特許取得のプロセス

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如何では 我が国における研究開発や成果の社会実装に大きな影響を与えるおそれがある そこで 本稿では 最近開発されたゲノム編集技術を紹介するとともに それらゲノム編集技術の基本特許の国際的な動向について分析 説明し さらに それら基本特許が我が国の研究開発に与える影響と対策について考察する 2. ゲノ

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参加人は 異議申立人が挙げていない新たな異議申立理由を申し立てても良い (G1/94) 仮 にアピール段階で参加した参加人が 新たな異議申立理由を挙げた場合 その異議申立手続は第 一審に戻る可能性がある (G1/94) 異議申立手続中の補正 EPCにおける補正の制限は EPC 第 123 条 ⑵⑶に

特許出願の審査過程で 審査官が出願人と連絡を取る必要があると考えた場合 審査官は出願人との非公式な通信を行うことができる 審査官が非公式な通信を行う時期は 見解書が発行される前または見解書に対する応答書が提出された後のいずれかである 審査官からの通信に対して出願人が応答する場合の応答期間は通常 1

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背景 人工 DNA 切断酵素である TALEN や CRISPR-Cas9 を用いたゲノム編集技術により 遺 伝性疾患でみられる一塩基多型を導入または修復する手法は 疾患のモデリングや治療のた めに必須となる技術です しかしながら一塩基置換のみを導入した細胞は薬剤選抜を適用で きないため 正確に目的

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出願人のための特許協力条約(PCT) -国際出願と優先権主張-

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ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお

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% 95% 2002, 2004, Dunkel 1986, p.100 1

3 特許保有数 図表 Ⅰ-3 調査対象者の特許保有数 Ⅱ. 分析結果 1. 減免制度 (1) 減免制度の利用状況本調査研究のヒアリング対象の中小企業が利用している法律別の減免制度の利用状況を 図表 Ⅱ-1 に示す 企業数は延べ数でカウントしている 図表 Ⅱ-1 減免制度の利用状況 この結果から 産業

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間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

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かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

はじめに 個人情報保護法への対策を支援いたします!! 2005 年 4 月 個人情報保護法 全面施行致しました 個人情報が漏洩した場合の管理 責任について民事での損害賠償請求や行政処分などのリスクを追う可能性がござい ます 個人情報を取り扱う企業は いち早く法律への対応が必要になります コラボレーシ

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No3

目次 1. はじめに 2. 出願前 3.PCT 国際出願 4. 国際調査 5. 国際予備審査 6. 国内段階移行 7. まとめ Creating IP Vision for the World

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32 東和知財研究第 5 巻第 2 号 ( 通巻第 7 号 ) Journal of Towa Institute of Intellectual Property Vol.5, No.1 33 発明の単一性の要件 シフト補正の制限の審査基準改訂のご紹介 東和国際特許事務所 加藤 弁理士 2013

Tab 5, 11 Tab 4, 10, Tab 3, 9, 15Tab 2, 8, 14 Tab 1, 7, 13 2

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また 営業秘密の取扱いについても 社内の規程を整備することが秘密情報の流出時に法的保護を受ける上で重要であることから 今回の職務発明規程の整備に併せて 同期間 IN PITでは 営業秘密管理規程を含む企業の秘密情報管理体制の構築に関する情報提供や周知活動も積極的に行っていきます ( 本発表資料のお問

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ブラジル知財関連法律事務所リスト

Signal Receptor Ion Channel Transmitter Energy transducion and transport Receptor A signal Energy transduction Cross talk Nuclear Cascades B signal As

目次 アンケート回答者属性 企業向けアンケート 弁理士向けアンケートの回答者属性 P2 1. 標準化 1-1 企業 P3 1-2 弁理士 P7 2. データの取扱い 2-1 企業 P 弁理士 P14 本調査研究の請負先 : 株式会社サンビジネス 1

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

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再発小児 B 前駆細胞性急性リンパ性白血病におけるキメラ遺伝子の探索 ( この研究は 小児白血病リンパ腫研究グループ (JPLSG)ALL-B12 治療研究の付随研究として行われます ) 研究機関名及び研究責任者氏名 この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示す通りです 研究代表者眞田昌国立病院

手続きガイドライン ( 日本語仮訳 ) ( ラオス関連特許出願に対する特許の付与円滑化に関する協力に基づく早期特許査定申請 ) 日本国特許庁 (JPO) により付与された特許を有する出願人は JPO での特許出願の審査結果を利用したラオス関連特許出願の 特許の付与円滑化に関する協力 ( 以下 CPG

第41回 アクセプタンス期間と聴聞手続(2016年版) ☆インド特許法の基礎☆

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

研究成果の概要 ( 背景 ) 従来の遺伝子工学は, 実質的に外来遺伝子の導入に限られ, 標的部位への導入は極めて困難でした ZFN, TALEN, CRISPR/Cas 1) 等のゲノム編集は, 微生物起源の人工酵素による遺伝子改変技術の総称で, 外来遺伝子の標的部位への導入のほか, 内在遺伝子の破

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

の連携による明確な出口戦略を持って NCを含む臨床研究中核病院などの 拠点 及びそのネットワークが中心となり 拠点外シーズ 拠点外施設も含め all Japan 体制で効率的に研究開発が進められる環境作り ( 1~3) を目指す 1 このような環境が整うことのメリットとしては 我が国における医薬品等

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人材育成 に関するご意見 1) 独立行政法人情報通信研究機構富永構成員 1 ページ 2) KDDI 株式会社嶋谷構成員 8 ページ 資料 7-2-1

Isotope News 2017年10月号 No.753

微生物関連の特許出願に関し 特許法以外の関連規則として 特許出願手続に 関する政府規則 (1991 年第 34 号 ) および 特許出願施行規則に関するインド ネシア共和国法務大臣決定 (1991 年 No. M.06-HC.02.01) が挙げられる インドネシア特許法 (2016 年法律第 13

イ特許専門業務特許戦略 法務 情報 調査 特許戦略に関し 次に掲げる事項について専門的な知識を有すること (1) 特許出願戦略 ( ポートフォリオ戦略等 ) (2) 研究開発戦略と特許戦略の関係 (3) 事業戦略と特許戦略の関係 (4) 標準化戦略 法務に関し 次に掲げる事項について専門的な知識を有

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PowerPoint プレゼンテーション

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

[2] , [3] 2. 2 [4] 2. 3 BABOK BABOK(Business Analysis Body of Knowledge) BABOK IIBA(International Institute of Business Analysis) BABOK 7

Transcription:

医療系弁理士から見た アカデミア知的財産戦略の現状とあるべき姿 - 海外基本特許の実例からの教訓 - 東京大学トランスレーショナル リサーチ イニシアティブ東京大学未来医療研究人材養成拠点形成事業合同開催シンポジウム TR の新しい方向とアカデミアの知的財産戦略の強化 2017 年 2 月 1 日 特許業務法人セントクレスト国際特許事務所代表社員 ( 副所長 ) 弁理士橋本一憲 hashimoto@centcrest.com

問題 以下の要件を満たすバイオテクノロジー技術は? 1 将来 ノーベル賞の対象技術となることが確実視されている 2 アカデミアにおけるプライオリティー論争のみならず 大学同士が米国で特許紛争を行っている 3 基本特許に対して 超高額なライセンス契約が次々と締結されている 2

ゲノム編集技術 出典 : 山本卓ら, ウイルス, 第 64 巻, 第 1 号,P76 ( 筆者が用語を追記の上掲載 )

CRISPR-Cas9 の基本特許の実施権 エディタスメディスン 基本特許 1 ( ブロード研 /MIT) 非独占 モンサント 農業分野 特許係争 基本特許 2 基本特許 3 ( カリフォルニア大 / ウィーン大 ( ヴィリニュス大 ) / シャーペンティエ ) クリスパーセラピューティック カリブー バイオサイエンシス クロスライセンス 農業分野 デュポン ジュノ セラピューティクス 治療分野 アッフ フロント :$2500 万マイルストーン :$6 億 9000 万 + ロイヤリティー (CAR-T TCR) バイエル ジョイントベンチャー 治療分野 バーテックス 治療分野 アッフ フロント :$1 億 500 万マイルストーン :$25 億 2000 万 + ロイヤリティー ( 嚢胞性線維症 異常ヘモグロビン症 + 最大 6 の標的 ) インテリアセラピューティック ノバルティス 治療分野 リジェネロン 治療分野 投資 :$3 億 ( 血液疾患 失明 先天性心疾患 ) (CAR-T HSC) アッフ フロント :$7500 万 + マイルストーン ロイヤリティー ( 最大 10 の標的 ) アメリカ国立衛生研究所 (NIH) は 腫瘍抗原 NY-ESO-1 に対する T 細胞受容体 (TCR) を発現させた患者由来の T 細胞に対して CRISPR-Cas9 を使用して 3 つの遺伝子 (PD-1 を含む ) をゲノム編集して患者に戻すことによる がん ( 骨髄腫 肉腫 黒色腫 ) の治療に関し ペンシルベニア大学の臨床試験申請を承認 UPI HEALTH NEWS, 23 June 2016 デュポン社は CRISPR-Cas9を利用した優良ワキシーコーンを開発し 米国農務省 (USDA) から従来のGMOと同様の規制の対象とはならないとの回答が得たことから 米国の農業従事者向けに5 年以内の商品化を目指すとしているデュポン社 HP 18 April 2016 4 本スライドは 内閣府 SIP 新たな育種体系の確立 における演者の調査結果に基づく

特許番号 :US8,697,359 [ 遺伝子発現調節法 ] 1. A method of altering expression of at least one gene product comprising introducing into a eukaryotic cell containing and expressing a DNA molecule having a target sequence and encoding the gene product an engineered, non-naturally occurring Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats (CRISPR)-- CRISPR associated (Cas) (CRISPR-Cas) system comprising one or more vectors comprising: a) a first regulatory element operable in a eukaryotic cell operably linked to at least one nucleotide sequence encoding a CRISPR-Cas system guide RNA that hybridizes with the target sequence, and b) a second regulatory element operable in a eukaryotic cell operably linked to a nucleotide sequence encoding a Type-II Cas9 protein, wherein components (a) and (b) are located on same or different vectors of the system, whereby the guide RNA targets the target sequence and the Cas9 protein cleaves the DNA molecule, whereby expression of the at least one gene product is altered; and, wherein the Cas9 protein and the guide RNA do not naturally occur together. ( 優先日 2012.12.12 特許成立 2014.4.15) 米国 真核細胞に限定 真核細胞における CRISPR-Cas9 の利用を広範にクレーム 5 本スライドは 内閣府 SIP 新たな育種体系の確立 における演者の調査結果に基づく

米国 米国特許出願番号 :US13/842859( 審査過程で特許性が肯定されている請求項 ) [ 核酸を切断する方法 ] 165. A method of cleaving a nucleic acid comprising contacting a target DNA molecule having a target sequence with an engineered and/or non-naturally-occurring Type II Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)-CRISPR associated(cas)(crispr-cas) system comprising a)a Cas9 protein; and b)a single molecule DNA-targeting RNA comprising i)a targeter-rna that hybridizes with the target sequence, and ガイド RNA が一分子キメラ ( ガイド配列 tracr 配列 ) ii)an activator-rna that hybridizes with the targeter RNA to form a double-stranded RNA duplex of a protein-binding segment, wherein the activator-rna and the targeter-rna are covalently linked to one another with intervening nucleotides, wherein the single molecule DNA-targeting RNA forms a complex with the Cas9 protein, whereby the single molecule DNA-targeting RNA targets the target sequence, and the Cas9 protein cleaves the target DNA molecule. ( 優先日 2012.5.25) ガイド RNA が一本鎖キメラである CRISPR-Cas9 の利用を広範にクレーム 本スライドは 内閣府 SIP 新たな育種体系の確立 における演者の調査結果に基づく 6

CRISPR-Cas9 出願の優先権の争い インターフェアレンス ( 発明日争い ) 2012 2013 2014 ブロード研 /MIT ( 真核細胞における利用 ) 真核細胞の記載 真核細胞の実施例 カリフォルニア大 / ウィーン大 / シャーペンティエ ( 一分子キメラのガイド RNA を利用 ) 基礎出願国際出願 伏兵の存在 ヴィリニュス大 真核細胞の実施例 ツールゲンインコーポレイテッド シグマ - アルドリッチ 本スライドは 内閣府 SIP 新たな育種体系の確立 における演者の調査結果に基づく 7

ブロード研究所は なぜ基本特許を成立させられたか? - 審査過程で利用されたカリフォルニア大発明者の発言 - カリフォルニア大学の出願明細書には 真核細胞における CRISPR-Cas9 の利用に関する記載が存在 当初 審査官は ブロード研究所のクレームは 新規性なしと指摘した ( 旧米国特許法 102 条 (e) 項 ) しかし ブロード研究所側は カリフォルニア大学の Jennifer Doudna が 自ら 当時 原核細胞のシステムをヒト細胞で機能させることの困難性を語っていた ヒト細胞の試験では Feng Zhang のチームに後れをとったと述べていたことなどが文献などに記載されていることを証拠として引用 ( 実際 上記の通り 出願への真核細胞のデータ追加のタイミングは ブロード研究所の出願より遅れた ) 文献 1Jinek M. et al., RNA-programmed genome editing in human cells, Elife, 2, e00471, (2013) 2Colin Barras, Right on target: New era of fast genetic engineering, New Scientist, Magazine issue 2953, (2014) 3Jennifer Doudna, CRISPR Code Kikker, (2014), http://www.ozy.com/rising-stars/jennifer-doudna-crispr-code-killer/4690 特許が成立 ( この発言は 現在進行中のインターフェアレンスでも引用されている ) 8 本スライドは 内閣府 SIP 新たな育種体系の確立 における演者の調査結果に基づく

インターフェアレンスにおける主要な主張 ブロード研究所事実上のインターフェアレンスは存在しない = 両者の発明は お互いに自明ではない ( トゥーウェイテスト ) カリフォルニア大学カウント ( インターフェアレンスの対象となる発明概念 ) を真核細胞における CRISPR-Cas9 の態様とすべきでなく 一分子キメラガイド RNA を利用した CRISPR-Cas9 の態様とすべき 2016 年 12 月 6 日に当初の申立て内容に関する口頭弁論が行われた 近いうちに特許審判部の決定が出ると思われる 決定的な結論 ( 例えば 上記ブロード研究所の主張 ) が出ない場合には 優先性の証明フェーズへ 本スライドは 内閣府 SIP 新たな育種体系の確立 における演者の調査結果に基づく

思考実験 もし 論文を優先して 最初の出願前に発表していたら? もし 少し最初の出願が遅れていたら? もし 少し有用データの追加が早ければ? もし 早期に特許を成立させていなかったら? もし 出願後に余計な発言をしなかったら? 相手方の余計な発言を探す努力をしなかったら? 10

CENTCREST IP ATTORNEYS K.Hashimoto 基本特許を持つ大学側のビジネス戦略 ( 例 ) 出願における一早いプライオリティーの確保 優先権制度によるデータの速やか且つ小まめな追加 早期審査による一早い権利化 アカデミアへのオープンリソース ( 非営利団体へ寄託して MTAにより無償供与 ) 設立ベンチャーをビジネス拠点とした産業分野別のライセンス戦略 ( 医療分野は 標的領域により更に細分化 ) 競合特許への攻撃 ( 特許的な観点での自己の強みの把握 相手の弱みの収集と利用 ) 場合 ( 又は分野 ) により 競合特許とのクロスライセンス 得られた資金による新たな基本技術 応用技術の開発 上記のサイクルを繰り返す 11

発明の完成発明相談大学による権利承継の判断特許出願技術移転活動産学連携実務の問題点企業と交渉ベンチャー設立不成立成立発明の一次評価発明の二次評価このギャップは 産学連携の成功確率を下げ 人的 経済的コストの増大へ二次評価の内容を一次評価の時点に 如何に反映させるか想像現実

発明の完立成立成今後の産学連携実務の在り方 ( 例 ) 学ン継にのよ許チ術明二移業次判る出ャ相転とー談技発断特権願交設活成大渉ベ明利承立不動企相談発より現実性ある評価 戦略 実務への統一的反映 ( 例 ) 特許 法律事務所 ( 知財 出願 契約 訴訟等 ) 製薬企業現役 OB ( 開発 ライセンス等 ) 大学担当 研究者 PMDA 経験者 ( 薬事 ) ヘ ンチャーキャヒ タル ( ヘ ンチャー設立 ) 東京大学 TR 機構 Steering Science Committee(http://plaza.umin.ac.jp/tri-u-tokyo/ja/about/organization.html)

御静聴ありがとうございました 14