11 特 集 国 士 舘 大 学 における 市 民 マラソン 大 会 での 救 護 活 動 について モバイルAED 隊 に 関 する 報 告 Aid work by Kokushikan University at a municipal marathon: A report on the Mobile AED(automated external defibrillator)team 前 住 智 也 *, 田 中 秀 治 ** Tomoya MAEZUMI* and Hideharu TANAKA** はじめに 厚 生 労 働 省 から 示 された 健 康 日 本 21 にて 健 康 維 持 増 進 ひいては 生 活 習 慣 病 を 減 らすため に 国 民 をあげてスポーツを 行 うことが 勧 められて いる これによって 全 国 で 国 民 全 員 に 運 動 をさせ 健 康 を 維 持 させるための 医 療 健 康 政 策 と 体 育 健 康 をすすめるための 運 動 教 育 政 策 が 融 合 し 進 めら れることになった 本 邦 では 週 に2 回 以 上 ジョギ ングをする 人 口 は 215 万 人 程 度 を 言 われており 1) 市 民 マラソンは 年 間 で 約 1,500 レース 開 催 されて いるとの 報 告 がある このような 健 康 運 動 政 策 の 実 施 に 伴 い 臨 床 研 究 分 野 においても 多 くの 問 題 が 発 生 している 国 士 舘 大 学 は 胎 児 ( 妊 婦 の 健 康 )をはじめ 幼 児 から 高 齢 者 にいたるまでの 発 育 や 発 達 の 特 性 に あった 体 育 スポーツ 活 動 や 教 育 的 活 動 の 実 践 日 常 生 活 からスポーツ 活 動 中 にいたるまでの 救 急 医 療 体 制 の 整 備 一 般 市 民 に 対 する 心 肺 蘇 生 法 の 普 及 等 の 活 動 を 行 うために 附 置 研 究 所 としてウエ ルネス リサーチセンターを 設 置 した 体 育 学 部 では 体 育 健 康 分 野 の 豊 富 な 競 技 デー タのみならず スポーツ 医 科 学 科 が 設 置 されてか らは スポーツ 活 動 中 にいたるまでの 救 急 医 療 体 制 の 整 備 一 般 市 民 に 対 する 心 肺 蘇 生 法 の 普 及 等 の 活 動 などの 豊 富 なデータを 研 究 成 果 として 国 士 舘 大 学 の 教 育 へフィードバックすると 共 に 企 業 や 教 育 現 場 などで 求 められている 新 たな 機 器 の 開 発 教 育 方 法 開 発 指 導 者 及 び 運 営 者 の 育 成 など 健 康 に 暮 らしていける 社 会 づくりに 貢 献 するため の 総 合 的 研 究 機 関 として 活 発 に 活 動 している と くに スポーツ 大 会 イベントへの 救 護 活 動 は 2006 年 に 行 われた 東 京 マラソンにおける AED を 用 いたマラソンランナーの 救 命 例 は 国 士 舘 大 学 に スポーツ 医 科 学 科 ありと 国 内 外 に 広 くその 名 を 広 める 結 果 となった 本 稿 では ウエルネス リサーチセンターにお ける 市 民 マラソンの 救 護 体 制 の 整 備 によって 得 ら れた 種 々のデータを 分 析 報 告 し これからの 市 民 マラソンの 救 護 体 制 の 在 り 方 について 言 及 す る 救 護 にあたった 市 民 マラソン 大 会 の 詳 細 2009 年 ウエルネス リサーチセンターへの 依 頼 により 救 護 活 動 を 行 ったスポーツ 大 会 やイベ ント 数 は 1 月 1 日 から 12 月 31 日 までの 間 で 33 * 国 士 舘 大 学 大 学 院 スポーツ システム 研 究 科 (Graduate School of Sport Systems, Kokushikan University) ** 国 士 舘 大 学 ウエルネス リサーチセンター(Wellness Research Center, Kokushikan University)
12 前 住 田 中 大 会 あった その 内 訳 をみると 市 民 マラソン 大 会 (フルマラソン ハーフマラソン 10km ロー ドレース 山 岳 マラソン 駅 伝 を 含 む)が13 大 会 サッカー 大 会 が 5 大 会 山 中 をトレイルランニン グ マウンテンバイク カヤックにて 競 争 し 順 位 を 競 うアドベンチャーレースが4 大 会 自 転 車 レ ース(サイクリングイベント 含 む)が4 大 会 ウ ォーキングイベントが3 大 会 お 祭 りが2つ 格 闘 技 大 会 が1 大 会 複 合 スポーツ 大 会 が1 大 会 で あった ( 図 1) 救 護 活 動 を 行 ったスポーツ 大 会 やイベントを 月 別 に 見 てみると 11 月 が 最 も 多 く 7 回 であった 季 節 で 見 てみると 秋 が 最 も 多 く 次 に 春 が 多 かっ た 夏 と 冬 は 同 程 度 の 数 であった ( 図 2) 開 催 地 域 を 都 道 府 県 別 にみると 関 東 圏 を 大 部 分 が 占 めている その 内 訳 は 東 京 都 が 18 大 会 山 梨 県 が4 大 会 静 岡 県 が4 大 会 神 奈 川 県 が3 大 会 茨 城 県 が1 大 会 千 葉 県 が1 大 会 栃 木 県 が 1 大 会 福 島 県 が1 大 会 であった ( 図 3) 今 回 はその 中 で 国 士 舘 大 学 の 救 護 の 代 名 詞 とも 図 1 国 士 舘 大 学 ウエルネス リサーチセンターにて 救 護 行 ったスポーツ イベント 活 動 図 3 救 護 活 動 実 施 都 道 府 県 別 割 合 図 2 月 別 にみたスポーツ 大 会 イベントでの 救 護 活 動 数
国 士 舘 大 学 における 市 民 マラソン 大 会 での 救 護 活 動 について モバイル AED 隊 に 関 する 報 告 13 言 えるマラソン 救 護 活 動 その 中 でも 今 まで 数 多 くの 心 肺 停 止 となったランナーに AED を 使 用 し 救 命 活 動 を 行 ったモバイル AED 隊 について 報 告 する 市 民 マラソンにおける 心 肺 停 止 の 現 状 前 述 したように 厚 生 労 働 省 から 示 された 健 康 日 本 21 にて 健 康 維 持 増 進 ひいては 生 活 習 慣 病 を 減 らすために 国 民 をあげてスポーツを 行 う ことが 勧 められている これをうけて 本 邦 では 週 に 2 回 以 上 ジョギングをする 人 口 は 215 万 人 程 度 を 言 われており 1) 市 民 マラソンは 年 間 で 約 1,500 レース 開 催 されているとの 報 告 がある 一 方 新 聞 やインターネットで 調 査 をすると 1990 年 から 2008 年 の 18 年 の 間 に 実 に 69 名 の 一 般 市 民 がマラソン 中 に 心 肺 停 止 になったことが 報 道 されている これらの 死 亡 原 因 のほとんどが 心 疾 患 であり 突 然 の 心 停 止 は 心 室 細 動 である といわれている この 心 室 細 動 の 治 療 に 最 も 有 効 なのが 自 動 体 外 式 除 細 動 器 いわゆる AED である 心 室 細 動 に 対 する 除 細 動 は1 分 遅 れるごとに 救 命 率 が7 ~ 10% 低 下 する 2) ため 倒 れてからすぐに 患 者 の 元 に 駆 けつけて 早 期 に 除 細 動 を 行 わなければな らない そのために 現 在 では 30 万 台 をこえる AED が 設 置 されてきた なぜならば 119 番 通 報 をして 救 急 車 を 要 請 してから 実 際 に 救 急 車 が 到 着 するまでの 時 間 は 平 成 20 年 の 段 階 で 7.7 分 と 報 告 されている 3) しかし 倒 れてから 電 話 をするま での 時 間 救 急 車 が 現 場 に 着 いてから 救 急 隊 が 患 者 の 倒 れているところまで 来 る 時 間 救 急 隊 が 患 者 の 観 察 をして AED のパッドを 貼 る 時 間 などを 合 計 すると 実 際 には 患 者 が 倒 れてから 救 急 隊 が AED を 使 用 するまでに 10 分 以 上 かかるケースが 少 なくない Larsen らによれば 10 分 以 上 経 過 し た 心 室 細 動 傷 病 者 の 救 命 率 はほぼ0に 近 いことが 報 告 されている 2) 結 果 的 に 心 拍 が 再 開 したとし ても 脳 に 重 い 障 害 を 残 し 遷 延 性 意 識 障 害 を 残 し 寝 たきり 状 態 となる 可 能 性 が 極 めて 高 い 我 々の 研 究 では このマラソン 大 会 中 に 心 肺 停 止 になったランナー 69 例 を 詳 細 に 分 析 した 結 果 69 名 のうち 救 命 されたランナーはわずか 12 名 であった この 12 名 全 てに 共 通 していることが 1つある それは 倒 れてすぐに 心 肺 蘇 生 法 つま りバイスタンダー CPR が 行 われていたのである ( 図 4) 図 4 バイスタンダー CPRの 有 無 による 心 拍 再 開 率 の 比 較 (1990 年 ~ 2008 年 )
14 前住 田中 これらの現状を踏まえ 万が一マラソン大会中 救命士を配置した 我々は彼らをモバイル AED にランナーが心肺停止になった場合は救急車の到 隊と命名した これが現在 多くのマラソンレー 着を待つのではなく 大会に関係するスタッフ等 スにおいて登場するようになった自転車モバイル が3分以内に心肺蘇生を開始し AED を使用す チーム モバイル AED 隊 の始まりである 4 る必要がある そのためには各マラソン大会で独 モバイル AED 隊は各人がおおよそ 1.2Km を担 自の救護体制を構築する必要がある そこで登場 当し その担当エリア内で事故が発生した場合 したのが モバイル AED 隊 である 沿道ボランティアから本部へ携帯電話で 事故発 生 の一報が入る それを受け本部から事故現場 モバイル AED 隊とは に一番近いモバイル AED 隊へ連絡し 事故現場 我々はスポーツ大会の救護活動を行っている NPO 法人 Sports Medical Association の一員とし へ直行して3分以内に応急手当てを開始する 図 5 て東京マラソンの先駆けとなる東京シティロード では なぜバイクや車ではなく マウンテンバ レースの救護サポートを行っていた 初めてサポ イクいわゆる自転車を用いたのか 確かにモー ートした東京シティロードレース 2003 にて 2 ターの付いた乗り物の方がより早く移動できると km 毎に医師の配置と除細動器を配備し 早期除 想像されるだろう 細動の体制をとった しかし さらに早く除細動 しかし その理由の一つ目の問題としてモータ を行うために 事故現場に素早く到着できるよう ーの付いた乗り物をランナーが走る中に走行させ 翌年の東京シティロードレース 2004 ではマウン るのは非常に危険であるということ 万が一 ラ テンバイクに乗り AED を携帯した5名の救急 ンナーと接触し事故を起こしてしまった場合は更 図5 モバイル AED 隊との連携の様子
国士舘大学における市民マラソン大会での救護活動について モバイル AED 隊に関する報告 15 なる患者を増やしてしまい より多くの医療資源 ことである 具体的にはモバイル隊が救護に当た を必要とすること また大会の運営自体に不備が った患者が病院や救護所での継続的な医療が必要 あるとされてしまう と判断される場合に救急車を要請する この際 二つ目の問題は警察への許可である 他の交通 救急隊に引き継ぐまで またマラソン大会で設置 や車両を通行止めにし ランナーの安全確保を行 している救護所に引き継ぐまではモバイル AED っている このような状態のなかでたとえ救護と 隊の活動範囲となる はいえ 通行止めの道路を多くの車やバイクを走 マラソン大会におけるフィ ールドトリアージ らせることは安全管理上も認められない それゆ は 以下の3つに分類することができる まず1 えモーターの付いた乗り物を多くコース上に走ら つ目は応急処置後にすぐにマラソンに復帰するラ せる許可を取ることは難しい ンナー 2つ目は競技をリタイアして救護所で処 三つ目の問題は機動力である 倒れたランナー 置をする必要があるランナー 3つ目はその場で のいる場所まで向かうために U ターンをしなけれ すぐに救急車を呼んで病院に行く必要があるラン ばならない コースの反対側にいれば中央分離帯 ナーである このフィールドトリアージを確実に をまたがなければならない またコース上に人が することもモバイル AED 隊の重要な役割である 溢れ返っていれば歩道を走らなければならない 図6 このようにその場の状況で臨機応変に移動しなけ ればならず バイクや車の方がかえって時間がか モバイル AED 隊の機動力 かってしまうのである これらの問題を解決可能 モバイル AED 隊の機動力はどの程度であろう な移動手段が自転車であり その中でもあらゆる か マラソン大会では通常の道を走行するのとは 場所を走行でき 長時間乗っても疲労が少ないマ 違い ランナーや沿道の応援者で人が溢れ返って ウンテンバイクが最適な乗り物なのである いる これまで我々は市民マラソン大会を約 20 回救護サポートし その中でモバイル AED 隊を モバイル AED 隊の役割 モバイル AED 隊の役割 は2つである それは 応 急処置 と トリアージ 傷 病の重傷度 緊急度を判断 すること である まず処置に関してモバイ ル AED 隊の最重要任務は ランナーが万が一 心肺停 止になった際にいち早く駆 けつけ 心肺蘇生を行い自 己心拍の再開をさせること である その次の役割とし てはランナーが体調不良や 怪我をした場合に そのラ ンナーの状態を悪化させず に次の医療施設につなげる 図6 モバイル AED 隊と学生救護スタッフの連携活動
16 前 住 田 中 運 用 してきた これらの 活 動 を 通 してデータを 収 集 した 結 果 モバイル AED 隊 は 425m/min の 速 さで 移 動 することができることが 判 明 した 我 々 が 計 画 するマラソン 救 護 活 動 ではモバイル AED 隊 の 他 に AED を 持 ち 自 らの 足 (On foot)で 定 点 待 機 しランナーが 倒 れた 場 合 には 走 って 現 場 に 向 かう BLS 隊 も 配 置 している BLS 隊 の 場 合 は232m/minの 速 さで 移 動 することができる 5) そのため 足 で 走 るよりも 自 転 車 で 移 動 した 方 が 1.8 倍 速 く 移 動 することができる 3 分 以 内 に 処 置 を 開 始 するためにはモバイル AED 隊 の 移 動 速 度 及 び 連 絡 の 時 間 を 考 えなく てはならない 連 絡 時 間 は 連 絡 体 制 にもよるが 過 去 の 経 験 からおおよそ1 分 弱 かかると 考 えてい る そのため 3 分 以 内 に 処 置 を 開 始 するために は 約 2 分 が 移 動 時 間 になることから 半 径 1km がモバイルAED 隊 1 隊 の 配 置 間 隔 と 考 えてよい モバイル AED 隊 が 対 応 するランナーの 傷 病 傾 向 と 転 帰 我 々がサポートした 第 3 回 世 田 谷 246 ハーフマ ラソン( 参 加 ランナー: 約 3000 人 ) 第 28 回 つく ばマラソン( 参 加 ランナー: 約 15,000 人 ) グリ ーンリボンランニングフェスティバル 2008( 参 加 ランナー: 約 3,000 人 ) 2008 川 崎 国 際 多 摩 川 マラソン( 参 加 ランナー: 約 5,000 人 )を 対 象 に 救 護 所 以 外 の 沿 道 上 でモバイル AED 隊 が 対 応 し た 救 護 記 録 93 症 例 を 分 析 すると 傷 病 の 発 生 傾 向 は 下 肢 痛 34% 悪 寒 13% 擦 過 傷 10% 嘔 気 嘔 吐 8% めまい8% 呼 吸 困 難 6% 頭 痛 5% 腹 痛 5% 意 識 障 害 5% 心 肺 停 止 1% その 他 5%であった 6) ( 図 7) 応 急 手 当 を 実 施 後 に 49 %はすぐに 競 技 に 復 帰 したが 37%はリタイアを して 救 護 所 等 で 経 過 観 察 となり 14%は 救 急 車 要 請 となった( 図 8) これらのことから 症 状 を 呈 し 市 民 マラソン 大 会 の 沿 道 上 で 救 護 されるラ ンナーの 傷 病 の 多 くは 軽 症 であるが 中 には 救 護 所 まで 歩 けずに 倒 れるもの( 下 肢 痛 や 転 倒 にとも なう 擦 過 傷 ) 応 急 処 置 の 後 にマラソンに 復 帰 し ていることが 分 かった 一 方 悪 寒 嘔 気 めま い 頭 痛 呼 吸 困 難 が 含 まれており マラソンに 伴 って 発 生 した 脱 水 などの 循 環 障 害 や 体 温 調 節 障 害 による 中 等 症 以 上 の 症 状 である 可 能 性 が 高 く 心 停 止 や 応 急 手 当 てを 必 要 とすることもあった モバイル AED 隊 の 携 行 資 器 材 モバイル AED 隊 は 常 に 自 転 車 に 乗 り 移 動 して いるため バッグに 資 器 材 を 詰 め 込 んで 携 行 して 図 7 モバイルAED 隊 が 対 応 したランナーの 傷 病 傾 向 図 8 モバイル AED 隊 が 対 応 したランナーの 転 帰
国士舘大学における市民マラソン大会での救護活動について モバイル AED 隊に関する報告 いる 図9 そのため 多くのものを大量に携 行することはできないためマラソン大会での傷病 の発生頻度 及び重傷度 緊急度を考慮して必要 最低限の資器材を選択しなければならない この 条件を踏まえてモバイル AED 隊が携行している 資器材を表1に示す 東京マラソンでのモバイル AED 隊 東京マラソン 2007 ではモバイル AE D隊を2又 は3人1チーム計8チーム配置し 各チームがお およそ 2,5 を担当した その担当エリア内で事 故が発生した場合 沿道ボランティアから本部へ 携帯電話で 事故発生 の一報が入り それを受 け本部から事故発生現場に一番近いモバイル AED 隊へ連絡し 現場へ直行し3分以内に応急 手当が実施できる体制をとった 7 東京マラソン 2008 では前回大会に比べ さら に救急救命士を増員し 2人1チーム計 18 チー 表1 モバイル AED の資器材 図9 モバイル AED 隊が背負うバッグ 17
18 前住 田中 図 10 東京マラソン 2008 でのモバイル AED 隊と BLS 隊の配置 図 11 モバイル AED 隊が持つ GPS 図 12 救 護本部より検索したモバイル AED 隊が移動 している様子
国 士 舘 大 学 における 市 民 マラソン 大 会 での 救 護 活 動 について モバイル AED 隊 に 関 する 報 告 19 ムを 配 置 した( 図 10) さらに 各 隊 に GPS( 図 11 12)を 持 たせ 常 にモバイル AED 隊 全 隊 のポ ジションを 把 握 することにより 患 者 発 生 の 連 絡 から 出 動 までの 時 間 を 短 縮 することが 可 能 とな り より 綿 密 で 安 全 な 体 制 を 構 築 することができ た 8) 終 わりに 東 京 マラソン 2009 ではタレントの 松 村 邦 洋 氏 がフルマラソンに 参 加 し 約 15km 地 点 で 卒 倒 し 心 肺 停 止 になった この 際 も 国 士 舘 大 学 のモバイ ル AED 隊 やランニングドクター その 他 のボラ ンティアスタッフやランナーが 心 肺 蘇 生 を 行 い AED が 使 用 され 社 会 復 帰 したことは 記 憶 に 新 しい この 例 だけでなく これまで 我 々が 救 護 し たマラソン 大 会 中 に7 名 のランナーが 心 肺 停 止 に なったが 迅 速 な 心 肺 蘇 生 法 と AED の 使 用 によ り 6 名 が 社 会 復 帰 に 至 っている つまり マラ ソン 中 の 心 停 止 は 十 分 な 数 の AED を 設 置 し 確 実 かつ 迅 速 な 心 肺 蘇 生 法 の 実 施 体 制 を 整 備 すれ ば 助 かる 可 能 性 は 高 い 2004 年 に 一 般 市 民 が AED を 使 用 することが 認 可 され 東 京 マラソンでの 成 功 例 が 報 道 されて 以 来 もはやマラソン 大 会 にも AED があって 当 た り 前 のようになってきている そのような 日 本 の マラソン 救 護 において 今 後 は 万 が 一 ランナーが 心 肺 停 止 になった 際 に AED がなかったり AED が 正 しく 使 用 されなかったりした 場 合 には 逆 に 訴 訟 になる 可 能 性 すらある そうならないためにも AED は 準 備 するだけでなく 早 期 に 効 率 よく 使 用 できる 配 置 体 制 を 構 築 する 必 要 がある 9) と 共 に スタッフやボランティア ランナーも 含 めて マラソン 大 会 に 関 係 する 者 が 心 肺 蘇 生 法 や AED を 正 しく 使 用 できるようになることが 理 想 であ る マラソンのゴールが 人 生 のゴールにならないよ う また 年 間 1,500 のマラソンのうち1つでも 安 全 なマラソン 大 会 が 増 えるように これからも モバイル AED 隊 の 普 及 に 努 めていきたい 引 用 参 考 文 献 1) SSF 笹 川 スポーツ 財 団 編.スポーツライフ デー タ 2006 スポーツライフに 関 する 調 査 報 告 書. 東 京,SSF 笹 川 スポーツ 財 団,2006. 2) Larsen MP, Eisenberg MS, Cummins RO, Hallstrom AP. Predicting survival from out-ofhospital cardiac arrest: a graphic model. Ann Emerg Med. 1993;22:1652-1658 3) 総 務 省 消 防 庁 編 : 平 成 21 年 救 急 救 助 の 現 況. 報 道 資 料,2009,37p. 4) 徳 永 尊 彦, 櫻 井 勝, 田 中 秀 治 他 :スポーツ 大 会 へ の 救 急 救 護 体 制 の 構 築 マラソンランナーの 突 然 死 を 防 ぐために. 日 臨 救 医 誌,2004;7:182p. 5) 細 川 晃 央, 田 中 秀 治, 前 住 智 也 他 : 大 規 模 イベン ト(マスギャザリング)における AED 及 び 人 員 配 置 の 検 証. 日 救 急 医 会 誌,2008;19:762p. 6) 前 住 智 也, 田 中 秀 治, 徳 永 尊 彦 他 : 市 民 マラソン における 沿 道 での 要 救 護 車 の 傾 向 と 体 制 整 備 の 条 件. 日 臨 救 医 誌,2008;11:224p. 7) 前 住 智 也, 田 中 秀 治, 津 波 古 憲 他 : 東 京 マラソン 2007 における 早 期 除 細 動 を 具 現 化 した 沿 道 救 護 体 制 の 確 立. 日 救 急 医 会 誌,2007;18:532p. 8) 前 住 智 也, 田 中 秀 治, 徳 永 尊 彦 他 : 東 京 マラソン 2008における 沿 道 救 護 体 制 の 構 築. 日 救 急 医 会 誌, 2008;19:844p. 9) 前 住 智 也, 田 中 秀 治, 徳 永 尊 彦 他 : 大 規 模 イベン ト(マスギャザリング)における 救 急 医 療 体 制 の 構 築 の 必 要 性. 日 救 急 医 会 誌,2006;17:537p.