更新日 :2013/9/3 探鉱進展が期待されるウルグアイ パラグアイ 調査部 : 舩木弥和子 1.1976 年に Chevron が掘削を行って以来停滞していたウルグアイ沖合での探鉱が 2008 年の第 1 次入札 2011 年の第 2 次入札以後活発に行われつつある ウルグアイ政府は沖合については今後も入札により鉱区付与を行っていく方針で 2014 下半期から 2015 年にかけて第 3 次入札を実施する計画だ 陸上については ANCAP との直接交渉により鉱区が付与されている 陸上ではこれまでに地震探鉱と数十坑の掘削が行われているが 沖合同様 商業規模の油田 ガス田の発見はない このような状況から ウルグアイでは石油 ガスの生産はなく 石油輸入に大きく依存している 政府は 再生エネルギー活用促進や環境への配慮等とあわせて 国内の炭化水素資源の探鉱促進を図っている 2. パラグアイでは 1947~2005 年の間に地震探鉱と 49 坑の坑井の掘削が行われたが 商業規模の油田 ガス田は発見されていない そのため 同国内の石油需要 28,000b/d の全量を輸入に依存している パラグアイは水力発電による余剰電力をブラジルとアルゼンチンに輸出しているが 石油製品の輸入額が電力輸出によって得られる収入の 3 倍となっており エネルギー自給はパラグアイの最大の課題となっている 現在 10 社以上の中小規模の企業がパラグアイでの探鉱に従事しているが このうち President Energy と Amerisur は 2014 年に掘削を計画している これまでパラグアイにおいて探鉱が進まなかった背景には 前々政権が外資導入に積極的ではなく 外国企業による探鉱がなかなか許可されなかったことが挙げられるが 2013 年 8 月に就任したカルテス新大統領は外資導入に積極的で 国外からの投資を促進し石油 ガス開発を図るという前政権の方針を引き継ぐとみられる 米国 EIA によると パラグアイのシェールガスの技術的回収可能量は 75Tcf シェールオイルの技術的回収可能量は 37 億 bbl で 資源量は豊富とされているが 掘削が開始されるのは 3~4 年後になる模様だ 1. ウルグアイ (1) 沖合での探鉱状況 Chevron が 1976 年に Punta del Este Basin の Area1 で Lobo-1 号井 ( 掘削長 2,713m) Area2 で Gaviotín-1 号井 ( 同 3,631m) を掘削したり 国営石油会社 Administración Nacional de Combustibles, Alcohol y Portland(ANCAP) が 2006~2011 年に地震探鉱を行ったりしてはいるものの ウルグアイ沖合 ではこれまでほとんど探鉱が行われていなかった ところが 2008 年の第 1 次入札で Petrobras/YPF/Galp コンソーシアムが 2011 年の第 2 次入札で BP Total BG Tullow が参入したことで この状況が大きく変わってきた 特に 第 2 次入札ではメジャーを含む 4 社が 8 鉱区を落札し 入札終了後約半年の 10 月 5 日には各社と 1
も PS 契約を締結 11 月からは 2 隻の地震探鉱船を用い地震探鉱が行われている 2013 年 7 月時点で地震 探鉱は全体の 60~70% が終了し 2014 年上半期には全ての地震探鉱が終了する予定となっている 2014 年には Total が探鉱井の掘削を行う計画である 第 2 次入札落札企業の作業義務 石油会社 鉱区 最低作業義務 最低作業投資 ( 百万ドル ) ANCAP 参加比率 BP 6 2D 地震探鉱 500km 3D 地震探鉱 3000km2 25.25 30 11 3D 地震探鉱 2000km2 80 30 12 3D 地震探鉱 10670km2 426.8 30 BG 8 3D 地震探鉱 2230km2 地震探鉱データ解析他 118.6 35 9 3D 地震探鉱 3290km2 地震探鉱データ解析他 171.6 35 13 3D 地震探鉱 7560km2 地震探鉱データ解析他 381.7 35 Total 14 探鉱井 1 坑掘削 3D 地震探鉱 6690km2 344 30 地震探鉱データ解析他 Tullow 15 3D 地震探鉱 300km2 14 22 ( 各種資料より作成 ) ウルグアイ探鉱投資額推移 ( 出所 :ANCAP) 2
ウルグアイ沖合鉱区保有図 ( 各種資料より作成 ) ウルグアイ政府は沖合については今後も ANCAPが鉱区を決定 入札により鉱区付与を行っていく方針である 政府は 2014 下半期から2015 年にかけて 第 3 次入札を実施することを予定している 第 3 次入札の対象鉱区となる大水深域のポテンシャルに関して 現在 ANCAPが 米国メキシコ湾における研究例等からプレソルト探鉱手法やゴンドワナ大陸におけるアフリカとの分裂に関係した古生代の油指向根源岩の予測等の研究を進めている なお 第 3 次入札後鉱区を落札した企業が締結するPS 契約は 第 2 次入札後に結ばれたものを参考にするという 第 2 次入札後に結ばれたPS 契約では 探鉱期間は3 年 +3 年 +2 年 開発期間は25 年とされている コスト回収上限は石油が60% ガスが80% で コストオイル回収後 プロフィットオイルがスライディングスケール方式で授与される 石油会社はプロフィットオイルを自由に輸出できるが ANCAPは国内消費のために必要であれば生産された原油の全部または一部を国際価格で優先的に購入する権利を有している 石油会社はSpecial Contribution to Social Securityを支払わなければならないが 所得税以外の税金は免税される 所得税は雇用数 環境対策 投資額 ウルグアイ経済への貢献度等を考慮し決定される 3
(2) 陸上での探鉱状況陸上については 沖合の鉱区入札方式とは異なり ANCAPとの直接交渉により鉱区が付与される 石油会社はANCAPに技術面 財務面等会社の情報を提供し ANCAPから参入資格を取得し 登録を行う その後 ANCAPが示すAvailable Areaの中の希望するエリアについて作業計画を提出し このエリアでどういう作業ができるのかをANCAPに提示する ANCAPは3か月おきに会社からの申請を評価し E&P 契約またはProspection 契約を締結している 現在 Schuepbach EnergyがE&P 契約を YPFがProspection 契約を締結している 陸上ではこれまでに地震探鉱と数十坑の掘削が行われているが商業規模の油田 ガス田の発見はなく 沖合同様 石油 ガスともに生産は行われていない 2013 年 8 月には ANCAPとYPF が協力してウルグアイ陸上で探鉱を行うことで合意しており 探鉱の進展が期待される ウルグアイ陸上鉱区図 ( 出所 :ANCAP) 4
(3) エネルギー需給 エネルギー政策ウルグアイでは 石油 ガス 石炭のいずれも生産されていない そのため ウルグアイは石油輸入に大きく依存しており 石油が輸入総額の27% を占めている このような状況下 ウルグアイでは 長年 エネルギーに関しては問題が発生したらそれを解決するというスタンスをとってきた しかし 場当たり的な対応ではなく 長期計画をたてそれに基づいて政策を策定する必要があるとの認識が生じ 2005 年に産業エネルギー鉱山省の中にエネルギー政策を立案する部局 エネルギー局が設けられた ウルグアイのエネルギー政策の指針には 輸入石油への依存の低減 国内資源活用の促進 再生エネルギー活用促進 国内の炭化水素資源の探鉱促進 環境への配慮等が掲げられている そして 2030 年までの長期エネルギー計画では ANCAPやUTE( 電力公社 ) の強化 民間企業の参加や協力の促進 国内資源の活用 環境への配慮 効率的なエネルギー利用等を目指すとしている ウルグアイの一次エネルギー消費量は2011 年に4,255キロトン ( 石油換算 ) で 年率 3% の割合で増加する見通しだ ウルグアイの2010 年の一次エネルギー消費の構成では石油が48% を占めていたが 政府は2015 年にはバイオマスや風力 ガスの割合を高め 石油の占める割合を40% に低減することをめざしている ウルグアイ政府は国内資源を活用したいと考えているが 既存の水力発電所は古く 効率が悪いため廃止が検討されており 今後新たな水力発電所が建設される可能性も低いため 2010 年から 2015 年にかけて水力の割合は減少する見通しだ ガスは2010 年時点では全量アルゼンチンからパイプラインで輸入されているが 2015 年 3 月にLNG 輸入が開始される予定となっている 輸入量は1,000 万 m3/d(260 万 t) を計画しており ウルグアイで500 万 m3/dを消費し 残りはアルゼンチンに輸出される計画である ガスは 現在は工業用 民生用に利用されているが 2015 年以降は発電用にも利用する計画だ 一次エネルギー消費内訳 ( 出所 : ウルグアイ産業エネルギー鉱山省エネルギー局 ) 5
2. パラグアイ (1) エネルギー需給 エネルギー政策 1928 年にStandard Oil of New JerseyがボリビアのChacoで油 ガス田を発見したことをきっかけに 1930 年代にパラグアイとボリビアの間でチャコ戦争が勃発した 米国等の仲裁により1938 年にブエノスアイレス講和条約が結ばれ 優勢であったパラグアイは Gran Chacoのほとんどのエリアの支配権を得た ところが その後ガス田の発見に成功し ガスを生産 輸出しているのはボリビアで パラグアイでは商業規模の油田 ガス田が発見されていないという皮肉な事態が生じている このような状況から パラグアイは必要とする石油消費 28,000b/dの全量を輸入に依存している 国営石油会社 Petroparが石油輸入を担当しているが ガソリンについては民間企業も自由に輸入し 国内に供給している Petroparは3~6 か月に1 回入札を行い Petrobras ExxonMobil 等オファーのあった企業から石油製品を輸入し ラプラタ川で引き渡しを受けている 2004 年から2011 年にかけては カラカスエネルギー協力協定に基づき ベネズエラの PDVSAから石油 7,500b/dがパラグアイに供給されていたが 2012 年 6 月のルゴ大統領罷免に抗議し チャベス大統領が石油供給中止を決定し 契約が打ち切られた その結果 2012 年のPDVSAからの供給量は1,100b/dに減少した アスンシオン近郊に位置する Petropar 保有のVilla Elisa 製油所の精製処理能力は7,500b/dで アルジェリアやアルゼンチンから輸入したAPI 比重 44~46 度の原油を処理していた しかし パラグアイは現在 石油製品のみを輸入しており 2005 年以降この製油所は使われていない ガス (LPG) についてはすべて民間企業が輸入している パイプラインを敷設してボリビアから パラグアイ ウルグアイに天然ガスを供給する計画があったが フィージビリティ スタディを行ったところ パイプラインはパラグアイまで 1,000km ウルグアイまでさらに2,000km 敷設することになり コストが非常に高額 (35 万ドル /km) になる上に 第 3 国も通過するため政治的な問題もあり 現在はLNG 輸出入計画に変更されている ボリビアで液化したガスを川沿いにアスンシオン等で受け入れ 再ガス化する計画だ パラグアイは水力発電により55,000GWhを発電している このうち 10,000GWhを国内で消費し ブラジルに35,000GWhを アルゼンチンに10,000GWhを輸出している パラグアイはウルグアイをはじめとしたブラジル アルゼンチン以外の南米諸国にも電力を供給する能力を保有している しかし 現在 石油製品の輸入額が電力輸出によって得られる収入の3 倍となっており パラグアイの最大の課題はエネルギー自給となっている 2013 年 8 月に就任したカルテス新大統領はもともと事業家であり 2009 年に政治家に転身した人物だ 6
外資導入には積極的であり 国外からの投資を促進し石油 ガス開発を図るという前政権の方針に変更はないとみられている なお 政府は 石油 ガスの探鉱を促進するため公共事業通信省の鉱業エネルギー庁を省に格上げする計画であったが 8 月下旬 下院のエネルギー鉱山炭化水素委員会は同省の設立に関する法案を否決した (2) 探鉱状況パラグアイでは 1947 年から2005 年の間に Union Pennzoil Esso Texaco Occidental 等により 2D 地震探鉱推定 12,000~17,000kmと49 坑の坑井の掘削が行われ 約 30 坑で油兆 ガス兆が見られたが 商業規模の油田は発見されていない しかし パラグアイ全体の面積から考えれば 未探鉱のエリアは非常に多い また 掘削された坑井の多くは少ない地質データに基づき掘削されており 掘削深度も浅いものが多いという パラグアイはアルゼンチン ブラジル ボリビアという産油 産ガス国に囲まれており これらの国の堆積盆地が国境をまたいでパラグアイまで延びている パラグアイのポテンシャルについて 鉱業エネルギー庁は Pirity basinはアルゼンチン側では生産が行われており パラグアイ側も有望であるが Pirity sub basin と類似した地層であるPiral basinは アルゼンチン側でも生産は行われていないのでポテンシャルは低いとみている また Chaco basinはボリビア側で Margarita 等のガス田が発見されているので 有望であるとしている Pirity basinについては 同 basinで探鉱中のpresident Energyも アルゼンチン側では150 坑以上が掘削され1.5 億 bblが生産されており パラグアイ側でも同規模の油田 ガス田の発見が期待できるとしている 現在 10 社以上の企業がパラグアイでの探鉱に従事しているが パラグアイでは入札は行われていないため これらの企業は一定のエリアについて政府 ( 公共事業通信省鉱業エネルギー庁 ) に探鉱を行いたいと申請し 政府がこれを個別に承認している Permit of Prospect( プロスペクトを対象とする調査 ) の期間は 1 年で 1 年延長可 探鉱契約 (Exploration Concession) の期間は 4 年で 2 年延長可 生産契約 (Production Concession) の期間は 20 年で 10 年延長可となっている 探鉱契約と生産契約については国会での承認が必要である ロイヤルティは 10~14% 法人税は10% 石油会社が使う資材 機材については免税とされている 現在パラグアイで探鉱中の企業のほとんどが中小規模の企業である 2012 年 9 月にPirity 鉱区 (59%) 等にファームインしたPresident Energyは3Dの地震探鉱を実施 2013 年 8 月からはこの解析を行い 2014 7
年には坑井 3 坑の掘削を計画している 3 つの鉱区の権益を保有している Amerisur も このうちの San Pedro 鉱区で 2014 年に掘削を開始する計画である パラグアイ鉱区図 ( 出所 : パラグアイ公共事業通信省 ) 8
これまでパラグアイで探鉱がほとんど進まなかった背景には 前々政権が外資導入に積極的ではなく 外国企業による探鉱がなかなか許可されなかったことが挙げられる 前政権以降 政府はエネルギー自給を達成するため探鉱を促進したいとし 外資参入を歓迎する姿勢をみせているので 今後はこのような問題は生じなくなると考えられる また 国営石油会社 Petroparは 人員及び予算の不足から単独で探鉱を進めることができず パートナーを探しているが Petropar 以外にもPrimo Cano Meritos 等 予算が足りず探鉱を進められない企業は多い 政府は 石油が生産されるようになれば 新たに製油所を建設し 国内に石油製品を供給する計画だ 国内への供給が優先されるが 国内の製油所の精製能力を上回る原油についての輸出は可能とされている 国内用に引き取られる原油の価格は 国際価格とされ 特別な値引きを求めることはないという 石油に随伴して生産されるガスについては 自由に価格を決定し販売できる 随伴ガスを活用しない場合には 法律で再圧入することが求められている (3) シェールオイル シェールガスのポテンシャル米国 EIAが2013 年 6 月に発表した 世界のシェールガス資源量評価 によると パラグアイのシェールガスの技術的回収可能量は75Tcf で南米で第 4 位 シェールオイルの技術的回収可能量は37 億 bblで南米で第 5 位にあたるという EIAが評価を行ったのは Parana Basinの Ponta GrossaシェールとChaco Basin のLos Monosシェールである 鉱業エネルギー庁によると パラグアイのシェール層はアルゼンチンの Vaca Muertaシェールと同じ時代のものであるが 泥岩ではなく石灰岩である点が異なるという 南米のシェールガス技術的回収可能量 (Tcf) 南米のシェールオイル技術的回収可能量 ( 億 bbl) (EIA より作成 ) 9
( 出所 :EIA) このようにパラグアイのシェールオイル シェールガスの資源量は豊富であるとみられている 現在 President EnergyはChaco Basinに保有する鉱区でシェール層の調査を行っているが 技術面での複雑さや難易度の高さから 現在パラグアイに参入している多くの石油会社はシェールオイル シェールガスの掘削を行うまでには 3~4 年かかるとの見通しをたてている なお パラグアイでは現在 在来型 非在来型いずれについても同じ契約形態をとっているが 政府は今後非在来型については契約条件を変更する必要があるとしている 主な参考資料 1. U.S. Energy Information Administration, June 2013, Technically Recoverable Shale Oil and Shale Gas Resources: An Assessment of 137 Shale Formations in 41 Countries Outside the United States 2. Exploration Opportunities in Uruguay (ANCAP) 3. Politica Energetica Uruguaya E Institucionalidad (Ministerio de Industria, Energia y Mineria) 4. Paragua s quest for oil (BNamericas) 10