2. 妊 娠 期 の 管 理 1) 妊 娠 鑑 定 超 音 波 検 査 による 妊 娠 鑑 定 の 実 施 時 期 1 妊 娠 ( 交 配 後 )14 日 目 受 胎 および 双 胎 の 有 無 の 確 認 2 妊 娠 ( 交 配 後 )16 日 目 胚 胞 の 発 育 状 態 の 確 認 シストとの 識 別 双 胎 の 有 無 の 確 認 不 受 胎 の 場 合 は 卵 胞 の 発 育 状 態 を 確 認 3 妊 娠 ( 交 配 後 )35 日 目 胎 子 心 拍 の 確 認 早 期 胚 死 滅 の 場 合 は PGF2α の 投 与 4 妊 娠 ( 交 配 後 )49 日 目 胎 子 心 拍 の 確 認 最 終 の 妊 娠 鑑 定 検 査 妊 娠 ( 交 配 後 )16 日 目 2 回 目 の 妊 娠 鑑 定 は 初 回 の 2 日 後 交 配 から 16 日 目 に 実 施 する 初 回 検 査 で 受 胎 が 確 認 された 場 合 は 2 日 前 の 前 回 に 比 較 して 胚 胞 が 7mm 程 度 発 育 し ていることを 確 認 する(この 時 期 は 1 日 当 り 3~ 4mm ずつ 発 育 する) 発 育 が 低 調 な 場 合 は 早 期 胚 死 滅 の 可 能 性 がある 初 回 検 査 時 に 胚 胞 とシストの 識 別 が 困 難 であった 場 合 は シストは 大 きさが 不 変 であり 移 動 しない 点 に 注 意 して 識 別 する また 双 胎 の 有 無 も 再 確 認 する 一 方 初 回 検 査 時 に 胚 胞 が 確 認 できなかった 場 合 は 不 受 胎 を 再 確 認 し 次 回 発 情 での 交 配 に 備 え 卵 胞 の 発 育 状 態 を 確 認 する 10mm 10mm 超 音 波 (エコー) 検 査 の 普 及 により 交 配 後 14 日 目 の 妊 娠 鑑 定 が 可 能 となった この 検 査 は 生 産 効 率 を 向 上 させるために 不 可 欠 である また 胚 胞 の 着 床 時 期 は 受 精 後 37~40 日 であり 長 期 間 にわたり 不 安 定 な 状 態 が 継 続 する この 期 間 における 胚 胞 の 消 失 すなわち 早 期 胚 死 滅 の 発 生 率 は 6~9% であるといわれている したがって 交 配 後 14 日 目 の 検 査 において 妊 娠 が 確 認 された 後 も 着 床 時 期 で ある 40 日 後 までは 定 期 的 な 検 査 が 必 要 である 妊 娠 ( 交 配 後 )14 日 目 初 回 の 妊 娠 鑑 定 は 交 配 後 14 日 目 に 実 施 する こ の 時 期 の 胚 胞 は 直 径 16~20mm 程 度 あり 子 宮 内 に 浮 遊 しながら 移 動 している この 検 査 においては 双 胎 の 有 無 を 確 認 する この 時 期 の 胚 胞 は 定 着 して いないため 人 為 的 な 破 砕 が 比 較 的 容 易 であり 双 胎 の 確 認 時 に 的 確 な 減 胎 処 置 ( 胎 胞 の 片 側 に 対 する 破 砕 処 置 )が 実 施 できるからである また 子 宮 内 にシストが 存 在 する 場 合 は 胚 胞 とシストの 識 別 が 必 要 である 左 : 交 配 後 14 日 目 の 胚 胞 ( 直 径 20mm) 右 : 交 配 後 16 日 目 の 胚 胞 ( 直 径 27mm) 妊 娠 ( 交 配 後 )35 日 目 3 回 目 の 妊 娠 鑑 定 は 交 配 から 35 日 目 に 実 施 する 交 配 から 26 日 目 以 降 には 尿 膜 および 胎 子 の 認 識 が 可 能 となるため この 妊 娠 鑑 定 時 には 胎 子 の 心 拍 動 を 確 認 する 胎 子 の 心 拍 動 が 弱 い 場 合 や 心 拍 数 が 少 ない 場 合 は 早 期 胚 死 滅 の 予 兆 である 可 能 性 が 高 いため 数 日 後 の 再 検 査 が 不 可 欠 である 早 期 胚 死 滅 が 確 認 された 場 合 PGF2α の 投 与 によ る 黄 体 退 行 処 置 により 発 情 を 誘 発 できる 可 能 性 が 高 く 同 一 シーズン 内 の 再 交 配 が 可 能 となる した がって 交 配 後 35 日 目 の 妊 娠 鑑 定 は 経 済 的 な 観 点 から 重 要 な 検 査 といえる 妊 娠 ( 交 配 後 )49 日 目 超 音 波 検 査 による 最 終 の 妊 娠 鑑 定 は 交 配 から 49 日 目 に 実 施 する この 検 査 も 前 回 と 同 様 胎 子 の 心 11
拍 動 を 確 認 する この 時 期 は すでに 着 床 が 開 始 し ており 着 床 の 有 無 副 黄 体 形 成 不 全 による 胎 子 の 死 滅 や 異 常 の 有 無 を 確 認 する また この 時 期 に 胎 子 の 生 存 が 確 認 できた 場 合 子 宮 内 シストの 存 在 下 においても 早 期 胚 死 滅 が 発 症 する 可 能 性 は 極 めて 低 いことから 最 終 の 妊 娠 鑑 定 とする 左 : 同 時 期 に 2 個 の 排 卵 となった 双 胎 ( 大 きさが 同 じ) 右 :1 日 遅 れて 2 個 の 排 卵 となった 双 胎 ( 大 きさが 異 なる) 10mm 10mm 左 : 交 配 後 35 日 目 の 胎 子 ( 全 長 15mm) 右 : 交 配 後 49 日 目 の 胎 子 ( 全 長 44mm) 2) 双 胎 時 の 減 胎 処 置 双 胎 妊 娠 は 流 産 のリスクが 高 いため 早 期 診 断 および 早 期 の 減 胎 処 置 の 実 施 が 望 ましい 双 胎 確 認 のためには 交 配 後 14 および 16 日 目 の 超 音 波 検 査 が 不 可 欠 である 左 : 子 宮 角 の 先 端 に 片 方 の 胚 胞 のみを 誘 導 した 状 態 である 右 : 破 砕 直 後 の 子 宮 には 貯 留 液 が 確 認 できる 軽 種 馬 生 産 において 双 胎 は 流 産 を 発 生 しやすい また 分 娩 時 まで 無 事 に 成 長 したとしても 難 産 や 未 熟 子 である 可 能 性 が 高 い さらに 僅 か1%の 確 率 で 無 事 に 生 まれたとしても 競 走 馬 としての 十 分 な 発 育 は 期 待 できない このように 双 胎 は 経 済 的 に 大 きな 損 失 をもたらすことから 早 期 に 双 胎 の 有 無 を 確 認 し 減 胎 処 置 を 実 施 する 必 要 がある 胚 胞 は 交 配 後 16 日 目 まで 子 宮 内 を 浮 遊 している ため 容 易 に 移 動 させることが 可 能 である しかし それ 以 降 は 胎 胞 が 子 宮 角 基 部 に 固 着 して 減 胎 処 置 が 困 難 になるため 交 配 後 14~16 日 目 に 必 ず 妊 娠 鑑 定 を 実 施 する 必 要 がある 特 に 交 配 前 に 2 個 の 排 卵 が 確 認 されている 場 合 は 交 配 から 14 日 目 まで に 初 回 の 妊 娠 診 断 を 実 施 し その 1~2 日 後 の 再 検 査 が 不 可 欠 である 12
3) 早 期 胚 死 滅 (Early Embryonic Loss) 早 期 胚 死 滅 は 高 齢 (15 歳 以 上 ) 不 適 切 な 栄 養 管 理 あるいは 分 娩 後 の 初 回 発 情 での 交 配 に よって 発 症 しやすい 早 期 胚 死 滅 の 診 断 においては 交 配 後 35 日 目 の 妊 娠 鑑 定 が 極 めて 重 要 となる 年 齢 の 要 因 はやむを 得 ないが エネルギー 要 求 量 に 見 合 った 適 切 な 飼 養 管 理 を 実 施 するとともに 分 娩 後 の 初 回 発 情 での 交 配 を 見 送 ることが 推 奨 されて いる 交 配 後 40 日 目 までに 胚 胞 が 消 失 する 現 象 は 早 期 胚 死 滅 (EEL:Early Embryonic Loss) と 呼 ば れている 日 高 軽 種 馬 防 疫 推 進 協 議 会 の 調 査 では 交 配 後 15 ~35 日 間 に 5.8% 米 国 ケンタッキー 州 での 調 査 で は 交 配 後 15~35 日 間 に 9.5%の 早 期 胚 死 滅 が 発 生 することが 報 告 されている なお 前 者 における 流 産 率 は 8.7%であり 母 馬 の 死 亡 を 含 め 初 回 の 妊 娠 鑑 定 によって 妊 娠 と 診 断 された 馬 の 14.7%が 分 娩 までに 至 っていない 初 回 妊 娠 鑑 定 で 妊 娠 と 診 断 された 馬 の 流 産 率 ( 日 高 軽 種 馬 防 疫 推 進 協 議 会 による 調 査 ) 馬 の 早 期 胚 死 滅 率 が 高 い 原 因 は 交 配 後 40 日 まで 胚 胞 は 着 床 せず 不 安 定 な 状 態 が 継 続 するためであ ると 考 えられている 早 期 胚 死 滅 が 確 認 された 場 合 は PGF2α の 投 与 による 黄 体 退 行 処 置 によって 再 発 情 を 誘 発 できる 可 能 性 が 高 く 同 一 シーズン 内 に 再 交 配 できる このため 交 配 後 35 日 目 の 妊 娠 鑑 定 が 極 めて 重 要 となる 一 般 的 に 早 期 胚 死 滅 は 以 下 の 条 件 において 発 生 しやすいと 考 えられている 1 高 齢 (15 歳 以 上 ) 2 体 重 や BCS の 低 下 3 分 娩 後 の 初 回 発 情 での 交 配 による 受 胎 13
4) 妊 娠 初 期 ( 授 乳 期 )の 栄 養 管 理 妊 娠 初 期 ( 授 乳 期 )の 栄 養 管 理 出 産 後 8 週 までの 授 乳 初 期 は エネルギー 要 求 量 が 最 大 となり 授 乳 後 期 のそれは 減 少 する ~12 週 以 降 は 急 激 に 減 少 する このため エネルギ ー 摂 取 量 も 減 少 させる 必 要 がある その 後 離 乳 が 近 づくにしたがって さらに 仔 馬 の 母 乳 摂 取 量 は 減 少 し 離 乳 後 は 泌 乳 のためのエネルギー 摂 取 が 不 要 となる 乳 摂 取 量 (kg/day) 20 18 16 14 12 10 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 週 齢 仔 馬 の 母 乳 摂 取 量 は 週 齢 とともに 低 下 する ( 日 高 育 成 牧 場 における 調 査 ) 授 乳 初 期 ( 出 産 後 8 週 間 )の 栄 養 管 理 仔 馬 の 栄 養 源 となる 母 乳 を 分 泌 する 授 乳 期 には エネルギー 要 求 量 が 著 しく 増 加 する 仔 馬 の 母 乳 摂 取 量 は 出 産 1 週 後 に 最 大 に 達 し 1 日 当 りの 総 泌 乳 量 は 19kg である 授 乳 初 期 は 各 ステージの 中 で 最 大 のエネルギー 要 求 量 となり 一 般 的 なサラブレッド 種 ( 出 産 後 体 重 : 570kg)では 31Mcal に 達 する これは 胎 子 が 急 成 長 する 妊 娠 後 期 に 比 較 して エネルギー 要 求 量 は 25% タンパク 質 の 要 求 量 は 45% 増 加 するからである 授 乳 期 の 注 意 事 項 仔 馬 の 母 乳 摂 取 量 は 青 草 やクリープフィードな どの 母 乳 以 外 から 摂 取 されるエネルギー 量 に 大 き く 影 響 されることを 理 解 する 必 要 がある クリープ フィードや 青 草 からのエネルギー 摂 取 量 の 増 加 に 伴 い 母 乳 の 摂 取 量 は 減 少 する この 場 合 は 母 馬 の エネルギー 要 求 量 も 減 少 するため BCS を 観 察 しな がら 給 餌 量 を 減 少 させる 必 要 がある また 1~3 月 の 出 産 と 4~5 月 のそれとでは 青 草 からのエネルギー 摂 取 量 が 著 しく 異 なることを 考 慮 し 授 乳 初 期 の 給 餌 量 を 決 定 する 1~2 月 の 出 産 馬 は 青 草 を 摂 取 できないため 乾 草 および 濃 厚 飼 料 によるエネルギー 供 給 が 不 十 分 な 場 合 は 容 易 に 削 痩 する 一 方 昼 夜 放 牧 を 実 施 している 4~5 月 の 出 産 馬 は 青 草 からのエネルギー 摂 取 が 十 分 であるた め 規 定 の 濃 厚 飼 料 の 給 餌 でも 容 易 に 肥 大 する こ の 場 合 は 青 草 の 摂 取 によってアンバランスになる ミネラルの 補 給 が 必 要 となる すなわち 早 生 まれ の 場 合 は 授 乳 前 期 の 母 馬 のエネルギー 不 足 に 遅 生 まれの 場 合 は 授 乳 前 期 の 母 馬 のエネルギー 過 剰 お よび 適 正 なミネラルバランスの 維 持 に 注 意 する 必 要 がある また 授 乳 期 はエネルギー 要 求 量 以 外 に 水 分 の 要 求 量 も 増 加 する 特 に 泌 乳 量 が 多 い 授 乳 前 期 は 1 日 当 り 50~70lを 飲 水 するため 馬 房 内 はも ちろん 放 牧 地 においても 十 分 な 飲 水 を 可 能 にする 設 備 が 必 要 である 授 乳 中 後 期 ( 出 産 後 2~6カ 月 )の 栄 養 管 理 仔 馬 の 母 乳 摂 取 量 は 個 体 差 がみられるが 出 産 後 8 14
5) 妊 娠 中 期 の 栄 養 管 理 妊 娠 中 期 ( 離 乳 後 ~ 分 娩 3 か 月 前 )のエネルギ ー 供 給 は 維 持 量 で 十 分 である 胎 子 の 骨 格 を 形 成 するミネラルの 供 給 が 不 可 欠 である 6) 妊 娠 後 期 の 栄 養 管 理 妊 娠 後 期 ( 分 娩 前 3 ヶ 月 )から エネルギー 摂 取 量 を 増 加 させる(DE:25Mcal) 濃 厚 飼 料 の 給 餌 を 減 少 させるため 植 物 油 やビ ートパルプの 併 用 など 線 維 質 の 高 い 配 合 飼 料 を 効 果 的 に 給 餌 する( 粗 飼 料 率 50~70%) 妊 娠 後 期 には サプリメントの 給 餌 などによる 十 分 なミネラル 供 給 が 不 可 欠 である 妊 娠 中 期 ( 離 乳 後 ~ 分 娩 前 3 カ 月 )は 泌 乳 のた めのエネルギー 供 給 が 不 要 になるため 概 ね 維 持 量 の 供 給 で 十 分 である 一 方 胎 子 の 正 常 な 骨 格 形 成 のため 十 分 かつ 適 切 なバランスのミネラルの 供 給 が 不 可 欠 である この 期 間 は 昼 夜 放 牧 が 可 能 であるため 放 牧 地 に おいて 十 分 量 の 青 草 を 摂 取 できる 場 合 は サプリメ ントの 給 与 のみによって 適 切 な BCS を 維 持 できる この 時 期 の 濃 厚 飼 料 の 多 給 は 過 肥 の 原 因 となり 蹄 疾 患 などの 発 症 リスクが 増 加 する このため ミ ネラルバランスを 重 視 した 飼 料 給 与 を 心 がける 必 要 がある 妊 娠 馬 の 過 肥 は 裂 蹄 などの 蹄 疾 患 を 発 症 しやすい 胎 子 は 妊 娠 期 間 の 最 後 の 3 カ 月 間 で 著 しく 発 育 し 発 育 量 は 全 体 の 60~65%に 達 するため 妊 娠 後 期 ( 分 娩 前 3 ヶ 月 )はエネルギー 摂 取 量 を 増 加 させる 必 要 がある 妊 娠 後 期 の 一 般 的 な 繁 殖 牝 馬 ( 出 産 前 体 重 :640kg)のエネルギー 要 求 量 は 25Mcal に 達 する エネルギー 要 求 量 の 増 加 から 濃 厚 飼 料 の 給 餌 割 合 を 増 加 させる 傾 向 がみられるが 疝 痛 や 胃 潰 瘍 などの 消 化 器 疾 患 を 予 防 するためには 少 なくと も 総 飼 料 の 半 分 以 上 の 粗 飼 料 を 給 餌 する 必 要 がある また エネルギー 源 として 植 物 油 やビートパルプの 併 用 線 維 質 が 高 い 配 合 飼 料 の 効 果 的 な 給 餌 が 推 奨 される 一 方 この 時 期 には 胎 子 の 急 成 長 により 胎 子 や 羊 水 を 含 む 子 宮 が 膨 化 して 消 化 管 を 圧 迫 する このため 消 化 管 の 容 積 を 増 加 させる 粗 飼 料 の 給 餌 量 は 全 投 与 量 の 70% 程 度 に 留 める 必 要 がある 妊 娠 後 期 にはエネルギー 摂 取 量 を 意 識 しがちであ るが 胎 子 の 正 常 な 骨 格 形 成 のためには 繁 殖 牝 馬 に 対 する 十 分 かつ 適 切 なバランスのミネラルの 供 給 が 不 可 欠 である この 時 期 には 骨 を 形 成 するカルシ ウムのみならず 銅 亜 鉛 マンガンなど 軟 骨 あ るいは 骨 代 謝 に 関 わる 微 量 元 素 の 供 給 が 重 要 である 15
一 般 的 な 飼 料 であるエンバクや 乾 草 のみでは ミネ ラルが 不 足 するため ミネラル 含 有 量 を 増 加 させた 配 合 飼 料 やサプリメントの 供 給 が 不 可 欠 である 16
7) 流 産 馬 鼻 肺 炎 の 予 防 のためには ワクチン 接 種 が 推 奨 される 妊 娠 後 期 には 上 がり 馬 や 育 成 馬 と 接 触 させな いよう 心 がける 流 産 の 発 生 時 には 伝 染 性 であることを 前 提 と する 対 応 によってウイルスの 拡 散 を 防 止 する や 双 胎 妊 娠 による 流 産 の 場 合 は 分 娩 直 前 と 同 様 に 乳 房 の 腫 脹 や 時 には 漏 乳 など 流 産 の 前 兆 が 確 認 さ れることがある 特 に 双 胎 妊 娠 時 に 片 方 の 胎 子 が 死 亡 した 場 合 は その 後 数 週 間 にわたって 乳 房 の 腫 脹 漏 乳 が 認 められることがある このような 乳 房 の 腫 脹 が 認 められる 場 合 は 胎 盤 の 感 染 や 損 傷 が 疑 われるため 早 急 に 獣 医 師 の 診 断 を 受 ける 必 要 が ある 流 産 の 対 処 法 流 産 が 発 生 した 場 合 は 馬 鼻 肺 炎 ウイルス ある いは 馬 パラチフスなどの 伝 染 性 疾 患 の 可 能 性 を 前 提 に 対 応 する 必 要 がある 1 流 産 胎 子 および 母 馬 に 触 れる 前 に 獣 医 師 に 連 絡 する その 後 馬 房 前 に 逆 性 石 鹸 などの 消 毒 液 を 入 れた 消 毒 槽 を 設 置 し 馬 房 に 出 入 りする 際 は 必 ず 消 毒 槽 で 長 靴 を 消 毒 する 妊 娠 中 期 に 発 生 した 羊 膜 に 包 まれた 流 産 胎 子 日 高 軽 種 馬 防 疫 推 進 協 議 会 の 調 査 においては 妊 娠 5 週 目 の 最 終 妊 娠 鑑 定 から 出 産 までの 流 産 の 発 生 率 は 8.7%であるとしている 流 産 を 誘 発 する 主 な 原 因 1ウイルス 感 染 2 細 菌 感 染 3 真 菌 (カビ) 感 染 4 双 胎 妊 娠 5 臍 帯 捻 転 による 酸 素 供 給 の 低 下 6 母 体 および 胎 子 のホルモン 分 泌 の 低 下 馬 の 流 産 通 常 胎 盤 内 に 微 生 物 やウイルスは 存 在 しない しかし 母 馬 の 感 染 によって 微 生 物 やウイルスが 胎 盤 関 門 を 通 過 し 胎 子 に 感 染 する 場 合 がある 胎 子 は 免 疫 機 能 を 有 していないため しばしば 感 染 によ って 流 産 が 引 き 起 こされる また 胎 盤 の 細 菌 感 染 厩 舎 前 の 踏 込 み 消 毒 槽 と 手 洗 桶 2 流 産 胎 子 と 胎 盤 を 処 理 するスタッフは 1 名 に 限 定 し この 担 当 者 が 流 産 胎 子 および 胎 盤 をプラス チック 製 の 密 閉 容 器 に 入 れる また 羊 水 が 付 着 したと 考 えられるすべての 場 所 を 直 ちに 消 毒 す る 流 産 後 の 消 毒 に 推 奨 される 希 釈 倍 率 3 その 後 の 胎 子 処 理 は 獣 医 師 あるいは 管 轄 家 畜 保 17
健 衛 生 所 の 指 示 に 従 う 4 流 産 した 牝 馬 および 羊 水 が 付 着 した 寝 藁 は 他 の 妊 娠 馬 に 接 触 しないように 処 理 する 基 本 的 には 流 産 した 牝 馬 を 馬 房 から 出 すことなく 少 なくと もその 両 隣 の 妊 娠 馬 は 他 の 馬 房 に 移 動 させる 5 馬 房 内 の 藁 特 に 羊 水 で 濡 れた 藁 は 十 分 に 消 毒 液 をかけて 堆 肥 下 に 埋 めるなど 適 切 に 処 理 する 6 流 産 の 原 因 が 非 伝 染 性 であることが 判 明 するま で 特 定 の1 名 のスタッフのみに 流 産 した 牝 馬 の 手 入 れや 馬 房 清 掃 などを 担 当 させる また 作 業 中 は 作 業 着 を 着 替 え 他 の 妊 娠 馬 への 伝 染 の 予 防 に 努 める 7 作 業 着 は 他 の 作 業 に 使 用 せず 必 ず 消 毒 後 に 洗 濯 する 馬 鼻 肺 炎 ウイルス(ERV)による 流 産 予 防 胎 齢 に 合 わせて 不 活 化 ワクチンを 3 回 ( 妊 娠 7 8 9.5 ヶ 月 目 ) 接 種 する 未 経 産 馬 (あがり 馬 )は 環 境 の 変 化 などによる ストレス 育 成 馬 は 初 発 感 染 によって 馬 鼻 肺 炎 を 発 症 しやすい 未 経 産 馬 や 育 成 馬 と 妊 娠 後 期 の 繁 殖 牝 馬 の 接 触 を 回 避 するためには 両 者 の 隔 離 飼 育 が 不 可 欠 である 妊 娠 後 期 の 放 牧 群 の 入 れ 替 え 長 距 離 輸 送 あ るいは 給 餌 量 などの 飼 養 管 理 の 著 しい 変 更 は 可 能 な 限 り 控 え ストレスを 最 小 限 に 抑 止 する 流 産 胎 子 および 胎 盤 は 必 ず 密 封 容 器 に 入 れる 馬 の 流 産 予 防 1 馬 鼻 肺 炎 ウイルスによる 流 産 の 予 防 馬 鼻 肺 炎 は 妊 娠 7~9ヶ 月 に 発 症 しやすく 流 産 を 誘 発 させる 最 も 警 戒 するべきウイルス 感 染 症 である このウイルスによる 流 産 は 前 兆 がなく 突 発 性 であ り 胎 盤 に 損 傷 が 認 められない 特 徴 をもつ また このウイルスは 感 染 後 にリンパ 節 や 神 経 内 に 潜 伏 し 輸 送 や 急 激 な 気 候 の 変 化 などのストレスにより 再 活 性 化 して 再 発 する 特 徴 をもつ さらに このウイ ルスに 対 する 免 疫 反 応 の 持 続 期 間 は 短 期 間 であり このことが 効 果 的 なワクチンの 開 発 を 困 難 にしてい る 現 在 の 不 活 化 ワクチンは 妊 娠 後 期 における3 回 の 接 種 が 推 奨 されている 馬 鼻 肺 炎 による 流 産 胎 子 2 乳 房 の 腫 脹 などの 流 産 兆 候 が 認 められた 場 合 の 処 置 出 産 予 定 日 の1ヶ 月 以 上 前 に 乳 房 の 腫 脹 や 漏 乳 な どの 流 産 兆 候 が 認 められた 場 合 は 流 産 の 予 防 を 目 的 として 抗 生 物 質 非 ステロイド 性 抗 炎 症 剤 プロ ジェステロン 製 剤 などを 投 与 する 抗 生 物 質 および 非 ステロイド 性 抗 炎 症 剤 は 胎 盤 炎 の 治 療 として 投 与 される 一 方 プロジェステロン 製 剤 の 有 効 性 に 関 しては 今 後 の 調 査 が 必 要 である 18