( セッション1 ~ 3) の総括としてラウンドテーブル1 会議後半( セッション4 ~ 6) の総括としてラウンドテーブル2が行われ ハイレベルな鉄道関係者が議論を交わした ( 図 6) ラウンドテーブル1では 過去半世紀を振り返り 技術 インフラ戦略 長期プロジェクトのガバナンス 偶発的な事 図 5 パラレルセッションのようす 図 6 ラウンドテーブル 鉄道車両工業 476 号 2015.10 10

象への対応力 などのテーマについて 登壇者が議論を交わした また ラウンドテーブル2では 地球環境問題の都市間交通市場への影響 今後の駅戦略 高速鉄道の競争力向上に求められる技術などについて議論が行われ 今後取り組むべき課題について認識を高めるとともに 高速鉄道のこれからの半世紀を展望した 当社の小縣副会長は これまでの高速鉄道発展の源泉は様々なイノベーションにあった 今後も高速鉄道が社会 経済に対して重要な役割を果たして行くためにイノベーションの継続が必要である と述べ ラウンドテーブル2を締め括った クロージングセレモニークロージングセレモニーでは 米国 マレーシアなど今後高速鉄道の建設を目指す国の代表が登壇し 各国の高速鉄道計画について発表した また 第 10 回会議は2017 年にトルコのイスタンブールで開催されることが発表され トルコ鉄道のオマール ユルドュズ社長が挨拶した 最後に閉会の挨拶に立った冨田社長は 今回の会議を通じてそれぞれの国が新しい鉄道のヒント 手がかりを掴んだのではないかと思う 今日を新たなスタートとして 世界の仲間とともに前進しよう と高速鉄道の更なる発展を呼び掛けた 展示会世界各国の鉄道関連メーカー 鉄道会社など 40 社が出展し 最新の製品やサービスを紹介した ( 図 7) 展示会の3 日間の来場者はのべ2,200 名にのぼる 一般社団法人日本鉄道車輌工業会の多くの会員 ( 計 19 社 ) にも展示会に出展して頂いた この場をお借りしてお礼を申し上げる 各メーカーのブースでは それぞれ趣向を凝らし 製品 サービス等をアピールした 特に日本の鉄道関連メーカー各社においては 日本において各国よりハイレベルな高速鉄道関係者や海外メーカー等が集まる稀有な機会であったため この展示会がビジネス拡大のチャンスとなったことと願っている 当社の展示ブースでは 運転体験ができる E5 系の新幹線シミュレーターを設置した 多くの来場者が運転体験をし 最新のシミュレーター機器と運転設備に目を輝かせた また 3D 映像の放映やパネルの展示は 多くの来場者の興味を引いた さらに 会場の受付ブース横には JR 北海道 東海 西日本 九州 鉄道総研と共同でJR 共同ブースを設置し 日本の新幹線の歴史を紹介するパネルを展示することで 参加者に今回の会議開催地である日本が新幹線誕生の地であることを 図 7 第 9 回 UIC 世界高速鉄道会議 展示会 11 鉄道車両工業 476 号 2015.10

強く印象付けるとともに 日本の新幹線への理解を深めてもらった テクニカルビジットテクニカルビジットでは メンテナンス施設や研修センター等 当社の新幹線乗車や鉄道関連施設の見学を行い 当社の安全やサービスに対する理解を深めてもらった ( 図 8) 参加者の興味 関心に合ったコースに参加していただくため バラエティに富んだ8 つのコースを用意した コースの1つには 2015 年 3 月に開業した北陸新幹線の乗車も含まれており 最新の高速鉄道の魅力をアピールすることができた 参加者からは 日本の高速鉄道の安全性や快適性を体感できたという声があがった 図 8 テクニカルビジットのようす 5. おわりに今回の会議は 当社にとって過去最大の国際会議であったが プログラムの構成やテーマの選定 タブレットの活用等の工夫により これまでにない国際会議を作り上げることが できた 参加者からは 安倍総理大臣はじめ世界からハイレベルな方が出席し また政府 行政 鉄道事業者 メーカーとあらゆる関係者が出席しているのを見て 今後も高速鉄道は発展すると勇気づけられた ( アジアの方 ) 情報収集 人脈づくりの両面から有意義な会議であった 参加してよかった ( 北米の方 ) といった声を頂いた これほどの大規模な国際会議にもかかわらず 大きな問題もなく無事に終えることができたのは 登壇者 発表者の皆様 一般社団法人日本鉄道車輌工業会の多くの会員各社を含む出展企業 団体の皆様 参加者の皆様 そして会議運営に協力いただいた多くの企業 団体の皆様のおかげである この誌面を借りて心より感謝申し上げる 今回の会議において 全ての参加者が 今後の高速鉄道の発展に寄与しうる情報や人脈を得ることができたのであれば主催者として望外の喜びである 半世紀後 高速鉄道が世界中で より多くのお客さまに選ばれ 社会 経済を豊かにしていることを願ってやまない また この会議の主催によって 当社の存在感を世界に示すとともに世界各国にネットワークを広げたことは 当社のグローバル市場への進出に向けた大きな一歩となったと感じている 会議で得た知見と人脈を最大限に活かし 世界各国の鉄道関係者とともに高速鉄道の持続的な発展を実現することで 新たな半世紀を切り拓いていきたい 鉄道車両工業 476 号 2015.10 12