[ 租 税 判 例 研 究 会 ] 小 規 模 宅 地 / 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 の 意 義 / 生 活 の 拠 点 第 42 回 2011 年 ( 平 成 23 年 )12 月 2 日 発 表 中 島 孝 一 MJS 租 税 判 例 研 究 会 は 株 式 会 社 ミロク 情 報 サービスが 主 催 する 研 究 会 です MJS 租 税 判 例 研 究 会 についての 詳 細 は MJS コーポレートサイト 内 租 税 判 例 研 究 会 のページをご 覧 ください <MJS コーポレートサイト 内 租 税 判 例 研 究 会 のページ> http://www.mjs.co.jp/seminar/kenkyukai/
MJS 判 例 研 究 会 平 成 23 年 12 月 2 日 小 規 模 宅 地 / 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 の 意 義 / 生 活 の 拠 点 中 島 孝 一
[1] 小 規 模 宅 地 等 の 減 額 特 例 制 度 1 制 度 創 設 の 趣 旨 昭 和 58 年 度 改 正 により 個 人 事 業 者 の 事 業 の 用 又 は 居 住 の 用 に 供 する 小 規 模 宅 地 等 の 処 分 についての 制 約 面 に 配 慮 し 特 に 事 業 用 土 地 については 事 業 が 雇 用 の 場 であるこ と 等 事 業 主 以 外 の 多 くの 者 の 社 会 的 基 盤 として 居 住 用 土 地 にはない 制 約 を 受 ける 面 があ ること 等 から 従 来 の 通 達 による 取 扱 いを 発 展 的 に 吸 収 して 相 続 税 の 課 税 価 格 計 算 の 特 例 として 法 定 された 2 制 度 の 概 要 小 規 模 宅 地 等 の 減 額 特 例 とは 個 人 が 相 続 又 は 遺 贈 により 取 得 した 財 産 のうち 相 続 開 始 の 直 前 において 被 相 続 人 の 事 業 の 用 若 しくは 居 住 の 用 に 供 されていた 特 例 対 象 宅 地 等 である 小 規 模 宅 地 等 がある 場 合 には 相 続 人 等 が 取 得 した 宅 地 等 のうち 限 度 面 積 要 件 を 満 たす 場 合 の 小 規 模 宅 地 等 に 限 り 相 続 税 の 課 税 価 格 に 算 入 すべき 価 額 は その 宅 地 等 の 価 額 から 用 途 区 分 ( 事 業 用 宅 地 等 居 住 用 宅 地 等 その 他 )に 応 じた 割 合 (80% 又 は 50%)を 減 額 して 計 算 した 金 額 とすることができる 制 度 をいう( 措 法 69 の 4) 3 創 設 改 正 の 経 緯 (1) 昭 和 50 年 (1975 年 ): 通 達 による 評 価 上 の 措 置 1 背 景 被 相 続 人 の 事 業 の 用 又 は 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 のうち 200 m2までの 部 分 の いわゆる 小 規 模 宅 地 は それが 相 続 人 等 の 生 活 基 盤 の 維 持 のために 不 可 欠 なもので あって その 処 分 に 相 当 の 制 約 を 受 けることが 通 常 である 2 評 価 上 の 措 置 通 常 の 評 価 をそのまま 適 用 するのは 相 当 ではなく 通 常 の 方 法 によって 評 価 した 価 額 の 80% 相 当 額 (20% 評 価 減 )によって 評 価 することとされた (2) 昭 和 58 年 (1983 年 ): 法 律 上 の 措 置 として 創 設 1 背 景 取 引 相 場 のない 株 式 の 評 価 について 改 善 合 理 化 を 図 ることとの 関 連 で 個 人 が 事 業 又 は 居 住 の 用 に 供 する 小 規 模 宅 地 についても 所 要 の 措 置 を 講 ずることが 適 当 である と の 税 制 調 査 会 の 昭 和 58 年 度 の 税 制 改 正 に 関 する 答 申 ( 昭 和 57 年 12 月 )の 趣 旨 に 沿 って 措 置 された 2 減 額 割 合 ( 評 価 上 の 措 置 法 律 上 の 措 置 ) 創 設 時 の 減 額 割 合 は 200 m2までの 部 分 の 宅 地 等 について 事 業 用 宅 地 等 は 40% 居 住 用 宅 地 等 は 30%( 事 業 用 宅 地 等 との 併 用 の 場 合 は 20%)であった 3 宅 地 宅 地 等 小 規 模 宅 地 小 規 模 宅 地 等 へ 改 正
通 達 では 対 象 外 とされていた( 納 税 者 から 不 満 の 声 があった) 貸 付 地 や 貸 家 建 付 地 駐 車 場 の 敷 地 も 特 例 の 対 象 となる 事 業 用 宅 地 等 として 小 規 模 宅 地 等 に 該 当 することとさ れた 駐 車 場 の 敷 地 である 雑 種 地 も 適 用 対 象 に 含 まれることとするため 通 達 上 の 小 規 模 宅 地 から 小 規 模 宅 地 等 に 文 言 を 改 め 法 律 上 の 措 置 とした 対 象 となる 土 地 が 宅 地 から 宅 地 等 に 改 正 されたことから 農 地 も 対 象 となる ため 農 地 を 除 外 するため 特 例 対 象 宅 地 等 を 建 物 又 は 構 築 物 の 敷 地 の 用 に 供 されてい るもの に 限 定 した (3) 昭 和 63 年 (1988 年 ): 減 額 割 合 の 引 上 げ 準 事 業 の 除 外 1 背 景 地 価 の 高 騰 があり また 準 事 業 の 判 定 をめぐり 執 行 上 種 々の 問 題 が 生 じていた 2 減 額 割 合 の 引 上 げ 減 額 割 合 が 事 業 用 宅 地 等 は 60% 居 住 用 宅 地 等 は 50%( 事 業 用 宅 地 等 との 併 用 は 40%) にそれぞれ 引 上 げられた 3 準 事 業 の 除 外 税 制 調 査 会 の 答 申 の 趣 旨 を 踏 まえ 特 例 の 対 象 となる 宅 地 等 から 事 業 に 準 ずるものの 用 に 供 されていた 宅 地 等 を 除 外 することとし 本 特 例 を 事 業 の 用 又 は 居 住 の 用 に 供 され ていた 宅 地 等 の 特 例 に 純 化 することとした 4 国 営 事 業 用 宅 地 等 の 追 加 国 の 事 業 の 用 に 供 されていた 宅 地 等 が 追 加 され 特 定 郵 便 局 の 建 物 の 敷 地 の 用 に 供 さ れていた 宅 地 等 を 国 営 事 業 用 宅 地 等 として 事 業 用 宅 地 等 と 同 様 に 減 額 割 合 を 60%とし た (4) 平 成 4 年 (1992 年 ): 土 地 の 評 価 水 準 の 引 上 げ 減 額 割 合 の 引 上 げ 1 背 景 財 産 評 価 基 本 通 達 における 土 地 の 評 価 水 準 が 従 前 の 地 価 公 示 価 格 水 準 の 70% 相 当 額 から 80% 相 当 額 に 引 上 げられた 2 減 額 割 合 の 引 上 げ 減 額 割 合 が 事 業 用 宅 地 等 は 70% 居 住 用 宅 地 等 は 60%( 事 業 用 宅 地 等 との 併 用 は 50%) にそれぞれ 引 上 げられた (5) 平 成 6 年 (1994 年 ): 各 項 目 の 見 直 し( 準 事 業 の 復 活 等 ) 1 特 定 区 分 の 新 設 等 特 定 事 業 用 宅 地 等 特 定 居 住 用 宅 地 等 の 区 分 が 新 設 されるとともに 事 業 に 準 ずるも
のの 用 に 供 されていた 宅 地 等 も 本 特 例 の 対 象 になった また 特 定 同 族 会 社 事 業 用 宅 地 等 が 新 たに 追 加 されるとともに 1 棟 の 建 物 の 敷 地 の 一 部 が 特 定 居 住 用 宅 地 等 に 該 当 する 場 合 には その 1 棟 の 建 物 の 敷 地 全 体 を 特 定 居 住 用 宅 地 等 に 該 当 するものとされた <1 棟 の 建 物 の 敷 地 全 体 を 特 定 居 住 用 宅 地 等 に 該 当 するものとされた 背 景 > 一 戸 建 住 宅 の 1 階 部 分 に 被 相 続 人 夫 婦 が 居 住 し 2 階 部 分 を 他 の 者 に 貸 付 け その 賃 料 で 生 活 をしていた 場 合 には その 建 物 の 1 階 部 分 に 対 応 する 敷 地 だけが 居 住 用 宅 地 等 として 特 例 の 対 象 になり 2 階 部 分 に 対 応 する 敷 地 部 分 は 貸 付 けが 事 業 的 な 規 模 に 達 していないことから 特 例 の 対 象 外 になり 1 階 2 階 とも 被 相 続 人 夫 婦 で 居 住 の 用 に 供 していた 場 合 と 比 較 して 相 続 税 の 負 担 が 重 くなるという 事 態 に 対 処 するた めのものであった 改 正 にあたっては 一 戸 建 住 宅 の 2 階 部 分 を 賃 貸 しているようなケースを 想 定 し 区 分 所 有 が 可 能 なマンションの 一 部 に 居 住 し 他 の 大 部 分 を 賃 貸 しているようなケー スは 想 定 していなかったことから 結 果 的 には 行 過 ぎた 改 正 であったと 言 わざるを 得 ない 点 もあった 2 減 額 割 合 の 引 上 げ 減 額 割 合 について 現 在 と 同 様 に 特 定 事 業 用 宅 地 等 特 定 居 住 用 宅 地 等 特 定 同 族 会 社 事 業 用 宅 地 等 及 び 国 営 事 業 用 宅 地 等 についてそれぞれ 80%とし それ 以 外 の 特 例 対 象 宅 地 等 は 50%とされた 3 申 告 期 限 までの 分 割 要 件 の 追 加 小 規 模 宅 地 等 の 特 例 の 適 用 を 受 けるための 要 件 として その 小 規 模 宅 地 等 が 相 続 税 の 提 出 期 限 までに 共 同 相 続 人 間 で 分 割 されていることが 要 件 に 追 加 された (6) 平 成 11 年 (1999 年 ) 平 成 13 年 (2001 年 ): 限 度 面 積 の 引 上 げ 1 平 成 11 年 (1999 年 ) 改 正 特 定 事 業 用 宅 地 等 の 限 度 面 積 が 200 m2から 330 m2に 引 上 げられた 2 平 成 13 年 (2001 年 ) 改 正 特 定 事 業 用 宅 地 等 の 限 度 面 積 が 330 m2から 400 m2に 引 上 げられ 特 定 居 住 用 宅 地 等 の 限 度 面 積 が 200 m2から 240 m2に 引 上 げられた (7) 平 成 17 年 (2005 年 ): 国 営 事 業 用 宅 地 等 の 廃 止 郵 政 民 営 化 に 伴 い 平 成 19 年 10 月 1 日 以 後 に 相 続 等 により 取 得 した 小 規 模 宅 地 等 に ついては 国 営 事 業 用 宅 地 等 が 適 用 対 象 から 除 外 された なお 郵 政 民 営 化 法 第 180 条 第 1 項 の 規 定 により 同 法 の 施 行 日 である 平 成 19 年 10 月 1 日 前 から 郵 政 局 舎 を 日 本 郵 政 公 社 ( 現 : 郵 便 局 株 式 会 社 )に 貸 し 付 けていた 郵 政 局
舎 の 敷 地 で 一 定 の 要 件 を 満 たすものについては 特 定 事 業 用 宅 地 等 とみなされ 引 き 続 き 小 規 模 宅 地 等 の 特 例 (400 m2まで 80% 減 額 )の 適 用 がある 上 記 は 税 経 システム 研 究 所 今 月 の 税 情 報 尾 崎 三 郎 稿 を 参 考 としている 4 平 成 22 年 度 改 正 宅 地 等 は 次 に 掲 げる 場 合 の 区 分 に 応 じそれぞれに 定 める 宅 地 等 とする( 措 令 40 の 26) 1 被 相 続 人 の 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 が 二 以 上 ある 場 合 (3に 掲 げる 場 合 を 除 く) 当 該 被 相 続 人 が 主 としてその 居 住 の 用 に 供 していた 一 の 宅 地 等 A 宅 地 被 相 続 人 B 宅 地 ( 主 ) 被 相 続 人 B 宅 地 : 適 用 可 2 被 相 続 人 と 生 計 を 一 にしていた 当 該 被 相 続 人 の 親 族 の 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 が 二 以 上 ある 場 合 (3に 掲 げる 場 合 を 除 く) 当 該 親 族 が 主 としてその 居 住 の 用 に 供 していた 一 の 宅 地 等 ( 当 該 親 族 が2 人 以 上 ある 場 合 には 当 該 親 族 ごとにそれぞれ 主 としてその 居 住 の 用 に 供 していた 一 の 宅 地 等 ) A 宅 地 親 族 甲 B 宅 地 ( 主 ) 親 族 甲 C 宅 地 ( 主 ) 親 族 乙 D 宅 地 親 族 乙 B 宅 地 : 適 用 可 C 宅 地 : 適 用 可
3 被 相 続 人 及 び 当 該 被 相 続 人 と 生 計 を 一 にしていた 当 該 被 相 続 人 の 親 族 の 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 が 二 以 上 ある 場 合 次 に 掲 げる 場 合 の 区 分 に 応 じそれぞれに 定 める 宅 地 等 とする イ 当 該 被 相 続 人 が 主 としてその 居 住 の 用 に 供 していた 一 の 宅 地 等 と 当 該 親 族 が 主 とし ての 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 とが 同 一 である 場 合 当 該 一 の 宅 地 等 A 宅 地 B 宅 地 C 宅 地 D 宅 地 被 相 続 人 ( 主 ) 被 相 続 人 被 相 続 人 親 族 甲 ( 主 ) 親 族 甲 親 族 甲 B 宅 地 : 適 用 可 ロ イに 掲 げる 以 外 の 場 合 当 該 被 相 続 人 が 主 としてその 居 住 の 用 に 供 していた 一 の 宅 地 等 及 び 当 該 親 族 が 主 とし てその 居 住 の 用 に 供 していた 一 の 宅 地 等 A 宅 地 B 宅 地 C 宅 地 D 宅 地 被 相 続 人 ( 主 ) 被 相 続 人 ( 主 ) 親 族 甲 被 相 続 人 親 族 甲 B 宅 地 C 宅 地 : 適 用 可
[2] 小 規 模 宅 地 / 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 の 意 義 / 生 活 の 拠 点 佐 賀 地 裁 平 成 20 年 5 月 1 日 判 決 ( 納 税 者 勝 訴 )Z258-10956(TAINS) 福 岡 高 裁 平 成 21 年 2 月 4 日 判 決 ( 納 税 者 逆 転 敗 訴 )Z888-1418(TAINS) 最 高 裁 平 成 22 年 2 月 5 日 ( 不 受 理 )( 確 定 )Z888-1503(TAINS) 1 争 点 被 相 続 人 の 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 等 は 主 として 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 等 に 限 られるか( 一 の 家 屋 の 敷 地 に 限 られるか) 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 等 に 当 たるか 2 事 案 の 概 要 (1) 親 族 図 被 相 続 人 ( 呉 服 販 売 ) ( 昭 和 2 年 5 月 5 日 生 ) ( 平 成 14 年 11 月 16 日 死 亡 ) 妻 ( 税 理 士 ) ( 平 成 13 年 4 月 24 日 死 亡 ) 原 告 ( 税 理 士 ) 夫 ( 税 理 士 ) (2) 原 告 らの 相 続 税 の 申 告 以 下 の 宅 地 について 小 規 模 宅 地 等 の 減 額 特 例 の 適 用 があるとして 申 告 小 城 市 家 屋 の 敷 地 特 定 居 住 用 宅 地 等 (80% 減 額 ) マンションの 敷 地 その 他 の 居 住 用 宅 地 等 (50% 減 額 ) ( 佐 賀 市 所 在 14 階 建 て 10 階 部 分 床 面 積 93.91 m2 敷 地 持 分 4.55 m2) (3) 佐 賀 税 務 署 の 処 分 片 方 の 宅 地 には 小 規 模 宅 地 等 の 減 額 特 例 の 適 用 がない
3 佐 賀 地 裁 ( 原 告 被 告 の 主 張 判 示 ) (1) 争 点 1 主 として 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 等 に 限 られるか 被 告 の 主 張 1 本 件 特 例 は 個 別 通 達 の 趣 旨 を 受 け 継 ぐ 本 件 特 例 は 宅 地 が 相 続 人 等 の 生 活 基 盤 維 維 持 のために 欠 くことのできないもので 処 分 に 相 当 の 制 約 を 伴 うことが 通 常 であることに 対 する 配 慮 から 評 価 上 しんしゃくを 加 える との 趣 旨 に 基 づく 本 件 個 別 通 達 の 趣 旨 をその まま 受 け 継 ぎ 法 制 化 されたものである このような 本 件 特 例 の 沿 革 からすれば 居 原 告 の 主 張 1 基 本 原 則 に 租 税 法 律 主 義 がある 租 税 の 全 体 を 支 配 する 基 本 原 則 の 一 つに 租 税 法 律 主 義 があり そこから 導 かれる 課 税 要 件 明 確 主 義 に 鑑 みれば 同 一 法 律 内 においては その 文 言 の 意 味 は 一 義 的 に 解 されるべきであ る かかる 明 確 性 は 本 件 特 例 が 法 22 条 の 例 外 を 定 めるものであることからも 要 請 される といえる 住 の 用 に 供 していた 宅 地 を 主 として 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 に 限 定 していた 本 件 個 別 通 達 時 の 解 釈 は 本 件 特 例 でも 引 き 続 き 妥 当 する ものと 解 すべきであり 本 件 特 例 が 適 用 される べき 宅 地 等 は あくまでも 被 相 続 人 が 主 とし て 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 等 1 個 のみに 限 られるものと 解 するのが 相 当 である 2 法 制 化 に 伴 う 文 言 削 除 の 趣 旨 確 かに 本 件 個 別 通 達 における 主 として の 文 言 は 本 件 特 例 への 法 制 化 において 削 除 され てはいるが これは 被 相 続 人 と 生 計 を 一 にす る 当 該 被 相 続 人 の 親 族 が 居 住 の 用 に 供 してい た 宅 地 についても 本 件 特 例 の 対 象 とすること とされたことに 伴 うものにすぎず 限 度 面 積 の 範 囲 内 である 限 り 被 相 続 人 が 居 住 の 用 に 供 し 2 法 制 化 に 伴 う 文 言 削 除 の 趣 旨 本 件 特 例 の 趣 旨 は 本 件 個 別 通 達 の 趣 旨 でも あったのであり 本 件 特 例 の 創 設 の 際 に 本 件 個 別 通 達 にあった これに 該 当 する 宅 地 が 2 以 上 ある 場 合 には 相 続 開 始 時 において 被 相 続 人 が 主 として 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 をいう ものとする との 要 件 が 削 除 された 趣 旨 は 別 のところにあるはずである ていた 宅 地 すべてを 本 件 特 例 の 対 象 とする 趣 旨 であるとは 到 底 考 え 難 い 平 成 17 年 版 資 産 税 質 疑 応 答 集 (1144 頁 1145 頁 ) では 被 相 続 人 の 居 住 の 用 に
供 されていた 宅 地 等 が 2 箇 所 ある 場 合 には 法 令 の 規 定 が 存 しないものの 本 特 例 の 立 法 経 緯 立 法 趣 旨 から 被 相 続 人 が 主 として 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 等 の 部 分 に 限 り 本 特 例 の 適 用 があると 解 することが 相 当 とし ていた 3 所 得 税 法 との 対 比 について 原 告 らは 居 住 用 財 産 の 譲 渡 の 場 合 の 長 期 譲 渡 所 得 の 課 税 の 特 例 である 措 置 法 31 条 の 3 第 2 項 及 びに 措 置 令 20 条 の 3 第 2 項 の 規 定 と 対 比 して 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 されていた の 意 味 を 解 釈 すべきと 主 張 するが 本 件 特 例 に おける 生 活 の 用 に 供 している ということの 意 義 や 適 用 範 囲 は その 立 法 経 緯 や 制 度 趣 旨 を も 考 慮 して 規 定 されるべきものであり 単 純 に 所 得 税 法 33 条 の 特 例 を 定 める 措 置 法 31 条 の 3 第 2 項 との 対 比 のみから 原 告 らの 主 張 するよ うな 解 釈 が 導 かれるものではない 3 所 得 税 法 との 対 比 について 措 置 法 31 条 の 3 第 2 項 に 居 住 の 用 に 供 し ている( 家 屋 ) という 文 言 があり これにつ いて 規 定 する 措 置 令 20 条 の 3 第 2 項 において その 者 がその 居 住 のように 供 している 家 屋 を 二 以 上 有 する 場 合 には これらの 家 屋 のう ち その 者 が 主 としてその 居 住 の 用 に 供 してい ると 認 められる 一 の 家 屋 に 限 るものとする と 規 定 しており 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 は 二 箇 所 以 上 あり 得 る 概 念 とされており 本 件 個 別 通 達 においてもこれを 前 提 とした 規 定 が 置 かれていた ところが 本 件 特 例 については 措 置 令 に 適 用 範 囲 の 制 限 規 定 は 置 かれていないのである から 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 する の 意 味 は 単 に 生 活 の 拠 点 として 利 用 する を 意 味 するものであり 複 数 認 められ 得 るものであ る 4 特 定 居 住 用 宅 地 等 とその 他 の 居 住 用 宅 地 等 の 要 件 の 相 違 原 告 らは その 他 の 居 住 用 宅 地 等 について は 居 住 の 継 続 を 要 件 としていないのであるか ら 相 続 人 等 の 生 活 基 盤 維 持 のために 不 可 欠 と 4 特 定 居 住 用 宅 地 等 とその 他 の 居 住 用 宅 地 等 の 要 件 の 相 違 被 告 は 本 件 特 例 の 趣 旨 が 事 業 又 は 住 居 の 用 に 供 されていた 宅 地 のうち 最 小 限 必 要 な 部 分 については 相 続 人 等 の 生 活 基 盤 維 持 のた
いう 制 度 趣 旨 は 特 定 居 住 用 宅 地 等 には 該 当 す るが その 他 の 居 住 用 宅 地 等 には 妥 当 しない 旨 主 張 する しかしながら 特 定 居 住 用 宅 地 等 に 関 する 規 定 を 創 設 した 平 成 6 年 度 の 税 制 改 正 は 相 続 人 の 居 住 が 継 続 されている 場 合 に 限 り 減 額 割 合 を 拡 大 して 相 続 人 等 の 生 活 基 盤 の 維 持 により 一 層 配 慮 することとしたものであり 特 定 居 住 用 宅 地 における 居 住 の 継 続 という 要 件 は 相 続 人 等 の 生 活 基 盤 維 持 の 観 点 から 配 慮 を 加 えるという 本 件 特 例 の 制 度 趣 旨 を 前 提 として その 配 慮 の 程 度 を 引 き 上 げるための 要 件 にす ぎないから その 他 の 居 住 用 宅 地 等 について めに 欠 くことのできないものであって その 処 分 について 相 当 の 制 約 を 受 けることが 通 常 で ある ことから 評 価 上 所 要 のしんしゃくを 加 える 点 にあり このような 趣 旨 からすれば 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 されている 宅 地 は 生 活 基 盤 維 持 のために 欠 くことのできない 宅 地 等 1 個 に 限 定 されるとの 解 釈 が 導 かれる 旨 主 張 する しかしながら 上 記 の 趣 旨 は 特 定 居 住 用 宅 地 等 については 妥 当 するが 本 件 特 例 の 適 用 については 相 続 人 らが 居 住 することが 要 件 とされていないことからすれば 本 件 特 例 の 趣 旨 をことさら 強 調 して 上 記 のように 解 す ることは 妥 当 ではない 居 住 の 継 続 が 要 件 とされていないからとい って 上 記 の 制 度 趣 旨 を 離 れた 解 釈 をすること は 許 容 されないというべきである
(2) 争 点 2 本 件 宅 地 が 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 に 当 たるか 被 告 の 主 張 原 告 の 主 張 1 判 断 基 準 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 されていたか どうかは 相 続 人 らが 生 1 判 断 基 準 同 左 活 の 拠 点 を 置 いていたかどうかにより 判 断 されるのであり その 者 の 日 常 生 活 の 状 況 その 建 物 への 入 居 の 目 的 その 建 物 の 構 造 及 び 設 備 の 状 況 生 活 の 拠 点 となるべき 他 の 建 物 の 有 無 その 他 の 事 実 を 総 合 勘 案 して 判 定 されるべきである 2 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 に 非 該 当 被 相 続 人 は 本 件 相 続 時 もしくはこれに 近 い 時 期 において 小 城 市 家 屋 には 明 らかに 継 続 的 に 居 住 する 意 思 をもってこれに 起 居 し 生 活 の 拠 点 として 利 用 していたのに 対 し 本 件 マンションについては ご くわずかの 日 数 しか 利 用 していないこと 被 相 続 人 の 周 囲 の 者 からは その 生 活 の 拠 点 が 本 件 マンションであるとは 全 く 理 解 されていなかっ たこと 本 件 マンションの 水 道 光 熱 費 ガスの 使 用 状 況 は 単 身 居 住 者 すら 生 活 しているとはおよそ 認 められないほどにごく 少 量 であるこ とからすると 被 相 続 人 の 生 活 の 拠 点 とは 到 底 いえない また 本 件 マンションについては 福 岡 への 足 掛 かりという 入 居 目 的 に 即 した 利 用 はほとんどされていないこと 本 件 マンションの 面 積 及 び 間 取 りが 93.91 m2の 4LDKであること 本 件 マンションの 購 入 に 際 し 被 相 続 人 が 購 入 した 電 化 製 品 の 中 には 明 らかに 世 帯 使 用 の ものが 含 まれていること 等 からすると 被 相 続 人 が 購 入 当 初 は 本 件 マンションを 福 岡 等 への 足 掛 かりとし 単 身 で 居 住 する 意 思 を 持 って いたとしても そのような 目 的 どおりに 本 件 マンションを 利 用 ないし 居 住 する 意 思 は 失 われていったことが 合 理 的 に 推 測 できるから やは り 被 相 続 人 の 生 活 の 拠 点 とはいえない 以 上 のとおり 被 相 続 人 は 本 件 マンションに 生 活 の 拠 点 を 置 いて いたとはいえず 本 件 マンションは 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 され 2 居 住 の 用 に 供 されて いた 宅 地 に 該 当 本 件 マンションは その 構 造 及 び 設 備 ( 電 気 水 道 ガスが 供 給 されていたの みならず 新 たに 家 具 や 電 化 製 品 一 式 も 揃 えてい た )において 居 住 に 適 し ており 建 物 の 入 居 目 的 も 仕 事 上 生 活 上 の 便 宜 とい う 日 常 生 活 のための 利 用 を 目 的 としていたのであ り 一 時 的 な 目 的 で 入 居 し たものでも 別 荘 でもなく 被 相 続 人 の 病 気 のため 利 用 が 短 期 間 に 終 わったと はいえ 現 に 利 用 していた のであるから 本 件 宅 地 は 居 住 の 用 に 供 されてい た といえる ていた 宅 地 には 当 たらないというべきである
以 下 の 事 実 がある (1) 被 相 続 人 等 の 現 況 被 相 続 人 と 妻 は 自 宅 である 小 城 市 家 屋 に 居 住 していた 妻 は 税 理 士 であり 自 宅 敷 地 内 で 会 計 事 務 所 を 経 営 し 被 相 続 人 は 昭 和 28 年 ころから 自 宅 で 小 間 物 屋 を 営 み その 後 B という 屋 号 で 呉 服 の 販 売 を 行 うようになった( 昭 和 51 年 12 月 21 日 には 有 限 会 社 Bを 設 立 し 法 人 化 している ) なお 原 告 とその 夫 も 税 理 士 であり 小 城 市 家 屋 の 近 隣 に 居 住 して 上 記 会 計 事 務 所 に 勤 務 していた 被 相 続 人 は 呉 服 の 仕 入 れのために 京 都 大 阪 ないし 福 岡 に 行 くことがあった 同 営 業 の 顧 客 は 小 城 市 内 のみならず 佐 賀 市 内 にも 多 く 存 在 した (2) 平 成 13 年 1 月 22 日 ( 被 相 続 人 は 大 腸 癌 の 手 術 ) 被 相 続 人 は 平 成 13 年 1 月 22 日 C 病 院 で 大 腸 癌 の 手 術 を 受 け 同 年 3 月 16 日 に 退 院 した 被 相 続 人 は 福 岡 に 仕 入 れなどに 行 くほか 営 業 のために 佐 賀 市 内 で 客 と 会 う 機 会 も 多 く 個 人 的 な 付 合 いや 買 い 物 のために 佐 賀 市 内 へ 出 向 くこともあった 被 相 続 人 は 自 動 車 の 運 転 が 出 来 ず 福 岡 に 仕 入 れに 行 くときは 妻 に 佐 賀 駅 まで 自 動 車 で 送 ってもらうことが 多 かった なお 小 城 からJRで 福 岡 へ 出 るためには 1 時 間 以 上 の 時 間 がかかった (3) 平 成 13 年 4 月 24 日 ( 妻 の 死 亡 ) 妻 は 平 成 13 年 4 月 20 日 に 突 然 倒 れ 同 月 24 日 には 死 亡 した 被 相 続 人 は 同 年 6 月 下 旬 ころから 仕 事 を 再 開 したが 妻 が 死 亡 したことから 仕 入 れに 行 くにも 佐 賀 市 内 に 営 業 や 買 い 物 に 行 くにも 不 便 だと 感 じ 佐 賀 市 内 にも 生 活 の 拠 点 を 持 ちたいと 考 え るようになった (4) 平 成 13 年 6 月 23 日 (マンション 購 入 ) 平 成 13 年 11 月 2 日 (ガス 使 用 開 始 ) 被 相 続 人 は 平 成 13 年 6 月 23 日 本 件 マンションを 購 入 した 被 相 続 人 は 同 年 9 月 ころ 本 件 マンションで 使 用 する 家 具 等 を 購 入 し 同 年 10 月 20 日 には 小 城 市 家 屋 にあった 椅 子 とテーブル 食 器 類 を 本 件 マンションに 搬 入 し 同 月 28 日 には 冷 蔵 庫 洗 濯 機 電 子 レンジ 等 の 電 化 製 品 を 購 入 し 同 月 30 日 には 上 記 の 購 入 した 家 具 を 搬 入 し 同 年 11 月 2 日 には 上 記 電 化 製 品 も 搬 入 した なお 同 年 11 月 2 日 には ガスの 使 用 も
開 始 し 同 日 から 生 活 できるようになった (5) 平 成 13 年 11 月 5 日 から 同 年 11 月 20 日 ( 再 入 院 ) 被 相 続 人 は 本 件 マンションの 家 具 等 の 準 備 と 並 行 して 定 期 的 に 病 院 で 検 査 を 受 け ていたところ 肝 臓 に 癌 細 胞 の 小 さな 転 移 が 見 つかり 平 成 13 年 11 月 5 日 から 同 年 11 月 20 日 まで 病 院 に 入 院 した (6) 平 成 13 年 11 月 24 日 ( 初 めて 宿 泊 ) 被 相 続 人 は 平 成 13 年 11 月 23 日 には ベッド 用 のリネン 等 や 食 器 類 を 購 入 し 同 月 24 日 妻 の 月 命 日 を 済 ませた 後 原 告 及 びその 息 子 と 共 に 本 件 マンションに 初 めて 宿 泊 した (7) 平 成 13 年 11 月 以 降 平 成 14 年 3 月 22 日 前 ( 少 なくとも 計 5 回 宿 泊 ) 被 相 続 人 は 平 成 13 年 11 月 以 降 平 成 14 年 3 月 22 日 に 入 院 するまでの 間 週 に 1 回 程 度 の 頻 度 で 友 人 に 会 いに 行 ったり 呉 服 販 売 業 の 顧 客 に 挨 拶 に 行 ったり 買 い 物 をしたりするために 佐 賀 市 内 を 訪 れ その 際 本 件 マンションに 立 ち 寄 った また 被 相 続 人 は この 間 本 件 マンションに 少 なくとも 計 5 回 宿 泊 している ま た 被 相 続 人 は 同 年 2 月 には 同 年 4 月 から 始 まる 佐 賀 市 内 のDにおける 書 道 講 座 やパッチワーク 講 座 に 申 込 みをし 受 講 を 楽 しみにしていた 本 件 マンション 及 び 小 城 市 家 屋 における 電 気 水 道 ガスの 使 用 量 は 別 紙 2 記 載 ( 記 述 なし)のとおりである (8) 平 成 14 年 4 月 8 日 ( 再 手 術 ) 被 相 続 人 は 平 成 14 年 4 月 8 日 E 医 大 で 癌 摘 出 手 術 を 受 けるも 開 腹 の 結 果 複 数 の 転 移 が 見 つかり 癌 を 摘 出 することは 出 来 なかったが 被 相 続 人 には 手 術 は 成 功 し た 旨 伝 えられた 被 相 続 人 は 同 月 23 日 E 医 大 を 退 院 し 小 城 市 家 屋 で 療 養 するも めまいと 吐 き 気 を 訴 えたことから 同 年 5 月 10 日 Fに 入 院 し 同 月 16 日 同 医 院 を 退 院 した
(9) 平 成 14 年 11 月 16 日 ( 死 亡 ) 被 相 続 人 は その 後 も 3 回 程 度 本 件 マンションに 赴 いている 被 相 続 人 は その 後 小 城 市 家 屋 での 療 養 病 院 への 入 退 院 を 経 た 後 平 成 14 年 11 月 16 日 に 死 亡 した 平 成 13 年 (2) (3) (4) (4) (5) (6) 1/22 4/24 6/23 11/2 11/5 11/24 入 院 手 術 妻 の 死 亡 マンション 購 入 入 居 可 能 再 入 院 初 宿 泊? 平 成 14 年 (7) (8) (9) 3/22 4/8 11/16 5 回 宿 泊 再 手 術 死 亡 14/1 3 日 宿 泊 14/2 1 日 宿 泊 14/6 3 日 立 ち 寄 り 14/7 2 日 立 ち 寄 り 13/12 1 日 立 ち 寄 り 14/1 2 日 立 ち 寄 り 14/2 3 日 立 ち 寄 り
(3) 佐 賀 地 裁 の 判 示 争 点 1 主 として 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 等 に 限 られるか 1 複 数 存 在 することも 許 容 されていると 解 するのが 相 当 相 続 税 と 所 得 税 の 特 例 という 違 いはあるものの 所 得 税 の 場 合 には 措 置 法 31 条 の 3 第 2 項 に 居 住 の 用 に 供 している( 家 屋 ) という 文 言 があり これについて 規 定 する 措 置 令 20 条 の 3 第 2 項 において その 者 がその 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 を 二 以 上 有 す る 場 合 には これらの 家 屋 のうち その 者 が 主 としてその 居 住 の 用 に 供 していると 認 め られる 一 の 家 屋 に 限 るものとする と 規 定 しているにもかかわらず 本 件 特 例 において はそのような 制 限 はされていないことからすると 本 件 特 例 の 解 釈 として 主 として 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 等 に 限 るとすることは 困 難 であって 面 積 要 件 さえ 満 たせば 複 数 存 在 することも 許 容 されていると 解 するのが 相 当 である 2 本 件 特 例 には 規 定 されていない 主 として を 読 み 込 むことは 無 理 がある この 点 に 関 し 被 告 は 本 件 個 別 通 達 は 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 とは 相 続 開 始 時 において 被 相 続 人 が 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 をいい これに 該 当 する 宅 地 が 2 以 上 ある 場 合 には 相 続 開 始 時 において 被 相 続 人 が 主 として 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 を いうものとする と 規 定 しており その 趣 旨 を 引 き 継 いで 本 件 適 用 が 法 律 化 されたので あるから 本 件 特 例 も 本 件 個 別 通 達 と 同 様 の 解 釈 をするべきである 旨 主 張 している しかしながら 本 件 特 例 は 本 件 個 別 通 達 がそのまま 法 律 化 されたものではなく 税 務 調 査 会 の 昭 和 58 年 度 の 税 制 改 正 に 関 する 答 申 において 株 式 評 価 について 改 善 合 理 化 を 図 ることとの 関 連 で 個 人 が 事 業 の 用 又 は 居 住 の 用 に 供 する 小 規 模 宅 地 について も 所 要 の 措 置 を 講 ずることが 適 当 である とされたことから 立 法 時 における 地 価 の 動 向 にも 鑑 み 個 人 事 業 者 等 の 事 業 の 用 又 は 居 住 の 用 に 供 する 小 規 模 宅 地 の 処 分 について の 制 約 面 に 一 層 配 意 し 特 に 事 業 用 土 地 については 事 業 が 雇 用 の 場 であるとともに 取 引 先 等 と 密 接 に 関 連 している 等 事 業 主 以 外 の 多 くの 者 の 社 会 的 基 盤 として 居 住 用 土 地 に はない 制 約 を 受 ける 面 があること 等 に 鑑 み 従 来 の 通 達 ( 本 件 個 別 通 達 )による 取 扱 い を 発 展 的 に 吸 収 して 相 続 税 の 課 税 上 特 別 の 配 慮 を 加 えることとして 法 律 化 されたもの であり 本 件 個 別 通 達 と 比 較 すると 種 々の 変 更 が 加 えられているのであり 例 えば 貸 付 地 については 事 業 に 至 らない 場 合 にまで 拡 大 されたりしているのであるから 本 件 個 別 通 達 に 存 在 した 主 として という 文 言 が 本 件 特 例 では 削 除 されているというこ
とは 文 字 どおり 本 件 個 別 通 達 の 主 として の 制 限 を 本 件 特 例 で 解 除 したものにほ かならないものというべきである 被 告 は 本 件 個 別 通 達 の 趣 旨 を 強 調 するが それは 法 律 の 趣 旨 の 一 部 にすぎないので あって その 趣 旨 のみから 本 件 特 例 には 規 定 されていない 主 として を 読 み 込 むこ と 自 体 法 律 の 解 釈 としては 無 理 があるというべきである また 被 告 は 主 として の 規 定 が 削 除 された 理 由 として 被 相 続 人 と 生 計 を 一 にす る 当 該 被 相 続 人 の 親 族 が 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 についても 本 件 特 例 の 対 象 とする こととされたことに 伴 うものにすぎない 旨 主 張 するが 上 記 規 定 を 存 続 させても 上 記 改 正 に 何 ら 支 障 がないことからすれば 被 告 の 上 記 主 張 は 理 由 がない さらに 本 件 のような 相 続 税 における 小 規 模 宅 地 等 の 課 税 の 特 例 における 居 住 用 宅 地 については 1 回 限 りの 相 続 において 面 積 要 件 もあることや 居 住 の 継 続 の 要 件 もない こと(すなわち 売 却 も 可 能 )からすると 譲 渡 所 得 の 特 例 の 場 合 のように 主 たるもの に 制 限 しなければならない 理 由 に 乏 しいのであって この 点 からも ことさらに 無 理 を して 本 件 特 例 の 適 用 の 対 象 となる 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 等 を 主 として 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 等 に 限 定 する 解 釈 を 行 う 必 要 性 もない 争 点 2 本 件 宅 地 が 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 に 当 たるか 1 判 断 基 準 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 にあたるかどうかについては 相 続 人 ら が 生 活 の 拠 点 を 置 いていたかどうかにより 判 断 すべきであり 具 体 的 には その 者 の 日 常 生 活 の 状 況 その 建 物 への 入 居 の 目 的 その 建 物 の 構 造 及 び 設 備 の 状 況 生 活 の 拠 点 となるべき 他 の 建 物 の 有 無 その 他 の 事 実 を 総 合 勘 案 して 判 定 されるべきであると 解 する のが 相 当 である 2 生 活 の 本 拠 と 認 められる これを 本 件 についてみるに 前 記 認 定 事 実 によれば 小 城 市 家 屋 では 自 動 車 を 運 転 できない 被 相 続 人 にとって 福 岡 へ 仕 入 れに 行 ったり 佐 賀 市 内 に 営 業 や 買 い 物 に 行 く のに 不 便 であったため これを 改 善 する 目 的 で 本 件 マンションを 購 入 したこと 現 に 被 相 続 人 は 手 術 後 の 平 成 13 年 11 月 ころ 以 降 再 手 術 のために 入 院 した 平 成 14 年 3 月
ころまでの 間 少 なくとも 週 に 1 回 程 度 は 本 件 マンションに 立 ち 寄 り 時 折 は 宿 泊 も していたこと 本 件 マンションには 水 道 設 備 の 他 日 常 生 活 に 必 要 な 電 化 製 品 も 備 え られており 被 相 続 人 は 本 件 マンションにおいて これらを 利 用 していたことが 認 め られ これらによれば 被 相 続 人 による 本 件 マンションの 利 用 は 単 に 娯 楽 や 一 時 的 な 目 的 に 出 たものではなく 生 活 の 改 善 を 目 的 に 小 城 市 家 屋 及 び 本 件 マンション 双 方 に おいて 生 活 することを 選 択 した 一 つの 生 活 スタイルに 基 づくものと 認 めることができる 以 上 によれば 本 件 マンションは 被 相 続 人 にとって 生 活 の 拠 点 として 使 用 されて いる 実 態 にあったというべきである 3 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 に 該 当 する この 点 被 告 は 被 相 続 人 が 本 件 マンションをごくわずかの 日 数 しか 利 用 していな いこと 被 相 続 人 の 周 囲 の 者 からは その 生 活 の 拠 点 が 本 件 マンションであるとは 全 く 理 解 されていなかったこと 本 件 マンションの 水 道 光 熱 費 ガスの 使 用 状 況 は 単 身 居 住 者 すら 生 活 しているとはおよそ 認 められないほどにごく 少 量 であることなどを 指 摘 す るが 上 記 事 実 は 本 件 マンションが 小 城 市 家 屋 との 比 較 において 主 として 居 住 の 用 に 供 されてはいなかったことを 窺 わせる 事 情 とはいえるものの 本 件 においては 前 記 のとおり 生 活 の 拠 点 が 複 数 存 在 することも 妨 げられないのであるから このような 比 較 検 討 は 不 要 であるし 前 記 認 定 事 実 からして 被 相 続 人 が 本 件 マンションの 利 用 状 況 を 仮 装 していたとは 到 底 認 められない 以 上 病 気 等 の 事 情 から 結 果 的 に 利 用 が 極 端 に 少 なかったとしても 上 記 の 事 情 のみをもって 本 件 マンションが 生 活 の 拠 点 ではな いということはできない また 被 告 は 本 件 マンションについては 福 岡 への 足 掛 かりという 入 居 目 的 に 即 し た 利 用 はほとんどされていないこと 本 件 マンションの 面 積 及 び 間 取 りが 93.91 m2の 4 LDKであること 本 件 マンションの 購 入 に 際 し 被 相 続 人 が 購 入 した 電 化 製 品 の 中 に は 明 らかに 世 帯 使 用 のものが 含 まれていることを 指 摘 する しかしながら 前 記 認 定 のとおり 被 相 続 人 の 入 居 目 的 は 福 岡 への 足 掛 かりのみで はなく 佐 賀 市 内 での 活 動 の 足 掛 かりという 目 的 もあったのであるから 福 岡 への 足 掛 かりとしての 利 用 がなかったとしても 被 相 続 人 の 入 居 目 的 どおりの 利 用 がなかったと はいえない また 本 件 マンションの 間 取 り 電 化 製 品 の 種 別 は 被 相 続 人 が 将 来 的 に 孫 などの 親 類 を 本 件 マンションに 招 くことを 考 えていたことを 推 認 させるとしても
それが 直 ちに 被 相 続 人 が 本 件 マンション 購 入 直 後 に 本 件 マンションを 利 用 する 意 図 が なかったことを 推 認 させるとまではいえない したがって 被 相 続 人 は 本 件 マンションに 生 活 の 拠 点 を 置 いていたといえるから 本 件 宅 地 は 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 にあた.るものというべきであ る
4 福 岡 高 裁 の 判 示 (1) 争 点 1 主 として 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 等 に 限 られるか 本 件 特 例 の 対 象 となる 居 住 の 用 に 供 していた 宅 地 等 は 主 として 居 住 の 用 に 供 し ていた 宅 地 等 に 限 られないものと 判 断 する (2) 争 点 2 本 件 宅 地 が 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 に 当 たるか 1 判 断 基 準 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 に 当 たるかどうかについては 被 相 続 人 が 生 活 の 拠 点 を 置 いていたかどうかにより 判 断 すべきであり 具 体 的 にはその 者 の 日 常 生 活 の 状 況 その 建 物 への 入 居 の 目 的 その 建 物 の 構 造 及 び 設 備 の 状 況 生 活 の 拠 点 と なるべき 他 の 建 物 の 有 無 その 他 の 事 実 を 総 合 勘 案 して 判 断 されるべきである 2 マンションの 入 居 目 的 に 疑 問 がある 前 記 認 定 事 実 によれば 自 動 車 を 運 転 できない にとって 家 屋 からでは 福 岡 へ 仕 入 れに 行 ったり 佐 賀 市 内 に 営 業 や 買 い 物 に 行 くのに 不 便 であったため これ を 改 善 する 目 的 で 本 件 マンションを 購 入 し 本 件 マンショには 電 気 ガス 水 道 が 供 給 されており 日 常 生 活 に 必 要 な 家 具 や 電 化 製 品 も 備 えられており 生 活 の 拠 点 として 使 用 するに 足 りる 設 備 が 整 えられていたことが 認 められる 他 方 で 本 件 マンションの 面 積 や 間 取 りは が 一 人 で 居 住 するには 不 必 要 なほど 広 く 電 気 もその 使 用 量 に 比 べて 契 約 容 量 が 極 めて 大 きい 家 具 や 電 化 製 品 も 世 帯 用 の 製 品 が 購 入 されており は 運 転 免 許 を 持 たないにもかかわらず 駐 車 場 契 約 を 締 結 している したがって 本 件 マンションの 入 居 目 的 が 専 ら 一 人 が 仕 入 れ 等 の 便 宜 のために 居 住 するためのものであったかどうかについては 疑 問 がある 3 本 件 マンションの 実 際 の 利 用 状 況 は 散 発 的 更 に の 本 件 マンションの 実 際 の 利 用 状 況 は ガスの 使 用 を 開 始 した 平 成 13 年 11 月 に 1 日 宿 泊 した 後 同 年 12 月 は 一 度 立 ち 寄 ったのみであり 平 成 14 年 1 月 は 3 日 宿 泊 し 2 日 立 ち 寄 ったが 同 年 2 月 は 1 日 宿 泊 し 3 日 立 ち 寄 ったのみである その 後 入 退 院 を 繰 り 返 したため 同 年 6 月 に 至 って 3 日 同 年 7 月 に 2 日 立 ち 寄 ったものの 宿
泊 することはなかった 本 件 マンションへの 立 ち 寄 りも 定 期 的 なものではなく 散 発 的 で が 福 岡 へ 出 かけた 日 と 一 致 するものでもなく 福 岡 への 仕 入 れや 社 会 保 険 センター の 講 座 受 講 のための 拠 点 として 実 際 に 使 用 されていたものではない 実 際 に 使 用 された 電 気 ガス 水 道 も 極 めて 少 量 である また が 本 件 マンションを 住 所 として 届 け 出 た 金 融 機 関 や 取 引 先 はなく 郵 便 物 は 家 屋 に 届 けられており 本 件 マンションに 届 く 郵 便 物 はダイレクトメールの 類 に 過 ぎず 知 人 らに 本 件 マンションで 生 活 していると 知 らせた 形 跡 もなく 入 退 院 を 繰 り 返 していた 時 期 や 平 成 14 年 8 月 以 降 は 最 後 まで 家 屋 で 療 養 していたものである 4 生 活 の 拠 点 として 使 用 されていたとは 認 められない 以 上 のとおりの 本 件 マンションの 利 用 状 況 等 からすれば が 病 気 等 の 事 情 から 利 用 できなかったことを 考 慮 しても は 本 件 マンションにおいてほとんど 生 活 してい なかったのであり その 利 用 も 散 発 的 であって 被 控 訴 人 らが 主 張 する 家 屋 と 本 件 マンションの 両 方 に 居 住 する 生 活 スタイルというものも 確 立 するに 至 っておらず 本 件 マンションが 生 活 の 拠 点 として 使 用 されていたとは 認 められない 5 地 方 税 法 と 相 続 税 法 の 立 法 趣 旨 及 び 目 的 の 相 違 被 控 訴 人 らは 地 方 税 法 施 行 規 則 7 条 の 2 の 15 が 地 方 税 法 施 行 令 36 条 における 日 常 生 活 の 用 に 供 しないもの の 定 義 を 毎 月 1 日 以 上 の 居 住 ( 括 弧 内 省 略 )の 用 に 供 す る 家 屋 又 はその 部 分 以 外 の 家 屋 又 はその 部 分 としていることから 本 件 マンションは 毎 月 1 日 以 上 の 居 住 の 用 に 供 する 家 屋 又 はその 部 分 に 該 当 すると 主 張 するが 同 じ 税 体 系 の 法 律 とはいえ 地 方 税 法 と 相 続 税 法 ではその 立 法 趣 旨 及 び 目 的 が 異 なるから 地 方 税 法 における 用 語 の 定 義 が 相 続 税 法 ひいては 本 件 特 例 にも 妥 当 するとはいえない また 前 記 認 定 事 実 によれば は 毎 月 宿 泊 していたものではなく 毎 月 1 日 以 上 居 住 の 用 に 供 していたとも 認 められないから 被 控 訴 人 らの 主 張 は 理 由 がない したがって 本 件 宅 地 は 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 に 当 たるとは 認 められない
(3) 争 点 2 佐 賀 地 裁 と 福 岡 高 裁 の 相 違 佐 賀 地 裁 1 入 居 目 的 ( 仕 入 れ 等 の 便 宜 ) 構 造 及 び 設 備 から 親 類 を 招 くことを 推 認 させても 購 入 直 後 に 当 初 の 入 居 意 図 が 福 岡 高 裁 1 入 居 目 的 ( 仕 入 れ 等 の 便 宜 ) 構 造 及 び 設 備 から 仕 入 れ 等 の 便 宜 のた めに 居 住 する 目 的 であったか 疑 問 がある なかったとはいえない 2 生 活 スタイルの 確 立 単 に 娯 楽 や 一 時 的 な 目 的 でなく 生 活 改 善 を 目 的 に 双 方 において 生 活 することを 選 択 した 一 つの 生 活 スタイルによるもの と 認 められ 利 用 頻 度 の 検 討 は 不 要 であ 2 生 活 スタイルの 確 立 利 用 状 況 等 ( 本 件 マンション 住 所 を 取 引 先 知 人 等 への 未 周 知 等 も 含 む)から 双 方 に 居 住 する 生 活 スタイルは 確 立 するに 至 っていない る 3 利 用 状 況 等 から 生 活 の 拠 点 といえる 利 用 状 況 を 仮 装 したものでなく 病 気 等 の 事 情 から 利 用 が 少 なかったとしても 生 活 の 拠 点 といえる 3 利 用 状 況 等 から 生 活 の 拠 点 でない 病 気 等 の 事 情 から 利 用 できなかったこ とを 考 慮 しても その 利 用 は 散 発 的 であ り 生 活 の 拠 点 として 使 用 していたとは 認 められない 5 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 の 判 断 基 準 本 件 特 例 の 居 住 の 用 に 供 されていた 宅 地 に 当 たるかどうかについては 被 相 続 人 が 生 活 の 拠 点 を 置 いていたかどうかにより 判 断 すべきであり 具 体 的 にはその 者 の 日 常 生 活 の 状 況 その 建 物 への 入 居 の 目 的 その 建 物 の 構 造 及 び 設 備 の 状 況 生 活 の 拠 点 となるべ き 他 の 建 物 の 有 無 その 他 の 事 実 を 総 合 勘 案 して 判 断 されるべきである 佐 賀 地 裁 及 び 福 岡 高 裁 の 判 断 基 準 は 同 一 判 示 に 相 違 有 り