Titleシネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 Author(s) 山 越, 康 裕 Citation 北 方 言 語 研 究, 1: 63-78 Issue Date 2011-03-25 DOI Doc URLhttp://hdl.handle.net/2115/45230 Right Type bulletin (article) Additional Information File Information 04 山 越.pdf Instructions for use Hokkaido University Collection of Scholarly and
北 方 言 語 研 究 1: 63-78( 北 方 言 語 ネットワーク 編, 北 海 道 大 学 大 学 院 文 学 研 究 科,2011) 1 シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 山 越 康 裕 ( 札 幌 学 院 大 学 ) 0. はじめに モンゴル 語 をはじめとするモンゴル 語 族 の 諸 言 語 には 名 詞 句 におもに 接 続 し 人 称 を 標 示 する 付 属 形 式 が 存 在 する この 付 属 形 式 は 一 般 に personal possessive particle (Janhunen (ed.) 2003, Poppe 1960, Street 1963, etc.) と 呼 ばれ 先 行 する 名 詞 句 の 所 属 先 の もしくは 先 行 する 名 詞 句 に 関 係 する 人 称 を 指 示 する 機 能 をおもに 有 する 2 ただし この 付 属 形 式 ( 以 下 人 称 所 有 小 詞 とよぶ)は 名 詞 句 に 接 続 するだけではな く 一 部 の 動 詞 にも 接 続 し 主 語 人 称 を 指 示 することもある 本 稿 では 近 隣 のモンゴル 語 を 対 象 とした 先 行 記 述 と 適 宜 対 照 しつつ 上 記 のような 人 称 所 有 小 詞 のふるまいと 機 能 について 記 述 するとともに 文 末 の 述 語 として 機 能 する 未 来 分 詞 に 1 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 する 際 には 脱 従 属 化 3 が 生 じている 可 能 性 があることを 指 摘 する 1. 人 称 所 有 小 詞 の 形 態 的 特 徴 まず シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 としては 表 1 に 示 す 6 種 類 が 確 認 され る 単 数 複 数 1 人 称 =mni( 短 縮 形 =m) 4 =mnai 2 2 人 称 =s j ni( 短 縮 形 =s j )/ 敬 称 =tni =tnai 2 3 人 称 =in(または=ni, =n) 表 1. シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 1 本 研 究 は 平 成 22-24 年 度 文 部 科 学 省 科 研 費 補 助 金 ( 若 手 研 究 (B)) モンゴル 系 危 機 言 語 であるシネヘン ブリヤート 語 の 総 合 的 記 述 (#22720163)による 成 果 の 一 部 である 本 稿 で 用 いたシネヘン ブリヤート 語 の 資 料 は いずれも 筆 者 が 2000 年 から 継 続 的 におこなっているフィールドワークにより 得 られたもの である 言 語 コンサルタントとして ドンドク 氏 (40 代 男 性 )ほか 中 国 内 蒙 古 自 治 区 呼 倫 貝 爾 市 エウェ ンキ 族 自 治 旗 シネヘン 村 在 住 の 多 くの 方 々にご 協 力 いただいた ここに 感 謝 の 意 を 表 したい また 本 稿 執 筆 にあたり 匿 名 の 査 読 者 お 二 人 よりそれぞれ 重 要 なご 指 摘 アドバイスをいただいた ここで 改 め て 御 礼 を 申 し 上 げたい それでもなお 本 稿 の 内 容 に 誤 謬 不 備 等 がある 場 合 は 当 然 ながら 全 て 筆 者 がそ の 責 任 を 負 う 2 日 本 においては 所 属 小 辞 ( 水 野 1991 梅 谷 2003) 人 称 関 係 小 辞 ( 一 ノ 瀬 1988)などと 呼 ばれて おり 必 ずしも 呼 称 が 一 致 していない 所 有 にかえて 所 属 関 係 等 の 呼 称 を 用 いるのは この 形 式 が 積 極 的 に 所 有 者 の 人 称 を 標 示 するというより 当 該 名 詞 句 分 詞 等 に 関 係 する 人 称 を 標 示 するためで ある(cf. 一 ノ 瀬 1988 Kullmann and Tserenpil 1996) こうした 呼 称 についても 議 論 の 余 地 が 残 されている が ひとまず 本 稿 では 英 語 術 語 に 準 拠 し 人 称 所 有 小 詞 を 用 いる 3 desubordination (Aikhenvald 2004); insubordination (Evans 2007) を 指 す 日 本 語 訳 は Pellard (2010) に 従 う 4 シネヘン ブリヤート 語 には 順 行 的 な 母 音 調 和 が 存 在 する 付 属 形 式 の 母 音 調 和 による 交 替 形 を 下 付 き 数 字 で 示 す なお シネヘン ブリヤート 語 では 本 稿 の 分 析 対 象 である 人 称 所 有 小 詞 を 含 む 一 部 の 小 詞 も host の 母 音 に 同 化 する 63
3 人 称 においては 数 の 区 別 がなく 2 人 称 単 数 では 無 標 形 と 敬 称 形 の 2 種 類 が 存 在 する このうち 1 人 称 複 数 所 有 小 詞 は 今 回 分 析 の 対 象 としたテキスト( 山 越 2002 2006a) 中 では 用 例 が 確 認 されない 5 これらはアクセント 位 置 の 移 動 等 の 特 徴 から 音 韻 的 には 後 倚 辞 (enclitic)と 判 断 される( 山 越 2004) なお 1 人 称 複 数 所 有 小 詞 (=mnai~=mnei)および 2 人 称 複 数 所 有 小 詞 (=tnai~=tnei) には 母 音 調 和 による 交 替 形 が 確 認 されている 6 また 形 態 的 には 名 詞 句 分 詞 および 副 動 詞 の 一 部 ( 以 下 これら 接 続 元 をまとめて host とよぶ)に 接 続 する 山 越 (2002) および 山 越 (2006a) の 各 テキストにおける 使 用 状 況 は 表 2 の 通 りであった 名 詞 類 動 詞 名 詞 句 分 詞 副 動 詞 計 (%) 1SG 21 例 6 例 0 例 27 例 (13%) 1PL 0 例 0 例 0 例 0 例 (0%) 2SG 27 例 11 例 0 例 38 例 (19%) 2SG.HON 1 例 0 例 0 例 1 例 (0.4%) 2PL 3 例 0 例 0 例 3 例 (1.5%) 3 82 例 46 例 7 例 135 例 (66%) 計 (%) 134 例 (66%) 63 例 (31%) 7 例 (3%) 204 例 (100%) 表 2. host 別 にみる 各 人 称 所 有 小 詞 の 分 布 以 下 名 詞 句 分 詞 副 動 詞 それぞれが host となる 例 を 示 す (1) axai=s j ni 兄 =2SG:POSS 君 の 兄 [ 山 越 2006a: 147] (2) jab-xa=mni 行 く-FUT.PTCP=1SG:POSS 私 が 行 く(ことは)/ 私 は 行 かなくてはならない [ 山 越 2006a: 146] (3) tii-z j ai-tar=in そうする-PROG-LMT.CVB=3:POSS ( 彼 が)そうしていると [ 山 越 2002: 120] 5 ただし テキスト 以 外 の 日 常 会 話 から 使 用 例 を 収 集 している なお 以 下 本 稿 で 提 示 する 用 例 の 出 典 を 各 用 例 末 尾 に [ ] で 示 す 出 典 が 明 示 されていない 用 例 は 日 常 会 話 の 観 察 および elicitation によって 得 られた 用 例 である 6 本 来 母 音 調 和 は 語 内 部 でおこる 現 象 であるが このように 語 境 界 を 超 えて 小 詞 も 母 音 が 交 替 する 例 は このほかに 述 語 人 称 小 詞 (e.g. 2 人 称 単 数 =ta~=te~=tɔ) 疑 問 小 詞 (=go~=gu)などいくつか 存 在 する 山 越 (2004)で 述 べたように 筆 者 は 高 低 アクセントの 変 化 の 有 無 が 倚 辞 と 接 尾 辞 とを 分 ける 基 準 と 考 えて おり 母 音 調 和 は 語 と 接 尾 辞 とを 区 別 する 一 つのパラメータとはなりうるものの 絶 対 的 基 準 にはなりえ ないという 立 場 をとっている 64
山 越 康 裕 /シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 シネヘン ブリヤート 語 の 名 詞 句 や 分 詞 は 格 接 尾 辞 をともなう このとき 人 称 所 有 小 詞 は [ 語 幹 - 格 接 尾 辞 ] に 後 続 する (4) axai-jii=s j ni 兄 -ACC=2SG:POSS 君 の 兄 を (5) negen-ei=n 7 1-GEN=3:POSS その 一 つの [ 山 越 2002: 108] (6) ir-xe-de=n 来 る-FUT.PTCP-DAT=3:POSS ( 彼 /らが) 来 るときに [ 山 越 2006a: 151] 以 下 名 詞 句 動 詞 をそれぞれ host とする 場 合 の 統 語 上 のふるまいと 機 能 についてそれ ぞれみることにする 2. 名 詞 句 + 人 称 所 有 小 詞 2.1 所 有 者 標 示 機 能 名 詞 句 が host となる 場 合 (1) の 例 のように 先 行 する host の 所 属 先 の もしくはその 名 詞 句 に 関 係 する 人 称 を 示 す 同 じく 所 属 先 関 係 者 の 人 称 を 示 す 方 法 として シネヘン ブリヤート 語 では 属 格 代 名 詞 を 先 行 させる 形 式 (7) がある 以 下 [host= POSS]によって 所 属 所 有 関 係 を 示 すタイプ(=(1))を 小 詞 型 とよび [ 所 有 者 -GEN host] によって 所 属 所 有 関 係 を 示 すタイプ(=(7))を 属 格 型 とよぶことにする (7) s j inii axai 2SG:GEN 兄 君 の 兄 さらに 属 格 代 名 詞 人 称 所 有 小 詞 の 双 方 で 所 属 先 関 係 者 の 人 称 を 示 す 形 式 (8) もあ る これを 二 重 型 とよぶことにする (8) s j inii axai=s j ni 2SG:GEN 兄 =2SG:POSS 君 の 兄 [ 山 越 2006a: 147] シネヘン ブリヤート 語 において 所 有 者 - 被 所 有 者 の 関 係 を 示 す 場 合 以 上 の 三 つの 形 式 のいずれかが 用 いられる この 三 つの 形 式 のあいだには 何 らかの 意 味 機 能 的 差 異 が 存 7 シネヘン ブリヤート 語 では 形 容 詞 数 詞 なども 名 詞 的 に 機 能 し 名 詞 類 ( 山 越 2006b)としてまとめら れる このことから これらを 主 要 部 とする 句 構 造 も 広 く 名 詞 句 とみなす 65
在 するものと 考 えられるが 現 時 点 では 明 らかではない 8 ただし 山 越 (2006a) を 用 いて 各 人 称 におけるそれぞれの 形 式 の 使 用 状 況 を 分 析 したと ころ 表 3 のような 分 布 となった 表 3 では 山 越 (2006a) 中 で 用 例 が 確 認 されなかった 1, 2 人 称 複 数 代 名 詞 を 除 いている 小 詞 型 属 格 型 二 重 型 1SG 16 例 12 例 2 例 2SG 7 例 1 例 7 例 3 9 例 0(+22) 9 例 2(+1) 例 表 3. 所 有 関 係 標 示 形 式 の 分 布 このテキスト 中 では 3 人 称 代 名 詞 属 格 が 被 所 有 者 に 先 行 する 属 格 型 の 使 用 例 は 確 認 され なかった 3 人 称 において 属 格 形 が 確 認 されないという 点 また 1, 2 人 称 において 小 詞 型 が 属 格 型 よりも 多 用 されている 点 を 考 慮 すると 小 詞 型 が 属 格 型 よりも 優 勢 であることが 考 えられる ただしテキストが 自 然 発 話 によるものではなく また 表 3 にみるように 用 例 自 体 が 乏 しいという 問 題 があるため この 点 にかんしては( 機 能 的 差 異 の 分 析 も 含 め) 今 後 より 詳 細 に 分 析 をおこなう 必 要 がある また この 表 3 の 分 布 は 隣 接 するモンゴル 語 における 分 布 と 比 べ 二 重 型 が 用 いられ ている 点 が 大 きく 異 なる 山 越 (2010: 110) で 述 べたように モンゴル 語 の 場 合 は 双 方 の 標 識 つまり 属 格 と 人 称 所 有 小 詞 がともに 所 属 先 を 標 示 すると 判 断 される 二 重 型 はみあたら ない みかけ 上 二 重 型 となっている 形 式 について 梅 谷 (2003: 216) は 人 称 代 名 詞 属 格 形 は 所 属 の 意 味 を 表 し 人 称 所 属 小 辞 10 は 非 所 属 用 法 11 で 用 いられる と 分 析 したうえで そ の 証 左 として (9) のような 人 称 の 不 一 致 の 例 をあげている 12 (9) Manaj Xaan tüüx žüžig=čin kino-goor bol gurvan angi-taj šüü dee. 1PL:GEN PN 演 劇 2SG:POSS 映 画 -INS FP 3 部 -PROP SFP SFP 我 々の ハーン トゥーフ という 演 劇 は 映 画 では 三 部 作 なんですよ [ 梅 谷 2003: 216] つまり モンゴル 語 では 人 称 所 有 小 詞 が 所 有 者 の 人 称 数 を 標 示 しない 場 合 があるとい うことである 一 方 シネヘン ブリヤート 語 の 二 重 型 の 例 からはこのような 不 一 致 がみあたらない 先 行 する 人 称 代 名 詞 属 格 形 (3 人 称 の 場 合 は 普 通 名 詞 属 格 形 もありうる) 8 近 隣 のハムニガン モンゴル 語 では 所 有 者 にとって 身 近 な 所 有 物 ほど 小 詞 型 が 好 まれる 傾 向 があるこ とから 譲 渡 可 能 性 による 使 い 分 けがあることが 推 測 される( 山 越 2010) ただしシネヘン ブリヤート 語 においては そのような 使 い 分 けは 確 認 できなかった 9 カッコ 内 の 数 字 は 先 行 する 所 有 者 名 詞 として 3 人 称 代 名 詞 ではなく 普 通 名 詞 属 格 形 が 用 いられてい る 例 の 数 を 示 している 10 本 稿 における 人 称 所 有 小 詞 を 指 す 11 人 称 所 有 小 詞 が 所 有 所 属 先 を 明 示 するのではなく 先 行 名 詞 句 を 強 調 するために 用 いられる 用 法 ( 梅 谷 2003)を 指 す 12 梅 谷 (2003: 216) の 音 韻 表 記 訳 にもとづく 形 態 素 分 析 およびグロスは 筆 者 による 66
山 越 康 裕 /シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 と 人 称 所 有 小 詞 は 常 に 対 応 し (10) 対 応 関 係 を 崩 した つまり 不 一 致 の 状 態 にした 作 例 (11) は 非 文 と 判 断 される (10) minii s j aarpa-jii=mni xaana tab j -aa=ta. 1SG:GEN マフラー-ACC=1SG:POSS どこに 置 く-IPFV.PTCP=2PL ぼくのマフラーはどこに 置 きましたか? (11) * minii s j aarpa-jii=s j ni xaana tab j -aa=ta. 1SG:GEN マフラー-ACC=2SG:POSS どこに 置 く-IPFV.PTCP=2PL こうした 制 約 をみると モンゴル 語 に 比 べ シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 は 所 属 先 関 係 者 の 人 称 を 明 示 する 機 能 が 強 いといえる ただしその 一 方 で 所 属 先 関 係 者 の 人 称 を 示 しているとはとらえがたい(= 非 所 属 用 法 ( 梅 谷 2003)に 相 当 する) 用 例 もわずかながら 確 認 できる 山 越 (2006a) からは 用 例 が 確 認 されなかったものの 民 話 等 の 語 りを 収 録 したテキスト( 山 越 2002)では 2 人 称 単 数 所 有 小 詞 が 用 いられた 10 例 ( 全 体 の 4.9%)が 非 所 属 用 法 として 用 いられていた (12) zaa, tii-xe-de=n xuuged-uud-e=s j ni aba-d-aa さあ そうする-FUT.PTCP-DAT=3:POSS 子 ども-PL-E=2SG:POSS 父 -DAT-REFL ɔs j -ɔɔd=le gɔn j g j ɔn-ɔɔd hal-aa-gui ge-ne. 着 く-PFV.CVB=FP 頼 む-PFV.CVB 別 れる-IPFV.PTCP-NEG という-PRS ( 子 どもたちが 自 分 たちの 母 (= 天 女 )が 衣 をまとうと 白 鳥 に 変 身 すると 知 って) さあ すると 子 どもたちは( 自 分 の) 父 親 のところに 行 って( 隠 している 衣 を 出 し てくれと)せがんで 離 れないという [ 山 越 2002: 109] (13) tere xun=s j ni ubhen sɔɔ nusgen bai-z j ai-g-aad, ter-ii=s j ni その 人 =2SG:POSS 草 の 下 に 裸 いる-PROG-E-PFV.CVB 3SG-ACC=2SG:POSS asa xatx-ool-han=jum=bud=dee. ter-ii=s j ni ger-t-ee フォーク ささる-CAUS-PFV.PTCP=SFP=SFP=SFP. 3SG-ACC=2SG:POSS 家 -DAT-REFL ɔr-ool-xa-da=n tere=s j ni jaa-g-aa=jum bai-na... 入 る-CAUS-FUT.PTCP=3:POSS 3SG:NOM=2SG:POSS どうする-E-IPFV.PTCP=SFP いる-PRS その 人 が 草 の 下 で 裸 でいたので そいつをフォークでつついたんだって そいつを 自 分 の 家 に 彼 ( 裸 でいたその 人 )が 迎 え 入 れたとき そいつはどうしたんだったか [ 山 越 2002: 121] (12) (13) の 2 人 称 単 数 所 有 小 詞 が 接 続 する 例 は いずれも host が 民 話 の 中 の 登 場 人 物 を 指 示 している この 登 場 人 物 が 聞 き 手 に 直 接 関 係 している 聞 き 手 に 所 属 している 存 在 だとは 考 えにくいことから 非 所 属 用 法 にあたると 判 断 できる 一 方 で 1 人 称 3 人 称 所 有 小 詞 が 用 いられた 例 は host の 所 属 先 が 話 し 手 (1 人 称 )も しくは 第 三 者 (3 人 称 )にあることが 明 確 であった ただし 対 象 テキスト 中 では 次 の (14) 67
における xon j s j oboo-jii=n についてのみ 非 所 属 用 法 にあたる 可 能 性 を 残 している (14) habar=in habard-aad=le ul-s j -ɔɔ-xɔ-dɔ tere 爪 =3:POSS 引 っかく-PFV.CVB=FP 残 る-PFV-IPFV.PTCP-FUT.PTCP-DAT 3SG niid-eed jab-s j -ba, teŋger j -t j e-jee. ii-g-eed xon j s j oboo-jii=n 飛 ぶ-PFV.CVB 行 く-PFV-PST 天 -DAT-REFL こうする-E-PFV.CVB 白 鳥 -ACC=3:POSS habar=in xar bai-dag ge-deg. 爪 =3:POSS 黒 い いる-HBT.PTCP という-HBT.PTCP ( 天 女 の 化 身 である 白 鳥 の) 爪 が( 鍋 を) 引 っかいただけになってしまって それ (= 白 鳥 )は 飛 んで 行 った ( 自 分 が 暮 らす) 天 へと このことがあって 白 鳥 という ものは 爪 が 黒 くなっているという(ようになった) [ 山 越 2002: 111] (14) は 天 女 の 化 身 である 白 鳥 が( 自 分 が 暮 らす) 天 へと 帰 っていく 際 に 乳 の 入 った 鍋 に 爪 をひっかけたことで いまの 白 鳥 の 爪 が 黒 くなっているのだ ということを 伝 える 一 節 である この xon j s j oboo-jii=n の 3 人 称 所 有 小 詞 が 天 に 照 応 し 天 に 所 属 してい ると 読 み 取 ることができる しかし 一 方 で 述 語 動 詞 が 習 慣 形 であらわれていることから ここでの xon j s j oboo 白 鳥 が 直 前 までの 文 脈 で 用 いられた 特 定 の 白 鳥 とは 異 なり 総 称 的 に 用 いられているともとらえられる その 解 釈 の 場 合 は この 3 人 称 所 有 小 詞 が 天 に 照 応 するかどうかは 判 然 としない そのため 非 所 属 用 法 である 可 能 性 も 捨 てきれな い 2 人 称 所 有 小 詞 に 集 中 して 非 所 属 用 法 が 集 中 しているのは host を 聞 き 手 に 所 属 している 要 素 として 示 すことで 聞 き 手 の 関 心 を 引 きつけているためと 考 えられる これは 水 野 (1991) がモンゴル 語 の 所 有 小 詞 について 関 心 の 所 在 がどこにあるかを 示 す と 指 摘 して いるのと 同 様 のふるまいといえる 所 有 者 所 属 先 を 示 すという 所 有 小 詞 の 機 能 が 拡 張 し たものととらえてよいだろう 13 ただし モンゴル 語 と 大 きく 異 なる 点 は ここまで 見 たような 非 所 属 用 法 が シネ ヘン ブリヤート 語 ではあくまで 周 辺 的 な 用 法 である 点 である モンゴル 語 にかんしては 水 野 (1991) が 用 例 を 分 析 してみると ( 用 語 上 での 矛 盾 を 承 知 でいえば) 純 粋 に 所 属 を 表 している 所 属 小 辞 14 は 少 ない と 述 べている つまり 非 所 属 用 法 として 用 いられるケー スが 多 いということになる 一 方 シネヘン ブリヤート 語 では 所 属 関 係 が 明 確 な 場 合 に 用 いられ (12) (13) のような 非 所 属 用 法 はむしろわずかである さらに 属 格 名 詞 ( 代 名 詞 を 含 む)が 先 行 している 場 合 に その 人 称 数 と 一 致 しない 人 称 所 有 小 詞 が 使 われる (=(11))のような 例 も 確 認 されない 以 上 をまとめると モンゴル 語 では 人 称 所 有 小 詞 が 所 有 者 所 属 先 の 人 称 数 に 一 致 し ない 場 合 があるのに 対 し シネヘン ブリヤート 語 では 一 致 のマーカーとして(つまり 人 称 数 を 標 示 するマーカーとして) 人 称 所 有 小 詞 が 機 能 しているといえる 13 このように 考 えると 所 属 用 法 と 非 所 属 用 法 との 間 に 境 界 線 を 引 いて 明 確 に 区 別 することは 困 難 となる 14 本 稿 における 人 称 所 有 小 詞 をさす 68
山 越 康 裕 /シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 また 人 称 所 有 小 詞 が 一 致 のマーカーとして 用 いられやすいという 上 記 の 傾 向 は 下 の 表 4 に 示 す 人 称 所 有 小 詞 のテキスト 別 の 用 例 の 分 布 からも 読 み 取 ることができる 民 話 等 の 語 りである 山 越 (2002) と 日 常 会 話 の 文 例 を 集 めた 山 越 (2006a) とで 名 詞 句 に 接 続 す る 人 称 所 有 小 詞 の 使 用 例 の 分 布 を 比 較 すると 話 し 手 聞 き 手 以 外 の 第 三 者 が 照 応 先 とな る 3 人 称 所 有 小 詞 は 山 越 (2002) で 68 例 山 越 (2006a) で 14 例 と 他 の 人 称 所 有 小 詞 の 使 用 分 布 に 比 べて 著 しい 差 がみられた( 表 4 参 照 ) 山 越 (2002) 山 越 (2006a) 計 1SG 3 例 18 例 21 例 1PL 0 例 0 例 0 例 2SG 10 例 17 例 27 例 2SG.HON 1 例 0 例 1 例 2PL 3 例 0 例 3 例 3 68 例 14 例 82 例 計 85 例 49 例 134 例 表 4. テキスト 別 にみた 名 詞 句 + 人 称 所 有 小 詞 の 出 現 数 山 越 (2006a) で 扱 った 日 常 会 話 の 文 例 は 内 蒙 古 大 学 蒙 古 語 文 研 究 所 が 1980 年 に 実 施 し たモンゴル 諸 語 の 現 地 調 査 で 用 いた 調 査 票 日 常 会 話 翻 訳 をもとにしている この 文 例 集 は 問 い- 答 えの 対 応 がある 文 例 がいくつかあるものの 多 くは 前 後 の 文 脈 がないものと なっている そのため 所 有 者 となる 第 三 者 の 情 報 が 欠 落 している 場 合 が 多 い 一 方 民 話 などの 語 り である 山 越 (2002) では 文 脈 から 所 有 者 を 特 定 することが 可 能 な 場 合 が 多 い とくに 3 人 称 所 有 小 詞 については 照 応 先 を 特 定 しやすい 語 り のテキストに 多 く 用 いられていることを 考 えると やはり 人 称 数 のマーカーとして 機 能 していると 考 え られる 以 上 の 点 から シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 は 名 詞 に 接 続 する 場 合 には 所 有 者 の 人 称 数 を 標 示 するために 用 いられるとまとめられる ただしその 機 能 の 延 長 とし て 2 人 称 所 有 小 詞 は 聞 き 手 の 関 心 をひきつけるために 必 ずしも 聞 き 手 の 所 有 物 ではない 対 象 に 対 して 接 続 し host を 聞 き 手 に 関 係 するもの として 示 す 場 合 もある モンゴル 語 では 人 称 数 における 一 致 を 示 すマーカーとして 必 ずしも 機 能 しないのに 対 し シネヘン ブリヤート 語 では 基 本 的 に 人 称 数 のマーカーとして 機 能 する このよう な 差 異 がみられる 原 因 はわからないが シネヘン ブリヤート 語 では 述 語 人 称 小 詞 による 主 語 と 述 語 の 一 致 があり モンゴル 語 ではそのような 一 致 がないという 点 に 関 係 している のではないかとも 考 えられる 15 ただし 仮 にそうだとすると 小 詞 をともなわない 属 格 型 の 所 有 構 造 がなぜ 存 在 するのかが 問 題 となる これについては 今 後 より 詳 細 に 分 析 を 進 15 山 越 (2010) ではブリヤート 語 と( 地 理 的 系 統 的 に) 近 い 関 係 にあると 考 えられるハムニガン モン ゴル 語 の 所 有 構 造 について 扱 っている ハムニガン モンゴル 語 についても 用 例 を 見 るかぎり 所 属 関 係 が 明 確 な 場 合 に 限 定 して 人 称 所 有 小 詞 が 用 いられており やはり (9) のような 例 は 確 認 されない ちなみ に ハムニガン モンゴル 語 にも 主 語 と 述 語 の 一 致 が 存 在 する 69
める 必 要 がある 2.2 その 他 の 機 能 の 可 能 性 モンゴル 語 の 人 称 所 有 小 詞 にかんして Luvsanvandan (1966: 270) は 主 語 のあとに 人 称 所 有 小 詞 を 用 いて 主 語 を 明 示 できる ( 原 文 :Мөн гурван биед хамаатуулах ёсыг холбогдох өгүүлэгдэхүүн гишүүний хойно нь хэрэглэж тодочлон үзүүлж болио.)とし また 小 沢 (1986: 107) は 主 格 表 示 の 語 尾 として 用 いられる と 説 明 している シネヘン ブリヤート 語 の テキストを 確 認 したところ たしかに 人 称 所 有 小 詞 をともなう 名 詞 句 は 節 の 主 語 名 詞 句 に 接 続 する 例 が 多 いという 特 徴 がある 節 の 主 語 名 詞 句 に 接 続 する 例 は 名 詞 句 に 接 続 し た 全 134 例 中 93 例 あった (15) (15) axai=m nam-ahaa huul-de bɔd-dɔg. 兄 =1SG:POSS 1SG-ABL 終 わり-DAT 起 きる-HBT.PTCP 私 の 兄 は 私 より 遅 く 起 きます [ 山 越 2006a: 170] しかし 主 語 に 接 続 する 例 が 多 いという 傾 向 はあるが 主 語 以 外 の 名 詞 項 にも 接 続 する (134 例 中 41 例 は 主 語 以 外 の 要 素 に 接 続 ) 16 主 語 以 外 の 名 詞 項 に 接 続 した 例 のなかでは 節 内 部 に 他 の 名 詞 項 があらわれない 場 合 (16) に 接 続 する 例 が 比 較 的 多 く 確 認 された 主 語 以 外 の 要 素 に 接 続 しており かつ 節 内 部 に 他 の 名 詞 項 があらわれなかった 例 は 全 134 例 中 22 例 であった また 残 りの 19 例 のうち 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 した 名 詞 句 が 節 の 先 頭 に 位 置 していた 例 が 10 例 あった (17) (16) ubgen=in itg-eed xobsah-ii=n ug-s j ix j -ɔɔ. 夫 =3:POSS 信 じる-PFV.CVB 衣 -ACC=3:POSS 与 える-PFV-IPFV.PTCP ( 彼 女 の) 夫 は( 彼 女 を) 信 じて( 彼 女 の) 衣 を 渡 してしまった [ 山 越 2002: 110] (17) araata gar-aad gui-xe-de malgai-jii=n tar j x j a-da abl-aad 狐 出 る-PFV.CVB 走 る-FUT.PTCP-DAT 帽 子 -ACC=3:POSS 頭 -DAT とる-PFV.CVB gui-g-ee=jum=buddee. ( 中 略 ) malgai-jii=n araata umd-eed=le, 走 る-E-IPFV.PTCP=SFP=SFP 帽 子 -ACC=3:POSS 狐 着 る-PFV.CVB=FP ( 男 が 穴 に 帽 子 をかぶせて 休 んでいたところ) 狐 が( 穴 から) 走 って 出 てきて ( 彼 の) 帽 子 を 頭 に 載 せて 走 ったんだという ( 中 略 )( 彼 の) 帽 子 を 狐 がかぶってしまい [ 山 越 2002: 120] これらの 例 のほとんどは 前 後 の 文 脈 から 主 題 と 判 断 できる 場 合 が 多 い シネヘン ブリヤート 語 はモンゴル 語 同 様 SOV が 基 本 語 順 となっているが 主 題 化 された 語 が 文 頭 ( 節 の 先 頭 )に 移 動 する 傾 向 があり O と S の 語 順 は 比 較 的 自 由 に 交 替 する (17) の 例 に おける 下 線 を 引 いた 要 素 は O が S に 先 行 して 節 の 先 頭 に 位 置 し 主 題 として 提 示 されて いる 16 なお Luvsanvandan (1966: 271) は 強 調 のために 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 しているからといって それが 主 語 であるとは 限 らない 場 合 があり 両 者 を 混 同 してはならないとも 言 及 している 70
山 越 康 裕 /シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 また (18) のように 対 比 される 要 素 にそれぞれ 人 称 所 有 小 詞 を 用 いる 例 もある (18) xes-iiji=n xaxal-aad xɔjɔr bɔlg-ɔɔd, neg tal-iiji=n alxa-tee, 太 鼓 -ACC=3:POSS 割 る-PFV.CVB 2 する-PFV.CVB 1 面 -ACC=3:POSS 柄 -PROP nugɵɵ tal=in alxa-gui bɔlgɔ-hɔn=jum ge-ne. 別 の 面 =3:POSS 柄 -NEG する-PFV.CVB=SFP という-PRS ( 帝 釈 天 はシャマンの) 太 鼓 を 二 つに 割 り 一 方 を 柄 持 ちに もう 一 方 は 柄 無 しに したのだという [ 山 越 2002: 126] こうした 傾 向 がみられることから 水 野 (1991: 45) は(モンゴル 語 の 人 称 所 有 小 詞 につ いて) 旧 情 報 のマーカー であるとし 山 越 (2006a: 292), Yamakoshi (2011) でもそれぞれ 人 称 所 有 小 詞 が 主 題 化 の 機 能 を 有 すると 言 及 している ただし 厳 密 にいえばこれら の 記 述 は 正 しくない たしかに 主 題 旧 情 報 となる 名 詞 句 に 接 続 している 例 が 傾 向 と して 多 くみられる しかし たとえば (19) (20) のように 同 一 節 中 で 複 数 の 名 詞 句 項 に 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 しており 名 詞 句 項 の 双 方 ともを 主 題 ととらえることが 難 しそうな 例 や 主 題 ではないと 思 われる 名 詞 句 に 接 続 している 例 (21) も 確 認 される (19) nɔxɔi=n mɔrj-iiji=n xutel-eed, 犬 =3:POSS 馬 -ACC=3:POSS 引 っ 張 る-PFV.CVB ( 彼 の) 犬 が(その) 馬 を 引 っ 張 って [ 山 越 2002: 120] (20) minii axai=m tar j x j an=in ix-eer ubde-z j e bai-na. 1SG:GEN 兄 =1SG:POSS 頭 =3:POSS 大 きい-INS 痛 む-IPFV.CVB いる-PRS 私 の 兄 は 頭 がひどく 痛 い(よう)です [ 山 越 2006a: 156] (21) ɔdɔɔ iig-eed bii basgan-ai=tni altan b j eheleg 今 こうする-PFV.CVB 1SG:NOM 娘 -GEN=2SG.HON:POSS 金 の 指 輪 bid j er-ne=b j. 探 す-PRS=1SG さあそしたら 私 は(あなたの) 娘 さんの 金 の 指 輪 を 探 しますよ [ 山 越 2002: 121] また 主 題 旧 情 報 であるからといって 常 に 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 するとも 限 らない (22) の 例 では gaxai-n tar j x j a ブタの 頭 がそれまでの 文 脈 で 言 及 されており かつこの 名 詞 句 を 含 む 節 の 先 頭 に 位 置 している しかし 人 称 所 有 小 詞 は 接 続 していない (22) sad-tar-aa gaxai-n m j axa id j -eed=le xobsaha baha 満 腹 になる-LMT.CVB-REFL ブタ-GEN 肉 食 べる-PFV.CVB 衣 また umde-xe=jum=buddee. ii-g-eed gaxai-n tar j x j a mɔdɔn-dɔ 着 る-FUT.PTCP=SFP=SFP こうする-E-PFV.CVB ブタ-GEN 頭 木 -DAT ii-z j e s j ɔrl-ɔɔd, ( 以 下 略 ) こうする-IPFV.CVB 串 刺 しにする-PFV.CVB 71
( 占 いをするためにブタの 頭 が 必 要 だと 裸 の 男 がある 家 の 者 に 告 げたところ その 家 でブタを 調 理 し 衣 が 用 意 された) ( 彼 は)おなかいっぱいブタの 肉 を 食 べ 衣 もま とったのだった こうして ブタの 頭 を 木 にこうやって 串 刺 しにして( 以 下 略 ) [ 山 越 2002:121] 以 上 の 特 徴 を 考 えると 小 詞 そのものが 主 題 化 の 機 能 旧 情 報 のマーカーとしての 機 能 を 有 しているわけではなく 主 題 となる host に 接 続 する 傾 向 があるということになろう 3. 動 詞 + 人 称 所 有 小 詞 動 詞 に 接 続 するケースは 山 越 (2002) および 山 越 (2006a) では 全 204 例 中 70 例 ある( 表 2 参 照 ) これらの 例 は a) 動 詞 の 要 求 する 項 として 機 能 する 名 詞 節 の 分 詞 述 部 に 接 続 する 場 合 (16 例 (23)) b) 副 詞 節 の 分 詞 述 部 17 および 副 動 詞 述 部 18 に 接 続 する 場 合 (50 例 (24) (25)) c) 文 末 の 分 詞 述 部 に 接 続 する 場 合 (4 例 (26))のいずれかに 分 類 される (23) xormasta teŋger j -iin dɔmbɔ sɔɔ bai-x-iiji=n ɔl-z j ɔ 帝 釈 天 神 -GEN 壺 中 に ある-FUT.PTCP-ACC=3:POSS 得 る-IPFV.CVB med-eed, 知 る-PFV-CVB 帝 釈 天 の 壺 の 中 に(それ(= 魂 )が)あることを 知 り 得 て [ 山 越 2002: 126] (24) bii jad-xa-d-aan neg xar-hoo=le=b j =daa, 1SG:NOM できない-FUT.PTCP-DAT-REFL 1 見 る-FUT=FP=1SG=SFP xobsaha, ge-xe-de=n baha sedx j el ur ubd-eed, 衣 という-FUT.PTCP.DAT=3:POSS また 心 みぞおち 痛 む-PFV.CVB 私 はどうもせず ただ 見 るだけです 衣 を と( 彼 女 が) 言 うと ( 彼 は)また 心 を 痛 めて [ 山 越 2002: 107] (25) xar-haar bai-tar=in altan b j eheleg gazar-ta 見 る-SCC.PTCP いる-LMT.CVB=3:POSS 金 の 指 輪 地 面 -DAT onagaa-s j ix j -ba ge-ne. 落 とす-PFV-PST という-PRS ( 彼 が) 見 続 けていると 金 の 指 輪 を 落 としてしまったそうな [ 山 越 2002: 121] (26) bii ɔdɔɔ jab-xa=mni. 1SG:NOM いま 行 く-FUT.PTCP=1SG:POSS 17 分 詞 は 与 位 格 語 尾 -da 3 を 接 続 することで 主 節 動 作 のおこなわれた 時 点 を 具 格 語 尾 -aar 4 を 接 続 すること で 主 節 動 作 の 目 的 をそれぞれ 示 す 副 詞 節 を 形 成 する 18 ちなみに 筆 者 のこれまでの 調 査 ではシネヘン ブリヤート 語 の 副 動 詞 として 7 種 類 を 確 認 している このうち 3 種 が 等 位 節 4 種 が 従 属 節 述 部 となる 人 称 所 有 小 詞 を 接 続 することができるのは 従 属 節 述 部 として 機 能 する 4 種 ( 条 件 -bal 3 限 界 -tar 3 継 続 -haar 4 継 起 -oot 2 )に 限 られる (cf. Yamakoshi 2011) 72
山 越 康 裕 /シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 私 はもう 行 きます( 行 かなくてはならない) [ 山 越 2006a: 146] いずれの 場 合 にも 共 通 しているのが host の 主 語 を 人 称 所 有 小 詞 が 標 示 するという 点 であ る ただし a), b) の 用 法 は 主 節 主 語 と host の 主 語 が 異 なる 場 合 に 限 定 される 主 節 主 語 と host の 主 語 が 同 一 の 場 合 は (27) のように host に 再 帰 所 有 接 尾 辞 -aa 4 が 接 続 するためで ある (27) uxer-ei deeguur gar-aad gui-z j e jab-ahaar sumr-eed 牛 -GEN 上 に 出 る-PFV.CVB 走 る-IPFV.CVB 行 く-SCC 落 ちる-PFV.CVB ona-xa-d-aa iim holzagar urɵɵhen eber-tee sar 落 ちる-FUT.PTCP-DAT-REFL このような 気 味 悪 い(?) 片 方 の ツノ-PROP 去 勢 牛 deer ona-s j -ba. の 上 に 落 ちる-PFV-PST 牛 の 上 に 出 て 走 っていって 落 っこちて ( 自 分 が) 落 ちるときにはこんな 気 味 悪 い 片 ツノの 去 勢 牛 の 上 に 落 ちてしまった [ 山 越 2002: 122-123] ところで 2.1 で 述 べたとおり ブリヤート 語 は 隣 接 するモンゴル 語 とは 異 なり 主 語 と 述 語 の 一 致 がある 言 語 である 通 常 主 節 述 語 には 述 語 人 称 小 詞 ( 表 5)が 接 続 する 単 数 複 数 1 人 称 =bi~=b j =bd j a 2 2 人 称 =s j a 3 ~=s j =ta 3 ~=t 19 3 人 称 無 標 表 5. シネヘン ブリヤート 語 の 述 語 人 称 小 詞 述 語 人 称 小 詞 は 述 部 が 名 詞 の 場 合 (28) も 動 詞 の 場 合 (29) も 関 係 なく 用 いられる (28) bii sorags j a=b j. 1SG:NOM 学 生 =1SG 私 は 学 生 です [ 山 越 2006a: 141] (29) bii zorgaan sag-aar bod-dog=bi. 1SG:NOM 6 時 -INS 起 きる-HBT.PTCP=1SG 私 はいつも 6 時 に 起 きます [ 山 越 2006a: 170] a) 名 詞 節 述 部 b) 副 詞 節 述 部 においては 述 語 人 称 小 詞 のかわりに 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 し 主 語 の 人 称 を 示 す それに 対 し 述 語 人 称 小 詞 は 主 節 述 部 にのみ 接 続 し 従 属 節 には 接 続 しない つまり (23)-(25) における 人 称 所 有 小 詞 の 位 置 にはあらわれない しかし ここで 問 題 となるのが 上 記 c) (26) の 場 合 である (26) は 主 節 述 語 であるにもかかわらず 19 2 人 称 複 数 述 語 小 詞 は 2 人 称 単 数 の 敬 称 としても 用 いられる 73
人 称 所 有 小 詞 が 接 続 している (26) のように 文 末 に 用 いられる 人 称 所 有 小 詞 は その 用 例 がきわめて 限 定 されているよ うである 対 象 としたテキスト 中 では このほか (30)-(32) の 例 が 確 認 された (30) bii zaabaha sag-t-aa xur-xe=mni. 1SG:NOM 必 ず 時 -DAT-REFL 至 る-FUT.PTCP=1SG:POSS 私 は 必 ず 時 間 までに 到 着 しないと( 到 着 しなくてはならない) [ 山 越 2006a: 146] (31) bii munɵɵ jab-xa=m. 1SG:NOM いま 行 く-FUT.PTCP=1SG:POSS 私 はもう 行 きます( 行 かなくてはならない) [ 山 越 2006a: 170] (32) bii onta-xa=m. deŋ ul j ee-z j e ug-ii=s j. 1SG:NOM 寝 る-FUT.PTCP=1SG:POSS 明 り 消 す-IPFV.CVB 与 える-2.IMP=2SG 私 は 寝 ます 明 りを 消 してください [ 山 越 2006a: 176] 確 認 された 例 は いずれも 未 来 分 詞 に 1 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 している これら(26) (30)-(32) の 用 例 のほか 日 常 会 話 の 観 察 でもこの [ 未 来 分 詞 +1 人 称 所 有 小 詞 ] の 形 式 しか 確 認 してい ない また この 構 造 はいずれも 当 該 動 作 をすぐにおこなう 必 要 がある という 義 務 の 意 味 を 伴 う (26) (30)-(32) などの 文 では 人 称 所 有 小 詞 のかわりに 述 語 人 称 小 詞 を 接 続 することも 可 能 である ただし (26) の 人 称 所 有 小 詞 を 述 語 人 称 小 詞 と 交 換 した (33) では 義 務 の 意 味 合 いが 消 える (30)-(32) で 用 いられている 人 称 所 有 小 詞 を 述 語 人 称 小 詞 に 交 換 した 場 合 も いずれも 非 文 とはならないが 義 務 の 意 味 合 いはなくなる (33) bii ɔdɔɔ jab-xa=b j. 1SG:NOM いま 行 く-FUT.PTCP=1SG:POSS 私 はもう 行 きます このような 人 称 所 有 小 詞 述 語 人 称 小 詞 のふるまいは シネヘン ブリヤート 語 に 非 常 に 近 いブリヤート 語 ホリ 方 言 20 でも 同 様 に 確 認 される Skribnik (2003: 118) は 述 語 人 称 小 詞 は 命 令 形 を 含 む 定 動 詞 (finite form) および 定 形 述 語 (finite predicates) として 機 能 する 分 詞 (participle) に 接 続 するのに 対 し 非 定 形 の 分 詞 副 動 詞 (non-finitely used participial forms and converbs) の 主 語 は 人 称 所 有 小 詞 および 再 帰 所 有 語 尾 によってあらわされると 説 明 した うえで (26) (30)-(32) のような 1 人 称 所 有 小 詞 が 定 形 述 語 として 機 能 する 未 来 分 詞 に 接 続 する 例 を 特 別 なケース (a special case) として 示 し 未 来 分 詞 は 述 語 人 称 小 詞 人 称 所 有 小 詞 のどちらとも 組 み 合 わせて 用 いることができると 指 摘 している 20 シネヘン ブリヤート 語 は ブリヤート 語 ホリ 方 言 の 下 位 方 言 であるアガ 方 言 に 由 来 する アガ 方 言 話 者 が 中 国 領 に 亡 命 し 世 代 を 重 ねるにつれて 近 隣 のモンゴル 語 中 国 語 等 の 影 響 を 受 け 変 化 した それに よって 現 在 のシネヘン ブリヤート 語 が 形 成 されている 両 言 語 には 音 韻 形 態 面 でいくつか 相 違 がある が 統 語 においては 差 異 はほとんどないと 考 えられる 74
山 越 康 裕 /シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 また Skribnik (2003: 118) は この 文 末 の 人 称 所 有 小 詞 の 用 法 がモーダルな 意 味 合 い( 義 務 )を 含 むという 点 から 次 の (34) のような 人 称 所 有 小 詞 の 用 法 に 類 似 していると 示 唆 している (34) はブリヤート 語 ホリ 方 言 の 例 である 21 (34) gansax-iiji edi-xe=b ge-zhe hana-ha=mni, ただ 一 つのもの-ACC 食 べる-FUT.PTCP=1SG という-IPFV.CVB 思 う-PFV.PTCP=1SG:POSS xoyor bai-na=gü. 2 ある-PRS=Q I intended to eat only one, but there seem to be two [here]. [Skribnik 2003: 118] (34) では 従 属 節 の 述 語 分 詞 に 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 している ただし (34) は Skribnik (2003) の 解 釈 を 見 るかぎり 話 し 手 の 意 志 性 はみられるが 義 務 の 意 味 は 伴 ってい ない また 文 末 で 用 いられる 述 語 人 称 小 詞 と 人 称 所 有 小 詞 は 統 語 的 にみると 若 干 ふるまい が 異 なる 述 語 人 称 小 詞 は 承 接 順 序 において 最 後 尾 に 接 続 するが (35) 人 称 所 有 小 詞 は 疑 問 小 詞 よりも host に 近 い 位 置 に 接 続 する (36) 22 (35) s j ii dɔrɔɔ xobsaha umd-ee=he=g=s j e? 2SG:NOM すぐ 衣 服 着 る-IPFV.PTCP=PFV=Q=2SG あなたはすぐ 服 を 着 ましたか? [ 山 越 2006a: 162] (36) sai-g-aa oo-xa=mnai=go? 茶 -E-REFL 飲 む-FUT.PTCP=1PL:POSS=Q ( 訪 問 した 聞 き 手 に 対 して) ( 私 たちは)お 茶 を 飲 みませんか? [ 日 常 会 話 からの 収 集 / 録 音 なし] つまり 単 に 述 語 人 称 小 詞 と 人 称 所 有 小 詞 が 交 替 可 能 ということではなく そもそも 述 語 人 称 小 詞 によって 完 結 している 文 と 人 称 所 有 小 詞 が 文 末 に 接 続 している 文 とでは 構 造 が 異 なることが 推 測 される 文 末 で 人 称 所 有 小 詞 が 用 いられている 文 は (37) にみられる ような 従 属 節 が 基 層 (37)A にあり その 主 節 が 何 らかのかたちであらわれないもの (37)B ととらえれば 従 属 節 + 文 末 の 疑 問 小 詞 という 構 造 も 説 明 できる (37) A. [ 従 属 節 ]=POSS, [ 主 節 ]=Q B. [ 従 属 節 ]=POSS=Q そうだとすると 人 称 所 有 小 詞 が 文 末 に 用 いられている 文 は 主 節 が 欠 落 し 従 属 節 が 残 された つまり 脱 従 属 化 (insubordination) が 起 こったものととらえられないだろうか 脱 従 属 化 節 は 従 属 節 で 用 いられる 場 合 とは 異 なる 機 能 を 有 することが Aikhenvald (2004) Evans (2007) らによって 指 摘 されている さらに その 機 能 の 類 型 化 を 試 みた Evans (2007: 21 Skribnik (2003) の 音 韻 表 記 訳 にもとづく 形 態 素 分 析 およびグロスは 筆 者 による 22 ただし 人 称 所 有 小 詞 と 述 語 人 称 小 詞 の 両 方 ともが 一 つの host に 対 して 同 時 に 用 いられる 例 は 確 認 して いない 75
401) によれば さまざまな 義 務 (deontic meanings) をあらわす 脱 従 属 節 が 多 くの 言 語 で 用 いられているという (26) (30)-(32) の 例 は 従 属 節 として 用 いられている (34) とは 異 な る 機 能 ( 義 務 )を 有 し その 機 能 も 脱 従 属 節 の 類 型 にあてはまる また 主 節 の 欠 落 によって 脱 従 属 化 したととらえれば (35) (36) にみられる 述 語 人 称 小 詞 との 構 造 の 差 異 も 説 明 可 能 となる また 主 節 述 部 においては 述 語 人 称 小 詞 が 主 語 の 人 称 数 を 示 し 主 節 以 外 では 人 称 所 有 小 詞 が 主 語 の 人 称 を 示 す というように 両 小 詞 の 機 能 的 差 異 も 説 明 できるようになる ただし 現 時 点 では 用 例 がきわめて 少 ないことから 推 測 の 域 を 脱 しきれていない 今 後 より 注 意 深 く 観 察 分 析 する 必 要 がある なお (26) (30)-(32) (36) のように 文 末 に 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 する 用 法 は モンゴル 語 に も 確 認 される シネヘン ブリヤート 語 とは 異 なり ( 現 代 の)モンゴル 語 では 未 来 分 詞 +3 人 称 所 有 小 詞 という 組 み 合 わせに 限 られるが 文 末 に 人 称 所 有 小 詞 が 用 いられる 場 合 (38) がある 23 (38) margaaš bɔrɔɔ ɔr-ɔx=n=ee. 明 日 雨 入 る-FUT.PTCP=3:POSS=SFP 明 日 は 雨 が 降 りそうです [ 岡 田 向 井 2006] 岡 田 向 井 (2006) によれば これは やや 弱 い 証 拠 に 基 づく 推 定 を 意 味 するという つまり 証 拠 性 (evidentiality) にかかわる 文 ということになる シネヘン ブリヤート 語 の 場 合 は 1 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 する 例 しかみつかっておらず かつこちらはモーダルな 意 味 合 い( 義 務 )を 含 む 文 であるのに 対 し モンゴル 語 では 3 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 し かつ 証 拠 性 がかかわっており その 用 法 機 能 ともに 違 いがみられる しかし 脱 従 属 節 が 証 拠 性 にかかわる 表 現 となるケースもいくつかの 言 語 で 確 認 されており (cf. Aikhenvald 2004, Evans 2007) やはり 脱 従 属 節 である 可 能 性 も 捨 てきれない (38) のような 例 も 脱 従 属 節 と 認 められるかどうかについては 別 途 検 討 する 必 要 がある しかし 系 統 的 にも 地 理 的 にも 非 常 に 近 い 両 言 語 で こうした 特 別 な 構 造 が それぞれ 異 なる 機 能 を 有 しているという 点 は 興 味 深 い 4. おわりに 以 上 シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 のふるまいを 概 観 してきた その 機 能 は 次 のようにまとめられる 名 詞 類 に 接 続 する 場 合 は host の 所 属 先 もしくは host に 関 係 する 人 称 数 を 示 す ただ し 聞 き 手 の 所 有 物 ではない 聞 き 手 に 直 接 関 係 のない host に 2 人 称 所 有 小 詞 を 接 続 する ことで host に 対 して 聞 き 手 の 注 意 関 心 を 引 きつける 機 能 をになうこともある また 人 称 所 有 小 詞 は 動 詞 に 接 続 し 当 該 動 作 の 主 語 の 人 称 数 を 示 す 機 能 も 有 する ただし 接 続 する 動 詞 は 主 節 述 語 以 外 の 動 詞 に 限 られる 文 末 の 未 来 分 詞 に 1 人 称 所 有 小 詞 が 接 続 し ~しなければならない といった 義 務 の 意 味 が 含 まれる 場 合 があるが これは 人 称 所 有 小 詞 を 伴 った 脱 従 属 節 ととらえられる 可 能 性 がある 23 岡 田 向 井 (2006) にもとづく ただし 音 韻 表 記 形 態 素 分 析 およびグロスは 筆 者 による 76
山 越 康 裕 /シネヘン ブリヤート 語 の 人 称 所 有 小 詞 名 詞 句 動 詞 それぞれに 接 続 する 用 法 をみると 基 本 的 には 文 中 にあらわれる 要 素 に 関 連 する 人 称 数 を 標 示 する ことが 人 称 所 有 小 詞 の 機 能 といえるだろう ただし 名 詞 類 に 接 続 して 所 属 先 の 人 称 数 を 標 示 する 場 合 については 人 称 代 名 詞 属 格 によって 所 属 先 所 有 者 を 標 示 する 場 合 との 機 能 的 差 異 がいまだ 明 らかではない また 文 末 の 未 来 分 詞 に 接 続 する 例 を 脱 従 属 節 とみなせるかどうかについても 十 分 な 分 析 が 求 められる 今 後 の 課 題 としたい 略 号 一 覧 1,2,3: 人 称 ABL: 奪 格 ACC: 対 格 CVB: 副 動 詞 DAT: 与 位 格 E: 挿 入 音 FP: 焦 点 小 詞 FUT: 未 来 GEN: 属 格 HBT: 習 慣 HON: 敬 称 IMP: 命 令 INS: 具 格 IPFV: 未 完 了 LMT: 限 界 NEG: 否 定 NOM: 主 格 PFV: 完 了 PL: 複 数 PN: 固 有 名 詞 POSS: 所 有 PROG: 進 行 PROP: 所 有 物 PRS: 現 在 PST: 過 去 PTCP: 分 詞 Q: 疑 問 REFL: 再 帰 SCC: 継 続 SFP: 文 末 小 詞 SG: 単 数 参 考 文 献 Aikhenvald, Alexandra Y. (2004) Evidentiality. Oxford: Oxford University Press. Evans, Nicholas (2007) Insubordination and its uses. In: Irina Nikolaeva ed. Finiteness. Oxford: Oxford University Press. 366-431. 一 ノ 瀬 恵 (1988) モンゴル 語 の 人 称 代 名 詞 と 人 称 関 係 小 辞 について 日 本 モンゴル 学 会 紀 要 19: 15-29. Janhunen, Juha (ed.) (2003) The Mongolic Languages. London/New York: Routledge. Kullmann, Rita and D. Tserenpil (1996) Mongolian Grammar. HongKong: Jensco.ltd. Luvsanvandan, Shadavyn (1966) Orchin Tsagijn Mongol Xel Züj. [Modern Mongolian Grammar] Ulaanbaatar: Ulsyn Xevlelijn Xereg Erxlex Xoroo. 水 野 正 規 (1991) モンゴル 語 の 所 属 小 辞 日 本 モンゴル 学 会 紀 要 22: 42-56. 岡 田 和 行 向 井 晋 一 (2006) 東 外 大 言 語 モジュール:モンゴル 語 文 法 モジュール( 標 準 コ ース Lesson 26, Step 1. モダリティ(6) 概 言 [ 解 説 ]) http://www.coelang.tufs.ac.jp/ modules/mn/gmod/courses/c01/lesson26/step1/explanation/082.html(2011 年 2 月 14 日 最 終 閲 覧 ). 小 沢 重 男 (1986) 増 補 モンゴル 語 四 週 間 大 学 書 林. Pellard, Thomas (2010) 宮 古 島 大 神 方 言 の 副 動 詞 と 脱 従 属 化 日 本 言 語 学 会 第 140 回 大 会 予 稿 集 日 本 言 語 学 会. 316-321. Poppe, Nicholas. (1960) Buriat Grammar. Bloomington: Indiana University Press. Skribnik, Elena (2003) Buryat. In: Juha Janhunen (ed.) The Mongolic Languages. London & NewYork: Routledge. 102-128. Street, John C. (1963) Khalkha Structure. Bloomington: Indiana University Press. 梅 谷 博 之 (2003) モンゴル 語 の 二 人 称 所 属 小 辞 東 京 大 学 言 語 学 論 集 22: 209-232. 山 越 康 裕 (2002) シネヘン ブリヤート 語 テキスト 津 曲 敏 郎 編 環 北 太 平 洋 の 言 語 8: 95-129. 77
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