DEIM Forum 2010 D7-1 クライアントサイド 描 画 を 用 いた WebGIS の 高 速 表 示 手 法 山 﨑 優 井 上 潮 東 京 電 機 大 学 工 学 研 究 科 101-8457 東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町 2-2 E-mail: 08gmc24@ms.dendai.ac.jp, inoue@c.dendai.ac.jp あらまし Web 技 術 の 進 歩 により GIS(Geographic Information System)は,WebGIS へと 発 展 した. 現 在 では 急 速 に 普 及 し,より 高 度 な 機 能 を 求 められている.これらを 実 現 するためには,より 自 由 度 の 高 い 地 図 表 現,およびシ ステム 全 体 の 高 速 化 が 必 要 である. 本 研 究 室 では,クライアントサイド 描 画 モデルを 適 用 した CMap を 開 発 した. CMap によって, 自 由 度 の 高 い 地 図 表 現 は 可 能 になったが, 既 存 WebGIS で 実 装 されている 差 分 リクエスト,およ び 先 読 みリクエストなどの 機 能 は 実 装 されておらず,これらの 面 で 既 存 WebGIS と 比 べてシステム 全 体 の 総 合 的 な 速 度 が 劣 る 可 能 性 がある.また,CMap はラスタベースの 既 存 WebGIS のように 画 像 のタイリングが 不 可 能 なため, 単 純 に 差 分 リクエストおよび 先 読 みリクエストは 適 応 できない. 本 研 究 では,この 二 つの 機 能 を 実 装 することで CMap の 高 速 化 を 図 り, 高 速 かつ 自 由 度 の 高 い 低 通 信 量 型 WebGIS の 開 発 を 行 う. キーワード WebGIS,クライアントサイド 描 画 Accelerating display of WebGIS with client-side map drawing E-mail: Yu YAMAZAKI Ushio INOUE 08gmc24@ms.dendai.ac.jp, inoue@c.dendai.ac.jp Keyword WebGIS,Client-side Map Drawing 1. はじめに WebGIS は, サ ー バ - クラ イ ア ン トモ デ ル の Web ア プ リ ケ ーシ ョ ン で あ る. 地 図 を 表 示 す る ク ラ イ ア ン ト と, 地 理 情 報 を 管 理 す る サ ー バ, およ び 両 者 の 通 信 で 構 成 さ れる. 現 在 普 及 し て い る 一 般 的 な WebGIS では,サーバ- ク ラ イ アン ト 間 の 通 信 の 際, 地 図 画 像 デ ー タ を 転 送 し て い る.す な わ ち, 膨 大 な 地 図 画 像 デ ー タ を サ ー バ に 保 持 し,ク ラ イ ア ン ト か ら の リ ク エス ト に 応 じ て, 適 切 な 地 図 画 像 デ ー タ を レ ス ポ ン ス し, ク ラ イ ア ン ト サ イ ド で 表 示 し て い る. こ の 方 式 で は, あ ら か じ め 用 意 さ れ た 画 像 を 用 い た 表 示 し か で き ず, 地 図 デ ー タ の 一 部 を 利 用 し た り, 柔 軟 な カ ス タ マ イズ な ど は で き な い. そ れ は, 地 図 表 示 に お け る 自 由 度 が 低 い と 言 え る. さ ら に,デ ー タ サ イ ズが 大 き い た め, 通 信 に 時 間 を 要 し, サ ー バ に 大 容 量 の 記 憶 装 置 が 必 要 にな る と い う 問 題 も あ る. そこ で, 本 研 究 室 では 通 信 データ 形 式 をテキス ト 形 式 とし, 描 画 を ク ラ イ ア ン ト サイ ド で 行 う ク ラ イ ア ン ト サイ ド 描 画 モ デ ル の CMap を 開 発 した[1]. CMap の 開 発 によって, 自 由 度 の 向 上 と,データ 通 信 量 の 削 減 は 達 成 された.しかし,CMap の 体 感 速 度 を あ げ るた め に は, 従 来 の WebGIS で 行 われている 差 分 デ ー タ 取 得 や 先 読 み リ ク エ ス ト を 行 う 必 要 が あ る が, ク ラ イ アン ト サ イ ド 描 画 方 式 に は, 単 純 に 適 用 は で き な い. その 理 由 は CMap で は, リ クエ ス ト 範 囲 を 矩 形 と し て おり, 街 区 や 建 物 な ど を 一 つの オ ブ ジ ェ ク ト と し て 扱 って い る. そ し て, そ の リ ク エスト 範 囲 のオブ ジ ェ ク トの 集 合 体 を 一 つ の テ キ ス トデ ー タ と し て 通 信 し て い る. こ の た め, 差 分 デ ー タ 取 得 を 行 お う と し て も, 重 複 し て 取 得 し て し ま う デ ー タ( オ ブ ジ ェ ク ト ) が 発 生 する. こ の 差 分 デ ー タ 取 得 がで き な け れ ば, 通 信 量 が 大 き く な っ て し ま う 先 読 み リク エ ス ト の 実 装 が 行 え な い. 本 研 究 の 目 的 は, 上 記 に 挙 げ た 問 題 を 解 決 す る 事 で, CMap の 高 速 化 を 目 指 す. 2. 既 存 WebGIS 最 も 代 表 的 な WebGIS で あ る Google マップを 筆 頭 に 様 々な WebGIS が 普 及 し て い る. 本 研 究 室 で も,TMAP や CMap が 開 発 された.ここでは, 画 像 ベースである Google マップ[2]と TMAP[3]に つ い て 特 徴 と, そ の 問 題 点 述 べる. 2.1. Google マップ Google 社 に よ っ て 無 償 で 提 供 さ れ て い る 最 も 広 く 利 用 さ れて い る WebGIS の 一 つ で ある.Google マ ッ プ [2]で は, 画 像 を タ イ リ ン グ す る こ とで 差 分 デ ー タ 取 得 お よ び ユー ザ の 操 作 に 合 わ せ た 先 読 み リ ク エ ス ト を 行 う こ と で, 体 感 的 な 速 度 向 上 を 図 って い る.
2.2. TMAP TMAP[3]は, 本 研 究 室 で 開 発 し た WebGIS である. Google マ ッ プ 同 様 に, 画 像 の タ イ リン グ に よ る 差 分 デ ー タ 取 得 を 行 っ て い る.Google マ ッ プ は サー バ に 画 像 デ ー タ を 保 持 し て お り, ク ラ イ ア ント か ら の リ ク エ ス ト に よ って あ ら か じ め デ ー タ ベ ー スに 格 納 さ れ た 画 像 デ ー タ を 返 す. し か し, TMAP で は クラ イ ア ン ト か ら の リ ク エス ト に 対 し, サ ー バ で 動 的 に 地 図 画 像 を 生 成 し て い るた め, あ ら か じ め 膨 大 な 画 像 デ ー タ を 保 持 す る 必 要 がな い. 3. 先 行 研 究 既 存 WebGIS の 問 題 点 は, 本 研 究 の 先 行 研 究 である ク ラ イ アン ト サ イ ド 描 画 を 用 いた CMap によって 解 決 された. 3.1. CMap CMap は,Mozilla FireFox, Google Chrome などの 主 要 Web ブ ラ ウ ザ で 動 作 す る ク ラ イ ア ン ト サ イ ド 描 画 モ デ ル を 用 い た WebGIS で あ る. CMap は 既 存 WebGIS の 二 つ の 問 題 点 を 解 決 し, 高 度 な WebGIS を 実 現 する 目 的 で 開 発 された.CMap に よ っ て, 既 存 WebGIS で は 不 可 能 だ っ た 自 由 度 の 高 い 地 図 表 現 と, 画 像 通 信 に よ り 高 コ ス ト に な る 通 信 量 を テキストデー タ で 通 信 す る こ と で 大 幅 な 通 信 量 の 削 減 が 実 現 さ れ た. 図 1 に CMap の 表 示 画 面 を 示 す. 図 1 CMap の 表 示 画 面 ( 本 学 神 田 キ ャ ンパ ス 周 辺 ) 3.2. クライアントサイド 描 画 CMap の 特 徴 は, 通 信 データ 形 式 を 画 像 では 無 く 非 常 に 簡 素 な テ キ ス ト デ ー タ を 用 い て, ク ラ イ ア ン ト サ イ ド で 描 画 を 行 っ て い る 点 で あ る. 既 存 WebGIS とク ラ イ ア ン ト サ イ ド 描 画 WebGIS の 構 造 を 図 2 に 示 す. 図 2 WebGIS とクライアントサイド 描 画 の 構 造 3.3. CMap の 問 題 点 テ キ ス ト デ ー タ を 用 い る こ と に よ っ て 既 存 WebGIS で の 二 つの 問 題 点 で あ る デ ー タ 通 信 量 の 削 減 と, 自 由 度 の 向 上 は CMap によって 実 現 できた.しかし,CMap に も 考 慮 す べ き 問 題 点 が あ る. 一 つ 目 の 問 題 点 と し て, 差 分 データ 取 得 が 行 えない 事 である.CMap を 操 作 し リ ク エ スト を 行 う 時, 既 に 保 持 し てい る 地 図 デ ー タ ま で も サ ーバ サ イ ド か ら レ ス ポ ン ス デー タ と し て 返 っ て く る. これ に よ り 非 常 に 非 効 率 な 通 信 に な る. 一 方, 既 存 WebGIS では 画 像 のタイリングによる 差 分 データ 取 得 を 可 能 に し て い る. 二 つ 目 の 問 題 点 と し て, 先 読 み リ ク エス ト を 行 え な い 事 で あ る. 既 存 WebGIS では, 体 感 速 度 を 上 げ る た め 先 読 み リ ク エス ト を 行 っ て い る. しかし,CMap では 既 存 WebGIS の よ う に 差 分 デ ー タ 取 得 を 行 う こ と で 同 時 に ス ム ー ズ な 先 読 み リ ク エ ス ト も 可 能 にし て い る. 差 分 デ ー タ 取 得 が で き な い 場 合, 重 複 したデ ー タ を 何 度 も リ ク エ ス トす る 事 に な る の で, 先 読 み リク エ ス ト を 実 装 し た と し ても 非 常 に 効 率 が 悪 い.また,CMap では 建 物 や 街 区 などの 地 理 情 報 の 一 つ 一 つ がオ ブ ジ ェ ク ト で あ り, 画 像 デ ー タ の よ う に タ イ リ ン グす る 事 は で き な い.
データサイズ(KB) 3.4. CMap のデータ 通 信 量 CMap と 画 像 ベ ー ス の WebGIS の デ ー タ 通 信 量 の 比 較 例 を 図 3 に 示 す. 図 3 スケール 対 データサイズ( 神 田 640x480) の 番 号 をタイル 別 に 割 り 当 てた.CMap では, 建 物 や 街 区 な ど 一 つ 一 つ が オ ブ ジ ェ ク ト とし て 扱 わ れ て い る. つ ま り 1~ 4 の ど の タ イ ル 状 の 矩 形 範 囲 を リ ク エ ス ト し て も, 全 て に 皇 居 の オ ブ ジ ェ ク トが 入 っ て し ま う. 仮 に 1 ~4 の 地 図 デ ー タ を リ ク エ スト し た 場 合, 皇 居 の オ ブ ジェ ク ト を 4 回 重 複 し て 取 得 す る こ と に な り 非 常 に 非 効 率 で あ る. そ こ で, 本 研 究 で は Session[4]を 用 い た 差 分 デ ー タ 取 得 を 実 装 す る. 本 研 究 で 使 用 し て い る 国 土 地 理 院 数 値 地 図 2500 の 地 理 デ ー タ に は オ ブ ジ ェ ク トに 対 応 し た ID が 付 与 さ れて い る. そ れ を 利 用 し, サー バ サ イ ド に SessionID と 一 度 ク ラ イ ア ン ト サ イ ド へ 送 信 し た 地 図 デ ー タ の オ ブジ ェ ク ト ID を 保 存 する.2 回 目 以 降 の 通 信 の 際 にはサーバサイドで 保 持 し て いる 地 図 デ ー タ の オ ブ ジ ェ ク ト ID を 持 つ 地 図 デ ー タ 以 外 の 未 送 信 の 地 図 デ ー タ の み を 送 信 す る. Session を 用 い た 初 回 通 信 時 の 差 分 デ ー タ 取 得 の 構 造 を 図 5 に 示 す. 比 較 対 象 は PNG 形 式 で 保 存 さ れ た 画 像 デ ー タ で あ り 東 京 電 機 大 学 周 辺 の 地 図 で あ る. 何 メートルを 100px で 表 す か を 示 した ス ケ ー ル の 数 値 が 550~600 の 間 で デー タ サ イ ズ は 逆 転 し て い るも の の 低 ス ケ ー ル ~ 中 スケ ー ル に お い て は 画 像 デ ータ に 比 べ 減 少 し て いる.さ ら に 実 用 的 な 範 囲 は ス ケー ル 100~300 程 度 で あ り そ の 間 の 通 信 量 は 大 幅 に 削 減 さ れ て い る. クライアント Webブラウザ コールバック 名 のみの リクエスト CMapクラスのインスタンス 化 サーバ SessionID 生 成 保 持 4. 問 題 解 決 法 4.1. 差 分 データ 取 得 先 読 み リ ク エ ス ト の 効 果 を 最 大 限 に 発 揮 す る た め に は, 差 分 デ ー タ 取 得 が 不 可 欠 で ある.し かし,CMap で は 既 存 WebGIS で 適 用 され て い る 画 像 デ ー タ の タ イ リ ン グ に よ る 差 分 デ ー タ 取 得 は で き な い. 図 4 に CMap でタイル 状 に 矩 形 範 囲 で リ ク エ ス ト を 行 っ た 場 合 の イ メー ジ 図 を 示 す. 図 4 タイル 状 に 分 割 した CMap の 描 画 領 域 図 4 は, 皇 居 を 中 心 と す る 地 図 であ る.ま た 1 ~ 4 図 5 Session を 用 いた 初 回 通 信 時 の 通 信 構 造 図 5 で は, 初 回 CMap 読 み 込 み 時 に 初 期 設 定 さ れ た リ ク エ スト パ ラ メ ー タ の み を サ ー バサ イ ド へ 送 信 し て い る.サ ー バ サ イ ド では こ の 時,SessionID が 送 信 され て き た デ ー タ に 付 与 さ れ て い る か を 確 認 す る. SessionID が 付 与 され て い な か っ た 場 合, SessionID を 生 成 し テキ ス ト フ ァ イ ル に 保 存 す る. 次 に, リ ク エ ス ト パ ラ メー タ に 基 づ い た 地 図 デ ー タを 検 索 し, レ ス ポ ン ス デ ータ と し て 検 索 し た 地 図 デ ータ と と も に 生 成 し た SessionID を 付 与 し,クライアントサイドへ 送 信 す る. ク ライ ア ン ト サ イ ド で は, 取 得 し た 地 図 デ ー タ と SessionID を キ ャ ッシ ュ し 描 画 を 行 う. 図 6 に Session を 用 い た 二 回 目 以 降 の 通 信 時 の 差 分 デ ー タ 取 得 の 構 造 を 示 す. SessionID 保 持 レスポンス SessionID 地 理 情 報 データベー ス
クライアントサイド Webブラウザ リクエスト パラメータ + SessionID 二 回 目 以 降 のリクエスト サーバサイド SessionID 検 索 地 理 情 報 データベー ス 差 分 デ ー タ 地 図 データ 保 持 + 描 画 レスポンス 差 分 地 図 データ オブジェクトIDを 用 いた 差 分 データ 検 索 図 8 ユーザのドラッグ 操 作 に 合 わせた 先 読 みリクエスト 図 6 Session を 用 いた 二 回 目 以 降 の 通 信 時 の 差 分 データ 取 得 構 造 4.2. 先 読 みリクエスト 前 節 で 述 べ た よ う に,Session を 用 い た 差 分 デ ー タ 取 得 の 実 装 に よ っ て 効 果 的 に 先 読 み リク エ ス ト を 行 え る よ う に なっ た. 図 7 に, 初 回 CMap 読 み 込 み 時 におい て 大 き めに 地 図 デ ー タ を リ ク エ ス ト 描 画 し た 先 読 み リ ク エ スト の イ メ ー ジ 図 を 示 す. 図 8 は, 図 7 の 状 態 から 矢 印 方 向 に 地 図 が 表 示 さ れ る よ うド ラ ッ グ し た も の で あ る.ド ラ ッ グ 中 に 一 定 区 間 を 超 え る ド ラ ッ グ を し た 時 点 で 差 分 デ ー タ と 表 示 さ れ た 部 分 を リ ク エ ス ト し, サ ー バよ り 地 図 デ ー タ が 返 さ れ 次 第 描 画 を 行 う. 5. 評 価 5.1. 評 価 目 的 二 つ の 提 案 手 法 に よ っ て, 本 研 究 の 目 的 で あ る ク ラ イ ア ン トサ イ ド 描 画 を 用 い た WebGIS の 高 速 化 がどの 程 度 達 成 できたかを 確 認 する.そのために,CMap と 差 分 デ ータ 取 得 の み を 行 っ た も の, 先 読 み リ ク エ ス ト の み を 行 っ た も の, 両 者 を 行 っ た 新 CMap の4つのシ ス テ ム の 速 度 を 実 測 評 価 し た. 図 7 初 回 CMap 読 み 込 み 時 の 先 読 み リクエスト 図 7 では, 地 図 データを 保 持 しているが Web ブラ ウ ザ 上 に 表 示 し て い な い 部 分 を 中 央 よ り 暗 く し て い る. ま た 実 際 に Web ブ ラ ウ ザ に 表 示 し て い る 部 分 は 中 央 の 明 る い 部 分 で あ る. 図 7 の よ う に 内 部 的 に 地 図 デ ー タ を キ ャッ シ ュ し ておくことで,ユーザがドラッグ 操 作 を 行 って も 地 図 の 未 表 示 の 部 分 が 減 る. 以 下 に, ユ ー ザ の ドラ ッ グ 操 作 に 合 わ せ た 先 読 み リ ク エ ス ト の イ メ ー ジ を 示 す. 5.2. 評 価 内 容 速 度 を 評 価 す る に あ た っ て, 総 合 速 度 と 通 信 速 度 に 分 別 す る. 総 合 速 度 と は, マ ウ ス ダウ ン ド ラ ッ グ マ ウ ス アッ プ リ ク エ ス ト レ ス ポン ス 描 画 間 の 速 度 で あ る. 通 信 速 度 と は, リ ク エ スト レ ス ポ ン ス 間 の 速 度 であ る. 総 合 速 度 通 信 速 度 を 測 定 する 評 価 用 プ ロ グ ラム を 作 成 し,そ れ ぞ れ の 速 度 の 数 値 を Web ブ ラ ウ ザ 上 に 出 力 す る. 評 価 用 プ ロ グラ ム は,マウスダ ウ ン か ら 描 画 完 了 ま で の 一 連 の 処 理 を 一 定 の 条 件 の も と 4 回 行 い, そ の 平 均 値 を 出 力 す るも の で あ る. こ の 試 行 を 2 回 行 い,その 平 均 値 を 測 定 する. 適 切 な 評 価 を 行 う ため に, ド ラ ッ グ の 移 動 差 分, お よ び ド ラ ッ グ に か か る 時 間 を 固 定 す る. 手 動 の 動 作 で い え ば, マ ウ ス ダ ウ ン ド ラ ッ グ マ ウ ス ア ッ プに か か る 時 間 と 移 動 差 分 を 固 定 す る こ と に な る. な お, マ ウ ス ダ ウ ン ド ラ ッ グ マ ウ ス ア ッ プ ま で の 総 時 間 を イ ン タ ーバル と す る. 手 動 で の マ ウ ス ダ ウ ン, 200px 間 の 移 動,マ ウ ス ア ップ に か か る 時 間 を そ れ ぞ れ 測 定 し た. ま た,
200px に 固 定 した 理 由 として 先 読 みリクエストでは, x 軸, y 軸 方 向 に 200px ド ラ ッ グ した 時 点 で リ ク エ ス ト を 送 信 す る た め で あ る. 測 定 項 目 は, 速 め にドラッ グ す る 場 合 と, 一 般 的 な 速 度 で ド ラッ グ す る 場 合 で あ る. 表 1 に それ ぞ れ の 速 度 を 示 す. 表 1 インターバルを 構 成 する 項 目 と 所 要 時 間 ま た, 一 回 の 通 信 デ ータ 量 も 測 定 する. 測 定 方 法 は, FireFox のアドオンである Firebug を 利 用 し, 通 信 を 行 っ た 際 に 出 力 さ れ る デ ー タ 通 信 量 を 使 用 す る. デ ー タ 通 信 量 の 増 減 に よ っ て, 通 信 速 度 も 大 き く 増 減 す る 可 能 性 が ある た め, そ の 因 果 関 係 を 示 す た め で あ る. 評 価 対 象 は, 従 来 の CMap, 先 読 みリクエストのみを 適 用 した CMap, 差 分 デ ータ 取 得 の みを 適 用 し た CMap, 先 読 み リク エ ス ト と 差 分 デ ー タ 取 得 の 両 方 を 適 用 し た 新 CMap である. 5.3. 評 価 方 法 あ る 地 点 を 中 心 と し, そ こ か ら 描 画 サ イ ズ, ス ケ ー ル, ド ラッ グ に よ る 移 動 差 分 に 対 応 し た マ ウ ス ダ ウ ン ド ラ ッグ マ ウ ス ア ッ プ 間 の 時 間 の イ ン タ ー バ ル を 変 化 さ せた 時 の 総 合 速 度, 通 信 速 度, デ ー タ 通 信 量 を 測 定 し た. 速 め 一 般 的 マウスダウン 50(ms) マウスアップ 50(ms) 200pxの 移 動 100(ms) 200(ms) なお,CMap に お ける ス ケ ー ル は 画 面 上 の 100px に 対 応 す る 現 実 の メ ー ト ル 数 を 示 す 値 であ り, 同 描 画 領 域 サ イ ズ にお い て は ス ケ ー ル が 大 き いほ ど 広 範 囲 の 地 図 を 表 す. 表 2 に 測 定 範 囲 を 示 す. 表 2 スケール, 描 画 サイズ,ドラッグ 方 向 の 測 定 範 囲 スケール(m/100px) 100,300,500 描 画 サイズ(px) ドラッグ 方 向 700x500,1000x700,1400x1000 右 右 右 右, 右 右 左 左, 右 上 左 下 移 動 差 分 (px) 200,400,600,800 ス ト を 発 行 す る た め,イ ン タ ー バ ルは 特 に 変 わ ら な い. 先 読 み リク エ ス ト を 適 用 し た 場 合 では, 200px のドラ ッ グ 移 動 を し た 時 点 で, 従 来 の CMap の 400px のドラ ッ グ 分 のリ ク エ ス ト 範 囲 を 発 行 す るた め, 400px のド ラ ッ グ 移 動 で も イ ン タ ー バ ル は 200px 分 の 時 間 となる. 先 読 み リク エ ス ト を 適 用 し た CMap と 適 用 していない CMap のインターバルの 数 値 を 表 3, 表 4 に 示 す. 表 3 先 読 み リ ク エ ス ト を 適 用 し て い な い 場 合 速 め インターバル(ms) 200 300 400 500 一 般 的 インターバル(ms) 300 500 700 900 表 4 先 読 みリクエストを 適 用 した 場 合 速 め インターバル(ms) 200 200 300 400 一 般 的 インターバル(ms) 300 300 500 700 ま た ク ラ イ ア ン トと サ ー バ の 動 作 環 境 を 以 下 に 示 す OS Ubuntu Linux 9.10 Webサーバ DBMS 使 用 言 語 Apache2.2.12 サーバPC PostgreSQL8.3.8/PostGIS1.3.5 Perl5/JavaScript 地 図 データ 国 土 地 理 院 数 値 地 図 2500 CPU RAM OS AMD Athlon Dual Core Processor 4850e @2.5GHz 4GB クライアントPC Windows XP Professional 適 応 す る イ ン タ ー バ ル は 先 読 み リ ク エ ス ト の 適 用 の 有 無 によ っ て 変 化 す る. 先 読 み 切 る エ ス ト を 適 用 の 有 無 に 関 わ ら ず, 200px ま で の イ ンタ ー バ ル は 変 わ ら な い. しか し, 仮 に 400px 間 の ド ラッ グ 移 動 が あ っ た と す る. 従 来 の CMap で は, マ ウ スア ッ プ 時 に リ ク エ 動 作 ブラウザ CPU RAM FireFox Intel Core 2 CPU 4300 @1.80GHz 2GB 図 9 評 価 の 動 作 環 境
データ 通 信 量 [kb] 総 合 時 間 [ms] 総 合 時 間 [ms] 5.4. 評 価 結 果 測 定 に よ っ て 得 た 総 合 速 度 の 評 価 結 果 の 一 部 を 図 10 に 示 す.また 図 11 に ス ケ ー ルを 変 化 さ せ た 時 の デ ー タ 通 信 量 を 示 す. な お, 図 名 の 括 弧 の 中 は, そ れ ぞ れ 描 画 サ イ ズ, ド ラ ッ グ 方 向, スケ ー ル を 表 す. 1300 1200 1100 1000 900 800 700 1700 1600 1500 1400 1300 1200 1100 1000 900 800 200px 400px 600px 800px 移 動 差 分 [px] 200px 400px 600px 800px 移 動 差 分 [px] Cmap 先 読 みCmap 差 分 Cmap 新 Cmap Cmap 先 読 みCmap 差 分 Cmap 新 Cmap 図 10 移 動 差 分 対 速 度 (1400x1000, 右 右 右 右,100) 図 10 の 時, 総 合 速 度 においては, 差 分 データ 取 得 と 先 読 みリ ク エ ス ト の 併 用 に よ り, 最 大 27%の 高 速 化 を 確 認 でき た. ま た, 通 信 速 度 と 通 信 デ ー タ 量 に つ い て も 同 様 の 効 果 を 確 認 で き た. 図 11 において スケールの 数 値 が 大 きくなるとデ ータ 通 信 量 は 増 加 するが,CMap よりも 常 に 低 いデー タ 量 に なっ て い る こ と を 確 認 で き た. 6. おわりに 本 研 究 では, ク ラ イ ア ン ト サ イ ド 描 画 手 法 を 用 い た WebGIS の 高 速 化 を 行 っ た. 具 体 的 に は, 先 行 研 究 で ある CMap に 対 し, ま ず Session を 用 いた 差 分 データ 取 得 を 実 装 す る こ と で 通 信 デ ー タ 量 を 減 ら し, 次 に 効 率 の 良 い 先 読 み リ ク エ ス ト を 実 装 した. そ し て, 提 案 手 法 の 有 効 性 を 明 ら か に す る た め に, 評 価 を 行 っ た. そ の 結 果, 標 準 セ ッ ト と 描 画 サ イ ズの 変 更 の 条 件 で は と もに 20% 前 後 の 高 速 化 が 達 成 された. 以 上 の 事 から, 本 研 究 の 有 効 性 を 示 す こ と が で き たが, 新 た な 課 題 も 発 見 し た. 今 回 の 評 価 で は, 高 ス ケー ル に な る と 提 案 手 法 の 効 果 が 著 し く 落 ち る 事 が 判 明 し た. こ の 原 因 と し て は 主 に 二 つ 考 え ら れ る. 一 つ 目 は, ス ケ ー ル の 増 減 に 対 して, 大 量 の 地 図 デ ー タ を クラ イ ア ン ト サ イ ド で キ ャ ッシ ュ し, 描 画 を 行 っ て い るた め で あ る. 高 ス ケ ー ル の 場 合, 街 区 な ど が 凝 縮 し 潰 れ た 状 態 に な る. こ れ を 考 慮 し, 高 ス ケ ー ル に お い ては, 簡 略 化 さ れ た 地 図 デ ータ を 表 示 す る 必 要 が あ る. 二 つ 目 の 原 因 と し て, サ ーバ サ イ ド で の 地 図 デ ー タ のオ ブ ジ ェ ク ト の 検 索 コ ス トが 非 常 に 高 い 可 能 性 が あ る.デ ー タ 量 に 伴 い, 検 索 し なけ れ ば な ら な い オ ブ ジ ェ ク ト ID も 増 える. 例 えば,スケールを 2 倍 す る と デ ータ 量 は 約 4 倍 した 数 値 に なる. こ の 問 題 に 対 し て も, 上 記 で 挙 げ た 高 ス ケ ー ル 時 に は 簡 略 化 し た 地 図 デ ー タを 通 信 す る 事 で 解 消 で き る 可 能 性 が あ る. 300 250 200 150 100 50 0 100 200 300 400 500 600 スケール[m/100px] CMap 新 CMap 参 考 文 献 [1] 矢 島 健 太 郎, 山 﨑 優, 井 上 潮,ク ラ イ アン ト サ イ ド 描 画 手 法 を 用 い た WebGIS の 提 案 と 実 装, DEIM, 2009, B1-2,March.2009 [2] Google マップ http://maps.google.co.jp/ [3] 田 中 龍 一, 井 上 潮, 非 同 期 通 信 に よる 高 イ ン タ ラ ク テ ィブ WebGIS フ レ ー ム ワ ー クの 研 究,GIS 学 会 第 15 回 研 究 発 表 大 会, No.39, Oct.2006 図 11 スケールを 変 化 させた 時 の データ 通 信 量