手 書 き 入 力 を 利 用 した 画 面 に 直 接 書 き 込 めるメモ 帳 の 作 成 岩 村 憲 一 三 末 和 男 田 中 二 郎 筑 波 大 学 大 学 院 システム 情 報 工 学 研 究 科 コンピュータサイエンス 専 攻 {iwamura,misue,jiro}@iplab.cs.tsukuba.ac.jp コンピュータ 上 で 作 業 をしている 際 様 々なアイデアを 思 いつくことがある しかし 既 存 のシステムではアイデアの 保 存 を 行 うことができるが 保 存 した 情 報 を 有 効 に 利 用 する 方 法 までは 考 えられていない そこで 本 研 究 では ユーザのアイデアの 保 存 および 保 存 したアイデアの 利 用 を 支 援 することを 目 的 とし 手 書 きで 画 面 に 直 接 メモを 書 き 込 むことができるシステムの 提 案 を 行 った またこの 提 案 に 基 づき 試 作 システムの 作 成 を 行 った 本 システムでは 書 き 込 んだ 情 報 とともにコンピュータ 上 で 表 示 されている 画 面 を 同 時 に 保 存 する また 保 存 したメモの 適 切 な 閲 覧 方 法 についても 考 察 した これによって ユーザのアイデ アの 再 構 築 も 支 援 できると 考 えられる Making notes directly on screen using handwritten input Norikazu Iwamura Kazuo Misue Jiro Tanaka Graduate School of Systems and Information Engineering, Department of Computer Science, University of Tsukuba {iwamura,misue,jiro}@iplab.cs.tsukuba.ac.jp When working on the computer, various ideas might be hit on. Existing systems can preserve the idea, but it doesn't have the method of using preserved information effectively. In this research, we aim to support the preservation of user's idea and use of it, We propose the system that can write the memo directly on the screen using handwritten input. This system preserves the displayed screen with user's handwritten input. As a result, we think that the restructuring of user's idea become easier. 1 はじめに 現 在 コンピュータ 上 では 様 々な 作 業 が 行 われてい る その 作 業 の 中 で 我 々は 知 的 創 造 を 行 いながら 作 業 をしていることが 多 く 意 識 はしなくとも 何 ら かのアイデアを 思 いつくような 場 面 が 多 くある 例 えば 研 究 者 がウェブを 用 いて 自 分 の 研 究 に 役 立 つ ような 情 報 を 閲 覧 しているときに 新 たな 研 究 のアイ デアを 思 いついたり デザイナーがPC 上 で 絵 を 見 て いるときにふと 新 しいデザインのアイデアを 思 いつ いたりなど 様 々な 事 例 が 考 えられる しかし ア イデアが 湧 いた 瞬 間 というものは 必 ずしもその 場 で
アイデアをすぐに 実 行 に 移 すことができるわけでは なく 多 くの 場 合 ある 程 度 の 時 間 を 置 いてから 反 映 させるということになる そうした 場 合 に そのア イデアを 保 存 する 手 法 として メモを 残 すという 行 為 が 一 般 的 に 行 われている コンピュータを 使 用 している 際 メモを 取 ろうと したときに 考 えられる 方 法 としては まず 手 近 な 紙 にペンでメモを 残 すという 手 法 が 考 えられる この 方 法 はすばやく 手 書 きでメモを 取 ることができるた め アイデアの 保 存 方 法 として 広 く 用 いられている 手 段 である また 見 ていた 資 料 をプリントアウト した 紙 があればその 上 に 自 由 に 書 き 込 みを 行 うこと ができ 資 料 の 内 容 との 関 連 も 同 時 に 書 き 込 むこと ができる しかし この 方 法 では 近 くに 紙 とペンを 用 意 しておかなければメモを 取 ることはできず ま た 資 料 をプリントアウトするにも 手 間 がかかってし まう そのため 別 の 手 近 な 手 段 としてコンピュー タ 上 に 一 時 的 に 保 存 しておくことが 多 い コンピュータ 上 で 情 報 を 残 す 方 法 としてはメモ 帳 やワードパッドなどのようなワープロソフトを 使 用 してテキストデータとして 保 存 することが 考 えられ るが この 方 法 ではテキストデータしか 保 存 するこ とができず ユーザのアイデアを 十 分 に 反 映 させる ことができない また アプリケーションの 起 動 の 際 に 新 しいウインドウを 開 き その 上 で 情 報 を 書 き 込 むためにアイデアの 元 となった 情 報 をそのウイン ドウが 覆 い 隠 してしまうことや( 図 1) 使 用 する アプリケーションが 変 化 するために 行 う 作 業 の 切 り 替 えが 起 こるため アイデアを 忘 れてしまう 原 因 に もなる これらのことは メモ 帳 機 能 を 備 えたソフ トを 使 うなどした 場 合 にも 同 じことが 言 える そこで 本 研 究 では メモ 書 き の 支 援 を 行 うこと を 目 的 とし コンピュータ 上 で 紙 の 資 料 に 書 き 込 む ようなシステムの 作 成 を 目 指 す コンピュータ 上 で 様 々な 情 報 を 収 集 しているとき 見 ている 画 面 をそ のまま 実 世 界 の 紙 の 資 料 のように 用 いてメモを 取 れ るようにすることで ユーザのアイデアの 保 存 を 行 い またそのメモを 利 用 することでアイデアの 再 構 築 を 手 助 けするようなシステムの 作 成 を 目 指 す 本 研 究 では その 目 的 を 達 成 するために 必 要 な 機 能 に ついての 考 察 を 行 い それに 基 づいてシステムの 設 計 をした 以 下 では 第 二 章 に 我 々が 提 案 するシステム 手 書 きを 利 用 した 画 面 に 直 接 書 き 込 めるメモ 帳 につい て 述 べる また 第 三 章 ではその 試 作 システムの 実 装 について 説 明 を 行 う 図 1: 従 来 のワープロソフト 利 用 例 テキストを 入 力 するためのウインドウが 開 かれているため 見 て いた 情 報 が 覆 い 隠 されてしまっている 2 画 面 に 直 接 書 き 込 みができるメモ 帳 2.1 理 想 的 なシステム システム: 紙 の 資 料 の 上 に 書 き 込 むようなメモ 帳 ここでは 目 的 を 達 成 するためにどのようなシス テムが 必 要 であるか その 理 想 形 を 考 察 する 紙 の 上 のような 感 覚 の 入 力 方 法 本 システムでは 紙 の 資 料 の 上 にペンで 書 き 込 む ようなメモ 帳 を 目 指 す 紙 の 上 にペンでメモを 取 ることの 利 点 として 手 で 書 く 作 業 によって 記 憶 に 残 りやすいという 点 があ る また アイデアを 曖 昧 な 形 で 書 き 留 めることは 重 要 であり その 曖 昧 さ 流 動 性 が 多 くの 考 えを 探 ることを 支 援 するということがある そのため メモを 書 く 際 に 用 いる 手 段 としてキー ボードからのテキスト 入 力 やマウス 操 作 による 入 力 という 手 法 は 間 接 的 であり アイデアをうまく 保 存 できるとは 考 えにくい よって より 直 接 的 な 入 力 方 法 が 使 えると 良 い 表 示 画 面 の 保 持 ユーザのアイデアは 短 い 間 にも 失 われてしまうこ とがあり 新 たにウインドウを 開 くなどした 場 合 に も 別 の 情 報 が 入 ってきたりそれまでの 情 報 が 隠 れ てしまったりすることが 要 因 になりアイデアを 忘 れ てしまう 恐 れがある しかし 実 世 界 で 紙 の 資 料 の 上 にペンでメモを 書 いた 場 合 には その 資 料 の 情 報 そのものは 保 持 したまま 書 き 込 みが 行 えるため そ の 場 にある 情 報 が 失 われるということはない そのため アイデアを 思 いついた 時 点 でのPC 上 の 状 況 をできるだけ 崩 さないように 表 示 している 画 面 を 保 持 したままメモを 取 れる 状 況 が 望 ましい
保 存 した 情 報 の 利 用 また メモを 保 存 するだけでは 情 報 の 利 用 ができ ないため 適 切 な 方 法 で 保 存 したメモを 閲 覧 するこ とが 重 要 であり 自 分 が 欲 しいと 思 っているメモを 見 つける 検 索 機 能 は 必 要 である しかし 想 定 して いるメモは 手 書 きによる 入 力 が 主 であるため テキ ストデータなどよる 検 索 のみでは 十 分 な 検 索 を 行 う ことはできない よって 曖 昧 な 手 書 きでの 入 力 に おいても 適 切 な 検 索 結 果 が 得 られるような 方 法 が 必 要 とされる されてしまうことも 考 えられるため 編 集 後 のメモ はまた 別 の 新 しいメモとして 扱 う また 閲 覧 を 行 う 際 に 最 も 利 用 されることが 多 い メモは 最 後 に 編 集 されたものであると 考 えられる そのため システムを 起 動 させた 際 にはじめに 大 き く 表 示 するメモは 最 後 に 保 存 されたメモとする そして 効 率 的 に 自 分 が 欲 しいメモを 探 すために 検 索 機 能 を 実 装 する 検 索 に 用 いるキーワードなど についての 考 察 は2.3 章 で 述 べる 2.2 提 案 する 機 能 2.1で 述 べたシステムを 実 現 するため 本 研 究 では 主 な 機 能 として 以 下 のような 機 能 を 提 案 する 手 書 きによるメモの 書 き 込 み および 表 示 画 面 の 保 存 このシステムではペンインタフェースを 使 用 した 手 書 きでの 書 き 込 みを 行 う 手 書 きでの 書 き 込 みを 行 うことで ユーザは 紙 の 上 と 同 様 の 感 覚 で 文 字 や 図 などを 自 由 に 書 きとめることができる また 突 発 的 なアイデアはあいまいであることが 多 く 手 書 きでの 保 存 はそういったあいまい 性 を 保 存 するこ とにも 役 立 つ またメモを 取 る 際 保 存 する 情 報 はストロークデ ータだけではなく 表 示 している 画 面 のイメージも 同 時 に 保 存 を 行 う そうすることで 紙 の 資 料 の 上 に 書 き 込 みを 行 う 際 と 同 様 の 感 覚 で 書 き 込 むことが でき また 書 き 込 んだストロークの 位 置 や 表 示 され ている 画 面 内 の 情 報 との 関 連 なども 利 用 することが できるため ユーザのアイデア 保 存 の 支 援 をより 効 果 的 に 行 える ストローク 時 間 情 報 を 用 いた 検 索 および 閲 覧 保 存 したメモの 閲 覧 を 行 う 際 に 保 存 したメモを 一 つずつ 確 認 するのは 効 率 的 ではないため このシス テムでは 一 度 に 複 数 のメモを 確 認 できるサムネイル 形 式 での 表 示 を 採 用 する また 紙 の 資 料 の 場 合 ストロークを 大 量 に 書 き 込 んだ 際 に 背 景 となる 表 示 画 面 にある 情 報 が 隠 されてしまうことが 考 えられる しかし 本 システムはストロークデータと 背 景 とな る 表 示 画 像 データを 別 に 取 っているため 必 要 に 応 じてストロークの 表 示 をせず 保 存 した 画 像 のみの 閲 覧 も 行 えるようにする また 書 き 込 んだストロークの 時 間 軸 に 沿 った 再 生 を 行 う これによってメモを 取 った 際 に 書 き 込 ん だ 順 番 や 早 さなども 再 現 することができ イメージ の 再 現 をより 効 果 的 に 行 うことができると 考 えられ る このシステムでは 閲 覧 だけではなく 保 存 してあ るメモからさらに 編 集 することができるようにする その 際 編 集 後 のメモは 編 集 前 とは 違 った 形 に 変 更 ユーザのアイデアを 妨 げない 起 動 方 法 システムを 起 動 する 際 アイコンをクリックして 起 動 させる 方 法 ではアプリケーションの 切 り 替 えを 意 識 させる 必 要 があり またアイコンを 画 面 に 表 示 させておく 必 要 があるため 本 システムのコンセプ トに 反 する よってマウスジェスチャ あるいはシ ョートカットキーを 押 すことによる 起 動 方 法 を 採 用 する 2.3 検 索 機 能 について 検 索 のキーワードとして 用 いる 条 件 は 保 存 した ときの 時 間 情 報 入 力 したストローク 情 報 表 示 し ている 画 面 などが 考 えられる 以 下 で 検 索 に 用 い るキーワードについての 考 察 を 述 べる 時 間 情 報 の 利 用 まず 時 間 情 報 の 利 用 について 考 える 最 も 簡 単 に 時 間 情 報 を 利 用 するには メモを 書 き 込 んだ 時 点 で の 時 刻 をキーワードとして 使 うということがある また メモを 取 り 始 めた 時 刻 とメモを 保 存 した 時 刻 との 差 分 を 取 ることで メモを 取 っていた 時 間 の 長 さを 利 用 するということもできる メモを 取 ってい た 時 間 の 長 さを 利 用 することによって 書 き 込 みし ているときにどれくらい 悩 んでいたか あるいは 簡 潔 にメモを 書 いただけであるか などのユーザの 記 憶 をもとにした 検 索 も 可 能 になる ストローク 情 報 の 利 用 また 書 き 込 んだストロークの 性 質 も 検 索 のキー ワードとして 有 効 である まず 書 き 込 んだストロークの 数 および 長 さを 利 用 することで おおまかにどの 程 度 の 情 報 量 を 書 き 込 んだかが 判 断 できる また 時 間 情 報 と 組 み 合 わせ ることによって 単 位 時 間 あたりにどれくらい 集 中 的 に 書 き 込 みを 行 ったかなどの 判 断 も 可 能 である また 重 要 な 要 素 として ストロークの 形 状 が 利 用 できる 本 研 究 ではメモを 書 き 込 む 際 の 背 景 に 表 示
画 面 をそのまま 利 用 しているため それを 利 用 して 注 釈 をつける( 重 要 な 文 章 に 下 線 を 引 く 図 に 丸 を つけるなど)ことが 多 いと 予 想 される これらの 情 報 を 利 用 するため ストロークを 解 析 し 検 索 のキ ーワードとして 用 いることを 考 えている 一 例 を 図 2に 示 す ものが 見 つかればその 結 果 も 同 時 に 示 すなど あい まいさを 保 持 した 形 での 検 索 を 行 えるような 手 法 が 望 ましいと 考 える 3 提 案 システムの 実 装 本 研 究 では これまでに 提 案 した 機 能 を 二 つのシ ステムに 分 け 実 装 を 行 っている 二 つのシステム はそれぞれ メモを 書 きとめ 保 存 する システ ムと 保 存 したメモを 閲 覧 する システムに 分 けて いる 以 下 でそれぞれについて 説 明 する 図 2-A: 下 線 二 重 線 図 2-B: 丸 四 角 などによる 包 含 3.1 表 示 画 面 に 直 接 手 書 きでメモ メモを 書 き 込 むシ ステム このシステムでは 表 示 している 画 面 に 手 書 きで のストロークを 書 き 込 み 保 存 することができる システムを 起 動 させると 画 面 にストロークを 自 由 に 書 き 込 めるようになる システムが 起 動 してい る 例 を 図 3に 示 す ユーザは 画 面 上 にペンを 走 らせることで 自 由 にス トロークを 書 き 込 むことができる また 画 面 をタッ プすることでシステムはメモをセーブフォルダに 保 存 し 終 了 する 図 2-C: 矢 印 図 2-D:その 他 マークなど これらのような 形 状 のストロークがあるかどうか を 解 析 し その 数 により 検 索 を 行 う しかし 手 書 きによる 書 き 込 みにはあいまい 性 があり ユーザが 図 2で 示 したような 形 状 のストロークを 書 き 込 まな い 場 合 がある そのため 検 索 キーワードとして 用 いる 際 には 類 似 度 の 高 いいくつかの 解 析 結 果 を 同 時 に 利 用 することを 考 えている 現 在 予 定 している 方 法 としては 類 似 度 の 高 いものとして 解 析 された 形 状 を 類 似 度 の 高 い 順 から 上 位 3つまで 記 憶 しておき その 順 位 が 高 いほどキーワードのヒット 率 を 高 める という 方 法 を 考 えている また 時 間 情 報 を 用 いて 検 索 を 行 う 際 などであっ てもユーザの 記 憶 が 正 確 でない 場 合 があるため キ ーワードと 完 全 に 合 致 しなくともある 程 度 以 上 近 い 3.1.1 システムの 構 成 図 3:システムの 起 動 例 図 4 図 5はシステムの 構 成 図 である 図 4は 起 動 時 のウインドウ 生 成 についての 説 明 を 表 している このシステムを 実 行 したとき その 時 点 で 表 示 している 画 面 をキャプチャし そのイメー ジデータをウインドウに 貼 り 付 けて 表 示 させること で 背 景 を 保 持 したままウインドウに 操 作 が 行 える ようにしている
そのウインドウの 上 にペン 入 力 を 行 うことによっ てストロークを 追 加 し 表 示 することができ それに よって 表 示 画 面 に 直 接 書 き 込 むということを 実 現 さ せている 図 5:システム 構 成 図 2 図 4:システム 構 成 図 1 図 5はストロークデータ 及 びファイル 保 存 部 分 の 説 明 を 表 している ユーザがストロークをウインド ウ 上 に 書 き 込 むと ウインドウに 登 録 されているス トローク 解 析 クラスにストロークのデータを 送 る 受 け 取 ったストロークを 解 析 し ある 程 度 長 い 軌 跡 であればそれをストロークであると 解 釈 し 画 面 に 追 加 して 表 示 する 軌 跡 が 非 常 に 短 く かつ 入 力 し ている 時 間 も 非 常 に 短 い 場 合 それはタップが 入 力 されたと 解 釈 し ストロークの 追 加 は 行 わず その 時 点 でのメモを 保 存 し 同 時 にシステムを 終 了 させ る 保 存 が 行 われるとき セーブフォルダにストロー クデータとキャプチャした 画 像 データを 保 存 し デ ータリストに 追 加 する 3.2 保 存 したメモ メモを 閲 覧 するシステム このシステムは 上 記 のシステムで 保 存 したメモ の 閲 覧 を 目 的 としている システムの 起 動 画 面 を 図 6に 示 す システムを 起 動 するとこれまでに 保 存 したものの 中 で 最 後 に 保 存 されたメモが 大 きく 表 示 され 画 面 左 にあるサムネ イルをクリックすることで 対 応 するメモが 大 きく 表 示 される 本 システムに 現 在 実 装 されている 機 能 として 書 き 込 んだストロークのon/off 機 能 および 書 き 込 んだ ストロークを 時 系 列 に 沿 って 再 生 する 機 能 を 備 えて いる 図 6:システムの 起 動 画 面
3.2.1 システムの 構 成 システムの 構 成 を 図 7に 示 す 3.1で 説 明 したシステムによって 保 存 したデータ 及 びデータリストをもとに サムネイルデータを 持 つ クラスを 作 成 している サムネイルをクリックすると 対 応 したクラスが 持 っているストローク 及 び 画 像 データを 大 きな 画 面 に 表 示 する また ストロークデータと 画 像 データを 別 々に 保 持 しているため ストロークを 表 示 せずに 画 像 だけ を 表 示 することも 可 能 である これによって スト ロークのon/off 機 能 を 実 現 させている またストロークには 点 列 とともにそれぞれ 書 き 込 まれた 時 点 での 時 間 が 保 存 されているため その 時 間 データを 利 用 することで 書 き 込 んだときと 同 様 のスピードで 書 き 込 みを 再 現 する 機 能 を 実 装 した ただし 書 き 込 まれた 時 間 のブランクが 大 きすぎる 場 合 にそのまま 再 生 すると 非 常 に 長 い 時 間 がかかっ てしまうため ある 程 度 以 上 ( 自 由 に 設 定 できるよ うにする 予 定 )の 空 き 時 間 があった 場 合 にはその 時 間 は 無 視 するようにしてある 4 本 システムの 応 用 例 ここでは システムの 具 体 的 な 使 用 場 面 について 述 べる 4.1 利 用 ストーリー 例 えば ある 研 究 者 が 手 書 きの 研 究 についての 調 査 をコンピュータ 上 で 行 っていたとする その 際 の 行 動 として 次 のような 例 が 考 えられる 1. 研 究 者 は 関 連 する 研 究 論 文 を 見 つけ そのPDF ファイルを 開 いて 読 む 2. 重 要 だと 思 った 場 所 があったら 本 システムを 立 ち 上 げる とくに 興 味 のある 場 所 などには 下 線 を 引 いたり マークや 書 き 込 みなどをしたりして 画 面 ごと 保 存 する 3. 論 文 を 読 んでいるうちにその 研 究 の 詳 細 を 知 りたくなった 場 合 には 関 連 するwebページを 開 き 情 報 を 調 べていく そのような 場 合 にも 本 システム を 使 用 することで 論 文 とwebページを 同 時 に 表 示 し たまま 手 書 きでアイデアの 書 き 込 みが 行 える ( 図 8) 4. 論 文 を 読 み 終 えた 後 日 保 存 されているメモ 帳 を 見 たとき さらにアイデアが 浮 かんだときには 書 き 込 みを 追 加 するなど 編 集 を 加 えてメモの 内 容 を 充 実 させていく 本 システムは 表 示 している 画 面 を 保 持 したまま 自 由 にメモを 取 ることができる また 表 示 している 画 面 も 同 時 に 保 存 しておくため 起 動 しているアプリ ケーションが 複 数 あったとしても それらの 画 面 に またがった 関 連 や 図 なども 書 き 込 んで 保 存 すること ができる ( 図 8) 図 7:システム 構 成 図 3 3.3 実 装 環 境 本 研 究 のシステムの 実 装 にはJAVA 言 語 を 用 いた また ペンベースアプリケーションの 作 成 支 援 ツー ルキットSATIN[1]を 使 用 している ストロークデー タの 処 理 および 解 析 描 画 キャンバスはSATINのラ イブラリから 使 用 した 図 8: 本 研 究 のシステム 利 用 例
4.2 その 他 の 利 用 例 本 研 究 において 提 案 したシステムはアイデアの 保 存 のみにとどまらず 様 々な 情 報 の 保 存 を 行 う 際 に も 利 用 できる 本 システムは 書 き 込 んだストロークだけではなく そのときに 表 示 した 画 面 を 下 地 にして 保 存 するため 例 えば 旅 行 の 際 に 地 図 を 調 べてルートを 調 べようとす るときなど あらかじめ 地 図 を 開 いておいてから 本 システムを 起 動 させ その 上 に 手 書 きでルート や 注 釈 を 書 き 込 む 料 理 のレシピなどを 調 べて 画 面 に 表 示 させてい るとき 本 システムを 使 って 注 釈 情 報 を 書 き 込 ん で 保 存 しておく webでニュースサイトなどを 見 ているとき 興 味 のある 記 事 を 見 つけて 自 分 が 感 じたことを 画 面 とともに 手 書 きで 書 き 込 んで 保 存 する などの 応 用 ができると 考 えている 5 関 連 研 究 人 のアイデアについて 支 援 することや 手 書 き 入 力 によるメモを 目 的 とした 研 究 などは 以 前 からいく つか 行 われている 手 書 きでの 書 き 込 みを 保 存 するという 目 的 が 本 研 究 と 共 通 するシステムとして ScreenCrayons[2]があ る このシステムは 様 々なアプリケーションに 対 し て 注 釈 を 書 き 込 むことができ 注 釈 を 書 き 込 まれた 部 分 を 画 像 として 保 存 するというものである しか し 保 存 する 対 象 は 注 釈 をつけた 部 分 のみであり そ れに 対 して 本 研 究 は 背 景 などの 様 々な 情 報 を 利 用 し てユーザの 知 的 創 造 を 支 援 するということを 目 的 と している Electronic Cocktail Napkin[3]は 建 築 デザイ ンなどのメモを 目 的 としたシステムであり 手 書 き 入 力 を 使 用 してデザイナーの 知 的 創 造 を 補 助 するこ とも 目 的 としているという 点 でも 本 研 究 と 共 通 して いる ただしあくまでもデザインの 初 期 状 態 の 支 援 を 行 うものであり スケッチ 以 外 の 情 報 を 同 時 に 利 用 するということはしていない SmartCalendar/SmartWrite[4]はプログラムを 常 駐 さ せることで いつでも 好 きなときに 手 書 きのメモを 取 ることが 出 来 るシステムである しかし 背 景 と なる 画 像 は 既 存 の 写 真 データなどを 利 用 し 表 示 画 面 を 利 用 できないという 点 で 本 システムとは 異 なる インクデスクトップ[5]はタブレットPCにいくつかの 機 能 を 追 加 できるWindows XP 拡 張 パックの 機 能 の 一 つで ペン 入 力 によって 画 面 上 に 表 示 されたメモ 帳 に 自 由 な 書 き 込 みができるというものである し かし 実 際 には 表 示 画 面 全 体 に 書 き 込 みができるた め 我 々が 提 案 したシステムと 基 本 的 なコンセプト は 同 様 といえる しかし それらで 保 存 したメモの 利 用 法 などについては 考 えられていない また PenPlusプロ[6]というソフトは 本 システムと 同 様 に 表 示 画 面 に 自 由 に 書 き 込 みをし それを 保 存 すること ができる また 画 面 切 り 取 りやMicrosoft Wordや Excelなどとのデータの 連 携 も 可 能 にしている しか し これらは 本 システムとは 違 い 書 き 込 んだ 内 容 に 関 連 した 保 存 データの 検 索 などの 利 用 法 について は 考 えられていない また データを 保 存 し それを 再 利 用 するという 目 的 のシステムとして 紙 copi[7]というシステムがあ る これはWebページやメールなどのデータを 取 り 込 んで 保 存 し 自 由 なときに 再 利 用 ができるというも のである また 重 要 度 や 単 語 による 検 索 機 能 もあ る これによって ユーザにとって 重 要 な 情 報 を 保 存 することができるという 点 で 本 研 究 と 共 通 してい るが 手 書 きによる 入 力 を 行 うことはできない ま た Microsoft OneNote[8]にも 機 能 拡 張 されたメモ 帳 機 能 がある このソフトは 様 々なメディアやアプリ ケーションのデータとの 共 有 ができ また 手 書 きで のメモを 残 すことも 可 能 である しかし ウインド ウが 新 たに 開 くためアイデアの 元 となる 情 報 を 覆 い 隠 してしまうことや 様 々な 機 能 があるために 操 作 が 煩 雑 になってしまっているという 問 題 がある 6 まとめと 今 後 の 課 題 本 研 究 では 手 書 きで 画 面 に 直 接 書 き 込 めるメモ 帳 システムの 提 案 および 実 装 を 行 った 現 在 のシス テムでは 手 書 きで 表 示 画 面 に 自 由 な 書 き 込 みをし てメモを 保 存 することができ また 保 存 したメモを 閲 覧 するシステムも 同 時 に 利 用 することでアイデア の 保 存 またメモの 利 用 を 行 うことができる 今 後 の 課 題 としては 未 実 装 であるメモの 検 索 機 能 の 実 装 やペン 入 力 だけでは 十 分 でない 場 合 を 考 慮 しキーボード 入 力 への 対 応 また 現 在 のシステムに おけるタップによる 保 存 方 法 が 適 切 であるかどうか の 考 慮 作 成 したシステムの 有 効 性 の 評 価 などを 行 っていく 必 要 があると 考 えている 参 考 文 献 [1]Hong, J. and Landay, J.A. 2000. SATIN: A Toolkit for Informal Ink-based Applications. In Proceedings of User Interfaces and Software Technology: UIST 2000, pp.63-72. [2]Dan R. Olsen Jr. and Trent Taufer and Jerry Alan Fails. ScreenCrayons: Annotating Anything, In Proceedings of the 17th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology, pp.165-174. [3]Gross,M.D and E.Do. Demonstrating the Electronic Cocktail Napkin: a paper-like interface for early design, Conference Companion, ACM Conference on Human Factors in Computing (CHI 96), pp.5-6. [4] 美 崎 薫, 加 藤 直 樹. SmartWrite: 紙 のシンプルさを 追 求 した 手 書 きメモツールの 開 発, In Proceedings
of Workshop on Interactive Systems and software 2005 (WISS 2005), pp. 37-42. 日 本 ソフトウェア 科 学 会 [5]Microsoft : Microsoft Windows XP Tablet PC Edition : Microsoft 拡 張 パック for Windows XP Tablet PC Edition http://www.microsoft.com/japan/windowsxp/tabletpc/d ownloads/enhancementpack/default.mspx [6]プラスソフト : PenPlusプロ http://www.plussoft.co.jp/penplus/pro/ [7]kamilabo.jp : 紙 copi http://www.kamilabo.jp/copi/index.html [8] Microsoft : OneNote http://www.microsoft.com/japan/office/onenote/prodinf o/default.mspx