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目次 1. はじめに 2. NF/gain 測定の概要 3. 測定例 3.1 レベル補間法 3.2 偏光ヌリング法 3.3 パルス法 4. まとめ 2

1. はじめに 1990 年代後半に出現したエルビウムドープ光ファイバ増幅器 (erbium doped fiber amplifier: EDFA) により波長多重信号 (wavelength-division multiplexing: WDM) の一括増幅が可能になり 光海底ケーブルや光加入者系などの長距離 : 大容量通信システムへの応用が活発に行われている この長距離 : 大容量伝送のキーデバイスである EDFA の特性評価では 利得 (gain) と雑音指数 (noise figure: NF) が重要な測定項目であり IEC61290, JISC6122 で規格化されている 本稿ではアンリツの光スペクトラムアナライザ MS9740A を用いた EDFA NF/Gain 特性の測定に関して 測定方法やそれぞれの利点, 注意点についてまとめた 2. NF/gain 測定の概要光スペクトラムアナライザ (optical spectrum analyzer: OSA) による EDFA の gain 測定は EDFA の入力光と出力光のレベル比から簡単に求めることができる NF の測定においては EDFA 自身が発する自然放出光 (amplified spontaneous emission: ASE) のレベルを正確に測定する事が重要である しかし 実際の ASE は増幅された信号光に埋もれているため直接測定することは難しい この ASE のレベルを測定する方法として様々な方式が提唱されており 代表的な方法として以下の 3 つが挙げられる 1 レベル補間法 2 偏光ヌリング法 3 パルス法 1 レベル補間法は 信号光波長近傍の ASE レベルから信号光波長における ASE レベルを補間し推定する方式である この方式は測定が比較的簡単に行え 測定点の周辺の ASE が平坦な場合にはかなり再現性の高い測定を行える 2 偏光ヌリング法は EDFA から出力される ASE が一般的には無偏光である事に着目し EDFA に偏光した信号光を入力し EDFA からの出力光から検光子を用いて 増幅された信号光成分 ( 偏向成分 ) ( および ASE 成分の 50%) を除去する事により 直接 ASE を測定する方式である この方式は 偏波状態の調整が必要となるが 1 において フィッティングが困難な場合には有効な方法である 3 パルス法は メタステーブル状態にある EDFA の Erbium イオンが 基底状態へ回復するまでに比較的長い時間がかかることを利用している すなわち EDFA への入力光をこの回復時間より十分短い周期で ON/OFF し 信号光が OFF の期間に同期して EDFA からの出力のレベルを測定することで 信号光がある状態の ASE を直接測定する方式である この方式は 大掛かりな周辺機器が必要となるが 多重化された信号 (WDM) にも対応できる MS9740A では 以上に挙げた 3 つの方式すべてに対応する内部アプリケーションソフトを標準装備している それぞれの具体的な測定例と測定時の注意点について以下に述べる 3

3. 測定例 3-1. レベル補間法 (1) レベル補間法による NF/gain 測定系を図 1 に示す 図 1: MS9740A を用いたレベル補間法による測定系 MS9740A OSA Light Source DUT EDFA P in (2) 測定手順 1 光源 (Light Source) の出力を直接 OSA に入力し EDFA への入力信号 Pin を測定する 2 OSA の測定メモリを Pout に切り替える 光源を EDFA へ入力し EDFA からの出力光を OSA に入力し Pout を測定する 3 データの補間を行うための範囲 (Fitting Span) および 補間計算のためのデータから除く範囲 (Masked Span) を設定する Fitting Span は その範囲内に他の信号光が含まれない波長幅を また Masked Span は 信号光の影響を受けている波長幅を設定する ( 図 2) 4 Fitting の方法を設定する Gauss Fit ( ガウシアン曲線近似 ) Mean ( 直線近似 ) 図 2: Fitting/Masked Span の設定 Masked Span Fitting Span 4

(3) 測定結果の例図 3 に測定例を示す この測定ではガウス近似により ASE のレベルを求めた また 設定した Fitting Span は 5nm, Masked Span は 2nm である この測定の 20 回の繰り返しにおける NF の測定値の再現性は 0.1 db 以下であった 図 3: レベル補間法を用いた NF/Gain 測定例 5

(4) EDFA の出力に 光バンドパスフィルタ (OBPF) が挿入されている場合の測定測定手順は上記 (2) の場合と同じであるが 測定開始時にパラメータとして OBPF の諸特性 及びレベル補正のためのデータを入力する ( 取説 5.5 参照 ) また このとき Masked Span は OBPF の通過帯以上の値を設定する必要がある ( 図 4 参照 ) 図 4: OBPF が挿入された場合の Fitting/Masked Span の設定 Masked Span Fitting Span (5) スペクトラム除算法による測定 EDFA の出力には ASE のほかに増幅された信号光のノイズ成分が加わっている このため ASE のレベルをより正確に求めるためには 以下のような補正をかける必要がある (1) ASE : 測定された ASE のレベル, G: EDFA のゲイン, Pin_noise: 入力信号のノイズ成分 この補正された ASE のスペクトラムに対してレベル補間を行うことで より正確な ASE のレベルを求めることができる MS9740A では このスペクトラム除算法の ON/OFF を選択できる (Spectrum Div. ON/OFF 機能 ) 図 5 はスペクトラム除算法を用いて NF/gain を測定したものである また図 6 は同条件の EDFA を除算法を用いずに測定したものである 両者の NF の測定値ではおよそ 0.1 db の違いが観測された DFB-LD 等 信号光のほかにサイドモードを持つ光源では スペクトラム除算法によりサイドモードの影響を軽減できる 6

図 5: スペクトラム除算法による測定 図 6: スペクトラム除算法を用いない測定 次の測定例は 入力光として DFB-LD に光ノイズとして ASE 光源を重畳した場合である 図 7 および図 8 に それぞれスペクトラム除算法を用いた場合と用いない場合の測定結果を示す このようなケースにおいてもスペクトラム除算法を適用した方が入力光のノイズ成分の影響を抑圧した測定結果になっていることがわかる 図 7: スペクトラム除算法による測定 図 8: スペクトラム除算法を用いない測定 7

(6) レベル補間法の注意点レベル補間法による測定では 補間を行うためのデータが十分な場合 かなりの精度で NF を測定できる しかし 多重された信号の NF を測定する場合 設定できる Fitting Span は WDM のチャネル間隔によって制限されてしまう このような WDM 信号の NF 測定では後述のパルス法による測定が必要である スペクトラム除算法で測定を行う場合 式 (1) の Pin_noise の値が不定であるような場合は正しく測定できない 例えば 入力信号の光ノイズ成分が Fitting を行う範囲において OSA のノイズに埋もれているような場合が挙げられる 下図はその一例である この測定結果では スペクトラム除算法を ON にした場合において NF の測定結果が明らかにおかしいことがわかる ( 図 9, 図 10) こういった測定誤差を避けるためには 光ノイズ成分が OSA のノイズレベルより十分大きくなるように OSA の VBW を設定する必要がある (VBW と受光感度の関係 : 取説付録 E 参照 ) 図 9: スペクトラム除算法による測定 図 10: スペクトラム除算法を用いない測定 また スペクトラム除算法を用いる場合において 式 (1) の ASE と G Pin_noise の値が非常に近くなってしまうような場合には注意が必要である つまり 出力光の ASE 光がゲイン倍された入力光ノイズよりも十分大きい場合は無視されるほど小さいので問題とならないが 出力光の ASE ノイズが ゲイン倍された入力光のノイズよりも非常に小さくなる場合 ゲイン倍された入力光ノイズ, G Pin_noise の Pin_noise の誤差が測定結果に影響を与えてしまうということである 例として 入力光レベルの誤差が 1uW, 出力光の ASE レベルが 1mW, ゲインが 20dB の場合を考える この場合 入力光レベルの誤差は 100 倍され 100uW となるため 除算法による測定誤差は 10%( 0.45dB) を含むこととなる 8

3-2. 偏光ヌリング法 (1) 偏光ヌリング法による NF/gain 測定の測定系を図 11 に示す 図 11: MS9740A を用いた偏光ヌリング法による測定系 MS9740A OSA Light Source Polarization Controller (λ/2 +λ/4 plate) DUT EDFA Polarizer P in (2) 測定手順 1 検光子 (Polarizer) の挿入損失を測定し パラメータの Pout loss に入力する 2 偏光コントローラ (Polarization Controller) の出力を直接 OSA に入力し EDFA への入力信号 Pin を測定する 3 図 11 のように接続を行い OSA の測定を Pase に切り替える OSA で観測される信号のレベルが最小となるように偏光コントローラと検光子を調節し レベルが最小になった状態で OSA の掃引を止め ASE のスペクトラムを取得する このとき OSA の VBW を ASE が正確に観測できる最大のバンド幅に設定することで 偏光の調整が容易となる 4 OSA の測定を Pout に切り替え 観測される信号のレベルが最大になるように再度偏光コントローラと検光子を調節し レベルが最大となった状態で OSA の掃引を止め Pout のスペクトラムを取得する 5 取得した ASE スペクトラムに対し Fitting Span と Masked Span を設定しレベル補間を行う 補間の詳細は既述の 3.1 項レベル補間法を参照 (3) 測定結果図 12 に MS9740A の偏光ヌリング法を用いた NF/gain の測定例を示す 図 12: 偏光ヌリング法を用いた NF/gain 測定例 9

(4) 偏光ヌリング法の注意点この方式では測定する信号光の偏光状態によって たえず偏光コントローラと検光子を調整する必要がある 入力光の偏光度や検光子の偏光消光比が十分でない場合 信号光を完全にコントロール / 消去することができず 測定誤差となってしまう また 使用する偏光コントローラと検光子の挿入損失の偏光依存性 (PDL) が 直接測定確度に影響してしまうので PDL の小さいものを使用する必要がある 3-3. パルス法 (WDM method) MS9740A ではパルス法を用いた測定として 単一光源の測定に使用する Pulse method と WDM 信号に対応した WDM method を選択できる WDM 信号を EDFA で増幅する場合と単一信号を同じ EDFA で測定する場合では NF 特性が異なることがある WDM Method は WDM された信号のうちの一つをパルス法を用いて測定することによって 増幅された WDM 信号における NF/gain をより正確に測定することを目的としている (1) パルス法による NF/gain 測定系を図 13-1, 13-2 に示す 図 13-1: MS9740A を用いたパルス法による測定系 External Driver (ex. AOM Driver) Signal Generator (ex. PPG) External Trigger Light Source External modulator (ex. AOM) DUT EDFA MS9740A OSA P in 図 13-2: WDM method の測定系 External Driver (ex. AOM Driver) Signal Generator (ex. PPG) WDM Signal Reference Source External modulator (ex. AOM) DUT EDFA P in MS9740A OSA External Trigger other Sources 10

(2) 測定タイムチャート MS9740A を用いたパルス法によるタイムチャートの例を図 14 に示す この測定では OSA に入力した external trigger の立ち上がり時間から 設定された delay time 後の点で増幅された信号を測定し 立ち下がりの時間から delay time 後の点で ASE を測定する 図 14: パルス法による測定タイミングチャート (delay time = 15us) Time (us) 0 10 20 30 40 50 60 External Trigger Optical signal ASE Signal ASE Signal Trigger + delay time (15us) 15us delay time ASE Trigger + delay time (15us) 15us delay time (3) 測定の手順 1 OSA の測定モードを External Trigger モードに設定し VBW を Trigger 信号周波数よりも十分広い帯域に設定する (1 MHz または 100kHz が望ましい ) Signal Generator からの同期信号を OSA の背面にある External Trigger 端子へ入力する 2 AOM の出力を直接 OSA に入力し 測定レベルが最大になるように delay time を調節する レベルが最大となった状態で入力レベル Pin を測定する 3 EDFA を図 13-1 または 13-2 の様に接続し OSA の測定メモリを Pout に切り替える 測定レベルが最大になるように再度 delay time を調節し 最大となった状態で EDFA の出力 Pout を測定する このとき ASE の測定は各測定点において時系列に自動的に行われる ( タイミングチャート参照 ) (4) 測定結果図 15 に MS9740A のパルス法を用いた NF/gain の測定例を示す 今回の測定では 外部変調器として (AOM) を用いた 使用した AOM の消光比は 約 40 db である ASE のレベルに若干のひずみが生じているが これは AOM の消光比による誤差である 消光比による誤差については (5)-2 で説明する 図 16 に WDM method を用いての多重化された信号を測定した結果を示す 本測定でも同じ EDFA を用いているが 本測定においては信号レベルと ASE レベルの比が 30dB 程度であるため ASE レベルがひずみなく測定できていることがわかる 11

図 15: Pulse method による測定 図 16: WDM method による測定 (5) Pulse Method 使用時の注意点 1 測定誤差とdelay timeの関係 Erbiumイオンのメタステイブル状態からの復帰時間はおよそ数 msである このため信号光をOFFした直後から数十 us の間では ASEのレベルは信号光がある場合とほとんど等しいと考えられる 一方 ASEを測定するときのOSAの受光部は 信号がOFF になった直後では完全に飽和した状態であり この飽和状態から回復するためにはかなりに時間を要する この時間は 増幅された信号光とASEのレベル差に依存し レベル差が30 db の時には約 10 us 程度である 十分なdelay time を設定できない場合 測定にエラーが発生するので注意が必要である また EDFA 自身にALC(Auto Level Control) などの出力コントロール機能が搭載されている場合 入力光が OFFになり 出力光が変化した際に自動的に出力コントロールされるため ALCのフィードバック周期等を事前に調べ 適切なTrigger 周波数を調べておくなどの注意が必要である 2 光源の ON/OFF の消光比に起因する測定誤差この測定においては ASE のレベルを測定する際に 信号光は完全にOFF になっていなければならない 例えば EDFA へ入力する変調光の消光比が十分でない場合 ASE のレベルに信号光のレベルが漏れ込み 1の場合と同様のエラーが発生する 例えば 増幅された信号光とASE のレベル差が35 db 程度である場合 0.1 db 以下の誤差で測定を行うためには 光源のON/OFF の消光比は55 db 以上が必要となる 3 Trigger 周波数と VBW 設定について VBWはTrigger 周波数よりも十分高い周波数に設定する必要があるため SN 比が高い被測定物の場合 ASE がOSA 自身のノイズに埋もれてしまい 正確に測定できない場合がある 以上の注意点から Pulse Method は WDM 信号の測定について効果は高いが 測定にあたっては 被測定 EDFA の性質やパルス駆動源のスイッチの性能をはじめ 測定系についてもよく調べておく必要がある また パルスの繰り返し周波数を必要以上に遅くした場合 EDFA の Q スイッチ発振により巨大なパワーが出力されることがあり 測定器を含め周辺機器を焼損する可能性があるため 注意が必要である (IEC では繰り返し周波数は 10kHz 以上が望ましいとされている ) 12

4. まとめ以上アンリツの OSA MS9740A を用いた EDFA の NF/gain 測定についてまとめた 今後も さまざまな測定要求が見込まれる EDFA 光増幅器の評価において アンリツでも技術調査等を継続して行い 光増幅器測定アプリケーションを充実していきたい 注 : 特許に関するお願いパルス法による光増幅器の測定法に関して 日本電信電話株式会社の米国特許 No.5, 521, 751. と Agilent Technologies Inc. の米国特許 No.5, 340, 979 及びこれらの対応外国出願が公開されております 光スペクトラムアナライザを用いて本書の測定例 3.3 項に記載の測定方法を採用する場合は 上記特許との関係が問題となるおそれがあります この場合 お客様が光スペクトラムアナライザを用いて採用する測定方法が問題の要因となりますので 光スペクトラムアナライザ単独では解決できません したがって お客様の責任において 上記特許に関する対応策をご検討のうえ 測定方法を構成されますようお願い申しあげます 13

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