平 成 一 〇 年 (ワ) 第 八 七 六 一 号 著 作 物 発 行 差 止 等 請 求 事 件 ( 口 頭 弁 論 終 結 日 平 成 一 一 年 六 月 二 八 日 ) 判 決 原 告 A 原 告 B 右 両 名 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 今 野 勝 彦 前 田 惠 三 加 藤 裕 也 岩 田 廣 一 被 告 株 式 会 社 文 藝 春 秋 右 代 表 者 代 表 取 締 役 C 被 告 D 被 告 E 右 三 名 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 古 賀 正 義 石 橋 達 成 主 文 一 被 告 らは 別 紙 書 籍 目 録 記 載 の 書 籍 を 印 刷 出 版 又 は 頒 布 してはならない 二 被 告 株 式 会 社 文 藝 春 秋 は 被 告 が 所 有 する 前 項 記 載 の 書 籍 及 びこれに 関 する 印 刷 用 紙 型 亜 鉛 版 印 刷 用 原 版 (フィルムを 含 む )を 廃 棄 せよ 三 被 告 らは 各 自 原 告 両 名 に 対 し それぞれ 金 二 五 〇 万 円 及 びこれに 対 する 平 成 一 〇 年 五 月 一 五 日 から 支 払 済 みまで 年 五 分 の 割 合 による 金 員 を 支 払 え 四 被 告 らは 原 告 らに 対 し 別 紙 広 告 目 録 ( 二 ) 二 記 載 の 広 告 を 目 録 一 記 載 の 新 聞 に 目 録 一 記 載 の 方 法 で 掲 載 せよ 五 原 告 らの 被 告 らに 対 するその 余 の 請 求 をいずれも 棄 却 する 六 訴 訟 費 用 は これを 五 分 し その 一 を 原 告 らの 負 担 とし その 余 を 被 告 らの 負 担 とする 七 この 判 決 は 第 三 項 に 限 り 仮 に 執 行 することができる 事 実 及 び 理 由 第 一 請 求 一 被 告 らは 別 紙 書 籍 目 録 記 載 の 書 籍 を 印 刷 出 版 又 は 頒 布 してはならない 二 被 告 株 式 会 社 文 藝 春 秋 は 被 告 が 所 有 する 前 項 記 載 の 書 籍 及 びこれに 関 する 印 刷 用 紙 型 亜 鉛 版 印 刷 用 原 版 (フィルムを 含 む )を 廃 棄 せよ 三 被 告 らは 各 自 原 告 両 名 に 対 し それぞれ 金 二 一 四 三 万 五 〇 〇 〇 円 及 びこれに 対 する 平 成 一 〇 年 五 月 一 五 日 から 支 払 済 みまで 年 五 分 の 割 合 による 金 員 を 支 払 え 四 被 告 らは 原 告 らに 対 し 別 紙 広 告 目 録 ( 一 ) 二 記 載 の 広 告 を 目 録 一 記 載 の 新 聞 及 び 雑 誌 に 目 録 一 記 載 の 方 法 で 掲 載 せよ 第 二 事 案 の 概 要 原 告 らは 亡 F( 筆 名 G 以 下 G という )の 相 続 人 であるが Gが 書 い た 未 公 表 の 手 紙 を 掲 載 して 書 籍 を 発 行 した 被 告 らの 行 為 が 1 原 告 らが 相 続 した Gの 右 手 紙 に 係 る 複 製 権 を 侵 害 する 行 為 であり また 2Gが 生 存 していたならば その 公 表 権 の 侵 害 となるべき 行 為 であると 主 張 して 右 書 籍 の 出 版 等 の 差 止 め 右 書 籍 等 の 廃 棄 損 害 賠 償 の 支 払 及 び 謝 罪 広 告 を 請 求 した 一 前 提 となる 事 実 ( 証 拠 を 示 した 事 実 以 外 は 当 事 者 間 に 争 いはない ) 1 原 告 ら 原 告 らは Gの 長 女 及 び 長 男 である Gは 昭 和 四 五 年 一 一 月 二 五 日 死 亡 し 人 の 妻 Hが 平 成 七 年 七 月 三 一 日 に 死 亡 したので 原 告 らが Gの 有 していた 著 作 権 すべてにつき 持 分 各 二 分 の 一 の 割 合 で 共 有 している 2 被 告 ら 被 告 株 式 会 社 文 藝 春 秋 ( 以 下 被 告 会 社 という )は 雑 誌 図 書 の 印 刷 発 行 及 び 販 売 を 目 的 とする 会 社 であり 別 紙 書 籍 目 録 記 載 の 書 籍 ( 以 下 本 件 書 籍 という )を 出 版 した 被 告 D( 以 下 被 告 D という )は 被 告 会 社 の 第 一 出 版 局 長 の 職 にあり 本 件 書 籍 の 発 行 者 として 出 版 に 関 与 した 被 告 E( 以 下 被 告 E という )は 本 件 書 籍 を 執 筆 した 3 本 件 書 籍 被 告 Eは 本 件 書 籍 中 に 次 のとおり Gが 被 告 Eあてに 書 いた 未 公 表 の 手 紙 及 び 葉 書 合 計 一 五 通 ( 以 下 順 に 本 件 手 紙 1 ないし 本 件 手 紙 15 といい あわ せて 本 件 各 手 紙 という )を 掲 載 し 被 告 会 社 及 び 被 告 Dは 平 成 一 〇 年 三 月 二 〇 日 ころ 本 件 書 籍 を 出 版 して 本 件 各 手 紙 を 公 表 し 複 製 した( 本 件 書 籍 中
の 掲 載 頁 については 甲 三 一 二 ) 本 件 手 紙 の 発 信 日 本 件 書 籍 中 の 掲 載 頁 1 昭 和 三 七 年 秋 一 五 七 頁 一 六 行 目 から 一 五 八 頁 五 行 目 まで 2 昭 和 三 八 年 九 月 一 五 八 頁 七 行 目 から 一 五 九 頁 一 〇 行 目 まで 3 昭 和 三 九 年 二 月 一 五 九 頁 一 二 行 目 から 一 六 〇 頁 一 〇 行 目 まで 4 昭 和 三 九 年 暮 れ 一 六 二 頁 一 行 目 から 一 六 行 目 まで 5 昭 和 四 〇 年 春 ころ 一 六 三 頁 三 行 目 から 一 六 四 頁 六 行 目 まで 6 昭 和 四 〇 年 九 月 一 七 日 一 六 五 頁 八 行 目 から 一 五 行 目 まで 7 昭 和 四 一 年 四 月 一 六 六 頁 一 三 行 目 から 一 六 七 頁 五 行 目 まで 8 昭 和 四 一 年 七 月 半 ば 一 七 一 頁 七 行 目 から 一 七 二 頁 五 行 目 まで 9 昭 和 四 一 年 七 月 三 一 日 一 七 四 頁 一 五 行 目 から 一 七 五 頁 五 行 目 まで 10 昭 和 四 一 年 八 月 一 五 日 一 七 五 頁 八 行 目 から 一 八 行 目 まで 11 昭 和 四 一 年 九 月 三 日 二 三 三 頁 三 行 目 から 二 三 四 頁 一 行 目 まで 12 昭 和 四 一 年 九 月 二 一 日 二 三 五 頁 四 行 目 から 六 行 目 まで 13 昭 和 四 二 年 三 月 一 七 日 二 四 三 頁 一 二 行 目 から 二 四 四 頁 八 行 目 まで 14 昭 和 四 二 年 一 〇 月 二 四 九 頁 三 行 目 から 七 行 目 まで 15 昭 和 四 二 年 一 一 月 一 八 日 二 四 九 頁 一 一 行 目 から 二 五 〇 頁 七 行 目 まで 二 争 点 1 本 件 各 手 紙 は 著 作 物 か 本 件 各 手 紙 は いずれも Gの 思 想 感 情 を 創 作 的 に 表 現 したものであり 著 作 物 である 本 件 各 手 紙 は いずれも 純 然 たる 実 用 文 であって 内 容 及 び 文 体 に 照 らして 誰 にでも 書 けるような 文 章 であり 創 作 性 創 造 性 が 認 められず 文 芸 の 範 囲 には 属 さない よって 本 件 各 手 紙 は 著 作 物 とはいえない なお 本 件 各 手 紙 の 著 作 物 性 の 有 無 に 関 する 被 告 らの 主 張 の 詳 細 は 別 紙 被 告 ら 準 備 書 面 ( 一 ) のとおりである 2 被 告 らの 行 為 は 不 法 行 為 を 構 成 するか 損 害 額 はいくらか 被 告 らの 本 件 書 籍 の 出 版 行 為 は 本 件 各 手 紙 に 係 る 原 告 らの 複 製 権 を 侵 害 し 著 作 権 法 六 〇 条 の 規 定 に 違 反 する 共 不 法 行 為 である 右 行 為 をするについて 被 告 らには 故 意 又 は 過 失 があった 右 複 製 権 を 侵 害 し 著 作 権 法 六 〇 条 の 規 定 に 違 反 する 被 告 らの 行 為 によって 生 じ た 損 害 は 以 下 のとおり 算 定 されるべきである 本 件 書 籍 は 被 告 EとGとの 交 流 を 本 件 各 手 紙 を 通 して 叙 述 されたものであ り その 中 心 は 本 件 各 手 紙 である したがって 本 件 書 籍 の 発 行 によって 被 告 ら が 得 た 利 益 は すべて 本 件 各 手 紙 に 依 拠 するものであり 被 告 らの 利 益 すべてが 原 告 らの 損 害 である 被 告 会 社 は 本 件 書 籍 を 一 〇 万 部 出 版 し 一 部 一 四 二 九 円 ( 消 費 税 抜 き)で 販 売 した 被 告 会 社 が 本 件 書 籍 の 販 売 により 得 た 利 益 は 総 販 売 額 一 億 四 二 九 〇 万 円 の 三 〇 パーセントに 当 たる 四 二 八 七 万 円 を 下 らない 一 四 二 九 一 〇 万 三 〇 %= 四 二 八 七 万 よって 原 告 ら 各 自 の 被 告 らの 共 不 法 行 為 による 損 害 は 四 二 八 七 万 円 の 二 分 の 一 である 二 一 四 三 万 五 〇 〇 〇 円 である 被 告 らの 本 件 書 籍 の 出 版 行 為 は 不 法 行 為 を 構 成 しない また 右 行 為 をするに ついて 被 告 らに 故 意 又 は 過 失 はない 本 件 書 籍 中 に 本 件 各 手 紙 が 占 める 割 合 は 約 二 六 分 の 一 に 過 ぎず 仮 に 原 告 らに 損 害 賠 償 請 求 権 が 認 められるとしても 損 害 額 は 被 告 会 社 の 得 た 利 益 の 約 二 六 分 の 一 にとどまる また 被 告 会 社 が 本 件 書 籍 を 販 売 したことによって 得 た 利 益 は 総 販 売 額 の 三 〇 パーセントを 下 回 らないという 主 張 は 否 認 する 3 謝 罪 広 告 の 請 求 は 認 められるか 被 告 会 社 は 1 平 成 一 〇 年 三 月 一 四 日 付 朝 日 新 聞 朝 刊 の 第 二 面 に 縦 一 四 一 セ ンチメートル( 五 段 抜 き) 横 二 五 六 センチメートルの 大 きさで 大 々 的 に 本 件 書 籍 に 関 して 広 告 した 2 被 告 会 社 の 発 行 に 係 る 週 刊 文 春 の 月 一 二 日 号 と
月 一 九 日 号 に 延 べ 七 頁 にわたる 特 集 記 事 を 掲 載 した 3 月 二 六 日 号 の 週 刊 文 春 に 一 頁 ほとんど 全 部 を 使 って 全 面 広 告 を 行 った 原 告 らは 被 告 らに 対 し 平 成 一 〇 年 三 月 一 四 日 付 け 内 容 証 明 郵 便 によって 本 件 書 籍 の 出 版 は 著 作 権 を 侵 害 する 旨 警 告 し 本 件 書 籍 の 出 版 の 中 止 既 に 発 行 さ れた 本 件 書 籍 の 回 収 損 害 賠 償 並 びに 朝 日 新 聞 及 び 週 刊 文 春 等 本 件 書 籍 の 広 告 を 掲 載 した 出 版 物 への 謝 罪 広 告 の 掲 載 を 求 めた また 原 告 らは 月 一 九 日 当 庁 に おいて 被 告 らを 債 務 者 として 仮 処 分 の 申 立 てを 行 い 月 三 〇 日 被 告 らに 対 し 本 件 書 籍 の 発 行 差 止 めの 仮 処 分 決 定 が 出 された しかし 被 告 らは 原 告 らの 警 告 や 右 仮 処 分 決 定 を 無 視 して 故 意 に 著 作 権 法 に 違 反 する 本 件 書 籍 の 出 版 を 続 けた これらの 経 緯 に 照 らすならば 著 作 者 であるGの 名 誉 及 び 声 望 を 回 復 するために は 別 紙 広 告 目 録 ( 一 ) 記 載 の 謝 罪 広 告 の 掲 載 をさせるのが 相 当 である 原 告 らは 被 告 らに 対 し 著 作 権 法 一 一 六 条 一 項 一 一 五 条 に 基 づき 名 誉 回 復 等 の 措 置 を 求 め る 原 告 らの 主 張 は 争 う 謝 罪 広 告 は 違 憲 違 法 なものであり 認 められるべきでは ない また 被 告 らは 仮 処 分 決 定 を 尊 重 し これに 従 った 第 三 争 点 に 対 する 判 断 一 争 点 1( 本 件 各 手 紙 の 著 作 物 性 )について 1 本 件 書 籍 は 被 告 EがGとの 交 際 を 中 心 に 執 筆 した 小 説 であり Gと 自 己 との 関 係 を 克 明 に 叙 述 することによって Gの 一 面 を 描 こうとする 創 作 意 図 の 下 に 執 筆 発 表 した 自 伝 的 な 告 白 小 説 である 本 件 書 籍 は 二 八 二 頁 からなり 序 第 一 章 家 族 の 歯 車 第 二 章 真 夏 の 破 局 第 三 章 奔 馬 への 旅 第 四 章 折 れた 帆 柱 跋 により 構 成 されている( 甲 一 二 ) 本 件 手 紙 1ないし10は 本 件 書 籍 第 三 章 奔 馬 への 旅 中 に 本 件 手 紙 11 ないし15は 第 四 章 折 れた 帆 柱 中 に それぞれ 掲 載 されている 本 件 各 手 紙 の 概 要 は 以 下 のとおりである( 甲 三 一 二 ) 本 件 手 紙 1には 被 告 Eから 送 られた 人 執 筆 の 小 説 に 対 する 返 事 等 が 本 件 手 紙 2には 被 告 Eからの 手 紙 に 対 する 返 事 等 が 本 件 手 紙 3には Gの 文 学 的 主 題 や 被 告 Eに 対 する 小 説 執 筆 上 の 注 意 等 が 本 件 手 紙 4には Gの 近 況 四 〇 歳 を 迎 える 心 境 等 が 本 件 手 紙 5には 被 告 Eが 執 筆 した 小 説 に 対 する 感 想 意 見 等 が 本 件 手 紙 6には Gのニューヨーク 滞 在 中 の 感 想 近 況 等 が 本 件 手 紙 7には 自 作 自 演 の 映 画 憂 国 に 関 する 所 感 等 が 本 件 手 紙 8には 被 告 Eの 住 む 熊 本 を 訪 問 すること 等 が 本 件 手 紙 9には 熊 本 行 きの 日 程 等 が 本 件 手 紙 10には 熊 本 滞 在 中 のホテルの 手 配 に 関 する 被 告 Eに 対 する 依 頼 等 が 本 件 手 紙 11には 熊 本 訪 問 の 感 想 等 が 本 件 手 紙 12には 被 告 Eへの 依 頼 等 が 本 件 手 紙 13には 被 告 Eから の 手 紙 に 対 する 返 事 近 況 等 が 本 件 手 紙 14には Gの 海 外 旅 行 中 の 近 況 等 が 本 件 手 紙 15には Gの 近 況 被 告 Eに 対 する 依 頼 等 が 簡 明 に 記 載 されている なお 本 件 手 紙 5の 全 文 を 掲 記 すると 以 下 のとおりである 前 略 御 作 はらから やつと 拝 読 しました 実 は 家 の 増 築 などで 身 辺 ゴタ し 仕 事 もゴタ なか ゆつくり 落 着 いて 拝 読 できず どうせなら 気 持 の 余 裕 のあるときに 熟 読 したはうがと 思 つてゐたので 遅 くなりました テーマのよく 消 化 された 短 篇 で よく 納 得 できるやうに 書 かれてゐます 性 格 描 写 としての 兄 弟 の 書 き 分 けもたしかな 筆 づかひで 特 に 冒 頭 の 弟 のせせつこましい 性 格 のエピソー ドの 積 み 重 ねなど 面 白 い しかしこの 作 品 で 不 満 なのは それ 以 上 のものがないことです おしまひに 急 に 姉 が 出 てくるのはいいが 肉 親 の 宿 命 と 愛 憎 が 性 的 嗜 好 に 端 的 に 出 てくるといふの はいいが かういふ 題 材 は 川 端 さん 式 にうんと 飛 躍 して 透 明 化 して 扱 ふか それ とも 逆 に うんと 心 理 的 生 理 的 に 掘 り 下 げて 執 拗 に 追 究 するか どちらかです 洋 子 が 隆 次 タイプと 性 的 にピタリと 合 ふといふのは 説 明 だけで いかに 合 ふか といふのが 文 学 的 表 現 の 一 等 むつかしいところで それをわからせて 実 感 させ るのが 文 学 だと 思 ひます それから 情 景 としては 飛 行 場 の 近 くといふところ 面 白 いのですが 肝 腎 の 飛 行 場 が 活 用 されてゐない 気 がします これはもつと 趣 深 く 使 へる 筈 です 文 章 について は 根 本 的 に 短 篇 の 文 章 といふ 問 題 を 考 へ 直 してほしいと 思 ひます これが 短 い 簡 単 な 話 なのにゴタ した 印 象 を 与 へるのは 文 章 のためと 自 然 主 義 的 描 写 法 の ためと もう 一 つは 月 並 な 言 ひ 廻 しのためです 13 頁 上 段 中 頃 の 月 の 描 写 の 月 並 さ 14 頁 下 段 の 男 神 云 々の 表 現 15 頁 上 段 の 欲 情 の 闇 赤 い 歓 喜 の 炎 恋 の 女 神 青 春 の 花 などの 安 つぽい 表 現 15 頁 下 段 の 舞 台 装 置 のやうな という
比 喩 16 頁 上 段 の( )の 中 の 月 並 な 感 想 など みなこの 作 品 の 味 をにぶく してゐます 御 再 考 を 促 したいと 思 ひます もつともつと 余 計 なものを 捨 てるこ と まづ 切 り 捨 てることから 学 ぶこと スッキリさせること それから 題 材 に 対 して 飛 躍 したスカッとした 視 点 を 持 つこと さういふことが 短 篇 を 書 く 上 でも つとも 大 切 だと 思 ひます 悪 口 を 並 べてしまひましたが 意 のあるところを 汲 みとつて 下 さい 次 の 作 品 を たのしみにしてゐます 匆 々 2 著 作 権 法 上 保 護 の 対 象 となる 著 作 物 とは 思 想 又 は 感 情 を 創 作 的 に 表 現 したも のであって 文 芸 学 術 美 術 又 は 音 楽 の 範 囲 に 属 するものであることを 要 し こ れをもって 足 りる 本 件 各 手 紙 は いずれも 被 告 Eとの 往 復 書 簡 であり 特 定 の 者 に 宛 てられ 特 定 の 者 を 読 み 手 として 書 かれたものであって 不 特 定 多 数 の 読 者 を 想 定 した 文 芸 作 品 とは 性 格 を 異 にする しかし 本 件 各 手 紙 には 単 に 時 候 の 挨 拶 返 事 謝 礼 依 頼 指 示 などの 事 務 的 な 内 容 のみが 記 載 されているのではなく Gの 自 己 の 作 品 に 対 する 感 慨 抱 負 被 告 Eの 作 品 に 対 する 感 想 意 見 折 々の 心 情 人 生 観 世 界 観 等 が 文 芸 作 品 とは 異 なり 飾 らない 言 葉 を 用 いて 述 べられている 本 件 各 手 紙 は いずれも Gの 思 想 又 は 感 情 を 個 性 的 に 表 現 したものであることは 明 らか である 以 上 のとおり 本 件 各 手 紙 には 著 作 物 性 がある よって Gは 本 件 各 手 紙 の 著 作 者 として 本 件 各 手 紙 に 係 る 公 表 権 及 び 複 製 権 を 有 していた 二 争 点 2( 不 法 行 為 の 成 否 損 害 額 )について 1 不 法 行 為 の 成 否 前 記 のとおりであるから 本 件 各 手 紙 が 掲 載 された 本 件 書 籍 を 出 版 した 被 告 らの 行 為 は 本 件 各 手 紙 に 係 る 原 告 らの 複 製 権 を 侵 害 する 行 為 に 該 当 し また Gが 生 存 しているとしたならばその 公 表 権 の 侵 害 となるべき 行 為 ( 著 作 権 法 六 〇 条 ) に 該 当 する 被 告 Eは 本 件 各 手 紙 が Gの 未 公 表 の 手 紙 であり これを 本 件 書 籍 に 掲 載 して 出 版 すれば 著 作 権 を 侵 害 することを 認 識 していたものと 認 められるから 右 複 製 権 の 侵 害 行 為 及 び 著 作 権 法 六 〇 条 の 規 定 に 違 反 する 行 為 をするにつき 故 意 又 は 過 失 があったといえる また 被 告 会 社 は 大 手 の 出 版 会 社 であり 被 告 Dは 被 告 会 社 の 第 一 出 版 局 長 の 職 にあって 出 版 活 動 に 従 事 していたのであるから 書 籍 を 出 版 するに 際 して 他 人 の 著 作 権 を 侵 害 することがないよう 注 意 すべき 義 務 があったと いえる しかるに 右 注 意 義 務 を 怠 ったのであるから 右 複 製 権 の 侵 害 及 び 著 作 権 法 六 〇 条 の 規 定 に 違 反 する 行 為 をするにつき 過 失 があったといえる したがって 被 告 らの 行 為 は 右 複 製 権 を 侵 害 し また 著 作 権 法 六 〇 条 の 規 定 に 違 反 し 共 不 法 行 為 を 構 成 する 2 損 害 額 そこで 被 告 らの 右 複 製 権 侵 害 及 び 著 作 権 法 六 〇 条 の 規 定 に 違 反 する 共 不 法 行 為 によって 生 じた 損 害 について 検 討 する 原 告 らに 生 じた 損 害 額 は 以 下 のとおり 算 定 するのが 相 当 である 被 告 会 社 は 本 件 書 籍 を 価 額 一 四 二 九 円 ( 消 費 税 を 除 く )で 約 九 万 冊 ( 九 万 〇 五 二 七 冊 )を 販 売 したこと その 販 売 総 額 は 約 一 億 三 〇 〇 〇 万 円 弱 であること ( 甲 一 二 乙 一 ) 書 籍 を 出 版 する 場 合 の 著 作 権 の 使 用 料 は 販 売 額 のおおむね 一 〇 パーセントと 解 するのが 相 当 であること さらに 本 件 書 籍 中 における 本 件 各 手 紙 の 占 める 分 量 的 割 合 Gの 執 筆 に 係 る 本 件 各 手 紙 の 本 件 書 籍 に 占 める 重 要 性 等 一 切 の 事 情 を 考 慮 すると 複 製 権 侵 害 によって 原 告 らに 生 じた 損 害 額 は 右 販 売 総 額 のおおむね 四 パーセント 弱 に 当 たる 五 〇 〇 万 円 と 認 めるのが 相 当 である よって 原 告 らそれぞれが 被 った 損 害 額 は 右 金 額 の 二 分 の 一 に 当 たる 二 五 〇 万 円 となる なお 原 告 らは 複 製 権 侵 害 による 損 害 は 被 告 会 社 が 本 件 書 籍 を 販 売 したこと による 利 益 額 を 基 礎 として 算 定 すべきであると 主 張 するが 原 告 ら 自 らは 書 籍 の 出 版 を 行 っていないことに 照 らして 採 用 できない さらに 著 作 権 法 六 〇 条 の 規 定 違 反 による 損 害 を 認 めることもできない 三 争 点 3( 名 誉 回 復 措 置 )について 前 記 のとおり 本 件 書 籍 を 出 版 した 被 告 らの 行 為 は Gが 生 存 しているとした ならばその 公 表 権 の 侵 害 となるべき 行 為 ( 著 作 権 法 六 〇 条 )に 該 当 する 行 為 であ る ところで 1 被 告 会 社 は 本 件 書 籍 を 出 版 するに 当 たり 平 成 一 〇 年 三 月 一 四 日 付 朝 日 新 聞 朝 刊 の 第 二 面 に 五 段 抜 きの 大 きさで 本 件 書 籍 の 広 告 をしたり 被
告 会 社 の 発 行 に 係 る 週 刊 文 春 の 月 一 二 日 号 と 月 一 九 日 号 に 延 べ 七 頁 にわ たる 特 集 記 事 を 掲 載 したり 月 二 六 日 号 の 週 刊 文 春 に 一 頁 ほとんど 全 部 を 使 って 全 面 広 告 を 行 ったりして 大 々 的 に 宣 伝 広 告 を 実 施 したこと( 甲 四 ないし 五 ( 枝 番 号 を 省 略 する 以 下 様 とする )) 2 原 告 らは 被 告 らに 対 し 平 成 一 〇 年 三 月 一 四 日 付 け 内 容 証 明 郵 便 によって 本 件 書 籍 の 出 版 は 著 作 権 を 侵 害 す る 旨 警 告 し 本 件 書 籍 の 出 版 の 中 止 既 に 発 行 された 本 件 書 籍 の 回 収 損 害 賠 償 並 びに 朝 日 新 聞 及 び 週 刊 文 春 等 本 件 書 籍 の 広 告 を 掲 載 した 出 版 物 への 謝 罪 広 告 の 掲 載 を 求 めたにもかかわらず 被 告 らは 原 告 らの 警 告 に 従 うことなく 著 作 権 法 六 〇 条 に 違 反 する 行 為 を 継 続 したこと( 甲 七 ) 3 本 件 書 籍 は 短 期 間 であるが 九 万 冊 を 超 える 部 数 が 販 売 されたこと 4 本 件 各 手 紙 は Gと 被 告 Eとの 間 で 個 人 的 に 交 わされた 私 的 な 手 紙 であり その 文 体 内 容 に 照 らし およそ 第 三 者 への 公 表 を 念 頭 に 置 かずに 書 かれたものであること 5 被 告 らは 今 日 に 至 るまで Gの 社 会 的 な 名 誉 声 望 を 回 復 するために 適 切 な 措 置 を 採 っていないこと 等 の 事 情 を 総 合 す ると Gの 社 会 的 な 名 誉 声 望 を 回 復 するためには 著 作 権 法 一 一 六 条 一 項 一 一 五 条 により 人 の 名 誉 回 復 のための 適 当 な 措 置 として 広 告 文 の 掲 載 を 命 ずること が 必 要 と 解 される そして 前 記 認 定 した 本 件 に 関 する 一 切 の 事 情 を 考 慮 すれば 名 誉 回 復 のために 必 要 な 範 囲 の 事 実 経 過 を 広 告 文 の 内 容 として 摘 示 告 知 すれば 足 りるものと 解 され る したがって 別 紙 広 告 目 録 ( 二 ) 二 記 載 の 内 容 の 広 告 文 を 目 録 一 記 載 の 新 聞 に 目 録 一 記 載 の 条 件 で 掲 載 するのを 相 当 と 解 する 四 以 上 のとおりであるから 原 告 らの 請 求 は 主 文 の 限 度 で 理 由 がある 東 京 地 方 裁 判 所 民 事 第 二 九 部 裁 判 長 裁 判 官 飯 村 敏 明 裁 判 官 八 木 貴 美 子 裁 判 官 石 村 智