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Title グリモ ド ラ レニエールと 美 食 家 の 誕 生 : フラ ンス 革 命 前 後 における 食 行 為 に 関 する 研 究 ( Abstract_ 要 旨 ) Author(s) 橋 本, 周 子 Citation Kyoto University ( 京 都 大 学 ) Issue Date 2012-09-24 URL http://hdl.handle.net/2433/161026 Right Type Thesis or Dissertation Textversion none Kyoto University

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威 厳 を 示 すものとして 重 要 視 された 作 法 は 身 分 と 切 り 離 され 作 法 書 やワインに 代 表 されるように 金 であがなうことのできるもの つまり 消 費 の 対 象 となっていく 第 三 部 は こうした 負 の 側 面 を 持 つ 美 食 の 肯 定 的 側 面 について 考 えている 一 言 でい えば それは 社 交 すなわちおいしいごちそうを 囲 み ともに 食 事 することの 喜 びであ る グリモが 提 示 した 招 待 のための 諸 規 則 は 一 見 すれば 突 飛 で 現 実 に 適 用 するには あまりに 厳 格 すぎるように 思 えるが それらは 仮 想 の 世 界 を 描 くためにのみ 持 ち 出 され たのではない フランス 革 命 以 前 のグリモの 言 動 や 革 命 について 彼 が 述 べた 言 葉 を 熟 視 するなかで 見 えてくるのは 18 世 紀 に 支 配 的 であったとされる 社 交 への 情 熱 であった かつてあった 心 地 よい 社 交 が 革 命 を 機 に 失 われたと 痛 感 したグリモは そうしたか つての 美 風 を 残 存 させる 可 能 性 を 食 卓 の 周 囲 という 限 定 された 場 に 求 めたのであり そ れこそが 美 食 の 帝 国 と 彼 が 呼 ぶものが 意 味 するところであった 19 世 紀 に 入 って 1 8 世 紀 を 憧 憬 する 言 説 はグリモ 以 外 にも 多 くの 作 家 によって 書 かれることになるが グリ モは 単 に 過 去 を 称 賛 するばかりではない 彼 は ささやかながらも 確 実 に かつての 社 交 を 保 存 するための 手 段 として 美 食 を 選 んだ そしてこの 意 味 において ひとえに 美 食 を 目 的 とするようなグリモのユートピアは 現 実 の 世 界 に 向 けて 構 想 された 一 つの 思 想 なのである

( 続 紙 2 ) ( 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 ) 食 べるという 行 為 は すべての 人 間 が 行 っている 行 為 であり あらゆる 民 族 や 国 の 文 化 のなかには 食 に 関 わる 文 化 が 含 まれている しかしそれをきわめて 繊 細 かつ 広 範 な 形 で 育 成 してきたフランスの 食 文 化 は かつても 今 も 世 界 の 最 高 位 に 位 置 している と 言 ってよいだろう 本 学 位 申 請 論 文 は そうしたフランスの 食 文 化 の 歴 史 において 重 要 かつ 個 性 的 な 業 績 を 残 したにもかかわらず これまでブリヤ=サヴァランという 同 時 代 の 人 物 の 影 に 隠 れて あまり 詳 細 な 研 究 がなされてこなかったグリモ ド ラ レニエールという 美 食 家 を 書 く 見 る (ひとと) 交 わるという 多 面 的 な 視 点 から 包 括 的 に 捉 えようとした 優 れた 論 文 である 申 請 者 はまず 論 考 の 出 発 点 として フランス 語 のgourmand(グルマン この 言 葉 に 申 請 者 は 美 食 家 という 日 本 語 をあてている)という 言 葉 の 歴 史 をたどり gourm et(グルメ 味 きき)などといった 類 似 の 言 葉 と 比 較 しながら グリモがこの 言 葉 に 与 えた 意 味 の 新 しさを 明 確 にしようとする 申 請 者 によれば グリモが 活 躍 した18 世 紀 末 から19 世 紀 はじめにかけて この 言 葉 は 否 定 的 な 意 味 での 大 食 から 多 く 食 べかつ 味 わうすべを 知 っているという 肯 定 的 な 意 味 を 獲 得 していった グリモの 美 食 年 鑑 はナポレオン 帝 政 以 降 の 新 興 富 裕 層 にとって まさにうってつけの 指 南 書 だ ったのである 第 一 部 では グリモが 書 いた 美 食 年 鑑 の 作 品 や 文 章 としての 特 徴 を 旅 道 程 と 事 物 や 地 名 の 列 挙 といった 点 に 焦 点 をあわせながら 検 討 し 当 時 の 食 をめ ぐる 産 業 商 業 の 活 力 や 芸 術 の 領 域 にも 接 近 しようとする 料 理 技 術 の 進 展 さらに は 性 的 な 快 楽 との 交 錯 までもが グリモの 筆 によって 描 かれているとする グリモの 作 品 は 通 常 の 文 学 作 品 とは 異 なった 仕 方 で 読 者 の 想 像 力 を 刺 激 するように 書 かれて いると 言 うことができるだろう 第 二 部 では 近 代 社 会 として 成 立 しつつあった 当 時 のフランス 社 会 の 観 察 者 として グリモを 捉 えようとする グリモが 消 費 者 と 形 容 する 新 興 富 裕 層 は 彼 自 身 が 属 していたアンシャン レジームにおける 支 配 階 級 が 体 現 していた 食 の 作 法 を 知 らない 彼 らにとって 食 もまた 近 代 の 市 民 社 会 を 特 徴 づける 競 争 の 原 理 のもとにあるのであ る グリモは 招 待 のための 厳 しい 作 法 書 をしたためて そうした 傾 向 を 批 判 するのだ が それがまた 当 の 批 判 の 対 象 たる 人 々にとっては 格 好 の 手 引 き になるという 皮 肉 な 状 況 を 生 むことになる 第 三 部 では グリモを 思 想 家 として 捉 えようとする グリモは 青 年 期 から 奇 妙 な 昼 食 会 や 夜 食 会 を 催 していたが 彼 にとって 美 食 という 行 為 は 単 に 料 理 を 食 べること ではなく 常 に 人 と 交 わることも 意 味 していた アンシャン レジームにおける 定 食 制 食 堂 (ターブル ドット) は 多 くの 作 家 によって 排 他 的 であると 否 定 的 に 描 かれているが そこに 成 立 している 文 化 や 習 慣 を 共 有 した 者 たちによる 相 互 の 気 遣 い に 基 づいた 人 間 関 係 を グリモは 彼 の 言 う 美 食 の 帝 国 の 理 想 と 考 える ここにも

同 時 代 に 爆 発 的 に 増 加 しつつあったレストランにおける 競 争 的 な 人 間 関 係 に 対 する 批 判 的 な 眼 差 しがあると 言 えるだろう 全 体 として 周 到 な 資 料 調 査 に 基 づいた 優 れた 論 考 であるが 欠 点 がないわけでは ない たとえば グリモの 主 著 たる 美 食 年 鑑 の 作 品 としての 全 体 的 な 特 徴 が 個 々 の 主 題 の 分 析 を 優 先 した 結 果 見 えにくくなっている またヴェブレンやトクヴィル といった 思 想 家 が 用 いた 概 念 (たとえば 後 者 のアソシアションなど)を あまりにも 単 純 にグリモの 美 食 に 適 用 しているというところも 改 善 されるべきであろう 論 述 で 使 う 言 葉 の 選 択 や 歴 史 認 識 に 関 しても さらなる 慎 重 さを 求 めたい とはいえ グリモの 美 食 のなかには 同 時 代 の 趨 勢 に 対 する 批 判 と 同 時 に フラン スにおいて 伝 統 的 に 培 われてきた 食 文 化 の 本 質 の 新 しい 表 現 があるという 本 論 文 の 主 張 は 十 分 に 説 得 的 であると 判 断 できる 以 上 のことから 本 論 文 は 博 士 ( 人 間 環 境 学 )の 学 位 論 文 として 価 値 を 持 つと 認 める また 平 成 24 年 7 月 23 日 論 文 内 容 とそれに 関 連 した 事 項 について 試 問 を 行 った 結 果 合 格 と 認 めた Webでの 即 日 公 開 を 希 望 しない 場 合 は 以 下 に 公 表 可 能 とする 日 付 を 記 入 すること 要 旨 公 開 可 能 日 : 年 月 日 以 降