EHEST Component of ESSI European Helicopter Safety Team 有視界飛行での天候の脅威 FOR HELICOPTER PILOTS AND INSTRUCTORS TRAINING LEAFLET HE 13

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EHEST Component of ESSI European Helicopter Safety Team 有視界飛行での天候の脅威 FOR HELICOPTER PILOTS AND INSTRUCTORS TRAINING LEAFLET HE 13

2 >> 有視界飛行での天候の脅威

有視界飛行での天候の脅威 >> 3 目次 はじめに 4 1. 天候に関連する基準 5 1.1 気団 1.2 気圧配置 1.3 雲 1.4 視程 1.5 風 1.6 乱気流 1.7 降水 1.8 氷 1.9 雷 5 6 7 12 13 13 14 15 16 2. 気象レポートの解読 18 3. 新技術 20 4. ヘリコプターの最低気象条件 21 5. 運航要件 飛行の決定 5.1 飛行前計画 5.2 飛行前の脅威判断 5.3 飛行中の脅威判断 5.4 飛行中 無線の使用 5.5 冬季の飛行 23 23 24 25 25 25 6. 黄金律 26 7.用語と気象略語 27

4 >> 有視界飛行での天候の脅威 はじめに 本冊子は European Helicopter Safety Team (EHEST) の一組織であるEuropean Helicopter Safety Implementation Team (EHSIT) により作成されたものである EHSITは European Helicopter Safety Analysis Team (EHSAT) が実施した事故分析により明確化された実施勧告 (Implementation Recommendations:IRs) 1 の遂行を担当している EHSAT のデータによると パイロットが航空気象に関連した脅威 また気象が飛行安全に与え得る影響を正しく理解していることの重要性 2 が明らかになっている 航空気象予報はパイロットが予想される気象の脅威を認識し 飛行前計画の段階でその脅威を低減する戦略を持つ上で重要である しかしながら 気象予報は最も起こりそうな気象現象を述べるだけであるので パイロットがその持てる知識と経験を用いて予報の気象パターンから起こり得るその他の結果を考慮しなければならない 飛行中の気象が予報と違っていることは良くあることである それに直面した時 パイロットは予想されていなかった悪化する天候の脅威を認識し 機体が望ましからざる状態に陥る脅威を低減する戦略をタイムリーに実行しなければならない この小冊子はパイロットに対し航空気象の詳細な理解の根源的な必要性を再度訴えることを目的としている これには脅威の適切な判断やヘリコプターが VMC で飛行するための飛行前 飛行中 飛行後の各段階で採るべき戦略を含む 1 EHEST の分析レポート 欧州ヘリコプター事故 2006-2010 と 2000-2005 を参照のこと 2 更なる情報は HE 8 ヘリコプターのパイロット 教官及び訓練機関のためのスレット & エラーマネジメント (TEM) の原則 を参照のこと

有視界飛行での天候の脅威 >> 5 1. 天候に関連する基準 1.1 気団 気団 とは水平方向に数百 或いは数千マイルも伸び 垂直方向には時に成層圏に達するほどの規模で 移動しながらもその内部ではどの高度でも気温と湿度がほぼ均一に保たれている空気の塊のことである 飛行経路上で これにより何種類かの一般的な気象現象が発生する 熱帯海洋性 気団はアゾレス諸島方面で発生することが多いが 低高度で高い湿度を持ち一般に安定しているが視程は悪い 雲の上での視程は良好であることが多いが 低気圧の高気温部は低い層雲を伴うことが多くしばしば霧雨が降る また移流による霧の発生もあり得る 夏季の高気圧では通常 晴天か層積雲に覆われる 復路寒帯海洋 気団はカナダで発生し 大西洋の温暖な部分を通るが 同じような しかしより穏やかな気象現象を生む これらの気団は西欧で良く見られる 熱帯大陸性 気団は北アフリカやアラビアで発生し 安定した気象をもたらす これは深度があ る濃い靄の層で 雲は殆どない シベリアで発生する 寒帯大陸性 気団は晴天と突然の霜をもたらす 視程は一般に良好であるが降水 ( しばしばみぞれや雪 ) がある場合は例外である これはその気団が海上を移動しそこから水分を集めた場合に起こる 雲がある場合は積雲となることが多い 寒帯大陸性 気団は中欧やシベリアで発生する ; これらの地域で発生する熱気団は乾燥した夏をもたらすが 冬季の寒冷気団は雪を降らせる しかしながら通常 11 月から 4 月にかけて発生し 晴天と氷点下の大変低い気温をもたらす 寒冷海洋性 気団はカナダから直接運ばれて来るが 通常不安定で降水域の外では良好な視界を持つ しかし水分を集めている為に雲が多い 夏季には 晴天積雲 の雲底高度は高いかも知れないが 冬季には発達した積雲がしばしば発生し頻繁に激しい降水がある 条件を満たす 引き金 がある場合はサンダーストームも起こり得る 冬季の洋上と沿岸地域では積雲が発生することがある これは内陸地域が極低温で対流が発生しない場合でも起こる 北極海洋性 気団はノルウェイ北方での発生が予報され 寒冷で不安定な気団は洋上で発生する積乱雲を含み沿岸部に僅かに進入しそこにほぼ確実に降雪をもたらす 降水域外での視程は抜群であるが それは降雪で一気に悪化する 前線は二つの気団の境界線を表す それらの気団はしばしば 対照的な性質を持つ 例えば 一方の気団が寒冷で乾燥しているとすると 他方は比較的温暖で湿潤であるような場合である これらの相違が前線と呼ばれる一帯で反応を起こす訳である 前線の前後では気温が大きく変化する場合があるが これは温暖な気団が寒冷な気団と接触するためである 温度差は前線の 強さ を表す 例 非常に冷たい気団が熱帯性の温かい気団と接触すれば前線は 強く 或いは 強烈に なり得る しかしもし二つの気団の気温差が小さければ前線は 弱く なる訳である

6 >> 有視界飛行での天候の脅威 温暖な気団は温暖前線を追いかけ 寒冷な気団は寒冷前線を追いかける また前線に沿って雲と降水量が増えるが 特に顕著であるのは温かく湿潤な気団が寒冷な気団により持ち上げられた場合である その結果そびえ立つような積雲や積乱雲が発生するのである 1.2 気圧配置高気圧は穏やかな風が吹く落ち着いた天候をもたらす しかしながら 気団は徐々に安定度を増すが それに連れて地表での視程が着実に悪化する ( 同時に靄の層の最上部にある気温の逆転層が下がって来る ) これは気団が入れ替わらない限り続く 雲はないかも知れないが 特に冬季には層積雲が昼間に発生し 夜間には消散する 夏季には雲がないので ( 若しくは薄い積雲があるが ) 昼間は気温が上がり視程の悪化を和らげるかも知れないが 冬季には晴天により放射霧が発生し これが消えるのにはより長い時間がかかる 高気圧の内部では風は穏やかで風向きは時計回り ( 北半球の場合 ) であることが多い 気団は下降しているので雲の発生は減少し穏やかな風が吹き気象状況は安定する 谷 張出部 鞍部 高気圧の張出部は素早く去ることが多いが 安定した気象が再度しばらくは続くことになるので 不利な点が現れることは余りない 低気圧の移動は早く 強い風が吹く不安定な気象を作り出すが その効果は主として前線の生成と関わっている しかしながら 天気図に前線が記入されていないとしても 低気圧の中心には通常対流が生む厚い雲がびっしりとあり 低い雲底からは急な雨がよく降る

有視界飛行での天候の脅威 >> 7 低気圧の内部には上昇気流があり 低気圧周辺での風向きは反時計回り ( 北半球の場合 ) になる 気団が上昇し気温が下がるに連れ 水蒸気は凝結して雲になり恐らく降水につながる これが低気圧内部の気象が不安定な理由である 通常 低気圧には前線が伴う 低気圧の谷はしばしば複数の前線から成っている 急な雨の連続や 連続した降水の期間が通常ある 特に標高の高い土地やその周辺では低高度に多くの雲があり サンダーストームの発生を 促す 鞍部は二つの張出部と二つの谷に挟まれた地域であるが 秋冬には放射霧を 夏にはサンダーストームを生み易い 前線と気圧配置 Schneider Electric 提供 1.3 雲 1.3.1 地上から観察したパターン 雲を観察することにより遠方の気象が分かることがある 厚くなり続ける上層の雲が温暖前線の接近を示唆することは昔から知られている しかしながら 雲の変化は違った形で現れることが多い 良く見られるのは少量の層雲が帯状に表れるケースで これは前線の地表部分より遥かに先行する 温暖前線地表部分の 50 マイル前方で降る雨は 一気に激しく降ることが多い 徐々に強くなる雨ではない 図では丘陵地帯を超えてやって来る温暖前線が成す空の様子を表している これは丘陵により理論的な雲のパターンが覆されたケースである

8 >> 有視界飛行での天候の脅威 巻積雲巻層雲巻雲 積乱雲 高積雲 ( ひつじ雲 ) 高層雲 ( おぼろ雲 ) 乱層雲 層積雲 積雲 層雲 ( 霧雲 ) 種々の雲とその発生高度 Wikipedia より 寒冷前線の接近を見る機会は滅多にない それは温暖部の低い雲に隠されているからである しかしながら それが到達した時には雨が激しく降るであろうが 遠方には日差しが見えることがしばしばある これは寒冷前線の後方に晴天の地域があることを示唆している 現実にはすぐに晴れることはなくとも 寒冷前線の通過は気温 露点の低下に連れて地表での風向きが変化することで分かる サンダーストームは航空に数々の障害をもたらすが これには遠く離れた地域での地表の風向の変化を含み その変化は急激に拡散する 小型機のパイロットはサンダーストームから少なくとも 10 海里の距離を取るべきである 前線付近を通過する場合は特に 積乱雲が他の雲に 埋没して ( 他の雲の間に存在する為に視認できない ) しまうことがある しかしながら 遠方の独立した積乱雲は 金床 雲 ( 上面が平らな雲 ) の巻雲や垂直に大きく発達した積雲で見つけられることが多い そうした雲はやがてそれ自体が嵐を起こす雲に変化する 高高度の積雲型の雲 高積雲 は短時間に積乱雲に変化することが多い

有視界飛行での天候の脅威 >> 9 1.3.2 地上から雲底高度を推測する 地上から雲底 ( 雲の可視部分の一番低い部分 ) の広がりと高度を推し量ることは難しいことが多い 現在地で雲底高度を直接計測したデータが得られず 近隣の飛行場の気象情報を入手出来ないような場合 離陸して雲底高度の高さを自分で確かめたくなることが多い 雲底の眺め istockphoto.com より もし雲の下端がマストなどの障害物に接しているならば雲底高度は明らかである しかしながら 経験を積んだパイロットは風に流される千切れ雲を観察することで雲底高度を推定することが出来る 観察している千切れた雲同士の相対的な動きは風の速さと雲底高度に影響される もし気温と露点温度が分かっているならば 大体の雲底高度を計算することが出来る 気温と露点温度が接近している場合は大変低い高度で雲が発生し得ることを示している 1.3.3 空中から見た雲の発生パターン 飛行中であっても 地上で得られるのと同じ情報が通常入手可能であるが 近隣の雲が積乱雲の金床雲を隠すようなことはあり得る しかしながら パイロットが前方と周囲を見回すならば 潜在的な問題の予兆を見ることが出来る 暗くなる雲は降水を意味しており 虹はそれを証明している! 全般的に視程が良い場合 水平線付近で視程が変化するならばそれは現在飛行中の気圧高度より下に雲があるか その付近で降水があることを示している 自家用パイロットにとってはどちらも悪いニュースであるので降下すべきであるが 飛行計画の VFR 最低高度より下がらないようにする 水平線が明瞭に見えない場合 経路を変更し 降水している地域を避けるようにする 上から降って来るように見える カーテン状の 雲は降水を示しており これが水平線をぼやかしてしまうことがある 降水地域は急速に広がり得る

10 >> 有視界飛行での天候の脅威 全天を覆う雲 ( 多少の晴れ間はあっても ) の雲底からの降水を避けて飛ぼうとする前に安全確保のための他の代替案 ( 目的地を変更する 引き返す 着陸する ) を持つべきである 千切れた雲の下で良い視程がある場合 日が当たっている地面や雲の切れ間から差し込む日光はその方向にどれだけの雲があるかを示している 雲底高度が下がり始めた際にはこれを飛行経路変更計画の参考にすることが可能である 雲の形が障害の警告となることもある 主たる雲底の更に下に生じる雲は降水だけでなく 乱気流の存在をも示すことが多い 漏斗状の 雲は他の雲に埋もれた積乱雲の存在を示している可能性があり 避けなければならない 観察中に くるっと 巻いたり 鉤状に なる雲はその中と下に少なくとも中程度の乱気流があることを示している レンズ雲 : 滑らかで丸いか楕円形のレンズの形をした雲で しばしば山岳地帯に発生する Strangesounds.org より 積乱雲 : 密度が高い垂直に発達する雲でサンダーストー ムを伴い大気が不安定な時に発生する istockphoto.com より 棚状の雲 : サンダーストーム初期に発生 istockphoto.com より ロール雲 : 低高度に水平に発生する管状で比較的珍しい雲 Strangesounds.org より

有視界飛行での天候の脅威 >> 11 1.3.4 雲底高度とシーリング 雲によるシーリング は全天の半分以上を覆う最も低い雲を指す よってブロークン(BKN) やオーバーキャスト (OVC) は雲によるシーリングを構成する 雲底 は視認できる雲のうち最も低いものを指す これが雲によるシーリングを指すこともあればフュー (FEW) やスキャッタード (SCT) 雲のこともある 天候のチェックを終えた段階で パイロットは予定する航路上の各地点での雲底高度とシーリングがどれ位であるかの見通しを立てている筈である 予定高度で VFR を維持する可能性を検討する場合 通報された雲量と それが飛行中のどの段階であれ悪化する可能性がどれ位あるかを考える TAF や METAR が報じる雲底高度は飛行場の上空であることを忘れないようにしなければならない 飛行場上空の雲によるシーリングが 1,500 フィートであってもその近くにある丘をすっぽり覆っているかも知れない 雲に関する典型的な問題は それが低過ぎると地面やその他の障害物に激突せずに飛ぶことが不可能になる点である では どれだけ 低い と 低過ぎる のであろうか? それには幾つもの基準がある : どんな種類の飛行をするのか? 航路上の地形 障害物の状況は? 飛行する方面の天候は良くなっているか 悪化しているか? 目的地の天候は? 一般に地上 1,500 フィートかそれより低い雲によるシーリングがある場合 VMC での飛行には地形や障害物に特別の注意が必要になる 地上高度 1,000 フィート以下の VMC 飛行は地形を熟知した地域の局地的な飛行にしか適さない 雲の下の視程が良くとも 少しでも遠いところへ行こうとすると丘や鉄塔他の障害物に接近するようなことがきっと起こるであろう

12 >> 有視界飛行での天候の脅威 1.4 視程 1.4.1 上空から見た地面 ( 斜めから ) 靄の層の上を飛ぶのは良いことである しかし もし上空から斜めに地面を見た視程が減少するようであれば 降下の際の視程も悪化するものと考える 谷の合間には千切れ雲や霧が見えるかも知れない ; それらは恐らく 前方の放射霧の存在を警告している 巡航高度より下に形成されるどんな雲も潜在的な問題として扱わなければならない 最初の低い雲は丘の斜面に見えるものであるが その後に続く雲はより平坦な地形の上に生じる 千切れ雲はキャブレターアイシングが起こり易い条件であることを表している これは靄の最上層も同じである パイロットは常に低視界環境 (DVE) が起こり得る可能性を意識していなければならない 飛行中 前方でちょうど視界に入って来た地上の物体をチェックして その上空を通り過ぎるまでの時間を継続的に計測していれば もしその時間が短くなって来た場合には引き返すか 目的地を変更するか着陸すべきである 低高度では次の尾根の先の地形がその尾根を越えるまでに見えていなければならない もし近づいているにも関わらず同じ物体がずっと視界の先端に見えていたとしたら 霧塊か大変に低い雲があるということである もし雲によるシーリングが十分に高くとも 飛行には十分な視程が必要である これは機体を視認操縦し 航法を行い他の航空機を避ける為である 航空気象予報は地表での視程を通報してくれるが 現実の空中の視程は飛んでみなければ分からない 夏場の気温が高く高気圧に覆われた日には注意が必要である 靄により視程が驚くほど悪化するからであり これは太陽に向かって飛行する際に特にそうである 冬場には低い太陽に向かって飛行する際にやはり驚くほど前方視程が悪化することがある 1.4.2 地表の視程 ( 水平方向 ) 天候 ( 降水 ) と視程には密接な関係があることには触れておかねばならない 弱い雨や霧雨は視程にほとんど影響を及ぼさないであろうが 強い霧雨により視程が 2,500m 未満になることがある 水平視程は以下が存在している場合に悪化する : 霧 ( 放射 移流 ) 霧雨 降水 ( 雨 雪 ) 逆転層 ( 浮遊する粒子 )

有視界飛行での天候の脅威 >> 13 1.5 風高度 2,000 フィートで予報される傾度風の風速は恐らく非常に正確であろうが 変化はあり得る 地表の風は地表との摩擦により生じる抵抗で風速が減じ風向が変化する 対照的に 丘 森林 谷は強制的に風を減速 加速させ 風向を変える (HE7 山岳 丘陵地帯におけるヘリコプターの運用技術 第二章参照 ) 地表での風速は吹き流し 煙 GPS 風力発電所 水上のウインドレーンなどで分かることがある ウインドシアや風傾度は大気中で比較的短距離の間に生じる風速や風向の違いにより生じる これは垂直方向 水平方向に生じることがあるが それは風速 風向の差が垂直 水平に生じた場合であり 大気中で生じる乱気流の最も多い原因である 通常 ウインドシアは大変小さな距離の間で生じるミニスケールの気象現象であるが 中大規模の気象現象に伴い生じることがある スコールラインや寒冷前線である ウインドシアの原因がマイクロバーストであることもある マイクロバーストは特別に強烈で局所的な下降する空気の柱である 結果として地表では乱暴に空気が噴き出すことになる サンダーストームの存在に関係し その直径は 3 マイル以下である マイクロバーストには 2 つの基本的な種類がある :1) 強い降水を伴っていればウェット マイクロバースト 2) 降水を伴わないドライ マイクロバーストである マイクロバーストは発生して 3 つのステージを経る ダウンバースト アウトバースト そしてクッションステージである マイクロバーストは地表に大きな被害をもたらし 時に生命の危機を生じることがある 強烈な直線の風は竜巻のそれに似ているが 竜巻が持つ旋転がない 航空機 特に着陸中の航空機には非常に危険である これは突風の前線により生じたウインドシアによるものである 1.6 乱気流乱気流は小規模 短期 ランダムで頻繁な風速の変化であると定義できる これは機械的な乱気流 ( 低高度で平坦でない地表により生じた空気の摩擦により ) か上昇気流乱気流 ( 中層域での気温の不安定により ) のどちらかである 局所的な地形を読み取ることが乱気流を予測する上で大切である 例えば 10 ノットの風でも局所的な地形に吹いた場合 難しい乱気流になり得る 35 ノットを超える風はしばしば揺さぶられる状況を示している

14 >> 有視界飛行での天候の脅威 乱気流は飛行中のヘリコプターの挙動に影響を与え 後退側ブレードストール ボルテックス リング LTE の脅威を増加させる これは対地 対気速度が乱高下することに由る シーソー型ローターを備えたヘリコプターではこれらに加えてメインローターのマストバンピングやローター / 尾部接触の危険がある 乱気流の危険度合い ; 軽い乱気流 : もっとも軽度なもので 軽微な姿勢と / あるいは高度の乱れを起こす 中程度の乱気流 : 軽い乱気流に似ているが より高い強度を持つ 姿勢 高度に加えて速度の変化が起こり易いが 機体のコントロールは常に保たれた状態にある 激しい乱気流 : 姿勢と高度が大きく急激に変化し 対気速度が大きく増減する 瞬間的に機体のコントロールが失われることがある キャビンの固定していないものが動き回り 機体構造への損傷が起こり得る 極度の乱気流 : 機体構造を損傷し得るもので 機体のコントロールは継続的に喪失しリカバリーが不可能な場合がある これらに加え ヘリコプターのパイロットは低高度で以下のタイプの乱気流に遭遇することがあり得る : 気温逆転層 前線による乱気流 山岳波乱気流 サンダーストーム乱気流 乱気流は何処にでも存在し 予告なしで遭遇し得る その為 常に想定していなければならない 丘陵地帯 山岳地帯では特にそうであるが それは山岳波乱気流が頻繁に起こるからである パイロットは常に操縦装置に手を添え 乱気流に備えていなければならない 乱気流に遭遇した場合には飛行規程に掲載された 乱気流対気速度 まで減速する 1.7 降水降水は飛行に悪影響を与え得るので脅威として扱わねばならない 考慮の対象となる降水の種類は雨 氷晶雨 雪 霧雨 雹 みぞれである

有視界飛行での天候の脅威 >> 15 1.8 氷定義では氷は固体となった水を指し 透明な固体の結晶である 液体からの遷移は水が 0 未満に冷却された時に起きる 氷が出来やすい大気の状態とは : 気温 10 C であり目視できる水分がある場合 ( 視程が 1 マイル以下の霧 雨 霧雨 雪等 ) 気温 10 C で露点が気温より 3 C 以下の場合 飛行中 機体に生じるアイシングは過冷却された水分が機体外部に衝突した際に凍ることで生じる 外気温が 0 C 未満で雲中では液体の水分が存在している 気温が 0 C に近い場合 雲はそうした水滴のみで出来ている場合があり それらの中には氷の結晶は殆ど 或いはまったくない 気温が低下するに連れ 水滴に混ざって氷の結晶が相当数存在している可能性が高まる 事実 氷の割合が増えるに連れ 液体の水の割合 (LWC) は減少する傾向があるが これは液体の水が氷になるからである 気温が約 -20 C(-4 F) 未満となると殆どの雲は氷の結晶のみで成り立っている 機体構造に生成するアイシングにはいくつかの種類がある : 透明な氷 若しくはガラス氷はしばしば透明で滑らかである 過冷却された水滴や氷晶雨が機体表 面に当たった瞬間に凍りつかなかった場合に起きる しばしば 角 や突起を形成し 空気の流れに対して突き出す形になる ライムアイス ( 樹氷 ) はごつごつしており 乳白色で濁っている 過冷却された水滴が機体表面に衝突し急激に凍る際に生じる 翼前縁のよどみ点に沿って生じることが多く 翼型に沿う形で生成される 濁った 混ざった氷は透明な氷とライムアイスが合わさったものである 霜状氷は航空機が静止している間に機体の防護処理されていない表面で凍った際に生じるものである これはそのまま飛行を試みた際には危険である 翼表面の境界層を乱し 結果として空力的な失速を生じさせ これが抵抗を急激に増加させ離陸を危険 若しくは不可能にすることがある SLD 着氷は過冷却大型水滴により氷が生成された場合を指す これは透明な氷に似ているが 水滴のサイズが大きいために機体の防護処理されていない表面にまで進展し より大きな氷を 通常より短時間で生じる

16 >> 有視界飛行での天候の脅威 1.9 雷 落雷は大気中で眩しく光る放電現象で 雷雲の中 雲と雲の間 雲と地面の間で起きる その大半は積乱雲で生じ地面に達して終わる これは対地雷 (CG) と呼ばれる これより少ない種類の雷として上向きの対地雷 (GC) があるが これは地表の高い物体から発し雲に達する雷である 世界中で発生する雷の 25% は大気と地表の物体間で起きる 殆どの落雷現象は雲中 (IC) か雲間 (CC) で起きており 放電は大気中の高高度でのみ発生する 一度の雷は 落雷 である これは複雑な多段階のプロセスであり そのいくつかの段階の全容は解明されていない 殆どの対地雷 (CG) 落雷は一か所を 雷撃 するだけであり これは ターミネーション と呼ばれる 主たる導電通路となる眩しい光の筋は ストライク と呼ばれ その直径は約 1 インチ程しかない しかし極度に明るいために肉眼や写真ではもっと大きく見えるのである 雷による放電は通常何マイルの長さにもなる しかしある種類の水平方向の放電は数十マイルを超える長さの場合がある 放電現象の全過程は数分の一秒で完結する その初期の生成段階や伝播段階は暗いので肉眼では観察できない 多くの雷を伴う強烈なサンダーストーム istockphoto.com より

有視界飛行での天候の脅威 >> 17 統計的な世界落雷地図 Vaisala より

18 >> 有視界飛行での天候の脅威 2. 気象レポートの解読 パイロットが飛行前に起こるであろう事態を考慮したとしても 気象予報士が持つ情報全てを把握することは出来ない よってヘリコプター用の気象予報なしに決して飛行してはならない 飛行経路の予報をチェックし 通過する予定の全飛行場の TAF METAR をチェックし 代替として使えそうな飛行場も残らずチェックする 現実の天候を予報と照らし合わせる : もし予報より悪化していたとしたら 次には何が起こるか? TAF は予報であり METAR は気象レポートである パイロットはこれらを読んで解読できなければならない (METAR を平易な言葉に直してくれるウェブサイトがある ) 例として 覚えておくべきことは TAF/METAR では雲底高度はその報告をしている飛行場の上空での観測値であるということである これを踏まえた上で 計画した航路の予定高度での雲量を予測するようにする TAF の値は単一の予報ではなく 幅を持った値であり特定の時間帯に起こる可能性が最も高いものを表している この幅は ICAO により定義されており TAF に設定された変化郡は使用された値の幅を超えた値を予報する場合に使用される こうした理由で 一度出された予報が訂正されることは変更の基準となる数値を超えた場合に限られる 予報に含まれたどの要素の特定の値は何れも予報が定める時間帯に その要素が取る可能性が最も高い値と理解するべきである 同様に 何かの現象が起こるとされる時間や気象の変化が含まれている場合は その現象が起きる確率が最も高い時間と理解すべきである TEMPO OCNL という略語で表される予報や ISOL でさえ飛行にほぼ確実に影響を及ぼす これは風の予報に含まれる突風も同じである 目的地に着陸できない場合 常に代替飛行場に向かう準備をしておかなければならないが 起こり得る気象上の問題を心に留めどの代替飛行場が最適かを判断する もし TAF に不確定な要素が含まれる場合 例えば天候の変化の時間が正確に予報されていなかったり ʻPROB30ʼ や ʻPROB40ʼ といった確率を交えて時間帯が予報されている場合であるが 通常より広い範囲の気象予報をチェックするようにする TAF や METAR は特定の気象現象が特定の地域をいつ通過するか 天候がいつ回復あるいは悪化するかに関し良い指標となってくれる 特定の地域の TAF や METAR を時間をまたいで複数回チェックすることで 気象のパターンが明らかになるであろうし その意味で TAF METAR は非常に利用価値がある気象情報のソースと言える しかし これにその他の入手可能な気象情報を加えることで 予想される気象条件の より包括的なイメージを描くことが出来るようになる 例えば 降水地図や降雨レーダーの画像を見ることで降雨やサンダーストームの激しさやどのように発達しているかを理解することが出来る また 地表の気圧配置図を用いることは飛行の 4 日前程度から有効である これにより前線とそれにまつわる高気圧 低気圧の現在と移動するであろう位置が分かる 気象予報の技術の一つは 特定した地域にいつ前線が到達するか またそれらが他の気団とどのように相互干渉するかを予報することである

有視界飛行での天候の脅威 >> 19 これらの天気図を用いて これから起こるかも知れない気象現象の全体図を最初に理解しておくことは大切なことである 例えば南から欧州に到達する気団は乾燥していることが多いが 靄を含み汚染されていることがあり得る 南西からの気象は湿気を含み 雨と低い雲を伴う 対して北西からの気象は寒冷前線に従い流れ込み澄んだ空気を運んで来るがにわか雨の危険が高い 前線や対流に伴う気象や霧がある場合 特定の地点でどのような気象が起きるかを正確に予想することは難しいことが多い 気象を注意深くチェックし 天候が予想より悪かった場合のため複数のシナリオでの脱出オプションを考えるようにする 基準となる高度を計算しておき 気象条件によりそれより低い高度を飛ばざるを得なくなった場合 引き返すか代替飛行場に向かうように決めておく

20 >> 有視界飛行での天候の脅威 3. 新技術 近年 安全性向上のための新しいツールが利用可能になっている これは現在と予報された雲底高度と視程 またその他の低高度の危険な気象現象を毎日 24 時間表示するもので パイロットはこれを利用していつでも迅速に go/no-go 決定が出来る 加えて パイロットは同様に最新のツールで飛行経路上の種々の降水の状況をリアルタイムで知ることが出来る : 雨 雪等である 最新の技術は オンラインのタブレットやスマートフォンなどであるが 地上のオペレーターやある いはパイロットから事前に気象サービス専門家に飛行経路を送ることが出来る そのような飛行計画アプリケーションとのインテグレーションを利用すると 飛行中に航空図に気象情報を投射したり気象警報やアラートを受け取ることが可能で これにより危険な地域を避けることが出来る

有視界飛行での天候の脅威 >> 21 4. ヘリコプターの最低気象条件 SERA( 標準欧州航空規則 ).5001 の VMC での視程と雲からの最低距離の規則 表 S5-1 に VMC での視程と雲からの最低距離が掲載されている TABLE S5-1 (*) 高度帯空域クラス空中視程雲からの距離 平均海面高度 3,050 m (10,000 ft) 以上 A(**) B C D E F G 8 km 水平に 1,500 m 垂直に 300 m (1,000 ft) 平均海面高度 3,050 m (10,000 ft) より低く 900 m (3,000 ft) より高い 若しくは地表より 300 m (1,000 ft) 高い ( その高い方 ) 平均海面高度 900 m (3,000ft) 未満 若しくは地表より 300m (1,000 ft) 高い ( その高い方 ) A(**) B C D E F G 5 km 水平に1,500 m 垂直に300 m (1,000 ft) A(**) B C D E 5 km 水平に1,500 m 垂直に300 m (1,000 ft) F G 5 km (***) 雲から離れ地面が見えて いること (*) (**) 遷移高度が平均海面高度 3,050 m (10,000 ft) より低い際には 10,000 ft に代わり FL 100 を用いること クラス A 空域での VMC 最低条件はパイロットへのガイダンスとして含まれているだけであり クラス A 空域での VFR 飛行が許可されることを意味し ない (***) 監督省庁がその旨指定した場合に限る : (a) 空中視程が1,500m 以上ある場合には次の飛行は許容される :(1) 飛行速度 140 KIAS 以下 障害物や他の航空機を発見し衝突を回避する時間的余裕があるように 若しくは (2) 他の航空機との遭遇の可能性が低い場合 航空機の往来が限られている地域や低高度での航空作業を行う場合 : (b) ヘリコプターの飛行は空中視程が1,500mより悪くても800m 以上あれば許容される これは障害物や他の航空機を発見し衝突を回避する時間的余裕がある速度で運用する場合に限る AMC1 SERA.5010(a)(3) - コントロールゾーンでのスペシャルVFR ヘリコプターパイロットにより適用される速度制限 140 ktの速度制限は1,500mより低い視程で飛行するヘリコプターが用いるべきではない そのような場合はパイロットの判断で現実に即したより低い速度で飛行すべきである

22 >> 有視界飛行での天候の脅威 GM1 SERA.5010(a)(3) コントロールゾーンでのスペシャル VFR ヘリコプターパイロットにより適用される速度制限 140 kt は許容される絶対的な最高速度と考えるべきであるが それは視程が最低でも 1,500m ある場合 に許容できる安全レベルを維持するためである 場合によってはより低い速度で飛行すべきであるが それには飛行地域の状態 搭乗しているパイロットの数と経験などを基準にし 以下の表をガイダンスとして用いて決定する 視程 (m) 推奨される最大速度 (kt) 800 50 1500 100 2000 120 注意 : いくつかの地域では ( 例としてはロンドン CTR)VFR または SVF で飛行する場合 視程に関してはその空域独自に SERA が定めるよりも厳しい最低 条件を設けているところがある パイロットが 500 フィートルールを常に遵守しなければいけないことは当然である

有視界飛行での天候の脅威 >> 23 5. 運航要件 飛行の決定 5.1 飛行前計画 EHEST 発行のリーフレット HE1 安全に対する配慮 で概説した飛行計画と準備の基本原理はその まま適用される Appendix 1 の飛行前チェックリストを参照されたい 飛行に至るまでの数日間に気象情報をチェックしておくことは気象がどのように変化しているかを理解する上で役に立つ 飛行当日に入手可能なすべての情報を駆使することが 効果的な go / no-go 決断と飛行中の気象変化を予測する一助となり得る 現実的に天候は急激に変わり得る CAVOK は短時間で OVC200 に変わり得る よってバックアップの計画を持つことが非常に大切である 飛行の数日前に計画をする場合 通常の天気予報が主たる情報源になる 飛行の日が近づくにつれ 航空気象予報を参照し飛行の決定をしなければならず 確かな情報源から航空気象情報を得るようにしなければならない これには気象総観図 SIGMET AIRMET や通過する予定と代替全飛行場の TAF と METAR を含む 現実の気象を予報と比較する : 現実が既に予報より悪化していたとしたら これから何が起こるか? 予報の内容に従い ( 難解な略語はインターネットで解説が入手可能である ) 慎重に考慮し GO / NO GO 決定を下す 高い標高の土地を超えて飛行する可能性が高いのであれば その場所が雲に覆われていた場合を想定して事前に迂回路を設定しておく PROB の予報を吟味する これは不確定要素を含む TEMPO OCNL BECMG で表される予報や ISOL でさえ ほぼ確実に飛行に影響を与える これは風の予報に含まれる突風も同じである 目的地に着陸できない場合 常に代替飛行場に向かうか引き返す準備をしておかなければならない 燃料計画は予報された気象状態を考慮し 燃料搭載量に関して適用される規制に応じて行わなければならない 飛行中 パイロットは常に燃料の状態をモニターしていなければならない ヘリコプターにおいては エンジンにアイシングを生じる条件に留意し RFM / POMに従いキャブレターヒートかエンジン防氷装置を使用する キャブレター空気温度と外気温度計を計器スキャンに加えるようにする 湿潤な天候では風防や窓の結露に 特に濡れた服を着た乗客を乗せる場合は注意する ウェスを携帯し離陸前に風防の結露を拭き取る 注意 : 航空機によっては キャビンの暖房の使用開始時に風防に結露を生じるものがある 目的地が飛行場や関連した気象施設から遠く離れている場合 パイロットは気象総観図 TAF や METAR で提示された情報を挟み込む必要がある 可能であれば着陸予定地にいる人に電話をして現地の気象情報を得ることを推奨する 情報は往復双方の行程に対して集め これには遅れが生じた時のため 暗くなり始める時間を含めること 気象情報を得られる電話番号を控えておくこと または App を用意しておくことは大切である これは着陸地点で最新の気象情報を入手するためである

24 >> 有視界飛行での天候の脅威 5.2 飛行前の脅威判断 VMC での飛行を計画する場合 明らかに脅威として捉えるべき要素があり これらは離陸までに考慮 に入れる必要がある ローカルの飛行であっても パイロットは飛行前に周辺の一般的な気象状態について適度な理解をしておくべきである これは飛行中に起こり得る気象の変化に関して特にそうである これには飛行当日の全般的な気象現象の関するものと 離陸した飛行場以外の目的地がある場合はその目的地と代替飛行場に関する予報双方を含むべきである 究極的にはこれがパイロットの飛行が安全か否かの判断をする際の情報となる 以下に考慮するべき要素の幾つかを述べる : 離陸前に十分な準備をするのに必要な時間をかけること ( 全ての飛行に関し天候をチェックすること パイロットは通常 長く複雑な飛行に関し特別に注意を払うものであるが 現実には悪天候下での多くの事故はローカルの飛行で起こっているのである 慣れ親しんだ空域での短い飛行であるという理由で誤った安心感を持つことは避けなければならない ) 飛行経路や目的地の気象状態が VMC の最低条件以上であるか? 搭乗機はどのような装備を積んでいるか? パイロットは必要とされる飛行の有効 / 最新要件を満たしているか? 航空図に加えてどのような航法機器を搭載しているか (GPS タブレット 無線航法機器 ) ソフトウェアの更新はされているか パイロットはそれらの操作の訓練を受けているか? 飛行は地面から安全な高さで計画されているか 経路の最低安全高度は計算されているか? 経路に人口が少ない郊外の地域や水面や雪原などの視覚的情報が少ない地域の上空は含まれているか? 夜間であれば 月が出ていなかったり星や月が見えにくい夜ではないか? 経路上に多量の低高度の雲があるか ある可能性が高いか (4/8 8/8 SCT / BKN / OVC)? 経路上の視程が悪いか 悪い可能性が高いか : すなわち安全飛行に必要とされる最低かそれに近い視程 ( これは法規の規程を遥かに上回っていることがあり得る )? 視界が悪化し DVE に陥る可能性はあるか?

有視界飛行での天候の脅威 >> 25 5.3 飛行中の脅威判断 離陸してから新たな脅威要素が加わることがあり得る 周囲が暗い 水平線を視認できないか 良くてうっすらと見える程度である 天候悪化により DVE に陥った 降水や結露により操縦席からの視界が遮られている 雲底が下がって来たため計画していた安全高度を割って降下を強いられた これらのどの脅威でも パイロットはまず減速して地面を視認できる状況を維持すべきである ( 速度は V Y を推奨 ) その後に必要であれば代替飛行場へ向かうか 引き返すか 予防的に着陸するかを選 択する 5.4 飛行中 無線の使用飛行情報サービスが SIGMET と AIRMET のアドバイザリーに加え METAR SPECI TAF を提供してくれるが これらはパイロットが必要とするものである 大きな飛行場は ATIS (automated terminal information service) を送信している VOLMET は公表された周波数で多くの気象情報をまとめてくれる 情報の最後にある TREND は低下する雲底高度や悪化する視程の情報を述べる : これらは全般的に悪化する天候を示す 5.5 冬季の飛行留意しなければならないのは 汎用航空向けの軽ヘリコプターでアイシング状況下での飛行を認められているものはないということである 降雪状態での飛行には通常 スノーガードの装着が要求される :RFM / POM を参照すること 気象予報を利用し降雪やアイシング状況を避けて飛行すること 雪 氷 霜はヘリコプターから完全に除去して飛行に臨むこと 氷ははがれて人や器物に損害を与える危険があり 雪はエンジンに吸い込まれエンジン停止を起こすかも知れない アイシングが発生することでローターブレードの効率が悪化するだけでなく ヘリコプターの重量を増し重心位置に大きな影響を与えることになる 季節に応じた服装をすること ヒーター故障や強制的 / 予防的に着陸した際に備えて温かい服装をしておくこと 飛行中に着ることは出来ない! 雪により慣れ親しんだ地表のランドマークが見えなくなり 航法が難しくなる : 道路 川 鉄道線路は雪に埋もれて見えなくなることがある 雪に覆われた視覚情報が少ない地形が雲に覆われた空に溶け込む時 ディスオリエンテーションが起こり得る ( 特に全天を覆う高い雲の場合 ) 水平線が見えなくなり あっという間にディスオリエンテーションに陥り得る

26 >> 有視界飛行での天候の脅威 6. 黄金律 気象のパターンとそれらが飛行に与える影響を理解する 航空気象予報を必ず入手する VMC 飛行を始める また継続するのは 入手できる情報が離陸地点 経路上 目的地のすべてで気象条件がVMCの最低条件以上であることを示している場合のみにする 予報の PROB TEMPO OCNL ISOL に注目し熟慮する 実際の天候は予報より悪くなることを予測する 実際の天候を予報に照らし合わせてチェックする 代替飛行経路 代替飛行場を特定する 十分な燃料を搭載する 周辺の空中と水平線をスキャンし問題がないか確認する 局所的な地表の風に注意する 飛行中に気象情報をチェックする 代替飛行場に向かう 引き返す 着陸する準備をしておくこと これはバックアップの計画が常に用意されていることを意味するが 気象条件の悪化により予定していた飛行の完結が不可能になった場合に備える 天候に関する方針決定のスキルを常に磨く これは飛行計画中 飛行中双方に当てはまる 例として TV で天気予報を見る 飛行がない場合でも METAR TAF を常にチェックする 気象レーダーや気象衛星の画像をチェックする 他のパイロットと話をする 書籍や記事を読んだりセミナーに参加する 等が挙げられる

有視界飛行での天候の脅威 >> 27 7. 用語と気象略語 用語集 : 高気圧鞍部低気圧 METAR 引出部 TAF 谷 Volmet 周辺より地表の気圧が高い領域 二つの尾根 二つの谷に挟まれた地域 周辺より地表の気圧が低い領域 MÉTéorologique Aviation Régulière ( 英語 : Aviation Routine Weather Report. 定時飛行場実況気象通報式 ) 二つの低気圧領域に挟まれた気圧が高い部分 Terminal Aerodrome Forecast( 飛行場予報 ) 二つの高気圧領域に挟まれた気圧が低い部分 Meteorological information for aircraft in flight(volmet 放送 ) 気象略語 : ISOL OCNL PROB BECMG TEMPO Isolate( 孤立した ) Occasional( 時々起る ) Probability Forecast( 確率予報 ) サンダーストームその他の降水現象が起こる確率 Becoming(~ 天候が継続的に変化する ) BECMG グループは気象条件が長い時間 通常 2 時間をかけて徐々に 変化する際に用いられる Temporary( 天候が一時的に変化する ) TEMPO グループは風 視程 気象 空の状態の変化が一時間以内に 限り 予報が有効な時間帯の半分以下に起こる場合に用いられる

28 >> 有視界飛行での天候の脅威 NOTES

NOTES 有視界飛行での天候の脅威 >> 29

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