平 成 年 ( 年 )7 月 9 日 NO.-8 住 宅 差 し 押 さえは 引 き 続 き 米 国 経 済 の 重 石 に 要 旨 米 国 住 宅 市 場 は 低 迷 が 継 続 しているが 特 に 再 度 下 落 しつつある 住 宅 価 格 は 経 済 全 体 へ 大 きな 影 響 を 与 えかねず 注 意 が 必 要 である 住 宅 価 格 のバリュエーションを 見 るために 家 賃 所 得 名 目 GDP などと 比 較 したところ バブル 崩 壊 後 の 調 整 はかなり 進 展 しており 割 高 感 が 強 い 状 況 ではない 足 元 の 住 宅 価 格 を 左 右 しているのは 割 高 感 割 安 感 ではなく 主 に 住 宅 市 場 の 需 給 ( 指 標 としては 在 庫 率 )である 足 元 の 需 給 環 境 は 差 し 押 さえ 物 件 の 流 入 により 悪 化 している そ の 流 入 件 数 を 見 通 すうえでは 現 時 点 での 隠 れ 在 庫 に 今 後 発 生 しうる 差 し 押 さえ 物 件 数 を 加 えることが 重 要 延 滞 差 し 押 さえ 発 生 は 基 本 的 には 失 業 率 や LTV 比 率 債 務 返 済 比 率 などとの 相 関 が 強 いが それらとの 関 係 性 は 状 況 とともに 変 化 しており 過 去 の 相 関 だけに 基 づく 一 般 的 な 予 測 では 不 十 分 である 状 況 の 変 化 を 加 味 した 試 算 結 果 によると 差 し 押 さ え 発 生 自 体 のピークは 過 ぎたと 見 られるものの 物 件 消 化 には 長 け れば 年 程 度 かかる 見 込 みとの 結 論 を 得 た 住 宅 市 場 があく 抜 けす るまでの 間 差 し 押 さえ 物 件 は 住 宅 価 格 に 対 して 下 落 圧 力 として 働 こう
. 住 宅 市 場 の 低 迷 が 続 くなか 住 宅 価 格 は 再 度 弱 含 み 米 国 住 宅 市 場 は 低 迷 が 継 続 しており 住 宅 価 格 は 再 度 下 落 しつつある S&P ケースシラー 住 宅 価 格 指 数 ( 全 国 )は 年 第 四 半 期 に 前 期 比.%とな り 四 半 期 連 続 での 低 下 となった 6 年 のピークから % 下 がった 状 況 にあ る( 第 図 ) 住 宅 価 格 のバリュエーションを 見 るために 家 賃 所 得 名 目 GDP などと 比 較 したところ バブル 崩 壊 後 の 調 整 はかなり 進 展 しており すで に 割 高 感 が 強 い 状 況 ではない( 第 図 ) また 住 宅 価 格 の 調 整 と 低 金 利 環 境 を 反 映 して アフォーダビリティ( 住 宅 取 得 能 力 指 数 )も 高 水 準 に 位 置 してお り この 面 からも 一 段 の 価 格 の 調 整 が 必 要 な 状 況 ではない( 第 図 ) こうし たなかで 足 元 の 住 宅 価 格 を 左 右 しているのは 割 高 感 割 安 感 ではなく 主 に 住 宅 市 場 の 需 給 ( 指 標 としては 在 庫 率 )である( 後 述 ) 需 給 次 第 では 調 整 がオーバーシュートする 可 能 性 も 否 定 できない 住 宅 着 工 や 住 宅 販 売 は 現 状 が 既 にかなりの 低 水 準 にあるため これらの 一 段 の 下 振 れが 経 済 全 体 へ 与 えるリスクは 数 年 前 に 比 べ 小 さくなったともといえる が 住 宅 価 格 は 資 産 効 果 を 通 じて 経 済 全 体 へ 大 きな 影 響 を 与 える 可 能 性 もあり やはり 注 意 が 必 要 である 第 図 : 住 宅 価 格 推 移 FHFA(Purchase-Only) S&P/Case-Shiller( 全 国 ) 6 7 8 9 ( 資 料 )FHFA( 米 連 邦 住 宅 金 融 局 ) S&Pより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 第 図 : 住 宅 価 格 のバリュエーション (98 Q=) 6 住 宅 価 格 / 家 賃 比 率 ( 倍 ) 対 可 処 分 所 得 比 対 名 目 GDP 比 家 計 保 有 住 宅 資 産 残 高 ( 時 価 ) 9 8 7 78 8 8 87 9 9 96 99 8 ( 資 料 ) 米 労 働 省 S&Pより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 ( 資 料 ) 米 商 務 省 FRBより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 6 6 66 69 7 7 78 8 8 87 9 9 96 99 8
第 図 : 住 宅 取 得 能 力 指 数 6 7 8 9 ( 注 ) 中 位 価 格 の 住 宅 を 購 入 するために 頭 金 %で 年 ローンを 組 んだ 際 に その 元 利 支 払 額 が 収 入 の%となる 所 得 をとして 現 在 の 所 得 を 指 数 化 したもの 指 数 が 上 がる( 下 がる)ほど 住 宅 の 購 入 が 容 易 ( 困 難 )になることを 示 す ( 資 料 )NARより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成. 住 宅 価 格 と 在 庫 率 現 在 の 住 宅 価 格 は 住 宅 市 場 の 需 給 を 示 す 在 庫 率 と 相 関 が 高 い( 第 図 ) 住 宅 市 場 における 在 庫 を 確 認 すると 月 の 新 築 住 宅 は 販 売 が 年 率 万 戸 に 対 して 在 庫 は 6. ヶ 月 中 古 住 宅 においては 販 売 が 年 率 8 万 戸 に 対 して 在 庫 は 9. ヶ 月 となっている 住 宅 着 工 件 数 が 年 率 6 万 戸 ( 月 )と 低 水 準 である ため 新 築 在 庫 は 少 ない 一 方 で 中 古 在 庫 は 差 し 押 さえ 物 件 流 入 により 高 止 まり している 米 不 動 産 業 協 会 (NAR)によると 月 の 中 古 住 宅 販 売 に 占 める 差 し 押 さえをはじめとしたディストレス 物 件 の 割 合 は %となっている 米 国 モー ゲージ 銀 行 協 会 (MBA)によると 月 末 時 点 での 延 滞 率 ( 各 期 間 合 計 )は 8.% ( 第 6 図 ) 差 し 押 さえ 在 庫 率 は.%となっており 差 し 押 さえ 在 庫 率 を 件 数 に 換 算 すると 万 件 程 度 と 推 計 される ( 第 7 図 ) 以 下 では これまでの 差 し 押 さえ 決 定 要 因 を 振 り 返 ったうえで 今 後 の 決 定 要 因 を 考 察 してみたい 各 種 差 し 押 さえデータには 以 下 の 特 徴 がある 発 表 頻 度 カバレッジ データ 元 発 表 内 容 Data Quick 月 次 住 宅 販 売 の8-9% 公 的 記 録 差 し 押 さえ 件 数 ForeclosureS.com 月 次. 百 万 件 公 的 記 録 差 し 押 さえ 件 数 LoanPerformance 月 次 第 一 抵 当 ローンの8% 証 券 発 行 者 ほか 差 し 押 さえ 延 滞 率 First American CoreLogic 月 次 百 万 件 公 的 記 録 ほか 差 し 押 さえ 件 数 Moody's Economy.Com 月 次 %ランダムサンプル 信 用 情 報 機 関 差 し 押 さえ 延 滞 率 Mortgage Bankers Association 四 半 期 ローン 残 高 の8% サービサー 差 し 押 さえ 延 滞 率 RealtyTrac 月 次. 百 万 件 公 的 記 録 差 し 押 さえ 件 数 ( 資 料 )MBAより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 住 宅 価 格 も 各 種 あるが ディストレス 物 件 をどの 程 度 含 むかで 相 違 がある CoreLogic 社 が 算 出 している 住 宅 価 格 は ディストレス 物 件 を 加 えたものと 除 いたものがあるが 双 方 の 乖 離 が 進 んでいる( 第 図 ) 差 し 押 さえはそれ 自 体 が 住 宅 価 格 を 8% 程 度 低 下 させるが (Campbell[9]) 差 し 押 さえ 物 件 としての 期 間 が 長 期 化 していることも 乖 離 に 影 響 している
第 図 : 住 宅 価 格 と 在 庫 率 第 図 : 住 宅 価 格 へのディストレス 物 件 の 影 響 ( 月 ) S&Pケースシラー 住 宅 価 格 ( 都 市 前 年 比 四 半 期 遅 行 ) 住 宅 販 売 在 庫 期 間 ( 新 築 + 中 古 ) 右 軸 - 6 8 ( 年 =) CoreLogic 社 住 宅 価 格 指 数 (ディストレス 物 件 込 み) CoreLogic 社 住 宅 価 格 指 数 (ディストレス 物 件 除 き) - - 6 7 8 9 6 7 8 9 ( 資 料 ) 米 労 働 省 S&Pより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 ( 資 料 )CoreLogic 社 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 第 6 図 : 住 宅 ローン 延 滞 率 第 7 図 : 差 し 押 さえ 比 率 6 6 景 気 後 退 期 住 宅 ローン 延 滞 率 (~9 日 ) 住 宅 ローン 延 滞 率 (6~89 日 ) 住 宅 ローン 延 滞 率 (9 日 以 上 ) 景 気 後 退 期 差 し 押 さえ 在 庫 率 差 し 押 さえ 開 始 比 率 6 7 8 9 6 7 8 9 ( 資 料 )MBAより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 ( 資 料 )MBAより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成.これまで(7~9 年 )の 差 し 押 さえ 件 数 の 決 定 要 因 住 宅 ローンの 差 し 押 さえ(デフォルト)の 発 生 には 様 々な 要 因 が 関 係 してい るが 主 要 なものでは 雇 用 状 況 と LTV 比 率 (Loan-To-Value 住 宅 価 値 に 対 する 住 宅 ローンの 割 合 ) 債 務 返 済 比 率 が 挙 げられる 先 般 の 景 気 後 退 前 後 でこれらの 関 係 をみてみると 差 し 押 さえは 7 年 以 降 増 加 しているが 当 初 は 雇 用 環 境 の 悪 化 に 先 だって 増 加 しており LTV 比 率 や 債 務 返 済 比 率 (FOR:Financial Obligation Ratio 家 計 の 住 宅 ローン 返 済 / 可 処 ここでは FRB の 資 金 循 環 統 計 を 用 いマクロベースの LTV 比 率 を 使 用 月 末 時 点 で 家 計 の 住 宅 関 連 ローンは 兆 ドル 程 度 ( 住 宅 ローン 9 兆 ドル 程 度 ホームエクイティローン 兆 ド ル 程 度 )であるのに 対 して 住 宅 資 産 は 6. 兆 ドルであり 資 産 に 対 する 負 債 の 比 率 は 6% 程 度 となっている
分 所 得 )との 相 関 が 強 かったことがみてとれる( 第 8 図 ) 7 年 から 住 宅 価 格 が 低 下 を 始 め LTV 比 率 が 上 昇 ( 悪 化 )したことに 加 え 当 初 は 返 済 負 担 が 軽 くその 後 に 急 激 に 重 くなる 問 題 のある 住 宅 ローン(オプション ARM など)が 時 間 の 経 過 とともに 債 務 返 済 比 率 の 上 昇 として 顕 在 化 してきたものだ その 後 問 題 住 宅 ローンの 金 利 リセット が 一 巡 し 債 務 返 済 比 率 は 低 下 に 転 じたものの 失 業 者 と LTV 比 率 が 高 止 まりするなか 差 し 押 さえ 件 数 も 高 水 準 で 推 移 してきた 足 元 では 失 業 者 数 や LTV 比 率 に 比 し 差 し 押 さえ 件 数 が 低 下 しているが これは 昨 年 秋 に 発 生 した 不 正 差 し 押 さえ 問 題 で 金 融 機 関 が 差 し 押 さえを 一 時 停 止 したことや 在 庫 増 から 差 し 押 さえを 一 旦 手 控 えたことが 一 因 である 手 控 えられた 分 は 今 後 時 間 をかけて 差 し 押 さえが 実 施 されよう また このよう な 差 し 押 さえと LTV 比 率 との 関 係 の 強 さは 米 国 でノンリコース( 非 遡 及 型 ) の 州 があることも 背 景 である 第 8 図 : 差 し 押 さえ 件 数 との 相 関 ( 万 件 ) 失 業 者 数 と 差 し 押 さえ 件 数 差 し 押 さえ 件 数 失 業 者 数 ( 右 軸 ) ( 千 人 ) 8, ( 万 件 ) LTV 比 率 と 差 し 押 さえ 件 数 差 し 押 さえ 件 数 LTV( 右 軸 ).7 ( 万 件 ) 債 務 返 済 比 率 (FOR)と 差 し 押 さえ 件 数 差 し 押 さえ 件 数 FOR( 右 軸 ). 6,,.6,, 8, LTV(Loan to Value). 6, = 家 計 の 住 宅 負 債 / 家 計 の 住 宅 資 産,. 6 7 8 9 6 7 8 9 ( 資 料 ) 米 労 働 省 FRB RealtyTracより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成. FOR(Financial Obligation Ratio) = 家 計 の 住 宅 ローン 返 済 / 可 処 分 所 得. 9. 6 7 8 9 9 FDIC の Quarterly Banking Profile においても 不 良 (noncurrent) 債 権 割 合 に 変 化 がない 一 方 で 償 却 割 合 が 低 下 していることが 確 認 できる( 第 9 図 ) 返 済 能 力 があったとしても 保 有 住 宅 のローン 残 高 が 住 宅 価 値 を 上 回 る ネガティブエクイテ ィ の 状 態 になれば デフォルト( 債 務 不 履 行 )を 選 択 するインセンティブが 高 い( 所 謂 戦 略 的 デフォルト デフォルトの 6%は 戦 略 的 なもので(Guisw[6]) ノンリコースの 州 はリ コースの 州 よりもデフォルト 確 率 が % 高 い(Ghent[9])) ノンリコースの 州 は 全 米 州 のうち 州 だけであるが 住 宅 ローン 市 場 が 最 大 のカリフォルニア 州 やバブルが 大 きかっ たアリゾナ 州 などがノンリコースであるため 影 響 は 小 さくなく LTV 比 率 と 差 し 押 さえの 関 係 を 強 めたとみられる なお その 他 にも 手 続 きにかかる 日 数 をはじめとして 州 ごとの 相 違 点 は 多 い( 別 表 )
第 9 図 : 金 融 機 関 の 住 宅 債 権 状 況 -89 日 延 滞 Multifamily residential real estate Home equity loans Other - family residential 不 良 (noncurrent) Multifamily residential real estate Home equity loans Other - family residential 償 却 (charged-off) Multifamily residential real estate Home equity loans Other - family residential 債 権 残 高 Multifamily residential real estate Home equity loans Other - family residential ( 億 ドル),, 9 6,,, / /6 /9 / / ( 注 ) 不 良 (noncurrent)とは 9 日 以 上 延 滞 と 未 収 利 息 不 計 上 債 権 ( 資 料 )FDIC, Quarterly Banking Profileより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 / /6 /9 / / / /6 /9 / / / /6 /9 / /. 現 在 ( 年 ~)の 差 し 押 さえ 件 数 の 決 定 要 因 昨 年 以 降 失 業 者 や LTV 比 率 などと 差 し 押 さえ 件 数 との 関 係 にも 変 化 がみら れている 現 状 の 差 し 押 さえ 件 数 の 決 定 要 因 は 以 下 の 様 に 以 前 と 異 なってい よう <7-9 年 頃 > < 年 以 降 > 雇 用 状 況 最 大 の 決 定 要 因 ( 主 に 失 業 率 ) 最 大 の 決 定 要 因 ( 主 に 失 業 期 間 ) LTV 比 率 影 響 大 影 響 弱 まる 債 務 返 済 比 率 影 響 中 影 響 弱 まる 住 宅 ローン 種 類 やや 影 響 やや 影 響 借 り 手 の 信 用 力 やや 影 響 やや 影 響 政 府 対 策 (BOX 参 照 ) やや 影 響 やや 影 響 住 宅 ローン 種 類 借 り 手 の 信 用 力 に 関 しては 考 慮 すべき 変 化 はなく( 第 図 ) 債 務 返 済 比 率 も 住 宅 バブル 崩 壊 からの 時 間 の 経 過 とともに 問 題 の 通 貨 監 督 庁 (OCC)と 貯 蓄 金 融 機 関 監 督 庁 (OTS)によるレポートから 最 近 の 差 し 押 さえ 実 績 で 確 認 すると 住 宅 ローン 種 類 別 のウェイトに 大 きな 変 化 は 見 られない OCC と OTS のレポ ートは 第 一 住 宅 ローンの 6%をカバー また NY 連 銀 資 料 における 借 り 手 の 信 用 力 分 布 にも 大 きな 変 化 は 見 られない よって これらの 要 因 はこれまでと 同 じと 想 定 できる 6
ある 住 宅 ローンが 減 少 し 当 比 率 も 大 きく 低 下 しているため 今 後 については 差 し 押 さえ 発 生 に 追 加 的 に 及 ぼす 影 響 は 限 定 的 だろう 先 行 研 究 でもデフォル ト 決 定 に 際 し 主 要 因 ではないとの 結 論 が 多 い(Foote[9]) 第 図 : 住 宅 ローン 種 類 別 差 し 押 さえ 件 数 第 図 : 借 り 手 の 信 用 力 分 布 ( 千 件 ), Prime Alt-A Subprime Other (FICOスコア) 9 第 四 分 位 第 四 分 位 第 四 分 位 8, 8 7, 7 6, 6 / /6 /9 / / ( 注 )FICOスコアは 米 国 の 個 人 信 用 情 報 機 関 によるクレジットスコアで 数 値 が 大 き いほど 信 用 力 が 高 いことを 示 す なお 第 四 分 位 はデータを:に 分 けた 位 置 の 値 ( 資 料 )OCC and OTS Mortgage Metrics Reportより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 ( 資 料 )NY 連 銀 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 6 7 8 9 LTV 比 率 について マクロベースではなく 個 別 にみてみると 現 状 では 百 万 件 程 度 がネガティブエクイティの 状 態 にある 6 しかし これらの 住 宅 の 大 半 は 7-8 年 の 住 宅 価 格 下 落 でネガティブエクイティになったとみられる が 現 時 点 まで( 戦 略 的 )デフォルトの 選 択 をしていない また バリュエー ションで 割 高 感 が 無 いことから 人 々に 過 度 な 住 宅 価 格 下 落 予 想 も 生 じにくいと みられる これらのネガティブエクイティから 生 じる 追 加 的 な 差 し 押 さえの 発 生 は 限 定 的 となろう 最 大 の 決 定 要 因 である 雇 用 状 況 だが 現 在 は 失 業 者 数 が 大 幅 増 加 していた 局 面 では 無 くなっているため どちらかといえば 長 期 化 している 失 業 期 間 が 差 し 6 Moody s のデータを 元 にしたネガティブエクイティの 状 況 は 以 下 の 通 り また CoreLogic 社 によると 年 第 四 半 期 にネガティブエクイティとなっている 住 宅 保 有 者 は.9 百 万 人 で 全 住 宅 ローン 債 権 者 の.7%( 年 第 四 半 期 は.%)であり ほぼ 同 じ 推 計 である また 9%を 占 める 第 一 の 住 宅 ローンでは 8%がネガティブエクイティであり %を 占 める 第 二 の 住 宅 ローンは 8%がネガティブエクイティであるとの 調 査 もある ネガティブ エクイティ 比 率 第 一 住 宅 ローンの 割 合 ( 資 料 )Moody's ダラス 連 銀 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 所 有 者 割 合 所 有 者 数 ( 百 万 人 ) -% %.6%.9 -% %.9%. -% 6%.9%.9 >% % 6.%.8 合 計 %.8%. 7
押 さえへ 与 える 影 響 を 考 えることが 大 切 となる 7 一 般 に 失 業 期 間 の 長 期 化 は 住 宅 ローンの 延 滞 発 生 確 率 を 高 めるが 失 業 者 が 固 定 化 している( 失 業 者 の 回 転 率 が 低 い)なかで 同 一 債 務 者 における 一 段 の 失 業 期 間 長 期 化 は 追 加 的 な 延 滞 発 生 につながらない 失 業 期 間 の 内 訳 をみると 週 未 満 の 失 業 者 数 に 変 化 がないなか - 週 や -6 週 の 失 業 者 は 9 年 前 半 をピークに 低 下 に 転 じており 7 週 以 上 だけが 増 加 している( 第 図 ) これは 平 均 的 な 失 業 期 間 が 変 わらず 長 期 間 であるなかで 内 訳 の 変 化 により 延 滞 発 生 確 率 は 低 下 していることを 示 唆 しており 長 期 延 滞 への 移 行 確 率 が 9 年 前 半 をピー クに 低 下 していることとも 整 合 的 だ( 第 6 図 ) 延 滞 発 生 確 率 は 依 然 として 高 いが ピークは 過 ぎていると 判 断 できる 第 図 : 失 業 率 と 失 業 期 間 第 図 : 失 業 期 間 の 内 訳 失 業 率 ( 週 ) 8, 6,, ( 千 人 ) 週 未 満 - 週 -6 週 7 週 以 上 8 6 失 業 期 間 ( 中 央 値 右 目 盛 ),, 8, 6,,, ( 資 料 ) 米 労 働 省 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 ( 資 料 ) 米 労 働 省 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 6 7 8 9 第 図 : 延 滞 への 四 半 期 移 行 確 率 第 6 図 : 延 滞 からの 四 半 期 移 行 確 率 Current Mortgage -6 Day Late 8 To -6 days late To current To 9+ days late 6 6 7 8 9 ( 資 料 )NY 連 銀 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 ( 資 料 )NY 連 銀 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 6 7 8 9 7 現 在 は 高 失 業 率 だが 雇 用 削 減 が 多 く 行 われているというよりは 新 規 採 用 が 少 ない 状 況 であ る 失 業 期 間 は 景 気 後 退 前 の ヵ 月 程 度 から 現 状 は ヵ 月 以 上 となっている( 第 図 ) 8
ここまでの 決 定 要 因 に 対 する 判 断 を 踏 まえ LTV 比 率 や 債 務 返 済 比 率 からの 影 響 を 小 さめにみる 一 方 で 失 業 率 に 加 えて 失 業 期 間 からの 影 響 にも 重 きを 置 く 形 で 差 し 押 さえ 件 数 を 推 計 した 8 現 状 の 差 し 押 さえ 在 庫 は 万 件 程 度 あるが 今 後 年 超 は 高 水 準 の 差 し 押 さえが 続 き 新 規 に 万 件 程 度 の 発 生 が 見 込 まれる その 後 差 し 押 さえ 発 生 件 数 は 通 常 ペースに 近 づいていくものの 差 し 押 さえ 在 庫 が 7 年 初 の 水 準 へ 戻 るには 追 加 で 年 以 上 を 要 し 年 頃 になる 見 込 みである( 第 7 図 ) LTV 比 率 や 債 務 返 済 比 率 からの 影 響 が 減 退 するなかで 雇 用 情 勢 の 緩 やかな 改 善 を 背 景 に 延 滞 発 生 と 長 期 延 滞 への 移 行 の 双 方 が 減 少 することを 反 映 してい る 第 7 図 : 差 し 押 さえ 物 件 数 の 見 通 し ( 件 ),,,, 差 し 押 さえ( 在 庫 数 ),, 見 通 し,,,,, 差 し 押 さえ( 新 規 発 生 ) -, -,, 差 し 押 さえ( 物 件 売 却 ) 7 8 9 ( 資 料 )NARより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 差 し 押 さえ 発 生 自 体 のピークは 過 ぎたと 見 られるものの 物 件 消 化 には 長 け れば 年 程 度 がかかり 年 になる 見 込 みである その 間 差 し 押 さえ 物 件 は 住 宅 価 格 に 対 して 下 押 し 圧 力 をかけることになる オバマ 大 統 領 は 今 月 のタウンホールミーティングにおいて 住 宅 対 策 が 不 十 分 であるとし 追 加 策 検 討 に 前 向 きな 姿 勢 を 示 している 住 宅 追 加 対 策 に 関 す る 議 論 は 盛 り 上 がりつつあるが 財 政 上 の 制 約 が 厳 しいなか 抜 本 的 な 追 加 策 が 打 ち 出 される 可 能 性 は 低 そうだ 8 差 し 押 さえ 物 件 の 売 却 については 中 古 住 宅 販 売 が 現 状 程 度 の 年 率 万 戸 程 度 で 推 移 すると し そのうち 差 し 押 さえ 物 件 が 占 める 比 率 は 足 元 の %で 当 面 は 推 移 し その 後 比 率 が 低 下 す るとした 失 業 率 は 当 方 ( 経 済 調 査 室 )の 見 通 しに 沿 って 緩 やかな 低 下 を 想 定 失 業 期 間 も 延 滞 発 生 に 鍵 となる - 週 と -6 週 は 現 状 のペースで 減 少 が 続 くとした 9
BOX 政 府 の 住 宅 対 策 政 府 は 各 種 の 住 宅 市 場 対 策 を 実 施 している 差 し 押 さえ 防 止 策 として 住 宅 ロー ン 条 件 変 更 (modification)を 柱 に 据 えてきたが これまでの 実 績 を 考 慮 すると 十 分 に 機 能 しているとは 言 えない 状 況 だ 住 宅 ローン 条 件 変 更 のメインプログラム である HAMP(Home Affordable Modification Program)では 恒 久 的 な 条 件 変 更 が 累 積 で 7 万 件 程 度 に 止 まっている( 下 図 ) 条 件 変 更 が 受 けられない 理 由 は 所 得 減 少 失 業 (6%) 過 剰 借 入 (.%) 病 気 (.8%)であり 過 剰 借 入 よりも 景 気 低 迷 に 対 応 できていない また ローンを 証 券 化 していることが 条 件 変 更 の 大 きな 弊 害 との 指 摘 も 多 い(Piskorski[]) 政 府 は 継 続 的 に 対 策 の 改 良 を 図 っており 直 近 でも 7 月 7 日 には 住 宅 ローン 返 済 中 の 失 業 者 について 返 済 猶 予 期 間 を 現 在 の - ヵ 月 から 一 年 間 に 延 長 すると 発 表 したが 抜 本 的 な 対 策 とは 言 い 難 く 今 後 の 実 績 にも 大 きな 変 化 はないだろ う 政 府 の 住 宅 市 場 支 援 GSEへの 公 的 資 金 注 入 FRBと 財 務 省 によるエージェンシー 債 エージェンシーMBSの 購 入 初 回 住 宅 購 入 者 向 け 税 控 除 ( 万 人 を 支 援 ) 住 宅 ローン 条 件 変 更 (Making Home Affordable) HAMP(First Lien Modifications) Second Lien Modification Program(MP) Home Affordable Foreclosure Alternatives(HAFA) Principal Reduction Alternative(PRA) Treasury FHA-HAMP Modification activity Housing Finance Agencies Initiative( 持 家 賃 貸 物 件 支 援.bln) low income housing taxcredit program( 賃 貸 住 宅 支 援 bln) Neighborhood Stabilization Program( 差 し 押 さえ 集 中 した 周 辺 の 支 援 6.9bln) FHA hardest hit Fund( 住 宅 市 場 の 落 ち 込 みが 大 きい 地 域 の 支 援 7.6bln) Emergency Homeowners Loan Program( 失 業 者 向 け 支 援 bln) FHA Short Refinance Option(アンダーウォーターの 借 り 手 支 援 ) ( 資 料 )MBAより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 ( 千 件 ) 各 種 差 し 押 さ え 防 止 プ ロ グ ラ ム の 実 績 7 HAMP( Perm anent M odification) F H A lo ss m itigation in terven tio n Hope Now M odification 7 / /7 /9 / / / / ( 年 / 月 ) ( 資 料 ) 米 財 務 省 HUD FHA Hop e N ow A llianceよ り 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成
( 別 表 ) 州 別 にみた 住 宅 ローン 関 連 データ 失 業 率 延 滞 率 差 し 押 さ え 在 庫 率 深 刻 な 延 滞 率 住 宅 ローン 件 数 差 し 押 さえ 在 庫 件 数 リコース/ ノンリコース 裁 判 裁 判 外 差 し 押 さ え 手 続 き 日 数 全 米 9. 8.. 8.,79,7,976,6 Alabama 9.6 9...7 6,8,9 リコース 9-7 Alaska 7.... 9,, ノンリコース Arizona 9. 8..8 9.,9,79,69 ノンリコース 9+ Arkansas 7.8 7...,7 7, リコース 7 California.7 8.. 8.8,67,69,66 ノンリコース 7 Colorado 8.7... 986,,97 リコース Connecticut 9. 7.. 7.7,76,86 リコース 6 Delaware 8. 7.. 7. 6,9 7,7 リコース 7- D.C. 9.8 6...9 97,7,97 リコース 7 Florida.6 8.8. 9.,,77 66, リコース Georgia 9.8.7. 8.,6,79,8 リコース 7 Hawaii 6...6 7. 6,69 7,86 リコース Idaho 9. 6...7 9,79 8,6 リコース Illinois 8.9 7.9 6.8.,69,8,69 リコース Indiana 8. 8..9 8. 8,6 9,86 リコース 6 Iowa 6....8 6,9,79 ノンリコース 6 Kansas 6.6 6...8,6 8,7 リコース Kentucky 9.8 7..8 6.6,76 6, リコース 7 Louisiana 8. 9..9 7. 9,6 9,6 リコース 8 Maine 7.7 7.. 8. 7,78 7, リコース Maryland 6.8 9.. 8.,,89 7,67 リコース 6 Massachusetts 7.6 7.. 6.9 8,67 6,7 リコース 7 Michigan. 9..7 7.9,9, 8,8 リコース 6 Minnesota 6.6..9. 87,,976 ノンリコース 9- Mississippi..8. 8. 6,9 8,7 リコース 9 Missouri 8.9 7...9 88,696 7,6 リコース 6 Montana 7.... 7,,77 ノンリコース Nebraska..9.6. 6,6,8 リコース Nevada..6 9. 6.,9 6,6 リコース 6 New Hampshire.8 6.8.. 9,9,87 リコース 9 New Jersey 9. 7.6 7.7.,,9 96,8 リコース 7 New Mexico 6.9 6..6.9 79,67,68 リコース 8 New York 7.9 7.8. 9.,989, 6, リコース North Carolina 9.7 8..8.9,,999 9, North Dakota..8..8 9, 67 ノンリコース Ohio 8.6 8.. 8.7,8,9 7,67 リコース 7 Oklahoma. 7...8,68,7 リコース 86 Oregon 9..7. 6. 68,,97 ノンリコース Pennsylvania 7. 7.6. 6.,6,89, リコース 7 Rhode Island.9 8.. 8., 6,8 リコース 6 South Carolina. 8.. 7. 66,7 6,68 リコース South Dakota.8..7.9 8,6,6 リコース Tennessee 9.7 9..6 6. 866,768,79 リコース - Texas 8. 7.9.9.7,96,67 8,8 リコース 7 Utah 7. 6.8.9 6.,9,69 リコース Vermont..8.. 68,, リコース 9 Verginia 6. 6...,8, 8,78 リコース Washington 9. 6.. 6.,8,, ノンリコース West Virginia 8.6 8...7,9,8 リコース 6-9 Wisconsin 7...7 6. 68,97, ノンリコース 9 Wyoming 6..7..9 8,6,78 リコース 6 ( 注 ) 失 業 率 は 月 末 時 点 延 滞 率 在 庫 率 ローン 件 数 は 月 末 時 点 の 数 値 ( 資 料 ) 米 労 働 省 MBA RealtyTrac リッチモント 連 銀 ワーキンク ヘ ーハ ーより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成
参 照 文 献 Neil Bhutta, Jane Dokko, and Hui Shan() The Depth of Negative Equity and Mortgage Default Decisions, Federal Reserve Board of Governors Manuel Adelino, Kristopher Gerardi, and Paul Willen() What Explains Differences in Foreclosure Rates?, Federal Reserve Board of Boston Christopher L. Foote, Kristopher Gerardi, Lorenz Goette, and Paul S. Willen(9) Reducing Foreclosures, Federal Reserve Board of Boston Christopher L. Foote, Kristopher Gerardi, and Paul S. Willen(8) Negative Equity and Foreclosure: Theory and Evidence, Federal Reserve Board of Boston Andra C. Ghent and Marianna Kudlyak(9) Recourse and Residential Mortgage Default: Theory and Evidence from U.S. States, Federal Reserve Board of Richmond Allen C. Goodman() Housing Default: Theory Works and So Does Policy, Federal Reserve Board of Richmond Ronel Elul() What Triggers Mortgage Default, Federal Reserve Board of Philadelphia, Working Papers Ronel Elul(6) Residential Mortgage Default, Federal Reserve Board of Philadelphia, Business Review Makoto Nakajima () Understanding House-Price Dynamics, Federal Reserve Board of Philadelphia, Business Review Zhenguo Lin, Eric Rosenblatt, Vincent W. Yao(9) Spillover Effects of Foreclosures on Neighborhood Property Values, Journal of Real Estate Finance and Economics John Y. Campbell, João F. Cocco() A Model of Mortgage Default, Harvard University John Y. Campbell, Stefano Giglio, Parag Pathak(9) Forced Sales and House Prices, NBER Working Paper
(H.7.9 栗 原 浩 史 hiroshi kurihara@mufg.jp ) 当 資 料 は 情 報 提 供 のみを 目 的 として 作 成 されたものであり 金 融 商 品 の 売 買 や 投 資 など 何 らかの 行 動 を 勧 誘 するものではありません ご 利 用 に 関 しては すべてお 客 様 御 自 身 でご 判 断 下 さいますよう 宜 しくお 願 い 申 し 上 げます 当 資 料 は 信 頼 できると 思 われる 情 報 に 基 づいて 作 成 されてい ますが 当 室 はその 正 確 性 を 保 証 するものではありません 内 容 は 予 告 なしに 変 更 することがありますので 予 めご 了 承 下 さい また 当 資 料 は 著 作 物 であり 著 作 権 法 により 保 護 されております 全 文 または 一 部 を 転 載 する 場 合 は 出 所 を 明 記 してください 発 行 : 株 式 会 社 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 -888 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 -7-