現 場 ルポ 佐 藤 熊 谷 大 日 本 建 設 工 事 共 同 企 業 体 向 原 作 業 所 現 場 代 理 人 岩 橋 公 男 技 士 会 は 2 月 9 日 ( 木 ) の 現 場 見 学 会 を 開 催 約 30 名 が 参 加 した 今 回 は その 工 事 概 要 について 報 告 する 1 工 事 概 要 ( 図 1 2 3 参 照 ) 当 工 区 は 連 絡 線 工 事 の 起 点 方 ( 小 竹 向 原 駅 方 ) に 位 置 し シールドトンネルの 発 進 部 へとつなが る 延 長 123mをすべて 開 削 工 法 により 既 設 地 下 鉄 構 造 物 の 改 築 増 設 にて 連 絡 線 を 構 築 する 工 事 である 工 事 は A 線 側 を 1 期 工 事 とし 平 成 24 年 度 内 の 副 都 心 線 と 東 急 東 横 線 みなとみらい 線 との 相 互 直 通 運 転 に 合 わせての 先 行 での 完 成 を 目 指 し 2 期 工 事 として B 線 側 を 施 工 する その 後 A B 線 合 わせて 埋 め 戻 しを 行 い 道 路 復 旧 となる 当 工 区 の 標 準 断 面 図 を 図 4 に 示 す 当 工 区 は 2 層 の 既 設 開 削 トンネルの 両 側 部 に 新 たに 連 絡 線 部 の 開 削 トンネルを 付 け 加 える 構 造 となっている 開 削 トンネルが 拡 幅 された 形 となり 既 設 の 側 24 図 1 計 画 説 明 概 念 図 図 2 連 絡 線 計 画 概 念 図 8/ DOBOKU 技 士 会 東 京
現場ルポ 東京メトロ有楽町線 小竹向原駅 千川駅間連絡線設置工事 向原1丁目 都市計画変更区画 約 410m 都市高速鉄道第8号線 東京メトロ有楽町線副都心線 小竹小学校 放射第 36 号線 和光市 練馬方面 向原小学校 練馬区 約20 21m 豊島区 要町3丁目 シールド トンネル工区 板橋区 向原2丁目 開削部 小竹向原方 千川駅 千川工区 向原工区 小竹町2丁目 開削部 千川方 新木場 渋谷方面 郵便局 都市計画変更区画 約 410m 約15 17m 千川駅 約36 38m 新木場方面 有楽町線 渋谷方面 副都心線 約24 32m シールド部 約19m 向原工区 図は小竹向原駅から 千川駅方面を見た図 です 約6m 凡例 約6m 開削部 小竹向原方 新設部 撤去部 既設部 シールド トンネル工区 シールド部 千川工区 開削部 千川方 凡例 新設部 既設部 図 3 計画概要図 ࢪ ظ ).22.9.ʙ).25.6. ڥ ք ࢪ ظ ).24.10.ʙ).28.3. ઢଆ ઢଆ ໘ ڥ ք ࠐݐ Έߌ ࢧอ ߌ ߌ ൫վ ൫վ 33.5N 21.4N ൫վ ط Լߏ Լߏ ط Լߏ औΓյ ɾఫ ڈ 図 4 向原工区標準断面図 壁部分を新設構築完了後に撤去することとなる これは 営業線の建築限界ぎりぎりでの作業とな り 列車運行への影響がないように施工すること が求められている また 工事箇所周辺は 閑静な住宅街となって いること さらに この工事が住民へのメリット がほとんどないことから 騒音 振動対策を含め て理解を得ること トラブルを起こさないことも 左段写真 着手前 重要なポイントとなっている DOBOKU 技士会 東京 9
工 事 数 量 工 種 A 線 B 線 合 計 単 位 歩 道 切 削 553 288 841 m2 柱 列 式 地 下 連 続 壁 特 SU 1 型 (φ550) 2,928 2,733 5,661 m2 鋼 杭 建 込 み 861 662 1,523 m 路 面 覆 工 架 設 1,813 1,714 3,527 m2 掘 削 20,455 18,379 38,834 m3 埋 設 物 防 護 1-1 式 鉄 筋 コンクリート 3,808 3,567 7,375 m3 鉄 筋 コンクリート こわし 1,388 1,453 2,841 m3 埋 戻 し 21,501 m3 2 工 程 短 縮 この 工 事 は 先 に 述 べたように 平 成 24 年 度 内 の 副 都 心 線 と 東 急 東 横 線 みなとみらい 線 の 相 互 直 通 運 転 に 合 わせてA 線 の 供 用 開 始 をすることが 求 められている しかしながら 地 元 との 調 整 等 により 着 手 が 4 ヶ 月 遅 れとなったことを 含 め 工 程 短 縮 が 重 要 な ポイントとなる そこで 発 注 者 と 施 工 側 とで 可 能 な 限 りの 短 縮 施 工 案 について 協 議 検 討 を 行 って 供 用 開 始 に 向 けて 鋭 意 施 工 中 である 短 縮 施 工 案 は 大 きく 分 けて 構 築 におけるもの と 仮 設 におけるものとに 分 けられる 構 築 に 関 しては 継 ぎ 手 や 防 水 工 法 等 一 般 的 な ものを 提 案 採 用 し 1 ヶ 月 の 工 程 短 縮 を 図 る 仮 設 に 関 しては まず 掘 削 時 に 土 砂 搬 出 箇 所 の 増 加 により 1 ヶ 月 の 工 程 短 縮 とし 次 項 で 述 べ る 既 設 中 床 の 支 え 方 法 の 変 更 により 2 ヶ 月 の 工 程 短 縮 を 図 る これらから 当 初 工 程 から 4 ヶ 月 の 工 程 短 縮 を 図 るものとした 3 既 設 中 床 の 支 え 方 法 当 工 区 では 構 築 を 拡 幅 することから 中 床 及 び 上 床 のスパンが 大 きくなり 側 壁 の 撤 去 の 施 工 中 及 び 完 成 時 においても 中 間 に 支 えが 必 要 となる しかし 新 設 の 柱 は 現 在 運 行 中 の 列 車 の 建 築 限 界 に 支 障 してしまう そこで 仮 設 柱 を 軌 道 階 に 建 てることとなる これは 運 行 中 の 列 車 の 線 間 の 建 築 限 界 外 に 建 てることが 必 要 であるが そ の 離 れは 300mm 程 度 しかない ( 図 5 ) 計 画 では H-150を 仮 設 柱 として 建 てていくこ ととしていた この 施 工 は 当 然 列 車 の 運 行 が 停 43500 19500 49000 43000 150 6988000 7000000 7037000 150 図 5 仮 設 柱 本 設 柱 と 列 車 線 路 位 置 関 係 図 (S = 1 /400) 10/ DOBOKU 技 士 会 東 京
10378 3590 1501507 10500 1100 5650 450 5200 1000 13400 8000 7708 6260 250050025252500 36 2500 1100 5650 450 5200 1000 13400 8000 226 1000 4908 4244 4361 8460 7605 1000 1000 4908 4244 4361 8460 7605 1000 31578 31578 9995 7345 1501507 10500 1600 5650 450 4500 1250 13450 8000 9586 7754 250050025252500 36 2500 1600 5650 450 4500 1250 13450 8000 5138 1000 3857 13234 11734 1500 1000 3857 13234 11734 1500 31325 31325 図 6 中 床 版 支 え 工 法 の 変 更 断 面 図 411 3401 1846 600 600 246 1700 図 7 軌 道 階 本 体 柱 軌 道 位 置 関 係 図 ( 1 /50) 止 した 夜 間 のき 電 停 止 時 間 内 に 行 うこととなり 安 全 運 行 上 も 工 程 管 理 上 からもリスクの 高 い 作 業 となることが 予 想 できる そこで 軌 道 階 での 作 業 をなくす 意 味 で 中 床 を 上 から 吊 る 案 を 提 案 し 採 用 することとなった ( 図 6 ) 施 工 に 際 しては 中 床 には 列 車 の 剛 体 架 線 が 吊 されていることから 中 床 のたわみ 管 理 に 慎 重 さが 求 められる 計 測 は ジャッキの 圧 力 管 理 と 中 床 版 の 高 さ 管 理 の 2 項 目 についてリアルタイム で 行 うこととしている また 新 設 の 中 柱 については 切 り 換 え 供 用 開 始 後 に 設 置 する これについても 列 車 運 行 の 安 全 を 確 保 すること 工 程 短 縮 を 考 慮 し プレキャス ト 部 材 を 多 く 用 することとなっている ( 図 7 ) 変 更 前 後 の 施 工 手 順 図 を 図 8 9 に 示 す DOBOKU 技 士 会 東 京 /11
441 150 441 441 441 図 8 変 更 前 施 工 順 序 図 ( 改 - 向 原 変 電 所 型 )S= 1 /200(S= 1 /400) 441 441 441 441 図 9 変 更 後 施 工 順 序 図 ( 改 - 向 原 変 電 所 型 )S= 1 /200(S= 1 /400) 4 既 設 側 壁 撤 去 既 設 側 壁 の 撤 去 は コアボーリング 併 用 のワイ ヤーソー 工 法 とした 軌 道 階 部 の 撤 去 に 際 しては 工 程 を 確 保 するた め 列 車 運 行 中 においてもワイヤーソーの 施 工 を 行 えるように 建 築 限 界 と 側 壁 との 間 に 防 護 板 を 設 置 する ( 図 10) ただし コンクリートブロックの 縁 切 り 及 び 撤 去 搬 出 作 業 は 夜 間 き 電 停 止 での 作 業 とし 列 車 運 行 の 安 全 を 確 保 することとした 切 断 撤 去 するブロックは 搬 出 開 口 の 大 きさ 移 動 手 段 施 工 時 間 等 を 考 慮 し 5 t / 個 を 標 準 として 計 画 を 行 った 数 量 は A 線 のみで 486ピース ワイヤーソー 切 断 面 積 1,408m2 重 量 2,335tとなる B 線 につ いては A 線 より 若 干 多 い 数 量 となる 軌 道 階 におけるハンチ 部 の 撤 去 は 毎 夜 バラ ストの 撤 去 埋 戻 し 突 き 固 めを 伴 う 作 業 となる ( 図 11) 12/ DOBOKU 技 士 会 東 京
24 75759 202 20 1000 4600 190 830 3770 75759 150150710 3.2 4600 830 3770 75759 100 204 20 150150710 図 10 軌 道 階 防 護 方 法 図 図 11 構 造 物 こわし 割 付 図 (S= 1 /400) DOBOKU 技 士 会 東 京 /13
現場ルポ 東京メトロ有楽町線 小竹向原駅 千川駅間連絡線設置工事 5 近隣との コミュニケーション 静かに置く 無駄な大声を出さない ほこりが出 ないよう散水をするといったどこの現場でも心が けていることを実行することは当然として 当工 先に述べたように 当工事の近隣住民にとって 区では 次のことを実施することで 住民とのコ は 恩恵がなく 6 年もの長きにわたり 工事に ミュニケーションをはかっている よる振動 騒音に悩まされることとなり 工事に ① 町内会との連携 対しての感情は決してよいものではない また ② 工事だより 隔週刊 30年前の有楽町線開業時の工事の記憶から ま ③ 作業帯フェンスにおける児童作品展の開催 たか との思いも大きい ④ 展示室の設置 対策として 低振動 低騒音の機械や工法を採 ⑤ 見学会の開催 用することはもちろん 物を置くときは投げずに 児童作品展について 地元の小学校と保育園にお願いし子供たちの作品をデジカメで撮り A 3 判 4 枚に拡大印刷 ラミネート加工する これを現場のフェンスに貼り 2 ヶ月毎に貼り替えている 作品が変わることで長く楽しんでもらえ 近隣との対 話も長く続くこととなっている また 選ばれた子供の作品だけでなく 全員の作品の展示が可能となる また 作成は 現場事務所ででき 安価にできる 職員の手間はかかるが 展示室について 発注者からの要望もあり 展示室を設置している 展示内容については リピーターを確保するように変化を持 たせることを心がけ 子供のお遊びスペースを設け近隣から親しまれるような配慮もしている 現在まで オープ ン 6 ヶ月で3 000人が来場している 14 DOBOKU 技士会 東京
[ 見 学 会 について] 地 元 小 学 校 近 隣 の 方 々 社 内 等 できるだけ 多 くの 人 に 地 下 の 世 界 を 見 てもらうことで 工 事 への 理 解 の 一 助 としたいとの 思 いで 積 極 的 に 開 催 をしていく また 見 学 会 に 先 立 ち 30 分 から 1 時 間 の 時 間 を 割 き 見 学 の ポイントについてのレクチャーだけでなく 建 設 業 の 社 会 的 価 値 についても 説 明 している 6 おわりに 建 設 業 とくに 土 木 は 安 心 安 全 で 豊 かな 国 土 造 りとそのなかでの 国 民 生 活 に 密 接 に 関 わりを 持 ち その 社 会 的 価 値 の 高 さにおいてすばらしい 産 業 である しかしながら 近 年 は その 価 値 とは 反 比 例 す るようにバッシングを 受 ける 産 業 になってしまっ たようである この 流 れが 続 くことは この 産 業 の 魅 力 を 失 わせ 結 果 それは 国 民 にとっての 損 失 となると 考 える この 流 れを 変 えるために 土 木 の 社 会 的 意 義 を 広 く 一 般 に 知 らしめ 理 解 を 深 めることが 必 要 であ る 早 急 な 業 界 のアクションが 必 要 不 可 欠 である ことは 明 白 であるが 現 場 でできることもある そんな 思 いから 当 工 区 では 前 項 で 述 べた 近 隣 PRを 行 っている これには 発 注 者 の 理 解 と 協 力 なしにはできない 全 国 各 地 に 散 らばる 現 場 の 一 つひとつが 発 信 源 となり 明 るい 産 業 への 転 換 の 一 助 となることの 願 いを 込 めて 紹 介 した 次 第 である 当 工 区 は これから 営 業 線 脇 の 既 設 躯 体 の 撤 去 に 入 る この 工 事 の 最 大 の 難 所 である 発 注 者 とJV 協 力 会 社 との 相 互 の 緻 密 な 計 画 と 連 絡 調 整 を 行 い 労 働 災 害 事 故 と 列 車 運 行 阻 害 事 故 を 起 こさないよう 取 り 組 んで 行 く 所 存 である 最 後 に 発 注 者 をはじめ 関 係 各 機 関 のこれま での 理 解 と 協 力 に 対 し 紙 面 を 借 りて 感 謝 申 し 上 げます DOBOKU 技 士 会 東 京 /15