項 番 2 平 成 21 年 ( 健 ) 第 71 号 平 成 22 年 2 月 26 日 裁 決 主 文 1 後 記 第 2の2 記 載 の 原 処 分 のうち 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 から 同 年 〇 月 〇 日 までの 期 間 について 傷 病 手 当 金 を 支 給 しないとした 部 分 を 取 り 消 す 2 その 余 の 本 件 再 審 査 請 求 を 棄 却 する 理 由 第 1 再 審 査 請 求 の 趣 旨 再 審 査 請 求 人 ( 以 下 請 求 人 という )の 再 審 査 請 求 の 趣 旨 は 後 記 第 2の2 記 載 の 原 処 分 を 取 り 消 すことを 求 めるということである 第 2 再 審 査 請 求 の 経 過 1 請 求 人 は 健 康 保 険 法 ( 以 下 法 という ) 上 の 健 康 保 険 組 合 であ る 〇 〇 健 康 保 険 組 合 ( 以 下 保 険 者 組 合 という )の 組 合 員 である 被 保 険 者 であった 者 であるが その 被 保 険 者 期 間 中 の 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 か ら 同 年 〇 月 〇 日 までの 期 間 ( 以 下 本 件 請 求 期 間 という ) 性 同 一 性 障 害 ( 以 下 当 該 疾 病 という )の 療 養 のため 労 務 に 服 することが できなかったとして 同 年 〇 月 〇 日 ( 受 付 ) 保 険 者 組 合 に 対 し 法 に よる 傷 病 手 当 金 ( 以 下 単 に 傷 病 手 当 金 という )の 支 給 を 申 請 し た 2 保 険 者 組 合 は 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 付 で 請 求 人 に 対 し 本 件 請 求 期 間 について 傷 病 手 当 金 は 療 養 の 給 付 をなさないこととした 疾 病 等 に ついて 被 保 険 者 が 自 費 で 手 術 を 施 し そのため 労 務 不 能 となった 場 合 に は これに 対 し 支 給 すべきではない こととされています ( 昭 和 4 年 1
6 月 29 日 保 理 第 1074 号 ) そのため 今 回 請 求 のあった 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 から 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 については 療 養 の 給 付 の 対 象 とならな い 疾 病 による 労 務 不 能 のため 傷 病 手 当 金 は 支 給 されません との 理 由 で 傷 病 手 当 金 を 支 給 しない 旨 の 処 分 ( 以 下 原 処 分 という )を した 3 請 求 人 は 原 処 分 を 不 服 として 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 ( 受 付 ) 〇 〇 社 会 保 険 事 務 局 社 会 保 険 審 査 官 ( 以 下 審 査 官 という )に 対 して 審 査 請 求 をしたが 同 日 から60 日 以 内 に 決 定 がないため 審 査 官 が 審 査 請 求 を 棄 却 したものとみなして 同 年 〇 月 〇 日 ( 受 付 ) 当 審 査 会 に 対 し 再 審 査 請 求 をした 不 服 の 理 由 は 審 査 請 求 書 及 び 再 審 査 請 求 書 の 当 該 部 分 をそのまま 掲 記 すると 次 のとおりである 略 4 なお 保 険 者 組 合 が 原 処 分 に 付 記 した 理 由 は 上 記 2に 記 載 したとお りであり 本 件 請 求 期 間 のすべてについて 療 養 の 給 付 の 対 象 となら ない 疾 病 による 労 務 不 能 のため 傷 病 手 当 金 は 支 給 されません という ものであったが 保 険 者 組 合 は 請 求 人 が 出 席 した 本 件 審 理 期 日 ( 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 )において 再 審 査 請 求 に 対 し 本 裁 決 書 添 付 別 紙 の 保 険 者 意 見 陳 述 書 記 載 のとおりの 意 見 を 述 べている それは 上 記 の 理 由 とは 必 ずしも 同 じではなく 単 にそれを 補 足 敷 延 しただけのものと 解 するのは 相 当 とはいえないから 保 険 者 組 合 は 上 記 の 理 由 を 保 険 者 意 見 陳 述 書 のように 変 更 し その 旨 を 本 件 審 理 期 日 に 出 席 していた 請 求 人 に 告 知 したことになるというべきである 変 更 後 の 不 支 給 の 理 由 ( 以 下 単 に 不 支 給 理 由 という )は こ れを 要 約 すると 次 のとおりである( 以 下 個 別 に 挙 げる 場 合 は 不 支 給 理 由 (1) 不 支 給 理 由 (2)の1 などという ) 2
(1) 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 から 同 月 〇 日 までの 期 間 ( 以 下 A 期 間 とい う )については 当 該 疾 病 による 療 養 のための 労 務 不 能 であるとは 認 めることができない (2) 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 から 同 年 〇 月 〇 日 までの 期 間 ( 以 下 B 期 間 と いう )については 請 求 人 が 〇 〇 を 出 国 して 〇 〇 国 へわたり 〇 月 〇 日 に 性 別 適 合 手 術 ( 以 下 当 該 疾 病 についての 手 術 療 法 とし ての 性 別 適 合 手 術 を 当 該 手 術 といい 請 求 人 が 受 けたこの 手 術 を 本 件 手 術 という )を 受 けたことによる 術 後 のリハビリを 含 めての 労 務 不 能 の 期 間 に 係 るものと 認 められるけれども 次 の 理 由 により 傷 病 手 当 金 を 支 給 することはできない 1 当 該 手 術 の 健 康 保 険 の 適 用 については 政 府 見 解 において 精 神 療 法 やホルモン 療 法 など ほかの 療 法 による 治 療 が 十 分 に 行 われ たにもかかわらず 治 療 効 果 に 限 界 があるといった 場 合 に 実 施 され るものと 認 識 するとされており( 以 下 これを 政 府 見 解 とい う ) 本 件 手 術 をこの 見 解 に 照 らしてみると それは ほかの 療 法 による 治 療 が 十 分 に 行 われたにもかかわらず 治 療 効 果 に 限 界 が あるといった 場 合 に 該 当 しているとは 認 められないから 健 康 保 険 は 適 用 されず 療 養 の 給 付 の 対 象 とはならないものと 考 えられる 2 また 本 件 手 術 は それを 受 ける 目 的 で 〇 〇 国 へわたって 施 行 さ れたものであることが 明 らかであるところ このような 治 療 目 的 で 海 外 へ 出 かけて 診 療 手 術 を 受 けた 場 合 の 療 養 費 については 健 康 保 険 は 適 用 されず 療 養 の 給 付 の 対 象 とはならないものと 解 されてい る 3 そして このような 療 養 の 給 付 の 対 象 とはならない 手 術 等 のため に 労 務 不 能 となった 場 合 の 傷 病 手 当 金 の 支 給 については 昭 和 4 年 6 月 29 日 保 理 第 1704 号 社 会 局 保 険 部 長 回 答 ( 以 下 昭 和 3
4 年 通 知 という )の 保 険 事 故 タル 疾 病 ノ 範 囲 ニ 属 セサル 疾 病 ノ 手 術 ヲ 為 シタル 為 労 務 ニ 服 シ 能 ハサリシ 者 ニ 対 スル 傷 病 手 当 金 ニ 関 スル 件 において 傷 病 手 当 金 は 支 給 しないこととされている 4 したがって 本 件 手 術 に 係 る 労 務 不 能 について 傷 病 手 当 金 を 支 給 することはできない 第 3 問 題 点 1 傷 病 手 当 金 の 支 給 については 法 第 99 条 第 1 項 に 被 保 険 者 が 療 養 のため 労 務 に 服 することができないときは その 労 務 に 服 することが できなくなった 日 から 起 算 して3 日 を 経 過 した 日 から 労 務 に 服 すること ができない 期 間 傷 病 手 当 金 を 支 給 する と 規 定 されている 2 本 件 は この 規 定 に 基 づく 請 求 人 の 傷 病 手 当 金 の 支 給 申 請 について 保 険 者 組 合 がこれを 不 支 給 とする 原 処 分 を 行 ったことに 対 する 再 審 査 請 求 であり 同 組 合 は 第 2の4 記 載 の 不 支 給 理 由 を 主 張 して 原 処 分 を 維 持 しているものと 解 されるから 本 件 の 問 題 点 は 上 記 の 規 定 に 照 らし この 不 支 給 理 由 を 是 認 して 原 処 分 を 適 法 妥 当 なものと 認 めることが できるかどうかである 第 4 審 査 資 料 ( 略 ) 第 5 当 審 査 会 の 判 断 1 (1)ないし(10) 略 (11) また 保 険 者 組 合 が 不 支 給 理 由 の 中 で 挙 げている 政 府 見 解 とは 平 成 15 年 7 月 17 日 の 参 議 院 法 務 委 員 会 における 質 疑 応 答 で 特 例 法 が 施 行 された 状 況 下 における 当 該 疾 病 に 係 る 治 療 費 等 の 健 康 保 険 適 用 の 問 題 について 政 府 参 考 人 が 答 弁 として 述 べた 見 解 を 指 すものと 思 料 されるところ その 具 体 的 内 容 は 次 のとおりである 4
性 同 一 障 害 に 対 する 治 療 でございますけれども 現 在 日 本 精 神 神 経 学 会 の 性 同 一 障 害 に 関 する 診 断 と 治 療 のガイドラインというものが ございまして それに 基 づきまして 実 施 をされているというふうに 承 知 をいたしております このガイドラインでございますが 精 神 療 法 を 第 一 段 階 といたしまして 第 二 段 階 にホルモン 療 法 手 術 療 法 が 第 三 段 階 ということでございます 精 神 療 法 につきましては 医 師 が 一 定 の 治 療 計 画 の 下 に 危 機 の 介 入 あるいは 社 会 適 応 能 力 の 向 上 を 図 るために 指 示 とか 助 言 などを 継 続 的 に 行 った 場 合 には 保 険 適 用 が 認 められているというところでございま す 第 二 段 階 でございますホルモン 療 法 につきましては 今 先 生 御 指 摘 ございましたけれども 現 在 のところ ホルモン 剤 が 性 同 一 障 害 に 対 する 効 能 について 薬 事 法 における 承 認 を 受 けておりません そうい うことでございますので ホルモン 療 法 の 保 険 適 用 は 今 のところ 認 め られていないというところでございます ( 中 略 ) 性 同 一 障 害 に 対 する 手 術 療 法 でございますけれども ガイドライン におきましても 第 三 段 階 と 位 置 付 けられております 精 神 療 法 やホルモン 療 法 など ほかの 療 法 による 治 療 が 十 分 にも 行 われたにもかかわらず 治 療 効 果 に 限 界 があるといった 場 合 に 実 施 さ れるものだという 認 識 をいたしておりますが これまでの 治 療 経 過 も 踏 まえまして 例 えば 治 療 上 やむを 得 ない 症 例 かどうか あるいは 手 術 に 用 いる 術 式 が 適 切 であったかどうか あるいは 医 療 機 関 の 倫 理 委 員 会 の 承 認 があったかどうかなどを 総 合 的 に 勘 案 した 上 で 保 険 適 用 について 個 別 に 慎 重 に 判 断 していく 必 要 があるというふうに 考 えてお ります 5
2 以 上 認 定 の 事 実 に 基 づき 本 件 の 問 題 点 である 保 険 者 組 合 の 主 張 する 不 支 給 理 由 を 是 認 することができるかどうかを 検 討 すると 次 のとおり である (1) 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 から 同 月 〇 日 までのA 期 間 について 請 求 人 は 当 時 a 社 に 勤 めていたところ A 期 間 の 勤 務 時 間 はゼロ であり 同 期 間 同 社 を 欠 勤 していたことは 明 らかであるが それは 請 求 人 の 医 療 機 関 への 受 診 状 況 等 にかんがみると 当 該 疾 病 の 治 療 の ための 医 療 機 関 への 受 診 や 医 師 の 指 示 による 療 養 の 必 要 のために 余 儀 なくされたものというよりは 主 として 同 月 〇 日 に 控 えた 〇 〇 国 への 渡 航 と 同 国 で 受 けることを 予 定 した 当 該 手 術 のための 準 備 の 必 要 によるものであったとうかがわれる したがって A 期 間 について は 請 求 人 が 当 該 疾 病 の 療 養 のためにa 社 における 労 務 に 服 すること ができなかったことは 認 めることはできないというべきである 不 支 給 理 由 (1)は 相 当 であり これを 是 認 することができる (2) 平 成 〇 年 〇 月 〇 日 から 同 年 〇 月 〇 日 までのB 期 間 について ア 請 求 人 が B 期 間 本 件 手 術 による 療 養 のため 労 務 に 服 すること ができなかったことについては 保 険 者 組 合 も 認 めているところで あり 1で 認 定 した 事 実 経 過 に 照 らしても これを 是 認 するのが 相 当 である イ 問 題 は 不 支 給 理 由 (2)の1 及 び2の 当 否 であるが 当 審 査 会 は いずれも 相 当 ではないものと 判 断 する その 理 由 は 次 のとおりで ある (ア) 不 支 給 理 由 (2)の1について i これは 本 件 手 術 は 当 該 手 術 の 健 康 保 険 の 適 用 に 関 する 政 府 見 解 に 照 らすと いまだ ほかの 療 法 による 治 療 が 十 分 に 行 われたにもかかわらず 治 療 効 果 に 限 界 があるといった 場 6
合 に 該 当 しているとはいえないから 療 養 の 給 付 の 対 象 と はならず 昭 和 4 年 通 知 は 療 養 の 給 付 の 対 象 とはならない 手 術 等 のために 労 務 不 能 となった 場 合 については 傷 病 手 当 金 は 支 給 しないとしているから 本 件 手 術 に 係 る 労 務 不 能 につ いては 傷 病 手 当 金 を 支 給 することはできない とするもので あり 本 件 手 術 をもって 療 養 の 給 付 の 対 象 と 認 めることがで きないことをその 前 提 とするものである ⅱ 政 府 見 解 については 1の(11)に 示 したとおりであり それ 自 体 としては 頷 けるところである また ほかの 療 養 による 治 療 が 十 分 にも 行 われたにもかかわらず 治 療 効 果 に 限 界 が あるといった 場 合 に 当 たるとして 治 療 上 やむを 得 ない ものといえるかどうかも 当 該 疾 病 に 係 る 性 同 一 性 障 害 者 の 個 別 的 具 体 的 条 件 いかんによって 必 ずしも 同 じではないで あろうが 請 求 人 の 場 合 についていえば 請 求 人 は 生 物 学 的 には 男 子 として 出 生 したが 心 理 的 には 女 子 であるとの 持 続 的 な 確 信 を 持 ち 自 己 を 身 体 的 及 び 社 会 的 に 女 子 に 適 合 さ せようとする 意 思 を 有 し それを 現 実 化 するために 精 神 療 法 及 びホルモン 療 法 を 経 て 精 神 療 法 に 係 る 医 師 のアドバイ スも 受 けた 上 本 件 手 術 を 受 けるに 至 ったものであるところ 自 己 を 社 会 的 に 女 子 に 適 合 させるためには 例 えば 普 段 の 生 活 においてはもとより プール 海 水 浴 場 温 泉 場 等 の 公 衆 浴 場 などにおいても 周 囲 から 女 子 と 認 識 されて 違 和 感 なく 受 け 入 れられるようになるだけでなく 特 に 特 例 法 が 公 布 施 行 されている 状 況 下 においては 同 法 による 性 別 の 取 扱 いの 変 更 の 審 判 を 受 け 民 法 その 他 の 法 令 の 規 定 の 適 用 上 も 女 子 と 扱 われるのでなければ 十 分 とはいえないであろ 7
うことが 明 らかである しかるところ 1の(10)でも 示 した ように 特 例 法 は 第 3 条 第 1 項 で 家 庭 裁 判 所 は 性 同 一 性 障 害 者 であって 次 の 各 号 のいずれにも 該 当 するものについ て その 者 の 請 求 により 性 別 の 取 扱 いの 変 更 の 審 判 をする ことができる と 規 定 し 第 4 号 に 生 殖 腺 がないこと 又 は 生 殖 腺 の 機 能 を 永 続 的 に 欠 く 状 態 にあること 第 5 号 に その 身 体 について 他 の 性 別 に 係 る 身 体 の 性 器 に 係 る 部 分 に 近 似 する 外 観 を 備 えていること を 挙 げており 請 求 人 が こ の 第 4 号 及 び 第 5 号 の 挙 げる 要 件 を 満 たして 性 別 の 取 扱 い の 変 更 の 審 判 を 受 けるためには 当 該 疾 病 に 対 する 精 神 療 法 及 びホルモン 療 法 を 受 けるだけでは 足 りず 当 該 手 術 を 施 行 されなければならなかったことは 明 らかである そして 同 条 第 2 項 は 前 項 の 請 求 をするには 同 項 の 性 同 一 性 障 害 者 に 係 る 前 条 の 診 断 の 結 果 並 びに 治 療 の 経 過 及 び 結 果 その 他 の 厚 生 労 働 省 令 で 定 める 事 項 が 記 載 された 医 師 の 診 断 書 を 提 出 しなければならない と 規 定 しているところ 請 求 人 は 診 断 書 を 同 項 所 定 の 性 別 変 更 診 断 書 として 提 出 して 性 別 の 取 扱 いの 変 更 の 審 判 を 申 し 立 て 〇 〇 家 裁 は これを 認 容 する 性 別 変 更 審 判 を 行 っているのである ⅲ 以 上 を 総 合 勘 案 するならば 請 求 人 の 場 合 1の(2) 及 び(3) で 認 定 した 精 神 療 法 及 びホルモン 療 法 が 当 該 疾 病 に 対 する 治 療 として 十 分 に 行 われたことになるか 否 かについては い ろいろな 評 価 があり 得 ないではないかもしれないが これら の 療 法 による 治 療 をさらに 受 けたところで 請 求 人 の 望 む 状 態 が 現 出 されることはないのであり また 診 断 書 が 性 別 変 更 診 断 書 としての 適 格 を 有 するものとされ 1の(10)でその 内 8
容 として 示 した 精 神 療 法 及 びホルモン 療 法 に 係 る 治 療 経 過 等 も 是 とされた 上 で 性 別 変 更 審 判 がなされていることに 照 ら すならば 本 件 手 術 は ほかの 療 法 による 治 療 が 十 分 にも 行 われたにも かかわら ず 治 療 効 果 に 限 界 があるとい った 場 合 に 当 たり 治 療 上 やむを 得 ない ものであったと 認 める のが 相 当 である したがって 本 件 手 術 は それ 自 体 として は 健 康 保 険 の 適 用 のある 療 養 の 給 付 の 対 象 となるものとい うべきである ⅳ 不 支 給 理 由 (2)の1は 本 件 手 術 が 療 養 の 給 付 の 対 象 となら ないことを 前 提 とする 点 において 理 由 がない なお 不 支 給 理 由 (2)の3で 援 用 されている 昭 和 4 年 通 知 は 例 えば 美 容 整 形 手 術 など 療 養 の 給 付 の 対 象 とならない 手 術 のため 労 務 不 能 となった 場 合 における 傷 病 手 当 金 の 支 給 に 関 するもの と 解 するの が 相 当 で あるから もと より それは 上 記 の 認 定 判 断 を 妨 げるものではない (イ) 不 支 給 理 由 (2)の2について ⅰ 治 療 を 目 的 として 海 外 に 出 かけて 診 療 手 術 を 受 けた 場 合 その 診 療 手 術 については それ 自 体 が 療 養 の 給 付 の 対 象 と なり 得 るものであっても 健 康 保 険 は 適 用 されず 療 養 の 給 付 の 対 象 とはならないものと 解 されている これは 法 の 原 則 的 一 般 的 解 釈 運 用 としては 例 えば 療 養 の 給 付 の 対 象 とされており 我 が 国 でも 容 易 に 受 けられる 手 術 を 殊 更 に 海 外 に 出 かけて 受 けたような 場 合 を 考 えると もっともなこ とと 思 料 されるところである ⅱ しかしながら 本 件 における 請 求 人 の 場 合 当 該 手 術 を 受 け なければ 特 例 法 による 審 判 によって 性 別 の 取 扱 いの 変 更 を 9
図 ることが 不 可 能 であり しかも 我 が 国 には 当 該 手 術 の 施 行 を 標 榜 している 医 療 機 関 が 全 国 的 に 見 ても 数 箇 所 といった 程 度 で 極 めて 少 なく その 生 活 状 態 等 に 照 らすと 請 求 人 が 我 が 国 の 医 療 機 関 を 受 診 して 一 定 期 間 にわたって 事 前 に 必 要 とされる 治 療 等 を 受 けた 上 当 該 手 術 を 受 けることは 極 め て 困 難 で それでもなお 我 が 国 の 医 療 機 関 で 手 術 を 受 けるべ きであったというのは 事 実 上 当 該 手 術 を 受 けることを 諦 めることを 余 儀 なくさせるものであったというべき 事 情 が 存 したものと 認 めるのが 相 当 であり このような 場 合 について も 本 件 手 術 は それを 目 的 として 〇 〇 国 へ 出 かけて 受 けた ものであるから 療 養 の 給 付 の 対 象 とはならないとの 一 事 のみ をもって それによる 療 養 のための 労 務 不 能 についても 傷 病 手 当 金 を 支 給 することができないと 解 するのは 法 の 解 釈 運 用 として 些 か 形 式 的 硬 直 的 にすぎ 相 当 ではないとい うべきである 本 件 手 術 に 係 る 費 用 について それをいわゆ る 海 外 療 養 費 として 扱 い 法 による 療 養 の 給 付 として 支 給 す ることができるかどうかはさておき 少 なくとも 傷 病 手 当 金 の 関 係 では 本 件 手 術 による 療 養 のため 労 務 に 服 すること ができなかったと 認 められるB 期 間 について これを 支 給 す べきものと 解 するのが 相 当 である 不 支 給 理 由 (2)の2は 理 由 がない (ウ) したがって 不 支 給 理 由 (2)の1 及 び2は これを 是 認 するこ とができない (3) 以 上 のとおりであるから 原 処 分 は A 期 間 に 係 る 部 分 は 相 当 であ るが B 期 間 に 係 る 部 分 は 相 当 でない 3 よって 原 処 分 は A 期 間 に 係 る 部 分 は 相 当 であるが B 期 間 に 係 る 10
部 分 は 相 当 ではないからこれを 取 り 消 し 本 件 再 審 査 請 求 のうちA 期 間 に 係 る 部 分 は 理 由 がないからこれを 棄 却 することとし 主 文 のとおり 裁 決 する 11