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研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

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記者発表開催について

ポイント 藻類由来のバイオマス燃料による化石燃料の代替を目標として設立 機能性食品等の高付加価値製品の製造販売により事業基盤を確立 藻類由来のバイオマス燃料のコスト競争力強化に向けて 国内の藻類産業の規模拡大と技術開発に取り組む 藻バイオテクノロジーズ株式会社 所在地 茨城県つくば市千現 2-1-6

生物時計の安定性の秘密を解明

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生物の形質改良を加速する新しいゲノム改良技術の発明 大規模ゲノムシャフリング技術 TAQing システム 1. 発表者 : 小田有沙 ( 東京大学大学院総合文化研究科特任助教 ) 中村隆宏 ( 東京大学大学院総合文化研究科助教 ) 太田邦史 ( 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻教授東京大学生

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

1 編 / 生物の特徴 1 章 / 生物の共通性 1 生物の共通性 教科書 p.8 ~ 11 1 生物の特徴 (p.8 ~ 9) 1 地球上のすべての生物には, 次のような共通の特徴がある 生物は,a( 生物は,b( 生物は,c( ) で囲まれた細胞からなっている ) を遺伝情報として用いている )

みどりの葉緑体で新しいタンパク質合成の分子機構を発見ー遺伝子の中央から合成が始まるー

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PRESS RELEASE (2012/9/27) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

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物学的現象をはっきりと掌握することに成功した論文である との高い評価を得ています 2. 研究成果ブフネラゲノムの全塩基配列の決定に当たっては 全ゲノムショットガンシークエンス法 4 を用いました 今回ゲノム解析に成功したのは エンドウヒゲナガアブラムシ (Acyrthosiphon pisum) の

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植物が花粉管の誘引を停止するメカニズムを発見

受精に関わる精子融合因子 IZUMO1 と卵子受容体 JUNO の認識機構を解明 1. 発表者 : 大戸梅治 ( 東京大学大学院薬学系研究科准教授 ) 石田英子 ( 東京大学大学院薬学系研究科特任研究員 ) 清水敏之 ( 東京大学大学院薬学系研究科教授 ) 井上直和 ( 福島県立医科大学医学部附属生

「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続」の一部改正について

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

報道機関各位 平成 30 年 11 月 8 日 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 東京工業大学生命理工学院 第 5 回生命理工オープンイノベーションハブ (LiHub) フォーラム バイオマトリックス : 生命科学 材料工学から健康 医療 美容への架け橋 のご案内 東京工業大学生命理工学院は

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難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

15K14554 研究成果報告書

本件に関する問い合わせ先 ( 研究内容について ) 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所技術安全部生物研究推進課主任研究員塚本智史 TEL: FAX: 千

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

図 : と の花粉管の先端 の花粉管は伸長途中で破裂してしまう 研究の背景 被子植物は花粉を介した有性生殖を行います めしべの柱頭に受粉した花粉は 柱頭から水や養分を吸収し 花粉管という細長い管状の構造を発芽 伸長させます 花粉管は花柱を通過し 伝達組織内を伸長し 胚珠からの誘導を受けて胚珠へ到達し

記載例 : ウイルス マウス ( 感染実験 ) ( 注 )Web システム上で承認された実験計画の変更申請については 様式 A 中央の これまでの変更 申請を選択し 承認番号を入力すると過去の申請内容が反映されます さきに内容を呼び出してから入力を始めてください 加齢医学研究所 分野東北太郎教授 組

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

スライド 1

氏名垣田浩孝 ( 論文内容の要旨 ) 糖質は生物科学的にも産業的にも重要な物質群であり 簡便かつ高感度な分析法の開発が求められている 代表的な糖質分析手段として高速液体クロマトグラフィー (HPLC) が用いられているが 多くの糖質に発色団や発蛍光団が無いため 示差屈折計による検出が一般的である し

多様なモノクロナル抗体分子を 迅速に作製するペプチドバーコード手法を確立 動物を使わずに試験管内で多様な抗体を調製することが可能に 概要 京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻 植田充美 教授 青木航 同助教 宮本佳奈 同修士課程学生 現 小野薬品工業株式会社 らの研究グループは ペプチドバーコー

60 秒でわかるプレスリリース 2007 年 1 月 18 日 独立行政法人理化学研究所 植物の形を自由に小さくする新しい酵素を発見 - 植物生長ホルモンの作用を止め ミニ植物を作る - 種無しブドウ と聞いて植物成長ホルモンの ジベレリン を思い浮かべるあなたは知識人といって良いでしょう このジベ

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論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

ポイント 微生物細胞から生える細い毛を 無傷のまま効率的に切断 回収する新手法を考案しました 新手法では 蛋白質を切断するプロテアーゼという酵素の一種を利用します 特殊なアミノ酸配列だけを認識して切断する特異性の高いプロテアーゼに着目し この酵素の認識 切断部位を毛の根元に導入するために 蛋白質の設

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2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

情報解禁日時の設定はありません 情報はすぐにご利用いただけます 基礎生物学研究所配信先 : 岡崎市政記者会東京工業大学配信先 : 文部科学記者会 科学記者会 報道機関各位 2017 年 7 月 25 日 自然科学研究機構基礎生物学研究所国立大学法人東京工業大学 遺伝子撹拌装置をタイミング良く染色体か

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

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抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

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がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

植物機能改変技術実用化開発 ( 事後評価 ) 分科会資料 植物機能改変技術実用化開発 ( 事後評価 ) 分科会資料 個別テーマ詳細説明資料 ( 公開 ) 植物で機能する有用フ ロモーターの単離と活用 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科新名惇彦 山川清栄 1/29 背景 目的

背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

DNA 抽出条件かき取った花粉 1~3 粒程度を 3 μl の抽出液 (10 mm Tris/HCl [ph8.0] 10 mm EDTA 0.01% SDS 0.2 mg/ml Proteinase K) に懸濁し 37 C 60 min そして 95 C 10 min の処理を行うことで DNA

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

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計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

共生菌が植物と共存するメカニズムを解明! ~ 共生菌を用いた病害虫防除技術への応用にも期待 ~ 名古屋大学大学院生命農学研究科の竹本大吾准教授と榧野友香大学院生 ( 現 : 横浜植物 *1 防疫所 ) らの研究グループは 共生菌が植物と共存するためのメカニズムの解明に成功しました 自然界において 植

2019 年 1 月 21 日 自然科学研究機構基礎生物学研究所東北大学大学院生命科学研究科産業技術総合研究所 サンゴがもつ緑色蛍光タンパク質の働きが明らかに ~ 蛍光による共生パートナーの誘引 ~ サンゴ礁を形作り 南の海の生態系の維持に不可欠な存在であるサンゴは その多くが紫外線や青色光を受ける

世界初! 細胞内の線維を切るハサミの機構を解明 この度 名古屋大学大学院理学研究科の成田哲博准教授らの研究グループは 大阪大学 東海学院大学 豊田理化学研究所との共同研究で 細胞内で最もメジャーな線維であるアクチン線維を切断 分解する機構をクライオ電子顕微鏡法注 1) による構造解析によって解明する

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図 1. 微小管 ( 赤線 ) は細胞分裂 伸長の方向を規定する本瀬准教授らは NIMA 関連キナーゼ 6 (NEK6) というタンパク質の機能を手がかりとして 微小管が整列するメカニズムを調べました NEK6 を欠損したシロイヌナズナ変異体では微小管が整列しないため 細胞と器官が異常な方向に伸長し

2018 年度事業計画書 Ⅰ 基本方針 1. 健康関連分野を取り巻く環境と直近の動向 健康医療分野が政府の日本再興戦略の重点分野に位置づけられ 健康 医療戦略が策定されるなど 予防や健康管理 生活支援サービスの充実 医療 介護技術の進化などにより 成長分野としてマーケットは大きく拡大することが期待さ

2017 年 2 月 6 日 アルビノ個体を用いて菌に寄生して生きるランではたらく遺伝子を明らかに ~ 光合成をやめた菌従属栄養植物の成り立ちを解明するための重要な手がかり ~ 研究の概要 神戸大学大学院理学研究科の末次健司特命講師 鳥取大学農学部の上中弘典准教授 三浦千裕研究員 千葉大学教育学部の

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

平成 30 年 8 月 6 日 報道機関各位 東京工業大学 東北大学 日本工業大学 高出力な全固体電池で超高速充放電を実現全固体電池の実用化に向けて大きな一歩 要点 5V 程度の高電圧を発生する全固体電池で極めて低い界面抵抗を実現 14 ma/cm 2 の高い電流密度での超高速充放電が可能に 界面形

PRESS RELEASE 毒のないジャガイモ 参考資料配布 2016 年 7 月 26 日理化学研究所大阪大学神戸大学 - さらに萌芽を制御できる可能性の発見 - 要旨理化学研究所 ( 理研 ) 環境資源科学研究センター統合メタボロミクス研究グループの梅基直行上級研究員 斉藤和季グループディレクタ

NEXT外部評価書

平成14年度研究報告

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

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Hi-level 生物 II( 国公立二次私大対応 ) DNA 1.DNA の構造, 半保存的複製 1.DNA の構造, 半保存的複製 1.DNA の構造 ア.DNA の二重らせんモデル ( ワトソンとクリック,1953 年 ) 塩基 A: アデニン T: チミン G: グアニン C: シトシン U

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

機械学習により熱電変換性能を最大にするナノ構造の設計を実現

記者発表資料

2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

論文の内容の要旨

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

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核内受容体遺伝子の分子生物学

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平成 29 年 2 月 22 日 報道機関各位 国立大学法人東京工業大学 国立遺伝学研究所 大量のオイルを生産する 最強藻類 の秘密を解明 - バイオ燃料の実用化に向け有力な手がかり得る - 要点 バイオ燃料生産に最有望の藻類 ナンノクロロプシス はオイルを高蓄積 細胞内小器官である油滴の表面で オイル合成を行う仕組みを発見 油滴の表面を活用した形質改変により オイルの量的 質的改良に期待 概要 東京工業大学生命理工学院の信澤岳特任助教 太田啓之教授らと情報 システム研究機構国立遺伝学研究所ゲノム進化研究室の黒川顕教授 森宙史助教らの研究グループは バイオ燃料生産に最有望とされるオイル生産藻の一種 ナンノクロロプシス [ 用語 1] の突出して高いオイル生産能力を可能にしている仕組みを解明した 生物が作り出すオイルは油滴 [ 用語 2] とよばれるオイル蓄積に必要な細胞内構造に蓄積される 今回 ナンノクロロプシスが持つ高いオイル生産能力には この油滴の表面で直接的にオイル合成を行う仕組みが重要な役割を果たしていることを発見した しかもこの仕組みは二次共生 [ 用語 3] とよばれる複雑な進化過程において獲得したものであることを突き止めた 藻類が高いオイル生産能力を発揮するうえで重要な仕組みを解明したことは 藻類改良のポイントを明示する成果といえる ナンノクロロプシス油滴表面でのオイル合成能をさらに強化 改変させることで 藻類によるバイオ燃料などの有用脂質生産実用化に向けて大きく前進することが期待される 研究成果は 2 月 20 日 英国科学雑誌 プラントジャーナル (The Plant Journal) のオンライン版に公開された ( 注 ) この研究は東工大の太田教授が科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業 (CREST) 藻類 水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出 研究領域 ( 研究総括 : 松永是 ( 東京農工大学学長 )) における研究課題 植物栄養細胞をモデルとした藻類脂質生産系の戦略的構築 の一環として 東工大生命理工学院の堀孝一助教と国立遺伝学研究所の黒川顕教授 森宙史助教との共同で行った

研究の背景と経緯石油資源を代替できる再生可能エネルギーの創出が強く求められている そのために様々なバイオマス ( 生物資源 ) が着目されている 中でも藻類は単位面積あたりの生産性が高いことや食用作物と競合しないという利点を持つ また 藻類が作り出すオイル ( 油脂 トリアシルグリセロール ) は液体燃料として直接転用可能な原料となり 単位容積あたりのエネルギー効率も高い このため 航空燃料やディーゼル燃料の代替として藻類オイルは最適なバイオマスとして期待されている ナンノクロロプシスは数ある藻類種の中で オイルを乾燥重量あたり50% 以上蓄積することが知られている ( 図 1) また 海水を用いた高密度での培養が可能であることや狙った任意の遺伝子を改変することが可能であることから 液体バイオ燃料の創出にむけた最有望藻類のひとつと考えられている ナンノクロロプシスをバイオ燃料や有用脂質生産の材料として活用するためにはナンノクロロプシスの高いオイル生産能力の仕組みを明らかにし その知見を用いてさらにオイルの生産能力向上や質の改変を行うことが重要である しかし そのための十分な知見はまだほとんど蓄積されておらず この藻類の応用を見据えた基礎研究の推進が急務となっている 研究成果同研究グループは ナンノクロロプシスで発現する遺伝子の網羅的な解析ならびに生体内でのオイル合成機構に着目して解析を行った まず 相同組換え [ 用語 4] [ 用語 5] を利用した手法により主要なオイル合成遺伝子の破壊株群を作出し オイルの生産に特に寄与している3つの主要酵素を同定した 次に これらの細胞内における機能部位を調べたところ 3つのうち2つのオイル合成酵素が油滴の表面にのみ存在して機能することが明らかとなった ( 図 2) これまで植物や藻類ではオイル合成の主要な場は小胞体であるとされており 今回発見されたような油滴表面で機能するオイル合成酵素は珍しい タンパク質の進化的な由来を解析した結果 これらの因子は二次共生という複雑な進化過程によって獲得されたものであることが分かった これにより ナンノクロロプシスの卓越したオイル生産能力を説明する有力な証拠が得られた 今後 この油滴表面におけるオイル生産能力のさらなる強化や機能の改変を行うことで 藻類によるオイル生産の実用レベルでの利用が見込まれる 今後の展開今回の研究過程で ナンノクロロプシスの油滴表面に任意のタンパク質を局在させる方法も明らかになった 今後この方法をさらに発展させ 油滴表面におけるオイル合成効率をさらに強化させたり 機能を改変したりすることにより バ

イオ燃料などの実用化にかなう藻の創出を目指す また 油滴はほとんどの生物種が持つ細胞内小器官である ナンノクロロプシスの油滴表面にタンパク質を局在させる手法は酵母でも機能することから ( 図 3) この成果はナンノクロロプシスの機能の改良にとどまらず ほかの生物種においても有用物質生産をおこなううえで重要な手がかりになると期待される 用語説明 [1] ナンノクロロプシス : 直径 3 µm(1 µm は 1 mm の 1000 分の 1) ほどの海洋性微細藻類 培養条件によりオイルを乾燥重量の最大 50% 以上蓄積することができることなどから 液体バイオ燃料生産に最有力とされる藻類 [2] 油滴 : 脂質単層膜により成る細胞内構造で 殆どの生物種が作り出すことができる 内部に油脂をはじめとする疎水性物質を隔離 貯蔵する 単に油脂蓄積用の器官ではないことが明らかになってきており 種を超えて着目されている細胞内小器官である [3] 二次共生 : 細胞内共生により葉緑体とミトコンドリアを獲得した藻 ( 一次 共生藻 ) を更に別の真核生物が取り込んだ進化上のイベント 一次共生藻に比べ て更に複雑な由来をもつ遺伝子から成る [4] 相同組換え : 多くの生物は 良く似た DNA 配列 ( 相同な配列 ) 同士を置き換えることができる この仕組みは ナンノクロロプシスや一部の生物種において遺伝子組換えの手法に利用でき 任意の DNA 配列をそれと相同で部分的に異なる DNA 配列に置き換えることができる [5] 遺伝子の破壊株群 : 相同組換えを用いて オイル合成酵素をコードする 4 つの遺伝子を 1 つずつおよび 2 つ同時に排除したナンノクロロプシスを作成 することに成功した

yll The Plant Journal (c) GFP Nile Red 図 1.オイル高生産藻ナンノクロロプシス 左 ナンノクロロプシスの光学顕微鏡像 光の屈折により すこし青みがか GFP LPAT1 って見えるのが油滴 緑に見えるのは葉緑体 右 油脂を大量に蓄積したナンノクロロプシスの蛍光顕微鏡像 緑は葉緑体 黄色は油滴を示す 色は疑似色 GFP LPAT2 GFP LPAT3 図2.ナンノクロロプシスの油滴表面に局在するオイル合成酵素 LPAT4 GFP 左 GFP 緑色蛍光タンパク質 を融合させたオイル合成酵素 中央 蛍光染色した油滴 右 重ね合わせ像 油滴の表面に酵素が局在しているのがわかる スケールバーは 2 µm を示す FI ON (d) LPAT4 GFP LDSP Venus Chlorophyll Eyespot I NT DE yll Page 56 of 87

図 3. ナンノクロロプシスの油滴局在シグナルは出芽酵母でも機能する 蛍光タンパク質そのものは油滴に局在しない ( 上段 ) 一方 ナンノクロロプシスの油滴局在シグナル配列を蛍光タンパク質に付与すると 油滴表層に局在するようになった ( 下段 ) ( 左 )YFP( 黄色蛍光タンパク質 ) の蛍光 ( 中央 ) 明視野像, 粒状に見えるものが出芽酵母の油滴 ( 右 ) 重ね合わせ像スケールバーは 2 µm を示す 論文情報 掲載誌 : The Plant Journal タイトル : Differently Localized Lysophosphatidic Acid Acyltransferases Crucial for Triacylglycerol Biosynthesis in the Oleaginous Alga Nannochloropsis 著者 : Takashi Nobusawa, Koichi Hori, Hiroshi Mori, Ken Kurokawa, Hiroyuki Ohta DOI: 10.1111/tpj.13512 問い合わせ先 東京工業大学生命理工学院教授太田啓之 取材申込み先 東京工業大学広報センター 情報 システム研究機構国立遺伝学研究所ゲノム進化研究室 教授黒川顕