需要家から見たスマートグリッド 社会経済研究所 浅野浩志

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技術報告 報告 2 需要家から見たスマートグリッド 社会経済研究所 浅野浩志

内 容 1. 需要家の視点 需要サイドの研究開発 需要家の視点 2. 費用便益分析 スマートメーター デマンドレスポンス導入の費用対効果 米国の事例 3. 電力中央研究所の取り組み 費用便益分析手法の開発 デマンドレスポンスポテンシャルの評価 自動化デマンドレスポンスシステムの開発 デマンドレスポンス (Demand Response, DR) とは 時間的に変化する電力価格 もしくは需給逼迫時に電力使用を減らすように設計された報酬に反応して 最終需要家が通常の電力消費パターンから電力使用を変化させることである ( 米国エネルギー省 ) 2

需要サイドの要素技術と社会システム構築 スマートメータ 分散型太陽光発電システムの利用 宅内ネットワーク (HAN) と宅内表示器 (IHD) HEMS BEMS スマート機器のインターフェース デマンドレスポンスシステム PHV EVのスマート充電 スマートハウス 次世代環境調和型都市 (Smart Community) 3

スマートグリッドにおける需要家機器との連携 発電 ( 大規模電源 ) 原子力 風力 太陽光 配電系統 送電系統 高圧配電線 給電指令所 通信線 情報 通信網 電力網 需要家 住宅用太陽光 分散型電源 ヒートポンプ 電気自動車 サーバ エコキュート EV インターネット回線など 太陽光パワコン 組み合わせ制御 ホームケ ートウェイ 電気料金や系統状況に関する情報 スマートメーター 見える化端末 ( 宅内表示器 ) 4

需要家からの視点 スマートグリッドは需要家にスマートなエネルギー利用を支援するか 必要な情報とツールを提供することが求められる スマートな利用 太陽光発電 (PV) の最大限の利用 機器の効率的利用 短期的な需要反応 : ピークシフト ピークカット 長期的な需要反応 : プログラム参加率や価格弾力性を高める工夫 自動化デマンドレスポンスシステム 実現技術 宅内ネットワーク (HAN) 宅内表示器 (IHD) スマート機器 ( エネルギー貯蔵技術 ) エネルギーマネジメントシステム 情報提供 実時間での情報提供は効果的か いかなる情報は有用か インセンテイブ CPP( 緊急時ピーク料金 ) RTP( リアルタイム料金 ) などの効果 サイバーセキュリテイ プライバシー保護 導入初期に保護の枠組みをしっかりつくる 5

再生可能エネルギー導入に対する需要家の意識 90% 以上は 現状の電力品質維持を望んでいる ( 家庭 事業所ともに ) 系統対策の追加負担を受け入れるかどうかは意見が分かれる 60~70% は現状維持 30% は負担許容出典 : 電力中央研究所報告 Y09008(2010) 再生可能エネルギー導入量 10% 未満 30% 再生可能エネルギー導入拡大 料金水準おおよそ維持 品質低下を許容 60~70% 高付加価値 ( 高コスト ) 再生可能エネルギー導入拡大 品質維持 系統対策費用の負担許容 品質維持 料金水準おおよそ維持 再生可能エネルギー導入制限 ( 現状維持 ) 電力品質 ( 停電の尐なさ ) 6

スマートメータの電気料金への影響と 消費者便益 : 北米の例 Center Point Energy( テキサス ) 費用 : スマートメータ導入費用のうち 50% はサーチャージとして電気料金に上乗せして回収する サーチャージは $3.05-3.24/ 月 期間は 12 年間 便益 : スマートメータ導入によって電気代を削減できる 卸電力価格が下がること 時間帯別料金 (TOU) など様々な料金メニューを容易に選択できること 消費者自身が電気の使い方を変えることで削減できる Chattham-Kent Energy( オンタリオ ) 費用 : スマートメータ導入費用は電気料金に上乗せしない 便益 : スマートメータ導入と同時に時間帯別料金へ移行する 電気代を削減できるか否かは 消費者自身の電気の使い方に依存する 7

スマートグリッド (SG) の セキュリテイ リスクとプライバシー問題 スマートメータ導入によって電力会社が取得するデータの種類と量が大幅に増える例えば 従来は 契約者の住所 氏名 契約種 月別電力消費 導入後 : 短時間間隔の電力消費 ( スマート家電の場合 ) 保有する家電種類と機器別電力消費 サイバーセキュリティリスク スマートメータがハッキングされ ハッカーがメータをリモート開閉して停電を起こす恐れがある また 電力会社のスマートメータ管理システムがハッキングされた場合 それを経由して さらに大規模な停電を起こされる恐れもある プライバシー問題 家庭 : 詳細な電力消費データから 居住者の生活パターンが外部へ漏れる在宅の有無が分かると 住居の安全上問題がある 産業 業務 : 機器別電力消費データから 企業秘密である生産 業務プロセスの情報が外部へ漏れる セキュリティやプライバシー保護に対する信用がないと スマートグリッドに対する消費者の理解や受容性がなくなる可能性がある 8

内 容 1. 需要家の視点 需要サイドの研究開発 需要家の視点 2. 費用便益分析 スマートメーター デマンドレスポンス導入の費用対効果 米国の事例 3. 電力中央研究所の取り組み 費用便益分析手法の開発 デマンドレスポンスポテンシャルの評価 自動化デマンドレスポンスシステムの開発 9

スマートメータ導入のメリット (1) 電力会社等における業務効率化 計量関係業務の遠隔実施による業務効率化 遠隔監視による停電範囲の早期特定 時間毎の計量値に基づく柱上変圧器等の配電設備に関する設備形成の合理化 (2) 省エネ 省 CO2 負荷平準化 消費量 電気料金等の見える化による省エネ - いかなる情報が有用か - 効果は持続するか? 料金プログラム ( 例えば需給状況等に連動した価格設定 ) 等の経済的インセンティブによるデマンドレスポンスを通じた省エネ 負荷平準化 - 実証試験中 住宅単位でエネルギーを最適にマネジメントするために 家庭内における機器 (EV エアコン等の家電製品及び太陽光パネル等の発電設備 ) を制御 運用していくためのゲートウェイ機能 10

デマンドレスポンスプログラムの料金メニュー : 動的価格設定 セント 時間帯別料金 (3 時間帯 ) オフピーク 時間帯別料金 (Time-of-Use [TOU] Rate) 緊急ピーク時課金 (Critical Peak Pricing [CPP]) 需給逼迫の予想される日 ( 緊急ピーク発動日 ) のピーク料金を通常のピーク料金よりも高くする ( 需要家には前日に通知 ) リアルタイム料金 (Real-Time-Pricing [RTP]) 発電コスト部分について 卸電力市場 ( 前日市場 ) の価格をそのまま適用する ピークタイムリベート (Peak-Time Rebate [PTR] あるいは Critical Peak Rebate) 緊急ピーク時に需要を削減した需要家に通常よりも高い価格で払い戻しをする ピークミドルミドルオフピークセント緊急ピーク時課金 ( 緊急ピーク発動日の場合 ) CPP オフピークピークミドルミドルオフピークセントリアルタイム料金 時 時 時 11

米国における家庭用デマンドレスポンスプログラムによるピーク電力削減効果 プログラム名称州時期参加者数 Statewide Pricing Pilot Energy Smart Pricing Plan Automated Demand Response System Pilot Ameren UE Critical Peak Pricing Pilot Anaheim Critical-Peak Pricing Experiment The Olympic Peninsular Project Xcel Energy TOU Pilot Power Cents DC 実験料金の種類 カリフォルニア 2003-04 2,500 TOU, CPP イリノイ 2003-06 カリフォルニア 2004-05 1,500 (2005-06) 175 (2004) RTP CPP ミズーリ 2004-05 545 TOU, CPP カリフォルニア 2005 123 CPR ワシントン 2006 112 TOU, CPP, RTP コロラド 2006-07 2,900 TOU, CPP ワシントン D.C. 2008-09 1160 CPP, CPR, RTP TOU:Time-of-Use, CPP:Critical Peak Pricing CPR:Critical Peak Rebate, RTP:Real Time Pricing ピーク需要削減率 ( 量 ) の例 13%~27% 削減 ( 緊急ピーク時 ) 最大で 15% の削減 43%~51% 削減 ( 緊急ピーク時 ) 12%~35% 削減 ( 緊急ピーク時 ) 12% 削減 ( 緊急ピーク時 ) 20% 削減 ( 緊急ピーク時 ) 15%~54% 削減 ( 緊急ピーク時 ) 34% ( 夏季緊急ピーク時 ) 電力中央研究所作成 12

家庭用スマートメーターの事業性評価の例 : PG&E PG&E 社は デマンドレスポンスの便益を比較的小さく見積もっている 差引で4% のベネフィットデマンド運用管理レスポンス デマンドレスポンスによる便益 ( 回避された発電費用や設備投資額 ) は総費用の約 1 割に相当すると仮定 メータ本体ネットワーク設置費用 IT システムシステム統合プロジェクト管理 検針 オペレーションの効率化 費用の 90 % CO2 排出削減など社会的便益もありうる 電力会社 (SCE) によっては コストの約 50% を社会的便益と DR 便益で見ている 便益は 動的料金制の参加率や価格弾力性の想定など幅のあるもの コスト ベネフィット 実証試験を踏まえて これらのパラメータを推定すべき 13

内 容 1. 需要家の視点 需要サイドの研究開発 需要家の視点 2. 費用便益分析 スマートメーター デマンドレスポンス導入の費用対効果 米国の事例 3. 電力中央研究所の取り組み 費用便益分析手法の開発 デマンドレスポンスポテンシャルの評価 自動化デマンドレスポンスシステムの開発 14

デマンドレスポンスの便益分析手法 デマンドレスポンスにおいて需要家に与える金銭的インセンティブの原資は デマンドレスポンスによる電力供給コストの削減分 総資源費用テスト 便益 =( テ マント レスホ ンス導入前の電力供給コスト )-( 導入後の電力供給コスト ) 費用 : ブレークイーブンコスト ( デマンドレスポンスにかけることのできる最大のコスト ) の算出 メータリングコストなど事業者側の費用 プログラムコスト 需要家の需要調整費用 ( スマートサーモスタット 宅内電力表示器 エネルギーマネジメントシステム 自家発 蓄熱機器 二次電池等 ) ピークカットの場合 高コスト発電費用の回避が便益 蓄熱機器 二次電池の場合 日負荷曲線の形状の変化 ( ピークシフト ボトムアップ ) から運用費用の変化 長期的には 流通設備増強費用の繰り延べ 社会的便益としての CO2 排出削減費用 ( 再生可能エネルギー電源導入とともに ) 15

便益評価の課題 誰にとっての? 需要家? 電気事業者? 社会? いつもたらされるか? 短期? 長期? どれだけ? 費用を正当化できるか? 通信ネットワークをいつまでに整備するか? 16

停電コストの評価 米国では 供給遮断による停電コストという社会的費用が大きい 我が国では 社会的に最適な供給信頼度を達成してきた 17

デマンドレスポンス (DR) の市場ポテンシャル業務 産業需要家に対する電中研アンケート調査 調査時期 : 2009 年 10 月 アンケート調査概要 調査地域 : 関東圏 ( 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 ) 調査対象 : 従業員規模 50 人以上の業務 産業需要家 回収 : 1,116 件 /14,406 件 ( 回収率 7.7%) 技術ポテンシャル 経済ポテンシャル 需要家業種需要家規模電気機器負荷削減量 需要家が希望するインセンティブの量 DR を考慮した需要曲線 = 市場ポテンシャル DR 仮想供給曲線とも呼ばれる 18

負荷削減報酬 ( 円 /kw) DR を考慮した需要曲線 ( アンケート調査結果 ) 5000 4500 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 0 500 1000 1500 負荷 (MW) 負荷削減報酬 ( 円 /kw) ( 夏季ピーク時間帯 3 時間 ) = 電気料金支払い (3 ヶ月 円 ) 節約率 負荷削減量 (kw) 発動回数 ( 回 ) 1600 円 /kw のとき 約 5% の負荷削減 報酬が 650 円 /kw のとき 約 4% の負荷削減 19

デマンドレスポンスプログラムによる 価格抑制効果の分析 消費者余剰 生産者余剰の変化を試算 電力価格 ( 円 /kwh) 需要反応がある場合の需要曲線 需要反応がない場合の需要曲線 約定価格 (DR なし ) 約定価格 (DR あり ) 供給曲線 最大需要 (kw) 20

業務用需要家自動化 DR システムの開発 都内のあるオフィスを対象に 夏季ピークカット型 DR を念頭に置いた 予備的な制御試験を実施した 制御日の 13-16 時に空調 照明負荷を抑制した 本試験で実施した制御イベントは 電力負荷を削減するが オフィスワーカーの 温熱快適性や作業効率感に影響を与えることが分かった 省電力効果と生産性のトレードオフ関係 受容可能な需要調整量と必要なインセンテイブを探索する 発動なし Event-U (5 分 OFF 10 分 ON) Event-K (5 分 OFF 5 分 ON) kw 削減率 - 10% 23% PMV 0.48 0.7 0.86 作業効率感 81% 73% 49% 注 1 : PMV(Predicted Mean Vote, 予測温冷感申告 ) 温熱環境評価指標の一つであり -3 が寒い +3 が暑い 0 が熱的中立を表す 快適範囲 (= 温熱環境に不満足な人が 10% しかいない状態 ) は PMV が ±0.5 以内とされる 出典 : 電力中央研究所研究報告 Y09014 21

電力 (kw) 需要家から見たスマートグリッド 需要家にとってのスマートグリッド 太陽光発電やエネルギー貯蔵機器 ( エコキュート 電気自動車 ) を含むスマートな利用を支援 ユーザーフレンドリーなシステムの開発と普及 : 自動化 DR システムが支援 社会的な意義 社会的便益としての低炭素化効果の評価 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 一般負荷 + 夜間 HP PV 抑制量 逆潮流 ( 上限 :2KW) 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 時 一般負荷 + 昼間 HP 便益が費用を上回るとき 誰が宅内ネットワークやエネルギーマネジメントシステムなどの実施費用を負担するか 今後の進め方 需要家の便益は国や地域に依存する その地域での実証分析が必要 実証試験データに基づき 需要家に潜在的なメリットを示し 十分に説明することが重要 技術 需要家サービスの両面から 社会的に望ましい次世代グリッドの 実現に取り組む PV 出力 日射 天気予報感知で PV 出力大きな時間帯にヒートポンプ給湯機を稼働 22