第 2 回 社 会 保 険 料 労 働 保 険 料 の 賦 課 対 象 となる 報 酬 等 の 範 囲 に 関 する 検 討 会 平 成 24 年 9 月 20 日 資 料 1 通 勤 手 当 について
1 これまでの 通 勤 に 要 する 費 用 に 関 する 考 え 方 では 通 勤 手 当 の 金 額 が 実 費 弁 償 的 に 算 定 される 場 合 でも それは 通 常 使 用 者 が 負 担 すべきものとして 整 理 される 出 張 の 旅 費 等 と 異 なり あくまでも 賃 金 の 一 部 として 整 理 されている 税 制 との 賦 課 ベースの 違 いについては 資 料 3 参 照 保 険 料 の 算 定 対 象 からのみ 外 すことの 論 点 は 後 述 1. 通 勤 手 当 の 性 格 について 通 勤 手 当 について 通 勤 に 要 する 費 用 を 支 弁 するために 支 給 される 手 当 であり 労 働 の 対 償 として 支 払 われるものとして 労 働 基 準 法 上 の 賃 金 の 一 部 として 整 理 されている 労 働 基 準 法 の 規 定 は 参 考 1 なお 最 低 賃 金 においては 算 定 対 象 を 基 本 的 な 賃 金 に 限 定 すると 言 う 考 え 方 から 通 勤 手 当 を 含 む 各 種 手 当 は 最 低 賃 金 の 算 定 対 象 から 外 れている ( 参 考 2) 通 勤 に 要 する 費 用 通 勤 に 要 する 費 用 は 使 用 者 が 支 給 することは 義 務 付 けられておらず 使 用 者 が 負 担 しなければならないという 法 律 はない ( 通 勤 手 当 の 支 払 いを 強 制 する 法 律 はない ) 通 勤 手 当 と 旅 費 の 違 い 通 勤 手 当 と 異 なり 旅 費 は 通 常 使 用 者 が 負 担 すべきものとして 現 物 又 は 実 費 弁 償 で 支 給 されることから 労 働 の 対 償 としての 賃 金 の 一 部 にはならない 通 勤 手 当 に 関 する 支 給 の 状 況 就 労 条 件 総 合 調 査 (H22)によれば 30 人 以 上 の 企 業 で91.6%で 支 給 されている なお 過 去 の 調 査 からは 91.3%(H17) 86.6%(H11)と 支 給 割 合 が 上 昇 している 通 勤 手 当 の 支 給 については 全 額 支 払 われる 企 業 上 限 がある 企 業 定 期 券 等 で 現 物 支 給 される 企 業 新 幹 線 通 勤 制 度 がある 企 業 など 様 々な 実 態 がある
( 参 考 1) 労 働 基 準 法 上 の 賃 金 に 関 する 規 定 ( 抄 ) 第 十 一 条 この 法 律 で 賃 金 とは 賃 金 給 料 手 当 賞 与 その 他 名 称 の 如 何 を 問 わず 労 働 の 対 償 として 使 用 者 が 労 働 者 に 支 払 うすべてのものをいう 第 十 二 条 この 法 律 で 平 均 賃 金 とは これを 算 定 すべき 事 由 の 発 生 した 日 以 前 三 箇 月 間 にその 労 働 者 に 対 し 支 払 われた 賃 金 の 総 額 を その 期 間 の 総 日 数 で 除 した 金 額 をいう ただし その 金 額 は 次 の 各 号 の 一 によつて 計 算 した 金 額 を 下 つてはならない 一 賃 金 が 労 働 した 日 若 しくは 時 間 によつて 算 定 され 又 は 出 来 高 払 制 その 他 の 請 負 制 によつて 定 められた 場 合 においては 賃 金 の 総 額 をその 期 間 中 に 労 働 した 日 数 で 除 した 金 額 の 百 分 の 六 十 二 賃 金 の 一 部 が 月 週 その 他 一 定 の 期 間 によつて 定 められた 場 合 においては その 部 分 の 総 額 をその 期 間 の 総 日 数 で 除 した 金 額 と 前 号 の 金 額 の 合 算 額 2 前 項 の 期 間 は 賃 金 締 切 日 がある 場 合 においては 直 前 の 賃 金 締 切 日 から 起 算 する 3 前 二 項 に 規 定 する 期 間 中 に 次 の 各 号 のいずれかに 該 当 する 期 間 がある 場 合 においては その 日 数 及 びその 期 間 中 の 賃 金 は 前 二 項 の 期 間 及 び 賃 金 の 総 額 から 控 除 する 一 業 務 上 負 傷 し 又 は 疾 病 にかかり 療 養 のために 休 業 した 期 間 二 産 前 産 後 の 女 性 が 第 六 十 五 条 の 規 定 によつて 休 業 した 期 間 三 使 用 者 の 責 めに 帰 すべき 事 由 によつて 休 業 した 期 間 四 育 児 休 業 介 護 休 業 等 育 児 又 は 家 族 介 護 を 行 う 労 働 者 の 福 祉 に 関 する 法 律 ( 平 成 三 年 法 律 第 七 十 六 号 ) 第 二 条 第 一 号 に 規 定 する 育 児 休 業 又 は 同 条 第 二 号 に 規 定 する 介 護 休 業 ( 同 法 第 六 十 一 条 第 三 項 ( 同 条 第 六 項 において 準 用 する 場 合 を 含 む )に 規 定 する 介 護 をするための 休 業 を 含 む 第 三 十 九 条 第 八 項 において 同 じ )をした 期 間 五 試 みの 使 用 期 間 4 第 一 項 の 賃 金 の 総 額 には 臨 時 に 支 払 われた 賃 金 及 び 三 箇 月 を 超 える 期 間 ごとに 支 払 われる 賃 金 並 びに 通 貨 以 外 のもので 支 払 われた 賃 金 で 一 定 の 範 囲 に 属 しないものは 算 入 しない 5 賃 金 が 通 貨 以 外 のもので 支 払 われる 場 合 第 一 項 の 賃 金 の 総 額 に 算 入 すべきものの 範 囲 及 び 評 価 に 関 し 必 要 な 事 項 は 厚 生 労 働 省 令 で 定 める 6 雇 入 後 三 箇 月 に 満 たない 者 については 第 一 項 の 期 間 は 雇 入 後 の 期 間 とする 7 日 日 雇 い 入 れられる 者 については その 従 事 する 事 業 又 は 職 業 について 厚 生 労 働 大 臣 の 定 める 金 額 を 平 均 賃 金 とする 8 第 一 項 乃 至 第 六 項 によつて 算 定 し 得 ない 場 合 の 平 均 賃 金 は 厚 生 労 働 大 臣 の 定 めるところによる 2 ( 賃 金 の 支 払 ) 第 二 十 四 条 賃 金 は 通 貨 で 直 接 労 働 者 に その 全 額 を 支 払 わなければならない ただし 法 令 若 しくは 労 働 協 約 に 別 段 の 定 めがある 場 合 又 は 厚 生 労 働 省 令 で 定 める 賃 金 について 確 実 な 支 払 の 方 法 で 厚 生 労 働 省 令 で 定 めるものによる 場 合 においては 通 貨 以 外 のもので 支 払 い また 法 令 に 別 段 の 定 めが ある 場 合 又 は 当 該 事 業 場 の 労 働 者 の 過 半 数 で 組 織 する 労 働 組 合 があるときはその 労 働 組 合 労 働 者 の 過 半 数 で 組 織 する 労 働 組 合 がないときは 労 働 者 の 過 半 数 を 代 表 する 者 との 書 面 による 協 定 がある 場 合 においては 賃 金 の 一 部 を 控 除 して 支 払 うことができる 2 賃 金 は 毎 月 一 回 以 上 一 定 の 期 日 を 定 めて 支 払 わなければならない ただし 臨 時 に 支 払 われる 賃 金 賞 与 その 他 これに 準 ずるもので 厚 生 労 働 省 令 で 定 める 賃 金 ( 第 八 十 九 条 において 臨 時 の 賃 金 等 という )については この 限 りでない
( 参 考 2) 最 低 賃 金 における 通 勤 手 当 の 取 扱 い 最 低 賃 金 法 では 使 用 者 に 最 低 賃 金 の 適 用 を 受 ける 労 働 者 に 対 し その 最 低 賃 金 額 以 上 の 賃 金 を 支 払 うことを 求 めている 最 低 賃 金 の 実 効 的 な 効 果 を 確 保 するためには 最 低 賃 金 の 対 象 となる 賃 金 は 基 本 的 な 賃 金 に 限 定 する 必 要 があることから 賞 与 や 割 増 賃 金 など いわゆる 付 加 的 な 賃 金 は 最 低 賃 金 法 第 4 条 第 3 項 において 最 低 賃 金 の 対 象 となる 賃 金 から 除 外 する こととしている 同 法 第 4 条 第 3 項 第 3 号 で 除 外 される 賃 金 については 各 地 方 最 低 賃 金 審 議 会 で 最 低 賃 金 を 決 定 する 際 に 最 低 賃 金 の 対 象 となる 賃 金 からは 精 皆 勤 手 当 通 勤 手 当 家 族 手 当 を 除 外 することが 一 般 化 している < 参 考 最 低 賃 金 法 第 4 条 第 3 項 > 3 次 に 掲 げる 賃 金 は 前 二 項 に 規 定 する 賃 金 に 算 入 しない 一 一 月 をこえない 期 間 ごとに 支 払 われる 賃 金 以 外 の 賃 金 で 厚 生 労 働 省 令 で 定 めるもの 例 : 結 婚 手 当 賞 与 など 二 通 常 の 労 働 時 間 又 は 労 働 日 の 賃 金 以 外 の 賃 金 で 厚 生 労 働 省 令 で 定 めるもの 例 : 休 日 割 増 賃 金 など 三 当 該 最 低 賃 金 において 算 入 しないことを 定 める 賃 金 精 皆 勤 手 当 通 勤 手 当 家 族 手 当 3
2. 賃 金 の 一 部 である 通 勤 手 当 を 保 険 料 の 算 定 対 象 から 除 外 することについて < 理 論 上 の 課 題 > 現 在 賃 金 であるのに 保 険 料 算 定 対 象 に 含 まれていないものはない 通 勤 手 当 だけ を 算 定 対 象 から 外 すことについては その 根 拠 他 の 手 当 との 違 い 実 費 弁 償 的 でない( 上 限 付 きや 定 額 などの) 通 勤 手 当 の 整 理 通 勤 手 当 が 支 払 われない 会 社 に 勤 務 する 従 業 員 との 公 平 などの 整 理 が 必 要 なお 所 得 税 法 においては 通 勤 手 当 は 給 与 所 得 者 に 対 して 支 給 される 通 勤 手 当 は 通 勤 に 要 する 費 用 に 充 てられる 実 費 弁 償 的 なものと 考 え 方 から 通 常 必 要 と 認 められる 範 囲 までは 非 課 税 所 得 と 整 理 されている < 財 政 上 の 課 題 > 保 険 料 賦 課 ベースが 小 さくなり 保 険 料 収 入 が 減 少 その 影 響 により 保 険 料 賦 課 と 給 付 が 直 接 には 連 動 しない 制 度 給 付 においては 保 険 料 率 の 引 き 上 げが 必 要 となる 保 険 料 賦 課 と 給 付 が 直 接 連 動 する( 保 険 料 賦 課 標 準 となった 報 酬 ( 賃 金 ) 額 を 基 礎 に 給 付 額 が 算 定 される) 制 度 給 付 においては 給 付 内 容 の 算 定 の 基 礎 となる 標 準 報 酬 又 は 賃 金 日 額 が 減 少 することで 給 付 内 容 が 低 下 する 労 災 保 険 雇 用 保 険 において 給 付 の 際 の 賃 金 日 額 を 単 純 に 引 き 下 げれば 給 付 内 容 も 低 下 する 労 災 保 険 は 労 働 基 準 法 上 の 使 用 者 の 災 害 補 償 責 任 を 担 保 する 役 割 を 果 たしていることに 留 意 が 必 要 医 療 保 険 においても 標 準 報 酬 日 額 を 元 に 支 給 される 傷 病 手 当 金 出 産 手 当 金 は 低 下 する 4 < 社 会 的 影 響 の 課 題 > 企 業 規 模 業 種 所 得 水 準 などによる 通 勤 手 当 の 支 給 状 況 の 違 いによる 影 響 の 評 価 ( 一 般 的 には 大 企 業 から 中 小 企 業 へ 負 担 が 移 転 すると 考 えられる )
5 ( 参 考 3) 所 得 税 法 において 通 勤 手 当 を 賦 課 対 象 から 外 している 趣 旨 通 勤 手 当 については 昭 和 41 年 の 改 正 前 においても 少 額 な 現 物 給 与 は 強 いて 追 求 しないとす る 考 え 方 ないしは 勤 務 に 伴 う 実 費 弁 償 的 な 性 質 を 有 する 物 であるとの 考 え 方 のもとに 従 来 か ら 国 税 庁 の 取 扱 通 達 において 一 定 の 部 分 を 課 税 しないこととされていたのであるが この 取 扱 いにおいて 一 定 の 金 額 以 下 の 部 分 を 非 課 税 とし 基 礎 控 除 の 概 念 を 取 り 入 れていることは 免 税 思 想 に 通 ずる 少 額 不 追 求 の 考 え 方 に 即 応 していないこと ( 略 ) 等 の 理 由 から これを 法 制 化 すべきであるとする 意 見 が 従 来 から 強 かった また 昭 和 31 年 から 国 家 公 務 員 にも 通 勤 手 当 が 支 給 されることとなり 一 般 的 に 通 勤 用 定 期 乗 車 券 ないしはこれの 購 入 代 価 としての 通 勤 手 当 の 支 給 が 社 会 慣 行 化 されて 給 与 所 得 者 の 殆 ど がその 支 給 を 受 けるようになった ( 昭 和 41 年 の 人 事 院 調 査 では 全 給 与 所 得 者 のうちの89% が 通 勤 手 当 の 支 給 を 受 けている )これらのことから 昭 和 41 年 の 税 制 改 正 で 給 与 所 得 者 に 対 して 支 給 される 通 勤 手 当 は 通 勤 に 要 する 費 用 に 充 てられる 実 費 弁 償 的 な 物 と 考 え 一 般 の 通 勤 者 について 通 常 必 要 と 認 められる 範 囲 内 のものは 非 課 税 とすることを 所 得 税 法 において 明 定 したものである - コンメンタール 所 得 税 法