平成 26 年 7 月 5 日 トンネル工法の概要と 山岳トンネルの地質調査 地山評価 - 先進ボーリング調査 試験を活用するために - 北電総合設計株式会社森藤勉
6 施工中の地質調査 ( 切羽前方探査 ) 7 水文調査 8 立地条件の調査 ( トンネル周辺の環境調査 ) (4) 先進ボーリングに関する調査 試験 1 先進ボーリング調査 試験の目的とおもな項目 2 ボーリングコア観察 RQD 3 原位置試験 ( 孔内水平載荷試験 速度検層 ) 4 室内試験 -1( 一軸 超音波速度 密度 ) 5 室内試験 -2( スレーキング 浸水崩壊度 ) 6 室内試験 -3( 吸水膨張 粉末 X 線回折 ) 7 化学分析 ( 重金属等の含有量 溶出量 )
(5) トンネルの地山評価 1 調査結果の整理 ( 事実と解釈 設計 施工へ ) 2 地山評価の方法 3 地山分類による地山評価 4 地山分類表 ( 地山等級区分 ) 5 経験的な指標 ( 特殊な地山条件 ) (6) 設計 施工の参考資料 1 NATM 工法の一般的な流れ 2 掘削工法 掘削方式 3 坑口部の区間 4 補助工法
(1) トンネルとは? 1) 一般に 2 地点間の交通と物資の輸送あるいは貯留などを目的とし 建設される地下の空間 断面の高さあるいは幅に比べて軸方向に細長い地下空間 表トンネルのいろいろな呼び名 高さ幅軸方向の長さ 立坑 斜坑 地下発電所なども含む 2)1970 年の OECD トンネル会議 計画された位置に所定の断面寸法をもって設けられた地下構造物 仕上がり断面積が 2m 2 以上のもの 3) トンネル技術協会 2) に加え 地中の管路については 仕上がり断面の直径が 0.8m 以上 鉱山における坑道等は含まない 注 ) 道路トンネルでは異なる 出典 : 一般社団法人トンネル技術協会 HP より
(2) トンネル工法 1 おもな 3 種類の工法 ( 山岳 シールド 開削 ) 山岳工法 矢板工法 ( 木製支保工 )(1950 年頃まで ) 矢板工法 ( 鋼製支保工 )(1970 年代前半まで ) NATM 工法 (1970 年代後半以降 ) シールド工法 シールドマシンの前方部で地山の崩壊を防ぎながら掘削 推進し その後方部でセグメントをはめ込む覆工する 開削工法 地面を掘り返してトンネルを構築し埋め戻す 沈埋工法 ケーソン工法
トンネル工法の比較
シールド工法の例 (1) おもなシールド工法の分類 泥水式シールド機 面板 ( 回転部 ) セグメント 泥土加圧シールド工法のイメージ図 土圧式シールド機
シールド工法の例 (2) 泥水式シールド工法の全容 RC セグメント 覆工 ( セグメント ) 鋼製セグメント 断面図
開削工法の例
2 山岳工法の概要 1) 山岳工法とは 文字どおり 山岳部にトンネルを掘るための工法 横方向にトンネルを掘り進めながら その後方に支保工を設けて掘削面を支える 最後に覆工を巻いて仕上げる 2) これまでの支保工 ( 矢板工法 在来工法 ) 木製支保工 (1950 年頃まで ) 鋼製支保工 (1970 年代前半まで ) 矢板工法 ( 鋼製支保工 ) の手順 掘削後 地山崩落防止のため鋼製支保工を立て込む 地山と鋼製支保工の間に矢板を挿入し 鋼製支保工間の地山を固定 ( 矢板を地山に当てた後 次の鋼製支保工を立て込む場合あり )
矢板工法の短所 地山と支保工の間に空隙が残るのが通例 周辺地山を緩め 支保工への荷重が増加しやすい 支保工に応力集中 アーチ構造としての耐荷力低下 裏込め注入しても空隙を完全に充填するのが困難 中 ~ 大断面では 施工性が悪く 長い工期を要する 矢板工法の長所 掘削断面が小さく 機械施工の選定制約がある場合 高圧多量の湧水かつ排水工の効果が不十分な場合 吹付けコンクリートの施工が困難な場合 矢板工法の構成部材 支保工図の例
NATM 工法 (New Austrian Tunneling Method) トンネル周辺の地山の支保機能を有効に活用する 掘削後 吹付けコンクリート ロックボルト 鋼製支保工により地山の安定を確保して掘進する NATM 工法の適用条件 ( 地山条件 ) 掘削時の切羽が自立することが前提 周辺地山の支保機能よりグランドアーチが形成されることが基本である NATM 工法の適用範囲の拡大 切羽の安定性を向上される補助工法の技術的な進歩 都市部の未固結地山 土被りの小さな場所で施工事例が増加 ( 従来はシールド 開削工法が通例 )
NATM 工法のおもな原理 ( 在来工法との比較 ) 1. トンネルを支保するのは基本的には周囲の岩盤 3. 岩盤の緩みは 極力 防がなければならない トンネル構造物の考え方 2. 岩盤がもともと有している強度できるだけ損なわない 緩みによる覆工規模 5. 岩盤の変形は抑えるようにしなければならない トンネル周辺の緩み 4. 岩盤は三軸状態で安定 一軸 二軸応力状態を避ける 岩盤中に生成される支持リング
NATM 工法の支保工 標準支保パターン <1> 道路トンネル ( 中断面の標準的な支保パターンの例 )
NATM 工法の支保工 標準支保パターン <2> 新幹線トンネル ( 中断面の標準的な支保パターンの例 )
NATM 工法 道路トンネルの標準断面の例 <1> 支保パターン :CⅠ ( 断熱材なし )
NATM 工法 道路トンネルの標準断面の例 <2> 支保パターン :CⅡ-b ( 断熱材なし )
NATM 工法 道路トンネルの標準断面の例 <3> 支保パターン :CⅡ-b-i ( 断熱材なし )
NATM 工法 道路トンネルの標準断面の例 <4> 支保パターン :DⅠ-b ( 断熱材なし )
NATM 工法 道路トンネルの標準断面の例 <5> 支保パターン :DⅡ ( 断熱材なし )
NATM 工法 道路トンネルの標準断面の例 <6> 支保パターン :E ( 断熱材なし )
NATM 工法 道路トンネルの標準断面の例 <7> 支保パターン :DⅢ( 坑口 ) ( 断熱材あり ) ( フォアポーリング )
(3) 山岳トンネルの地質調査 地山条件の調査 地形 地質 地質構造 水文など トンネル周辺や工事に影響及ぼす条件 立地条件の調査 自然環境 社会環境 生活環境
1 地山条件の調査の流れ <1> 調査の目的と精度
1 地山条件の調査の流れ <2> 地山条件調査の流れ
2 トンネル周辺や工事に影響を及ぼす条件 <1> 特殊な地山条件
2 トンネル周辺や工事に影響を及ぼす条件 <2> 留意すべき設計 施工条件
3 地質調査の項目 利用法 問題点 適用段階 <1>
3 地質調査の項目 利用法 問題点 適用段階 <2>
3 地質調査の項目 利用法 適用段階 <3> 地山条件 調査項目と調査法の関係
4 路線選定のための地形と地質の調査 おもな目的 トンネル周辺の地山条件の概要を把握 複数の計画路線から選定 問題点の整理とその後の調査計画立案 おもな調査方法 資料調査 空中写真判読 地表地質踏査 物理探査 ( 弾性波探査 ) ボーリング調査 標準貫入試験
5 設計 施工計画のための地質調査 おもな目的 トンネル地山条件の全容を把握 設計施工に必要な基礎資料を得る 段階的に実施し 精度を高める おもな調査方法 地表地質踏査 物理探査 ( 弾性波探査 電気探査 ) ボーリング調査 原位置試験 ( 速度検層 電気検層 ) 室内試験 ( 物理 力学 劣化 膨張性 ) 化学分析 ( 重金属等 水質 )
6 施工中の地質調査 ( 切羽前方探査 ) おもな目的 施工事前に不可能だった調査を実施 施工事前に予想されなかった問題に対して調査する トンネルを安全かつ経済的に施工する おもな調査方法 物理探査 ( 弾性波速度 比抵抗 ) 先進ボーリング調査 ( 地質 地下水 ) 原位置試験 ( 強度 変形係数 緩み ) 室内試験 ( 物理 力学 劣化 膨張性 ) 化学分析 ( 重金属等 水質 )
切羽前方探査技術の現状と評価 ( 施工中の坑内から実施する調査技術 )
7 水文調査 おもな目的 坑内湧水量の予測 設計 施工上の問題点を把握 周辺環境への影響を把握 おもな調査方法 資料調査 事例調査 水文地質調査 水収支 水文環境( 水源 水利用 ) 実施段階 路線選定 ~ 設計 施工 ~ 維持管理
水文調査の概要
8 立地条件の調査 ( トンネル周辺の環境調査 ) おもな目的 トンネルルートの施工に関わる範囲について 自然環境 社会環境 生活環境および工事を規制する法規の情報取得 おもな調査方法 生活環境調査 騒音 振動 渇水 地盤沈下 汚濁水 交通障害 鉱染 重金属 環境影響評価 ( 環境アセスメント ) 実施段階 路線選定 ~ 設計 施工 ~ 維持管理
トンネル周辺の環境調査項目
(4) 先進ボーリングに関する調査 試験 1 おもな目的と項目 < 目的 > 施工事前に不可能だった調査を実施 施工事前に予想されなかった問題に対して調査する トンネルを安全かつ経済的に施工する < 調査 試験項目 > 先進ボーリング調査 原位置試験 室内試験 化学分析
2 ボーリングコア観察 RQD ボーリングコア観察のおもな着目点 岩種区分 塊状岩盤か層状岩盤か 硬軟 コア形状 ( 割れ目間隔 頻度 ) 割れ目の状態 ( 風化 劣化 粘土化 ) 風化の状態 ( 岩盤のサビ方 ) 変質の状態 ( 岩盤劣化の一要因 ) 色調 ( 新鮮色 風化 変質色 ) RQD (5) と (10) ( 割れ目頻度 ) 断層 破砕部 脈 鉱物などの存在
RQD<1> RQD の定義 岩盤の不連続性割れ目の頻度 RQD(10) コア長 10cm 以上のものを扱う RQD(5) コア長 5cm 以上のものを扱う北海道開発局の道路トンネルを調査対象とする場合 地山を評価する際の 1 指標
RQD<2> RQD は万能か? 注意点 すべて RQD(10)=0 割れ目とボーリングの方向
3-1 原位置試験 孔内水平載荷試験 <1> 求まる物性値 結果の利用 岩盤の強度 降伏応力 (Py) 準岩盤圧縮強度 σc* 岩盤の変形性 変形係数 (E*)
孔内水平載荷試験<2> ボーリング区間のどの位置で試験をするか
3-2 原位置試験 孔内速度検層 <1> 求まる物性値 地山弾性波速度 (P 波速度 Vp*) 結果の利用 ( 解釈 ) 岩盤等級の 1 指標 亀裂係数 K 岩石の一軸圧縮強度 準岩盤圧縮強度 岩石の変形係数 岩盤の変形係数
孔内速度検層 <2> 施工事前に弾性波探査を実施しているけれど? 起振点も受振点も地表である 受振点間隔 5~10m を反映した精度 地表から深いと精度が落ちる 右図の条件では 孔内速度検層 受振点が孔内 測定間隔が 1~2m と密
4 室内試験 -1( 一軸 超音波速度 密度 ) 求まる物性値 一軸圧縮試験 岩石の一軸圧縮強度岩石の変形係数 超音波伝播速度試験 岩石のP 波速度 Vp 岩石のS 波速度 Vs 密度試験 岩石の密度 結果の利用 ( 解釈 ) 岩石の一軸圧縮強度 準岩盤圧縮強度 岩石の変形係数 岩盤の変形係数 岩石のVpと地山のVp* 亀裂係数 K 強度 土被り 密度 地山強度比 α
4 室内試験 -2( スレーキング 浸水崩壊度 ) 求まる物性値 スレーキング試験 スレーキング指数 ( 地盤工学会ほか ) (0,1,2,3,4の5 段階 ) 浸水崩壊度試験 浸水崩壊度 ( 旧鉄建公団 ) (A,B,C,Dの4 段階 ) 結果の利用 ( 解釈 ) 岩盤の劣化のしやすさ ( 細粒化 ) 岩石の水に対する影響 ( 水による劣化 ) 地山の膨張性 ( 押し出し性 吸水膨張 ) 設計 施工 ( 短期的 長期的 ) インバートの設置検討 地山の膨張性を考慮
4 室内試験 -3 ( 吸水膨張 粉末 X 線回折 ) 求まる物性値 吸水膨張試験 吸水膨張率 (%) 粉末 X 線回折試験 鉱物の種類と相対量膨潤性粘土鉱物の有無 ( スメクタイト モンモリロナイト ) 結果の利用 ( 解釈 ) 地山の膨張性 ( 吸水膨張 ) 岩石の水に対する影響 ( 水による劣化 ) 設計 施工 ( 短期的 長期的 ) インバートの設置検討 地山の膨張性を考慮
5 化学分析 ( 重金属等の含有量 溶出量 )
土壌汚染の環境リスクと特定有害物質
土木工事と土壌汚染対策法の関係 環境省 土壌汚染対策法 ( 平成 15 年度 ) 自然由来の重金属等については対象外 土壌を対象 土壌汚染対策法の改正 施行 ( 平成 22 年度 ) 自然由来の重金属等についても対象 相変わらず土壌を対象 ( 岩は対象外 ) 土木研究所 ( 国交省 平成 22 年 ) 建設工事における自然由来重金属等含有岩石 土壌への対応マニュアル ( 暫定版 ) 固結した岩石や海成堆積物も対象
(5) トンネルの地山評価 1 調査結果の整理 ( 事実と解釈 設計 施工へ ) 2 地山評価の方法 3 地山分類による地山評価 4 地山分類表 ( 地山等級区分 ) 5 経験的な指標 ( 特殊な地山条件 ) (6) 設計 施工の参考資料 1 NATM 工法の一般的な流れ 2 掘削工法 掘削方式 3 坑口部の区間 4 補助工法