シクラメン Cyclamenspp. サクラソウ 科 1 経 営 的 特 徴 と 導 入 方 法 シクラメンは わが 国 における 最 も 重 要 な 鉢 物 で 年 間 出 荷 量 は 2,000 万 鉢 近 くなっており( 平 成 10 年 実 績 ) 売 金 額 とともに 王 座 を 占 めている 本 県 では 夏 季 冷 涼 な 気 候 を 生 かし 草 姿 花 容 の 揃 った 高 品 質 のものを 早 期 から 出 荷 できる 全 国 の 生 産 動 向 は 贈 答 用 需 要 の 低 迷 に 伴 い 以 前 の6 号 鉢 主 体 から5 号 鉢 主 体 に 移 り 最 近 ではより 小 鉢 の4 号 以 下 の 比 率 が 増 加 しつつある 品 種 は パステル 系 F1 ミニ 系 が 出 揃 った 数 年 前 より 安 定 化 傾 向 にある 経 営 技 術 面 では 昭 和 60 年 頃 より 伸 び 始 めた 底 面 給 水 栽 培 が 増 加 し かん 水 の 大 幅 な 省 力 化 となり 規 模 拡 大 が 可 能 となった しかし 近 年 長 引 く 経 済 不 況 の 影 響 でシクラメンの 単 価 は 低 迷 が 続 いており 小 規 模 経 営 では 厳 しい 状 況 となっている 今 後 一 層 の 規 模 拡 大 を 進 め コスト 低 減 を 図 るか 狙 いとする 販 売 単 価 を 設 定 し それに 対 して 経 営 的 に 見 合 う 栽 培 方 法 を 導 入 するなどして 特 徴 ある 経 営 を 確 立 していく 必 要 がある 表 1 10a 当 たり 作 業 別 旬 別 所 要 労 働 時 間 ( 単 位 : 時 間 ) 1 作 業 別 労 働 時 間 項 目 時 間 項 目 時 間 播 種 16.0 秋 冬 の 管 理 145.0 ( 注 ) 発 芽 の 管 理 15.0 葉 ぐみ 枯 葉 病 葉 とり 960.0 1. 青 森 県 主 要 作 目 の 技 術 第 1 回 目 の 移 植 28.0 病 害 虫 防 除 112.0 経 営 目 標 (1994.3) 第 2 回 目 の 移 植 68.0 出 荷 42.0 2. 出 荷 鉢 数 8,000 鉢 /10a 第 3 回 目 の 移 植 116.0 夏 期 の 栽 培 管 理 218.0 第 4 回 目 の 移 植 116.0 合 計 1836.0 2 旬 別 労 働 時 間 月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 旬 中 下 中 下 中 下 中 下 中 下 中 下 時 間 5.0 12.0 23.0 19.0 7.0 5.0 68.0 5.0 11.0 17.0 11.0 21.0 137 21.0 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 合 計 中 下 中 下 中 下 中 下 中 下 中 下 26.0 26.0 26.0 26.0 26.0 26.0 26.0 41.0 262 245 233 212 72.0 78.0 75.0 32.0 25.0 17.0 1,836-347 -
2 生 理 生 態 的 特 性 と 適 応 性 シクラメンは カガリビバナともよばれ 地 中 海 沿 岸 の 山 地 が 原 産 のサクラソウ 科 の 植 物 である 18 世 紀 に イギリスへ 渡 り のち ドイツに 渡 って 品 種 改 良 が 重 ねられ 今 日 の 園 芸 種 は 花 形 やサイズ 花 色 で 多 くの 系 統 に 分 化 している 暑 さを 嫌 い 年 中 温 和 な 気 候 を 好 むが 比 較 的 耐 寒 性 がある 営 利 生 産 ではほとんど 実 生 栽 培 で 一 部 組 織 培 養 苗 の 導 入 もみられる 原 産 地 は 一 般 に 夏 は 高 温 低 湿 であるが この 時 期 は 葉 を 落 として 球 根 の 状 態 で 休 眠 する 秋 からの 生 育 期 間 は 気 温 が15~20 冬 期 でも 平 均 気 温 が 約 10 と 温 暖 で 陽 光 も 強 い 原 産 地 は 年 間 の 降 水 量 が 少 なく 多 湿 の 日 本 では 病 害 の 防 除 が 重 要 となる 本 県 においては 梅 雨 時 期 の 低 温 寡 照 と 多 湿 夏 場 の 高 温 多 湿 と10 月 以 降 の 寡 日 照 が 栽 培 管 理 不 利 な 条 件 となる そのため 高 度 な 管 理 技 術 と それなりの 設 備 が 必 要 となる (1) 温 度 全 般 の 生 育 適 温 は15~20 で 30 を 超 えると 光 合 成 速 度 が 極 端 に 低 下 し 生 育 が 遅 延 するといわれている 生 育 適 温 は 生 育 ステージにより 異 なり 幼 苗 期 ( 葉 数 10 枚 程 度 )は 平 均 気 温 18 前 後 成 苗 期 ( 葉 数 30 枚 程 度 )は22 前 後 花 柄 伸 長 期 から 開 花 期 にかけては16~17 が 適 温 ( 中 山 1968)となる ただし 近 年 は 花 色 のみならず 耐 暑 性 についても 改 良 されており 高 温 期 の 生 育 については 限 界 温 度 が 昇 している (2) 日 照 シクラメンは 日 照 を 好 む 植 物 であるが 生 育 ステージにより 適 光 量 条 件 が 変 化 する 光 合 成 の 面 からみる と 幼 苗 期 は 気 温 20 照 度 1.5 万 ルックスで 最 大 となり 4 万 ルックスまでは 増 加 しても 変 わりはないと いわれている 成 苗 期 には15~20 の 適 温 域 で3~5 万 ルックスが 適 光 量 であるが 生 育 が 進 むと6.5 万 ル ックスでも 飽 和 せず 高 くなる このことから シクラメンには 遮 光 が 必 要 ないことになるが 高 温 域 では3 万 ルックスで 低 下 度 が 小 さく( 神 奈 川 園 試 )なるといわれ 実 際 の 栽 培 において 夏 場 の 晴 天 時 には 日 照 を30 ~40% 制 限 する 必 要 がある - 348 -
3 作 型 と 品 種 作 型 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 パーシカム 系 パステル 系 F1 シクラメン ミニ シクラメン 作 型 は5 号 鉢 仕 立 て(ミニシクラメンは3 号 鉢 )を 標 準 とした (1) 作 型 本 県 にみられるシクラメンの 作 型 は 12 月 播 種 の 翌 年 11 月 からの 出 荷 が 標 準 であるが 品 種 系 統 により 播 種 期 等 に 若 干 の 違 いがみられる ( 表 2) 表 2 播 種 期 がシクラメンの 開 花 状 況 に 及 ぼす 影 響 ( 平 成 10 年 フラワーセあおもり) 品 種 播 種 日 株 張 り 株 高 葉 数 葉 幅 開 花 数 花 蕾 数 評 価 備 考 ( 月 / 日 ) (cm) (cm) ( 枚 ) (cm) ( 個 ) ( 個 ) ハ ーハ ーク 9/10 38.4 14.2 42.4 9.1 10.0 13.4 4 11/21 35.2 14.4 35.6 9.0 6.4 10.8 3 開 花 にばらつき 有 り 12/12 34.4 15.9 44.6 8.4 8.4 15.0 2~3 未 開 花 株 有 り シェラテ ィーフ レット 9/10 11/21 38.3 33.7 14.7 13.0 56.2 49.4 8.0 7.6 16.0 9.6 18.6 14.0 3~4 出 荷 適 期 を 過 ぎている 3~4 出 荷 適 期 を 過 ぎている 12/12 34.7 15.1 53.8 7.4 12.4 15.8 4 リスト 9/10 41.1 16.1 75.8 7.6 20.6 18.0 3~4 出 荷 適 期 を 過 ぎている 11/21 12/12 38.1 36.0 13.9 14.7 55.6 63.8 8.0 7.5 17.6 10.2 17.6 16.4 4 5 シュトラウス 9/10 35.7 15.8 61.4 7.5 11.0 18.8 5 11/21 37.1 16.7 51.6 8.2 9.6 18.8 4 やや 徒 長 気 味 12/12 34.6 14.3 48.6 7.7 8.6 11.6 3~4 開 花 遅 れ 気 味 ヒ ンクシャワー 9/10 11/21-36.7-15.4-51.8-8.3-12.2-14.8 4 発 芽 後 株 枯 死 12/12 36.5 15.7 71.8 8.0 12.2 17.4 5 ユタカヒ アス 9/10 36.2 15.3 59.2 7.4 15.0 18.4 3~4 姿 がやや 乱 れている 11/21 12/12 33.8 36.5 13.2 16.1 59.0 74.4 7.3 7.3 6.6 15.6 10.0 14.6 3~4 病 気 により 枯 死 蕾 多 数 5 ハ ーフ ルヒ クトリア 9/10 38.1 15.1 55.6 8.1 6.4 9.0 3 発 蕾 期 の 遅 れ( 管 理 ) 11/21 12/12 37.3 36.7 14.9 14.2 54.8 60.8 8.6 8.0 10.8 18.0 14.0 13.2 4~5 5 ヒ ュアホワイト 9/10 40.5 15.6 51.2 8.2 8.2 10.4 4 11/21 36.4 14.1 51.2 8.5 8.6 11.6 4 12/12 37.6 16.1 54.4 7.9 8.6 16.2 4 注 )1 平 成 10 年 12 月 15 日 調 査 2 評 価 は 達 観 で 草 姿 花 と 葉 のバランス 等 から 判 断 した 1: 不 可 2: 可 3: 良 4: 優 5: 秀 - 349 -
(2) 品 種 品 種 は 花 色 花 形 花 の 大 きさなどから 多 岐 にわたるが 大 別 すると1パーシカム( 普 通 ) 系 2パステ ル 系 3F1シクラメン 4ミニシクラメンの4 系 統 に 分 かれる 代 表 的 な 品 種 は 表 3に 示 した これは あくまでも 系 統 における 分 類 であるが 播 種 からの 到 花 日 数 等 性 質 で 分 類 するとこの 限 りではない 花 色 的 には 赤 系 ピンク 系 が 多 く 作 られており 白 色 や 覆 輪 絞 り 花 色 変 化 花 黄 花 等 も 作 られている 系 統 的 にはパステル 系 とF1シクラメンの 中 大 輪 種 が 主 流 に 作 付 けされており ミニシクラメンがこれに 次 ぐ パーシカム 種 は 大 鉢 需 要 の 落 ち 込 みから 変 わった 花 色 のものを 除 いて 生 産 が 減 少 している 表 3 系 統 別 品 種 パーシカム( 普 通 ) 系 パステル 系 F1シクラメン ミニシクラメン バーバーク( 緋 赤 色 ) シューベルト( 藤 桃 色 濃 コンサートシリーズ ミラクルシリーズ(F1) ピュアホワイト( 白 色 ) 色 目 ) エスメラルダ(サーモンレ ディープローズ( 濃 藤 桃 ビクトリア( 白 色 紫 赤 色 シュトラウス( 緋 赤 色 ) ッド) 色 ) 目 覆 輪 目 フリンジ 咲 き) ベートーベン( 濃 紫 赤 色 ) オフェリア(ライトピンク) スカーレット( 緋 赤 色 ) シルバーエッジ( 濃 赤 色 ブラームス( 紫 赤 色 濃 色 ) オベロン( 淡 ラベンダーピ ホワイトウィズアイ 白 覆 輪 ) リスト( 白 色 紫 赤 色 目 ) ンク) ( 白 色 藤 桃 色 目 ) ハーレクィーン( 桃 色 赤 ボロディン( 白 色 ) シルビア( 紫 赤 色 ) ストライ ディープレッド( 濃 暗 赤 色 ) ノーマ( 白 色 紫 赤 色 目 ) デキシーシリーズ(F1) プ) レハール( 藤 桃 色 弁 先 淡 フィンランディア( 白 色 ) スカーレット( 緋 赤 色 ) ジャズブラッド( 濃 赤 色 ) 桃 色 ) ボレロ(ラベンダーピンク) ワインレッド( 深 紅 色 ) 信 濃 クイーン( 淡 桃 ~ 濃 桃 ピアス( 白 色 からピンクに カルーソ( 緋 赤 色 ) サーモンウィズアイ フリンジ 咲 変 化 ) ( 淡 桃 色 濃 色 目 ) き) シェイラシリーズ かぐや 姫 ( 黄 花 ) ディープレッド( 濃 暗 赤 色 ) ドレッシーシリーズ スカーレット( 緋 赤 色 ) (F1) ホワイト( 白 色 ) スカーレット( 緋 赤 色 ) ローズ( 藤 桃 色 ) ローズ( 藤 桃 色 ) ホワイトウィズアイ ( 白 色 藤 桃 色 目 ) 4 栽 培 (1) 育 苗 播 種 から 栽 培 の 場 合 と 購 入 苗 で 栽 培 する2 通 りがある ここでは 播 種 する 場 合 の 方 法 について 述 べる - 350 -
ア 播 種 期 品 種 系 統 仕 げ 鉢 のサイズにより 播 種 を 行 う 時 期 が 異 なる 大 きく 分 けるとパーシカム 系 では9~ 10 月 播 種 パステル 系 が11~12 月 F1シクラメンが12~1 月 ミニシクラメンが1~3 月 である 発 芽 の 適 温 は20 前 後 で 高 温 では 発 芽 揃 いが 悪 く 低 温 では 時 間 がかかるが 揃 いはよい ただし13 以 下 の 低 温 で 管 理 すると 種 子 が 休 眠 するおそれがある 使 用 する 種 子 は 赤 褐 色 でアメ 色 のつやをしており 3~4mm の 大 型 で 充 実 したものがよい は 種 量 は 将 来 予 定 する 数 の2~3 倍 は 必 要 である イ 予 措 播 種 にあたって 一 晩 吸 水 させ 十 分 膨 らんだものをまく ウ 播 種 用 土 栽 培 後 期 の 用 土 に 比 べ 軽 く 排 水 の 良 いこと また 清 潔 であることが 要 求 される このため 市 販 の 育 苗 用 土 を 用 いるのが 簡 便 である エ 播 種 方 法 箱 育 苗 とプラグ 育 苗 があるが 移 植 時 の 植 え 傷 みを 考 慮 すると プラグ 育 苗 が 良 い サイズは200 穴 な いしは288 穴 を 用 いる 1 粒 ずつの 播 種 が 標 準 で 覆 土 の 厚 さが5 mm 程 度 となるようにする 覆 土 はく んたんを 用 いると1 回 目 の 鉢 げ 時 に 球 根 を 露 出 させやすい 播 種 後 は 目 の 細 かいジョウロで 十 分 かん 水 を 行 う 底 面 から 吸 水 させても 良 い 嫌 光 性 のため 新 聞 紙 やラブシートで 覆 うなどの 処 置 をする オ 発 芽 後 の 管 理 発 芽 までには 長 い 日 数 を 要 し 30~40 日 である このため 発 芽 までに 用 土 を 乾 かさないよう 注 意 をする 5 割 ほど 発 芽 が 揃 ったら 光 線 にならして 第 1 葉 が1 cm 大 になるようにするが 時 期 が 遅 れるとモヤシ 状 になるため 注 意 をする 発 芽 後 は 徐 々に 温 度 を 下 げるが 後 の 生 育 を 考 慮 すると 13 以 下 にはしない 方 がよい この 時 期 は 生 育 が 最 も 緩 慢 な 時 期 で 第 1 回 目 の 鉢 げに 適 した 大 きさ すなわち 本 葉 3 枚 程 度 になる まで3~4か 月 を 要 する この 時 期 に 栽 培 管 理 に 失 敗 をするとその 後 の 生 育 に 大 きな 影 響 を 及 ぼす 完 全 な 培 土 を 用 いることと 薄 目 の 液 肥 を 週 1 回 施 し 良 い 苗 を 育 てる (2) 鉢 げ 準 備 ア 培 養 土 の 作 成 鉢 げ 用 土 の 基 本 となる 土 であるが 土 の 種 類 や 採 取 された 場 所 により 土 質 が 異 なる シクラメン は 栽 培 期 間 が 長 いため 水 をかけるたびに 溶 けて 固 まっていくような 土 では 根 の 発 達 が 望 めず 栽 培 を 失 敗 する そこで 黒 ボク 土 や 粘 質 の 強 い 赤 土 等 は 等 量 に 近 い 堆 肥 を 混 入 し 切 り 返 しながら1 年 以 堆 積 させたものを 用 いるようにする これは 崩 れやすい 土 質 に 対 し 団 粒 化 を 促 すためのものである 赤 - 351 -
玉 土 や 園 芸 粒 状 培 土 のように 粒 状 加 工 され 崩 れにくくなったものを 除 いては 記 のように 調 整 した 方 が 無 難 である りん 酸 吸 収 係 数 の 高 い 土 を 用 いる 場 合 は この 培 養 土 を 作 成 する 時 点 で ようりん 等 の 改 良 資 材 を 混 入 しておく またpHも6.0 程 度 に 調 整 をしておく なお 混 合 した 培 養 土 には 適 度 な 湿 り 気 を 与 えて おかなければ お 互 いになじまない イ 鉢 げ 用 土 の 調 整 鉢 げ 用 土 については 水 はけ 水 保 ちが 良 く 播 種 用 土 同 様 病 害 虫 のおそれのない 清 潔 なものが 望 ま しい 用 土 の 混 合 比 率 については かん 水 方 法 などの 管 理 面 から 異 なってくる 現 在 はピートモスを 多 用 した 人 工 培 土 が 主 流 となっているが 緩 衝 能 力 を 高 めるため 若 干 は 培 養 土 を 混 入 した 方 がよい 例 として は 以 下 の 通 りであが 前 にも 述 べたように 管 理 条 件 によってやや 異 なってくる 自 分 の 栽 培 にあった 用 土 を 見 つけることが 重 要 である なおpHは6.0 前 後 に 調 整 をする 用 土 の 仕 がりは やや 粗 めの 方 が 根 の 発 育 にも 良 い (ア) 培 養 土 主 体 の 場 合 培 養 土 : 腐 葉 土 : 十 和 田 砂 (パーライトでも 可 )=4:4:2 これに 全 体 量 の1 割 ほどくんたんを 混 入 すると 良 い (イ) 人 工 培 土 主 体 の 場 合 ピートモス: 十 和 田 砂 (パーライトでも 可 ): 培 養 土 ( 赤 土 でも 可 )=6:2:2 これに 全 体 量 の 約 1 割 のくんたんを 混 入 すると 良 い またピートモスを1 割 減 らして その 分 バーミキュライトを 混 用 しても 良 い 底 面 吸 水 栽 培 の 場 合 は こちらの 方 が 毛 管 現 象 が 働 きやすいため 管 理 しやすい (3) 施 肥 理 想 的 には 生 育 ステージに 応 じ 液 肥 による 施 肥 であるが 簡 便 な 方 法 は 緩 行 性 肥 料 を 用 いることで ある 用 土 1リットル 当 たりの 施 肥 量 は 現 物 換 算 でロング100 日 タイプ3g マグアンプK4gである これをあらかじめ 用 土 に 混 入 しておくと 鉢 げの 都 度 追 肥 をすることになる 液 肥 で 栽 培 する 場 合 は 窒 素 濃 度 が30~70ppm 程 度 のものを 週 に1 回 程 度 施 す (4) 鉢 げ 発 芽 後 本 葉 が2~3 枚 程 度 になったら 鉢 げを 行 う( 図 1 2) このときから 球 根 を 半 分 程 度 地 表 面 に 出 して 植 え 付 ける 浅 植 えは 球 根 がぐらつくため 後 の 生 育 が 悪 くなる 深 植 えにした 場 合 は 新 芽 が 腐 敗 したり 病 気 が 発 生 しやすくなるため 避 ける なお 仕 げの 鉢 サイズにより 鉢 げ 回 数 が 異 なる 目 安 は 表 4に 示 した - 352 -
図 1 鉢 げ 前 の 苗 の 状 況 図 2 鉢 げ 直 後 の 状 況 (3 号 ポリポット) 表 4 仕 げ( 出 荷 ) 鉢 と 鉢 げ 回 数 仕 げ( 出 荷 ) 鉢 サイズ 鉢 げ( 鉢 増 し) 回 数 および 鉢 (ポット)サイズ 7 号 鉢 ( 大 鉢 ) 4 回 : 2.5 号 3.5(4) 号 5 号 7 号 3 回 : 3 号 5 号 7 号 5 号 鉢 ( 標 準 ) 2 回 : 3 号 5 号 4~4.5 号 鉢 (ミニ 含 む) 2 回 : 2.5(3) 号 4(4.5) 号 3~3.5 号 鉢 (ミニ 系 ) 1 回 : 3(3.5) 号 (5) 鉢 げ 後 の 管 理 ア かん 水 定 植 直 後 は 鉢 内 の 用 土 を 落 ち 着 かせるため たっぷりとかん 水 する その 後 は 鉢 土 の 表 面 が 白 っぽく 乾 きはじめたら 次 のかん 水 を 行 う 過 湿 は 葉 柄 の 徒 長 や 根 腐 れの 原 因 となりやすいため 十 分 に 気 をつ ける また 乾 燥 は 葉 の 縮 れや 生 育 不 良 の 原 因 となるため 避 けなければならない 手 かん 水 の 場 合 夏 場 の 高 温 乾 燥 時 を 除 いては 葉 や 新 芽 に 水 がかからないようにし 鉢 土 部 分 だけにす る これは 灰 色 かび 病 などの 病 気 を 予 防 するためである なお 夏 場 の 高 温 乾 燥 時 に 頭 かん 水 すること は 株 を 冷 却 する 効 果 がみられ 生 育 促 進 効 果 があるといわれているが この 場 合 は 午 前 中 にかん 水 を し 午 後 には 葉 や 新 芽 にかかった 水 が 乾 いているようにする 雨 天 の 時 や 湿 度 の 高 いときには 行 わない ようにする 生 育 後 半 には 徒 長 を 防 止 するため 水 加 減 に 注 意 をする イ 温 度 管 理 生 育 適 温 や 病 気 予 防 の 観 点 から 通 風 を 図 り 高 温 にならないようにする 夏 場 の 晴 天 時 のように 施 設 内 が 高 温 になる 場 合 は 日 中 30~40% 程 度 の 遮 光 を 行 い 温 度 昇 を 防 ぐ 努 力 をする 秋 以 降 は 最 低 温 度 10 を 目 標 にするが 生 育 が 遅 れ 気 味 の 場 合 は15~18 まで 温 度 を げる ウ 葉 組 み - 353 -
株 の 姿 を 整 え 株 中 央 部 に 光 を 当 て 葉 数 の 増 加 と 蕾 の 発 育 を 促 すため 葉 組 みを 行 う この 作 業 は 仕 げ 鉢 定 植 後 株 が 充 実 してきた 頃 から 行 うが 目 安 は9 月 からとなる 要 領 は 中 心 部 の 葉 を 外 側 に 引 っ ぱり 出 すようにして 行 う( 図 3 4) 出 荷 までに3~4 回 この 作 業 を 行 うが 葉 組 み 作 業 の 遅 れは 葉 柄 が 伸 び 株 に 締 まりがなくなるため 適 期 に 行 う 最 近 はこの 作 業 を 簡 便 化 するため 葉 組 器 ( 図 5) が 開 発 されており 作 業 時 間 の 著 しい 低 減 が 期 待 される 図 3 葉 組 み 前 図 4 葉 組 み 後 図 5 葉 組 み 器 5 主 要 病 害 虫 とその 防 除 対 策 (1) 病 害 ア 灰 色 かび 病 葉 葉 柄 花 梗 花 弁 に 発 生 する 葉 では 葉 縁 あるいは 株 内 部 の 老 化 葉 が 侵 されやすく 侵 されると 褐 変 して 腐 敗 し 灰 色 ビロード 状 のかびが 生 える 花 でははじめ 水 浸 状 の 斑 点 を 生 じ やがて 褐 変 して 腐 敗 する 発 生 の 特 徴 と 防 除 法 は 共 通 事 項 参 照 イ 軟 腐 病 はじめ 地 際 近 くの 葉 柄 や 花 梗 に 水 浸 状 病 斑 が 生 じ 次 第 に 軟 化 腐 敗 する さらに 株 全 体 に 腐 敗 が 及 び 枯 死 することもある 病 原 菌 は 短 桿 状 の 細 菌 (バクテリア)であり 高 温 多 湿 な 条 件 で 発 生 しやすい ハウスの 通 風 や 水 やりに 注 意 し できるだけ 多 湿 にならないよう 管 理 すると 共 に 発 生 期 には 予 防 的 に 薬 剤 散 布 を 行 う ウ 萎 凋 病 一 部 の 葉 が 黄 変 してしおれる やがて 多 くの 葉 が 同 様 にして 黄 化 萎 凋 して 株 が 枯 死 する 塊 茎 を 横 に 切 断 してみると 導 管 の 褐 変 がリング 状 に 認 められる 土 壌 伝 染 性 の 病 害 で 汚 染 された 培 土 により 発 生 する - 354 -
ことが 多 い 防 除 として 培 土 や 資 材 は 無 病 のものを 用 いるほか 発 病 株 は 直 ちに 抜 き 取 り 土 ごと 処 分 する また 発 病 株 を 抜 き 取 った 後 は 鉢 ごとに 薬 剤 灌 注 処 理 を 定 期 的 に 行 う (2) 虫 害 ア アザミウマ 類 花 をミカンキイロアザミウマが 加 害 し 花 柄 が 曲 がったり 花 弁 が 奇 形 になる 赤 花 では 花 弁 の 色 抜 けが 目 立 ち 淡 色 花 では 褐 色 のかすり 状 になる 発 生 の 特 徴 と 防 除 方 法 は 共 通 事 項 を 参 照 する イ アブラムシ 類 株 元 にワタアブラムシ 等 が 寄 生 し 多 発 すると 葉 が 巻 いたり 株 が 矮 化 する 発 生 の 特 徴 と 防 除 方 法 は 共 通 事 項 を 参 照 する ウ ホコリダニ 類 花 弁 とがくの 間 等 の 隙 間 に 群 棲 し 多 発 すると 花 が 奇 形 になり 色 抜 けも 見 られる 薬 剤 がかかりにく い 部 分 に 生 息 するため 防 除 が 難 しい 外 部 から 持 ち 込 まないように 注 意 する エ その 他 ハダニ 類 やコナジラミ 類 等 が 寄 生 する 6 調 製 出 荷 開 花 数 が5 号 鉢 で10 輪 前 後 4.5 号 鉢 以 下 で5 6 輪 7 号 鉢 以 では15 輪 前 後 開 花 した 時 点 で 出 荷 する 出 荷 の 前 には あらためて 枯 れ 葉 や 枯 死 した 葉 や 蕾 を 取 り 除 き また 鉢 の 汚 れを 拭 き 取 って 出 荷 する 1トレーの 入 鉢 数 は トレーの 規 格 (5 号 鉢 で5 鉢 入 れの 規 格 が 標 準 )に 準 ずるが 株 の 大 きさによっては 葉 の 傷 みを 避 けるため 数 を 減 らす 配 色 は 各 色 がまんべんなく 入 るようにするが 市 場 によって 異 なるた め あらかじめ 確 認 をする 必 要 がある 出 荷 の1 週 間 前 には 施 設 の 温 度 を 下 げ 寒 さに 順 化 (ハードニング)させる これにより 輸 送 中 の 低 温 に よる 荷 傷 みの 防 止 や 環 境 の 変 化 に 順 応 できるようにする - 355 -
図 6 出 荷 前 の 状 況 参 考 引 用 文 献 1) 前 田 茂 一 大 平 民 人 長 村 智 司 ほか 農 業 技 術 体 系 花 卉 編 10 シクラメン 球 根 類 農 産 漁 村 文 化 協 会 ( 平 成 6 年 ) 2) 横 渡 隆 大 島 誠 坂 下 健 古 口 光 夫 鉢 物 栽 培 技 術 マニュアル 2 巻 誠 文 堂 新 光 社 ( 平 成 6 年 ) 3) 青 森 県 農 業 研 究 推 進 センター 平 成 9 年 度 指 導 奨 励 事 項 指 導 参 考 資 料 等 - 356 -
シクラメン( 固 定 種 ) 栽 培 ごよみ 1 年 目 2 年 目 月 旬 ( 播 種 育 苗 ) ( 育 苗 出 荷 ) 栽 培 の 要 点 摘 要 生 育 作 業 生 育 作 業 1. 作 型 5 中 生 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 下 育 ハ ーシカム 種 期 6 中 間 ハ ーシカム 種 ハ ステル 系 下 仕 げ ( 注 ) : 播 種 : 鉢 げ : 出 荷 7 中 ハ ステル 系 2. 播 種 (200~288 穴 セルトレー 利 用 ) 下 仕 げ (1) 温 度 : 発 芽 までは20 前 後 発 芽 後 は13 以 とする 8 中 3. 用 土 の 準 備 (2) 水 管 理 : 発 芽 までは 暗 黒 にして 乾 燥 させないように 管 理 する 下 葉 組 み 開 長 期 間 にわたり 物 理 性 が 変 化 することのない 用 土 を 用 いる ハ ーシカム 系 始 団 粒 化 された 土 壌 をベースにする 比 率 は 土 壌 4 割 腐 葉 土 4 割 十 和 9 中 播 種 田 砂 2 割 さらに 全 体 量 の1 割 もみがらくんたんを 混 入 かん 水 方 法 に 下 より 適 宜 混 合 比 率 を 調 整 する 10 中 ハ ーシカム 系 0を 目 標 に 矯 正 する 下 発 芽 始 め 4. 鉢 げ 緩 効 性 の 化 成 肥 料 を 用 土 1リットル 当 たり 現 物 で3~4g 程 度 混 入 phは6. 出 荷 始 め 1 回 目 は 本 葉 が3 枚 程 度 になったとき3 号 ホ リホ ットへ 定 植 する 球 根 の 11 中 ハ ステル 系 高 さが 半 分 程 度 地 表 に 出 るようにする 下 播 種 2 回 目 はホ ット 内 に 十 分 根 が 回 り 地 部 が 充 実 したときで 5 号 仕 げ 鉢 12 中 5. 定 植 後 の 管 理 に 定 植 する 植 え 付 けの 深 さは1 回 目 と 同 様 とする 下 ハ ステル 系 (1) 温 度 : 温 度 10 を 目 標 とするが 生 育 が 遅 れ 気 味 の 時 は15~20 ま 発 芽 始 め で 温 度 を げる 夏 場 は30 以 下 になるように 換 気 を 図 る 場 合 1 中 によっては 日 中 寒 冷 しゃにて 遮 光 をする 下 ハ ーシカム 種 ん 水 をする (2)かん 水 : 用 土 表 面 が 乾 き 始 めたら 鉢 底 から 水 が 出 るまでたっぷりとか 2 中 鉢 げ (3) 葉 組 み:9 月 頃 から 株 中 心 部 に 光 をあて 新 葉 や 花 らいの 生 育 を 促 進 させ 下 るのと 開 花 時 の 草 姿 を 整 えるために 中 心 部 の 葉 を 外 側 へつま み 出 すようにして 整 える 出 荷 までに3 回 以 行 う 3 中 ハ ステル 系 6. 出 荷 下 鉢 げ 市 場 にもよるが 10 輪 前 後 開 花 したときが 出 荷 適 期 となる 枯 れ 葉 や 傷 4 中 色 を 考 えて 入 れるようにする んだ 花 等 を 取 り 除 き 鉢 の 汚 れを 落 として 出 荷 する 5 号 鉢 用 トレーに 配 - 357 -
シクラメン(F1 系 ミニチュア 種 ) 栽 培 ごよみ F1 系 ミニチュア 系 月 旬 (5 号 鉢 ) (3 号 鉢 ) 栽 培 の 要 点 摘 要 生 育 作 業 生 育 作 業 播 種 1. 作 型 1 中 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 下 F1 系 2 中 ミニチュ 下 播 種 ア 系 ( 注 ) : 播 種 : 鉢 げ : 出 荷 3 中 2. 播 種 (200~288 穴 セルトレー 利 用 ) 下 (1) 温 度 : 発 芽 までは20 前 後 発 芽 後 は13 以 とする 4 中 3. 用 土 の 準 備 (2) 水 管 理 : 発 芽 までは 暗 黒 にして 乾 燥 させないように 管 理 する 下 鉢 げ (1) 長 期 間 にわたり 物 理 性 が 変 化 することのない 用 土 を 用 いる 団 粒 化 された 土 壌 をベースにする 比 率 は 土 壌 4 割 腐 葉 土 4 割 十 和 5 中 生 生 田 砂 2 割 さらに 全 体 量 の1 割 もみがらくんたんを 混 入 かん 水 方 法 によ 下 育 育 り 適 宜 混 合 比 率 を 調 整 する 6 中 鉢 げ 0を 目 標 に 矯 正 する 下 ( 仕 げ) 4. 鉢 げ (2) 緩 効 性 の 化 成 肥 料 を 用 土 1リットル 当 たり 現 物 で3~4g 程 度 混 入 phは6. (1) 1 回 目 は 本 葉 が3 枚 程 度 (ミニチュア 系 4~5 枚 )になったとき3 号 ホ リホ ット 7 中 へ 定 植 する 球 根 の 高 さが 半 分 程 度 地 表 に 出 るようにする 下 仕 げ 生 (2) F1 系 では2 回 目 の 移 植 はホ ット 内 に 十 分 根 が 回 り 地 部 が 充 実 したとき 育 で 5 号 仕 げ 鉢 に 定 植 する 植 え 付 けの 深 さは1 回 目 と 同 様 とする 8 中 生 5. 定 植 後 の 管 理 下 育 (1) 温 度 : 温 度 10 を 目 標 とするが 生 育 が 遅 れ 気 味 の 時 は15~20 ま 葉 組 み 葉 組 み で 温 度 を げる 夏 場 は30 以 下 になるように 換 気 を 図 る 場 合 9 中 によっては 日 中 寒 冷 しゃにて 遮 光 をする 下 (2) かん 水 : 用 土 表 面 が 乾 き 始 めたら 鉢 底 から 水 が 出 るまでたっぷりとか ん 水 をする 10 中 (3) 葉 組 み:9 月 頃 から 株 中 心 部 に 光 をあて 新 葉 や 花 らいの 生 育 を 促 進 させ 下 るのと 開 花 時 の 草 姿 を 整 えるために 中 心 部 の 葉 を 外 側 へつま 出 荷 始 め 出 荷 始 め み 出 すようにして 整 える 出 荷 までに3 回 以 行 う 11 中 開 ( 2 月 頃 開 ( 2 月 頃 6. 出 荷 下 花 まで) 花 まで) 市 場 にもよるが F1 系 で10 輪 ミニチュア 系 で5 輪 前 後 開 花 したときが 出 荷 適 期 となる 枯 れ 葉 や 傷 んだ 花 等 を 取 り 除 き 鉢 の 汚 れを 落 として 出 荷 す 12 中 る 配 色 を 考 えて 入 れるようにする - 358 -