第 Ⅲ 部 投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について ケネディクス( 株 ) 小 松 浩 樹 著 者 紹 介 小 松 浩 樹 (こまつ こうじゅ) 1996 年 早 稲 田 大 学 法 学 部 卒 業 同 年 三 井 信 託 銀 行 株 式 会 社 ( 現 三 井 住 友 信 託 銀 行 株 式 会 社 ) 入 社 同 社 不 動 産 営 業 部 不 動 産 投 資 顧 問 部 資 産 金 融 部 シティトラスト 信 託 銀 行 株 式 会 社 ( 不 動 産 部 )を 経 て 2005 年 ケネディ ウィルソン ジャパン 株 式 会 社 ( 現 ケネディクス 株 式 会 社 ) 入 社 ケネディクス 不 動 産 投 資 法 人 の 資 産 運 用 会 社 であるケネディクス リート マネジメント 株 式 会 社 ( 現 ケネディクス オ フィス パートナーズ 株 式 会 社 )にて 上 場 準 備 や 投 資 運 用 IR 等 の 業 務 全 般 に 携 わった 後 同 社 チーフ コンプライ アンス オフィサー 取 締 役 投 資 運 用 部 長 を 歴 任 2012 年 10 月 よりケネディクス 株 式 会 社 にてエクイティ 運 用 部 長 を 務 め 現 在 に 至 る 不 動 産 鑑 定 士 日 本 証 券 アナリスト 協 会 検 定 会 員
第 1 章 不 動 産 ファンドにおける 利 益 相 反 取 引 1 総 論 不 動 産 ファンドにおける 利 益 相 反 取 引 とは ファンドの 資 産 運 用 を 行 う 運 用 会 社 又 はそ の 関 係 者 と 不 動 産 ファンドとの 間 で 行 われる 取 引 のうち 双 方 の 利 益 が 相 反 する 要 素 を 含 む 取 引 をいう 具 体 的 には 次 のような 事 例 が 挙 げられる 1 不 動 産 の 購 入 58
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について 2 不 動 産 の 売 却 3 不 動 産 の 賃 貸 借 4 不 動 産 の 媒 介 5 不 動 産 の 管 理 59
上 記 の 事 例 から 判 るように 利 益 相 反 の 要 素 を 含 む 取 引 には 次 の 2 つの 類 型 がある (1) 運 用 会 社 自 身 と 不 動 産 ファンドとの 間 で 直 接 的 に 利 益 相 反 が 生 じるケース (2) 運 用 会 社 の 関 係 者 と 不 動 産 ファンドとの 間 で 間 接 的 に 利 益 相 反 が 生 じるケース 運 用 会 社 は 資 産 運 用 の 委 託 を 受 けた 不 動 産 ファンドの 運 用 にあたって 自 己 又 は 自 己 の 関 係 者 の 利 益 を 得 ることを 目 的 として 資 産 運 用 の 委 託 者 であるファンドの 利 益 ( 投 資 家 の 利 益 )を 不 当 に 損 ねる 取 引 を 行 ってはならない というのが 利 益 相 反 取 引 に 関 する 基 本 的 な 考 え 方 である 2 J-REIT の 体 系 と 利 益 相 反 取 引 J-REIT では 不 動 産 ファンド( 投 資 法 人 )から 資 産 運 用 の 委 託 を 受 けた 資 産 運 用 会 社 が 運 用 活 動 を 行 う いわゆる 外 部 運 用 型 の 体 系 がとられている 60
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について このように J-REIT においても 資 産 を 保 有 する 主 体 ( 投 資 法 人 ) と 資 産 を 運 用 する 主 体 ( 資 産 運 用 会 社 ) が 別 法 人 となっているため 直 接 的 ( 投 資 法 人 と 資 産 運 用 会 社 自 身 ) 又 は 間 接 的 ( 投 資 法 人 と 資 産 運 用 会 社 の 関 係 者 )に 利 益 相 反 取 引 が 生 じやすい 構 造 となっている また J-REIT の 資 産 運 用 会 社 のスポンサー( 株 主 ) 構 成 を 見 てみると 不 動 産 ディベ ロッパー 保 険 会 社 商 社 不 動 産 アセットマネジメント 会 社 等 自 らも 不 動 産 を 保 有 又 は 運 用 している 企 業 が 多 く 名 を 連 ねている これらのことから J-REIT の 資 産 運 用 会 社 が 投 資 法 人 の 資 産 運 用 を 行 うにあたり 投 資 法 人 から 見 た 取 引 の 妥 当 性 をいかに 確 保 するか という 議 論 が 制 度 発 足 時 より 重 ねら れ 業 界 内 で 様 々な 整 備 が 進 んできた 2001 年 のスタートから 10 年 を 超 えた J-REIT の 諸 規 制 は こと REIT に 留 まらず 不 動 産 の 投 資 運 用 ビジネスに 携 わる 上 で 参 考 となる 点 を 多 々 含 んでいる 本 稿 では J- REIT での 利 益 相 反 取 引 関 連 の 諸 規 制 について 順 を 追 って 解 説 する 第 2 章 投 資 法 人 制 度 における 規 制 の 分 類 と 利 害 関 係 者 の 範 囲 1 利 益 相 反 取 引 に 関 する 規 制 の 分 類 日 本 の 投 資 法 人 制 度 における 利 益 相 反 取 引 に 関 する 規 制 は 主 に 5 つのカテゴリーに 分 類 される 図 表 Ⅲ-2-1 61
これらのうち (1) 及 び(2)は 法 令 上 の 規 制 であり 全 ての 投 資 法 人 とその 資 産 運 用 会 社 が 遵 守 しなければならないものである また (3) 及 び(4)は J-REIT の 自 主 規 制 機 関 である 投 信 協 会 や 上 場 投 資 法 人 の 上 場 先 である 金 融 商 品 取 引 所 により 課 される 業 界 ルールであり 開 示 上 の 規 制 が 中 心 となっ ている 一 方 (5)はそれぞれの 資 産 運 用 会 社 が 任 意 かつ 独 自 に 定 めるものであり 法 令 等 より も 厳 しい 制 限 や 手 順 が 会 社 ごとに 定 められている 2 資 産 運 用 会 社 の 利 害 関 係 者 の 範 囲 第 1 章 で 見 たとおり 投 資 法 人 の 資 産 運 用 において 利 益 相 反 の 要 素 を 含 む 取 引 には (1) 資 産 運 用 会 社 自 身 と 投 資 法 人 との 間 で 直 接 的 に 利 益 相 反 が 生 じるケース (2) 資 産 運 用 会 社 の 関 係 者 と 投 資 法 人 との 間 で 間 接 的 に 利 益 相 反 が 生 じるケース の 2 類 型 がある このうち (2)の 資 産 運 用 会 社 の 関 係 者 がどの 範 囲 まで 含 められるかは 法 令 や 規 則 ごとに 異 なっている この 区 分 は 規 制 ごとに 混 同 しがちであるが 社 内 決 議 や 情 報 開 示 の 際 はこれらを 適 切 に 使 い 分 ける 必 要 がある 規 制 の 分 類 ごとに 見 た 資 産 運 用 会 社 の 関 係 者 の 呼 称 と 範 囲 は 概 ね 以 下 ( 図 表 Ⅲ- 2-2 )のとおりである なお (5) 社 内 規 程 上 の 利 害 関 係 者 に 関 しては 各 社 とも(2) 投 信 法 上 の 利 害 関 係 人 等 を 含 めた 上 で 広 く 捉 えているのが 一 般 的 である 以 下 事 例 を 記 載 する( 図 表 Ⅲ-2-3 ) 62
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について 63
第 3 章 金 商 法 に 基 づく 規 制 金 商 法 は 旧 証 券 取 引 法 を 改 正 する 形 で 平 成 19 年 9 月 30 日 に 施 行 された 法 律 である 金 商 法 施 行 までの 投 資 法 人 制 度 では 投 資 法 人 資 産 運 用 会 社 とも 投 信 法 ( 改 正 前 )を 根 拠 法 令 として 各 種 の 規 定 が 設 けられていた これに 対 し 金 商 法 の 施 行 及 びこれと 同 時 に 実 施 された 投 信 法 の 改 正 により 資 産 運 用 会 社 については 主 として 金 商 法 がカバーし 投 資 法 人 については 主 として 投 信 法 がカバーする 体 系 に 変 更 された 金 商 法 において 投 資 法 人 の 資 産 運 用 会 社 は 投 資 運 用 業 を 行 う 金 融 商 品 取 引 業 者 と 位 置 付 けられる( 金 商 法 第 2 条 第 8 項 第 12 号 イ 第 2 条 第 9 項 第 28 条 第 4 項 第 1 号 ) 64
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について そして 利 益 相 反 取 引 に 関 連 して 金 商 法 では 資 産 運 用 会 社 ( 金 融 商 品 取 引 業 者 )の 特 定 関 係 者 の 届 出 資 産 運 用 会 社 ( 金 融 商 品 取 引 業 者 )による 不 適 切 な 運 用 行 為 の 禁 止 投 資 法 人 の 有 価 証 券 報 告 書 等 における 開 示 等 の 規 定 を 定 めている 1 資 産 運 用 会 社 の 特 定 関 係 者 の 届 出 投 資 法 人 の 資 産 運 用 会 社 は 金 融 商 品 取 引 業 者 として 内 閣 総 理 大 臣 ( 金 融 庁 長 官 )の 登 録 を 受 けなければならないが この 登 録 申 請 上 自 らの 特 定 関 係 者 の 状 況 を 記 載 した 書 類 を 添 付 しなければならない また 資 産 運 用 会 社 ( 金 融 商 品 取 引 業 者 )は 次 の 場 合 には 遅 滞 なく 内 閣 総 理 大 臣 ( 金 融 庁 長 官 )に 届 け 出 なければならない 他 の 法 人 その 他 の 団 体 が 自 己 の 親 法 人 等 又 は 子 法 人 等 に 該 当 し 又 は 該 当 しないこ ととなった 場 合 ( 金 商 法 第 50 条 第 1 項 第 8 号 業 府 令 第 199 条 第 3 号 ) 他 の 法 人 その 他 の 団 体 が 自 己 の 持 株 会 社 に 該 当 し 又 は 該 当 しないこととなった 場 合 ( 金 商 法 第 50 条 第 1 項 第 8 号 業 府 令 第 199 条 第 4 号 ) これらの 規 定 により 投 資 法 人 の 資 産 運 用 会 社 は 自 己 の 特 定 関 係 者 の 状 況 を 都 度 見 直 し 当 局 あて 届 け 出 ることとなる 資 産 運 用 会 社 としては 特 定 関 係 者 の 更 新 作 業 を 通 じ て 利 益 相 反 が 生 じる 可 能 性 のある 相 手 方 を 把 握 し 取 引 を 行 う 際 に 注 意 を 払 う 必 要 があ る 65
2 資 産 運 用 会 社 による 不 適 切 な 運 用 行 為 の 禁 止 金 商 法 では 資 産 運 用 会 社 ( 金 融 商 品 取 引 業 者 )が 投 資 運 用 業 につき 以 下 の 行 為 を 行 うことを 原 則 として 禁 じている また 金 商 法 では 資 産 運 用 会 社 又 はその 役 員 若 しくは 使 用 人 が 当 該 金 融 商 品 取 引 業 者 の 親 法 人 等 又 は 子 法 人 等 が 関 与 する 以 下 の 行 為 を 行 うことを 原 則 として 禁 止 している 66
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について これらは 資 産 運 用 会 社 が 投 資 法 人 の 利 益 を 害 する( 又 は 害 するおそれがある) 不 当 な 運 用 行 為 を 行 うことを 禁 止 するものである なお 不 動 産 等 の 信 託 受 益 権 もみなし 有 価 証 券 として 金 商 法 上 の 規 定 が 適 用 されること に 留 意 する 必 要 がある( 金 商 法 第 2 条 第 2 項 第 1 号 ) 3 投 資 法 人 の 有 価 証 券 報 告 書 等 における 開 示 投 資 法 人 は 新 たに 投 資 証 券 を 発 行 し その 取 得 の 申 込 みの 勧 誘 を 国 内 で 行 う 場 合 有 価 証 券 届 出 書 を 作 成 して 管 轄 財 務 局 に 提 出 しなければならない( 金 商 法 第 5 条 第 1 項 ) また 投 資 法 人 は 原 則 として 毎 計 算 ( 決 算 ) 期 間 の 終 了 から 3ヶ 月 以 内 に 有 価 証 券 報 告 書 を 作 成 して 管 轄 財 務 局 に 提 出 しなければならない( 金 商 法 第 24 条 第 1 項 ) これらの 書 類 の 様 式 は 特 定 有 価 証 券 の 内 容 等 の 開 示 に 関 する 内 閣 府 令 に 定 めがある が( 様 式 第 4 号 の 3 又 は 第 7 号 の3) その 記 載 項 目 の 中 に 利 害 関 係 人 との 取 引 制 限 が 含 まれている 同 府 令 の 記 載 上 の 注 意 によると 利 害 関 係 人 との 取 引 制 限 については 投 資 法 人 及 び 関 連 会 社 の 取 締 役 又 は 主 要 株 主 との 間 の 取 引 についての 制 限 の 有 無 制 限 がある 場 合 はその 根 拠 及 びその 内 容 を 記 載 することとされている 上 場 投 資 法 人 各 社 の 有 価 証 券 報 告 書 等 の 内 容 は 各 投 資 法 人 のホームページ 上 の 公 開 情 報 で 確 認 することができる 第 4 章 投 信 法 に 基 づく 規 制 投 信 法 では 投 資 法 人 の 監 督 役 員 と 一 定 の 関 係 を 有 する 者 への 資 産 運 用 委 託 の 禁 止 投 資 法 人 と 資 産 運 用 会 社 等 との 間 における 一 定 の 資 産 取 引 行 為 の 禁 止 利 益 相 反 取 引 を 行 った 際 の 資 産 運 用 会 社 から 投 資 法 人 への 書 面 交 付 不 動 産 売 買 時 における 第 三 者 鑑 定 の 取 得 等 の 規 定 が 設 けられている 67
1 投 資 法 人 の 監 督 役 員 と 一 定 の 関 係 を 有 する 者 への 資 産 運 用 委 託 の 禁 止 投 資 法 人 の 役 員 は 執 行 役 員 と 監 督 役 員 から 構 成 されるが 監 督 役 員 の 人 数 は 執 行 役 員 の 人 数 より1 名 以 上 多 いことが 必 要 である( 例 : 執 行 役 員 が 2 名 であれば 監 督 役 員 は3 名 以 上 必 要 投 信 法 第 95 条 ) この 監 督 役 員 に 関 連 して 投 資 法 人 は 次 のいずれかに 該 当 する 金 融 商 品 取 引 業 者 に 資 産 運 用 業 務 を 委 託 してはならないこととされている これは 投 資 法 人 の 監 督 役 員 の 独 立 性 を 高 め 資 産 運 用 会 社 が 行 う 資 産 運 用 行 為 に 対 す る 投 資 法 人 側 の 監 督 機 能 を 確 保 するための 規 定 である 2 投 資 法 人 と 資 産 運 用 会 社 等 との 間 における 一 定 の 資 産 取 引 行 為 の 禁 止 投 資 法 人 は 次 に 掲 げる 者 との 間 において 一 定 の 資 産 取 引 行 為 を 行 ってはならないこと とされている これは 投 資 法 人 と 資 産 運 用 会 社 ( 又 はその 役 職 員 ) 等 との 間 で 資 産 の 直 接 取 引 を 行 う ことが 強 い 利 益 相 反 性 を 持 つため 一 部 の 取 引 について 予 め 禁 止 する 規 定 である 68
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について 一 方 で 以 下 の 取 引 については 投 資 法 人 の 投 資 主 の 保 護 に 欠 けるおそれが 少 ないと 認 められる 行 為 として 禁 止 の 対 象 から 除 外 されている 3 利 益 相 反 取 引 を 行 った 際 の 資 産 運 用 会 社 から 投 資 法 人 への 書 面 交 付 資 産 運 用 会 社 は 資 産 の 運 用 を 行 う 投 資 法 人 と 以 下 の 者 との 間 で 資 産 の 売 買 等 の 取 引 が 行 われたときは 当 該 取 引 に 係 る 事 項 を 記 載 した 書 面 ( 取 引 報 告 書 面 )を 当 該 投 資 法 人 等 に 遅 滞 なく 交 付 しなければならないこととされている これは 利 益 相 反 取 引 が 行 われた 際 に 資 産 運 用 会 社 から 投 資 法 人 へ 書 面 で 報 告 する 義 務 を 課 すことで 資 産 運 用 会 社 側 の 適 切 な 運 用 と 投 資 法 人 側 の 確 認 を 促 すものである 69
4 不 動 産 売 買 時 における 第 三 者 鑑 定 の 取 得 資 産 運 用 会 社 は 投 資 法 人 について 不 動 産 不 動 産 の 賃 借 権 地 上 権 並 びにこれらの 信 託 受 益 権 の 取 得 又 は 譲 渡 等 の 取 引 が 行 われたときは 資 産 運 用 会 社 の 利 害 関 係 人 等 や 役 職 員 等 の 一 定 の 者 を 除 く 外 部 の 不 動 産 鑑 定 士 に 対 象 資 産 の 不 動 産 鑑 定 評 価 を 行 わせなけれ ばならない 1 とされている( 投 信 法 第 201 条 第 1 項 同 法 施 行 規 則 第 244 条 の2) また 資 産 運 用 会 社 は 当 該 鑑 定 評 価 が 行 われたときは 鑑 定 評 価 の 結 果 を 投 資 法 人 へ 通 知 することとなっている( 投 信 法 施 行 規 則 第 245 条 第 3 項 ) この 不 動 産 売 買 時 における 第 三 者 鑑 定 の 取 得 は 利 益 相 反 取 引 に 限 らず 投 資 法 人 が 行 う 不 動 産 等 の 売 買 取 引 全 般 に 係 る 義 務 規 定 となっているが 利 益 相 反 取 引 における 取 引 の 妥 当 性 を 検 証 する 上 でも 重 要 な 役 割 を 持 っている 1 投 信 法 では 鑑 定 実 施 のタイミングについて 当 該 取 得 又 は 譲 渡 に 先 立 って 当 該 鑑 定 評 価 を 行 わせている 場 合 はこの 限 り でない とされている 70
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について 第 5 章 投 信 協 会 の 諸 規 則 に 基 づく 規 制 投 信 協 会 が 定 める 投 資 信 託 及 び 投 資 法 人 に 係 る 運 用 報 告 書 等 に 関 する 規 則 では 投 資 法 人 が 営 業 ( 決 算 ) 期 間 ごとに 作 成 し 投 資 主 に 通 知 する 資 産 運 用 報 告 ( 投 信 法 第 129 条 第 2 項 )の 表 示 項 目 が 列 挙 されている この 中 で 利 益 相 反 取 引 に 関 連 する 項 目 として (1) 当 期 中 における 利 害 関 係 人 等 及 び 主 要 株 主 との 取 引 状 況 (2) 当 該 利 害 関 係 人 等 及 び 主 要 株 主 に 対 する 支 払 手 数 料 等 の 総 額 の 表 示 が 要 請 されている なお ここで 言 う 利 害 関 係 人 等 の 定 義 は 第 2 章 図 表 Ⅲ-2-2 (3)のとおりである 第 6 章 東 証 の 諸 規 則 等 に 基 づく 規 制 東 証 関 連 の 規 制 としては 以 下 のとおり 開 示 に 係 るものが 中 心 である 1 利 益 相 反 取 引 を 行 う 場 合 の 適 時 開 示 東 証 の 定 める 有 価 証 券 上 場 規 程 では 投 信 法 第 203 条 第 2 項 の 取 引 報 告 書 面 の 交 付 を 要 する 取 引 ( 投 資 法 人 への 書 面 交 付 が 求 められる 利 益 相 反 取 引 第 4 章.3 参 照 )が 行 われた 場 合 は 直 ちにその 内 容 を 開 示 するよう 規 定 されている なお 適 時 開 示 を 行 うタイミングについては 形 式 面 にとらわれることなく 実 態 で 判 断 することが 必 要 であり 業 務 執 行 を 実 質 的 に 決 定 する 機 関 での 決 議 がなされた 段 階 で 速 やかな 開 示 が 求 められる 2 資 産 の 取 得 取 引 を 行 う 場 合 の 過 去 情 報 の 開 示 東 証 の 定 める 上 場 不 動 産 投 資 信 託 証 券 に 関 する 情 報 の 適 時 開 示 ガイドブック( 以 下 開 示 ガイドブック ) では 有 価 証 券 上 場 規 程 により 求 められる 適 時 開 示 の 実 務 上 の 取 扱 いが 定 められている このうち 投 資 法 人 が 資 産 の 取 得 取 引 を 行 う 場 合 の 適 時 開 示 上 の 記 載 項 目 として 取 得 物 件 の 過 去 情 報 が 掲 げられている 具 体 的 には 資 産 運 用 会 社 と 特 別 な 利 害 関 係 にある 71
者 から 投 資 法 人 が 取 得 する 物 件 について 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 とは 関 係 のない 第 三 者 まで 遡 り 以 下 の 記 載 を 盛 り 込 まなければならない 原 所 有 者 名 原 信 託 受 益 者 名 ( 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 とは 関 係 のない 第 三 者 まで 遡 り 列 挙 する 以 下 同 じ ) 取 得 時 期 価 格 情 報 ( 取 得 価 格 費 用 等 ) 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 との 関 係 取 得 経 緯 理 由 等 なお ここで 言 う 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 の 定 義 は 第 2 章 図 表 Ⅲ-2-2 (4)の とおりである 3 運 用 体 制 報 告 書 の 提 出 有 価 証 券 上 場 規 程 では 不 動 産 投 資 信 託 証 券 の 上 場 を 申 請 しようとする 者 は 上 場 申 請 の 際 に また 上 場 不 動 産 投 資 信 託 証 券 の 発 行 者 等 は 営 業 期 間 経 過 後 3ヶ 月 以 内 に 不 動 産 投 資 信 託 証 券 の 発 行 者 等 の 運 用 体 制 等 に 関 する 報 告 書 ( 以 下 運 用 体 制 報 告 書 ) を 東 証 へ 提 出 することとされている 報 告 書 の 構 成 は 以 下 ( 図 表 Ⅲ-6-1 )のとおりであり 投 資 法 人 及 び 資 産 運 用 会 社 の 運 用 体 制 や 取 引 実 績 を 開 示 するようになっている 72
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について 以 下 利 益 相 反 取 引 に 関 連 する 中 心 項 目 である 3.スポンサー 関 係 者 等 との 取 引 等 の 記 載 要 領 を 開 示 ガイドブックから 要 約 して 掲 載 する 3.(1) 利 害 関 係 人 等 との 取 引 等 提 出 日 の 最 近 に 終 了 した 営 業 期 間 における 利 害 関 係 人 等 及 びその 他 特 別 の 関 係 にあ る 者 ( 第 2 章 図 表 Ⅲ-2-2 (4) 参 照 ) との 取 引 内 容 を 記 載 する 取 引 内 容 は 取 引 状 況 及 び 支 払 手 数 料 等 について 利 害 関 係 人 等 及 びその 他 特 別 73
の 関 係 にある 者 の 氏 名 名 称 金 額 各 取 引 総 額 に 占 める 割 合 仲 介 媒 介 PM( 物 件 管 理 ) 委 託 取 引 賃 貸 借 取 引 等 を 区 分 のうえ 記 載 する (2) 物 件 取 得 等 の 状 況 物 件 取 得 の 場 合 提 出 日 の 最 近 に 終 了 した 営 業 期 間 における 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 からの 物 件 取 得 について 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 とは 関 係 のない 第 三 者 まで 遡 り 物 件 ご との 過 去 の 取 引 情 報 を 記 載 する 原 所 有 者 名 原 信 託 受 益 者 名 取 得 時 期 価 格 情 報 ( 取 得 価 格 費 用 等 ) 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 との 関 係 取 得 経 緯 理 由 等 < 記 載 上 の 留 意 事 項 > 価 格 情 報 について 前 々 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )がいない 物 件 又 は 前 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )が 1 年 を 超 えて 所 有 している 物 件 の 場 合 は その 旨 を 明 示 したうえ 前 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )の 取 得 価 格 の 記 載 を 省 略 できる 前 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )が 1 年 を 超 えて 物 件 を 所 有 していない 場 合 には 前 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )の 物 件 取 得 価 格 を 記 載 する また 前 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )が 1 年 を 超 えて 物 件 を 所 有 しておらず かつ 前 々 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )が 1 年 を 超 えて 物 件 を 所 有 していない 場 合 において は 前 々 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )の 物 件 取 得 価 格 を 記 載 する 更 に 過 去 の 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )が 1 年 を 超 えて 所 有 していない 場 合 には そ れらの 者 の 取 得 価 格 について 同 様 に 記 載 する 前 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 )が 1 年 を 超 えて 物 件 を 所 有 していない 場 合 には 取 得 価 格 のほか 媒 介 手 数 料 や 特 別 目 的 会 社 組 成 費 用 等 投 資 法 人 が 当 該 物 件 を 取 得 するにあたり 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 に 支 払 った 費 用 を 併 せて 記 載 する 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 とは 関 係 のない 第 三 者 からの 取 得 である 場 合 やその 他 の 理 由 がある 場 合 で 取 得 価 格 の 記 載 ができない 場 合 には 取 得 価 格 の 記 載 がで きない 理 由 を 記 載 することにより 前 所 有 者 ( 信 託 受 益 者 ) 等 の 取 得 価 格 の 記 載 を 省 略 できる 74
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について 取 得 経 緯 理 由 等 について 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 との 取 引 及 び 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 との 間 の 取 引 に ついて 取 得 価 格 や 投 資 基 準 への 適 合 状 態 ポートフォリオ 構 築 の 観 点 等 を 踏 まえて 取 得 経 緯 理 由 等 を 記 載 する 物 件 譲 渡 の 場 合 提 出 日 の 直 近 営 業 期 間 における 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 への 物 件 譲 渡 につい て 以 下 の 情 報 を 記 載 する 譲 渡 先 の 名 称 譲 渡 時 期 譲 渡 価 格 当 該 物 件 を 取 得 した 時 期 当 該 物 件 を 取 得 した 価 格 特 別 な 利 害 関 係 にある 者 との 関 係 譲 渡 経 緯 理 由 等 第 7 章 資 産 運 用 会 社 が 独 自 に 定 める 社 内 規 程 等 に 基 づく 規 制 多 くの 資 産 運 用 会 社 では 利 益 相 反 取 引 に 関 する 個 別 の 社 内 規 程 を 制 定 し 取 引 時 の 制 限 やコンプライアンス 委 員 会 での 審 議 等 法 令 上 の 定 めよりも 厳 格 な 仕 組 みを 整 えている 利 益 相 反 取 引 の 対 象 者 も 法 令 で 定 める 関 係 者 より 範 囲 を 拡 大 して 実 質 的 に 利 益 相 反 関 係 を 持 つ 先 まで 広 く 含 めているのが 一 般 的 である( 第 2 章 図 表 Ⅲ-2-3 参 照 ) J-REIT が 国 内 外 の 投 資 家 から 一 定 の 信 頼 を 得 ている 要 因 の 一 つには 資 産 運 用 会 社 が 利 益 相 反 取 引 に 関 してこのような 自 主 規 制 を 定 め その 内 容 や 取 引 実 績 につき 適 切 な 開 示 を 重 ねてきた 点 があると 考 えられる 以 下 では 各 社 の 自 主 ルールのうち 利 益 相 反 取 引 における 個 別 制 限 の 付 与 と 委 員 会 等 による 意 思 決 定 について 事 例 を 紹 介 する 1 利 益 相 反 取 引 における 個 別 制 限 の 付 与 利 益 相 反 取 引 の 実 施 時 における 社 内 規 程 上 の 個 別 制 限 の 事 例 は 以 下 ( 図 表 Ⅲ-7-1 図 表 Ⅲ-7-3 )のとおりである 75
特 に 注 意 すべきは 資 産 の 取 得 譲 渡 時 の 制 限 であり 各 社 とも 鑑 定 評 価 額 ( 又 は 鑑 定 評 価 額 から 一 定 範 囲 内 の 額 )を 上 限 ( 下 限 ) 値 とする 制 限 等 を 定 めている 76
投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について 77
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投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について 2 委 員 会 等 による 意 思 決 定 利 益 相 反 取 引 に 係 る 意 思 決 定 にあたっては 資 産 運 用 会 社 の 取 締 役 会 や 投 資 法 人 の 役 員 会 による 最 終 的 な 意 思 決 定 に 至 る 前 に 資 産 運 用 会 社 のコンプライアンス 委 員 会 や 投 資 運 用 委 員 会 等 による 事 前 承 認 を 条 件 とするケースが 多 い (1) 委 員 会 の 構 成 メンバー 利 益 相 反 取 引 を 審 議 する 委 員 会 の 構 成 員 としては 資 産 運 用 会 社 の 役 員 や 担 当 部 長 の 他 に 関 係 部 門 から 独 立 した 立 場 にあるコンプライアンス 統 括 責 任 者 や 資 産 運 用 会 社 と 利 害 関 係 の 無 い 第 三 者 ( 外 部 委 員 )を 加 えることが その 実 効 性 を 高 める 上 で 有 効 で ある 外 部 委 員 については 多 くの 場 合 弁 護 士 公 認 会 計 士 不 動 産 鑑 定 士 等 の 公 的 資 格 の 保 有 者 を 1 名 以 上 選 任 している また コンプライアンス 統 括 責 任 者 と 外 部 委 員 の 出 席 を 委 員 会 成 立 の 条 件 とする 等 委 員 会 の 実 効 性 を 保 つために 条 件 を 定 めている 場 合 が 多 い (2) 委 員 会 の 決 議 方 法 利 益 相 反 取 引 に 係 る 審 議 事 項 の 決 議 は (i) 全 会 一 致 方 式 (ii) 多 数 決 方 式 ( 但 し コンプライアンス 統 括 責 任 者 と 外 部 委 員 の 賛 成 を 条 件 とする) 等 各 社 とも 厳 しい 内 容 をとっている また 議 案 の 決 議 にあたって 利 益 相 反 取 引 の 相 手 方 と 関 係 を 持 つ 者 ( 例 : 相 手 方 の 役 員 も 兼 職 している 役 職 員 等 )を 当 該 議 案 の 決 議 メンバーから 除 く 例 もある 更 に 利 益 相 反 取 引 の 審 議 に 関 して 議 案 を 担 当 部 門 へ 差 し 戻 す 権 限 をコンプライア ンス 統 括 責 任 者 に 与 えている 事 例 も 見 受 けられる 79
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投 資 法 人 資 産 運 用 業 における 利 益 相 反 取 引 の 諸 規 制 について 以 上 投 資 法 人 の 利 益 相 反 取 引 に 関 する 諸 規 制 を 分 類 ごとに 見 てきたが 最 終 的 な 拠 り 所 は 運 用 会 社 の 役 職 員 が 投 資 家 のために 何 をすべきか 資 産 運 用 を 行 う 当 事 者 として どうあるべきか と 自 問 自 答 する 姿 勢 を 常 に 持 ち 続 けることである 不 動 産 投 資 運 用 業 界 の 健 全 な 発 展 を 推 し 進 めるためにも 業 界 の 各 プレイヤーが 高 い 意 識 の 下 で 運 用 活 動 に 臨 むことが 求 められる 81