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平成20年度酸性雨調査結果

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緑地科学プロジェクト実習 Ⅰ 国府台緑地調査報告書 千葉大学大学院園芸学研究科 M1 大豆生田萌, 前田一樹, 町田茜 1. はじめに国府台緑地は市内最大級 ( 約 5.1ha) の面積を有する樹林地である. 国府台緑地 ( 以下, 本緑地 ) は北西部水と緑の回廊 1) 上に位

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小嶋紀行:三浦半島におけるマテバシイ植林とスダジイ林との種構成,種多様性および植生構造の比較

1. 調査概要 (1) 目的本調査は計画地において 植物相や希尐種の生育状況 樹林の状況や植生状況を把握し 今後公園整備計画を検討するために必要となる基礎資料を得ることを目的として行うものである (2) 調査対象地 調査対象地を図 に示した 図 調査対象地 1

目 次 1. 方法書と準備書での主な変更点について 3 2. 上層風と高層風の比較について 5 3. 異常年検定について ブラウン-ブランケの植生調査結果について 23 2

はじめに 本報告は 牛久の里山樹木ハンドブック を基にし 演者の調査 撮影の結果をプラスしたものです 画像は全て牛久市内で撮影しました

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樹木等販売一覧表 等 形質分類 販売価格 数量 適用 42 サルスベリ 落葉広葉樹 ,000 1 赤花 43 サルスベリ 落葉広葉樹 ,000 1 白花 44 サルスベリ 落葉広葉樹 ,000 1 赤花 45

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地区名 所在地 表 4.1 天然力を活用した森林施業の事例調査地の概要 調査地番号 植栽木 林齢 整備面積 (ha) 所管 宮崎宮崎県宮崎市 J1 スギ 40 年生 2.2 宮崎森林管理署 長崎長崎県大村市 J2 スギ 53 年生 14.9 長崎森林管理署 佐賀佐賀県武雄市 J3 ヒノキ 53 年生

crenata m m m N R Surface samples Airborne pollen sampler crenata tree sparse C. crenata trees :5, Fig

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Ⅲ解説常緑広樹 Ⅲ解説常緑広樹Ⅲ解説常緑広樹ウバメガシブナ科ウバメガシの特徴 61 炭の最高級品といわれる備長炭はウバメガシが原料です は枝先に集まってつき 楕円形で縁が裏側に巻くように反ります 細かい脈まで透けて見えます 小さな鋸歯がまばらにあります よく似たトベラは鋸歯がないことで区別できます

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研 究 活 動 報 告 入 れ 1 日 1 回 捕 獲 状 況 を 確 認 した ネズミ 類 が 捕 獲 された 場 合 頭 胴 長 と 尾 長 をメジャーで 計 測 し 阿 部 (2005)をもとに 同 定 した 捕 獲 された 個 体 は 個 体 識 別 のために 毛 刈 りを 行 っ た 後

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教養・文化論集 第5巻第1号

世田谷区建築にともなう緑化のための植栽ガイドブック

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調査地 ( 千葉 403 号 ) 図 4.10 位置図 ( 千葉 403 号 )(1/25,000) 調査地 ( 千葉 403 号 ) a 畑雑草群落 b 水田雑草群落 12 シイ カシ二次林 16 クリ コナラ群集 34 スギ ヒノキ サワラ植林 38 竹林 図 4.11 植生区分図 ( 千葉 4

土木研究所資料 第 4095 号 2008 年 2 月 草木系バイオマスの組成分析 データ集 リサイクルチーム総括主任研究員落修一 上席研究員 専門研究員 尾崎正明 牧孝徳 * (* 平成 18 年度在籍 ) 要旨地球温暖化対策やエネルギー対策としてバイオマスの利用が大きく注目されている 河川 道路

岐 阜 県 森 林 研 研 報,36(2007) 資 料 岐 阜 県 内 の 葉 部 抽 出 液 における ポリフェノール 含 量 と 抗 酸 化 活 性 上 辻 久 敏 中 島 美 幸 坂 井 至 通 キーワード:ポリフェノール, 抗 酸 化 活 性, 樹 木, 葉 部,アカメガシワ Ⅰ はじめに

No 科和名種和名学名生活型 環境省レッドリスト 重要種 石川県レッドデータブック 地区別 季節別確認種一覧 (1/6) 外来種 外来生物法生態系被害防止外来種リスト 春秋春秋春秋春秋春秋春秋春秋春秋春秋春秋春秋春秋 1 イワヒバ科クラマゴケ Selaginella remotifolia 多年生草

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2-3-4 評価委員会による評価樫葉林木遺伝資源保存林については ニホンシカの生息数も多く コウヤマキの樹幹の食皮害が認められることから 早急に被害防止策を実施すべき時期にきている 幹の全周に被害が及ぶと リョウブなどとは異なり枯死するため 樹皮保護ネット等で幹を覆う必要がある 2-4 川添林木遺伝

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写真 1. 保護ネットの有る法面 写真 2. 保護ネットの無い法面 3. 調査方法 (1) 植生調査植物の生育状況を把握するため Braun-Blanguet(1964) 植物社会学的手法による植生調査を行った 植生調査は 各調査地点に 5 個ずつ設置した 1m 1m のコドラートにおいて実施し 1

現在は谷あいを三沢川が流れ 平行して鶴川街道 京王線が走っている 若葉台から三沢川に沿って旧道 農道 遊歩道を辿りながら稲城駅まで歩くコースがある ガイドブックなどにはおそらく載っていないが 絶好の自然観察路だ 特に春先がいい 多摩丘陵から消えつつある植物が ここでは数多く見られる そんな植物の一つ

 

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資料 7-1 植生調査結果 ( 地点別調査票 ) 資料 7-1 植生調査結果 ( 地点別調査票 ) 植生調査結果 ( 地点別調査票 ) を 表 7-1.1~ 表 に示す 表 植生調査票 ( 調査地点 Q1)

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変化に伴って植生がどのように変化してきたのか. また, 現在の植生にどのように影響を与えているのかを知ることが二次林の適切な保全対策を考える上で重要であると考えられる. 本研究では,1) こんぶくろ池周辺における過去の森林の取り扱いの履歴を復元し, それが現在の森林構造にどのように反映しているのかを

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事業所名 No. 科名種名学名本社 カシオ計算機 羽村技術 センター 八王子技術 センター 山形カシオ本社山梨事業所 カシオ 電子工業 カシオビジネ スサービス 甲府事業所 1 イワヒバ クラマゴケ Selaginella remotifolia 2 トクサスギナ Equisetum arvense

植物リスト

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Pinus thunbergii Parl. Pinus densiflora Siebold et Zucc e.g. Kamijo et al

しかしながら, 報告書中の記述の中に, キイレツチトリモチについて具体的な確認を伺わせるものは無かった ( 環境庁,1978; 環境庁,1988) そして 1993 年の鹿児島 8 6 水害の前後で, 磯竜ヶ水付近で崖崩れが頻発し, その後の復旧工事で植生環境に大きな変化があり, キイレツチトリモチ

再造林 育林の低コスト化に関する指針 育林の低コスト化に関する指針平成 27 年 3 月高知県林業振興 環境部 1 指針の目的平成 24 年 9 月に策定した 皆伐と更新の指針 では 伐採時期を迎えた人工林を皆伐した後 再造林の適地と判断される伐採跡地では 森林資源の持続的な利用を図るうえでも再造林

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04第12回多々良沼・城沼自然再生協議会発表資料(植物モニタリング2)

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表 1 調査地点一覧のフィールド 次メッシュ調査区分調査法人調査者調査地点コード調査地点名調査年調査月調査日連番コードコードコードコード YO

Ⅲ解説常緑広樹 コジイブナ科 コジイの特徴 の裏面に金色の光沢があります 鋸歯がない場合と 上の方に浅い鋸歯がある場合とがあります 5 月の終わり頃 が枝先でいっせいに開すると 甘い香りが漂ってきます よく似たスダジイとは コジイの樹皮がほとんど割れないのに対し スダジイの成木の樹皮が縦に深く割れる

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NO. 科 NO. 科名種名学名 雪崩堆積 土 ( 大森山 葉山山頂付近夏緑樹林 大森山 ~ 旧愛宕小 西向沼周辺雑木林 大森山一帯 ( スゲ調査 大森山伐採跡地 大森山伐採地杉林 カタクリ園 ユキツハおそ キ群生林の沢 タデ オオミゾソバ なし ヒユ イノコズチ ( ヒカゲ

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(資料3) 奄美大島・徳之島におけるスギ人工林の広葉樹林復元の検討

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平成31年3月上期 過去の みどころ はHPの 2ページ目以降にあります サンシュユのつぼみが見られます マンサク マンサク科 ススキ草原 シナマンサク マンサク科 シナマンサクもマンサクも花期が長いです 園路を修復しています マンサクが咲いています 鳥の隠れ場所として残したススキ イネ科 シナマン

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未成熟ヤギの放牧 内にヤギ小屋 1.9 m 1.9 m を設置し 放牧実験 ストップウォッチを用いて計測し記録した 10分間の 区 以下 牧区という とした Fig. 1 牧区内の 採食行動観察を3回行ない その平均値として相対的 ヤギ小屋を除いた草地面積は180.8 である ヤギは な嗜好性を算出

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3 調 査 方 法 後, 特 段 の 管 理 を 行 わず 遷 移 に 任 せるという 方 針 であったため, 調 査 前 にはエリア 内 は 枯 れ 枝 等 で 覆 われ ており, 調 査 時 には 林 床 を 整 理 する 必 要 があった その 後,ビオトープエリアを 図 に 示 したとおり

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Iijima et al Ohashi et al , 2010 Nagaike et al , Nagai

九大演報 (Bull. Kyushu Univ. For.),98:25-32, 学術情報 九州大学宮崎演習林における長期森林動態モニタリングプロット 8 年間の推移 緒方健人 *, 菱拓雄, 田代直明, 榎木勉, 内海泰弘 3), 鍜治清弘, 長慶一郎, 山内康平, 久保田勝義 3

Microsoft Word - 資料7-2 植物確認種一覧_141208

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( 株 ) 里と水辺研究所

目 次 Ⅰ. 調査の方法と目的 1 (1) 植生調査 ( 毎木調査 ) 1 (2) 植物相調査 1 Ⅱ. 調査実施日 1 Ⅲ. 調査結果 2 (1) 確認群落と現存植生図 2 (2) 各植生の現状と課題 3 (3) 植生調査および毎木調査結果 4 (4) 確認植物 7 (5) 調査のまとめ 12 付表 ( 植生調査票 ) 15

Ⅰ. 調査の方法と目的神戸同友会の森を診断するために 次の2 種類の調査を実施した (1) 植生調査 ( 毎木調査 ) 目的 : 神戸経済同友会の森の成立する森林タイプを明らかにし 森林整備のための課題や方向性を示すとともに 森林整備の効果を把握することを目的に実施した 調査方法 : 代表的な森林タイプにおいて10m 10mの植生調査枠を設定し 高木層 亜高木層 第 1 低木層 第 2 低木層 草本層の階層ごとに 枠内に生育する全ての種をリストアップし 優占度 ( 被度 %) を測定した 第 1 低木層以上の樹木については 本数もカウントした また森林整備の効果を把握するため 整備前後に同一地点でモニタリング調査を行った (2) 植物相調査目的 : 神戸経済同友会の森に生育する植物を明らかにし 保全すべき貴重な種やシンボルとなる特徴的な種の有無の確認 及び自然観察などの基礎資料となるよう 生育種のリストを作成した 調査方法 :2010 年 ~2011 年にかけて歩道や林内を歩き 目視による植物のリストアップを行った 現地で不明な種があった場合は室内に持ち帰り 各種図鑑などで同定を行った 2012 年については 植生調査枠内で確認された植物のリストアップを行った Ⅱ. 調査実施日調査実施日は 下記のとおりである 2010 年 10 月 8 日 2011 年 6 月 7 日 2012 年 10 月 12 日 -1-

Ⅲ. 調査結果 (1) 確認群落と現存植生図現地調査の結果 アカマツ-コナラ群落 ヒノキ群落 スギ群落及びタラノキ群落 ( ヤブ ) の4 群落を確認した それらの分布を現存植生図 ( 図 1) に示した 植生の面積は 順に1.33ha 1.28ha 0.41ha 0.17ha 合計 3.18haである 図 1 現存植生図 -2-

(2) 各植生の現状と課題 アカマツ - コナラ群落概観 : 里山の風景を残す森林であり 尾根部ではアカマツが 斜面ではコナラが多く生育している 課題 : 尾根部にはネザサが多く下草刈りが必要あるが 斜面のコナラの優占林は 林床植物が少ない 現在 常緑低木を中心に伐採を進めており その効果を確かめていく必要がある ヒノキ群落概観 : 高さ 20m になるヒノキの植林 ( 人工林 ) である 林内の低木は 2m 程度と低く貧弱であるが 草本層にはネザサや常緑植物が多く生育している 課題 : 生育密度がやや高く 間伐の時期が来ている 森林組合連合会により間伐が進められており 林床植生の回復など その効果を確かめていく必要がある スギ群落概観 :20m を超えるよく生長したスギの植林 ( 人工林 ) である 課題 : スギの密度は低く 林内はタラノキ群落のヤブとなっており 林内には簡単には近づけない 森林組合連合会と協議の上 整備を進める必要がある タラノキ群落 ( ヤブ ) 概観 : 高さ 5m 程度の低木林である 沢沿いで増水の攪乱を受けるためか ヤブ状となっている しかし 非常に多くの樹木が生育している 課題 : 神戸経済同友会の森へのエントランス部にあり 荒れた景観となっている 森林組合連合会と協議の上 整備を進める必要がある -3-

(3) 植生調査および毎木調査結果植生調査および毎木調査は 森林内の樹種及び立木密度を調査し 森林整備方針の基礎となるものである また 整備前後の状況を把握しておくことで 整備後の変化や生物多様性に及ぼす効果などが検証できる アカマツ-コナラ群落 ( 調査地点 c) 2011 年 ~2012 年にかけて森林整備が行われた 整備前の林分は 亜高木層に常緑高木のマテバシイ アラカシが優占していたことで林内が暗く 低木層や草本層の被度も貧弱であった ( 付表 1) このためマテバシイ アラカシの伐採整備を行った結果 ( 図 2) 林内が明るくなり 雑木林によく出現する種をはじめとする17 種の植物が新たに出現した ( 表 1) これにより草本層の種数は 整備前の39 種から52 種へと13 種増えていた また整備後間もない事から 低木層の被度は整備前後でほとんど変わっていないが 草本層の被度も 整備前の3% から6% へと2 倍に増えた 図 2 整備前後の立木本数および被度の比較 表 1 整備前後の林床における出現種の比較 -4-

整備前整備後 ( 光がよく当たっています ) ヒノキ林 ( 調査地点 a) 樹高 20mに達するヒノキの本数は 10 本 /100m2とやや密であり( 図 3) 今後間伐整備が予定されている 低木層は6~14 種の低木が確認されたが 林内が暗いことから 被度は10% と貧弱であった 草本層は 52~62 種が確認されたが ネザサやネズミモチ ツタなどの常緑植物が繁茂し 被度は約 50% であった ( 付表 2) 図 3 ヒノキ林の立木本数および被度 -5-

タラノキ群落 ( 調査地点 b) タラノキ群落は ヤブ状態であるため 組成のみを示しておく 本群落では 100 m2あたり68 種類もの植物を確認した これは森林性の種のほか 林縁 ( ヤブ ) や路傍の雑草植物が数多く混在しているためである 将来の森林を構成する種を見据えて 景観的に美しくなるよう整備を進める必要がある ( 表 2および付表 3) 表 2 タラノキ群落での確認種 常緑針葉高木 落葉高木 落葉低木 落葉ツル 多年草 一年草 アカマツ アカメガシワ イヌザンショウ アオツヅラフジ イタドリ スギ イソノキ クマイチゴ アマヅル シロヨメナ ヒノキ イロハモミジ クロモジ サルトリイバラ ススキ エゴノキ コアジサイ スイカズラ ダイコンソウ 常緑高木 エノキ コガクウツギ ツタ タチツボスミレ アラカシ カラスザンショウ コバノガマズミ フジ チヂミザサ クスノキ クサギ タラノキ ヘクソカズラ ナガバタチツボスミレ ソヨゴ クマノミズキ ツクバネウツギ ホソバウマノスズクサネザサ ネズミモチ クリ ナガバモミジイチゴ ミツバアケビ ヨウシュヤマゴボウ マテバシイ コシアブラ ニガイチゴ ヒメコウゾ ヌルデ 常緑ツル シダ植物 常緑低木 マルバアオダモ ムラサキシキブ フユイチゴ キヨタキシダ イヌツゲ ムクノキ モチツツジ ムベ シシガシラ ナワシログミ ヤマウルシ トラノオシダ ヒイラギ ヤマザクラ ナライシダ ヒサカキ リョウブ ベニシダ ヤブコウジ ヤワラシダ -6-

(4) 確認植物表 3に示したとおり これまでの調査により76 科 254 種の植物が確認できた これらの内 兵庫県や環境省が指定する絶滅が危惧される貴重な植物は確認されなかった ただし コブシは近畿地方では珍しい植物であるが 今回確認されたコブシは植栽起源のものである -7-

表 3 確認植物一覧 科名 種名 学名 トクサ スギナ Equisetum arvense ゼンマイ ゼンマイ Osmunda japonica ウラジロ コシダ Dicranopteris pedata ウラジロ Gleichenia japonica ワラビ イワガネゼンマイ Coniogramme intermedia オオバノイノモトソウ Pteris cretica イノモトソウ Pteris multifida オシダ リョウメンシダ Arachniodes standishii カラクサイヌワラビ Athyrium clivicola ホソバイヌワラビ Athyrium iseanum ヤマイヌワラビ Athyrium vidalii ホシダ Cyclosorus acuminatus ヤブソテツ Cyrtomium fortunei ヤマヤブソテツ Cyrtomium fortunei var. clivicola キヨタキシダ Diplazium squamigerum ベニシダ Dryopteris erythrosora オオベニシダ Dryopteris hondoensis クマワラビ Dryopteris lacera ヤマイタチシダ Dryopteris varia var. setosa ミゾシダ Leptogramma pozoi subsp. mollissima ナライシダ Leptorumohra miqueliana ナンゴクナライシダ Leptorumophora miqueliana イヌガンソク Matteuccia orientalis ゲジゲジシダ Phegopteris decursive-pinnata イノデ Polystichum polyblepharum コハシゴシダ Thelypteris glanduligera var. elatior ハリガネワラビ Thelypteris japonica ヤワラシダ Thelypteris laxa シシガシラ シシガシラ Struthiopteris niponica チャセンシダトラノオシダ Asplenium incisum ウラボシ ミツデウラボシ Crypsinus hastatus ノキシノブ Lepisorus thunbergianus イチイ カヤ Torreya nucifera マツ モミ Abies firma アカマツ Pinus densiflora スギ スギ Cryptomeria japonica ヒノキ ヒノキ Chamaecyparis obtusa ネズ Juniperus rigida イネ ヌカボ Agrostis clavata var. nukabo ノガリヤス Calamagrostis arundinacea var. brachytricha カゼクサ Eragrostis ferruginea トボシガラ Festuca parvigluma ネズミムギ Lolium multiflorum ササガヤ Microstegium japonicum ススキ Miscanthus sinensis チヂミザサ Oplismenus undulatifolius var. japonicus ヌカキビ Panicum bisulcatum ネザサ Pleioblastus chino var. viridis ケネザサ Pleioblastus shibuyanus f. pubescens ミゾイチゴツナギ Poa acroleuca スズメノカタビラ Poa annua ネズミノオ Sporobolus fertilis カヤツリグサアオスゲ Carex breviculmis ヒカゲスゲ Carex floribunda テキリスゲ Carex kiotensis ナキリスゲ Carex lenta オタルスゲ Carex otaruensis カヤツリグサスゲ属の一種 Carex sp. ヒメモエギスゲ Carex tristachya var. pocilliformis アブラガヤ Scirpus wichurae ツユクサ ツユクサ Commelina communis イグサ ハナビゼキショウ Juncus alatus クサイ Juncus tenuis ヌカボシソウ Luzula plumosa var. macrocarpa 2010 年 2011 年 2012 年 -8-

科名種名学名 2010 年 2011 年 2012 年ユリノギラン Aletris luteoviridis ノビル Allium grayi チゴユリ Disporum smilacinum ヤブラン Liriope platyphylla ジャノヒゲ Ophiopogon japonicus ナガバジャノヒゲ Ophiopogon ohwii アマドコロ Polygonatum odoratum var. pluriflorum サルトリイバラ Smilax china ヤマノイモ ヤマノイモ Dioscorea japonica キクバドコロ Dioscorea septemloba オニドコロ Dioscorea tokoro ラン シュンラン Cymbidium goeringii オオバノトンボソウ Platanthera minor ヤマモモ ヤマモモ Myrica rubra カバノキ ヒメヤシャブシ Alnus pendula オオバヤシャブシ Alnus sieboldiana アカシデ Carpinus laxiflora ブナ クリ Castanea crenata コジイ Castanopsis cuspidata スダジイ Castanopsis cuspidata var. sieboldii マテバシイ Pasania edulis アラカシ Quercus glauca シラカシ Quercus myrsinaefolia ウバメガシ Quercus phillyraeoides コナラ Quercus serrata ニレ ムクノキ Aphananthe aspera エノキ Celtis sinensis var. japonica クワ ヒメコウゾ Broussonetia kazinoki イラクサ コアカソ Boehmeria spicata アオミズ Pilea mongolica ウマノスズクサホソバウマノスズクサ Aristolochia onoei ヒメカンアオイ Asarum takaoi タデ イタドリ Polygonum cuspidatum ミズヒキ Polygonum filiforme ギシギシ属の一種 Rumex sp. ヤマゴボウ ヨウシュヤマゴボウ Phytolacca americana ナデシコ ツメクサ Sagina japonica アケビ アケビ Akebia quinata ミツバアケビ Akebia trifoliata ムベ Stauntonia hexaphylla ツヅラフジ アオツヅラフジ Cocculus orbiculatus モクレン コブシ Magnolia kobus ホオノキ Magnolia obovata タムシバ Magnolia salicifolia クスノキ カゴノキ Actinodaphne lancifolia クスノキ Cinnamomum camphora ヤブニッケイ Cinnamomum japonicum クロモジ Lindera umbellata シロダモ Neolitsea sericea アブラチャン Parabenzoin praecox タブノキ Persea thunbergii ユキノシタ ウツギ Deutzia crenata コアジサイ Hydrangea hirta コガクウツギ Hydrangea luteo-venosa ヤマアジサイ Hydrangea macrophylla var. acuminata バラ キンミズヒキ Agrimonia japonica ヘビイチゴ Duchesnea chrysantha ダイコンソウ Geum japonicum カナメモチ Photinia glabra カマツカ Pourthiaea villosa var. laevis ヤマザクラ Prunus jamasakura リンボク Prunus spinulosa カスミザクラ Prunus verecunda ミヤコイバラ Rosa paniculigera フユイチゴ Rubus buergeri ビロードイチゴ Rubus corchorifolius -9-

科名 種名 学名 2010 年 2011 年 2012 年 バラ クマイチゴ Rubus crataegifolius クサイチゴ Rubus hirsutus ニガイチゴ Rubus microphyllus ナガバモミジイチゴ Rubus palmatus ナンキンナナカマド Sorbus gracilis ウラジロノキ Sorbus japonica マメ ネムノキ Albizia julibrissin ホドイモ Apios fortunei ヌスビトハギ Desmodium oxyphyllum ノササゲ Dumasia truncata メドハギ Lespedeza cuneata ハギ属の一種 Lespedeza sp. ハネミイヌエンジュ Maackia floribunda シロツメクサ Trifolium repens フジ Wisteria floribunda フウロソウ ゲンノショウコ Geranium thunbergii カタバミ カタバミ Oxalis corniculata オッタチカタバミ Oxalis stricta ミカン カラスザンショウ Zanthoxylum ailanthoides イヌザンショウ Zanthoxylum schinifolium トウダイグサアカメガシワ Mallotus japonicus ウルシ ヌルデ Rhus javanica ハゼ Rhus succedanea ヤマハゼ Rhus sylvestris ヤマウルシ Rhus trichocarpa モチノキ イヌツゲ Ilex crenata ソヨゴ Ilex pedunculosa ニシキギ ツルウメモドキ Celastrus orbiculatus コマユミ Euonymus alatus f. ciliato-dentatus ツリバナ Euonymus oxyphyllus ミツバウツギゴンズイ Euscaphis japonica カエデ ウリカエデ Acer crataegifolium イロハモミジ Acer palmatum ウリハダカエデ Acer rufinerve コハウチワカエデ Acer sieboldianum クロウメモドキケケンポナシ Hovenia trichocarpa イソノキ Rhamnus crenata ブドウ ノブドウ Ampelopsis brevipedunculata ツタ Parthenocissus tricuspidata アマヅル Vitis saccharifera マタタビ サルナシ Actinidia arguta ツバキ ヤブツバキ Camellia japonica ヒサカキ Eurya japonica ナツツバキ Stewartia pseudo ー camellia スミレ タチツボスミレ Viola grypoceras コスミレ Viola japonica ナガバタチツボスミレ Viola ovato-oblonga スミレ シハイスミレ Viola violacea キブシ キブシ Stachyurus praecox グミ ツルグミ Elaeagnus glabra ナワシログミ Elaeagnus pungens ウコギ コシアブラ Acanthopanax sciadophylloides ヤマウコギ Acanthopanax spinosus タラノキ Aralia elata カクレミノ Dendropanax trifidus タカノツメ Evodiopanax innovans キヅタ Hedera rhombea ハリギリ Kalopanax pictus セリ オヤブジラミ Torilis scabra ミズキ アオキ Aucuba japonica クマノミズキ Cornus brachypoda リョウブ リョウブ Clethra barbinervis イチヤクソウイチヤクソウ Pyrola japonica ツツジ ネジキ Lyonia ovalifolia var. elliptica アセビ Pieris japonica ヤマツツジ Rhododendron kaempferi -10-

科名 種名 学名 2010 年 2011 年 2012 年 ツツジ モチツツジ Rhododendron macrosepalum コバノミツバツツジ Rhododendron reticulatum ウンゼンツツジ Rhododendron serpyllifolium var. albiflorum アクシバ Vaccinium japonicum ナツハゼ Vaccinium oldhamii スノキ Vaccinium smallii var. glabrum ヤブコウジ マンリョウ Ardisia crenata ヤブコウジ Ardisia japonica サクラソウ オカトラノオ Lysimachia clethroides コナスビ Lysimachia japonica カキノキ カキノキ Diospyros kaki ハイノキ タンナサワフタギ Symplocos coreana エゴノキ エゴノキ Styrax japonica コハクウンボク Styrax shiraiana モクセイ マルバアオダモ Fraxinus sieboldiana ネズミモチ Ligustrum japonicum イボタノキ Ligustrum obtusifolium ヒイラギ Osmanthus heterophyllus リンドウ センブリ Swertia japonica キョウチクトウテイカカズラ Trachelospermum asiaticum var. intermedium クマツヅラ ムラサキシキブ Callicarpa japonica ヤブムラサキ Callicarpa mollis クサギ Clerodendron trichotomum シソ クルマバナ Clinopodium chinense var. parviflorum トウバナ Clinopodium gracile ナギナタコウジュ Elsholtzia ciliata ゴマノハグサタチイヌノフグリ Veronica arvensis ハエドクソウ ハエドクソウ Phryma leptostachya オオバコ オオバコ Plantago asiatica アカネ ヤエムグラ Galium spurium var. echinospermon ツルアリドオシ Mitchella undulata ヘクソカズラ Paederia scandens var. mairei スイカズラ コツクバネウツギ Abelia serrata ツクバネウツギ属の一種 Abelia sp. ツクバネウツギ Abelia spathulata ヤマウグイスカグラ Lonicera gracilipes スイカズラ Lonicera japonica ガマズミ Viburnum dilatatum コバノガマズミ Viburnum erosum ミヤマガマズミ Viburnum wrightii オミナエシ オトコエシ Patrinia villosa ウリ スズメウリ Melothria japonica キク ヨモギ Artemisia princeps シロヨメナノコンギクサジガンクビソウベニバナボロギクヒメジョオンヒヨドリバナブタナニガナオオバナニガナムラサキニガナコウヤボウキシュウブンソウメナモミセイタカアワダチソウオニタビラコ Aster ageratoides var. harae f. leucanthus Aster ageratoides var. ovatus Carpesium glossophyllum Crassocephalum crepidioides Erigeron annuus Eupatorium chinense var. simplicifolium Hypochoeris radicata Ixeris dentata Ixeris dentata f. amplifolia Lactuca sororia Pertya scandens Rhynchospermum verticillatum Siegesbeckia pubescens Solidago altissima Youngia japonica 合計 63 科 180 種 64 科 174 種 76 科 254 種 40 科 84 種 -11-

(5) 調査のまとめ 1) 間伐除伐の効果 二次林での効果表 1に示したとおり 二次林での整備による17 種の植物が増加した ただし 17 種が増加した意味について知る必要がある 増加した種は 3つのグループに分けられており それぞれが示す事柄は次のとおりである 雑木林によく出現する種 :7 種 ( 次ページの写真参照 ) この種は 雑木林を構成する植物で 今回の整備により再生が期待された種群である その中で 7 種も増えた意義は大きく こらの種こそが整備により多様性が増加した種と捉えることができる 林内が明るくなったことで 今後も継続的に生育していくことが期待される 照葉樹林によく出現する種 :2 種一般的に照葉樹林は 二次林からの森林の遷移が進み 林内も暗くなっていくことを意味している そのため カゴノキ テイカカズラは新たに出現したものの 意図した植物ではない その他の種 :8 種 8 種類もの種が増えたようにも見えるが これらの種は伐採跡の明るくなった場所に特徴的に出現する陽地性の先駆植物や路傍の雑草植物たちである 今回の森林整備により 日がよく当たった場所などに生育してきているもので 二次林内で継続的に生育はしていかない 人工林での効果 人工林での調査では 間伐がまだ実施されていなかった この秋に実施されるよう であり 次年度以降の調査に期待したい -12-