地球科学 42 巻 6 号 (1988 年 11 月 )346 353 鬼首一湯沢マイロナイト帯 * 笹田政克 * * Onikobe Yuzawa Mylonite Zone Masakatsu Sasada * * Abstract The NNW trending Onikobe Yuzawa Mylol ユ ite Zone extends for 45 km from Oni kobe Caldera,Miyagi Prefectureto Yuzawa,AkjtaPrefecture,northeast Honshu,Japan. rhe mylonite was derived from Cretaceous tonalite and grallodiorite,the ileld relation hip between the mylonite and the foliatedtonalite isgradational.the nlylonite is intruded by the Paleogene 皿 assive tonalite.the K Ar ages Qf the mylonite range from 75.6Ma to 88.5Ma.These factsindicate that the 皿 ylonitization proceeded d し lridg Late Cretaceous Dynamically recrystallized quartz aggregates in Inylonite are distinguished into P and S types, They were partly changed into blastomylonite through the intrusion of the younger tonalite. The micr } structure of the mylon 三 tes shows left latera2shear deformatiqn,the pre Tertiary nietamorphic and granitic rocks on the western side of the my め nite zone are comparable to those in the Abukuma Belt.The pre Tertiary basernent rocks on the east of the mylonite zone are composed of highly to weekly metamorphosed volcanic and sed 三 mantary rocks probably of Paleozoicages,and the Cretaceous granitic rocks,which are similar tq those of Kitakarni Belt.Hence,the Onikobe Yuzawa Mylonite Zone is probably a northern extension of the Hatagawa Frqcture Zone,which is a boundary between the Abukurna and Kitakami Be!ts, 1 はじめに 東北日本の先第三系中には, 幾筋かの V イロナイト帯 層が広く地表を被っているため, マイ P ナイトの露出は 断続的となっている, 本地域ではこれまでに, 宮城県側 の鬼首カルデラ周辺の 3 地域および秋田県側の桑ノ沢か が存在している. それらの方向は NNW SSE であり, ら東鳥海山にかけて, 合わせて 5 地域で トーナル岩質か 全体として白亜紀の左横ずれ断層系を形成している ( 永 広, おにこう 1982). ぺ鬼首一湯沢マ イ卩 ナイト帯もその一部であ り, 宮城県鬼首カル 岩類中に追跡され, として位買づけられる デラから秋田県湯沢まで白亜紀花崗 地体構造上では畑川破砕帯の延長部 ( 笹田,1984.1985). 本論文では t 地熱調査に関連して最近得られた坑井データ, 放射年代 値等をもとに, 鬼首一湯沢 V イロナイト帯について再検 討した結果について述べ, さらに同 V イ卩ナイト帯にま っわる地体構造上の問題にっいても, 再度考察を試みる. U 地表に露出するマイロナイ b 鬼首から湯沢にかけての地域では, 新第三紀以降の地 ら花崗閃緑岩質のマイロナイトが見出されている ( 笹田,1984), また, 鳴子南方では主としてマイロナイ b 礫からなる角礫岩が見つかっており, これらは NNW SSE 方向に延びる帯上にプ卩ヅトされる (Fig.1 ). それぞれの地域ごとにマイロナイトの産状をみると, 鬼首カル デラ西縁の大森および東鳥海山西麓の麓沢で は, マイロナイトは角閃岩相から緑色片岩相の変成岩類 を伴っており, 両者の面構造は調和的な関係になってい る. 麓沢ではマイロニティック フォリエーションが 50 前後の傾斜でよく発達しており, それと低角度で斜 交するシアバンドの配列方向から, 剪断の水平成分が左 ずれであることが読みとれる (Plate I 1), また, 大森 * * * 1988 年 3 月 17 口受付, 1988 年 4 月 28 日受理 日本地質学会篤 94 年学術大会にて一部講演 東京支部, 地質調査所地殻熱部 GeologicalSurvey of Japan, Tsukuba 305 (30 )
鬼首一湯沢マイ卩ナイト帯 347 レ YA A GA TA 嘱 R 575.6H Sabu Sawa Ψ / 薩 國 K Ar age Ma B ; Biotite.H: Hornblende W ; Who [e Rock DriltHole with Mylenite Dr[llHole vvithserpentinite Dril:Hole with Other Basement RGGks Fig.1.Distribution of the Ouikobe Yuzawa Mylonite Zone and the pre Neogene basement rocks at the central part of northeast Honshu.Japanmodified from Sasada ( 1985 ).K Ar ages are from Sasada ( 1984,1985,1988 ),Kawano and Ueda ( 1966 ), Okada et al. ( 1981 ) and this paper. ではマイロナイトは古第三紀の塊状トーナル岩に不調和 的に貫かれている. 桑ノ沢では本マイロナイト帯の周辺 部分を観察することができ, ここではマイ P ナイトは片状トーナル岩へと漸移している ( 笹田, 1984). 皿地熱坑井で見っかったマイロナイト 地熱調査で最近本地域に掘削された坑井のうち, 鬼首カルデラの KR 5 坑井, 秋の宮地域の YO 3,YO 4, AM 1 及び 501 の各坑井でマイロナイトが見出されている ( Fig.2 ). これらの坑井掘削地点の地表付近は, 新第三紀以降の地層で占められているが, 深所には笹田 (1984) によりマイ卩ナイトの存在が予測されていた, (31 )
348 笹田政克 KR 50 YO 3 YO 4 AM 1 50t マ卩イナイトは全体に変質が顕著であり, 初生苦鉄質鉱物はすべて緑泥石 緑れん石等の二次鉱物へと変化している. AM 1 は地熱開発環境調査により, 秋の宮に掘削され Cl た坑井である ( 地熱開発促進センター,1979). 同坑井 の岩石は,7951n 以深 1,002m の 坑底までが, 片状卜一ナ 5 cccc ル岩およびトーナル岩質マイ P ナイトからなり, それらの一部はさらにカタクラサイ 化している (Fig.2), また, 全体に変質が顕著で, 緑れん石の細脈が頻繁に認められる. 1000 ] c 501 坑井は日本重化学工業により, 秋の宮に掘削さ れた 1,050m の 地熱調査井であり, 深部に基盤の花崗岩質 岩が見出されている ( 鷹觜ほか,1982),455m 以深坑底 E. a O IJ OO 顱 圜 圜 C し egend Ce 船 zob Vobar 曲 a 醐 SedF entary Rocks Cre 恰 ceous Mylor 漉 Cretaceous Tonali 竜 e and Granodiorite Me 忙 amorphlc Rocks Ca!acla5 Fig.2 Geologiccolumns of the geothermal drill holesat Onikobe caldera and Akinomiya, The locations of the drillholesare shown on Fig.1.The geologic column of 501 drill ho 工 e is modified frorn Takanohashi et al. ( 1982 ), te まで分布する花崗岩質岩はトーナル岩質マイロナイ F で あり, 途中数か所に新第三紀の火山岩類および貫入岩類 が認められる (Fig.2), 以上のほか, 本地域では地熱調査のために掘削された 8 本の坑井が, 花崗岩類 変成岩類等の先第三紀基盤岩 類に到達している (Fig,1 ). また, それらのうち, 上のナこい岱での 4 本の坑井 (KT 2,T 5,T 30,T 42) 及び秋 の宮の YO 5 坑井で蛇紋岩が見出されている ( 地熱開発 促進センター,1979 ; 岡田ほか,1981 ; 新エネルギー総 合開発機構, 1985; 中ほか, 1987), IV マイロナイトの組織 うえ ここでは本地域のマイ P ナイトの組織を, 再結晶した KR 5 坑井は, 地熱探査技術等検証調査により, 鬼首カルデラ内の神滝に掘削された 1,500m の坑井で,263m 以深にトーナル岩質マイロナイト, 砂質および塩基性の 変成岩類及び少量の泥質お よび超苦鉄質の変成岩類がみ られる. また, これらマ 卩イナイト及び変成岩類の一部 はさらに破砕され, カタクラサ イ トとなっ て い る ( 笹 田,1988). 石英に着目して 3 つに区分し, それぞれの特微についてる. 動的再結晶による石英集合体の組織は, 高温一 述べ 低歪速度下では等粒状に近い組織 (P タイプ ) となり, 低温. 高歪速度では, アスペクト比の高い石英で特黴づけ られる組織 (S タイプ ) となることが, 岩石の変形実験か ら明らかにされている (Masuda and Fujimura,1981 ) 天然のマイロナイトにも両タイプのものが知られてお YO 3 および YO 4 は, 地熱開発促進調査 湯沢 雄 り,P.S 両タイプに準じた区分が試みられている ( 高 勝地域 により, 秋の宮に掘削された坑井である ( 新エ ネルギー総合開発機構, 1985).YO 3 坑井は 294 エ n 以深 1, 203m の坑底まで塩基性および泥質の変成岩類, トーナ ル岩質マイロナイトおよび塊状花崗閃緑岩からなる (Fig,2 ), 塊状花崗閃緑岩は中粒相と細粒相からなり, 細粒相が中粒相及びマイロナイトを貫く関係にある ( 笹田, 未公表 ), YO 4 坑井では, 237rn から坑底の 1,001 皿まで, 片状 トーナル岩およびそれと漸移関係にあるトーナル岩質マ イロナイトからなるが, 途中には約 40 エ n ほどの新第三系 がはさまれている (Fig.2) 本坑井の ] 一ナル岩および 木,1985 ; 林 高木, 1987). 本論文では再結晶石英の アスペクト比 3 をおおよその目安として,P タイプおよ び S タイプに区分する. 本地域で最も多く認められるマイロナイトの組織は, 再結品石英が S タイプのものである ような岩石では, 斜長石 カ (PlateI 2 ). この リ長石 黒雲母 角閃石 は, 一般に変形および破断を伴いながらポーフィロクラ ストとなっている. 一方 P タイプの再結晶石英は, 麓沢のマイロナイトに 認められる (Plate I 3). ここでは, 斜長石およびカリ長石の一部がポーフ dp クラストをつくるが, 黒雲母 (32 )
鬼首一湯沢マイ th ナイト帯 349 角閃石は全体として薄く延びた形の細粒結晶の集合体を つくっている. 麓沢の試料で再結晶石英の長軸方向の並 び (Simpson and Schnlid,1983 ; Lister and Snoke, 1984 ) から求めた剪断のセンスは左ずれである. 第 3 のタイプは粗粒 ( 最大粒径 1 2 皿 m ) で,3 前後 のアスベクト比をもっ再結晶石英で特微づけられる組織 で (Plate エー 4),YO 3 坑井および大森の北東側斜面に みられる. このタイプの岩石では斜長石はポーフ dp ク ラス トとして産するとともに, 同鉱物のみからなる細粒 結晶の集合体となっている. 黒雲母および角閃石はいず れも細粒結晶の集合体となっている. これらの岩石はい ずれも近傍で塊状の花崗岩質岩に貫かれていることか ら, 前述した P タイプあるいは S タイプの石英をもつ イロナイトが, 花崗岩質岩の熱の影響でさらに再結晶 し. 粗粒化した一種のブラストマイロナイト ( 高木, 1982) であろう, なお, 大森では苦鉄質鉱物はすべて緑 泥石等の二次鉱物に変質している, V K Ar 年代と v イ卩ナイトの形成時期 本地域の白亜紀花崗岩類の K Ar 年代は, 第三紀貫入かむ 4 岩類の熱の影響が認められる神室山塊のものを除くと, 87 100Ma の範囲にはいる (Fig.1 ) マ, 一方, イロナイ トを貫く塊状トーナル岩の K Ar 年代は 51.9 ± 2.6Ma であることから, V イロナイトの形成時期は白亜紀後期 から古第三紀のはじめにかけての範囲に限定される ( 笹 田,1984), さて, マイ卩ナイトについて, これまでに麓沢からの 黒雲母で 76.1± 3.8Ma の K Ar 年代が得られているが ( 笹田, 1984), 今回 KR 5 坑井のマイ卩ナイトの角閃 石で 75.6± 3.8Ma,YO 3 坑井のブラストマイロナイト マ の黒雲母で 85.9 ± 4.3Ma,88.3± 4.4Ma.88.5 ± 4,4Ma の年代値が得られた, また, 同坑井の塊状花崗閃緑岩 ( 中粒相 ) の黒雲母では,97.0± 4.9Ma の年代が求められた (Table 1 >. なお, 鉱物分離および K Ar 年代測定は, いずれもテレダィ ンアイソトープ社に依頼して行 われた. これら試料の黒雲母の緑泥石化は一般に軽微で あるので, 黒雲母の分析値の カリウム の値が低いの は, おそらく分離が十分に行われなかっ たためとみられる. マイロナイトの K Ar 年代は, マイロナ イト化が鉱物 中の Ar の閉鎖温度より高温側で起っていた場合は, 通 常の深成岩類の K Ar 年代の解釈と同様, その 閉鎖温度 まで温度が低下した時期を表わしていると考えてよいだろう. しかし, 閉鎖温度以下でもマイロナイト化が進行 していた場合は, 鉱物の 変形及び再結晶が K Ar 年代に 影響を与えているかもしれない. 本地域の麓沢及び KRfi 5 一マ坑井のイロナイトの K Ar 年代 (76.1Ma お よび 76.5 Ma ) は, 鬼首一湯沢マ イ P ナイト帯の近傍に 分布する 白亜紀花崗岩類の K Ar 年代 (87 100Ma ) と比べ, 明ら かに 若くでてい る. 中央構造線に 沿うマ イ P ナイトで も, 原岩の一連の冷却史のみでは説明ができない K Ar 年代が報告されており, これにつ いてはマ イロ ナイ ト化 終了後の 何らかの熱的事変に より, 4 Ar が逸脱したもの と解釈されている ( 柴田 高木,1988 ). 本地域のマ イ ロナイ トの若い年代をもたらした原因につい ては, 現在 の とこ ろ特定するまでに はい たっ てい ない が, マ イ卩 ナ イ ト化作用に関連した問題として, 今後検討すべ き課題 と考えられる. また,YO 3 坑井のブラストマイロナイ トにつ い ては,85.9 88.5Ma の K Ar 年代は地質的状 況か ら見て, マ 卩イ ナ イ ト化終了後の花崗岩類の 貫入に よる若返りの年代ではないかと考えられる. Table 1.K Ar ages of the mylonite and tonalite from the Onikobe Yuzawa Mylonite Zone,K Ar ages were determined by Teledyne Isotopes.The constants for the age calculatiqn are : A β = 4.96 1 一 10yr!, 2fi=0.581 x 10 一且 yr 1, 弖 ol ( :1.167 10 4 atom per ato 皿 of natural potassium KR 5 : (38 46 厂 58 尸 N,140 41 53 E ), YO 3 : (38 58 48 N,140 34 23t E ), Wel! No. KR 5 Deptfi ( 皿 ) R ck 飯 970 Mylonite Mtnera1XK Hornblende O.42 0.42 与 A R d ( cstp /9. 10 5 4 ) ZA A. Ag ( M ) 0.1270.1250 47.5 75.6 ± 3.8 57.291 YO 3 672 Mylonite Biot te 2.552.593.9320.879.384.689 88.3 土 4.4 YO 3 895 Mylonite Biotite 863.883 上.3 ア 1.36L341.788.891 88.5 ± 4.4 YO 3 952 Mylen エ te BiD ゼite.903.913.33L321.791.590 85.9 ± 4.3 YO 3 1178 Tona ユ ite Bio ヒ i ヒ e.453.47.36,587.5 9 ア凾 0 4.9 (33 )
350 笹田政克 いずれにせよ上に述べた K Ar 年代及びマイ卩ナイト が古第三紀の花崗岩類に貫かれるという事実から, 鬼首一湯沢マイ Pt ナイト帯の形成時期は白亜紀後期と考えて よいだろう. Vl 地体構造に関連した問題 A. 先白亜系の地質構造とマイロナイト帯 まず, 鬼首一湯沢マイ P ナイト帯周辺地域の先白亜系 の地質を概観すると, 本マイロナイト帯の東側は, 弱変 成の堆積岩類, 緑色片岩 黒色片岩等の変成岩類および蛇紋岩からなり, 一方西側は黒雲母片麻岩等の高度の変 成岩類からなる ( 笹田,1985). 本 V イロナイト帯の東側に見られる堆積岩類は, 粘板 岩 砂岩 チ ャート 石灰岩 輝緑凝灰岩からなり, 桑 原岳 焼石岳南麓 真湯 本寺 鬼首カル デラ北縁芦沢 lc 分布している ( 北村 谷,1953 ; 北村,1959,1965 ; 武藤,1965 ; 斎藤,1966 ; 笹田,1985), これらのうち 真湯の石灰岩が二畳系であることがわかっている ( 北村 谷,1963). 変成岩類についてみると, 本マイロナイト帯の西側で は, 黒雲母片麻岩 角閃岩等からなる高温低圧型の変成 岩類が, 神室山塊に広く分布している ( 加藤,1951; 片 山 梅沢,1958 ; 大沢 角,1961 ; 加納,1966; 菅井, 1978 ; 臼田ほか,1981). 一方, 本マイロナイト帯の東 側では, 焼石岳南麓 鬼首カルデラ杉ノ森沢の地表およ び上の岱 秋の宮 鬼首の坑井から, 緑色片岩相および 角閃岩相の変成岩類が見出されている ( 北村 蟹沢, 1971 ; 蟹沢, 1969 ; 岡田ほか,1981 ; 岡田, 1982; 新エ ネルギー総合開発機構, 1985 ; 中ほか, 1 987 ; 笹田, 1988). またマ, 本イ Pt ナイト帯内およびその東側では, 秋の宮の坑井等で蛇紋岩が見出されて 川渡及び上の岱 いる ( 青木, 1972; 地熱開発促進センター,1979; 岡田 ほか,1981 ; 新エネルギー総合開発機構,1985). 上に述べ てきた先白亜系の分布からみると, 鬼首一湯 沢マイロナイト帯は, 神室山塊にまとまって分布する高 温低圧型の変威岩類の東縁を限っており, その東側は堆 積岩類 緑色片岩相および角閃岩相の変成岩類 蛇紋岩 といった多様な岩石の分布域となっている. 神室山塊の 変成岩類は, 阿武隈 ( 御在所一竹貫変成岩類 ) の延長と 考えられるので ( 渡辺,1950 ; 黒田,1963 ; 島津,1964 ; 蟹沢, 1969 ; 笹田, 1985), その東側を限るという意 味から, 本マイ卩ナイト帯は阿武隈山地の東縁を走る畑 川破砕帯 (Sendo,1958 ) の北方延長と考えてよいであ ろう. なお, 本マイ Pt ナイト帯東側の基盤岩類は, 松ケ 平 八茎の変成岩類 ( 黒田 小倉,1960 ; 関,1962) を 伴う畑川破砕帯東側の阿武隈東縁帯の岩石と類似してい るようにみえるが, 本マイロナイト帯東側地域の研究は 変成岩類を含め十分とはいえず, 対比の問題は今後の課題であろう, さて, 畑川破砕帯はマイロナイトおよびカタクラサイ 轡丶 丶 脇幺丶競 軌 ユ 冨 O 豊瞳い N 糖 ン / 一 mkoo1 F 孟 9 3.Cretaceousmylonite zones and geologic provinces of northeast Honshu.M.Z,: Mylonite Zone,F Z.:Fracture Zone,T, L.: Tectonic Line,A :A $ahi,n : Nihon koku,o : Obonai,S : Shirakami Dake,T : Taihei Zan, bからなり, 左横ずれのセンスをもっている. その活動時期は白亜紀に求められており, 第三紀以降はあまり動いていない ( 永広ほか, 1978 ; 永広 1982)., 前述した鬼首一湯沢マイロナイト帯の運動像は, このような畑川破砕帯の特鐓と, よく一致しているといえる. B. 白亜紀花崗岩類マ白亜紀花崗岩類では, 鬼首一湯沢イロナイト帯をはさんで, 化学組成 帯磁率等に差異が認められる ( 笹 田,1985). まず, 主化学組成にっいてみると, 西側の 花崗岩類は東側のものに比べて鉄の酸化状態が低く, MgO,K20,P20s に富む傾向がある 帯磁率では東側の花崗岩類が 100 10 6 emutg より高いのに対し, 西側 (34 )
鬼首一湯沢マイ P ナイ b 帯 351 では 50 10 6 emu!g 以下である. 帯磁率から見ると 東 1966 ; Shibataand Ishihara,1979 ; 大沢ほか,1981) 側のものは北上帯西部地域の花崗岩類 IC, 西側のものは 阿武隈帯の花崗岩類にほぼ対比される ( 金谷 石原, 1973 ;Ishihara,1979 ). また,Sr と同位体比の初生値は, 北上帯の花崗岩類が O.704 O.705, 阿武隈帯のものが O.705 0.706 の範囲にはいるが, 本地域の秋の宮の斑れ い岩 ( 本マイ β ナイト帯の西側 ) の値は 0.7058 で, 阿武 隈のものに対比される (Shibataand Ishihara, 1979 ), K Ar 年代にっいては, 若返りのあるものを除くと, 本マイロナイト帯の東側では 87 110Ma で, 西側では 94 97Ma となっている ( 河野 植田,1966; 岡田ほか, 1981; 笹田,1985,1988). 花崗岩類の K Ar 年代にっ いては, このように本マイ P ナイト帯をはさんで顕著な 差異は認められないが, 強いて北上帯および阿武隈帯の ものと比べてみるなら, 東側のものは 120Ma 前後の年 代の多い北上帯の花崗岩類の若い方に属し ( 河野 植田, 1965a), 西側は神室山塊の若返りのあるものを除くと, 阿武隈帯の花崗岩類の K Ar 年代が集申する範囲 (90 100Ma )( 河野 植田, 1965b ) にはいるといえるが, 本 地域の花崗岩類全体を, 阿武隈帯の花崗岩類と似た年代 のものと見ることもできる, 以上述べてきた白亜紀花崗岩類についてまとめると, 鬼首一湯沢マイロナイト帯をはさんで花崗岩類の諸性質 に違いがみられ, 西側のものは阿武隈帯の花崗岩類と, 東側のものは北上帯のものと共通点が多い. このことか ら, 本マイロナイト帯は白亜紀花崗岩類の岩石区の境界 付近を通っているといえるであろう. ただ K Ar 年代に ついては, 本マイ卩ナイト帯をはさんで大きな差異はな いように見える. C. 鬼首一湯沢マイロナイト帯の北方延長 最後に, 畑川破砕帯から鬼首一湯沢マイロナイト帯へ と続く白亜紀のマイ卩ナイト帯の北方延長部にっいて, 問題を整理してみたい. 東北日本では白亜紀の大規模左ずれ断層が,NNW SSE 方向に延びているという特徴が認められる ( 永広, 1982). この事実に依拠し, 鬼首一湯沢マイロナイト帯 を単純に北北西へと延ばしていくと, その先には青森県 西部の白神岳のマイ卩ナイト ( 片田 大沢, 19641 藤 本, 1978) が存在している. 白神岳のマイロナイトは白 亜紀の花崗岩類を原岩としたものであるので ( 河野 植 田,1966), 鬼首一湯沢マイロナイト帯の北方延長部の 候補となるであろう. しかし, この場合阿武隈帯の もの と岩石学的性質が類似する花崗岩類および幅 8km 以上 の角閃岩相の広域変成帯が潜在している可能性のある秋 田県太平山の複合岩体 (Kano et al.,1964 ; 加納ほか, が, 鬼首一湯沢と白神岳を結ぶ線の東側にはいってしま うという問題が残る. お 白神岳の東側では, 上述の太平山および同じ秋田県の ぽない 生保内に分布する白亜紀花崗岩類中に, マイロナイトが 存在するとの記載がある. しかし, それらはいずれも第 三系との境界部付近に小規模に分布しているにすぎず, 連続性に乏しいようにみえる (Kano et al,1964 ; 加納 小林,1979 ; 大沢ほか,1979). 太平山 生保内の さら に東側に鬼首一湯沢マイロナイト帯の北方延長がくる可 能性も残されてはいるが, これまでのところ白亜紀のマ イ卩ナイトは見出されていない. なお, 焼石岳南麓で圧 砕構造を示す古期石英閃緑岩 ( 北村 蟹沢, 1971) は, 角閃石から 244Ma の K Ar 年代が得られており, 白亜 紀のものではない ( 笹田,1985), 以上述べてきたように, 鬼首一湯沢マイロナイト帯の 北方延長の問題は, 説得力のある仮説をたてるのに十分 な証拠が, まだ揃っていないようにみえ, 問題を今後に 残している. MI まとめ 鬼首一湯沢マイロナイト帯は, 宮城県鬼首カルデラか ら秋田県湯沢にかけて. 長さ 45km, 幅 1 3km の範囲 で, 地表および地下深所 ( 地熱用坑井 ) に追跡される. 本マイロナイト帯は白亜紀後期に形成されたもので, 左 ずれの剪断センスを示している. 本マイ卩ナイト帯中に は,P タイプおよび S タイブの再結晶した石英で特徴づ けられる岩相およびそれらが花崗岩類の熱の影響で再結晶粗粒化したブラストマイ卩ナイトが分布している. 地体構造上, 鬼首一湯沢マイロナイト帯は, 阿武隈変 成岩類の延長と考えられる神室山塊の高温低圧型の変成 岩類の東縁を限ることから, 畑川破砕帯の北方延長部に 相当するといえる. 白亜紀花崗岩類の諸性質は, 本マ ロナイト帯を境 IC して異なり, 東側は北上帯の花崗岩類と, 西側は阿武隈帯の花崗岩類と共通する点が多い, 謝辞早稲田大学高木秀雄氏には, マイロナイトの見 方にっいて御教示いただくとともに, 草稿を読んでいた だき, 多くの御指摘をいただいた, 地質調査所地質部山 田直利氏には, 草稿を読んでいただき, 地体構造上の問 題等について御指摘いただいた. 地質調査所地殻熱部角 清愛 ( 現日本重化学工業 ), 山田営三, 金原啓司の各 氏には, 研究遂行上多くの助言および励ましをいただい た. 日本重化学工業には 501 坑井の基盤岩類について, 公表を許可していただいた. また, 同社土井宣夫氏には イ (35 )
352 笹田政克 同坑井の地質について, 有益な討論をしていただいた. 地質調査所技術部佐藤芳治 安部正治 宮本昭正の各氏 には多数の薄片を作成していただいた. 以上の方ゐに厚 くお礼を申し上げる次第である. また, 本論文発表の機 会を作って下さった地球科学編集委員会田沢純一氏およ び多くの有益な御指摘をしていただいた匿名の査読者の 方に感謝いたします. 文 青木守弘 (1972) 宮城県川渡産蛇紋岩にっいて. 地質雑,78,687 694. 地熱資源開発促進センター (1979) 昭和 52 年度発電用地熱開発環境調査報告書,2. 上の岱地域. 永広昌之 (1982) 東北日本の NNW 性断層群一棚倉破砕帯の姉妹断層一. 月刊地球,4,200 205, 大槻憲四郎 福留高明 (1978) H 本列島にお ける白亜紀 古第三紀の大規模断層運動と中央構造線.MTL,3,169 183 藤本幸雄 (1978) 青森県白神岳復合花崗岩質岩体の岩石の構造, 岩鉱,73, 5 17. 正貴 高木秀雄 (1987) 長野県南都における中央構 林 造線の圧砕岩にみられる再結晶石英の形態ファブリック, 地質雑, 93,349 359. Ishihara,S. ( 1979 ) Lateral variation of 皿 ag ユ etic susceptibility of the Japanese grnnitoid.fo % r. Geol.Soc.faPan,85,509 523. 金谷弘 石原舜三 (1973) 日本の花崗岩質岩石にみられる帯磁率の広域的変化. 岩鉱,68,211 224. 蟹沢聡史 (1969) 東北地方に点在する変成岩類地質論集 4,, 109 111. 加納博 (1966) UMP A Zone ( 1965> における 2,3 の int usive granite の構造と形態 ( 概報 ).UMP A. Zone 地質構造部門連絡紙, 5,2 16. Kano,H.,Yanai,K.and Tsuji,M ( 1964) The geo logy and structure Qf the Taiheizarl complex pluton with special reference tq the basement problem of the Green Tuff regiorl.four.1 匝 π. (:oll,akita Univ.,Ser,A, 3,107 117. 加納博 矢内桂三 辻万亀雄 河瀬章貴 蟹沢聡史 (1966) グリーンタフ地域における 2 3 の基盤花崗岩の構造とその意義. 地団研専報,12,1 15. 小林治朗 (1979) 秋田県生保内東方脊稜山地 の先第三系基盤花崗岩質岩類一花崗岩ブルトソの構造岩石学 (1 ) 一. 秋田大地下資源研報,45,77 89. 片田正人 大沢穰 (1964) 青森県南西部にみられる片状花崗岩 ( 白神岳花崗岩類 ). 地調月報, 15, 87 94. 片山信夫 梅沢邦臣 (1958) 7 万 5 千分の 1 地質図幅 献 鬼首 及び同説明書, 地質調査所 加藤磐雄 (1951) 東北地方油田第三系下部層の堆積学的 考察 ( 第 2 報 ), 下部層における火成活動 ( 新庄盆地東 縁脊梁の第三紀完晶質火成岩につ い て ). 岩鉱,35, 91 106. 河野義礼 植田良夫 (1965a ) 本邦産火成岩の K A dating ( ll) 一北上山地の花崗岩類一. 同上,53,143 153. (1965b) 同上 ( 皿 ) 一阿武隈山地の花崗岩類一. 同上,54,162 172, 一 一 (1966) 同上 (N ). 一東北日本の花崗岩類一. 同上, 56, 41 55, 北村信 (1959) 東北地方における第三紀造山運動につ いて一 ( 奥羽脊梁山脈を中心として ) 一. 東北大地質古生耳勿研邦幸艮, 49, 1 98, 一 (1965) 5 万分の 1 地質図幅 焼石岳 及び同説明書. 地質調査所. 谷正已 (1953) 岩手県胆沢郡西部および西磐井郡西部の地質について, 其の 1. 岩鉱,37,103 116. 蟹沢聡史 (1971) 奥羽脊梁山脈焼石岳南麓の先第三系基盤岩類. 東北大地質占生物研邦報, 70,61 66. 黒田吉益 (1963) 東北目本の深成変成岩類の相互関係. 地球科 学, 67, 21 29, 小倉義 tff(1962) 北部阿武隈山地における点紋片岩の発見とその意義. 岩鉱, 44, 287 291. Lister.G.S.and Snoke,A.W. ( 1984) S C mylonites, 丿 Olll: Strptct,Geol.,6,617 638. Masuda,T.and Fujimura, A. ( 1981) Microstruc tural development of 丘 ne grained quartz aggrega tes by syntectonic recrystallization, ヱ ectonophysics, 72, 105 128. 武藤章 (1965) 秋田県南部地域の新第三系の層序. 地肇气秦挂,71,389 400. 中束策 竹内律夫 眉田峻 福永明 (1987) 上の岱地域における地熱探査と開発調査. 地熱 24,113 135. 岡田博 (1982) 秋田県南泥湯地域の地熱資源. 鉱業会秋季大会演旨 L, 且一 14. 岩田峻 幢 i[ 奇哲夫 (1981) 秋田県泥湯地域 の 基盤地質構造につ いて. 昭和 56 年度地熱学会演旨, 13. 大沢濃 角清愛 (1961) 5 万分の 1 地質図幅 羽前 金山 及び同説明書地質調査所一 加納博 丸山孝彦 土谷信之 伊藤雅之 平山次郎 品田正一 (1981) 大平山地域の地質地域地質研究報告 (5 万分の 1 図 1 隔 ), 地質調査所. 斎藤靖二 (1966) 脊梁山脈西縁地域の先第三系.UMP A Zone 地質構造部門連絡紙,5,45 46. 笹田政克 (1984> 神室山一 栗駒 lll 地域の先第三紀基盤岩マ卩類一その 1 鬼首一湯沢イナイト帯一. 地質雑, 9,865 874. 一 (1985) 同上一その 2 阿武隈帯と北上帯の境界一, 同上, 91, 1 17. _(1988) 鬼首カルデラ内 KR,KR 5 坑井の先第三紀基盤岩類, 地調幸艮告,268,19 36. 関陽太郎 (1962) 48, 11 福島県八茎鉱山附近の結晶片岩. 岩鉱, 18. Sendo,T. ( 1958)On the granitic rocks of Mt.Ota kine and itsadjacent districtsin the Abukuma Massif,Japan.Sci.Rep.Tohoktf Univ.,Ser.3,6, (36 )
図版 1 ( 笹出政克 ) 地球科学 42 巻 6 号 (1988 年 11 月 )
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