第 11 章事業方式の整理 今後の新施設整備において 事業方式は重要な要因であるため 事業方式の概要について整理した 11.1 事業方式の種類事業方式としては その実施主体や役割分担の違い等により 公設公営方式のほか 運転維持管理を長期委託する長期包括委託方式 公設民営方式 (DBO) 及び PFI 方式 (BTO 方式 BOT 方式 BOO 方式 ) がある これらの事業方式の公共と民間事業者の役割を以下に示す 11.1.1 公設公営方式公共が財源確保から施設の設計 建設 運営等のすべてを行う方式 運転業務を民間に委託する場合を含む 11.1.2 公設 + 長期包括委託方式公共が施設の設計 建設を行い 運営に関しては民間事業者に複数年にわたり委託する方式 11.1.3 公設民営方式 (DBO 方式 )(Design-Build-Operate; 設計 建設 運営 ) 公共が起債や交付金等により資金調達し 施設の設計 建設 運営等を民間事業者に包括的に委託する方式 11.1.4 民設民営方式 (PFI 方式 ) (1) BTO 方式 (Build-Transfer-Operate; 建設 譲渡 運営 ) 民間事業者が自ら資金調達を行い 施設の設計 建設 運営を行う 所有権については 施設の完成後に公共に移転 (2) BOT 方式 (Build-Operate-Transfer; 建設 運営 譲渡 ) 民間事業者が自ら資金調達を行い 施設の設計 建設 運営を行う 所有権については 委託期間終了後に公共に移転 (3) BOO 方式 (Build-Own-Operate; 建設 所有 運営 ) 民間事業者が自ら資金調達を行い 施設の設計 建設 運営を行う 所有権については 委託期間終了後も公共に移転を行わない 95
表 11-1 廃棄物処理施設 ( 中間処理施設 ) の整備 運営事業における 事業方式別公共 民間の役割分担 項目公設公営方式 公設 + 長期包括運営業務委託方式 公設民営方式 (DBO 方式 ) 民設民営方式 (PFI 方式 ) BTO 方式 BOT 方式 BOO 方式 民間関与度小大 計画策定公共公共公共公共公共公共 資金調達公共公共民間民間 設計 建設公共公共 民間民間民間 運営民間民間民間民間 施設の所有 ( 建設時 ) 公共公共民間民間 施設の所有 ( 運営期間中 ) 公共公共公共民間 施設の所有 ( 事業終了後 ) 公共公共公共公共 運営モニタリンク ( 運営期間中 ) - 公共公共 96
表 11-2 事業方式の主要項目の定性的比較 凡例 : 公共から見た利点, 課題, 留意点 97
11.2 先行事例公表データ等を基に 民設民営方式の 1 号案件 ( 秋田県大館事業 ) の実施方針が公表された平成 12 年度から平成 22 年度までの 11 年間で熱回収施設の事業手法別の事業実績件数をまとめると表 11-3 に示すとおりとなる 過去 11 年間合計でみると 計 121 件のうち 公設公営方式が 72 件 公設 + 長期包括運営業務委託方式が 19 件 ( 本表の他 平成 11 年以前の工事契約施設への導入件数が 9 件あり いずれも長期包括運営業務委託契約締結は平成 15 年以降 ) DBO 方式が 22 件 民設民営方式 (PFI 方式 ) が 8 件であり 公設公営方式による事業の実施が多いことがわかるが 単年度毎の内訳をみると近年においては DBO 方式の占める件数が増加してきている 年度 表 11-3 全国の熱回収施設に係る事業方式別実績件数民設民営方式 (PFI 方式 ) 公設 + 長期公設民営方式公設公営方式包括運営業 (DBO 方式 ) BTO BOT BOO 務委託方式小計方式方式方式 合計 平成 12 年度 29 5 0 0 0 1 1 35 平成 13 年度 10 1 0 0 0 2 2 13 平成 14 年度 4 0 0 0 0 0 0 4 平成 15 年度 6 1 1 1 1 0 2 10 平成 16 年度 7 2 1 1 0 0 1 11 平成 17 年度 4 3 1 0 0 1 1 9 平成 18 年度 7 2 1 0 0 0 0 10 平成 19 年度 1 4 3 0 0 0 0 8 平成 20 年度 1 1 9 1 0 0 1 12 平成 21 年度 2 0 2 0 0 0 0 4 平成 22 年度 1 0 4 0 0 0 0 5 合 計 72 19 22 3 1 4 8 121 ごみ焼却施設台帳 (( 全連続燃焼方式編平成 21 年度版 ) 廃棄物研究財団 ) 及び自治体 PFI 推進センターホームページ等より整理 公設公営方式及び DB+ 長期包括運営業務委託方式の年度は工事契約年度 DBO 方式及び民設民営方式の年度は実施方針公表 年度 PFI 事業に関しては破たんの事例 ( タラソ福岡 (BOT) 近江八幡市立総合医療センター(BOT) 名古屋港イタリア村 (BOT)) があるが いずれも独立採算型で経営状況が悪化したものである 一方 廃棄物処理事業の場合 行政側が事業者に対して一定の委託料を支払う仕組みであることから 破たんの可能性はほとんどないと考えられる 98
11.3 発注 選定方式地方自治法に定められる契約方式としては 一般競争入札 指名競争入札及び随意契約がある また 一般競争入札には 価格その他の条件が当該自治体にとって最も有利なものをもって申し込みをした者を落札者とすることができる 総合評価一般競争入札 がある 一般競争入札 ( 総合評価一般競争入札含む ) 指名競争入札及び随意契約の内容を以下に整理する 概要 (3) 事業者決定までの主な作業 表 11-4 各発注内容の特徴一般競争入札指名競争入札従来方式総合評価方式 発注者の仕様に基づいて 不特定多数の入札を募り 発注者に最も有利な価格を提示した入札者と契約を締結する方式である 総合評価落札方式 地方自治法に定める 一般競争入札 の一つであり 予定価格の範囲内で申込をした者のうち 価格だけでなくその他の条件 ( 維持管理 運営のサービス水準 技術力等 ) を総合的に勘案して落札者を決定する方式である 平成 17 年 4 月に 公共工事の品質確保の促進に関する法律 ( 以下 品確法 という ) が施行され 国においても 市町村等は 廃棄物処理施設建設工事の発注 選定方式として 品確法に基づき 総合評価落札方式を導入していくべきであるという見解を示している 発注者が 技術 経験 資金力等について信頼できる入札者をあらかじめ指名し 指名入札者間で 発注者に最も有利な価格を提示した入札者と契約を締結する方式である 技術的水準は入札者を指名することにより ある程度担保でき その中での入札価格競争を図ることが可能である 随意契約公募型プロポーザル方式競争の方法によらないで 公募により提案を募集し あらかじめ示された評価基準に従って優先順位を特定した後 最優先順位の民間事業者との間で契約する方式 公正な手続きや適正な契約価格の確保が課題となる (1) 応募者の参加 公募 公募 行政側で設定 公募 (2) 事業者の決定方法 価格 価格 + 技術 価格 技術価格 + 技術 公告前 発注仕様書の作成発注仕様書の作成発注仕様書の発注仕様書の落札者決定基準の ( 落札者決定基準の作成作成作成作成 ) 公告後 価格審査 ( 最も安価な応募者が落札 ) 技術審査価格審査 価格審査 ( 最も安価な応募者が落札 ) (4) 有識者の意見聴取不要必要不要 技術審査 ( 価格審査 ) 必要 ( 制度としては不要であるが 技術審査を実施するため実質必要となると考えられる ) 99
11.4 事業方式のまとめ近年の熱回収施設の動向をみると 公共が資金調達し 施設の設計 建設 30 年間程度の使用を前提とした 15~20 年間の運営を包括的に委託する DBO 方式の割合が増加してきている DBO 方式を採用する理由は 自治体の事情により様々であるが概ね下記の理由が挙げられる 1 プラントメーカーに施設の建設 運営を委ねる PFI 方式に比べ 自治体が施設を建設 所有することにより地元など施設周辺の住民に対して信頼を得やすい 2 廃棄物処理施設の整備 運営事業が他の事業と異なる大きな点は 施設を建設した後の運営コストが建設コストと同等以上にかかることとなり 運営コストが莫大になることである しかし これまでほとんどの自治体では この運営部分の業務のほとんどを施工プラントメーカー又はその関連会社の見積をベースに予算化し 次年度に当該業者に随意契約等により発注することとなり 競争原理がほとんど働きにくい環境にあった 3 DBO 方式を採用する場合 PFI 方式と同様に建設 + 運営業務 (20 年間程度 ) をセットで入札させ総合評価するため 20 年分の運営業務についても競争原理を働かせることができる こうしたコスト縮減を実現できることにより住民理解が得られる 4 運営を民間に長期包括的に委託することにより 施設の維持管理を安全かつ効率的に実施できることにより住民理解が得られる 一方 PFI 方式は本来民間のノウハウを最大限に活かし 施設の設計や運営において最大限の費用対効果を期待するものであるが 1 施設の安全性確保の点から発注仕様書で設計の自由度を求めない場合 コスト縮減効果が少ない 2 金融機関との手続きが煩雑 3 民間が施設建設に係る資金調達する場合 自治体が資金調達する起債より高利となり 結果的に自治体の負担となる 等の理由で近年 PFI 方式が採用されていないと考えられる また 民間事業者が施設を運営していくことに対しては 周辺住民に不安を与える場合がある 先行事例では公共が事業運営の内容を細かくチェックするモニタリング体制を構築し 住民不安の解消を図っているが 安全性への信頼度は安心につながるものであり 何よりも重視されるべきものである これらのことから 本施設の事業手法については DBO 方式による施設建設 運営を視野に入れ 民間事業者の参入意欲の確認 期待される経費削減効果の定量的評価などを含む事業方式可能性調査を実施したうえで決定していくこととする しかし DBO 方式及び PFI 方式においては事業者に依存する部分が多くなり 公共側の技術の蓄積が行われにくい 建設時は問題ないが次の施設建設時に困ることがあるため できる限り公共側にも技術の蓄積ができるようなモニタリングシステムの活用も検討する必要がある 発注 選定方式については 競争性を確保し より品質の良いものを適正な価格で購入することのできる総合評価方式 ( 総合評価一般競争入札方式 公募型プロポーザル方式 ) を採用する方向で 今後さらに検討を重ねる 100