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1718 Pre-filtered 3 次元バイラテラルフィルタによる CT 画像のノイズ低減 五十嵐洸太 ( 指導教員 : 市川勝弘教授, 川嶋広貴助教 ) 要旨画像ベースのノイズ低減技術として開発した pre-filtered 3 次元バイラテラルフィルタ (3DBL PF) について, ファントム実験によりモデルベース逐次近似再構成法 (model-based iterative reconstruction: MBIR) とノイズ低減性能を比較した.0 cm 径の水ファントム内に 3 cm 径の軟部組織等価物質ロッド (60 HU) を固定し,GE 社の CT 装置である Discovery CT750 HD にて,.5 mgy の CTDI vol にて撮影した.filtered back projection (FBP) のスライス厚 :0.65 mm の画像に対して,3DBL PF を適用した.GE 社の MBIR である Veo にて同様の画像を再構成した. ファントムの水部より noise poer spectrum (NPS) を, ロッドから円形エッジ法によりタスクベースの modulation transfer function (MTF) を測定した. またロッドのエッジ面からスライス感度分布 (section sensitivity profile: SSP) を測定した.MTF(u) /NPS(u) から算出できる system performance(sp) 関数に SSP の変化を考慮して補正した corrected SP(u) [csp(u)] を比較した.0.1 cycles/mm における 3DBL PF の csp(u) は FBP の 3.55 倍となり,Veo に顕著に勝った. 開発した 3DBL PF は,MBIR と同等以上の画質であり, 優れた被ばく低減効果が示唆された. Ⅰ. 緒言ノイズ低減を目的として開発された逐次近似再構成法 (iterative reconstruction: IR) が臨床的に使用されるようになった. ノイズは線量に依存するため, ノイズ低減をすることで被ばく低減が実現できる. しかし, IR は装置専用のソフトウェアまたはハードウェアによって実現されるため, 旧装置や IR のオプションを導入しなかった装置では使用することができない. そこで, 画像ベースのノイズフィルタリング技術を CT 画像に応用することができれば, 全ての装置および検査で利用することができるため有用である. 画像ベースのノイズフィルタリング技術としてバイラテラルフィルタが知られている. バイラテラルフィルタは, 一般写真では効果的だが,CT 画像ではスパイク状のノイズが残り, 不自然なノイズテクスチャになるといった問題があった. そのためか, バイラテラルフィルタを CT 画像に用いた研究はされていない [1] []. そこで, 本研究では, 前処理としてローパスフィルタリング (pre-filtering) を施したボリュームデータをコントラストの計算に用いる改良型 3 次元バイラテラルフィルタ (3DBL PF) を考案し, そのノイズ低減性能を既存のモデルベース逐次近似再構成法 (model based iterative reconstruction: MBIR) と比較した. Ⅱ. 方法 1) ファントム及び撮影条件と比較対象 面内の解像度とノイズ特性を測定するために,0 cm 径の水ファントム内に直径 3 cm の軟部組織等価 物質ロッド (60 HU) を固定した. また, 体軸方向の解像度を測定するために, 水ファントム内に直径 7 cm

の軟部組織等価物質ロッド (60 HU) を固定し, 約 傾けた. これらにより, コントラストが 60HU の対象に対する面内と体軸方向のタスクベースの画質評価を行なった. GE Healthcare 社の 64 列マルチスライス CT 装置,Discovery CT750 HD を用いてそれぞれのファントムを撮影し,filtered back projection (FBP) 画像を取得した. 管電圧は 10 kv,ctdi vol は.5 mgy, 設定スライス厚は 0.65 mm とし, ヘリカルスキャンで撮像した. GE Healthcare 社の MBIR である Veo を比較対象とした. ) 提案手法 3 次元バイラテラルフィルタは (1) 式を用いて処理され, 開発した 3DBL PF はローパスフィルタリング (pre-filtering) を施したデータ f'(i,j,k) をコントラストの計算のみに利用した. さらに,pre-filter のボケの影響を処理後の画像になるべく反映させないよう,pre-filter とバイラテラルフィルタの方向を互いに直交する手法を考案した. その 1 つは,xy 面 ( スライス面 ) に pre-filter をかけ,3 3 7 の z 方向に長いカーネルを用いることによりバイラテラルフィルタの処理を z 方向主体としたものである. もう 1 つは,z 方向に pre-filter をかけ,7 7 3 の xy 方向に広いカーネルを用いることによりバイラテラルフィルタの処理を xy 方向主体としたものである. これらにより,pre-filter のボケの影響を抑え, かつスパイク状ノイズを抑制したフィルタリングが可能となった.3DBL PF の処理過程は 1 つ目の xy pre-filter と z バイラテラルフィルタを 3 回繰り返し, つ目の z pre-filter と xy バイラテラルフィルタを 回繰り返した後, ノイズテクスチャを自然にするためにオリジナルの画像を 30 % 混合した. g( i, j, k) = n= m= l= l f ( i + l, j + m, k + n)exp( m= n= l= l exp( + m + n σ 1 + m + n ( f ( i, j, k) f ( i + l, j + m, k + n)) )exp( ) σ 1 σ ( f ( i, j, k) f ( i + l, j + m, k + n)) )exp( ) σ (1) g(i, j, k): 処理画像データ, f (i, j, k): 元画像データ, f'(i, j, k):pre-filter 処理データ σ 1: ガウシアンフィルタの標準偏差,σ : コントラストによる重み付け計算における標準偏差 3) 解像特性の測定タスクベースの modulation transfer function (MTF) である task transfer function (TTF) を解像度の指標として用いた.TTF は軟部組織等価物質ロッドの境界部分から円形エッジ法により測定した. データ解析においては, 日本 CT 技術学会により提供される CT 画像計測ソフトウェアである,CTmeasure ver.0.97b を使用した. 4) 粒状性の測定粒状性の指標である noise poer spectrum (NPS) は, ファントムの水部分に 56 56 の ROI を設定し, 測定した. データ解析においては, 日本 CT 技術学会により提供される CT 画像計測ソフトウェアである, CTmeasure ver.0.97b を使用した.

5) スライス厚の測定タスクベースのスライス厚の指標である task-based slice sensitivity profile (SSP TASK) は, ロッドと水の境界面からエッジ法により測定した. データ解析においては, 日本 CT 技術学会により提供される CT 画像計測ソフトウェアである,CTmeasure ver.0.97b を使用した. 6) System performance 関数の算出得られた TTF と NPS から () 式を用いて System performance 関数を算出できるが [3], 本研究では比較対象のスライス厚が異なるため,(3) 式を用いて NPS を SSP TASK の曲線下面積 (area under the curve: AUC) でスライス厚の違いを補正し,(4) 式を用いて corrected system performance (csp) を算出した. TTF ( u) SP ( u) = NPS( u) () AUC cnps( u) = NPS AUC T arg et FBP (3) TTF ( u) csp ( u) = cnps( u) (4) Ⅲ. 結果 Fig. 1 に各再構成法における TTF の結果を示す.3DBL PF,Veo のどちらにおいても FBP に比べて低下 したが,3DBL PF の方が高い値となった. Fig. 1 TTF の測定結果

Fig. に各再構成法における SSP TASK の結果を示す.3DBL PF 半値幅は FBP より狭く,Veo と同程度と なったが, 裾野がやや広がる傾向を示した. Fig. SSP TASK の測定結果 Fig. 3 に各再構成法における csp の結果を示す.0.1 cycles/mm において,3DBL PF の値は FBP の約 3.55 倍となり,Veo の値は FBP の約.69 倍となった. Fig. 3 csp の測定結果 Fig. 4 に FBP,3DBL PF,Veo のロッド画像 (axial 画像 ) を示す. ロッド画像の周辺を見ると,3DBL PF のエッ ジ保存性能は Veo と比べて高く, ノイズテクスチャはより自然で, かつ,Veo より低ノイズであることがわか る.

(a) (b) (c) Fig. 4 ロッドの axial 画像. (a)fbp,(b)3dbl PF,(c)Veo Fig. 5 に FBP,3DBL PF,Veo のロッドの coronal 方向の multi-planar reconstruction (MPR) 画像を示す. 3DBL PF は Veo と比較して低ノイズでロッドの境界面がより明瞭となった. (a) (b) (c) Fig. 5 ロッドの coronal MPR 画像. (a)fbp,(b)3dbl PF,(c)Veo Fig. 6 に FBP,3DBL PF,Veo のロッドの sagittal MPR 画像を示す.SSP TASK の結果と同じく,3DBL PF は Veo にやや劣る結果となった. (a) (b) (c) Fig. 6 ロッドの sagittal MPR 画像. (a)fbp,(b)3dbl PF,(c)Veo

Ⅳ. 考察血管内のプラークや血栓などは臨床的所見として重要でありながら, 細かい対象であるために解像度が必要とされ, その CT 値コントラストは 60HU 程度である [4]. 従って, 本研究では, この中間的コントラストである 60 HU におけるタスクベース評価を行った. 3DBL PF の TTF は FBP からやや低下し,Veo より高い値になった. これによりは,Veo より高いエッジ保存性能が示された. スライス面の pre-filter に対して,z 方向主体のバイラテラルフィルタを適用して pre-filter のボケの伝搬を抑制した効果が高い TTF に反映された.Veo は大きくノイズを低減することが可能であったが, ノイズテクスチャの変化が視覚的に確認された. これに対して, 我々の開発した 3DBL PF は FBP に近いノイズテクスチャとすることが可能であった. SSP TASK を考慮した csp (u) は FBP に比べて 0.1 cycles/mm において Veo は.69 倍,3DBL PF は 3.55 倍となり, それ以上の空間周波数においても同様の結果となった. よって理論的には,3DBL PF は FBP の 1/3.55 の線量, つまり約 30 % の線量でも FBP と同等の画質を得ることができる.Fig. 4 で示したように axial 断面で見た面内の解像度は,Fig. 1 に対応して 3DBL PF は Veo より良好であった. また,Fig. 6 の sagittal 画像では,Fig.3 の SSP TASK の結果を反映して, 体軸方向の解像度は Veo がやや優れていた. また,Veo では 1 回の撮影で得たボリュームデータに対して 30 分の処理時間を有するのに対し,3DBL PF では 100 枚の画像を約 1 分間で処理でき, 処理時間を大幅に短縮することができる. Ⅴ. 結語 CT におけるバイラテラルフィルタの問題点を改善する pre-filtered 3 次元バイラテラルフィルタを考案した.60 HU のタスクベース評価において,FBP の約 3.5 倍の system performance となり, 既存の MBIR( 約.7 倍 ) より高い性能を示した.Pre-filtered 3 次元バイラテラルフィルタの優れたノイズ低減性能により約 70 % の被ばく低減が可能となることが示唆された. Ⅵ. 謝辞 本研究にあたり, ご指導くださいました市川勝弘教授, 川嶋広貴助教, 並びにご協力いただいた市川 研究室, 福井大学医学部附属病院放射線部の方々に深く感謝申し上げます. Ⅶ. 参考文献 [1] Manduca A, et al. Med Phys. 009 Nov;36(11):4911-9 [] Allner S, et al. Phys Med Biol. 016 May 1;61(10):3867-56. [3] E. Samei and S. Richard, Med. Phys. 4 (1), 015 [4] Urikura A, et al. Phys Med 3 (8), 99-998. 016