世 界 初!- 歯 が 修 復 されるメカニズムを 解 明 - 修 復 象 牙 質 形 成 の 必 須 因 子 の 発 見 茶 色 :オステオポンチン オステオポンチン From 日 本 歯 科 評 論 74(6): 41-56, 2014. 新 潟 大 学 医 歯 学 系 ( 歯 学 部 ) 教 授 大 島 勇 人 (おおしま はやと) 新 潟 大 学 医 歯 学 系 ( 歯 学 部 ) 助 教 斎 藤 浩 太 郎 (さいとう こうたろう) いろいろなネズミ 大 きなネズミ 小 さなネズミ Crlj:WIラット From http://www.crj.co.jp/product/domestic 比 較 的 大 型 で 発 育 が 良 い おとなしくて 取 り 扱 いやすい 繁 殖 性 良 好 国 際 的 に 通 用 しているWistarラットの 諸 特 性 を 備 えている 一 般 研 究 用 として 利 用 範 囲 が 広 い( 薬 効 薬 理 試 験 など) 脳 虚 血 試 験 にも 使 用 される Crl:CD1(ICR)マウス クローズドコロニー 一 般 研 究 用 として 利 用 範 囲 が 広 い 全 世 界 での 使 用 実 績 がある 5 年 以 上 一 定 集 団 内 でのみ 繁 殖 を 続 けられているマウス C57BL/6Jマウス 近 交 系 腫 瘍 発 生 するが 低 率 乳 がん 腫 瘍 雌 親 で 発 生 するが 低 率 眼 の 欠 損 奇 形 が 発 生 水 頭 症 離 乳 仔 に 発 生 するが 低 率 脱 毛 かみ 合 いや 舐 め 合 いなどで 脱 毛 する 個 体 が 出 現 兄 妹 交 配 または 親 子 交 配 を20 世 代 以 上 継 続 させて 遺 伝 形 質 を 均 一 化 させたマウス 1
ネズミ(ラット)とヒトの 歯 の 違 い http://www.hoshino labanimals.co.jp/products/shr.html から 引 用 2.4 mm https://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%83%92%e3%8 3%88#/media/File:Human.svg から 引 用 10.1 mm 10.6 mm 新 潟 大 学 歯 学 部 標 本 新 潟 大 学 歯 学 部 標 本 ヒトの 歯 に 見 られる 種 々の 象 牙 質 第 一 象 牙 質 歯 が 形 づくられる 時 に 形 成 される 象 牙 質 第 二 象 牙 質 歯 の 萌 出 後 一 生 涯 か かってゆっくり 造 られ る 象 牙 質 第 三 象 牙 質 咬 耗 摩 耗 う 蝕 歯 の 切 削 などの 後 に 反 応 性 に 造 られる 象 牙 質 From 日 本 歯 科 評 論 74(6): 41-56, 2014. 2
From 日 本 歯 科 評 論 74(6): 41-56, 2014. 歯 の 切 削 ( 窩 洞 形 成 ) 窩 洞 直 下 の 象 牙 芽 細 胞 は 窩 洞 形 成 直 後 に 機 械 的 に 損 傷 を 受 ける マイルドな( 限 局 した) 損 傷 モデルである 感 染 は 起 こらない ヒトの 歯 象 牙 質 HSP-27 免 疫 組 織 学 From 大 島 勇 人 未 発 表 試 料 Cavity 滲 出 性 病 変 dentin 象 牙 芽 細 胞 3
歯 の 再 植 全 ての 象 牙 芽 細 胞 が 再 植 後 の 低 酸 素 状 態 のために 徐 々 に 死 んでいく ヘビー(& 広 範 )な 損 傷 歯 周 組 織 が 歯 髄 の 治 癒 に 影 響 を 与 える 感 染 が 起 こることがある From 歯 科 臨 床 研 究,4(1): 49-57, 2007. From 日 本 歯 科 評 論,64(10): 93-100, 2004. 象 牙 芽 細 胞 と 骨 芽 細 胞 の 違 いを 考 える 新 潟 大 学 歯 学 部 標 本 From 日 本 歯 科 評 論 74(6): 41-56, 2014. 4
1990 年 10 月 大 島 勇 人 がネズミ(ラット) 歯 の 切 削 ( 窩 洞 形 成 )モデルを 確 立 し 窩 洞 形 成 後 の 歯 髄 反 応 を 微 細 構 造 学 的 に 解 明 した 2000 年 11 月 清 水 亜 矢 大 島 勇 人 らがネズミ(ラッ ト) 歯 の 再 植 実 験 モデルを 確 立 し 歯 髄 治 癒 と 樹 状 細 胞 の 関 係 を 明 らかにした 2007 年 8 月 長 谷 川 朋 子 大 島 勇 人 らがネズミ(マウ ス) 歯 の 再 植 実 験 モデルを 確 立 し 意 図 的 遅 延 再 植 で 歯 髄 内 に 骨 形 成 が 促 進 され ることを 明 らかにした 2008 年 12 月 高 森 泰 彦 大 島 勇 人 らがネズミ(マウ ス) 歯 冠 部 の 舌 下 部 への 他 家 移 植 実 験 モ デルを 確 立 し 既 存 の 象 牙 質 と 修 復 象 牙 質 の 界 面 にオステオポンチン(OPN)が 沈 着 することを 明 らかにした 2009 年 4 月 海 野 秀 基 大 島 勇 人 らがネズミ(マウ ス) 歯 の 他 家 移 植 実 験 モデルを 確 立 し 同 腹 か 非 同 腹 かが 歯 髄 の 治 癒 パターンに 与 える 影 響 を 明 らかにした これまでの 足 取 り 2011 年 5 月 斎 藤 浩 太 郎 大 島 勇 人 らがネズミ(マウス) 歯 冠 部 の 舌 下 部 への 自 家 移 植 実 験 モデルを 利 用 し 免 疫 細 胞 によるOPNの 分 泌 が 象 牙 芽 細 胞 分 化 にある 役 割 を 果 たすことを 明 らかに した 2013 年 10 月 斎 藤 浩 太 郎 大 島 勇 人 らがネズミ(マウス) 歯 の 窩 洞 形 成 モデルを 確 立 し 歯 髄 幹 細 胞 の 象 牙 芽 細 胞 分 化 過 程 を 明 らかにした 2014 年 9 月 依 田 浩 子 大 島 勇 人 らがネズミ(マウス) 歯 を 用 いた 生 体 外 で 機 能 を 解 析 する 歯 の 損 傷 培 養 実 験 モデルを 確 立 し 歯 髄 幹 細 胞 の 象 牙 芽 細 胞 分 化 過 程 を 明 らかにした 2016 年 4 月 28 日 斎 藤 浩 太 郎 大 島 勇 人 らがネズミ(マウス) 歯 の 窩 洞 形 成 モデルと 歯 の 損 傷 培 養 実 験 モデ ル Opnノックアウトマウスを 駆 使 して OPNが 修 復 象 牙 質 形 成 の 必 須 因 子 であるこ とを 明 らかにした 骨 格 発 生 におけるオステオポンチンの 役 割 From Cytokine & Growth Factor Reviews 19: 333 345, 2008. 分 泌 リンタンパク 質 1(SPP1)として 知 られるオステオポンチン(OPN)は 34kDaのタンパク 質 で 元 々 細 胞 と 骨 細 胞 外 マトリックスのヒドロキシアパタ イト(HA) 間 の 橋 渡 しとして 同 定 された 骨 では OPNは 骨 芽 細 胞 骨 細 胞 破 骨 細 胞 によってつくられる HAの 形 成 と 成 長 におけるOPNの 抑 制 機 能 が 報 告 されている OPN 受 容 体 にインテグリンやCD44が 含 まれる OPNのこれらの 受 容 体 への 結 合 は 多 様 な 細 胞 における 遊 走 接 着 生 存 を 仲 介 する 5
骨 のリモデリング( 改 造 ) セメントライン From Makishi, Ohshima et al. 投 稿 中 J Mol Med 86: 379-389, 2008. (a1) 類 骨 表 面 の 骨 芽 細 胞 (ライニング 細 胞 )はOPNを 分 泌 するように 誘 導 され るが OPNは 骨 石 灰 化 前 線 に 結 合 し タンパク 分 解 酵 素 (Pro)が 骨 表 面 を 覆 っ ている 非 石 灰 化 組 織 を 取 り 除 き OPNが 露 出 する (a2) 破 骨 細 胞 前 駆 細 胞 が 補 充 され 分 化 / 極 性 化 し 吸 収 性 の 破 骨 細 胞 になる (a3) 吸 収 が 持 続 すると 破 骨 細 胞 が 吸 収 された 石 灰 化 骨 表 面 にOPNを 分 泌 し 破 骨 細 胞 が 離 れた 後 そこに 骨 芽 細 胞 前 駆 細 胞 が 補 充 され 骨 芽 細 胞 に 分 化 する 歯 髄 治 癒 過 程 におけるOPNの 役 割 OPN & class II MHC Day 3 OPN Day 3 Opn Day 3 TEM TEM From Saito, et al. J Histochem Cytochem 59: 518 529, 2011. 6
歯 の 移 植 後 の 歯 髄 治 癒 過 程 における 歯 髄 象 牙 質 界 面 で 起 こることが 推 定 される 細 胞 のダイナミクス 成 熟 樹 状 細 胞 マクロファージ 間 葉 系 細 胞 の 遊 走 象 牙 芽 細 胞 の 分 化 幼 若 樹 状 細 胞 From Saito, et al. J Histochem Cytochem 59: 518 529, 2011. 歯 の 切 削 ( 窩 洞 形 成 ) EDTA Pb Rat From Clin Res Dent 4: 49 57, 2007. 5 days 15 days From Arch Histol Cytol 53: 423 438, 1990. Rat Mouse From Saito et al., J Endod 39: 1250 1255, 2013. 7
窩 洞 形 成 後 の 細 胞 のダイナミクス Rat 細 胞 接 着 細 胞 遊 走 細 胞 増 殖 窩 洞 形 成 前 Day 1 Days 2 3 Blue: HSP 25 CL 毛 細 血 管 ; D 象 牙 質 ; OB 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 ; PD 象 牙 前 質 From Histochem Cell Biol 130: 773 783, 2008. 窩 洞 形 成 (マイルドな 損 傷 ): 仮 説 Dentin Rat Predentin Odontoblasts 最 前 線 分 化 細 胞 2 days マイルドな 損 傷 前 駆 細 胞 後 方 部 隊 From 新 潟 歯 学 会 雑 誌 39(2): 171-176, 2009. 2 5 days マイルドな 損 傷 細 胞 増 殖 体 性 幹 細 胞 本 隊 8
反 応 象 牙 質 と 修 復 象 牙 質 既 存 の 象 牙 芽 細 胞 の 死 後 新 たに 分 化 した 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 が 修 復 象 牙 質 を 沈 着 する 修 復 象 牙 質 反 応 象 牙 質 刺 激 反 応 性 の 生 き 残 った 象 牙 芽 細 胞 が 反 応 象 牙 質 を 沈 着 する From Saito et al., J Endod 39: 1250 1255, 2013. Mouse B6J マウス Opn KO マウス 窩 洞 形 成 (5 6W) スライス 培 養 (3W) 10nM ropn 添 加 または 非 添 加 免 疫 組 織 化 学 (IHC) 抗 オステオポンチン(OPN) 抗 体 抗 ネスチン 抗 体 抗 象 牙 質 シアロタンパク 質 (DSP) 抗 体 抗 Ⅰ 型 コラーゲン 抗 体 抗 インテグリン α v β 3 抗 体 in situ ハイブリダイゼーション(ISH) オステオポンチン(Opn) 象 牙 質 シアロリンタンパク 質 (Dspp) Ⅰ 型 コラーゲン(col 1a1) 材 料 と 方 法 J Clin Invest 1;101(7):1468 1478, 1998 窩 洞 形 成 モデル 培 養 実 験 モデル (スライス 培 養 ) 9
窩 洞 形 成 (a)と 歯 のスライス 培 養 (b) 方 法 とその 治 癒 過 程 を 示 す 模 式 図 (a) 注 水 下 でタングステン カーバイ ド バー(Φ 0.6mm)をつけたエアー タービンを 用 いて 上 顎 第 1 臼 歯 の 近 心 面 に 溝 状 の 窩 洞 を 形 成 する (b c) 上 顎 第 1 臼 歯 を 抜 去 後 外 科 用 メスで 二 つに 矢 状 断 スライスし Trowell 法 ( 気 層 液 層 境 界 部 培 養 法 ) で7 日 間 培 養 する (d) 歯 の 切 削 とスライス 前 には 象 牙 芽 細 胞 は 歯 髄 象 牙 質 界 面 に 配 列 し ている (e) 窩 洞 形 成 1 日 後 に 傷 害 を 受 けた 象 牙 芽 細 胞 は 象 牙 前 質 から 引 き 離 さ れバラバラになり 死 ぬ (f) 歯 の 切 削 7 日 後 に 新 たに 分 化 した 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 が 歯 髄 象 牙 質 界 面 に 配 列 し 修 復 象 牙 質 を 沈 着 する (g)スライス 直 後 ~3 日 後 に 象 牙 芽 細 胞 が 象 牙 前 質 から 引 き 離 されバラバ ラになり 死 ぬ (h)スライス7 日 後 に 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 が 歯 髄 象 牙 質 界 面 に 配 列 する J Dent Res. 2016 Apr 28. pii: 0022034516645333. 図 1 10
ネスチン H&E Opn OPN 野 生 型 マウス 窩 洞 形 成 3 日 後 に ネスチン 陽 性 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 が 歯 髄 象 牙 質 界 面 に 配 列 し OPNを 合 成 分 泌 し 石 灰 化 前 線 にOPNを 沈 着 する Opn KOマウスでは OPNは 合 成 分 泌 されないが 術 後 3 日 でネスチン 陽 性 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 が 配 列 する 図 2 11
野 生 型 マウス 窩 洞 形 成 14 日 後 に 損 傷 部 位 に 多 量 の 修 復 象 牙 質 (RpD)が 形 成 され DsppおよびⅠ 型 コラーゲン 陽 性 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 が 歯 髄 象 牙 質 界 面 に 配 列 する 石 灰 化 前 線 にはOPNが 沈 着 している Opn KOマウスでは 術 後 14 日 でDspp 陽 性 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 が 配 列 するが Ⅰ 型 コ ラーゲン 陰 性 である 図 3 12
野 生 型 マウスで 窩 洞 形 成 3 日 後 に 有 意 に 細 胞 増 殖 活 性 が 亢 進 するのに 対 し Opn KOマ ウスでは 窩 洞 形 成 5 日 後 に 有 意 に 細 胞 増 殖 活 性 が 亢 進 する 野 生 型 マウスで 窩 洞 形 成 1 日 後 に 有 意 に 高 いアポトーシスを 起 こす Opn KOマウス 窩 洞 形 成 3 日 後 のアポトーシスは 野 生 型 に 比 し 有 意 に 低 い 図 4 13
+ 10nm ropn 野 生 型 マウスのスライス 培 養 7 日 後 に ネスチン 陽 性 Ⅰ 型 コラーゲン 陽 性 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 が 歯 髄 象 牙 質 界 面 に 配 列 し OPN 添 加 によりⅠ 型 コラーゲン 陽 性 が 増 強 する Opn KOマウスのスライス 培 養 7 日 では 術 後 7 日 でネスチン 陽 性 象 牙 芽 細 胞 様 細 胞 が 配 列 するが Ⅰ 型 コラーゲン 陰 性 である しかし OPN 添 加 でⅠ 型 コラーゲン 陽 性 を 示 す 結 論 茶 色 :オステオポンチン オステオポンチン From 日 本 歯 科 評 論 74(6): 41-56, 2014. 本 研 究 では オステオポンチンがない 環 境 下 では 歯 の 切 削 後 に 新 たに 象 牙 芽 細 胞 が 生 まれるが これらの 細 胞 が 象 牙 質 の 主 体 をなすⅠ 型 コ ラーゲンを 分 泌 出 来 ないことにより 修 復 象 牙 質 が 形 成 されないことを 明 らかにした 以 上 より オステオポンチンが 修 復 象 牙 質 の 必 須 因 子 であるとことが 明 らかとなった 14
期 待 される 効 果 From 日 本 歯 科 評 論 74(6): 41-56, 2014. 本 研 究 では オステオポンチンが 修 復 象 牙 質 形 成 の 必 須 因 子 であること を 明 らかにしたが オステオポンチンの 添 加 によりⅠ 型 コラーゲン 形 成 が 促 進 されることも 明 らかにした 将 来 オステオポンチンの 添 加 などで 人 為 的 に 修 復 象 牙 質 形 成 を 賦 活 化 する 可 能 性 も 提 示 され 将 来 の 創 薬 の 開 発 にも 繋 がると 思 われる 15