関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号,2012,pp.157-180 ISSN 0287-6817 研 究 ノート メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 広 告 を 可 能 とさせる 社 会 的 環 境 条 件 に 関 する 検 討 資 料 水 野 由 多 加 Public and private spheres among media; Investigative documents on social fundamentality to allow advertising can be done Yutaka MIZUNO abstract Some contemporary social phenomena have been occurred concerning allowance and conditions that can be advertising done, according to the changing new socio-technological environments and mass media. These are some investigative documents edited by the author to prepare the further discussions. Keyword: Advertising, Advertising and society 抄 録 新 しい 社 会 情 報 環 境 とマス メディアの 変 化 によって 広 告 を 可 能 とさせる 社 会 条 件 に 関 わる 今 日 的 な 社 会 現 象 が 生 起 してきた 本 研 究 ノートは 今 後 の 議 論 のために 準 備 編 集 された 調 査 資 料 である キーワード: 広 告 広 告 と 社 会 157
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 はじめに 多 くの 広 告 は 営 利 私 企 業 によってなされる 端 的 に 言 えば 広 告 は 自 社 の 製 品 を 売 り 手 が 語 るのだから 誇 張 や 演 出 はありえること と 思 いながら 日 常 広 告 に 接 することになる 方 や その 際 に 利 用 されるマス メディアは 多 くの 人 々に 共 通 の 社 会 的 環 境 である 情 報 環 境 であり 様 々に( 程 度 の 差 はあるが) 公 共 性 を 期 待 されている 端 的 に 言 えば 新 聞 には 嘘 は 書 いていない と 日 常 的 に 思 えるのは その 期 待 のひとつである このように マス メディアを 利 用 した 広 告 は 私 的 な 営 利 を 目 的 に 公 共 に 開 かれ た 仕 組 みを 利 用 するという 不 可 避 な 二 面 性 を 社 会 的 に 持 つことになる 本 稿 では こうした 二 面 性 をめぐる 論 点 を ネット 環 境 も 視 野 に 入 れた 今 日 的 なメディ アと 広 告 実 践 の 中 の 社 会 現 象 事 例 を 基 に 列 挙 する そして その 予 備 的 考 察 の 中 からなか なか 論 じられることのなかった しかしながら 基 底 的 な 広 告 を 可 能 とさせる 社 会 的 環 境 条 件 にアプローチしようとするものである 1. 広 告 退 治 (Ad buster) 運 動 が 日 本 では 未 だ 起 きていないこと 東 京 銀 座 やアメリカのニューヨーク タイムズスクエアなど 都 会 の 風 景 の 中 に 広 告 看 板 は 自 明 である しかしながら もし 広 告 を 取 り 去 れば と 考 えれば ヨーロッパ 系 の 景 観 を 厳 しく 守 る 都 市 が 逆 に 思 い 浮 かべられる 教 育 学 者 の 上 杉 嘉 見 (2008)は アメ リカ 的 な 考 え 方 とフランス 的 な 考 え 方 が 交 錯 するカナダにおける 反 コマーシャリズム 運 動 として 広 告 に 関 して 学 校 内 問 題 と 都 市 の 景 観 問 題 の 2 つを 記 述 理 解 している 都 市 の 景 観 問 題 について 上 杉 は 広 告 退 治 (Ad busters) (カナダ バンクーバー 1989 年 以 降 同 名 の 雑 誌 を 刊 行 )を 専 門 のメディア リテラシー 研 究 の 中 で 紹 介 する 広 告 退 治 とは たとえば 具 体 的 には 都 市 の 道 路 を 占 拠 する 商 業 主 義 からの 解 放 を 訴 える ストリートを 取 り 戻 せ 運 動 がある 上 杉 によれば この ストリートを 取 り 戻 せ 運 動 は 人 々が 目 にするものを 誰 が 決 めるべきなのか と 都 市 景 観 の 所 有 者 計 画 者 決 定 者 について 広 告 主 の 大 々 的 な 広 告 展 開 を 批 判 するものとしている 大 々 的 な 広 告 展 開 とは あらゆる 公 共 的 な 場 所 で 広 告 キャンペーンを 展 開 すること 多 くの 店 舗 を 構 えていること そうした 行 為 が 黙 認 されていることを 指 し 都 市 というメデ ィアを 介 して 広 告 主 以 外 の 他 の 存 在 がコミュニケーション 上 不 平 等 なあり 方 であると する こうした 広 告 主 企 業 の 多 くは ナイキ シェル マクドナルド ギャップ などで あるが それらが 広 告 やロゴで 都 市 空 間 を 占 拠 する 行 為 に 批 判 的 な 姿 勢 をとるだけでなく 158
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) 武 器 製 造 遺 伝 子 組 み 換 え 人 権 問 題 などの 企 業 活 動 そのものについての 倫 理 にまで カ ナダのメディア リテラシー 教 育 の 視 野 が 及 んでいることを 上 杉 は 教 材 の 内 容 を 挙 げて 指 摘 する トロントにおける 同 種 の 運 動 には 銀 行 の ATM に 借 金 を 楽 しんで 貧 困 を 無 視 せ よ といったステッカーを マクドナルドのカウンターには 商 品 はあなた 自 身 といっ た 皮 肉 を 込 めたメッセージを 貼 っていく 運 動 がある と 紹 介 される またトロントでは トイレの 個 室 にまで 取 り 付 けられている 映 像 広 告 の 画 面 があるとされ ここに 逃 げ 道 は ない とペンで 書 きこむ 運 動 がなされる さらに 店 のショウ ウインドウには いつから 私 たちの 目 は 賃 貸 されてしまっているのだろうか? と 書 かれたステッカーを 貼 る これ らの 運 動 は 本 来 公 共 的 であるべき 都 市 空 間 の 企 業 の 私 的 な 商 業 活 動 による 独 占 と カ ナダのメディア リテラシー 教 育 の 中 では 解 されるのである こうした 社 会 運 動 は 地 理 的 に 隔 たっていて 時 空 間 を 共 有 しない また 文 化 圏 の 異 なる 者 には 報 道 を 通 じてもなかなか 情 報 に 接 する 機 会 がない 2012 年 1 月 1 日 付 けの 朝 日 新 聞 ( 9 面 )の 特 集 記 事 は 日 本 語 でこの 件 に 触 れた 稀 有 な 資 料 ともなった その 記 事 に よれば 雑 誌 アドバスターズ は 隔 月 刊 誌 現 在 約 12 万 部 を 発 行 する 発 行 人 のカレ ラースン(Kalle Lasn) 氏 は2011 年 9 月 17 日 の 草 の 根 デモ 米 ウォール 街 占 拠 ( 反 格 差 社 会 運 動 )の 呼 び 掛 けによって 注 目 を 集 めた とされる 他 にもカレ 氏 は 無 買 日 (No buy day) 運 動 として30 秒 のテレビ CM を 制 作 米 加 日 他 のテレビ 局 を 訪 ね 今 日 買 わないことで 過 剰 消 費 にストップを との CM であることを 説 明 したところ 日 本 では TBS( 東 京 放 送 )がオンエアを 断 った と 同 記 事 では 氏 のイン タビューの 形 で 紹 介 している また デジタル 解 毒 週 (Digital detox week) という 運 動 では 2011 年 4 月 18 日 から25 日 までの 一 週 間 一 切 のデジタル 機 器 を 使 わないよう 呼 び 掛 ける 運 動 も 行 った と 同 誌 HP(http://www.adbusters.org/)ではされている この 種 の 運 動 は 日 本 では 顕 在 化 していない せいぜい 広 告 ポスターへの 落 書 き とい ったレベルの 散 発 的 例 外 的 な 事 象 である しかしながら 他 方 で ニコニコ 動 画 のような オリジナルの 動 画 に 野 次 を 入 れる 楽 しみが 一 般 に 享 受 され また 佐 々 木 (2011)の 認 識 するブログ SNS 等 におけるキュ ーレーター( 学 芸 員 ) 認 識 が 有 効 なネット 状 況 においては また 違 った 解 釈 の 可 能 である ように 思 われる キューレーターとは 引 用 編 集 によるオリジナルの 楽 しみ 方 であり 佐 々 木 によれば 無 数 の 情 報 の 海 の 中 から 自 分 の 価 値 観 や 世 界 観 に 基 づいて 情 報 を 拾 い 上 げ そこに 新 たな 意 味 を 与 え そして 多 くの 人 と 共 有 すること である 意 味 付 与 共 159
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 有 の 中 には 揶 揄 (やゆ) 風 刺 批 判 などの 引 用 側 編 集 側 また 見 る 側 ( 多 くのページ ビューや 様 々な 賛 意 の 表 明 支 持 コメント が 可 能 である)の 主 張 があり 得 る 誰 もがパロディーを 楽 しめる 環 境 があり それをまた 誰 もが 観 察 可 能 な 環 境 が 現 出 してい るのである デモンストレーション(いわゆる 日 常 用 語 で 言 う デモ )も フランス 革 命 以 来 の 暴 力 革 命 につながるような 過 激 さではなく 近 年 仮 装 行 進 楽 器 を 演 奏 しながらの 行 進 といったカーニバル 的 なものになっているという( 伊 藤 2011) この 文 脈 に 照 らせ ば 広 告 退 治 は 現 代 の 日 本 社 会 においては ニコニコ 動 画 への 批 判 的 つまり 退 治 的 書 き 込 み ということになるかもしれない たしかに 若 林 (2010)が 検 討 する 違 反 広 告 物 を( 落 書 き 消 しと 並 べて) 行 政 と 市 民 (ボ ランティア 団 体 NPO など)が 協 働 して 解 決 する という 文 脈 に 一 部 重 なりを 持 つ Ad busters を 接 合 して 見 れば 認 知 カテゴリーがまったく 変 わる 日 本 の 屋 外 広 告 法 の 定 め る 簡 易 除 去 は2004( 平 成 16) 年 の 改 正 で 相 当 の 期 間 を 経 過 しなくとも 管 理 され ずに 放 置 されていることが 明 らかな 場 合 簡 易 除 去 が 可 能 と 対 象 が 拡 大 され あわせて 法 制 化 された( 都 道 府 県 市 町 村 が 定 めることができる) 景 観 計 画 に 即 して 屋 外 広 告 物 条 例 を 定 められる と 分 権 化 され ボランティア 団 体 NPO が 日 本 でも 景 観 行 政 団 体 である 市 町 村 と 協 働 できる 素 地 ができている とされている 2.アメリカ 広 告 研 究 の 認 識 する 広 告 と 社 会 についての 近 年 の 論 点 近 年 のアメリカ 広 告 研 究 の 中 では 2005 年 以 降 の 版 を 重 ねた 大 学 で 使 用 される 7 冊 ( 種 )のテキストの 内 容 分 析 を 行 ったものがある 1) 7 冊 の 各 々は16 版 10 版 7 版 ( 3 冊 ) 4 版 2 版 と 版 を 重 ねるもので そのカバレッジは 広 く 英 語 圏 で 広 告 を 大 学 の 学 部 で 講 じられる 地 域 学 生 と 考 えられ おおよそ 今 日 的 な 広 告 についての 大 学 教 育 の 標 準 を 知 る 素 材 と 中 身 といいうるように 思 われる そのような 主 要 なテキストが 経 済 社 会 規 制 と 倫 理 問 題 に 関 して どのような 点 で 言 及 しているか を 点 検 したものでは ( 7 冊 中 )7 冊 が FTC(Federal Trade Commission 連 邦 公 正 取 引 委 員 会 ) 6 冊 が 社 会 的 論 争 問 題 ステレオタイプ 批 評 対 象 としての 大 げさ タバコ アルコー ルなどの 有 害 な 製 品 5 冊 が (FTC による) 欺 瞞 不 公 正 訂 正 命 令 アメリカ 合 衆 国 憲 法 ( 商 業 的 なものも 含 めた 言 論 の 自 由 ) 子 ども ティーンエイジャーをターゲッ トとすること FDA(Food and Drug Administration 食 品 医 薬 品 局 ) 州 その 他 の 地 域 的 法 条 例 CARU(The Children s Advertising Review Unit. BBB [Better 160
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) Business Bureau]の 組 織 で 日 本 の JARO に 相 当 する 業 界 の 自 主 規 制 組 織 ) 4 冊 が 操 作 に 触 れているとされる 一 方 Pardun(2009)は 近 年 のこの 広 告 と 社 会 に 関 する12の 論 点 について 編 者 の Pardun の 担 当 章 ( 表 1. 中 の 1 章 )を 別 として22 人 の 書 き 手 が11の 論 争 点 について 反 対 側 と 賛 成 側 の 立 場 に 立 って 1 章 ずつ11 章 を 書 き 起 こす というきわめて 創 意 に 富 んだ 論 文 集 としての 一 冊 である また その 人 選 は ほとんどがアメリカ 広 告 学 会 (American Academy of Advertising)の 有 力 な 会 員 であり 会 長 経 験 者 3 人 が 含 まれることでもその 議 論 の 適 切 さが 傍 証 されている 表 1.はその 論 争 点 と 各 章 建 ての 中 の 議 論 と 反 論 を 示 す 論 文 タイトルの 一 覧 表 である 表 1.アメリカにおいて 広 告 を 巡 る 論 争 が 設 定 される 例 章 論 争 点 議 論 (Argument) 反 論 (Counterargument) 1 広 告 は 嫌 われていない 人 は 質 の 悪 い 広 告 を 嫌 う 2 広 告 の 経 済 的 インパクト: 何 が 問 題 なのか 広 告 は 商 品 の 価 格 を 高 くする 広 告 は 消 費 者 のために 価 格 を 安 く する 3 子 どもへの 広 告 : 子 どもは 広 告 からもっと 守 られるべきか 4 政 治 広 告 : 必 要 悪 か 悪 が 必 要 とするものか 5 タバコ 広 告 :いつ 人 はことを 見 限 るのか 子 どもは 広 告 の 爆 撃 から 当 然 守 られるべきである 広 告 はアメリカの 有 権 者 に 対 し て 重 要 な 役 割 を 果 たしている タバコ 広 告 は 合 衆 国 憲 法 修 正 第 一 条 に 基 づく 合 法 商 品 の 販 売 促 進 の 権 利 6 アルコール 広 告 : 天 国 の 競 技 か アルコール 飲 料 はすべてのテレ 悪 魔 との 契 約 か ビ 放 送 からどのような 形 式 にお いても 禁 止 されるべき 問 題 広 告 である 7 広 告 とプロダクト プレースメ ント: 今 後 のショーの 主 役 8 セックスと 広 告 : 広 告 がセクシ ーすぎるのか それともそう 見 る 私 がそうなのか 9 広 告 のステレオタイピング:コ ンセプトを 素 早 く 理 解 する 助 け か 世 界 を 見 る 眼 を 歪 めるのか 10 消 費 者 向 け 医 薬 品 広 告 : 処 方 箋 がすべてか 今 日 のメディア 環 境 の 中 でプロ アクト プレースメントは 多 く の 意 味 を 持 っている それそのものには 罪 はない メッセージのクリエイティブ インパクトに 素 早 い 理 解 を 消 費 者 に 与 える 一 番 いい 方 法 我 々が 考 えているよりも 子 どもは 賢 く 充 分 大 人 は 子 どもを 大 事 に している アメリカの 民 主 主 義 に 広 告 は 正 当 な 居 場 所 を 持 たない タバコの 悪 害 未 成 年 が 飲 酒 する 怖 れがあるから テレビでの 広 告 を 排 除 するのは スピード 違 反 で 運 転 するから 車 の 広 告 を 止 めるのと 同 じ 誤 った 方 法 である アメリカのメディア チャンネル の 中 でのプロダクト プレースメ ントは 娯 楽 以 上 のものだ 広 告 表 現 にセックスを 使 うのはけ して 良 いアイディアではない 広 告 の 中 のステレオタイプの 害 と は 何 か 医 者 が 一 番 分 かっているから 薬 のことを 知 ろう 健 康 関 連 の 知 消 費 者 向 け 医 薬 品 広 告 が 介 在 す 識 を 増 やそう ることは 患 者 のためにならない 161
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 11 広 告 における 大 げさ 大 げさ は 欺 瞞 ではない 話 はそんなに 単 純 ではない 12 広 告 と 社 会 的 責 任 表 現 戦 略 に 社 会 的 責 任 を 使 える ほど 十 分 に 広 告 主 企 業 は 賢 いし 倫 理 的 である ビジネス 戦 略 としてコーズ リレ ーティッド マーケティングを 通 じて 社 会 的 責 任 を 果 たそうとする のは 非 倫 理 的 である Pardun, Carol J. (ed.)(2009)の 目 次 から 筆 者 翻 訳 一 部 意 訳 等 の 加 工 を 行 った 概 括 的 に 言 って Pardun(2009)の 挙 げる 多 くの 論 点 は 日 本 の 同 種 の 議 論 よりも 具 体 的 で 顕 在 的 であり 深 掘 り されている と 言 える そもそも 広 告 は 嫌 われていない 人 は 質 の 悪 い 広 告 を 嫌 う という 第 1 章 の 論 点 す ら 日 本 では 顕 在 化 しない 21 世 紀 には ほぼ 同 種 のテレビ CM 表 現 が 1 日 に 平 均 でも 各 民 放 一 局 あたり10 回 それを365 日 毎 日 さらに 連 続 してその 高 密 度 なテレビ 広 告 に 晒 され る 期 間 が10 年 続 く ある 特 定 の 業 種 ( 広 告 主 の 業 種 ) として 保 険 業 が 立 ち 現 れた この 量 的 なテレビ CM のあり 様 は 20 世 紀 末 の 当 該 業 種 の 本 数 の 3 倍 に 相 当 し(データはビデオ リサーチ 社 による 詳 細 は 水 野 (2012 近 刊 )を 参 照 ) 広 告 主 として 外 資 系 企 業 が 増 加 し かつ 訴 求 内 容 は テレビ 通 販 型 ダイレクト 販 売 で 保 険 料 の 安 さとフリーダイヤル の 番 号 という 定 型 的 なものが 多 く 含 まれる こうした 中 HDR(ハードディスクレコーダ ー)での 録 画 再 生 視 聴 時 の CM スキップが 顕 在 化 一 般 化 し テレビ 等 マス 広 告 費 の 減 少 が 報 じられる しかしながら 未 だ 広 告 は 嫌 われていない 人 は 質 の 悪 い 広 告 を 嫌 う ( 結 論 は 逆 であったとしても)といった 議 論 が 顕 在 化 しない 送 り 手 にとっても 劣 悪 化 す るメディア 状 況 に 晒 される 受 け 手 にとっても テレビ 放 送 という 社 会 資 産 としても 重 要 にして 手 つかずなのはなぜか とはいえ Pardun(2009)の 8 章 (セックス) 10 章 ( 処 方 薬 )といったアメリカの 文 化 社 会 の 文 脈 においての 問 題 化 と 日 本 の 状 況 との 差 異 が 大 きなものもある インターネ ットの 一 般 化 は 1999 年 から 暴 力 セックス の 自 動 的 排 除 のために14インチ 以 上 のテ レビ 受 信 機 には 義 務 付 けられた V チップ も アメリカはもちろん 世 界 的 にももはや 論 点 ではなくなったが 少 なくとも 日 本 の 地 上 波 テレビにおいては 性 の 問 題 は こと アメリカの 状 況 と 比 べれば (V チップが 問 題 化 しないほどに)もっとも 自 主 規 制 が 及 んだ 実 践 と 考 えられよう 処 方 薬 問 題 は アメリカにおいての 健 康 保 険 制 度 改 革 (Healthcare reform) に 絡 む 社 会 問 題 の 一 環 である 医 薬 品 製 造 業 の 広 告 は 日 本 とは 段 違 いに 処 方 薬 (prescription drug) に 集 中 し 市 販 薬 (OTC;Over the counter drug)のウエイ トがきわめて 低 い 国 民 皆 保 険 の 伝 統 のなかったアメリカでは 結 果 として 高 額 な 保 険 料 を 支 払 うことのできる 階 層 では 市 販 薬 に 頼 らず 経 済 的 に 貧 しい 階 層 が 市 販 薬 に 頼 る と 162
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) いうこととなっている その 状 況 で ではなぜ 処 方 薬 のテレビ 広 告 が 多 いのか と 言 うと アメリカでは 患 者 が 医 師 に 処 方 薬 のメーカー ブランドを 名 指 しで 依 頼 する 行 為 が 一 般 的 であり その 行 動 促 進 のために マス 広 告 が 有 効 という 論 理 があると 聞 く 処 方 された 薬 品 の 名 前 を 知 らないような 患 者 は 自 己 リスクが 管 理 できていない とされる 価 値 観 がベースにあると 推 定 されるが これは 日 米 の 医 療 に 関 する 文 化 差 医 者 との 関 係 における 差 異 の 大 きな 点 であろう 本 稿 との 関 連 で 言 えば 少 なくとも 処 方 薬 のマス 広 告 が 社 会 的 に 有 効 で 可 能 な 状 況 は 日 本 よりもアメリカで 従 来 より 今 も 引 き 続 いてい る 2) 3.アフィリエイトという 対 価 を 貰 って 商 品 等 を 誉 める こと ネット 社 会 ならではの 現 象 として 挙 げられるものに アフィリエイト がある 直 訳 に 成 果 報 酬 型 広 告 というものがある ブログ 等 の 自 分 のページに 広 告 挿 入 をすること で ページを 訪 問 した 人 によって 商 品 の 購 買 が 生 じた 際 に その 売 れた 商 品 個 数 に 比 例 した 額 の 成 功 報 酬 が ブロガー 側 (メディア 側 )の 収 益 となる 販 売 拡 大 のアイディアであ る 多 くの 人 には ネットでお 小 遣 い 稼 ぎ といった 荒 っぽい 理 解 がなされたし( 事 実 ノウハウ 本 が 多 数 出 版 される) 売 り 手 送 り 手 側 も WOM(Word of mouth) と 呼 ぶけ れども 未 だ 倫 理 上 やらせ とどこが 違 うのか と 言 われがちな 部 分 もある 多 数 のブロ ガー を 自 社 販 売 促 進 販 売 装 置 にしてしまう という 製 品 マーケティングとしては 画 期 的 な しかしメディアとしては その 公 共 性 を 明 らかに 失 う 広 告 形 式 の 新 たな 仕 組 みで ある 要 は 対 価 を 狙 ってあたかも 自 分 自 身 の 感 想 のように 特 定 の 製 品 なりサービスなり を 推 奨 する のである 弁 護 士 の 金 井 (2010)によれば こうした 新 しい 現 象 ではあるが 例 えば このタブレ ット( 健 康 食 品 )を 飲 んでいるだけなのにすごく 痩 せました といったブログ 記 事 が 薬 事 法 違 反 (その 他 景 品 表 示 法 食 品 衛 生 法 等 が 関 連 する)に 問 われる 場 合 ブロガーだけで なく 広 告 主 であるメーカーにも 責 任 が 及 ぶ 可 能 性 を 法 律 家 として 言 う こうした 新 たな 社 会 現 象 は しかし 翻 って 20 世 紀 では 広 告 の 常 識 であったことを 覆 すような 強 いアンチ テーゼまであと 一 歩 のところにまで 我 々を 連 れて 行 く それは 通 常 の 広 告 においても 出 演 している タレントは 対 価 を 貰 って 推 奨 しているのである ということに 広 告 に 接 触 する 際 に 思 いを 致 しやすくなっている 広 告 の 受 け 手 には そ ういった 思 いが 生 じやすくなっていることである ハーバーマスやブルデューの 商 業 主 義 批 判 広 告 批 判 は 本 質 的 だが 日 本 全 体 のこ 163
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 とを 考 えれば そうした 社 会 学 者 の 醒 めた 眼 を 知 り 主 張 を 理 解 する 人 は どの 程 度 居 るの だろうか おそらくきわめて 少 数 ではないか しかしながら 通 常 の 広 告 においても 出 演 している タレントは 対 価 を 貰 って 推 奨 しているのである という 冷 徹 な 気 付 きとと もに 広 告 に 接 する 受 け 手 は 実 質 的 に 商 業 主 義 批 判 広 告 批 判 までもうあと 一 歩 にま で 至 っているのではないか この 広 告 懐 疑 心 あるいは 白 々しい 思 い を 伴 いながら アフィリエイト は 引 き 続 く 法 的 な 対 応 ( 少 なくともアメリカでは このブログ 記 事 の 書 き 手 は 広 告 報 酬 を 得 ている 旨 の 表 示 責 任 がある( 後 述 ) )にもまして こうした 見 方 によれば 広 告 への 成 熟 した 態 度 が アフィリエイト の 日 本 の 広 告 事 情 にもたらした 最 大 のことなのではないか と いう 言 い 方 もありえよう 受 け 手 としてアフィリエイト 的 なことに 気 付 くと 送 り 手 側 の 複 雑 な 手 法 が 相 まって 進 行 している という 認 識 もありえる たとえば YK( 当 該 俳 優 のイニシャル)は 長 年 に わたって 映 画 や 音 楽 で 活 躍 する 俳 優 であるが 自 身 が 映 画 で 主 役 を 務 めた 役 名 であり シ リーズ 化 した 映 画 タイトルであり また 自 身 が 歌 を 歌 った 歌 の 題 名 でもあるその 言 葉 を パチンコ 台 に 使 用 する 許 諾 を 行 い 自 身 もテレビ CM に 出 演 した 折 からの 不 況 を 理 由 に 東 京 大 阪 の 地 上 局 ( 旧 VHF 局 )でも パチンコ 台 の CM のオンエアがなし 崩 しに 始 まっ ていた そのことと 軌 を 一 にして こうしたことが 生 じたように 思 われるが このパチン コ 台 の CM にはCマークが 付 せられており 映 画 会 社 等 著 作 権 権 利 保 持 者 に 並 んで YK 自 身 の 名 前 も 画 面 から 読 み 取 れた(メーカー 三 洋 2008 年 12 月 発 売 ) すなわち このパチンコ 台 が 販 売 されれば 自 動 的 に 一 台 当 たりいくら といった 形 で YK 自 身 の 著 作 権 収 入 となるのである つまり YK は CM の 中 の 商 品 の 推 奨 を 行 うタレン トとして 出 演 しているのではなく 広 告 主 に 連 なって 当 該 商 品 の 広 告 を 行 っているのであ る アニメのキャラクターがパチンコ 台 に 描 かれたテレビ CM も 同 種 の 仕 組 みが 推 定 され る 要 はアニメーターがこの 場 合 広 告 主 側 なのである このように 出 演 対 価 を 得 て 有 名 人 が 広 告 に 登 場 する といった 当 たり 前 とされる 行 為 も いったん では 対 価 を 得 るために 当 該 の 人 間 が 広 告 に 登 場 する と 読 み 替 えれ ば 広 告 における 推 奨 的 な 人 物 登 場 や 物 言 いの 有 効 性 も 急 激 に 疑 わしいものになる 場 合 が ある アフィリエイト 広 告 とは その 限 界 性 を 顕 わにした 事 象 であり その 送 り 手 側 業 界 団 体 として WOM マーケティング 協 議 会 (WOM は word of mouth 口 コミ)が2009 年 ( 平 成 21 年 ) 7 月 業 界 の 健 全 なる 育 成 と 啓 発 に 寄 与 するため ( 同 HP より) 発 足 組 織 されて いるが 倫 理 問 題 への 見 解 は 未 だに 曖 昧 である 164
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) 米 国 では 連 邦 取 引 委 員 会 (FTC)が2009 年 12 月 に 広 告 における 推 薦 及 び 証 言 の 使 用 に 関 するガイドライン を 公 表 しており この 中 で FTC は 広 告 主 からブロガーに 対 し て 商 品 サービスの 無 償 での 提 供 や 記 事 掲 載 への 対 価 の 支 払 いがなされるなど 両 者 の 間 に 重 大 なつながり(material connection)があった 場 合 広 告 主 のこのような 方 法 による 虚 偽 の 又 はミスリーディングな 広 告 行 為 は FTC 法 第 5 条 で 違 法 とされる 欺 瞞 的 な 行 為 又 は 慣 行 に 当 たり 広 告 主 は 同 法 に 基 づく 法 的 責 任 を 負 う との 解 釈 指 針 を 示 してい る 3) こととの 間 での 日 米 の 差 異 はきわめて 大 きいと 言 わざるを 得 ない 4.WHO(World Health Organization. 世 界 保 健 機 構 )のアルコール 飲 料 マーケテ ィング 規 制 2010 年 5 月 WHO が アルコールの 有 害 な 使 用 を 低 減 するための 世 界 戦 略 を 採 択 し た 基 本 的 な 視 点 は アルコールが 年 250 万 人 の 死 因 に 関 係 する 本 人 の 健 康 だけでな く 交 通 事 故 や 暴 力 自 殺 などにも 関 係 する というのが 有 害 な 使 用 の 低 減 を 根 拠 付 ける 理 由 である この 採 択 の 中 で 低 年 齢 層 をターゲットとする 活 動 につながるプロモー ションを 制 限 または 禁 止 すること (WHO, 2010, 31(a)(ⅳ))を 加 盟 国 に 求 めていること は 重 要 である たとえば サッカーのスポンサードが かなりの 未 成 年 者 の 来 場 テレビ 視 聴 を 踏 まえて 行 われている 日 本 でのこの 条 項 について テレビ 及 びラジオのスポンサ ーは 視 聴 者 の70% 以 上 が 成 人 であるという 企 画 のもとに 制 作 されたことが 確 認 できた 提 供 番 組 において 酒 類 の 広 告 を 行 うよう 配 慮 する との 自 主 規 制 が 酒 類 業 中 央 団 体 連 絡 協 議 会 8 団 体 で 構 成 する 飲 酒 に 関 する 連 絡 協 議 会 によってなされていることが 対 応 する しかしながら ワールド カップなどは 予 選 においても 高 視 聴 率 を 獲 得 し 視 聴 者 の 比 率 の 問 題 よりも たとえば10 代 男 子 全 体 へのカバー 率 の 大 きさが 問 題 ではないか また 酒 類 を 提 供 する 飲 食 店 において 飲 み 放 題 などが 低 価 格 で 設 定 されていること も 一 般 に 観 察 可 能 な 事 象 である 一 義 的 には 当 該 の 料 飲 店 居 酒 屋 チェーンの 経 営 マ ーケティングであるが 背 後 にはビール メーカーなどの 販 売 促 進 費 用 補 助 (あるいは 協 賛 ) 金 が 支 払 われ この 値 引 き 原 資 となっていることは アローワンス(allowance, 流 通 業 者 の 販 売 活 動 に 対 して メーカーが 実 施 する 割 引 価 格 や 販 売 促 進 協 賛 金 の 支 払 い) として 対 流 通 販 売 促 進 として 理 解 されることの 一 具 体 例 と 理 解 可 能 である また いわゆ るディスカウント ショップの 中 には 酒 類 典 型 的 にはビール 類 のケースを 特 売 する 小 売 店 舗 も 一 般 に 観 察 可 能 である この 点 についても WHO(2010, 34(c))では 直 接 間 接 の 価 格 プロモーション デ 165
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 ィスカウント セール 原 価 割 れの 販 売 そして 一 定 金 額 での 飲 み 放 題 または 他 の 数 量 を 多 く 買 うことで 得 になる 売 り 方 は 禁 止 または 制 限 されること と 特 定 し 望 ましくない 行 為 としている 居 酒 屋 チェーン 酒 類 ディスカウント という 業 界 自 体 が 柱 とするような 売 り 方 自 体 が WHO から 指 摘 され 国 内 では 問 題 視 する 議 論 がほとんど 手 つかずであること が 指 摘 可 能 である テレビ 広 告 からたばこ 広 告 が 姿 を 消 したことと 日 本 政 府 の 国 連 中 心 主 義 (WHO は 国 連 の 一 機 関 ) とは アルコール 飲 料 の 広 告 実 践 という 自 由 市 場 の 経 済 行 為 にも 大 きな 抑 制 を 迫 る より 上 位 の 社 会 システム パワーであると 認 識 されよう 業 界 財 務 省 ( 酒 税 は 大 きな 国 税 財 源 )などとの 擦 り 合 わせの 結 果 いずれかの 時 点 で 何 らかの 規 制 は 強 化 さ れる 可 能 性 が 高 い 5. 打 消 し 表 示 という 法 的 な 便 法 水 野 (2010)でも 言 及 した 広 告 事 例 に 警 視 庁 が 同 定 した 体 験 談 商 法 があった ダイ エット 食 品 健 康 食 品 ダイエット 関 連 機 器 サービス アンチエイジング 化 粧 品 英 会 話 教 育 学 習 塾 など 広 範 に 観 察 される 一 般 の 利 用 者 が 登 場 する 推 奨 広 告 である 事 件 化 した 事 例 では その 体 験 談 自 体 がねつ 造 であった 詐 欺 的 なものであったが 統 計 学 に 言 う 代 表 性 の 誤 認 という 解 説 もなされた 4) 国 民 生 活 センターもこの 体 験 談 商 法 を 受 付 件 数 統 計 に 取 り 入 れており 2003 年 509 件 2004 年 398 件 2005 年 613 件 2006 年 647 件 2007 年 682 件 2008 年 619 件 と 一 貫 して 社 会 的 に 存 在 し 続 けていることが 推 定 できる 内 野 田 中 (2008)は この 打 消 し 表 示 について 景 品 表 示 行 政 に 携 わる 立 場 として 個 人 的 見 解 と 断 りながらも 強 調 表 示 にたいする 打 消 し 表 示 の 見 やすさ 明 瞭 な 表 示 方 法 ( 配 置 箇 所 文 字 の 大 きさ 色 等 への 配 慮 )を 保 険 サービス( 入 院 日 額 と 年 齢 等 のサービス 例 外 条 件 ) 携 帯 電 話 ( 割 引 料 金 適 用 条 件 ) 航 空 券 ( 付 加 的 費 用 )について 例 を 挙 げて 見 やすさ を 言 う また 公 正 取 引 委 員 会 のモニターにアンケートを 行 い 見 や すい 表 示 が 求 められている ことにも 触 れる したがって 実 務 に 近 い 法 律 家 である 高 橋 (2010)なども 強 調 表 示 と 打 消 し 表 示 の 大 きさ や 配 置 について 適 法 性 を 述 べるに 至 る 笠 原 (2008)も 同 様 であるが この 点 について 打 消 し 表 示 がなされていながら それ が 明 瞭 でない あるいは 表 示 の 意 味 するところを 一 般 消 費 者 が 認 識 することが 困 難 であ るとして 全 体 として 消 費 者 を 誤 認 させる 表 示 であると 認 定 されているものがある とす 166
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) る 行 政 の 執 行 は 法 と 事 実 による しかしながらその 事 実 が 受 け 手 の 認 知 の 中 にあれば 実 はなかなか 手 が 届 きにくいところに 問 題 の 中 心 があることとなる なぜならば 打 消 し 表 示 は⑴ 見 やすい 表 示 のために 大 きさ や 配 置 などの 強 調 や 明 瞭 さが 言 われなが らも むしろ 肝 心 な⑵ 表 示 の 意 味 するところを 認 識 することが 困 難 かどうか については 論 者 は それ 以 上 は 立 ち 入 らないのである つまり 仮 に 個 人 の 感 想 です と 大 きく 書 か れていても 一 般 の 受 け 手 がそれをあまりに 多 く 見 かけるものだから 脱 感 作 状 態 にな って 結 果 個 人 の 感 想 と 書 かれていようといまいと 同 じ ならば 認 識 が 困 難 なの である あるいは 個 人 の 感 想 なのだから 本 当 なのかもしれない などといった 受 け 手 の 理 解 が 生 まれていたらばどうだろうか 打 消 し 表 示 は 契 約 上 の 事 前 説 明 であるから 近 年 の 現 象 という 訳 ではない 旧 来 か ら たとえばインスタント ラーメンのパッケージには 卵 や 野 菜 の 入 った 写 真 が 使 わ れ そこには 必 ず 調 理 例 と 打 消 し 表 示 があった つまりは 卵 や 野 菜 はこのインスタ ント ラーメンのパッケージの 中 には 入 っていません ということをメーカーが 購 買 前 か ら 説 明 しています という 証 憑 だったのだ 下 って 現 在 ではテレビ CM においても イ メージ 印 刷 物 では イメージです という 打 消 し 表 示 がある CG(コンピューター グラフィクス)などを 含 めた 合 成 された 写 真 はもちろんなのだが 購 買 者 が 広 告 (マン ション 乗 用 車 等 のカタログ 類 広 告 主 の HP などこの 日 常 用 語 での 広 告 の 範 囲 は 広 い)と 違 った とクレームを 発 した 際 には 売 り 手 は イメージ( 写 真 )ですから と 購 買 事 前 説 明 を 行 った 配 慮 済 みであることを 言 える 証 拠 とすることが( 民 法 上 の 用 語 である) 打 消 し 表 示 なのである たしかに 打 消 し とは 日 常 用 語 では 必 ずしもそうではない 今 のは 冗 談 だった ハズレもあります などもっと 幅 広 い 意 味 を 持 つ 言 葉 である とはいえ たとえばこの 日 本 のテレビ CM を 英 語 で 説 明 する 際 に イメージ と 字 が 添 えられた 動 画 をいかに 説 明 するか と 考 えれば どうか おそらくは 実 際 以 上 によく 写 っているけれども といった 英 語 を 添 えて 解 説 せざるを 得 ないだろう イメージ (image 映 像 表 象 ) などと 英 語 で 解 説 しても 意 味 はなさないのだ したがって いか にこの 打 消 し が 常 套 句 となっていて 意 味 を 失 ったこと その 意 味 を 失 った 状 況 を 送 り 手 は 逆 手 にとって 多 用 するのではないか と 推 論 できるのである 個 人 の 感 想 です も 同 じ 慣 行 の 中 にある と 言 えるのではないか 誤 認 をさせないものか 誤 認 をさせないものでないか つまり 打 消 し が 誤 認 を 避 け るために 有 効 か 有 効 ではないか といった 広 告 表 現 の 倫 理 問 題 は 広 告 効 果 と 同 じ 論 理 の 167
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 中 にある 受 け 止 めた 者 の 受 け 止 め 方 を 確 かめずに 議 論 は 出 発 できないのである 行 政 の 扱 う 広 告 と 社 会 現 象 である 広 告 との 差 異 はここに 大 きく 裂 け 目 を 示 している 事 実 が 受 け 手 の 認 知 の 中 にあれば 実 はなかなか 手 が 届 きにくいところに 問 題 の 中 心 があ ることとなる とはこのようなことなのである 6.ネット 上 の 内 容 連 動 型 広 告 の 新 聞 社 サイトの 掲 出 例 Google の Ads by Google に 代 表 される 内 容 連 動 型 広 告 は 検 索 結 果 表 示 画 面 に 自 動 的 に 配 信 される( 検 索 結 果 以 外 の 情 報 である) 検 索 連 動 型 広 告 に 並 んで 20 世 紀 に は 考 えられなかった ネット 状 況 を 作 り 出 した 今 や 検 索 抜 きには 街 も 歩 けず ものも 買 えず 食 事 も 作 れず といった 状 況 が 多 くの 人 々には 自 明 になっている ビジ ネス 的 には その 結 果 もさまざまな PR の 仕 方 ものの 売 り 方 を 生 んだけれども 何 より も 当 事 者 の Google 社 を 世 界 最 大 の 広 告 会 社 にしたのが この 2 つの 仕 組 みである 上 場 企 業 で 創 業 14 年 目 である Google は 2010 年 度 売 上 高 276 億 ドル( 1 ドル=77 円 として 2 兆 1 千 億 円 ) 純 利 益 79 億 ドル( 同 6 千 億 円 ) 時 価 総 額 1899 億 ドル( 同 14 兆 6 千 億 円 ) の 大 企 業 である しかしながら 世 界 中 で 収 益 を 上 げるその 広 告 とは 機 械 化 された 露 出 小 規 模 な 広 告 主 の 自 由 な 出 稿 自 動 化 された 配 信 という 利 便 性 の 一 方 で 反 社 会 的 なものも 含 み 結 果 表 2.に 掲 げたように 日 本 の 二 大 新 聞 社 の Web 版 にまで 怖 ろしい 内 容 の 広 告 を 露 出 させた Overture 社 は Google 社 の 同 業 である 大 手 企 業 の 事 例 表 2. 内 容 連 動 型 広 告 の 新 聞 社 サイトの 掲 出 例 Ads by Google 事 例 アサヒコム ヨミウリオンライン www.ana.co.jp www.aozorabank.co.jp www.citibank.co.jp www.jp.dell.com http://www.calpis.co.jp http://www.mazda.co.jp http://www.seibu.jp http://flets.com(ntt 東 日 本 ) http://next.rikunabi.com/(リクルート) www.hikaritv.net(ntt ぷらら) www.sony.co.jp 168
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) 情 報 商 材 英 語 は 外 国 人 に 教 わるな(19800 円 ) 91% 間 違 っている 新 卒 就 活 法 (9800 円 ) 高 血 圧 を 簡 単 に 下 げよう(14700 円 ) 検 索 エンジンで 1 位 になれる(20000 円 ) 債 務 整 理 大 阪 / 弁 護 士 / 多 重 債 務 専 門 ( 完 全 成 功 報 酬 制 ) 不 当 表 示 の 疑 い クリニック の 広 告 健 康 商 品 クリニック の 広 告 消 費 者 金 融 運 用 ** 温 泉 と 同 じ 効 果 の 鉱 石 偏 差 値 37から 医 学 部 合 格 ****アクセントの 効 果 ( 脂 肪 除 去 50000 円 ~) 口 臭 が 臭 い 人 の 共 通 点 (マウスウォッシュ 一 般 商 品 ) 夜 中 トイレに 起 きない 秘 訣 (ノコギリヤシ サ プリメント) 日 経 225で 負 けない17の 手 法 (27800 円 ) 高 血 圧 は 治 ります(12800 円 ) 不 合 格 になる 人 の 勉 強 法 (19800 円 ) 英 語 は 外 国 人 に 教 わるな(19800 円 ) 情 報 商 材 を 格 安 提 供 ( 数 十 種 類 の 情 報 商 材 を 1 万 円 台 ~ 十 数 万 円 までで 卸 売 り) ダイエットしないで53Kg 減 (14800 円 ) 偏 差 値 37から63の 記 憶 法 ( 無 料 体 験 版 以 降 は 情 報 商 材 か) 糖 尿 病 の 本 当 の 原 因 とは?(クロムフェリ ン 食 品 ) 下 腹 ペッタンコで 噂 のお 茶 ( 健 康 茶 ) Overture 事 例 最 先 端 医 療 で 驚 きの 部 分 痩 せ! 注 射 だけでメソセラピーの 数 倍 の 効 果 痛 みも 少 なく 腫 れは 短 い 審 査 が 不 安 な 方 でもご 安 心 下 さい( 各 社 へ のリンク) ネットでお 小 遣 い 稼 ぎ( 登 録 口 座 開 設 な どで 合 計 41 万 5000 円 がキャッシュバック) 情 報 商 材 年 利 124%サヤ 取 り 投 資 法 どんな 株 式 相 場 でも 利 益 が 出 る 投 資 法 無 料 でノ ウハウ 全 貌 プレゼント( 利 殖 商 法 )(58800 円 ) ネットショップを 無 在 庫 で 開 始 ( 起 業 支 援 情 報 商 材 85000 円 で 起 業 ) ネット 起 業 で 月 50 万 円 稼 ぐ 方 法 ( 起 業 支 援 情 報 商 材 36800 円 ) 自 分 を 変 える 脳 工 学 で 自 分 を 変 える CD プログラム 特 殊 音 源 を 聞 くだけでリセット( 情 報 商 材 980 円 ) 薬 事 法 違 反 自 宅 で 癌 治 療!? 癌 が 治 る 温 泉 のお 湯 を 自 宅 の 疑 い で 再 現 する 奇 跡 の 石 とは 痩 身 エステが 驚 きの 5 円 から! ( 痩 身 マシン 体 験 ) 健 康 商 品 下 半 身 太 りを 解 消 する 器 具 下 半 身 太 り 解 消 法 の 器 具 本 気 でダイエットしたい 人 向 け/ 提 携 ( 健 康 器 具 14700 円 ) 出 会 い まじめな 出 会 系 ランキング 管 理 人 が 厳 選 した サイトを 紹 介 確 認 日 2010 年 5 月 26 日 2010 年 6 月 1 日 筆 者 観 察 による 169
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 この 新 聞 社 の 持 つ 社 会 的 信 頼 性 の 抜 け 穴 のような 現 象 は 水 野 (2009)でも 批 判 し た 広 告 費 を 受 け 取 って 自 社 サイト 読 者 の 記 事 からこれらの 広 告 への 誘 導 を 行 い 責 任 はない と 明 言 する 反 社 会 的 な 姿 勢 を 批 判 したのである 法 学 研 究 者 では 櫻 井 (2004)が 子 細 にこの 掲 載 広 告 内 容 についての 新 聞 社 の 掲 載 責 任 を 法 理 と 判 例 の 突 合 せによって 議 論 し 従 来 の 新 聞 社 免 責 という 通 念 を 批 判 して いる 水 野 の 立 論 は 物 理 的 時 間 的 心 理 的 に 連 続 する 記 事 内 容 と 広 告 という 効 果 面 から その 責 任 を 言 い 櫻 井 と 同 じ 結 論 に 至 る そして 新 聞 紙 面 にもまして 内 容 連 動 を 仕 組 み(テクノロジーであり ビジネスであり 意 図 しての 選 択 であり 職 業 と してである) として 行 う 連 続 性 はさらに 問 題 である と 認 識 する 水 野 (2009)の 中 には 職 業 を 通 じて 反 社 会 的 行 為 を 行 う という 文 言 での 批 判 もある その 後 現 在 (2011 年 12 月 時 点 )では 少 なくとも 観 察 の 限 りでは 朝 日 読 売 毎 日 日 経 産 経 の 5 大 全 国 紙 では 新 聞 社 の 考 査 が 効 くようになっている 7. まっとうな 怒 り と 静 寂 権 につながる 事 例 心 理 学 の 知 見 に 詳 しい 哲 学 者 であり 倫 理 学 者 の 河 野 哲 也 (2011)は (マーサ )ヌスバ ウムも 民 主 主 義 を 支 える 感 情 として 共 感 と 怒 りをあげていた ( 中 略 ) まっとうな 怒 り という 感 情 を 育 てる 教 育 がもっとあってもよいのではないだろうか と 共 同 体 を 支 える 感 情 の 中 で 常 に 中 心 に 考 えられる 好 ましい 共 感 だけではなく 怒 り にも 応 分 の 注 意 を 払 う 社 会 に 許 される( 水 野,2011) 皆 が 共 視 共 感 し 共 同 体 へのストー リーを 感 じる( 水 野,2009)という 広 告 の 肯 定 的 側 面 は 広 告 研 究 者 からしばしば 触 れ られるけれども その 裏 側 の 怒 り に 目 配 りのない 視 点 が いまひとつ 手 前 味 噌 に 聞 こえたうらみがあるのではないか 同 じくカント 哲 学 者 の 中 島 義 道 (1999 2006)は 静 寂 権 を 明 示 する 広 告 研 究 者 ロッ ツオルとサンデージら(1976)も 言 及 する 静 寂 主 義 は 原 語 では Quietism である Quietism とは 心 の 平 和 あるいは 静 けさ 穏 やかさ 無 関 心 無 気 力 冷 静 さ 邪 魔 され ない 状 態 無 為 などを 一 般 的 な 意 味 で 表 現 する 言 葉 としても 使 われるが キリスト 教 にお ける 様 々な 背 景 を 持 つ 言 葉 でもある しかし 現 代 的 にはロールズの 正 義 論 の 原 則 に も 多 大 な 影 響 を 与 えた 思 想 的 淵 源 と 解 釈 可 能 である なぜならば それは 無 碍 (むげ) の 状 態 を 指 すからである したがって これらの 論 点 をつなぐと 個 人 の 無 碍 という 自 由 を 犯 すうるさい 広 告 への 正 義 に 裏 付 けられるまっとうな 怒 り ということとなる はたしてそれは 何 か 170
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) 日 本 社 会 で 判 例 という 形 をとって 顕 在 化 したものに 渋 谷 (1989)を 参 照 資 料 とできる 大 阪 市 営 地 下 鉄 商 業 宣 伝 放 送 差 止 等 請 求 事 件 [ 最 高 裁 昭 和 63 年 12 月 20 日 第 三 小 法 廷 判 決 ] がある この 判 例 は 1988 年 の 最 高 裁 での 上 告 棄 却 として 大 阪 市 営 地 下 鉄 電 車 内 の 商 業 宣 伝 放 送 の 差 止 等 を 求 めたが 認 められなかったものであり その 結 果 だけを 見 れば 受 け 身 の 静 寂 権 は 少 なくともこの 公 共 交 通 機 関 の 車 内 では 確 立 していないけれども その 解 釈 議 論 の 中 で とらわれの 聴 衆 (captive audience) という 主 題 が 憲 法 理 論 として 扱 われた 点 は 事 象 と 議 論 の 経 緯 上 本 稿 と 深 い 関 係 を 見 出 せる 大 阪 市 営 地 下 鉄 は1973 年 以 降 車 内 放 送 の 自 動 化 とその 費 用 補 てん さらには 収 益 化 を 図 るために 次 の 駅 の 案 内 などの 業 務 放 送 にあわせて 広 告 放 送 を 実 施 した この 広 告 主 に は( 当 時 の) 専 売 公 社 などの 全 国 展 開 するメーカーがあり 広 告 内 容 としては 生 活 情 報 ( 日 常 生 活 に 役 立 つヒントや 生 活 の 知 恵 の 類 ) がなされていた と 渋 谷 (1989)も 当 時 の 案 内 放 送 基 準 を 引 きつつ 解 説 する 次 の 駅 周 辺 に 立 地 する 小 売 業 広 告 よりも 広 範 囲 な 広 告 が 当 時 なされていたことは マスコミ 等 の 批 判 もあったようで 1977 年 1 月 以 降 は 広 告 主 は 駅 周 辺 の 企 業 広 告 内 容 は 企 業 案 内 と 限 ることと 案 内 放 送 基 準 が 変 更 さ れた しかしながら この 変 更 前 の 煩 (うる)さ の 程 度 は 他 の 鉄 道 ではこのような 放 送 が 稀 であったことと 1973 年 以 前 には 大 阪 市 営 地 下 鉄 でも 存 在 しなかったことから 相 当 程 度 のものであったことは 差 止 め 運 送 契 約 上 の 債 務 不 履 行 または 不 法 行 為 責 任 さらに 慰 謝 料 請 求 という 訴 訟 の 生 起 したこと また 当 時 のマスコミ 等 の 批 判 から 類 推 され る 出 訴 の 理 由 は 人 格 権 の 著 しい 侵 害 であった なぜならば 原 告 は 大 阪 市 営 地 下 鉄 御 堂 筋 線 を 利 用 する 通 勤 客 であるが 走 行 中 の 列 車 内 に 乗 客 として 拘 束 された 状 態 にあるこ とを 利 用 して 聴 取 する 義 務 のない 広 告 放 送 を 一 方 的 に 強 制 するからである とするから である 慰 謝 料 は1977 年 1 月 以 前 の 広 告 主 は 駅 周 辺 の 企 業 広 告 内 容 は 企 業 案 内 と 限 る 前 である1976 年 5 月 以 降 1 ヵ 月 あたり1000 円 と 請 求 されたことも 変 更 前 の 煩 (うる)さ の 連 続 上 に 変 更 後 の 広 告 放 送 も 受 け 止 められたことを 示 唆 する 1983 年 の 第 二 審 判 決 では 次 のような 解 釈 がなされた 旅 客 運 送 は 物 品 運 送 と 異 なり 旅 客 を 人 格 ある 存 在 として 輸 送 すべきものであるから 運 送 人 が 旅 客 をその 人 として 生 理 的 精 神 的 特 性 に 相 応 する 一 定 限 度 の 快 適 さ をもって 輸 送 すべきことが 契 約 上 当 然 の 前 提 とされていると 解 される ただしだからといって 広 告 放 送 が 債 務 不 履 行 にはならない としている これに 不 服 として 原 告 は 最 高 裁 にまで 上 告 し 判 決 は 上 告 棄 却 となったもの 171
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 の 伊 藤 正 己 裁 判 官 の 補 足 意 見 が 付 され この 快 適 さ についての 考 察 が 深 められてい る ただしこの 補 足 意 見 は 子 細 であるから 渋 谷 (1989)の 解 説 とむすびを 以 下 に 要 約 し ここでの 議 論 に 利 用 する 伊 藤 補 足 意 見 は 広 告 放 送 を 聞 かない 自 由 をより 一 般 的 に 他 者 から 自 己 の 欲 しない 刺 激 によって 心 の 静 穏 (repose)を 乱 されない 利 益 とし 広 い 意 味 でのプライバシーと 呼 ぶことができる とし 一 人 でほっておいてもらう 権 利 (the right to be let alone) と いう 私 的 事 項 のマス メディアによる 公 表 に 対 抗 する 権 利 としてアメリカで 構 想 され そ の 後 私 的 事 項 の 自 己 決 定 権 に 変 化 したプライバシーの 権 利 に 接 合 する 形 の 解 釈 を 行 っ た 点 が 画 期 的 である アメリカ 合 衆 国 には1950 年 代 にこの 裁 判 と 同 種 の 公 共 交 通 機 関 内 の ラジオ 放 送 が 問 題 となった 事 例 があり この 判 決 文 中 の 裁 判 官 の 解 釈 に 登 場 するのが と らわれの 聴 衆 である それは 必 然 の 問 題 であり 選 択 の 問 題 ではない 市 街 電 車 の 乗 客 は 席 に 着 き 聞 く あるいは 席 に 着 き 聞 かない 努 力 をする 以 外 に 選 択 の 余 地 はない 我 々 が 人 に 他 者 の 考 えを 聞 くことを 強 制 したとき 宣 伝 者 に 強 力 な 武 器 を 与 えているのである 欠 陥 はシステムそのものにある ひとたびプライバシーが 侵 害 されると プライバシーは 消 え 去 るのである プライバシーの 権 利 は 競 合 する 娯 楽 競 合 する 宣 伝 競 合 する 政 治 思 想 から 捜 し 出 し 選 択 する 権 利 を 含 むべきである と ただし 聞 かない 自 由 をどのよ うに 基 礎 付 けるのかについては 日 米 の 間 や 論 者 の 間 で 差 異 がある プライバシーの 権 利 か 表 現 の 自 由 かといった 分 類 もそうであるが 現 実 の 紛 争 においては 抽 象 的 な 権 利 がまず あってそこから 具 体 的 な 利 益 が 導 き 出 されるのではなく 逆 に 具 体 的 な 利 益 の 侵 害 がまず あって それをどの 規 定 によってどう 保 護 するかが 問 題 となる 日 本 国 憲 法 の13 条 ( 幸 福 追 求 の 権 利 ) 19 条 ( 思 想 及 び 良 心 の 自 由 ) 21 条 ( 表 現 の 自 由 )などが 関 係 する しかしながら 伊 藤 (1989)のむすびも 音 に 対 する 感 覚 も 人 それぞれに 多 様 であって 変 に 無 神 経 なわが 国 の 社 会 のあり 方 自 体 に 問 題 提 起 されたこの 事 案 は 広 告 研 究 にも 重 要 な 議 論 の 土 台 を 提 供 しているといえる 8. 字 幕 付 きテレビ CM 聴 覚 障 がい 者 にとっても 聴 覚 障 がい 者 を 受 け 手 としたい 送 り 手 にとっても 長 らく 絵 に 描 いた 餅 であった 字 幕 付 きテレビ CM が 現 実 となってきた 以 下 は 業 界 紙 報 道 のひとつであるが いかにこの 字 幕 付 きのテレビ CM の 本 格 普 及 が 遅 れているかの2012 年 時 点 での 証 拠 ともなっている 172
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) 花 王 は13 日 から 一 社 提 供 番 組 A-Studio (TBS 系 列 )で 字 幕 付 きのテレビ CM を 出 稿 する 地 上 デジ タル 放 送 の 一 機 能 として 視 聴 者 が 字 幕 の 有 無 を 選 べる クローズド キャプション 方 式 を 採 用 した 放 送 予 定 期 間 は 3 月 末 日 まで 同 期 間 に 放 送 されるブランド 数 は50 程 度 を 想 定 している ( 中 略 )しかし 各 局 で 字 幕 方 式 が 異 なったり 考 査 の 段 階 が 増 えたりするなど 新 たなワークフローを 設 ける 必 要 があるため 字 幕 付 き CM を 一 般 的 な CM 同 様 に 放 送 するには まだ 道 のりは 遠 い 花 王 は 社 内 の 制 作 部 署 で 字 幕 を 入 れる 位 置 書 体 色 など 仕 様 の 試 行 錯 誤 を 重 ねてきた 字 幕 付 き CM 普 及 に 向 け 他 社 にも 必 要 があれ ば 制 作 ノウハウを 公 開 する ( 同 社 広 報 )としている (2012 年 01 月 13 日 掲 載 アドバタイムズ Web 版 ) テレビは 免 許 事 業 であり 公 益 性 を 持 つ したがって ロールズの 正 義 論 では 第 二 原 理 である 最 も 不 遇 な 人 々の 利 益 の 最 大 化 す る ことが 目 指 されるべきである 地 上 波 テレビの 地 デジ 移 行 (アナログ 停 波 )において も 地 デジ 化 によって もっとも 不 利 益 を 被 る 低 所 得 者 層 山 間 部 住 民 などの 議 論 があ ったことは 電 波 の 公 共 性 と 言 われるこの 論 理 から 必 然 的 なことであった その 後 東 日 本 大 震 災 (2011.3.11.)を 経 て 災 害 緊 急 情 報 が 放 送 の 公 共 性 公 益 性 の 中 で 再 度 確 認 さ れたことも 記 憶 に 新 しい この 同 じ 論 理 が 技 術 的 には 可 能 で 業 界 的 には 遅 い テレビ CM 字 幕 なのである 高 齢 社 会 は 誰 もが 聴 覚 機 能 の 低 下 を 身 を 持 って 知 る 社 会 でもある 疾 病 あるいは 障 がいとしての 聴 覚 ハンデキャップよりも 広 範 な 理 解 が 顕 在 的 な 障 害 と 連 続 してなされる べきである さらに 日 本 語 を 母 語 としない 日 本 に 生 活 する 外 国 人 にとって 十 分 に 日 本 語 運 用 能 力 が 獲 得 される 前 には この 字 幕 がきわめて 重 要 な 情 報 伝 達 方 法 であることも 忘 れるべきで はない 日 本 とは 対 照 的 に 一 貫 して 人 口 の 増 加 するアメリカで CM を 含 めて 放 送 の 字 幕 が 一 般 化 し 日 本 ではなおお 座 なりであることは まさにこの 人 口 の 国 際 的 移 動 と 密 接 に 関 係 する したがって この CM 字 幕 の 問 題 は 情 報 化 高 齢 化 国 際 化 という 前 世 紀 が21 世 紀 を 何 とか 見 通 そうとした 際 に 手 掛 かりとされた 社 会 変 化 の 重 なりの 中 に 位 置 付 けられる その 意 味 で 象 徴 的 な 社 会 問 題 である と 認 識 可 能 な 社 会 的 事 象 のひとつである 9.ファッション モデルのデジタル 処 理 痩 せすぎの 示 唆 週 刊 朝 日 2011 年 12 月 16 日 号 (p.125 6) )に 次 のような 記 述 があった 173
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 今 年 の 夏 には ジュニア ロバーツがモデルとして 起 用 されたランコムのファンデーション TEINT MIRACLE の 広 告 がイギリスの 女 性 議 員 から 英 広 告 基 準 局 (ASA)に 告 発 される 騒 ぎがありました 画 像 がデジタル 処 理 されており 実 際 の 広 告 商 品 の 効 果 を 表 現 していない というのです 女 史 は 同 時 にスーパ ーモデルのクリスティー ターリントンが 出 演 するメイベリンのアンチエイジングファンデーション The Eraser( 直 訳 すると 消 しゴム です 凄 い 商 品 名 です)の 広 告 も 告 発 し 両 方 の 広 告 とも ASA から 雑 誌 掲 載 禁 止 処 分 が 言 い 渡 されました こうした 問 題 は 少 なくとも 日 本 では 問 題 が 顕 在 化 しないが 欧 米 ではこの 数 年 報 じら れることである 2009 年 にはフランスで ただし 書 き を 広 告 に 記 載 させる 法 案 が 国 会 に 提 出 されたり 7) カナダ ケベック 州 のファッション 小 売 ラ メゾン シモンズ(La Maison Simons) が 8 月 末 極 度 にやせた 体 型 の 女 性 モデルをカタログに 起 用 したとし て 抗 議 を 受 け 謝 罪 したり 8) している 前 者 は 言 葉 以 外 の(ファッション モデルの 体 形 という) 画 像 による 虚 偽 であり 虚 偽 によるミスリーディング であり 言 葉 以 外 の 虚 偽 等 は 社 会 的 には 生 起 しながらも 日 本 の 広 告 研 究 では 手 付 かずの 論 点 である 9) 後 者 は そのミスリーディングとファッション モデル 業 界 の 健 康 被 害 への 圧 力 が 問 題 となっている 実 際 フランスでは 2008 年 フランスで 拒 食 症 やせ 過 ぎを 助 長 する ようなインターネット 雑 誌 広 告 を 違 法 とする 法 案 が 採 択 された 8) がこれは 2005 年 11 月 に 拒 食 症 で 死 去 したブラジル 人 モデルが 認 識 されて 以 降 様 々に 議 論 を 呼 んだことの 一 環 である 食 品 業 界 の 実 務 家 である 富 田 (2006)は この 事 情 を 他 業 界 と 同 じく(ジョルジオ アルマーニなどの 欧 米 ファッション) 業 界 も 製 品 に 責 任 をもたなければならないとする 意 見 も 多 く デザイナーやモデルエージェンシー スタイリスト 編 集 者 の 間 で 責 任 の 押 し 付 け 合 いになっているという ファッション 業 界 が 理 想 とするのは ありえないほどスリ ムな 身 体 を 持 つ 人 間 であり それが 若 い 女 性 に 与 える 影 響 については 長 年 問 題 であると されてきた とまとめている 各 国 政 府 やファッション 協 会 は 少 女 たちに やせている= 美 しい という 誤 った 美 の 観 念 を 与 える 危 険 性 があると 指 摘 されたモデルたちの 対 処 を 問 われることになった これ を 受 け スペイン イタリアでは 一 定 の 体 格 基 準 に 満 たないモデルのランウェイ( 水 野 注 : ファッションショーでモデルが 歩 く 花 道 舞 台 のこと) 出 場 を 禁 止 アメリカ フランス ロンドンは 規 制 ではなく 認 知 度 向 上 運 動 や 教 育 といった 方 面 から 痩 せすぎモデル 問 174
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) 題 に 取 り 組 んでいくと 発 表 した 問 題 は 出 場 モデルのみに 留 まらず スペインでは 大 手 アパレルチェーンの ザラ(Zara) が 政 府 のガイドラインに 同 意 すると 発 表 した 10) とそ のようなことの 報 じられない 日 本 との 差 異 を 感 じさせる やはり この 島 国 に 生 きていると 世 界 の 中 心 で 何 かが 起 きていても ここは 辺 境 ( 内 田 2009)と ことを 国 内 の 同 種 の 事 情 に 関 係 付 けずに 眺 めているのであろうか デジタル 化 による 修 正 は それ 以 前 にもまして 言 語 によらない ビジュアルによる 説 得 であるから 虚 偽 とは 何 か ミスリーディングとは 何 か といった 潜 在 的 な 論 点 の 扱 い 方 が 未 だ 確 立 していないし 注 意 喚 起 すらなされていない ちなみに BMI(Body Mass Index; 体 重 (kg)を 身 長 (m)の 二 乗 で 割 る) 指 数 が 体 脂 肪 率 とよく 相 関 することが 明 らかにされ 肥 満 度 の 代 替 指 数 としての 有 効 性 ゆえに 厚 生 労 働 省 でも 利 用 するが この 指 数 18.5 以 下 は 低 体 重 とされる 人 の BMI はプライバシ ーでもあり とりわけタレントが 公 表 している 身 長 と 体 重 の 真 偽 は 基 本 は 不 明 であ る にもかかわらず BMI15 16 17といった 数 値 が 数 多 くのタレントにおいて 推 定 され る また 身 長 はともかくも 成 人 にもかかわらず 体 重 が30キロ 台 というタレント モデ ルも 存 在 している このことと メディアに 登 場 する 人 間 全 般 における 低 体 重 が ダ イエットを 商 業 化 する 産 業 と 相 互 に 影 響 し 合 っていることは 谷 本 奈 穂 (2008) 美 容 整 形 と 化 粧 の 社 会 学 ( 新 曜 社 )にも 通 じる 論 点 である そう 考 えれば 広 く 健 康 食 品 アン チ エイジングなどとも 同 じ 構 図 ではないだろうか 医 療 と 健 康 に 関 する 適 法 であるけれどもはたして 倫 理 的 かどうかが 疑 わしい グレー ゾーンの 拡 大 は 著 しい それは ひとつには 常 に 新 たなビジネス チャンスを 開 拓 しよう とする 企 業 活 動 の 旺 盛 さと 研 究 努 力 の 結 果 である より 大 きくは 資 本 の 運 動 であり 市 場 経 済 のダイナミクスも 失 敗 もこの 結 果 である もうひとつには メディア 社 会 における 欲 望 や 関 心 の 恣 意 的 な 構 築 である とりわけ 地 上 波 民 放 テレビにおいては 暴 力 と 性 はも っとも 避 けるべき 領 域 であるから いきおい 芸 能 お 笑 い スポーツ バラエティとい ったジャンルを 串 刺 しにするような グルメと 健 康 が 安 全 な 領 域 となる ここに 様 々 な 広 告 主 業 種 が 少 子 高 齢 化 長 寿 社 会 また 人 口 減 少 社 会 や 国 際 化 を 見 越 して 医 療 と 健 康 を 事 業 領 域 とするのである こうしたマクロ ミクロな 傾 向 に 対 し 制 度 的 な 規 制 は 論 理 的 に 難 しいものとなってい る たとえば 人 類 が 食 べるモノ は 近 代 の 法 制 度 に 先 行 するから 人 体 に 毒 であるモ ノは 法 的 に 規 制 できようとも 何 を 持 って 食 品 であるか ないか の 定 義 そのものは 不 可 能 である 筆 者 は 土 が 人 体 に 毒 ではない ゆえに 規 制 がないことと 土 をソースにし 175
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 たフランス 料 理 の 存 在 を 知 り 驚 いたことがあった したがって 健 康 食 品 は 法 的 に 定 義 できない また 長 寿 自 体 健 康 自 体 単 一 の 要 因 で 達 成 されるものとも 考 えにくい し かしながら 癌 罹 患 者 ほど 代 替 医 療 あるいは 民 間 療 法 と 呼 ばれる 医 科 学 の 外 にある 手 法 に(も) 単 一 の 手 法 で 治 癒 が 難 しいだけに 頼 ることになる 多 くの 高 額 な 健 康 食 品 は 少 数 の 重 篤 な 患 者 によって 消 費 されていると 推 論 できる これらが 適 法 であるけれども はたして 倫 理 的 かどうかが 疑 わしい グレーゾーンの 拡 大 の 仕 組 みである また ファッション モデル という 職 業 が 拒 食 症 を 引 き 起 こすことは 社 会 が メデ ィア 社 会 のマネジメント を 行 えるかどうか という 論 点 の 一 つと 考 えられる この 点 に も 日 本 社 会 がナイーブであることがよく 分 かるのではないか 送 り 手 内 部 のある 職 業 に 対 して ( 究 極 の 圧 力 となっている) 受 け 手 が 同 じ 人 間 性 を 持 つファッション モデルに 対 して 行 動 を 起 こす ということは 送 り 手 受 け 手 を 貫 く 公 共 性 の 問 われる 問 題 ではな いだろうか 10. 行 動 ターゲティング 広 告 の 倫 理 問 題 一 般 に PC 等 のネットの 閲 覧 履 歴 メールの 履 歴 またネット ショッピングの 購 買 履 歴 さらに 携 帯 でのアクセスにおける 地 理 情 報 履 歴 などプライバシーの 多 分 に 含 まれる 行 動 履 歴 情 報 を 売 り 手 側 がマーケティング 行 為 に 利 用 することが 行 動 ターゲティング と 呼 ばれ 実 践 されている 新 保 (2010)は そうした 人 間 の 活 動 を 記 録 した 情 報 をネ ット 以 前 からの 個 人 情 報 保 護 やプライバシー 侵 害 ( 三 島 由 紀 夫 の 宴 のあと 事 件 1964 年 )につなげ 内 外 の 法 制 度 に 照 らし また 進 行 中 の 事 象 も 踏 まえて 整 序 し ライフロ グ と 定 義 し 問 題 を 焦 点 化 法 的 責 任 問 題 を 検 討 する 新 保 はこの ライフログ を 多 くの 新 サービスの 実 践 を 踏 まえて 1 特 定 の 自 然 人 の2 特 定 の 活 動 に 関 する3 特 定 の 情 報 を 4 特 定 の 記 録 媒 体 に 5 自 動 的 に6デジタルデータ として7 包 括 的 または 連 続 的 に 記 録 ( 蓄 積 )し それによって 取 得 された 8 特 定 の 個 人 に 関 する 個 人 情 報 ( 個 人 識 別 情 報 )および9 個 人 に 関 連 する 個 人 情 報 に 該 当 しない 情 報 ( 非 個 人 識 別 情 報 )の 総 称 をいう と 定 義 することを 提 唱 している 非 個 人 識 別 情 報 とは た とえばカメラに 写 った 顔 のうち 眼 鼻 口 などはあきらかに 個 人 識 別 情 報 であるが 一 見 非 個 人 識 別 情 報 である 肌 の 色 から 人 種 情 報 が 抽 出 されるおそれがあることから 個 人 と 非 個 人 の 線 引 きが 相 対 的 で 変 化 する ものであることが 論 じられる アメリ カには AOL による 検 索 クエリー 漏 えい 事 件 が 既 に 存 在 し 一 見 個 人 情 報 を 含 まない と 考 えられる 約 65 万 人 の 会 員 が2006 年 に 行 った 約 2000 万 件 の 検 索 クエリー データが 誤 っ 176
メディアの 中 の 私 性 と 公 共 性 ( 水 野 ) て Web 上 にアップされ 検 索 キーワードに 含 まれていた 個 人 情 報 が 問 題 となった 本 来 は 個 人 特 定 情 報 ではない キーワード だが 入 力 された キーワード から 直 接 または 間 接 的 に 特 定 の 個 人 を 識 別 できる 情 報 が 取 得 されることがあり AOL 事 件 では 多 数 そのよ うな 情 報 が 存 在 した とされる 総 務 省 は2009 年 から 利 用 者 視 点 を 踏 まえた ITC サービスに 係 る 諸 問 題 に 関 する 研 究 会 でこの 件 を 検 討 するが 総 務 省 は(さらにその 後 技 術 の 進 化 した)ディープ パケット インスペクション(DPI)の 広 告 利 用 に GO サインを 出 したとされる ( 総 務 省 の 報 道 資 料 利 用 者 視 点 を 踏 まえた ICT サービスに 係 る 諸 問 題 に 関 する 研 究 会 第 二 次 提 言 ( 案 )) DPI とは プロバイダに 専 用 の 機 械 を 接 続 し 利 用 者 がサーバーとの 間 でやりとりする 全 情 報 を(パケットのヘッダだけでなく 中 身 も 全 て) 読 み 取 るとされる asahi.com の 記 事 10) に よれば 作 業 部 会 に 参 加 した 一 人 は 総 務 省 の 事 務 方 は 積 極 的 だったが 参 加 者 の 間 では 慎 重 論 がかなり 強 かった ただ 利 用 者 の 合 意 があれば 良 いのでは という 意 見 に 反 対 す る 法 的 根 拠 が 見 つからなかった と 話 している とされる まさに 法 的 根 拠 が 見 つからなければ 新 たに 実 用 化 される 基 本 的 人 権 にかかわること が 否 定 できない そうしたマイオピア( 近 視 眼 ) 状 況 が 政 府 によって 正 当 化 されようと しているのである とはいえ ミクロには では 行 政 は 恣 意 的 に 必 ずしも 現 行 法 規 に 違 反 していないビジネ スを 制 限 するべきでもなく マクロには 当 面 そうした 法 の グレーゾーン を 積 極 的 に 意 識 して 起 業 者 を 萎 縮 させるべきではない( 大 野 2010) といった 見 方 もある 経 済 ビ ジネス 論 理 と 人 権 論 理 はこのような 点 でも 緊 張 関 係 にある 注 1 )Drumwright and Murphy(2009) 2 )Donohue ら(2007)によれば 1996 年 からの10 年 間 で 製 薬 業 界 の 全 米 年 間 広 告 費 は114 億 ドルから299 億 ドル(263%)に 増 加 したが 消 費 者 に 向 けられた 広 告 はこの 間 330% 増 加 したとされる 3 )この 邦 訳 に JARO(2009)がある 4 ) 朝 日 新 聞 記 事 データベースによれば 体 験 談 商 法 の 初 出 は1993 年 2 月 5 日 の 夕 刊 の 調 査 報 道 である 5 )マーケット アナリストのフェルディナンド ヤマグチ 氏 のコラム 最 後 の 審 判 251 回 話 し 言 葉 の 記 述 は 氏 のコラムゆえである 6 )2009 年 09 月 23 日 16:45 発 信 地 :パリ/フランス AFP 通 信 配 信 記 事 7 )2008 年 09 月 04 日 16:52 発 信 地 :ケベック/カナダ AFP 通 信 配 信 記 事 8 )2006 年 11 月 16 日 19:48:15 AFP/Simone LINS 配 信 記 事 9 ) 例 えば 日 本 でも 出 版 社 B の 女 性 向 けファッション 月 刊 誌 J などには 広 告 に 登 場 する 女 性 モデル 177
関 西 大 学 社 会 学 部 紀 要 第 43 巻 第 2 号 の 体 型 がありえないほど 細 く 変 形 されていることが 観 察 される 10)2010 年 5 月 30 日 4 :50 Asahi.com 記 事 ネット 全 履 歴 もとに 広 告 総 務 省 容 認 課 題 は 流 出 対 策 参 考 文 献 安 彦 一 恵 谷 本 光 男 編 (2004) 公 共 性 の 哲 学 を 学 ぶ 人 のために 世 界 思 想 社 別 所 直 哉 (2010) インターネット 検 索 の 諸 相 サービス 技 術 ビジネス 法 とコンピュータ 学 会 No.28 pp.21-27. 法 とコンピュータ 学 会 土 場 学 盛 山 和 夫 (2006) 正 義 の 論 理 公 共 的 価 値 の 規 範 的 社 会 理 論 勁 草 書 房 Donohue, J. M., Cevasco, M, and Rosenthal, M. B. (2007)A decade of Direct-to-Consumer Advertising of Prescription Drugs, The New England Journal of Medicine, No.357, pp.673-681. Drumwright, E. M. and Murphy, P. E. (2009)The Current State of Advertising Ethics, Industry and Academic Perpective, Journal of Advertising, Vol.38, No.1, pp.83-107 藤 垣 裕 子 (2003) 専 門 知 と 公 共 性 東 京 大 学 出 版 会 古 橋 清 二 (2009) 弁 護 士 司 法 書 士 の 広 告 報 酬 問 題 消 費 者 法 ニュース 79 号 pp.133-136. 今 川 嘉 文 (2011) 多 重 債 務 整 理 の 広 告 と 報 酬 開 示 問 題 消 費 者 法 ニュース 88 号 pp.381-383. 石 田 英 敬 (2003) 記 号 の 知 /メディアの 知 東 京 大 学 出 版 会 伊 藤 昌 亮 (2011) フラッシュモブズ 儀 礼 と 運 動 の 交 わるところ NTT 出 版 JARO(2009) 国 際 レポート No.25 日 本 広 告 審 査 機 構 非 売 品 金 井 高 志 (2010) 新 たな 流 通 広 告 形 態 アフィリエイト ドロップシッピング 等 Business Law Journal No.28 pp.26-29. 笠 原 宏 (2008) 最 近 の 景 品 表 示 法 をめぐる 諸 問 題 Business Law Journal No.9. pp.36-39. 片 桐 雅 隆 (2006) 認 知 社 会 学 の 構 想 カテゴリー 自 己 社 会 世 界 思 想 社 河 野 哲 也 (2010) 道 徳 を 問 い 直 す リベラリズムと 教 育 のゆくえ ちくま 新 書 黒 田 勇 編 (2005) 送 り 手 のメディアリテラシー 世 界 思 想 社 楠 根 重 和 (2002) マス メディアと 公 共 性 ドイツ 報 道 評 議 会 と 日 本 型 苦 情 委 員 会 金 沢 法 学 第 40 巻 第 1 号 pp.131-191. 水 野 由 多 加 編 著 (2009) 広 告 表 現 倫 理 と 実 務 宣 伝 会 議 水 野 由 多 加 (2010) マス 広 告 の 公 共 性 ( 上 下 ) 共 視 共 感 共 同 性 というマス 広 告 環 境 維 持 責 任 の 観 点 から 日 経 広 告 研 究 所 報 水 野 由 多 加 (2012) 広 告 の 公 共 性 ( 仮 題 ) 近 刊 予 定 御 手 洗 潤 (2007) 屋 外 広 告 法 の 理 念 と 運 用 をめぐる 諸 問 題 ( 一 ) 自 治 研 究 第 83 巻 第 7 号 pp.108-123. 第 一 法 規 宗 像 勝 年 (2004) 広 告 と 人 権 新 風 社 長 田 弘 子 (2009) 広 告 問 題 消 費 者 法 ニュース 80 号 pp.178-180. 中 河 伸 俊 (1999) 社 会 問 題 の 社 会 学 構 築 主 義 アプローチの 新 展 開 世 界 思 想 社 中 島 義 道 (1999) うるさい 日 本 の 私 新 潮 文 庫 中 島 義 道 (2006) 醜 い 日 本 の 私 新 潮 社 仲 正 昌 樹 (2002) 法 の 共 同 体 ポスト カント 主 義 的 自 由 をめぐって 御 茶 の 水 書 房 仲 正 昌 樹 (2005) 自 己 再 想 像 の 法 生 権 力 と 自 己 決 定 の 狭 間 で 御 茶 の 水 書 房 ノンバンク 問 題 研 究 会 (2010) 社 会 問 題 化 する 弁 護 士 等 の 高 額 報 酬 や 過 剰 広 告 の 実 態 月 刊 消 費 者 信 用 第 28 巻 第 6 号 pp.42-46. 178
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