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Transcription:

Appendix 5-6 公益社団法人自動車技術会運営企画会議議長殿 2017 年 8 月 4 日 研究調査事業実績報告書 (2016 年度事業分 ) 研究調査事業 による助成金を受領した研究が終了しましたので 下記の通り報告します 委員会名 構造強度部門委員会 委員長名 大宮正毅 委員長所属機関 部署名 報告者名 岩本光宏 報告者所属機関 部署名 SUBARU 第一技術本部 CAE 部 研究調査テーマ名 :CAE による接着剤破断予測手法開発 本会 HPでの公開可能年月日 2018 年 10 月 31 日 (2018 年度自技会秋季大会終了後 ) 記入にあたっての注意事項 1 この報告書は 原則として 2017 年 5 月末日までに Email に添付して提出してください ( 提出先 :tech@jsae.or.jp ) 2 研究助成対象者が報告してください 3 [ 研究調査事業の内容 ] は 3~4 頁程度にまとめてください なお [ 研究調査の成果 ] は この研究の学会発表等より前に 報告者の了解なしに本会が公表することはありません 4 本助成金による研究の発表論文 ( 発表予定論文を含む ) があれば Email に添付し [ 本研究調査事業の成果 ] に代えても結構です 5 本報告書は 本会 HPでの公開 ならびに運営企画会議に報告します なお HPでの公開は 上記の [ 本会 HPでの公開可能年月 ] に示された年月日以降の公開とします

2016 年度研究調査事業実績報告書 1.[ 研究調査テーマ名 ] CAE による接着剤破断予測手法開発 2.[ 目的 ] 自動車車体は軽量化のために高強度薄板化が進む中 欧州車を中心に剛性 強度向上アイテムとして接着剤を活用している 接着剤範囲は拡大し続け衝突性能に影響のある部位まで広がっており 衝突性能予測のためには接着剤の破断予測技術が必要になる 現在の主流の CAE を用いた開発において その強度を車両レベルの大規模モデルで十分な精度をもって再現できる手法は少ない 先ずは先行している欧州メーカーの技術レベルに速やかに追いつくため 企業横断で活動し詳細現象分析から汎用的な支配則を求め 最終的には日本メーカー特有の GA 材を主流とした車両での CAE 評価が可能な手法構築を目指す 3.[ 本研究調査事業の内容 ] 3-1.WG の位置づけ詳細現象分析から汎用的な支配則を求め 車両での CAE 評価に使用可能な手法構築を目指す 本 WG の中で汎用支配則を構築し 破断再現性の高い CAE 評価手法を構築する 図 1 接着剤モデル開発イメージ 3-2. 接着剤の破断モードと LS-DYNA 接着剤モデル化接着剤の破断モードは 凝集破壊 界面破壊 基材破壊の 3 種類を想定した ( 図 2) 本 WG では 接着剤モデルのパラメータ同定が主目的であるため 凝集破壊に絞って検討した 凝集破壊を LS-DYNA で表現できる手法は大きく分けて 3 種類存在し ( 図 3) その中から詳細な塑性 ダメージを再現できる CZM モデル (COHESIVE ZONE MODEL) か連続体要素を用いた検証を実施することとした 中でも LS-DYNA に現存するモデルとして機能的に優位であり 連続体図 2 接着剤の破断モードを用いた詳細分析が可能で 車両の様な大規模モデルでも実用的な CZM にも適用が可能な MAT _252 を検証することとした MAT_252 の物性値導出には図 4 に示す 4 種の試験結果が必要であるが 今期は純引張試験と純せん断試験を用いた検証を実施した

図 3 凝集破壊を衝突 CAE で表現させるために手法 表 1 LS-DYNA における接着剤材料タイプ 図 4 MAT_252 の物性値取得に必要な試験

3-3.CAE による検証 試験片形状試験再現性検証用の試験片形状を示す ( 図 5) 今回は論文*1 から対象とする 2 形態の試験結果を参考に CAE 検証を実施した 接着剤を複数層で再現できるよう Solid メッシュの要素長を 0.05mm とし 材料パラメータは論文 *2 から参照した 図 5 試験片形状と CAE 条件 *1: Experimental and numerical investigation of influences of manufacturing and process parameters on the crash behaviour of adhesive bonds: G. Schwarzkopf et al., University of Paderborn; A. Matzenmiller, University of Kassel *2: F.Burbulla,Kontinuumsmechanische und bruchmechanische Modelle für Werkstoffverbunde Berichte des Instituts für Mechanik (2015),Table 22 検証結果 2 種類の試験片 ( 図 5) の CAE 結果と論文実験結果の S-S カーブのグラフを図 6 に示す 論文結果と比較し接着剤厚さによる差は同様の傾向にあった 今回の試験結果の応力が高いが パラメータをチューニングすることで再現できることから MAT_252 を用いることで試験再現性は高いことが分かった 図 6 Shear 試験の検証結果

図 7 Tension 試験の検証結果 3-4. 試験内容 結果 MAT252 用の物性値を取得するため Shear 試験と Tension 試験の 2 試験を実施した 対象とした接着剤は Dow chemical BETAMATE 1496V ( 論文同等剤 ) を用い 焼入れ条件を 170 20mins とした 試験片形状詳細は以下の表 2 の通り 表 2 LS-DYNA における接着剤材料タイプ Shear 試験結果 考察接着剤の破断面を図 8 に示す 破断現象は実施した凝集破壊と界面破壊との混合モードにより破断していた 試験結果の S-S カーブは n=2 で安定しており 論文 *1 に掲載されていた S-S カーブとも同様な試験結果となったため 試験再現性は高いと判断した ( 図 9) 試験結果が安定した理由としては 接着剤面積を一定にできたことと考える 図 8 接着剤の破断面と接合面積 厚さ 図 9 試験結果と論文の S-S カーブ

Tension 試験結果 考察接着剤の破断面を図 10 試験結果 論文の S-S カーブを合わせたグラフを図 11 に示す 破断歪は同等であるが 応力レベルが再現できていない 理由として 接着剤が均一に塗布できていないことが要因と推察される 接着塗布面を安定させるため 試験片作成方法を見直し 再試験が 必要である 50 stress σ [MPa] 40 30 20 BJS-1-04_t0.73 BJS-1-05_t0.44 論文 _exp dk=0.15 論文 _exp_dk=0.3 論文 _exp_dk=0.6 論文 _exp_dk=1.0 10 0 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 strain ε [-] 図 10 接着剤の破断面と接合面積 厚さ 図 11 試験結果と論文の S-S カーブ 4.[ 本研究調査事業の成果 ] 成果について具体的にご記入ください (1) 接着剤の凝集破壊を再現できる LS-DYNA の材料タイプを調査し 機能的に優位な MAT252 を用いて実機検証を実施した 実機試験で発生している応力や接着厚さによる差分を再現できることから 本手法が接着剤の凝集破壊を再現できるモデルに適していることが分かった (2) MAT252 の物性値の取得に必要な 4 種の試験に先行して 2 種を実施した Shear 試験は論文の試験結果と同等となったため 物性値取得試験方法として確立できた Tension 試験で接着面積がばらつく課題が発生 試験片作成手法を見直し 再試験が必要である 2017 年度には Tension 試験片の改善点を織り込んだ試験を含め 物性値取得に必要な試験を実施し CAE 評価が可能な手法構築を目指す

5. 委員会活動への影響 今回の研究調査において委員会活動へ影響した点についてご記入ください 自動車業界では接着剤を用いた衝突性能予測が出来る手法が求められているが 現在の主流の CAE を用いた開発において その強度を車両レベルの大規模モデルで十分な精度をもって再現できる手法は少ない 今回の研究調査から 凝集破壊を予測できる CAE 評価手法の選定および物性値取得に必要な試験結果の一部を得ることができた 今後 WG 活動を継続し CAE 評価手法を確立することで CAE を用いた接着剤の強度が評価され 自動車の軽量化に貢献するものと推測される 6. 今回の研究調査結果について 発表方法を下記より選択してください ( 複数回答可 ) 会誌への記事掲載 ( 年月号を予定 ) 春季大会オーガナイズドセッションでの発表 ( 年春季大会を予定 ) 春季大会フォーラムでの発表 ( 年春季大会を予定 ) シンポジウムでの発表 ( 年月を予定 ) 出版物の発行 ( 印刷物 CD-ROM)(2019 年 5 月頃の発行を予定 ) その他 ( 具体的にご記入ください ) 2017 年度の研究成果を含め 2018 年度秋季大会で発表予定 7. 受給額と執行額 受給総額 執行総額 300,000 円 299,584 円 費目使用例実際の使用内容予算額 ( 円 ) 執行額 ( 円 ) 印刷製本費 資料印刷費 複写費 編集外注費 CD 製作費など 諸謝金 原稿料 通信運搬費 運送用レンタカー代 宅配料 委託費 外部への委託費 開発費 システム開発費 資料購入費 参考資料 書籍等購入費 物品購入費 実験に必要な部品類など 試験片 計測部品購入 300,000 299,584 消耗品費 燃料代 実験に必要な消耗品類 臨時雇用費 アルバイト代 その他 合計 ( 円 ) 300,000 299,584 以上