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図 1 貝化石のクリーニング 取り出した貝化石は, 標本小箱に収納して分類した (2) 化石の特徴を調べてまとめる 貝化石は図 2 を参考に, 二枚貝は主歯 放射肋を, 巻貝は螺助 臍孔に着目し鑑定した 図 2 貝化石部位の名称渋谷正通他,2008, 下総層群貝化石図鑑 p39 より (3) 生息緯度図, 生息深度図を作成し, 貝化石群集の堆積学的特性 ( 水平分布と垂直分布 ) を推定する (4) 化石の表面の状態を記録し, 緯度 水深との関係を調べる 4. 結果 4-1 文献調査 野外調査より地形図 ( 調査地点 ) を図 3 に示す 調査地点の緯度は北緯 37 58 ~59 に位置する 図 4 に地質図, 図 5 に地質柱状図を示す 野外調査に基づき, 調査地域を周辺の岩層から下位より A 層 ~E 層に区分した 以下に各層の特徴を示す A 層 : 小出川上流の五斗蒔集落西から北東に伸びる地域に分布する 層厚は 250m 以上, 暗灰色塊状泥岩か A 層 : らなり, 化石, 生痕化石とも見られない 最上部に厚さ 10m ほどの白色細粒凝灰岩を挟む B 層 : 小出川中流小出集落東から北東に伸びる地域に分布する 層厚は 260m 以上, 砂質塊状泥岩からできて B 層 : おり, 淡青灰色細粒凝灰岩を狭在する Makiyama chitani を多く含み, サンドパイプ状の生痕化石が見 B 層 : られる A 層とは整合に重なる 2

図 3 調査地点図新潟県新発田市は新潟県北部に位置する 小出川は日本海に直接流れ下る加治川の支流の坂井川に注いでいる小河川で良い露頭が連続する ( 電子国土 HP に加筆 ) 図 4 地質図安村 1996 を参考に補充調査を行い作成 地層の走向傾斜は N28 度 E20 W 程度, 岩層により下位より A 層,B 層,C 層,D 層,E 層と区分 3

C 層 : 小出川にかかる農道の橋より下流 300m~ 80m 付近までと, 下寺内集落の中央部から北東に伸びる地域に分布する 層厚は 50m 以上, 細粒もしくは粗粒の砂岩からできており, 貝化石, マカロニ状生痕化石が見られる 粗粒の砂岩からは貝化石が多産する 下部には灰色細粒凝灰岩が見られる B 層とは整合で重なる D 層 : 小出川の右岸と左岸の丘陵地帯に分布する 層厚は 60m 以上と思われ, 粗粒の花崗岩起源の砂礫と凝灰質の泥岩からなり, 下部には基底礫岩が見られるため, 下位層を不整合で覆っていると考えられる E 層 : 小出川, 寺内川の下流域に分布する 層厚は 8m 以上で, 花崗岩起源の砂礫でできている崖錘であり, 下位のD 層を不整合で覆う 調査地域の地質は, 新潟県地質図 2000 年によると, 新第三系中新世 ~ 鮮新世にわたる海成層より構成されている 下位より釜杭層, 下関層, 内須川層, 鍬江層の順に区分され, それぞれを新潟県油田層序である津川層, 七谷層, 寺泊 椎谷層, 西山層に対比している 表 1に新潟県地質層序表を示す 野外調査から, この地域の地層は, 岩層から内須川層, 鍬江層に相当するものと思われる 化石の産出地点は C 層に相当し, 青灰色塊状で, 細粒から粗粒の砂岩からなる 顕著なラミナ等は見られないが,2mm~ 4mm 程度の円レキを含む 図 6に調査風景, 露頭写真を示す 図 5 地質柱状図安村 1996 を参考に作成 表 1 新潟県地質層序表新潟県地質図 2000 年を参考に作成 図 6 調査風景露頭写真露頭は小出川右岸で青灰色砂岩層が 5m ほど露出している 4

4-2 貝化石の分類 鑑定 二枚貝 31 種 408 個体, 腕足類 3 種 158 個体, 巻貝 10 種 89 個体が産出した 表 2 に産出化石リストを示す 貝化石 について絶滅種は生息年代を, 現世種のものは生息地 ( 生息緯度 ) 生息深度 生息底質を調べまとめた 生息 地 ( 生息緯度 ) と生息深度については, 種によって幅が見られる そのため, 積み重ね図 を作成することとした この図は, 現世の貝の生息深度を参考にして, 産出化石種の生息深度を縦軸に累積した図である 生息深度に ついてその作成例を図 7 に示す 表 2 産出化石リスト二枚貝 31 種 408 個体, 腕足類 3 種 158 個体, 巻貝 10 種,89 個体が産出した 産出化石リスト ( 二枚貝網 ( 斧足網 )) 産出化石リスト ( 巻貝網 ( 腕足網 )) 小出川 小出川 種名 和名 右岸露頭 種名 和名 右岸露頭 個数 個数 1 Acila insignis キララガイ 7 1 Ophiodermella sp. 2 2 Andara amicula シガラミサルボウ 5 2 Nuculana yokotamai アラボリロウバイガイ 24 3 Mizuhopecten yokoyamae ヨコヤマホタテ 1 3 Glycymeris yessoensis エゾタマキガイ 9 4 Myadora fluctuosa ミツカドカタビラガイ 5 4 Euspira pila タマツメタガイ 18 5 Yoldia notabilis フリソデガイ 1 5 Lirabuccinum fuscolabifiatum エゾイソニナ 3 6 Astralium.sp 1 6 Antiplanes contraria(yokoyama) ヒダリマキイグチ 2 7 Anisocorbula venusta クチベニデ 2 7 Siphonalia modificata セコボラ 1 9 Limatula kurodai Oyama クロダユキバネ 7 8 Turritella saishuensis motidukii Otuka モチヅキキリガイダマシ 35 10 Ranella yasumurai Amano 5 9 Ancistolepis masudaensis マスダワダチバイ 2 11 Swifopecten swiftii エゾキンチャク 2 10 コケムシ 5 12 Chlamys tanassevitchi ダイシャカニシキ 1 101 13 Glycymeris fulgurata トドロキガイ 17 14 Ocinebrellus ogasawarai Amanoand Vermeij 2 15 Nizuhopecten poculum カズウネホタテ 3 産出化石リスト ( その他 ) 16 Chlamys squamata ニシキガイ 1 1 Laqueus sp. 腕足類 134 17 Tachyrhynchus horinjiensis Onoyama 6 2 Hemithyris sp. 腕足類 23 18 Macoma nipponica Tokunaga ニホンシラトリ 6 3 Coptothyris sp. 腕足類 1 19 Limopsis oblongaa.adams ナミジワシラスナガイ 69 4 Niveotectura pallida ユキノカサガイ 1 20 Megacardita ferruginosa フミガイ 63 159 21 Clinocardium fastosum オンマイシカゲガイ 3 22 Cyclocardia myogadaniensis ミョウガダニフミガイ 29 23 Limopsis tokaiensis トウカイシラスナガイ 3 24 Chlamys cosibensis(yokoyama) コシバニシキ 5 25 Arca boucardi コベルトフネガイ 3 247 図 7 積み重ね図の作成例 1 縦軸に水深を取り,A 種の生息深度 0m~200m を縦棒 ( 濃い緑 ) で示す 2 次に B 種の生息深度を 40m~150m( 薄緑 ) を重ねる 3C 種の生息深度 ( 黄色 )10m~100m を重ねる 4D 種の生息深度 ( 空色 )80m~130m を重ねる 80m~100m にピークが見られ, この化石群集の生息深度が推定できる 生息緯度図も同様に作成した 5 考察 5-1 絶滅種の生息年代について図 8 に絶滅種の生息年代を示す 絶滅種 8 種が確認され, この地層の堆積年代は, 鮮新世 ~ 更新世前期であることが推定でき, 新潟県地質層序では, 鍬江層に相当する 図 8 絶滅種の生息年代 5

5-2 生息深度について図 9 に産出化石についての生息深度図 ( 積み重ね図 ) を示す 図 7 の例で示したように, この図は, 現世の貝の生息深度を参考にして, 産出化石種の生息深度を縦軸に累積した図である 累積種数の多いものが, 当時の生息していた深度を示すものと考えられる 潮間帯から中浅海帯の 10m~30m 付近におおまかなピークが見られることから, 主な生息深度はこの深さであると推測できる また, 深度が深くなるにつれて貝化石種数は徐々に減少していくが, その割合はゆるやかである また,40m~50m 付近にもピークが見られ, 潮間帯の貝化石群集と, 40m~50m 以深程度の群集から構成されて堆積していると考えられる 5-3 生息緯度について図 10 に産出化石についての生息緯度図 ( 積み重ね図 ) を示す 北緯 38 度 ~40 度にピークが見られる この図は生息緯度を横軸に累積した図である 累積種数の多いものが, 当時の生息していた緯度を示すものと考えられる 図 9 生息深度図 ( 積み重ね図 ) 北緯 38 度 ~40 度にかけてピークが見られ, 累積した貝の種数も北側が多いことから, 現在の緯度より少し北の北緯 38 度 ~40 度に相当する環境であったと考えられ, 比較的冷たい海水の存在が推定できる また, 北緯 33 度 ~34 度にも小さなピークが見られ, 暖流の影響も受けていたと思われる 図 10 生息緯度図 ( 積み重ね図 ) 6

5-4 貝化石表面の様子から貝化石の表面を観察すると, 次の2つの点が特徴的に観察できる Ⅰ: ひどく摩耗しているものと, 摩耗の少ないものが共存している Ⅱ: 殻の表面に孔 ( 捕食孔 ) があるものとないもの 図 11 摩耗した貝と摩耗がなく綺麗な貝左 : トドロキガイ右 : エゾタマキガイ これらの違いは, 化石が埋没する堆積時の環境, および生育環境を示すものと考えた 以下の項目について二枚貝と巻貝を分けてデータをまとめた 二枚貝と巻貝を分けたのは, 二枚貝に摩耗しているものが目立ち, 巻貝は保存の良いものが多いからである なお, 摩耗の程度については次のような基準とした 二枚貝: 表の放射肋が明瞭でなく, 成長線がよく見えない 裏側はざらざらで光沢がない 巻貝: 殻頂や螺肋が明瞭でない 図 11 に摩耗した貝と綺麗な貝を写真で示す 5-5 摩耗貝の割合と生息緯度 深度の関係図 12 に摩耗している貝化石の割合を二枚貝と巻貝を比較して示す 明らかに二枚貝の方が摩耗している割合が大きい 図 13 には摩耗貝の割合と生息緯度の関係を示す 南に生息していた貝ほど摩耗していることがわかる 図 14 には二枚貝と巻貝を分けて生息緯度を示した 二枚貝と巻貝の生息緯度のピークは, 共に北緯 38 度 ~ 40 度であるが, 二枚貝では北緯 34 度付近に小さなピークが見られる 図 12 摩耗した貝の割合図 15 には二枚貝と巻貝を分けて生息深度図を作成した 二枚貝は比較的浅い海底に生息している割合が高いが, 巻貝は幅広く分布していることがわかる 図 13 摩耗貝の割合と 生息緯度 図 14 二枚貝と巻貝の生息緯度分布 ( 積み重ね図 ) 二枚貝では北緯 34 度付近に小さなピークが見られる 7

図 15 二枚貝と巻貝の生息深度 5-6 捕食孔の見られる貝の割合と生息緯度 深度の関係図 16 に捕食孔のある貝を写真で示す 捕食孔はツメタガイなどのタマガイ科の巻貝などによって捕食され, あけられたものと考えられる したがって捕食孔はその貝が生息時にあけられたものであると推定される 図 17 に捕食孔の見られる貝とその緯度分布を, 示す この図から捕食孔が見られる貝は北緯 31 度 ~45 度に多いことがわかる 図 16 捕食孔の見られる貝また, 図 18 では二枚貝と巻貝によって分別し, それらを捕食孔の有無によって分けた 4 枚のグラフを作成した 摩耗ありと摩耗無しのどちらのグラフでも巻貝の方が捕食孔が空いている割合が高い また捕食孔が空けられている割合は巻貝のほうが明らかに多い さらに巻貝の捕食孔が空いている貝のみに着目すると摩耗が少ない貝に捕食孔が見られる割合が多いことがわかる 図 17 捕食孔の見られる貝の緯度分布 図 18 摩耗が多い貝の捕食孔が見られる割合 8

6. 結論 (1) この貝化石群集の堆積年代は, 鮮新世 ~ 更新世前期であり, 生息緯度については, 現在より少し北よりの北緯 38 度 ~40 度であるが, 北緯 34 度付近にもピークが見られ, 暖流の影響も考えられる (2) この貝化石群集には, 主に2つの生息域の貝類から構成される 1つは, 水深 10m~30mに生息する二枚貝を主体とする, 主に潮間帯に生息していたグループで, 当時は暖流の影響を受けて生息していたが, その後の寒冷化に伴う海面の低下によって死滅したもの これらの貝は摩耗し, 二次堆積したと考えられる もう1つは水深 50m 以深に生息していた巻貝を主体とするグループで, 捕食孔が多く, 摩耗が少ないことから, 現地性の化石であると考えられる 当時の堆積状況を図 19 に示す 1 2 3 4 図 19 当時の堆積状況 1 暖流の影響で, 海水位は高めで, 暖流系の貝類が生息 2 寒冷化により海水面が低下, 暖流系の貝類は死滅する 3 死滅した暖流系貝類は潮間帯等で摩耗する 4 水深 50m 以深に二次堆積する (3) 貝化石群集の摩耗度の違い, 捕食孔の有無は, 化石の堆積環境, 生育環境を示す指標として検討できる ものである 9

7. 謝辞貝化石の鑑定は, 上越教育大学の天野和孝教授に依頼した 地質調査に協力頂いた新潟中央高校の渡辺恭平先生, 地学部員の皆様, 以上の方々に厚く感謝申し上げます 本研究には, 新潟薬科大学応用生命科学部高等学校理科系部活動支援事業補助金を使用しました ここに感謝申し上げます 8. 参考文献等化石研究会, 化石の研究法 - 採集から最新の解析法まで -, 共立出版株式会社菅野三郎 天野和孝, 新潟県地学のガイド ( 上 ) 新潟県西部の化石をめぐって, コロナ社安村邦彦,1996, 新発田市菅谷地区に産出する貝化石群集について, 新潟県立教育センター長期研修報告天野和孝 佐藤時幸 小池高司,2000, 日本海中部沿岸域における鮮新世中期の古海況, 地質学雑誌第 106 巻 883-894 地学団体研究会,1993, 貝化石の調べ方地学ハンドブックシリーズ 7 渋谷正通 三谷豊 南波鑑四郎 野中義彦,2008, 下総層群貝化石図鑑, 地学団体研究会新潟県,2000, 新潟県地質図説明書 ( 新潟県 2000 年版 ), 野崎印刷奥谷喬司, フィールドベスト図鑑 日本の貝 1 2, 学習研究社吉良哲明, 原色日本貝類図鑑, 続原色日本貝類図鑑, 保育社電子国土 HP. http://maps.gsi.go.jp 9. 成果発表実績第 60 回日本学生科学賞新潟県審査会最優秀賞第 60 回日本学生科学賞中央審査会入選 2 等平成 28 年度全国高等学校総合文化祭自然科学部門研究部門優秀賞 10