平成 18 年度 食の安全 安心セミナー ~ 農薬に関する安全と消費者の信頼確保に向けた新たな取組 ~ の概要 岡山出張所長古澤康紀 当機構と中国四国農政局は 平成 18 年 10 月 27 日 ( 金 ) 広島 YMCAホール国際文化ホール ( 広島市中区 ) において 食の安全 安心セミナー を実施しましたので その概要をご紹介します 1 趣旨消費者の食の安全 安心への関心が高まる中 農産物やその製造段階における生産履歴に関する情報提供について消費者団体や流通産業関係者からの要望は高く 生産者は 野菜等農産物の生産段階において農薬の適正使用等を含めた食品の安全性確保対策の充実とその情報提供が求められている こうした状況をふまえ 消費者等に対し 農薬に関する安全性の確保に向けた食品の製造 流通販売段階での取組や農産物の生産段階での安全性確保に向けた食品安全 GAPの取組み トレーサビリティ システムのあり方等を紹介するセミナーを開催する 2 内容 (1) 基調講演 1 食の安全 安心とトレーサビリティによる農産物流通改革の方向 田上隆一氏 ( 日本 GAP 協会理事長 農業情報学会副会長 農業情報コンサルティング 代表取締役 ) 2 JA 雲南の水耕野菜におけるGAPの取組について 小田達雄氏 ( 雲南農業協同組合営農マーケティング事業部中央営農経済センター掛合サブセンター係長 ) (2) パネルディスカッション ( テーマ ) 農薬に関する安全と消費者の信頼確保に向けた新たな取組 <コーディネーター > 田上隆一氏 <パネリスト> 小田達雄氏 ( 講師 ) 藤岡良朗氏 ( 社団法人全国スーパーマーケット協会広島県副会長 ) 中原律子氏 ( 社団法人広島県消費者協会会長 ) < 助言者 > 佐藤京子氏 ( 農林水産省消費 安全局農産安全管理課課長補佐 ) -1 -
(3) 参加者消費者 消費者団体 生産者 生産者団体 行政関係者等約 140 名 3 セミナーの概要 (1) 基調講演 1 農薬に関する安全と消費者の信頼確保に向けた新たな取組 ( 田上隆一氏 ) GAP(Good Agricultural Practice) とは何か GAPは 農産物生産の各段階で食品危害 環境負荷 農作業者に関わるリスクを最小化するために 生産者が守るべき管理基準のことである 顧客から信頼される適切な農場管理とは ⅰ) 農産物の安全管理に関すること ⅱ) 環境への配慮に関すること ⅲ) 農業者の安全と福祉に関すること ⅳ) 農場経営と販売管理に関すること この4 項目を実現することにより持続的な農業生産システムを確立することであり この実現のため農場管理のポイントを列挙したものがGAPであると考えている EurepGAPの世界的普及と日本版 GAP 導入への取り組み 世界的には 欧州のEurepGAPが普及しており 事実上の世界標準といわれている また 中国においては輸出向け農産物に照準を当て GAP 導入モデルを推進している 日本は農産物を輸出していなかったこともあり GAPへの対応は遅れをとっている 日本の生産者は 世界に通じるGAPを作り農場管理することで 世界中に農産物を販売して欲しい 農産物の安全性を確保するためには トレーサビリティシステムが重要な要件であることは当然であるが 生産段階でのコンプライアンス経営 生産工程でのリスク管理などが重要になってきている したがって 日本の生産現場に即した日本版 GAP(JGAP) を導入促進することが重要である -2 -
2 JA 雲南の水耕野菜におけるGAPの取組について ( 小田達雄氏 ) JA 雲南 ( 島根県奥出雲地方 ) では GAPの取組みによる安心な水耕野菜 愛称 みどりちゃん の生産 販売を行っている 商品はネギ サラダホウレンソウ 水菜などがあり 4つのキーワード ( 減農薬 適正管理 衛生管理の徹底 JAによる栽培確認 ホームぺージによる公開 ) の条件を満たした商品を出荷している ( 栽培マニュアルが守られている生産者は みどりちゃん 栽培生産者として認定し 栽培認定証 を発行する ) ⅰ) 減農薬 適正管理においては 農薬散布回数の制限や栽培マ二ュアルに基づく記録表の記帳 ⅱ) 衛生管理においては ほ場の衛生管理の徹底 ⅲ) 栽培確認においては 定期巡回による記録表の記帳 ⅳ) 情報公開においては ホームぺージでいつ どこで収穫されたものであるかの生産履歴を提供している また 専属フードコーディネーターによるレシピを作成 食べ方を提案している マーケットでの引き合いが強く 鳥取 広島 岡山 神戸 大阪方面へ広く出荷しており 今後は販売額 3 億円を目指す -3 -
(2) パネルディスカッション パネルディスカッションは 農薬に関する安全と消費者の信頼確保に向けた新たな取組 をテーマとして 田上氏の進行により行われた 進め方は 1 食を供給する側に どのように安全性を担保してもらうのか 2 消費者に安心をどのように提供すれば良いのか という二点をポイントに行われた 1 食を供給する側に どのように安全性を担保してもらうのか 農薬の使用にあたって 生産者には定期的な講習会に参加してもらい使用の指導を行うとともに ほ場の巡回指導も行っている 使用する農薬についても人体に影響のないものを選定しているが ほ場に害虫防除ネットを設置して農薬に頼らない方法も実施している 嘘のない取組みを実施することが大事である 消費者の方から作物に関する情報開示要求があれば提示できるよういつでも準備しておくことが必要である また 消費者には顔が見える販売 ( 店頭 試食販売など ) を推進することや流通 消費者の関係者に我々の現場を実際に見に来てもらうことも重要である 残留農薬に対して管理に対する基本的なコンセプトを設定し 社内外に説明を実施している そのコンセプトとは ⅰ) 使用管理を明確にすること ⅱ) 使用方法の確認をすること ⅲ) 使用した農薬の残留検査体制の確立 ⅳ) 生産から販売まで追及整備できること の4 項目である 市場の流通は多様化が進み複雑化している したがって 安全基準マニュアルの整備が必要と考える GAPは 輸入品に対する安全確保も可能であり 全ての業者が食に関する安心 安全の確保に向けて努力すべきである GAPの取組みは 生産者側のみではなく 流通段階においても行われないとフードチェーンでの食品の安全は担保されない 2 消費者に安心をどのように提供すれば良いのか 生産 流通 販売 消費の全ての段階で食の安全が担保されていなければ 消費者は安心ではない 例えば 消費者は農薬の残留について不安を持っているので 生産履歴の情報提供は欠くことはできない しかしながら 消費者 -4 -
側には生産者側の情報が伝わってこない 見えてこないことについて不安を持っている 例えば 農薬はなぜ必要なのか 安全は確保できるのか 農産物に農薬は残るのか等の疑問に対して 情報開示は消費者に分りやすいやり方で行うともに 消費者側も基礎的な学習が必要である 日本国内においては 一律的な統一された農薬散布の基準を作成することは現状では難しい (3) 会場との意見交換 パネルディスカッションの後 会場から質問が行われた GAPへの取組みや有機栽培を行うには それなりコストがかかるが 生産者の収益性は上がらない 流通団体で使用しない農薬の決定基準とは ( これらの質問に対しては コーディネーター パネラーから 収益性については 農産物の生産から食品の販売までの中で 流通改革 ( ビジネスモデルの改革 ) が必要であるとともに GAPは生産者のみが実施するものではないこと 使用しない農薬の決定基準については 流通団体で使用禁止農薬を定め 安全性の基準を管理している等の説明が行われた ) (4) まとめ 田上氏は 食の安全については生産者 消費者 流通業者など関係者が様々な情報を共有しながら 心の 理解 リスクコミュ二ケーションによって解決していくことが必要であることをコメントして パネルディスカッションを締め括った -5 -