Graduate school of Economics, Faculty of Economics The University of Tokyo January.2014 No.21
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〇渡邉 地方金融機構の理事長 渡邉でござい ます 当機構は東京大学とともに このシンポ ジウムの主催者でございまして まずこのよう にたくさんのみなさんにご参加をいただいたこ とにつきまして御礼を申し上げたいと思います 私ども地方公共団体金融機構は 平成20年に 国の機関であります公営企業金融公庫の後継機 関として設立されました これは小泉内閣の政 策金融改革の一環でございますけれども 当機 構の場合には地方分権改革の理念に沿いまして 全地方公共団体が出資する地方の共同資金調達 機関として再出発をしたということでございま す 私自身は平成16年に公庫の総裁として就任し て 今に至っています この間 我が国の地方 債市場の変革の動きの真っただ中にいたわけで ございます この変革の動きは 徐々にいろいろな自由度 が高まっていくということで 私は 自由化 というキーワードを使わせていただきたいと思 います みなさんのお話のとおり 自由化には 2 つの側面がございます 1 つは地方債制度の 自由化で 地方公共団体の資金調達に関する規 制やルールが徐々に緩和されて自由度が増して います もう 1 つは 地方債市場の市場化でご ざいます 地方公共団体の資金調達における民 間資金のウエイトが非常に高まっており 発行 条件の自由化も進んでいますし 銀行借入の分 野でも いろいろな形で自由化が進んでいるわ けでございます こうした自由化は 地方にとっては資金調達 の自由度が高まったり 創意工夫の余地が広 がったり あるいは地方の自己規律を高めると いう大きなメリットがあると思います しかし 一方で 資金調達力の弱い団体や金融に関する 30 知識が乏しい団体にとってみますと 相対的に 今までよりも不利な状況や困難な状況が生じて いく懸念もないわけではないわけでございます 私どもは まさにこういう変革のさなかに 地方の 地方による 地方のための機関として 設立をされたわけでございます 基本的な役割 は地方公共団体に対して長期資金を低利で安定 的に貸し出すということでございますけれど その役割を果たしていく上で 2 つの点が重要 と考えて業務を進めてまいりました 1 つは地 方の共同資金調達機関として 共助 という観 点から 地方公共団体の 自助 を補完してい くということです この点では 広い意味での セーフティーネットの役割もここに含まれるも のと思います もう 1 つは 地方自身の 自助 の努力がしっかりと変化に対応できるように これをサポートしていくということです この 役割を果たすために 機構自身 この 5 年間い ろいろなことを進めてまいりまして おかげさ まで総じて申し上げると みなさまのご支援 ご理解を賜りまして 順調に業務が推移してお ります それぞれ具体的に何をやってきたかと いうお話は次の発言の機会にさせていただきた いと思います 〇小西 それでは第 1 巡目の締めくくりを持田 先生にお願いしたいと思います 時間を厳守す る中で さまざまなご発言をいただきました それぞれをふまえていただきまして 特に学術 的な観点で 近年の地方債市場の動向および地 方債の制度改革 それが意味するところについ てご意見を賜りたいと思います 〇持田 私からは 3 つばかり発言させていただ きます 1 つは 現在の地方債市場をどう見るかです この点については 今日の冒頭の川崎市のレ
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Graduate school of Economics, Faculty of Economics The University of Tokyo 若返りが必要で 国レベルでもやらなくてはい けませんけれど 地方でも 社会保障のコスト を抑える面でも重要だと思っていまして これ は地方債市場というよりも 地域経済全体の活 性化のために頑張っていただきたいと考えてお ります 〇林 地方債につきましては 先ほども申し上 げましたが 日本の地方債は世界で最も安定的 な市場だと思っております もしもユーロ圏が 財政統合するとしたら まず日本の地方財政制 度と地方公共団体金融機構および共同債の仕組 みをよく勉強するだろうと思います 日本の地 方債市場はそれほど強固なものだと考えていま す 従って 地方債のプライシングをするときに キーになってくるのは流動性です 信用リスク よりは流動性リスクでありまして 流動性プレ ミアムをいかに設定するかが鍵になってくるわ けですが そのためにはやはり 先ほど来 い ろいろな方がおっしゃっているように IR が非 常に重要です IR というのはイメージの部分も非常に強いの で なるべく地方独特の 地方公共団体さんが 持っている独特の強さを メリハリを持って強 調した方が良いと思います 横浜市さんの IR も 非常に素晴らしくて 私も感銘している部分が 非常に多いのですが 例えば横浜市さんでした ら待機児童対策は国が真似をしたい位の素晴ら しいものがあるわけですから ここを強調する と それが結局は徴税のポテンシャルにつなが るわけです そこに住みたいと住民が思うわけ ですから これは住民税を通じて徴税のポテン シャルを高めることになります 先ほど北上市 さんもプレゼンテーションでご説明されていた ように 観光資源が多いところはそれを強調さ れるのが良いと思います 地方公共団体はこれ までも IR を非常に一生懸命やってこられたので すが 今後はより独自性のあるものにつなげて いくことを工夫されたらと思います 末澤さんがおっしゃったように 私も地方の 役割として 今後 少子高齢化に対応する対策 例えば女性の活用などと同時に 高齢者に対す る対策を期待しています セブン イレブンさ んは 今後10 位店舗を増やして シルバービ ジネスを展開するという方針を明確に出してい らっしゃいますが 民間でもそういうところに 着目してやっていらっしゃるわけでありますか ら 地方公共団体さんも当然考えていらっしゃ ると思いますが そのような取り組みも当然 徴税のポテンシャルを高めます 高齢者が住み やすいということで 地方公共団体の財政基盤 が強くなると そういう強みを強調できると思 いますので 積極的にやっていただきたいと思 います それから 情報発信がいかにも大事かという 話で言えば 良いことも悪いことも開示するべ きだという指摘は私もまったく同感でございま して 悪いことを先に言って良いことを後から January.2014 No.21 33
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ばならないわけです 一番大きな問題は 財政 融資資金です 平成13年の財投改革のときには 当時の小泉首相が 何で国家公務員が銀行員を やっているんだ と言われたわけですが 政策 金融改革のときにはその言葉が全く出てこなく て忘れ去られていました 財政融資資金という のは 限定的 緊急避難的なものに限られる必 要があって 今後は縮小していくべきだと私は 考えています 災害や津波防災 あるいは極端 な条件不利地域については 財政融資資金が出 動してくる可能性はあるけれども 一般的なも のは縮小していくべきだろうと思います その ときに この地方共同法人である機構の役割は さらに拡大していくと考えられます 先ほど述べましたように 共同化には水平連 携と垂直連携の二つがありますが 都道府県と 政令指定都市は 基本的には水平連携によって 対応していくべきだろうと思います 共同発行 債の拡大です 機構は 都道府県相互間につい ては水平連携と考えて良いと思います 一般市 町村 特に小規模町村は 場合によっては都道 府県との共同発行を考えても良いだろうし 機 構は都道府県と市町村の間については垂直連携 とも考えられると思います 先ほど渡邉理事長からお話がありましたよう に 機構の設立から 5 年が経ちましたが 法律 に10年見直し条項が入っています 管理勘定が あって 公庫時代の勘定を引き続き管理してい るのですけれども これがあるために機構の性 36 格が見えにくくなっている面があります 私は 当時 機構の性格を早く純化した方がよいと考 えまして この10年見直し条項を入れたわけで すけれども 10年待たなくてもここまで立派に 育ってきたわけですので 早く管理勘定を整理 するか 吸収するかして性格を純化させた方が 地方債市場にとっては分かりやすいのではない かと思っています 次に 人材の育成や確保の面です 平成13年 から地方債の発行条件を調査しましたところ 当時は当初の借り入れが 3 年据え置き 7 年償還 借換債はそのまま据え置きなしで償還する そ れを全く同じ条件で借りているなどという都道 府県もありましたので 私はこれには驚きまし た 県や市町村は 例えば東京などで金融機関 に長く勤めた出身者でUターン就職したい人を 探して そういう専門家をどんどん登用して 人材の確保や育成を進めた方が良いのではない かと痛烈に思っていました 私は最近 地方へ 人材を還流させる仕事を手伝っていますが い くつかの県に 民間も含めてどういう人材が地 方に足りないかと聞いてみたところ 色々不足 がある中で 案の定 金融の専門家が足りない という意見もありました ですから 県ではそ ういった人材確保をどんどん進めていただいた ら良いのではないかと思います また 地方支援業務についてですが 前の地 方公営企業等金融機構の時代にも 実は公営企 業の分野に限らず 全般的に地方支援業務がで
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