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Transcription:

2003 年 1 月 9 日現在 2002 年 10 月 3 日 ( 木 ) 米国海損精算人協会第 124 回年次総会においてなされた Howard McCormack 会長の会長演説於 St. John University Manhattan Campus 演題 THE IMPETUS FOR CHANGE IN THE 1994 YORK ANTWERP RULES REAL OR FANCIFUL? 1994 年 YAR を変えようとする起動力 それは現実的かそれとも空想的か? < 訳者のことば > 私は昨年 10 月 3 日 New York で開かれた米国海損精算人協会の第 124 回年次総会に日本海損精算人協会の第 45 期会長として岡田武志理事と共に出席する機会を得た この日の演題はいままさに共同海損の世界で最も激しく議論されている共同利益主義と共同安全主義の対立の問題を正面から扱っていたので 私はこれを我が国の関係者に 1 日も早く伝えたいと考えた 帰国後 McCormack 会長から演題の草稿を送って貰い翻訳に取り組んだ polarization of sugar について神戸 キソー化学工業の児玉社長より助言を戴いたほか 岡田理事からどうしても分からなかった一文について教示を受けた 加えて私は McCormack 会長に計 40 の質問を送り回答を得てこの翻訳文を完成した なお この翻訳文は今年 7 月頃発行される日本海損精算人協会の会報第 46 号にも掲載される予定であるが そのことについても海事法研究会誌編集部の了解が得られている 演説当日の会場の雰囲気については本誌 2002 年 12 月号 42 頁以下を参照されたい 日本海損精算人協会第 46 期会長藤井郁也 1 はじめに 2001から2002 年にかけて当協会の会長を勤めたことは私が大いに名誉とするところである あの9 月 11 日の惨劇は我が協会にも深刻な打撃を与えた というのは それは我々から3 人の立派な会員 Aon 保険グループの Bob Colin Bob Miller Bill Wilson を奪ったからだ [ 訳注 1] あの11 月の総会で述べた如く 私は私のもともとのルーツに戻っていたのだった というのは 私は海事の分野 それも必ずしも私が1961 年以来携わっている海法の仕事というわけでなく 海上保険の仕事で私の職歴を開始したからだ 私は Atlantic Mutual 保険会社で数ヶ月だけヨットと貨物の査定業務を担当したことがある そしてそこで1 袋には何粒のココアが詰まっているものであるかとか 生ゴム入りの何袋が汚染損害を受けただろうとか 蔗糖が汐濡れした場合 偏光計による糖度測定にどれだけ影響が出るかなどについての奥義を習得したものだった 私はこれらの事柄に大変興味を抱いていたが ある日 Ed Cartier という海損精算人業界の大物から1 本の電話を貰ったことは大変有り難いことだった というのは 彼は当時 C.R. Black Jr. Corporation として知られていた彼の会社に来ないかと誘ってくれたのだった これによって私は彼から個人的指導を受けることができたのだから この転職は恐らく私の職歴を通じて最善のものの一つであったろう そしてその頃には生涯の仕事にしようと思って海損精算人の仕事に入っていったのだった その頃 私は海上保険業界の友人達と共に Fordham 大学のロー スクールにも夕刻から通っていた その仲間の1 人に最近 American Club を引退した旧き友 Bill Craig もいた Black 社にいる間に私は海損精算の分野から海上保険のブ ( 原文第 1 頁終わり ) 1

ローカーの仕事に興味を引かれて方向を変え Black 社に勤務した残りの期間 海上保険ブローカーとして海上保険の仕事をしたのだった ロー スクールを修了したとき 私は再び将来の仕事を考えた そのとき私は一面において海上保険の仕事を離れ 他面において海事弁護士になることによって海上保険とのつながりを保つこととし ある有力な法律事務所に入り その後 時を経て Bethlehem 製鉄会社の海事顧問弁護士になり そして終局的には Healy & Baillie 法律事務所のパートナーになった 私は先輩弁護士である Nicholas Healy の道の後に続いたこと 米国海法会の会長と この権威ある協会の会長の道を歩んだことを幸せに思っている 私は万国海法会 (CMI) の共同海損作業部会のメンバーとして海損精算の分野での活動を続けてきた 私はまた米国海法会の共同海損小委員会の会長でもある これらの活動をなす中で 私は当協会の執行評議会のメンバーの方々 海事弁護士会と海法会の仲間からも多大の支援を受けてきた これらの人々は海上保険と海損精算の分野で密接に助けて下さったのだ さて 私は当協会の過去の会長がなしてきた演説とは異なる方法を採るつもりだ というのは 私は今日 海損精算に従事する人々と 船主と 船体保険者にとって極めて重要な問題を皆さんと共に討議したいと考えているからだ これらの問題とはYAR1994を変更しようという提案と関わっている そしてその提案は現在 CM I 作業部会で検討されているところだ 私はまずその活動の歴史と背景について述べたいと思う ( その活動は Sydney 経験の少し前に始まった そしてCMIの会議がそこで開かれたことの結果として1994 Rule が出来上がったのだ ) そして今日に至るまでの様々な出来事についても述べるつもりだ 現在 CMI 作業部会で検討されているところの International Union of Marine Underwriters(IUMI) によって提議された Draco [ 訳注 2] のように厳格な提案についても述べることにしよう 私は思う 海上保険業に関わる人々の全て 殊に船主 船体保険者 そして海上保険のシステムを使う人々の全ては上記 IUMIの提案が担保範囲に ( 原文第 2 頁終わり ) 2

及ぼすことあるべき変更と影響について十分に認識しておくことが肝要であり そしてもしこれらの変更がなされるならば 船主と貨物の利害関係者が近い将来対応すべき方法についても認識しておくことも恐らく肝要であろうと 簡潔に言えば 主要な動議 (thrust) というのは現在の共同利益主義を放擲して共同安全主義を盛り込むべくYARを修正しようというものだ その結果は避難港へ到着したらそこで共同海損を終了させ そこから先に生ずることあるべき費用の全てを共同海損から除外しようということになるだろう YARの歴史の要約完全を期したいという気持ちから 私はYARの背景と歴史を少しの時間 皆さんと共に見てみたい というのは 我々がいま直面している問題とこれらの問題がどのように浮かび上がってきたかということを理解するためには必要だと思うからだ 勿論 本日ここにお集まりの皆さんは海上保険と海損精算に深く関わる人ばかりなので まるで私は教会の聖歌隊席に向かって説教しているようなものだ でも我々が同じ page からスタートすること それから現在 我々が置かれている場所 どのような変化がこれから生じ得るのか また行き着く先はどこなのかについて十分知っておくことは為になると考えるからだ 海上保険に関する本の指導的著者である Leslie Buglass は次のように述べている : 共同海損は最古の海上航海と同じくらい古いものであり 衡平の観念に根差した海上における自然法である 共同海損に関する国際海事法は数世紀に亘ってそのような不衡平 ( 投荷の問題についての議論 ) を認識し そして今日存在する共同海損法は そのような場合 海上の冒険に従事する全ての当事者は安全に引き渡された財産の価額の割合に応じて分担すべきだという明快な原理の上に展開されてきたものである [ 注 1] このような規則は この点に関する大陸法が出来るより遥かに先立つものであり 紀元前 900 年のロード法の注解 (comments) にも遡ることができるのであり そしてそれは後にローマ人に ( 原文第 3 頁終わり ) 3

よって彼等の民事法に取り込まれた [ 注 2] ロード法典とローマ法の中におけるかかる概念は 地中海諸国の様々な法律に引き継がれたが 共同海損の精算を国際的に統一させようとする現実的な努力は 19 世紀の後半になるまでなされなかった [ 注 3] YARは国際海事法の中でユニークな位置を占めている というのは その規則は海事産業従事者の自発的受容に任されているからだ [ 注 4] 尊敬する Knut Selmer が述べたとおり 共同海損は国際的統一の努力が最も理想的に成功した分野であると言って差し支えないと思う [ 注 5] Geoffrey Hudson のかの素晴らしい著作の中で述べられている如く 統一への探究は1860 年 5 月 National Association for the Promotion Social Science( 社会科学振興のための全英協会 ) がヨーロッパの海洋国家へ送った1 通の書簡によって始まった その書簡に署名した者の中には Lloyd s の会長 London General Shipowners Society あちこちの商工会議所 及び連合王国の海運 商業 保険業界を代表する諸団体が含まれていた [ 注 6] この書簡の結果 Glasgow で会議が開かれ そこで幾つもの決議が採択された それらの決議は幾つもの国によって法律が制定されるべく議会が法案を起草する手助けとなることを目的としていた 次のステップは1864 年の9 月に York 市で開かれた Third International General Average Congress だった そこで法案と 幾つかの提案が討議された York Rules として知られる11 条からなる規則が合意され それらの条項が船荷証券に採用されることが勧告された 国際的に何かをなそうとする活動にはいつもつきものだが これらの規則を実施することは決して急いでなされたわけではない ( 原文第 4 頁終わり ) 4

しかし 1877 年には Antwerp で更に会議が開かれ そこで York Rules は修正され かくして York-Antwerp Rules となり そして結局 今日のYARの基礎が形成されたのだ 1877 年に形づくられた Rules は 1877 年から1890 年の間に海事産業において世界的に承認され 採用されることにより 一般のコンセンサスを得るに至ったようだ その1877 年規則は共同海損を定義しようとは試みなかった そして特定の状況のみを扱った なぜなら共同海損は2つの異なる道に沿って発展したから 英国型と呼ばれた一群の考えは 共同海損行為は船と貨物を保全するために行なわれ または共同海損費用は船と貨物を保全するために支出されなければならないとの立場を堅持した これは現在 検討議題となっている修正提案の基礎と本質的に同じだ フランス型と呼ばれたもうひとつの考えは 共同の利益のためにとられる手段は共同海損と呼ばれるに値するとの立場を擁護するものだ [ 注 7] 私たちが本日なそうとする議論は この共同安全に対する共同利益という問題だ 規則の更なる発展は1890 年まで続いた そしてその年 規則は18 条にまで増大した しかしまだ規則を定義しようという努力はなされなかった 1890 年規則は Liverpool 会議で形を成した それらの規則は1924 年まで実務で用いられた というのは 第一次世界大戦のために妨げられ 規則の検討は遅れ 1924 年になるまで更なる改定はなされなかったから Stockholm 国際会議が開かれ 現行規則の大多数が採用され そして原則がYA Rの現行文字規則の形で叙述されたのはその1924 年のことであった [ 注 8] 当時 英国と米国のマーケットでは立場が両断されていた というのはアメリカ人は Rule Aは避難港で認容されて然るべき費用を認容するものとしては十分でないと信じていたからだ 続いて1950 年の改定において更に精密化がなされた このときはCMIの後援の ( 原文第 5 頁終わり ) 5

下で改定がなされた CMIは今日に至るまでずーっとYARの保護者の役割を続けてきた 1950 年から1974 年の期間 規則が再び修正された間 ヨーロッパの協会 (AID E) とIUMIの共同海損委員会により真剣な議論がなされた CMIは1974 年に Hamburg で会議を開き このときは規則の簡素化に重点がおかれた 1950 年規則は実務においてかなりうまく機能していたが 業界 殊に船体と貨物の利害関係者の間では懸念事項があって 更に簡素化と近代化が求められ そして1974 年規則に行き着いた 1990 年 6 月 パリで開かれたCMI 会議において救助を扱う Rule Ⅵについてのみ更に修正がなされた その後の経過といえば 更に規則が検討される段階があり それが終局的に1994 年に Sydney で開かれたCMI 会議におけるYARの具体化と確定に至ったのである 2 Sydney で体験したこと 1 Sydney Rules の背景 a)1991 年の UNCTAD Report 1991 年に国連貿易開発会議 (UNCTAD) の海運委員会と国際海運法制作業部会は General Average - A Preliminary Review と題する報告書を作成した [ 注 9] この文書は本質的に歴史的背景 定義 共同海損分担額の回収についての議論 共同海損批判論と共同海損 system に代わるものについての議論を含む 共同海損の諸問題についての入門書であった その結論において UNCTAD は共同海損の廃止 共同の簡素化 一定の場合において分担を減じたり廃止することを含む 様々な問題点に考察を加えている そ ( 原文第 6 頁終わり ) 6

れに加えて Selmer 教授による共同海損についての包括的分析もあった [ 注 10] 彼は廃止が最善の解決であると結論づけた UNCTAD Report の最終結論のひとつは CMIと協議のうえ 海上保険の利害関係者に UNCTAD が approach して現行の共同海損の体系を廃止することを可能にする新しい保険の仕組みを作り出すことが可能か否かを探るための調査と 議論を保険業界で組織的に始められないか打診すべきだというものであった [ 注 11] そしてそれにも拘わらず もし保険業界が保険上の解決は不可能だとの結論に達するのなら 次の段階としていかにすれば現行の共同海損体系とYAR を最もよく簡素化し 改革できるか ( その一部を廃止するかもしくは廃止しないで一部を現状に合うように修正するか ) を考慮することが適切であるというものである [ 注 12] このことがそれゆえCMIによってなされるべき更なる議論と研究の基礎となった そしてそのCMIは私が既に述べたとおりYARの保護者であった 3 1992CMIの共同海損作業部会 1992 年 CMIの共同海損作業部会はCMIの共同海損国際小委員会に報告書を送った [ 注 13] 現英国海損精算人協会の Honorary Secretary であり Joint Hull Committee の Secretary であり International Underwriting Association of London の特別顧問である David Taylor がCMI 作業部会の座長であった 彼はそのCMI 作業部会座長の地位を保ち そしてCMIの1994 年 Sydney 会議において熱心に 且つ素晴らしくその役割を果たした 彼の1992 年報告書は 共同海損法とYARの研究を続けるという1990 年 12 月におけるCMI 決定に言及していた 作業部会は基本的にヨーロッパ人からなる 日本人の代表 1 人が加わってはい ( 原文第 7 頁終わり ) 7

るけれども この作業部会は共同海損とYARの将来に関する諸問題を見極めるためにCMIによって作成された一連の質問に対する回答を討議した また後で述べる UNCTAD 報告書も参照された この1992 年 CMI 報告書は UNCTAD の事務局とCMIの作業部会との間の密接な協働を吟味した この活動の歴史を知りたいと思う人はこの報告書を参照されることをお勧めする なぜなら そこにはC MIの一連の質問に対する各国の海法会の回答について報告されているから 米国海法会 (MLAUS) は内容の濃い意見を送ることにより随分と協力し そしてこの問題についてCMIと議論することにより貢献した Mr. Taylor は彼の報告書の中で次のように結論づけている 即ち 実際界の利害関係者から共同海損 system を廃止するとか 急進的に改定することを求める要求は少しもないということについて争いはないということを或る意見は示しているけれども 今 (1992 年 ) こそ この system に改善をもたらすことに考慮を払いながら仕事を着手するに適切な時期に見えると Mr. Taylor は規則を受け入れることについての唯一無二の統一性とそれらの規則が全ての当事者の利益のバランスをとる程度に十分な注意が向けられるべきであると表明した [ 注 14] 彼は一つの例外を除いて全ての回答は共同海損の現行基本原則を維持したいという希望を表明する点で一致していたと述べた その共同海損の基本原則とは (a) 共同の maritime adventure にあって 危険に曝された財産を保全するためになされた犠牲損害と生じた費用 (Rule A) 及び (b) 貨物と共に航海を保全するために生じた費用と執られた個々の手段に関するものであった [ 注 15] [ 注 16] UNCTAD の1991 年報告書が共同安全の問題について次のとおり論じていたことが留意される 共同安全 37.YARの Rule Aの下で共同海損行為たるためには海上冒険を共にする全ての利益を危険から保全することを目的としてなされねばならない それゆえ ( 原文第 8 頁終わり ) 8

冒険を共にする財産の一部の安全のためになされた犠牲 もしくは生じた費用は共同海損分担請求権を生ぜしめないのであって そのような犠牲 または費用によって保存された特定の財産の所有者が負担すべきものとなる ( 引用省略 ) 38.Rule Aは共同海損行為の範囲を共同安全が確保された場合に制限するという英国の見解を採用し そしてアメリカ合衆国の法律と異なって その原則を共同利益主義とか 航海の安全な完遂にまで包含するところまで拡張しないが しかしなお Rule Xbとか Rule Ⅸ(b) などのYARの幾つかの数字規則はそのような性質を有する幾つかの費用を共同海損に認容している 解釈規定の効果によって 数字規則は文字規則に優先するために冒険全体の共同利益のために 及び航海の安全な継続のために生じた費用はYARの下で認容される ( 引用省略 ) かくして共同海損に認容される費用は安全確保のために支出される費用のみに限られるわけでなく 船と貨物の相互の利益のためにその当該航海が完遂することを可能ならしめるために支出される費用 例えば 避難港における仮修繕費用とか その他の費用をも含むのである CMI 作業部会は Selmer 教授の後述の leading work をも検討していた 作業部会はYAR1974に関する各国海法会のコメントの一つ一つをも検討した C MI 報告書は共同海損 absorption clauses の問題についての議論も含んでいるが それについては後に触れられるであろう 1992 年 3 月のCMI 作業部会の報告書はCMIの国際小委員会に送られ そこで共同海損とYARが更に研究されることになった 4 CMI 国際小委員会の報告書 -1994 年 5 月上述したとおり CMI 国際小委員会は共同海損とYAR1974を見直すかもしれな ( 原文第 9 頁終わり ) 9

いということの研究に着手した それは1994 年の後半に Sydney で開かれる総会において十分に討議されることを念頭においたものだった このときの小委員会のメンバーには当協会の前会長であるアメリカ人 Doug Adams と 何人ものヨーロッパ人と1 人の日本人参加者が含まれていた [ 注 17] この報告書はこの問題に関心のある全ての人によって読まれるべきだ というのは それはCMI 国際小委員会の1993 年 12 月の会議の報告書と 小委員会によって勧告された様々な提案を含み それに加えて1993 年 9 月のAIDE 報告書の中に盛り込まれた様々な提案と共同海損に関する統計資料も含んでいるからだ Mr. Taylor は彼の1994 年 5 月の報告書の中で IUMIはその年 専門家委員会を設けたと記した しかし彼らは未だその報告書を出していなかった ( 私は 1994 年 10 月の Sydney 会議の時点でもまだできていなかったと思う )CMI 報告書の一般的内容は CMIが発した一連の質問に対する回答は今日の状況を考慮に入れて規則を現状に合うように修正し 簡素化し 改善するための努力を続けることに真剣な関心があることを示していたということであった [ 注 18] その報告書の総体的方針は 共同海損の範囲を拡げるという傾向に対してこれを支持しようというものでは決してなく absorption clause と その他の items についての利害得失を業界と商業界の利害関係者と共に検討するために協働しようとするものにすぎなかった [ 注 19] a.unctad の更なる報告書 1994 年 3 月 CMI 国際小委員会会長の1994 年報告書の少し前に UNCTAD は The Place of General Average in Marine Insurance Today という表題の更なる報告書を発表した この文書は UNCTAD のそれより前 1991 年文書の修正版だった [ 注 20] この1994 年報告書は膨大な数の統計資料と円グラフを含むもので これについてはもっと完全に知りたいと思う人がご覧になればよいと思う この報告書は規則が今日の形を取るに至った歴史を叙述したものとして読まれるべきと思う というのは それは国連の ( 原文第 10 頁終わり ) 10

一つの機関としての仕事であり その機関は保険の仕組みが共同海損 system をどこまで簡素化し得るかを研究したのであった それはとどのつまり 全てのことはCMIの Sydney 会議で討議されるであろうことを示していた CMIの国際小委員会の会議では UNCTAD の事務局は observer としての代表を参加させたし そしてCMIの諸々の活動にも参加していたのであって それらのことは Mr. Taylor の報告書に反映されていた 5 Sydney におけるアメリカ合衆国代表団アメリカの共同海損代表団の団長は Nourse & Bowles 法律事務所の Larry Bowles 氏であり 副団長は Howard Myerson だった そのとき他にも随分多くの海上保険業界の人々と海損精算人が Sydney 会議に参加した YARの諸問題の全体について非常に溌剌とした議論がなされた この Sydney 会議から出てきた幾つもの修正がYAR1994として知られるものになったのだ この Sydney 会議の全体的報告書は1994 年のCMI Yearbook に記録されている [ 注 21] また IUMIを代表する様々な団体によって随分多くの論議と談話が持ち出された そしてそのIUMIは その1994 年 9 月の Toronto における会議における彼らの集会に向け広範囲に亘る報告書を提出していたようだった その報告書の主唱者は 彼らが見解を主張するに際し 非常に積極的であったが その報告書は10 月に開かれた Sydney 会議の場ではまだすぐに入手できるというものではなかった この Sydney 会議では共同海損の範囲を拡げようとする傾向に対しては広範な抵抗があるという意見の一致があった 初めてひとつの新しい規則が導入された 即ち かの Rule Paramount である それは規則の全条を通して合理性という概念をゆき亘らせるためのものであった 私はこの Sydney 会議に参加し 共同海損に関するアメリカの代表団のメンバーであったと共に その他の主題を担当するアメリカの他の代表団の一員でもあった というのは そのとき私はアメリカ海法会の副会長であったから 私はアメリカ代表団の全員の献身と激務を証言できる 殊に当協会の会員たち それらの人々 ( 原文第 11 頁終わり ) 11

は常勤の海損精算人であったから 海法会の人々にとって随分助けとなった 海法会の立場はCMIから寄せられた一連の質問に対する回答によって予め明らかにされていた 御承知のとおりCMIというのは様々な各国の海法会から成っている さて 1994 年規則が発効すると時を同じくしてIUMIはYARが本来有しているもの 即ち 共同利益のために採られる行為に近付くことを制限しようとして貨物保険者仲間のメンバーを通して意見表明を続けた IUMIの立場というのは共同海損費用を減縮し 共同海損費用を共同安全のために取られる行為に制限しようというものであって それは1800 年代の後半にUKに実在した立場に逆行する approach のように見えた 6 1994 年 Sydney 規則に対する攻撃 1994 年規則を動かし または改定しようというかなりの起動力がIUMIから発した IUMIの Matthew Marshal 報告書とIUMIの Toronto 報告書は Sydney 会議では知られていたかもしれないが そのIUMIの会議がその前の月に開かれたばかりであったことからするとまだ咀嚼されてはいなかった筈だ そのとき 即ち 1994 年 10 月におけるIUMIの立場はそれまでと変わらず YA Rに変化がもたらされるべきだというものであり 具体的には共同海損の範囲に急進的な改革をなそうというものであった IUMIの主導者の1 人は1996 年 9 月に Oslo で開かれたIUMIの会議で言った 即ち ある危険に曝されているとき そして共同安全が達成されるまでの間に生じた犠牲 または費用のみが支払われるという すぐに分かる一連の規則を作り出すということは機知と知恵を合わせればできないことではないと 換言すれば 航海の安全な遂行などという考えは捨ててしまえ そしてそれに伴う様々な余分な費用も運命と共にせよとい うことだ [ 注 22] Oslo 会議は Mr. Marshall の提出した共同海損の統計的最新情報に関する書類をも討議した それは1994 年 9 月のIUMIに彼が提出したと同じ最新情報に見えた ( 原文第 12 頁終わり ) 12

Mr. Marshall の見解の中で注目さるべきひとつの要素は 損害が大きければ大きい程 その全額に対する貨物の分担割合は重くなるということであった その理由は比較的古くて小型の船は価格の低い貨物を運送する傾向にあるのに対して コンテナ船は高価な貨物を運ぶためにより多くの費用を負担することになるであろうというものであった Mr. Marshall のもうひとつのコメントは 低価格の貨物を積載した比較的古い船は 割合的に高い共同海損費用の金額を拾ってしまうというものであった [ 注 23] Mr. Gooding は次の立場をとった 即ち 真に国際的な実力を備えた海事団体は一つしかない それはIUMIだ それゆえIUMIは変革への断固たる要求を支援しなければならないと その断固たる要求は1996 年以来 今日に至るまでの全期間を通してIUMIの意見表明に響き渡ってきた そしてそれはIUM Iが Sydney 会議でなした議論で克ち得た成功よりも大きな成功であったといえよう これゆえに我々はIUMの変革要求の問題に否応なく直面させられるのだ 私は この要求は誤った前提の上に根差していると信じており それについてはすぐ後で述べるであろう 私の個人的見解はIUMIの立場なるものはIUM Iの貨物保険者側だけの立場であって 船体保険者は必ずしも同調していないと思う そしてアメリカにおける船体保険者であれ その他の国のどの国の船体保険者であれ もしYARが現在の共同利益主義に対立する共同安全主義を反映すべく修正されたならば そのような変革によっていかに大きな影響がもたらされるであろうかということに格別の注意を払った者はないと思う 要するに そのIUMIの提案の下では Rule Ⅹと Rule ⅩⅠは もはや適用の余地はなく そして一旦本船が避難地たる安全港に到着してしまえば共同海損はそこで終了することになるであろう そしてその結果といえば 全ての費用は場合に従って所有者その他の負担に帰することとなる 但し 貨物の利害関係者の負担に帰することがないことは確かだ David Taylor は1996 年の Oslo IUMI 会議の参加者の1 人だった あの変革へ向けてのIUMIの提案がなされたのは Sydney 会議から未だ2 年も経っていなかったという事実に鑑みて 彼の書いたものはより保守的な見解を反映しようと試みていた 彼は新しい一組の規則を起草することの要求に強く反対し そして全ての参加者 即ち IUMI CMI AIDE 及びその他の者がはるかに進んだ対話を定着させることを強く勧告していた 彼は次のように ( 原文第 13 頁終わり ) 13

述べた 即ち 保険者達は各国の海法会の中で議論のテーブルの席についていなかったと ( 私はこのことはまた私の理解を反映しているかもしれないと信ずる 我々は非常に活発な海法会 海上保険委員会を持っているにしても ) Mr. Taylor はとても先見の明ある陳述をなした それはYARを攻撃するための主要な理論的根拠を反映していると私は信ずる Mr. Taylor は整備をろくにせず 能力の低い船員を乗組ませている船を運航する船主は共同海損とYARの下で利益を得ているという苦情について彼の見解によれば 批判が向けられるべき対象は共同海損の system ではなくて そのような船主が大目に見られ そのような船主ですら保険を引き受けて貰っているという事実であると表明した [ 注 24] 共同海損を変革すべきだというIUMIの提案は 共同海損の問題とはたとえ遠くでさえ関わっていないところの商業上の問題を解決しようという試みだというのが私の見解だ 1996 年 10 月のIUMI 会議は共同海損という概念に対する強襲の始まりであったし それは今も続いている 1996 年のIUMI Oslo 会議以来なされてきた様々な活動について このずーっと続いている論争において聴かれてきた もっと耳障りなトーンに特に言及しながら私は論じてみたい 7 1996 年 Oslo 会議以来のIUMIの更なる活動 1996 年のIUMI Oslo 会議とそこでの活動以来 IUMIの主張を述べた一連の文書があった その主張というのは IUMIが1994 年規則と見解を異にする主要な点を強調し続けるものであった というのはつまり 本船が安全な地点に到達した後も共同海損は共同の利益のために存続するという主義に対立するものとして 本船が安全な地点に到達したら共同海損はそこで終了する旨を規定するように規則を修正べきだというのである そのIUMIの主義の最終結果は 全ての共同海損上の費用と犠牲は本船がひとたび避難港に到達したらそこで終了するのであり それより後に生ずることあるべき 貨物その他の船卸し / 再積み込みのための費用を含むいかなる費用も それらが共同安全のために必要でない限りは共同海損費用とは認められ ( 原文第 14 頁終わり ) 14

ないというものである それ以外にも幾つかの修正の問題があり また個々の規則の改定の問題もある しかし上記のそれが最も中心の問題であった IUMIは共同海損起草作業部会を発足させた それは Nick Gooding Lloyd s Underwriter の1 人 Eamonn Magee アイルランドのある保険引受業者 ILU の Matthew Marshall それと当時は Clyde & Co. 法律事務所の そして現在は Shaw & Groft 法律事務所の弁護士である Ben Browne からなっていた 彼らは一つの文書を作成した そしてそれがCMI 作業部会が現在も検討している基本的な文書である この文書は1999 年のIUMI Berlin 会議で発表されるために作成された もっともその内容は1998 年 4 月には確定していたようだが その文書は少なくとも過去 100 年に亘って共同海損の範囲が次第に拡大されてきたことを差し戻すことによって 共同海損が世界中の物保険者に課してきた重荷を軽くすることを目指すことがこの文書の目的だと明確に述べていた [ 注 25] 彼等の目的は 現状におけるよりも損害を受けた者自身にもっとその損害を負担させるというものだ なぜなら 彼らは現在の共同海損の概念は時代遅れと考えているからだ 彼等の第一の目的は1994 年規則の Rule Aに似た共同海損を支配する原理を述べた一文を提案することにあった もしそうしようとすれば それは英国の1906 年海上保険法第 66 条から導いて再検討することになったであろう IUMIの考えと言うのはこうだ つまり 危険時において財貨を危険から保全することを目的として 共同の安全のために故意に 且つ合理的に異常の犠牲が払われたり または異常な費用が支出されたときにのみ共同海損行為があったと認められるというのであろう [ 注 26] 彼等の勧告というのは危険が続いている間の船員の通常の賃金は含まれるべきでない 仕向地までの積替え費用も含まれるべきでない 避難港における本船の費用も含まれるべきでない 仮修繕費も 船と貨物が救助を要するが如き危険に曝されているときに施される場合を除いて含められるべきでない 本船が避難港で修理される間の船卸し費用 倉入れ費用 再積込費用も含められるべきでないというものである 彼等の理由は これ ( 原文第 15 頁終わり ) 15

らの費用は運送人によりその運送契約に従って当然に負担さるべきものである 従って緊急の危険がなくなれば余分の燃料 貯蔵品の消費も含められるべきでないことになる 潜在的には 彼等の考えによれば 代換費用というものは放擲されることになろう 提案されている改革によれば 船と貨物が避難港の如き安全な場所に到達した後は種々の費用が共同海損に認められることを止めるというものである それゆえ 危険の定義が必要とされた [ 注 27] この提案の全般的論旨は 現行の1994 年規則の基礎を形成しているところの 共同の海上冒険という概念に代わって共同安全主義が新しい共同海損を下支えしなければならないというものである I UMIの主張というのは 一旦危険が去ってしまえば避難港で生ずる諸々の費用とか 仮修繕費用は本来維持費とか整備費として賄われるべきものとの考えだ 換言すれば 共同安全という考えからアプローチすると 船体と貨物の保険者が共同海損分担請求に曝される危険は減ずるというものだ [ 注 28] これがIUMIの求めている第一の変革だ そのほかにも過失が及ぼす影響という問題もあった というのは 彼らは Rule Dを拡張して もし損害がISM code や STCW convention や 船級協会の規則に違反したことから直接引き起こされたか もしくは結果として生じたことが証明されたならば その程度に応じて冒険の当事者は共同海損損失や犠牲を回収できないようにすることを欲しているからだ 原初の共同安全主義に立ち戻るという考えは IUMIをして Rule Fの下における代換費用も廃止さるべきだと提案させるに至った 彼等の議論というのは 船と貨物がもはや危険から脱したときには支出された費用や 払われた犠牲を共同海損から除くところまでY ARを大幅に修正することを意図しているからには この通常の scenario は生じないということになろう なぜなら 船卸しや倉入れ 再積込のための費用はいずれにせよ共同海損として回収されないのであるから [ 注 29] ( 原文第 16 頁終わり ) 16

その文書の中で特に強調された問題は救助費の reapportionment に関する Rule Ⅵである これがIUMIの中の貨物保険者をとても苛立たせていることは確かだ IUMIの見解というのはこうだ 即ち Rule Ⅵ(a) は救助費の支払いは弁護士費用も含めてその損害が生じたところの者が負担すればよいのであって 共同海損に持ち込まれるべきではない もっとも次の場合だけは別だ つまり 他の当事者に割り当てられるべき部分 ( それは被救助価額に従って計算されるべきで 共同海損の負担価額によって計算されるべきものではない ) に関して共同海損のある当事者が支払った金額がもしあればこれらの規則に従って共同海損の当事者の間で分担されるべきだということである 彼等の考えはまた幾つかの費用に関する Rule ⅩとⅩⅠ(a b c) は共同海損として認容されないことを要求する Rule ⅩⅡは船と貨物が危険に曝されている間に貨物その他に損傷と滅失が生じた場合にのみカバーすることになり その他の場合にはカバーしないことになろう [ 注 30] 彼等は仮修繕に関する Rule ⅩⅣと BIJELA 1994 AC の貴族院判決を議論した この判決は海損精算人によって受け入れられてきた実務 即ち 事故による損傷を避難港において修繕した場合の仮修繕費は共同海損に認容された筈の金額を節約した金額までは共同海損として認容されるという実務 これを支持したのだった IUMIの主張というのは もし避難港における仮修繕費がもはや共同海損に含まれないのであれば ( 彼等はそう主張する ) 仮修繕費は回収されないのであるからこの問題を新しい規則の中で扱う必要はないということになろう 仮修繕費に関する Rule ⅩⅣの範囲は甚だしく狭められるであろう しかしIUMIが主張するようにその全てが消えてなくなるというわけではなかろう [ 注 31] 私は信ずる これは実現しそうにない期待を述べたものである そして仮修繕の問題は 彼等が取り除きたいと求める規則の他の全ての部分と同じ道を辿ることになるであろう 海損精算業務に携わる人々が目を向けなければならない問題は 立替手数料とか 利息とか 出訴制限の問題とかまだ他にも幾つかあると私は信ずる これらの点は Sydney で随分と議論されたのであったが しかし出訴期限の問題は統一が達成されなければならないけれども とても捕らえどころのない問題として未だに残っている ( 原文第 17 頁終わり ) 17

IUMIはまた次の内容の新しい規則を求めている その内容というのは ある当事者が共同海損の分担義務を負うか否かを判断するための合理的必要があって 本船にサーベヤーを派遣して乗船検査させることや 書類の閲覧を書面で要請したとき それが拒否されたり 或いは本船の整備に関する書類が本船上になかったりした場合には 分担義務を免れるというものだ [ 注 32] このような変更が提案されているということは 規則の変更問題という攻撃は実際には貨物保険者によってなされているのに海運業界によってなされていると偽られていることを明らかに示している 彼等が自認する前提というのは 彼等が substandardvessels と呼ぶところのもののために共同海損を支払うことにはもううんざりしているということだ substandard-vessels は共同海損分担金を通常の整備費を支払うために使っていると彼等は信じている このような議論は完全に無関係であると我々は言いたい というのは たとえ貨物が substandard-vessels に積載されてきたとしても 貨物の利害関係者には様々な対処方法が残されている そして彼等は多くの場合 それらの方法に拠り得るのだ また我々は貨物保険者の義務と彼等の被保険者の義務についても尋ねたくなる つまり被保険者が彼等の高価な貨物を積み込み そしてそれらの貨物についてA/R 条件の保険を求めるその船のタイプについて相当な注意を各々が尽くさなければならないという義務についてだ 我々は次の可能性を提案したい 即ち 貨物保険者はこの自覚されている問題をもっと厳格な要件と 船令割増を課すことにより解決できると思う 例えば 保険の引き受けを一定の船籍の船に限るとか 一定の船籍に対しては保険料の割増を課すとか ある種の船級協会の船には保険担保の範囲を狭くするとか また予め合意された船級協会以外の船に対しては割増課徴金を課すとかの方法によって 要するに貨物保険者が彼等の求めている結果を実現するための方法は YA Rに多くの変更をもたらす方法以外に数多くの方法があるということだ そして私の考えではYARに変更をもたらすという方法は不必要な方策だ 共同海損に関するIUMIの Berlin 草稿は今もIUMIの考えの基礎となっている そしてそのIUMIの考えを彼等の代表達はCMI 作業部会でも その他の場所でも彼等が彼等の立場を主張できる場所ではその後も強く主張している ( 原文第 18 頁終わり ) 18

8 CMI Toledo Colloquium-2000 CMIは総会の合間に colloquium というものを開催している これはCMIにとって興味のある様々な時事問題に関するセミナーだ 2000 年の9 月にCMIの主催による colloquium が Toledo で開かれた その基本的問題の一つは IUMI が共同海損を改革したいと望んでいることをIUMIが継続的に働きかけていることであった これらについての意見とIUMIの立場はCMI Yearbook 2000 ( Singapore Ⅰ ) に記録されている というのは Singapore 総会がその翌年の2 月に開かれる予定になっていたからだ IUMIの提案は Toledo で Eamonn Magee の詳細な文書によって十分に述べられている その Eamonn Magee はIUMI 1999 Berlin 文書の作成者の1 人であった 1999 年の初めに IUMIの事務局長はCMIの会長にYAR 見直しの議論を CMIの作業議事日程に戻してやってくれるよう要請した 殆ど全てがヨーロッパ人からなるCMI 作業部会が新たに設けられ そして一連の質問表が作成され 全ての国の海法会に送られた この作業部会の座長は Thomas Reme で 彼はかつてドイツにおける保険引受業者であり 海事弁護士でもあって そしてCMIの執行評議会のメンバーでもあった Toledo 会議の報告書に先立つ彼の2000 年 2 月の報告書の中で 彼は次のように述べていた 即ち 彼は共同利益主義は比較的最近に取り入れられたという印象を意図しないで作り出したかもしれないと ところが 実は共同利益主義の起源は1890 年に そしてもしかすると1864 年に遡ることができるかもしれないと [ 注 33] 我がアメリカと英国の海法会はこの見落としを指摘することにおける彼等の見解においてとても強固であった Reme 座長は次のように述べた 一連の質問に対する回答は共同利益主義が維持されるべきか否かについて あれとこれとか明確に強い程のものではなかったと それゆえこの問題は2001 年 2 月に Singapore で広く議論の対象となった Singapore 会議に派遣される代表団がその議論に準備できるように2000 Yearbook ( 原文第 19 頁終わり ) 19

は Toledo colloquium からの文書を包含していた [ 注 34] Magee 氏は Toledo 会議で彼の見解を述べたが その内容はそれより前に Berlin でIUMIが取った立場の繰り返しであった 共同海損改革に関する Magee 氏の文書の末尾にはIUMI 草稿作業部会の Berlin report が添付されていた この Berlin report こそ IUMIがなしている全ての働きかけの基礎をなす文書である 何が貨物保険者を苛立たせているかは Magee 氏の次の主張から明らかだ つまり 彼によると共同海損費用の約 67%( 彼等の統計による ) は貨物の利害関係者 というより多分は貨物保険者によって支払われているということだ これらの費用の大半は共同海損の殆ど全てが機関の故障とか機械的 または構造材の破損とかの船舶管理の問題のみに関連して もしくは過失ある航海に起因する座礁などに関連して発生しているという傾向を示していると ( そしてそれを Magee 氏は不衡平だと言う )IUMIの勧告はこれらの不衡平を調整することを目的としているのだと Magee 氏は主張する Hague Rules や COGSA に関連するIUMIの立場についての Magee 氏文書には航海上の過失及びそれに関して船主が持ち出し得る様々な抗弁については全く何の議論もない 彼の Toledo 文書は1991 年のIUMIの見解に関する文書を要約した ものだ [ 注 35] その Colloquium が Geoffrey Hudson の応答という助けを得たことは幸運であった 彼は英国海損精算人協会の元会長であり YARに関する立派な本の著者であった 彼はIUMIの提案がもし機能するようになるとどのような結果がマーケットと海運界にもたらされるかについて非常に強い見解を述べた 彼は避難港における船主の費用を船卸しの費用 貨物の倉入費用 再積込費用 それに出港に伴う港費に分けて検討した 共同海損認容の範囲を減縮するという提案は 船主が運送契約の下における運送人の義務を履行するために適切な手段を執ることを奨励するためにYARが与えている ( 原文第 20 頁終わり ) 20

積極的な動機づけを取り除いてしまうだろうというのが彼の見解である [ 注 36] 次もまた彼の見解である 即ち 避難港における共同海損認容の範囲を減縮しようというIUMIによって主張されている提案は正当な航海放棄の件数を直接増加させることになるであろうということ 彼はそれからそれがいかにして達成されるであろうかを示しながら様々な例について議論した [ 注 37] IUMIの提案は Hudson 氏によれば船貨不分離協定を結んだうえで貨物を継送することにより航海を保全するための全ての問題を不要にしてしまうとのことだ というのは避難港における諸々の費用を共同海損に認容しないというIUMIの提案は 代換費用の原則すら根底から廃止してしまうのであるか ら [ 注 38] 9 2001 CMI 会議 Singapore CMI Singapore 総会において議論された実質的な主題の一つがIUMIの提案であった Magee 氏は出席できなかったが しかしIUMI Berlin 草稿提案の共同作成者の1 人である Ben Browne は Singapore に参加していて そしてIUMI の立場のために非常な雄弁を奮った Hudson 氏も居た 彼はIUMI 提案の誤謬と IUMIがYARに加えたいと考えている変更をなすことの困難さに関して Toledo 会議で彼が示した見解を繰り返した [ 注 39] 私はアメリカ合衆国の共同海損代表団の副団長で そして Howard Myerson が団長だった アメリカ合衆国とあと2つの団体 即ち International Chamber of Shipping と International P&I Group だけが Singapore において YAR1994にもし何らかの変更がなされなければならないとすれば いかなる変更がなされるべきかという提案に反対票を投じたのであった 要するにIUMIの見解というのは 彼等はそれを1994CMI Sydney 会議では達成できなかったが このときそれが達成されようとしていたのである というのは 彼等はIU ( 原文第 21 頁終わり ) 21

MIが Sydney 以来なしてきた提案 殊に Berlin と Toledo における提案を受け入れてくれそうな聴衆を獲得しつつあったからである Singapore 会議の結果 そして共同海損部会の決議の結果 CMIによって一つの作業部会が指名され YAR1994にもし何らかの変更がなされなければならないとすれば いかなる変更がなされるべきかという問題全体について研究することとされた 但し アメリカ合衆国はこの時点でその問題を取り上げる必要はない なぜなら1994 年規則はそれが意図された効果を発揮するだけの時間を未だ与えられていないからとの立場を執った 10 CMI 作業部会 CMIは最初 Bent Nielsen を座長として作業部会を設けた 彼はデンマークの弁護士であり 1994 Sydney 会議より前にCMIの共同海損作業部会の座長を勤めたことがあった CMIの副会長であってアメリカ海法会のメンバーでもあり C MIの執行評議員会のメンバーでもある Frank Wiswall は この作業部会の活動を全般的に監督する責任者であった 当時 (2001 年の中頃 ) におけるその作業部会の全てのメンバーがヨーロッパ人であった その中には英国の海損精算人 1 人 デンマークの海損精算人 1 人 英国 デンマーク フランスの保険業界人とそれに英国の弁護士である Ben Browne と Richard Shaw が含まれていた その最初の会合は2001 年 5 月にCMI 会長である Patrick Griggs の事務所である Ince & Co. 法律事務所で開かれた 幸いにして我がアメリカ海損精算人協会の前会長 Jean Knudsen は出席することができ Howard Myerson も同様だった これらアメリカ人の観点は作業部会にかなり明瞭に伝えられた そしてそれはCMIの一連の質問に対してアメリカ海法会が以前になした回答に基づいていた その会合におけるIUMIの立場は Mr. Browne と Mr. Marshall によって更に再び繰り返された そして Mr. Wiswall はその会合の報告書を作成し それは今議論の対象となっている領域を示していた Mr. Wiswall は 彼は評議員会がIUMI 提案の研究に着手すべきことをCMI 執行評議員会に勧告するつもりだということを表明したことがある このことはそれより数ヶ月前に Singapore でなされた共同海損問題に関する決議を増幅するという意味合いにおいてであったろう 上記 2001 年 5 月の London における会合には船舶保 ( 原文第 22 頁終わり ) 22

険者の利益を代表する者は誰も参加していなかった その会合の報告書は船体と貨物の保険者のために何人かの人が出席していたと記しているが 実際にはこれらの人々というのははIUMIの貨物代表者と Berlin で発表されたIUMI 草案の作成者達だけであった London の P&I 利害関係者を除いてはその他の保険者を代表する誰も参加していなかった この会合は結局 2001 年 12 月に開かれるべき同部会の2 回目の会合で審議を続行することで合意した それらの会合の合間に Genoa でもう一つのCMI 会議が開かれた 不幸にしてアメリカからの参加予定者の大部分は9 月 11 日の悲劇のために出席することができなかった Ben Browne はこの会議でもこれらの問題点について再び述べた [ 注 40] Mr. Browne はIUMI 提案の最新のものについて述べ そして提案されているところの改革の幾つかの特定の点について論じた Mr. Browne はこれらの変革により達成されることあるべき利益のある程度は費用の増加 殊に船舶保険者の負担に帰すべき避難港における費用の増加によって相殺されるであろうことを認めた しかし彼は船体保険者にとってすら全体としての純利益は相当なものになるであろうとの見解を述べた 残念ながら Mr. Browne はそれが何を達成することになるかについての詳細については論じなかった 私は皆さんがこの文書を読んでご覧になることを強くお勧めする というのは それはIUMIの論理的根拠の詳細について述べているからだ そのとき つまり 2001 年 9 月の時点においてCMI 作業部会は依然として Bent Nielsen 座長のもとにあった その作業部会にはデンマークの弁護士であり かつて Skuld に居て そして今は独立して海事弁護士としての実務に携わっている Hans Levy と Richards Hogg Lindley Liverpool 事務所の Richard Cornah そして Sydney 会議の前に 以前のCMI 作業部会のメンバーであった Pierre Latron 更に弁護士でありかつて Shaw & Croft 法律事務所のパートナーであり CMI 作業部会の報告者であり 且つ Singapore 会議における共同海損についての報告者でもあった Richard Shaw それにデンマークの海損精算人 Jens Middelboe それに Mr. Browne が居た その後 私は Mr. Nielsen とCMIの会長から作業部会に1 人のアメリカ人が入ることの同意を取り付けることができた その後 アメリカ海法会の会長は私をその作業部会のアメリカ合衆国 ( 原文第 23 頁終わり ) 23

代表に任命したのだった 11 2001 年 12 月 London におけるCMI 作業部会第 2 回会合幸いなことに 私は私の良き友人であり 仲間である Howard Myerson と共に London における会合に参加することができ Myerson 氏はこれらの活動をするうえで大変助けてくれたのだった この12 月の会合にはIUMIの代表者達 即ち Ben Browne と Matthew Marshall も参加していた そこにはまた英国海損精算人協会の代表者達 アメリカの海損精算人協会の代表者達 それに作業部会の他のメンバー達も参加していた American Hull Syndicate の Fred Robertie はその会合の多くの部分に出席してくれた 我々はそれより前の5 月の会合の場で議論されたことのある問題点の幾つかを解決することができた そのときも Frank Wiswall が座長を務めたその会合は次第に IUMIの議事日程の幾つかの項目 殊に規則を改正することによって共同利益に対するところの共同危険という問題と 救助にまつわる問題を反映させようという提案の詳細な議論の本質に入っていった Mr. Wiswall はこの会議の座長をこのうえなく素晴らしく勤めた そして問題の幾つかを 例えば 過失が及ぼす効果の問題などは多分 CMIによって取り上げられるべきでないと示すことにより逸らせることができた 執行評議会に対する数日後の彼の報告書の中で彼は Mr. Marshall によって示された統計資料から貨物利害関係者によって引き出された結論は共同海損費用の貨物の分担割合は60~65% という大きさで この負担について貨物利害関係者は不公正と考えているというものであった このことの一因は substandard vessel が運航されていることにあると主張された 避難港における費用について議論がなされた というのは IUMIの提案は 要するに 共同海損から一連の単独海損へと変えようというものであり そしてたとえそれらの費用が精算に付されないとしても 現実の費用はこれからも生じるであろうし 争われ続けるであろうというものであった Mr. Wiswall は次のことを勧告した 即ち IUMIの提示した諸点のうち 避難港における費用 absorption ( 原文第 24 頁終わり ) 24

clauses 救助費 利息費用 仮修繕 出訴期限 代換費用を含む幾つかの点は作業部会によって取り上げられるべきであると 彼はIUMI 提案の他の点は同作業部会で取り上げられるべきでないと勧告し その結果 そして作業部会の議論の対象から取り下げられた 12 作業部会の会合 2002 年にはこれまでに同作業部会の2つの会合が開かれた 米国海損精算人協会とアメリカ海法会の立場は 英国海損精算人協会の現会長 Tim Madge の力添えを得て2002 年の3 月 London で開かれた作業部会の出席者達に提出された 3 月の会合の結果は 共同海損についての同作業部会座長 Bent Nielsen による6 月 24 日報告書案に反映されている この報告書案は2 回目の会合が Copenhagen で開かれる約 1 週間前に作業部会のメンバー達に提出された この6 月 24 日報告書案は優れたものだった というのは それはこの文書の中で議論された共同海損の諸問題の経緯 IUMIの見解 そして規則を変えるべきだというIUMIの勧告を反映していたからだ この報告書案は次のことを示唆していた 即ち IUMIの目標のうち幾つかを達成するために規則を修正する可能性を念頭において様々な筋書きを考慮することができるということを この報告書はまた次の Copenhagen における会合での議題となることが予定されていた 共同利益 のための費用を受け入れることへの賛成論と反対論のリストを含んでいた 私の現状認識は次のとおりだ つまり 作業部会はYARに何らかの変革がもたらされるべきだという勧告をなす方向へ向かって進んでいるように見えるということ そしてその勧告というのはIUMIの見解の一部を採用することを求めるであろうということ 私は7 月に Copenhagen で開かれた第 2 回会合には出席できなかったが その作業部会の座長にIUMI 提案に対する米国海損精算人協会とアメリカ海法会の見解を伝えることはできた このとき Mr. Nielsen に対しアメリカの見解を述べた報告書を作成するにあたって Jonathan Spencer と Howard Myerson ( 原文第 25 頁終わり ) 25

の意見に大いに助けられた この Copenhagen 会合の議事録を私は未だ受け取っていない 私は Mr. Nielsen からそれは10 月末までには出来てくるだろうと聞いている 私は次のことを予想している 即ち 同作業部会の報告書案はCMIはYAR 1994を修正することによってIUMIによって提示されている見解の幾つかを取り込むことの可能性を考慮すべきだという同作業部会の多数派 ( 私は少数派に入っているようだ ) の見解を反映するであろうことを このことは同作業部会の中に もし多数派の意見と少数派の意見があればそれらを伝えるより詳細な書面に記されることが期待される そして次のことが予想される つまり CMIはその上で 彼等が Sydney 会議でなしたように 国際小委員会を創設し そのうえで国際作業部会の報告書案に基づいて もし何らかの変革がなされなければならないのならばどのような変革がなされるべきかを検討するであろうと 国際小委員会の構成はCMIの会長によって決められる それが正式に作られるとき その小委員会に我が国からのメンバーが含まれていることが望まれるし そうなるものと予想される 13 IUMI 提案の現状先に述べたように 私の現状認識というのはCMI 作業部会は共同利益主義に対する共同安全主義に基礎をおいてYARを修正するという変革を提案する最終報告案を発表するであろうということだ これは現行の法律と現在行なわれている実務に大幅な変更をもたらすことを意味する そのことはまた船主にも大きな影響を与えることになるであろう というのは もしそのような変更がなされると そのときから彼等はその変更のゆえに避難港において彼等に生ずる費用を保険で支払って貰うことができなくなるからだ 船体保険者は正当な共同海損費用を支払うものである もし避難港において共同海損が終了するのならば これまで過去において共同海損費用損害と認められ そして船舶保険者の割合分担分として船舶保険者によって支払われてきた他の全ての費用損害は もはや支払って貰えなくなるであろう P&I クラブもこれらの費用をカバーしないであろう なぜなら クラブは何らかの法律違反があった結果 もしくは本船に不堪航の事実があって それが直接に当該事故の原因となり しかもその事故に対して船主が通常の Jason 条項の利益を享受できないために回収不能に終わった共同海損の貨物分担額に ( 原文第 26 頁終わり ) 26

ついてのみ船主に支払うものであるからだ IUMI 提案はまた このことの全ては共同海損 absorption clause がもたらす効果によって解消され得ることを示唆しているように見える 私見では それは全くの事実誤認だ というのは それは保険引き受け上の問題 ( この問題は貨物保険者がまず初めに substandard vessels 上に積み込まれる貨物の保険を引き受けることに起因している ) を absorption clause によって解決しようという試みであるからだ 次のことが理解されなければならない 即ち absorption clause というのは 船主とその船舶保険者との間における営業上の取引に過ぎないということだ このことは激しい競争のゆえに最初にコンテナ輸送でなされたのだ もっとも同じことは撒積み貨物の輸送でも行なわれるようになるかもしれないが コンテナの定期便運送においては もし共同海損が生ずるとコンテナの数と関係する荷主当事者の数が随分と多いという所与の条件のゆえに 船主が分担保証状を集めようとすると 貨物の関係者との営業上の関係をひどく傷つけることになるだろうという問題に直面することとなった それゆえに この種の運送においては貨物が本来負担すべきG 共同海損担額を一定金額まで船体の利害関係者が引き受けるという協定が生まれるに至った そしてそのことが船舶保険の証券面に反映されるに至っている 船舶保険者がこのことに対して割増保険料を課しているか否かは推測の域を出ない しかし私は次のことを強く勧告する 即ち 船舶保険者がこのことで幾らかの考慮をなすことを なぜなら 貨物が共同海損として負担することあるべき費用の額は潜在的に極めて高額になる可能性があるからだ BIMCO は最近 標準 Absorption Clause を発表した それは海上運送業界全体にとって助けになるであろう American Hull Syndicate も一つの absorption clause を有している 問題は だから YARがそれらを認容しなくなるのであれば 近い将来正当な共同海損費用損害として認められなくなる損害に対して支払って貰うために 船主はどこへ赴けばよいのかということである 保険の塡補範囲には明確な間隙があるように見える 次のようなことではないだろうか 即ち 船舶保険者は従前の通常の避難港費用と仮修繕費その他の追加的危険を もしこれらの費用が共同安全理論に向けて規則が修正される前の共同海損費用損害と認められる性質のものである場合には喜んで引き受けるであろうということ このことは船舶保険者によって明らかに示されなければならない新規開発の保険であることは間違いなかろう しかしながら次のことは明らかであると私には思える 即ち ( 原文第 27 頁終わり ) 27

海上保険の船舶のマーケットは もしこのような変化が生じたとき 将来直面することになる可能性のあるこれらの問題について殆ど全く気付いていないということ 彼等の被保険者達 即ち 船主がこれらの費用損害について保険塡補を求めてくることは明らかだ つまり とても大きな変革が提案されているように見える そしてその提案の中で 貨物保険者は商取引上の問題を間違った方法で解決しようとしているのだ 彼等の大多数の被保険者の貨物共同海損分担額は substandard 船の主機の故障 もしくは性能不良によって引き起こされていると彼等は論じている 彼等はそれゆえにYARはそのことに対処するために変えられなければならないと提案しているのだ 私は既に示したように 貨物保険者達が意識しているところの かかる問題に対処するには海上保険のマーケットの中により良い他の方法があるのだということを示唆したい この私の示唆というのは次のとおりだ : 1 老齢船割増の適用船齢を20 年から15 年に引き下げること 2 貨物保険者は運送船が一定の旗国と一定の船級協会に登録されている場合に限り危険を引き受けること もし運送船がこれらの基準を満たさない場合には 貨物保険者は相当大幅な割増保険料を船主に課すこと 3 もし貨物保険者が substandard 船から逃れたいならば それをなす途はマーケットの場にある 彼等は一定の旗国の船しか保険を引き受けないことができる もし運送に供される船舶がかかる基準を満たさないならば 貨物保険者は彼等の被保険者がそのような船舶を用いることに対して被保険者に相当高額の割増保険料を課す用意がなければならない 全ての関係者についての考えられる潜在的な副次的危険として何があるであろうか? 私は次のように信ずる 即ち あなた方は船主による航海放棄がより増えることになる可能性を予測しているものと それも通常であれば貨物を船卸しし 本船を修繕し そしてその後に貨物を再積み込みする もしくは船貨不分離協定を結んだうえで貨物を仕向地へ運送することを試みる そういうことができる場合にだ 次のような事態が予測される 即ち もし航海放棄が起きると 貨物保険者はその貨物が損傷を受けるより大きな危険に曝される 殊にもしその避難港が良好な修理施設から随分遠いとか 似たような性質の問題のある地域にある場合には 貨物保険者達は彼等の被保険者達の実務というものをもっとよく知るべきだ 貨物保険者は彼等の被保険者達がどのようにして貨物の船積みを手配するか また NVOCC を使うことの決定を含めて誰がその決定をなすかについて調査すべきだ ( 原文第 28 頁終わり ) 28

要するに 私が提案したいのはこうだ つまり 船舶が一定の旗国と一定の船級協会に登録されていないこと または船齢 20 年以下の一定の船舶でなければならないことに対して 貨物保険者が課すことのできる制裁金は従来からあるものに加えてまだ幾らもあるということだ 貨物保険者はまた 被保険者が高価な貨物を託そうとする様々な船舶の滞船記録をチェックすることができる筈だ そしてもし必要ならば そのような船に積載して運送しようとする貨物利害関係者に制裁金を提示すべきだ 14 結論 CMI 作業部会によって現在検討されているIUMIの提案は 私見によれば 共同海損の根本原理に大きな変化をもたらすであろう それはYARに組み込まれてきたヨーロッパとアメリカの主義 即ち 共同利益主義に対するものとしての英国の原初共同安全主義に立ち戻ることを求めている 1994 年規則の効果 及びこれらの規則がその提案にかかる変更にどのように影響を与えるかということについての実体的な分析というものは殆ど全くなされていないと私は思う また私はこうも思う つまり IUMIが提案している変更というのは Sydney 会議でその本質が検討され そしてそのうえで各国の代表団によって拒否されたものだ だから Sydney で結果を達成することができなかったにも拘わらず貨物保険者達はもう一度 CMIをして新たに研究させようと試みているものだ ( そして Singapore ではそれが成功した ) 私は次のように信ずる 即ち その作業部会の最終報告は1994 年規則は依然として有効であり 大幅な変更なしに用いられ続けられるべきものとの結論に達すべきであると 問題は規則の中にあるのではなく 貨物利害関係者と貨物保険者の商業上の活動の中にある というのは 被保険者達が彼等の貨物を善良で 有能なオペレーターによって運航され よく知られ十分に尊敬されている旗国に登録され よく知られ尊敬されている船級協会に入級していて 一定の船齢 つまり15 年以下の船に積載するための合理的な手段の全てを取っているか否かを貨物保険者が確かめるための適切な手立てを講ずべきであるのに そうすることを怠っているということの中にこそ問題があるということだ 私は次のことを提案したい つまり この商業上の目的実現はYARを弄ぶことによっては達成されないということだ 良き商人としての保険者は 彼等が規則の ( 原文第 29 頁終わり ) 29

変更の必要があると理由づけて表現している問題を マーケットの中において解決できる筈だ 次に述べることは私の希望であり 且つ予測でもある 即ち アメリカ合衆国の海上保険業界 就中船舶保険と船主の業界はこのことをもっと自分達に関係があることだという呼び声と受け止めて欲しい さもなければ 見て見ぬ振りをしていることの結果を悔やむことになるであろう 私はこれまで述べてきた活動の経緯についてのこの冗長な議論を申し訳なく思う しかしIUMIの議論がどのように作り出され IUMIの議論がいかなる基礎の上に主張されてきたかを 船舶保険者と海上保険のマーケットは理解しなければならないと考えたからだ 私見によれば IUMIの議論は不正確な議論であって どうしたら貨物利害関係者の問題と substandard 船の問題を解決できるかに関する理由づけの論理的延長線上にはない 世界の船主利害関係者の船舶の90から95% が適格であり 彼等が有能な船員を良好に管理され整備された船に乗り組ませていることを見届けるために十分な注意を払っていることは明らかだ 現在存在するような substandard 船 substandard 船の船主 substandard 船のオペレーターはいつの世でも相当数あったし これからもあるであろう それらは運賃が安くさえあれば良いと考える輩がそのような船を利用するから初めて存在することを得ているのだ 殊に貨物利害関係者が彼等の貨物保険者がいかなる場合でも払うであろうと感じるなら というのは 貨物利害関係者達はそれこそが保険というものの究極の目的だと考えているからだ このような考え方は受け入れられるべきでない 船舶保険者だけでなく 貨物保険者も全ての評判の高い保険者は解決することができるという考え方であるべきだ 変化を求める提案をなしているのは要するに貨物保険者だ その貨物保険者達は彼等の被保険者達が少しでも安い運賃を求めるために 非常に高価な貨物を危険に曝すという御粗末な経営上の決定から生じている損害から免れたいと切望しているのだ そのようなことが引き続きなされている限りは 我々はこの問題から離れられないであろう この問題を解決するためにYARを弄ぶことは何の益にもならないと申し述べておきたい <おわり> ( 原文第 30 頁終わり ) 30

[ 注 1] Buglass Marine Insurance and General Average in the United States, 3 rd Edition, Cornell Maritime Press, 1991, page 194-195 [ 注 2] Buglass supra at 194-195 [ 注 3] Buglass supra at 197 [ 注 4] York Antwerp Rules The Principles and Practice of General Average Adjustment, 2 nd Edition, N. Geoffrey Hudson, LLP 1996, page7 [ 注 5] The Survival of General Average (Oslo Universal Press 1958) page 58 [ 注 6] Hudson supra at page 7 [ 注 7] Hudson supra, page 5 [ 注 8] Hudson supra, page 10 [ 注 9] UNCTAD document TD/BC.4/ISL/58 August 19, 1991 [ 注 10] See footnote 5 [ 注 11] UNCTAD Document infra paragraph 175 [ 注 12] UNCTAD Document infra paragraph 177 [ 注 13] 1992 CMI Yearbook, pages 97-113 [ 注 14] 1992 CMI Yearbook, page 98 [ 注 15] 1992 CMI Yearbook, page 100 [ 注 16] UNCTAD Report infra paragraphs 37-38 [ 注 17] 1993 CMI Yearbook (Sydney 1), pages 140-193 [ 注 18] 1993 CMI Yearbook (Sydney 1), page 141 [ 注 19] UNCTAD/SDD/LEG 18 March 1994 [ 注 20] See 1991 UNCTAD Report infra [ 注 21] 1994 CMI Yearbook (Sydney II), pages 134-165 [ 注 22] General Average Time for A Change, Nicholas Gooding, Lloyds and Lloyds Underwriters Association Paper at IUMI meeting at Oslo, September 1996. [ 注 23] General Average A Statistical Update, General Average presentation, IUMI Oslo conference 1996, Matthew Marshall [ 注 24] Remarks of David W. Taylor on General Average Session at IUMI Conference, Oslo, 1996, page6 [ 注 25] Report of IUMI GA Drafting Working Group, IUMI conference Berlin, 1999 page 1 [ 注 26] Report of IUMI GA Drafting Working Group, IUMI conference Berlin, 1999 Section 1 [ 注 27] Report of IUMI GA Drafting Working Group, IUMI conference Berlin, 1999 Section 1 [ 注 28] Report of IUMI GA Drafting Working Group, IUMI conference Berlin, 1999 Section 3 31

[ 注 29] Report of IUMI GA Drafting Working Group, IUMI conference Berlin, 1999 Section 9 [ 注 30] Report of IUMI GA Drafting Working Group, IUMI conference Berlin, 1999 Section 20 [ 注 31] Infra Section 22 [ 注 32] Infra Section 31 [ 注 33] 2000 CMI Yearbook (Singapore 1), pages 290-291 [ 注 34] 2000 CMI Yearbook (Singapore 1), pages 294-324 [ 注 35] Cf General Average Reform The IUMI position, Eamonn Magee, 2000 CMI Yearbook 294-313 [ 注 36] 2000 CMI Yearbook, 314 at 321, Lets Be Realistic, N. Geoffrey Hudson [ 注 37] Hudson supra at 322 [ 注 38] Hudson supra at 324 [ 注 39] His commentary in Singapore was identical to the position he articulated in Toledo [ 注 40] The Progress of the IUMI Proposals for the Reform of the York Antwerp Rules IUMI Genoa, September 2001 [ 訳注 1]2001 年 11 月の年次総会のこと 米国海損精算人協会の年次総会は毎年 10 月の第 1 木曜日に開かれる例になっているが 2001 年は9 月 11 日の惨劇のため定例日に開かれなかった Howard McCormack 氏は2001 年 11 月中旬に例年より遅れて開かれた総会で2001~2002 年のAAAUSの会長に選任された [ 訳注 2] 紀元前 7 世紀のアテナイの立法家 アテナイの慣習法をはじめて成文化した 彼の定めた掟 (thesmoi) は刑罰の苛酷さをもって知られる 32