現代性教育研究ジャーナル_No.26

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THE JAPANESE ASSOCIATION 現 代 性 教 育 研 究 ジャーナル No.26 2013 年 5 月 15 日 ( 毎 月 15 日 ) 発 行 日 本 性 教 育 協 会 THE JAPANESE ASSOCIATION contents 性 教 育 は 手 段 目 的 は? 公 益 社 団 法 人 地 域 医 療 振 興 協 会 ヘルスプロモーション 研 究 センター 長 厚 木 市 立 病 院 泌 尿 器 科 医 師 岩 室 紳 也 思 春 期 の 性 教 育 の 課 題 手 段 と 目 的 の 混 乱 毎 年 中 学 3 年 生 に 性 教 育 をさせてもらっている 学 校 から ぜひ 中 学 2 年 生 を 対 象 に 中 学 3 年 生 の 前 段 階 の 学 習 内 容 で 性 教 育 をお 願 いしますと 頼 まれま した しかし 岩 室 紳 也 の 性 教 育 は 小 学 生 が 対 象 で も 中 学 生 が 対 象 でも 高 校 生 が 対 象 でも 内 容 は 科 学 的 な 観 点 で 同 じです もちろん 全 く 同 じではあり ませんし 同 じ 学 年 でも 生 徒 さんの 反 応 理 解 度 男 女 構 成 によって 内 容 を 工 夫 することは 当 然 です では なぜ 学 校 の 先 生 と 私 で 性 教 育 についての 視 点 の 相 違 が 出 てしまったのでしょうか 学 校 の 先 生 たちは 教 育 学 部 で 発 達 段 階 に 応 じた 教 育 の 必 要 性 を 刷 り 込 まれています 当 たり 前 のこと ですが 国 語 という 教 科 一 つをとっても 小 学 生 中 学 生 高 校 生 では 教 科 書 の 中 身 も 教 え 方 も 変 わっ てきます 字 も 読 めない 子 どもに 源 氏 物 語 を 見 せて も 意 味 がありません 医 者 である 私 が 問 いかけるの も 変 ですが そもそも 国 語 教 育 の 目 的 は 何 でし ょうか 小 学 生 にとっては 何 よりも 日 本 人 として 必 要 最 小 限 の 文 字 を 読 み 書 きでき 文 字 を 通 して 様 々な 情 報 を 入 手 したり 他 者 とのコミュニケーションを 通 し て 自 分 自 身 を 成 長 させたり 他 者 の 役 に 立 ったりで きるようになることです そのために ひらがな の 読 み 書 き カタカナ の 読 み 書 き 漢 字 の 読 み 書 きを 段 階 的 に 学 習 していきます このようなこ とをあえて 書 かせていただいているのは 国 語 とい う 授 業 の 目 的 は 狭 い 視 点 では 読 み 書 きができるよ うになることですが もう 少 し 目 的 を 広 い 視 点 で 考 えると 言 葉 の 読 み 書 きだけではなく 会 話 を 含 め た 様 々なコミュニケーションの 手 段 を 獲 得 すること を 通 して 生 きる 力 を 育 むことです 小 学 生 のときから 国 語 が 得 意 で 中 学 生 になった 時 点 で 広 辞 苑 にある 漢 字 がすべて 読 み 書 きできて も 他 者 とのコミュニケーションがとれないようで 1

THE JAPANESE ASSOCIATION 現 代 性 教 育 研 究 ジャーナル は 人 として 生 きていく 上 で 多 くの 困 難 を 抱 えてし まいます では 性 教 育 の 目 的 は 何 でしょうか 実 はこれまで 性 教 育 の 原 稿 を 頼 まれると 岩 室 紳 也 はこのよう な 内 容 を 話 しています とか 最 近 の 若 者 たちは このような 課 題 を 抱 えています それを 克 服 できる ようにこのような 内 容 を 伝 えてください と 書 いて いました しかし 思 春 期 の 若 者 たちが 真 剣 に 聞 い てくれる 内 容 を 振 り 返 ってみると 性 教 育 の 目 的 は 性 の 正 しい 情 報 を 伝 えること ではなく 岩 室 紳 也 の 性 の 話 を 通 して 若 者 たちが 自 分 のことを 考 え 生 きる 力 を 育 めるようになること だと 気 づか されました 発 達 段 階 に 応 じた 性 教 育 という 誤 解 当 たり 前 のことですが 小 学 校 1 年 生 には 古 文 を 教 えません それは 理 解 できないばかりか そもそ も 小 学 校 1 年 生 で 行 う 国 語 の 授 業 の 当 面 の 狭 義 の 目 的 はひらがなから 少 しの 漢 字 を 覚 えることを 通 し て 読 み 書 きや 会 話 をすることの 楽 しさや 喜 びを 感 じてもらうことです 仮 に 授 業 が 面 白 くなく 小 学 校 1 年 生 の 時 点 で 国 語 はつまらない 勉 強 したく ない という 子 に 育 ったら それこそ 生 きる 力 が 育 たなくなります その 意 味 でも どの 教 科 であっても 大 事 なこと は 興 味 をもち 続 け 一 歩 ずつ 自 分 自 身 の 習 熟 度 を 高 めていくことです 国 語 を 教 える 先 生 に 求 められ ていることは 国 語 嫌 いにならない 国 語 の 授 業 を 通 して 国 語 力 を 高 め 気 がつけば 読 み 書 きや 会 話 を 通 してコミュニケーションをはかったり 読 書 で 感 動 したりといった 生 きる 力 を 育 むことです 性 教 育 も 同 じではないでしょうか コンドームの 達 人 と 呼 ばれて 久 しいのですが この 私 でさえも 小 学 校 低 学 年 にコンドームを 教 えることはしません それはその 年 代 の 子 たちに 古 文 を 教 えない 理 由 と 同 じです 性 教 育 の 目 的 は 性 についての 学 習 を 積 み 重 ねることを 通 して 性 を 学 ぶ 必 要 性 や 面 白 さ を 体 感 し 性 の 問 題 を 仲 間 同 士 で 解 決 できるといっ た 生 きる 力 を 育 むことです 生 きる 力 が 育 っていないわかりやすい 例 が コン ドームなしでセックスをし HIV に 感 染 したにもか かわらず そのことを 検 査 もせず 妊 娠 しても 産 婦 人 科 で 妊 婦 健 診 を 受 けずに 出 産 のトラブルでお 母 さ んは 亡 くなる 何 とか 生 まれてきた 子 どもは HIV に 母 子 感 染 していた このような 事 例 を 紹 介 する と 子 どもたちは コンドームやエイズのことを 知 っておくことが 大 事 なんだ と 感 じてちゃんと 学 習 してくれます しかし 同 じ 事 例 を 聞 いた 大 人 たち は セックスをする 前 にコンドームを 教 えなけれ ば と 躍 起 になる 人 がいる 一 方 で こんなケース は 稀 で 多 くの 子 どもたちは 大 丈 夫 と 思 っていな いでしょうか 生 きる 力 を 育 む 性 教 育 とは ある 大 学 で 話 した 時 の 感 想 です 自 分 は 性 的 な 話 を 聞 くととても 気 持 ち 悪 くなる のですが 今 回 はそういったこともなく とても 聞 きやすかったです 私 は 性 教 育 が 怖 くて 大 嫌 いで 聞 いてもすぐ に 忘 れようとしていました 今 回 のお 話 を 聞 いて ただ 欲 のためにする 性 行 為 だと 思 っていましたが つながりたい 気 持 ちや 人 の 寂 しさのためにすること もあると 知 りました 経 験 した 人 のパーセントを 見 て 驚 きましたが 自 分 がきれいなほうがよいという 価 値 観 があってもよいということも 理 解 できまし た いろいろな 言 葉 が 心 に 残 ったので 忘 れずに 人 とつながりをもっていきたいと 思 います 自 分 で 考 え 自 分 で 決 めて 自 分 で 行 動 する 相 手 や 流 れに 任 せるのではなく 人 との 関 わりを 大 切 にしながら 生 きていくことが 必 要 だと 思 いまし た 今 まで 少 し 敬 遠 気 味 だった 性 に 対 する 問 題 も まぁいいか とあいまいにするのではなく しっかりと 向 き 合 っていこうと 思 います 性 教 育 を 行 っている 側 の 一 方 的 な 思 いの 押 し 付 け だと 嫌 悪 感 が 生 まれたり 自 分 の 問 題 として 考 えら れなかったりします 性 と 関 わることを 通 して 人 として 成 長 し 生 きる 力 を 育 むうえで 役 に 立 つ 性 教 育 でなければ 性 教 育 を 行 う 意 味 はありません そ のためには 何 より 科 学 的 で 自 分 の 問 題 として 考 えられ 結 果 として 生 きる 力 が 育 まれる 性 教 育 が 求 められています 本 稿 では 若 者 たちが 真 剣 に 聞 き 自 分 の 問 題 とし て 考 えてくれる 岩 室 紳 也 が 行 っている 科 学 的 性 教 育 の 一 端 を 紹 介 します

THE JAPANESE ASSOCIATION 現 代 性 教 育 研 究 ジャーナル 科 学 的 性 教 育 のすすめ おちんちんを 科 学 する 泌 尿 器 科 医 として 最 近 の 子 どもたちを 診 ていて 非 常 に 気 になるのが おちんちん です 昔 の 若 者 た ちの 最 大 の 悩 みであった 包 茎 という 言 葉 を 知 らない 若 者 たちが 増 えています 性 教 育 の 際 に おちんち ん 陰 茎 ペニス のどの 呼 称 が 適 当 かを 議 論 していたのは はるか 過 去 のことになりました では そもそもおちんちんの 性 教 育 で 子 どもたち がどう 変 わるのでしょうか どのような 目 的 をもっ ておちんちんに 関 する 性 教 育 を 行 うべきなのでしょ うか こう 聞 くと 知 識 や 意 識 の 差 はあれ 多 くの 人 は 次 のような 問 題 意 識 をもたれると 思 います 1 おちんちんのサイズでの 悩 み 解 消 2 包 茎 の 悩 み 解 消 3 不 要 な 包 茎 の 手 術 を 受 けない 4 亀 頭 包 皮 炎 の 予 防 なかには 誤 解 をしていて 1 包 茎 の 解 消 2 早 漏 の 防 止 3 おちんちんの 発 育 の 促 進 と 考 えている 人 もいるでしょう ここであえて お ちんちんを 科 学 する と 言 っているのは おちんち んに 関 する 問 題 を 悩 みを 予 防 したり 解 消 したり するだけではなく そもそもおちんちんとともに 生 き 成 長 することとはどのような 意 味 をもつのか を 性 教 育 に 関 わる 方 々に 考 えていただきたいので す 男 の 子 の 性 教 育 は 男 に 任 せるな 女 の 子 の 性 教 育 は 女 性 が 男 の 子 の 性 教 育 は 男 性 がすべきというのは 非 科 学 的 な 発 想 です 昔 からこ のように 思 っていた 人 が 多 いのは 性 が 科 学 的 に 理 解 されるのではなく 経 験 的 に 理 解 され 対 処 され た 歴 史 が 長 く 続 いたからです おちんちんのことで 言 うと 昔 は 銭 湯 に 行 けば 隣 のオヤジが チンポコ むいてきれいに 洗 え と 教 えてくれたり お 前 は 包 茎 だ! と 仲 間 にからかわれたりしながら おち んちんはむいて 洗 うものだということを 学 びまし た さらにみんなで 風 呂 に 入 るのが 当 たり 前 だと 仲 間 のおちんちんを 実 際 に 見 て 何 だ みんな 普 段 は 包 茎 なんだ とか でっかい 奴 もいるけど 小 さ い 奴 もいる ことを 知 って 安 心 することができまし た すなわち おちんちんを 知 り 理 解 し お 互 い の 違 いを 自 ずと 受 け 入 れる 環 境 がありました では いつからこのような 環 境 が 壊 れたのでしょ うか 57 歳 の 岩 室 紳 也 は 既 に 銭 湯 ではなく 自 宅 に 風 呂 があった 世 代 です ただ 私 自 身 は 中 学 の 途 中 から 大 学 まで 寮 生 活 をしていたため 他 者 のお ちんちんを 嫌 というほど 見 せつけられました しか し 寮 生 活 を 送 らなかった 私 の 同 世 代 が 彼 女 は 包 茎 がきらいだ 包 茎 の 3 悪 追 放 包 茎 切 って 男 にな ろう と 聞 けば なかには 不 要 かつ 高 額 な 包 茎 手 術 を 受 けたことでしょう 実 際 この 世 代 の 父 親 は よく 私 も 若 い 時 に 包 茎 の 手 術 をしたので 息 子 に も 早 めに 手 術 をしてください と 何 の 迷 いもなく 泌 尿 器 科 を 受 診 します もちろん 私 の 外 来 ではきちん と 説 明 をし 手 術 不 要 と 伝 えますが 上 手 く 言 わな いと 父 親 のほうが オレは 無 駄 な 手 術 を 受 けたの か と 悩 むことになります 最 近 のおちんちんのトラブルの 背 景 30 歳 になってもおちんちんをむいたことがない ( 不 潔 ) 包 茎 という 言 葉 を 知 らない 男 子 高 校 生 ( 無 知 ) 僕 はカントン 包 茎 です と 勝 手 に 診 断 して 相 談 してくる 大 学 生 ( 誤 解 ) 近 年 増 えてきた おちんちんに 関 する 問 題 です そもそもどうして 30 歳 になってもおちんちんを むいたことがないのか 高 校 生 になっても 包 茎 という 言 葉 を 知 らない 理 由 は 何 か カントン 包 茎 という 言 葉 をどこで 知 り 医 者 に 相 談 する 前 に 仲 間 にその 意 味 を 確 認 したのか そのような 疑 問 がわき ませんか 近 年 表 出 してきたのが 本 来 であれば 思 春 期 に 仲 間 同 士 で 話 題 にし からかい 合 い でも 結 果 的 に 解 決 していたことが 仲 間 がいない あるい は 仲 間 であっても 性 の 話 題 を 避 けるために 困 った 事 態 になっている 人 が 着 実 に 増 えていることです おちんちんに 限 らず 思 春 期 に 遭 遇 する 性 の 悩 み やストレスを 自 らの 力 で 乗 り 越 えることで 人 は 生 き る 力 を 育 みます 逆 に 悩 みを 解 消 するだけの 正 確 な 情 報 を 与 えるだけのストレス 回 避 教 育 は せっ

THE JAPANESE ASSOCIATION 現 代 性 教 育 研 究 ジャーナル かくの 性 を 通 して 生 きる 力 を 育 むチャンスを 奪 って いると 考 えなければならない 時 代 になりました おちんちんを 知 ろう かぶれば 包 茎 むければ OK むいて 洗 って また 戻 す 包 茎 のメッセージはこの 一 行 に 集 約 されています が もう 少 し 詳 しく 伝 えないと 何 を 言 われているか がわからないという 人 も 少 なくないでしょう 図 2 おちんちんの 断 面 図 図 1 いろんなかたちのおちんちん 図 1をまわりの 何 人 かの 男 性 に 示 して 皮 をか ぶったおちんちんから むけた 状 態 のおちんちんま でいろいろですが それぞれは 何 と 呼 ぶでしょう か? と 聞 いてみてください 間 違 いなく 十 人 十 色 の 答 えになります で 正 解 は?( 答 えは 文 末 に) おちんちんの 状 態 を 解 剖 学 的 に 説 明 します 図 1-1の 断 面 図 が 図 2です ほとんどの 男 の 赤 ちゃん は 生 まれたときは 図 1-1の 状 態 です 断 面 図 で 見 るといかにも 包 皮 口 が 非 常 に 狭 く 亀 頭 部 が 出 そう にもないように 思 うでしょうが 生 まれたときから 包 皮 を 根 元 のほうにずらすと 亀 頭 部 がほとんど 全 部 出 てしまうという 新 生 児 もいます また 体 の 成 長 とともにおちんちんも 大 きくなって 亀 頭 部 が 常 に 完 全 に 露 出 した 状 態 ( 図 1-3)になる 人 もいます むくべきか むかざるべきか おちんちんは 普 段 包 皮 をかぶっていようと 完 全 にむけていようと どのような 状 態 であっても 問 題 はありません しかし 包 皮 内 に 細 菌 が 入 り 繁 殖 すると 亀 頭 包 皮 炎 になります 昔 から ミミズにシ ョンベンをかけるとちんちんが 腫 れる と 言 い 伝 え られてきたことは 実 はたいへん 科 学 的 なことでした そもそもミミズにションベン( 小 便 )をかけて 遊 ぶのは 小 さい 男 の 子 です 低 年 齢 の 男 の 子 は 包 茎 の ことが 多 く 包 茎 のままミミズをめがけて 排 尿 して も 包 皮 が 邪 魔 をし 尿 線 が 定 まらずミミズに 命 中 し ません そこで 方 向 修 正 をしようと 汚 い 手 でおちん ちんの 先 の 包 皮 口 あたりをいじっていると 包 皮 内 に 細 菌 が 入 ります もちろん 入 浴 時 に 包 皮 を 冠 状 溝 までむいて 洗 っていれば 炎 症 を 起 こすことはありま せんが 洗 うことを 怠 ればおちんちんが 腫 れても 不 思 議 ではありません 包 茎 はいつむくか 今 でしょ! では いつ 何 歳 からむくべきなのでしょうか なぜむくのかを 考 えれば 答 えは 自 ずと 見 えてきま す おちんちんをむくことが 目 的 ではありません おちんちんをむかないとおちんちんの 中 の 清 潔 が 保 てません もちろんおちんちんを 腫 らしても 子 ども が 死 ぬわけではないので 放 っておいてもいいと 考 え る 人 もいるかもしれません 問 題 なのは 自 分 も 自 然 とむけるようになった とか いずれ 友 だちと そういう 話 になってむけるようになるから 放 ってお け といった 自 らの 経 験 だけで 判 断 し 現 代 社 会 の 課 題 である 関 係 性 の 喪 失 やコミュニケーション 能 力 の 低 下 がもたらす 仲 間 の 減 少 情 報 共 有 の 減 少 そして 30 歳 になってもむいたことがない 人 の 出 現 を 理 解 していない 人 たちです だからこそ 私 は 子 どもたち 若 者 たちに 話 す 機 会 があればかならず むいて 洗 って また 戻 す を 伝 えるようにしています

THE JAPANESE ASSOCIATION 現 代 性 教 育 研 究 ジャーナル 包 茎 はいつむくか 今 でしょ! か ん と ん 嵌 頓 包 茎 に 注 意 ただし むきましょう と 呼 びかけるときは 嵌 頓 包 茎 の 注 意 だけは 忘 れないでください 包 皮 口 が 十 分 広 がっていないときに 無 理 やりむいてしまう と 包 皮 口 が 亀 頭 部 を 締 め 付 ける 形 になり 包 皮 が むくんだ 嵌 頓 包 茎 の 状 態 になります( 図 3) この 状 態 になっても 慌 てることはありません まず 亀 頭 部 を 30 秒 間 思 いっきり 握 りつぶします 亀 頭 部 には 骨 がないのでどんなに 強 く 潰 しても そこにあ る 血 液 が 体 のほうに 戻 るだけです 亀 頭 部 が 十 分 小 さくなったら 亀 頭 部 を 包 皮 口 の 中 に 戻 すように 押 し 込 みます このとき 初 めて 亀 頭 部 が 出 たお 子 さんは 痛 がりますが そこは 我 慢 して 戻 すようにしましょ う むけまして おめでとうございます 包 皮 を 翻 転 し 亀 頭 部 が 冠 状 溝 まで 完 全 に 見 える ようにできればむけたことになります 包 皮 口 が 狭 ければむけませんが 毎 日 根 元 に 向 かってむき 続 ければ それも 数 多 くやり 続 ければ 必 ず 包 皮 口 は 拡 大 します 包 皮 口 が 広 がり 亀 頭 部 を 少 しずつ 露 出 できるよ うになると 最 初 は 亀 頭 部 を 触 っただけで 痛 みを 感 じます しかし 触 り 続 け 洗 い 続 けているうちに この 痛 みは 必 ずなくなります 痛 みがなくならなけ れば 将 来 的 にセックスなどできるはずがありませ ん ちなみに 完 全 に 冠 状 溝 が 露 出 できるようにな るまでは 洗 う 際 に 石 けん 等 は 使 わないようにしま す 癒 着 の 隙 間 に 石 けんが 入 り 込 んで 炎 症 を 起 こす ことがあるためです 包 皮 と 亀 頭 部 が 癒 着 している 場 合 はその 癒 着 をは がす 必 要 がありますが これはちょっと 痛 いので 少 しずつ 1 週 間 に 1 ミリ 程 度 を 目 安 にしてください 今 から 始 めれば 半 年 程 度 でほとんどのお 子 さん はむけるようになります 学 校 では むけたら 担 任 の 先 生 にちゃんと 報 告 してくださいね とお 願 いし ています えっ どうやって? 簡 単 です 年 賀 状 に むけまして おめでとうご ざいます と 書 けばいいのです むかない 代 償 包 茎 をむかないままにしておくと 亀 頭 包 皮 炎 を 起 こすだけではなく 最 悪 の 場 合 陰 茎 がんになる 人 がいます 陰 茎 がんになる 人 はほぼ 全 員 包 皮 を 翻 転 できない すなわちむけない いわゆる 真 性 包 茎 の 人 たちだというのは 泌 尿 器 科 医 の 常 識 です その 原 因 の 一 つが HPV 図 3 HPV は 子 宮 頸 がんの 原 因 ですが そもそも 子 宮 頸 がんを 起 こす HPV はどこから 来 るのでしょうか 多 くはおちんちんに 付 着 した HPV が 子 宮 頸 部 に 運 ばれています 男 性 が むいて 洗 って また 戻 す をし 続 けることで 陰 茎 がんが 予 防 できるのであ れば 男 性 のパートナーが むいて 洗 って また 戻 す をし 続 けることで 女 性 の 子 宮 頸 がんのリスク も 減 らせると 思 いませんか もちろん evidence( 証 拠 )はありません なぜなら 洗 わないおちんちんと セックスをした 女 性 の 群 と 洗 ったおちんちんとセ ックスした 女 性 の 群 を 比 較 するというのは あまり にも 非 人 道 的 な 研 究 になるからです 性 は 悩 み 考 え つながる 手 段 科 学 的 性 教 育 のすすめ かんとん 嵌 頓 包 茎 今 回 あえておちんちんを 題 材 に 紹 介 したのには 理 由 があります おちんちんは それこそ 小 学 校 低 学 年 で からだのせいけつ を 教 えるときから 扱 え る 題 材 です もし 担 任 の 先 生 が 授 業 の 中 で おちん ちん という 言 葉 を 口 にした 途 端 茶 化 したり 騒 い だりする 子 どもがいたら おちんちんのことをちゃ

THE JAPANESE ASSOCIATION 現 代 性 教 育 研 究 ジャーナル んと 勉 強 しておかないと おちんちんのがんで 死 ん でしまうこともあるんだよ と 叱 れるからです こ のように 性 はいろんな 角 度 から 命 に 結 びつい ていることを 科 学 的 にとらえ 伝 えたいものです と 同 時 に 私 の 性 教 育 のなかでおちんちんを 語 る 時 間 はせいぜい 5 分 程 度 です しかし その 5 分 を 語 る 背 景 に おちんちんや 包 茎 への 深 い 理 解 と 思 い があるからこそ 生 きた 思 いが 伝 わる 性 教 育 になり ます 自 分 で 考 え 思 いやりの 気 持 ちを 育 むために おちんちんをむかないと どのようなことが 起 こ るかを 考 えるきっかけを 提 供 しましょう 何 故 むく のか むかないと どのようなことがおこるのか それは 自 分 だけの 問 題 なのか 痛 いのを 我 慢 する 意 味 は 何 か ここまで 読 んで おちんちんの 話 だったら 女 の 子 は 関 係 ないので 男 女 別 で 教 えればいいと 思 った 人 がいたとしたら 大 間 違 いです 痛 さに 耐 え むけ るようにし かつゴシゴシ 洗 い 続 けることは 単 にそ の 男 の 子 のためではなく パートナーとなる 女 性 の ためでもあります 性 教 育 を 受 ける 年 齢 の 女 の 子 は 月 経 という つら い うっとうしい 生 理 現 象 とむきあわなければなら ない 女 性 の 性 についていろいろ 悩 んでいるでしょ う しかし 男 の 子 も 同 じように おちんちんの 扱 いについて 痛 い つらい 思 いをしているということ が 共 有 できれば 男 女 にお 互 いを 思 いやる 気 持 ちが 目 覚 めるのではないでしょうか 性 教 育 は 所 詮 手 段 繰 り 返 しになりますが 性 教 育 は 所 詮 手 段 です しかも 知 識 を 伝 えるだけの 手 段 ではなく 性 を 通 して 学 び 人 とつながり お 互 いを 認 め 合 うプロセ スを 育 む 環 境 整 備 のための 手 段 です 性 について 仲 間 同 士 で 話 し 合 うきっかけづくりとして 性 教 育 を 位 置 付 けるためにも 性 教 育 は 科 学 的 であるべきだと 考 えています 科 学 的 な 内 容 であれば どの 年 齢 で もその 情 報 を 伝 え その 時 点 で 理 解 できなくてもい ろんな 仲 間 との 情 報 交 換 を 通 して 理 解 を 深 めること ができます 本 稿 を 書 かせていただきながら 改 めて 子 どもた ちに 岩 室 紳 也 の 性 教 育 を 届 け 続 けなければと 気 持 ち を 引 き 締 めています みなさん 一 緒 に 頑 張 りまし ょう 解 答 図 1の 呼 称 1 包 茎 2 少 しむけたおちんちん 3むけたおちんちん 参 考 文 献 1) 岩 室 紳 也 :OCHINCHIN 日 本 家 族 計 画 協 会 1999 JASE 資 料 室 は 国 内 外 の 性 教 育 性 科 学 等 に 関 する 文 献 資 料 を 収 集 している 開 架 式 資 料 室 です 文 献 資 料 の 数 は 約 5 万 点 以 上 現 在 も 日 々 増 え 続 けています 性 教 育 セクソロジーに 関 する 調 査 研 究 のためにご 利 用 いただけます 人 間 の 性 に 関 心 がある 方 ぜひ 足 をお 運 びください 閲 覧 必 ず 事 前 に 電 話 で 予 約 が 必 要 です(tel 03-6801-9307) 貸 出 業 務 は 行 っておりません 開 室 日 時 間 月 ~ 金 曜 日 10:30 ~ 17:30 休 室 日 土 日 曜 日 祝 日 年 末 年 始 この 他 会 議 等 で 臨 時 に 休 室 することがあります コピーサービス コピー 料 金 は 用 紙 サイズにかかわらず1 枚 10 円 です 著 作 権 法 の 許 容 する 範 囲 で 行 うものとします http://www.jase.faje.or.jp/pub/archive.html 統 計 調 査 報 告 書 ジェンダー フェミニズム 性 教 育 一 般 性 教 育 の 歴 史 的 資 料 国 内 雑 誌 障 害 者 セクソロジー( 自 然 科 学 系 人 文 社 会 学 系 ) 民 俗 学 文 化 人 類 学 風 俗 性 研 究 史 性 学 史 教 科 書 指 導 書 学 習 指 導 要 領 幼 児 期 ~ 青 年 期 国 内 学 術 誌 国 際 ( 海 外 団 体 資 料 海 外 学 術 誌 ) 高 齢 者 家 族 問 題 文 学 評 論 エッセイ 文 庫 新 書 官 公 庁 資 料 JASE 刊 行 物 映 像 資 料 個 人 論 文 雑 誌 記 事 新 聞 記 事 絵 本 写 真 集 マンガ 江 幡 篠 崎 朝 山 石 川 ダイアモンド 文 庫 ほか http://www3.jase.faje.or.jp/cgi-bin/search1.cgi 6

これがわが 国 で 性 教 育 を 公 式 な 立 場 から 取 り 上 げ た 最 初 のものであった ( 山 本 信 弘 ほか 性 教 育 の 歴 史 的 変 遷 の 文 献 的 一 考 察 大 阪 教 育 大 学 紀 要 第 V 部 門 39 巻 2 号 1991 年 )と 指 摘 されているように 文 部 省 によ る 純 潔 教 育 施 策 の 出 発 点 は 1947( 昭 和 22) 年 1 月 6 日 に 社 会 教 育 局 長 名 で 都 道 府 県 宛 に 通 牒 された 純 潔 教 育 の 実 施 について ( 発 社 1 号 )といわれます こ の 通 達 に 至 る 経 緯 からその 後 の 純 潔 教 育 施 策 の 展 開 に ついては すでにいくつかの 研 究 があり 本 連 載 で 新 しい 発 見 を 提 示 することはほとんどありませんが ま ずは 純 潔 教 育 施 策 が 1949 年 発 表 の 純 潔 教 育 基 本 要 項 までに 進 展 していく 過 程 を 見 ていきます 玉 音 放 送 からわずか 3 日 後 の 1945 年 8 月 18 日 内 務 省 警 保 局 長 による 外 国 軍 駐 屯 地 に 於 る 慰 安 施 設 について が 各 府 県 長 官 に 打 電 され 占 領 軍 に 対 する 性 的 慰 安 施 設 等 を 整 備 することが 指 示 されています 占 領 軍 によって 女 性 が 強 姦 されるのではないかとい う 不 安 から 疎 開 が 指 導 された 地 域 もあったように 慰 安 施 設 を 整 備 する 主 な 目 的 は 占 領 軍 から 女 性 (の 純 潔 )を 護 るためであり 当 時 警 視 庁 総 監 であった 坂 信 弥 は 成 立 間 もない 東 久 邇 内 閣 の 国 務 大 臣 近 衛 文 麿 から 君 が 陣 頭 に 立 って 指 揮 して 日 本 の 娘 を 守 ってほ しいという 趣 旨 の 依 頼 を 受 けたと 証 言 しています( 住 本 利 男 占 領 秘 録 上 毎 日 新 聞 社 1952 年 p.52) 警 視 庁 は 接 客 業 組 合 七 団 体 の 代 表 に 慰 安 所 設 置 を 指 示 し 特 殊 慰 安 施 設 協 会 ( 後 に R A A 協 会 に 改 称 以 下 RAA)が 設 立 されます( 認 可 は 8 月 28 日 ) RAA は 占 領 軍 の 来 日 にあわせ 特 別 女 子 従 業 員 募 集 女 事 務 員 募 集 といった 広 告 を 街 頭 や 新 聞 等 に 掲 載 して 女 性 を 集 めていきます その 過 程 で 戦 時 中 からの 慰 安 婦 のみならず 父 親 や 兄 弟 の 戦 死 や 空 襲 による 家 財 の 焼 失 や 家 族 の 離 散 といった 戦 争 による 貧 困 を 背 景 に 一 般 の 女 性 も 次 々と 慰 安 婦 となっていきました 一 方 で GHQ は 1946 年 1 月 21 日 に 日 本 政 府 向 け 覚 書 日 本 における 公 娼 の 廃 止 (SCAPIN642)を 通 達 し 2 月 2 日 内 務 省 警 保 局 長 による 公 娼 制 度 廃 止 に 関 する 件 が 各 府 県 長 官 宛 に 通 牒 されています ここでいう 公 娼 廃 止 とは 強 制 売 春 が 禁 止 とされたの みで 私 娼 による 自 由 意 志 の 売 春 は 黙 認 され 実 態 に ほぼ 変 化 はありませんでした ところが RAA の 慰 安 所 は 1946 年 3 月 ( 開 設 か らおよそ7か 月 後 )に 突 如 閉 鎖 されます 性 感 染 症 の 罹 患 率 の 上 昇 を 重 く 見 た GHQ が 慰 安 所 への 立 入 を 全 面 的 に 禁 止 とするオフ リミッツ 令 を 発 したためで す RAA の 慰 安 所 を 解 雇 された 慰 安 婦 の 多 くは パ ンパンと 呼 ばれる 街 娼 になったと 指 摘 されています 五 百 人 ぐらいだったがそれがまたたく 間 に 二 千 人 三 千 人 になるという 有 様 といわれています( 前 掲 住 本 p.70) また ( 信 憑 性 がどの 程 度 かわかりませんが) 当 時 のパンパンの 大 部 分 は あたし 同 様 R A A の 卒 業 生 がしめていたと 想 像 して まず 間 違 いな いと 思 う という RAA 慰 安 婦 経 験 者 の 談 もあります ( 小 林 大 治 郎 村 瀬 明 みんなは 知 らない 国 家 売 春 命 令 雄 山 閣 出 版 1961 年 p.54) このような 私 娼 の 拡 大 に 対 し 11 月 14 日 の 事 務 次 官 会 議 によって 私 娼 の 取 締 並 びに 発 生 の 防 止 及 び 保 護 対 策 が 決 定 されました これには 公 娼 廃 止 後 の 風 俗 対 策 と 闇 の 女 発 生 防 止 及 び 保 護 対 策 が 盛 り 込 まれ 後 者 には 子 女 の 教 育 指 導 によって 正 しい 男 女 間 の 交 際 の 指 導 性 道 徳 の 昂 揚 を 図 る た めに 家 庭 に 於 ける 子 女 の 教 育 について 積 極 的 な 関 心 を 昂 める 為 母 親 学 級 両 親 学 級 父 兄 会 等 に 於 て 子 女 の 問 題 について 協 議 懇 談 指 導 する あるいは 男 女 青 年 団 等 の 幹 部 講 習 幹 部 会 等 に 男 女 の 交 際 結 婚 その 他 の 問 題 について 研 究 させる などの 措 置 や 正 しい 文 化 活 動 を 助 成 して 青 年 男 女 の 健 全 な 思 想 を 涵 養 する ために 映 画 出 版 業 界 の 自 覚 と 責 任 に 於 て 映 画 出 版 物 の 品 位 を 昂 め 徒 らに 子 女 の 性 的 好 奇 心 を 刺 戟 するようなことのないよう 関 係 者 と 懇 談 する 学 校 工 場 青 年 団 等 の 活 動 を 促 して 青 年 男 女 に 健 全 な 娯 楽 を 奨 励 する などの 措 置 を 講 ずること が 示 されています 7

第26回 それはいまフェイスブックやツイッターなどでも拡散 The Day of Silence 沈黙を強いられる日とは し この沈黙を終わらせるためにきみは何をするの か という問いに それぞれが自分の誓約を写真に 撮ってアップしたりしています ある生徒は いじめ アメリカに暮らして はクールじゃないとみんなに広める また別の生徒 感心することはなにか は ゲイの友だちの平等のために戦う とも 新しいことをやろう GLSEN が 2011 年に全米 8584 校の中学高校を調査 とするときのその発想 したところ 前年に学校でいじめに遭ったことがある の豊富さ 奇抜さです 沈黙の日 今年のポスター と答えた LGBTQ の生徒は 10 人に8人にのぼりまし たとえば銃規制を訴え た 63.5 の生徒が自分の性的指向のために学校で危 るデモでも 銃で亡くなった犠牲者たちのそのとき履 険を感じると答えています いていた靴をずらっと並べて見せるようなことをしま 米国社会は何でも目に見えるところに引き出してそ す 沈黙がこれほどに雄弁であるデモを私は見たこと れを解決しようとします 精神分析も無意識下の問題 がありません 最近ではフラッシュモブなどという感 を意識上に引っ張り出してきてそれを徹底的に解明す 動的な集団パフォーマンスもアメリカ生まれ ビジネ る まずは病巣の可視化なのです いじめや偏見や差 スやマーケティングにおいてもポップアップ ショップ 別の問題も 徹底して表沙汰にします それに対応す などという新しい形態を考えついたのもアメリカです るように LGBT の子どもたちにも可視化するよう 教育現場においても例外ではありません 前回紹 に呼びかけます カムアウトを奨励するのです もち 介した Day of Silence 沈黙の日 というのは ろん現状ではリスクも伴うのですが それは National 1996 年 バージニア大学の学生マリア パルゼッテ Coming Out Day 全米カミングアウトの日 として ィらが始めたものです 学校で日々繰り返されている 毎年 10 月 11 日に 励ましとともに行われています LGBTQ の生徒 学生に対する揶揄や罵倒 いじめや そしていまや沈黙の日もカミングアウトの日も 米国 暴力に LGBTQ であるが故になにも反論できずに黙 を超えて世界中に広がっているのです ってしまわざるを得ないつらい状況を 学校で一日 ずっと誰とも話さずに沈黙を貫く ことで提示してみ せ 学校側と友人たちにこの問題を真剣に考えてもら 沈黙の日 に参加した高校生 たちがフェイスブックに自分た ちの写真をアップしている おうという試みでした 翌 1997 年 に は こ れ に 賛 同 し た 全 米 100 近 く の 大学の学生たちが参加し 2001 年からは前回紹介 の GLSEN Gay, Lesbian & Straight Education Network ゲイとレズビアンとストレートの教育ネ ットワーク が公式に後援して全米に拡大しました 参加者の学生や生徒たちは首から 沈黙の日 のプラ カードを下げたり口にシールを貼付けたりして 何も 話せない忍従の沈黙 のつらさを突きつけるのです 今年も 4 月 19 日に設定されたこの日に 全米で きたまるゆうじ ニューヨーク在住 20年 ジャーナリスト 作家 元 中日新聞 東京新聞 ニューヨーク支局長 8000 以上の大学 高校が一斉行動を起こしました 8

4 月 怪 訝 な 顔 でわたしを 見 る1 年 生 の 横 で 2 3 年 生 は どひちゃーん と 元 気 にからんでくれます そのコントラストがなんともおもしろい 季 節 です 閑 話 休 題 2001 年 3 月 のある 日 職 場 の 呑 み 会 のために 京 都 市 内 に 出 たわたしは 時 間 調 整 のために 本 屋 に 入 りまし た なにかおもしろそうな 本 はないかな と ジェ ンダー 関 係 の 書 棚 を 見 ていると 性 同 一 性 障 害 の 基 礎 と 臨 床 ( 以 下 基 礎 と 臨 床 と 略 )という 本 が 目 にとまりました 当 時 わたしはトランスジェンダー についての 本 を 何 冊 かは 読 んでいました しかし す べて 当 事 者 が 書 いたものかルポものでした もちろん 性 同 一 性 障 害 についての 知 識 はありましたが あくま でもネットで 得 たもので 書 籍 という 形 で 性 同 一 性 障 害 について 述 べられたものを わたしは 読 んだことが ありませんでした 基 礎 と 臨 床 を 手 にとってパラ パラとページをめくってみると さまざまな 症 例 や 統 計 データが 掲 載 されています 専 門 書 ということもあ り 少 々 値 が 張 ります 買 おうかどうしようか 躊 躇 しま したが 自 分 のことを 知 るためにはこのぐらいの 出 費 は 必 要 だと 覚 悟 を 決 め 買 うことにしました 家 に 帰 って 基 礎 と 臨 床 を 読 みました 読 みなが ら 何 度 も 身 体 がふるえる 思 いがしました 当 事 者 の 経 験 談 やルポに 書 かれていることは わたしにとって しょせんは タニンゴト でしかありませんでした しかし 基 礎 と 臨 床 に 書 かれていることは 知 識 でした その 知 識 に 照 らしあわせながら 自 分 を 見 つめたとき あてはまること あてはまらないこと がクリアに 見 えてきた 気 がしたのです 一 方 そのこ とはわたしを 冷 静 にしていきました 自 分 のことをも う 少 し 客 観 的 に 分 析 していきたい そのために 誰 か ときちんと 話 をしたいと 思 いました 誰 と 話 をするの か そう 考 えたとき 精 神 科 を 受 診 しようと 思 いま した どこの 病 院 にするか 迷 った 末 TSとTGを 支 える 人 々の 会 に 相 談 メールを 送 りました すると しばらくして 返 事 が 返 ってきました その 中 に 岡 山 病 院 の 中 島 豊 爾 さんは ふところが 深 いお 人 柄 なので 特 に いわゆるアウトローな 患 者 さんにも 支 持 されて います という 一 文 がありました この 文 章 を 見 て 岡 山 県 立 岡 山 病 院 ( 当 時 )に 行 くことにしました 4 月 わたしは 岡 山 病 院 に 行 きました 診 察 室 の 中 島 さんはとても 柔 和 な 表 情 をしておられました ど うしてここに 来 られたんですか? どこから 話 せば いや どこからでも というやりとりのあと 同 僚 からゲイであることをカムアウトされたこと 彼 のことをもっと 知 りたいと 思 いセクシュアリティにつ いての 勉 強 をしたときはじめて トランスジェンダー という 言 葉 を 知 ったこと まぎれもなく 自 分 は そ れ だと 感 じたこと そして 子 どもの 頃 から 自 分 が 経 験 してきたことや 迷 いながらも 診 察 を 受 けようと 思 ったことなどを 話 しました 中 島 さんは1 時 間 近 くわ たしの 話 を 聞 いた 後 ふと ひとりごとのように う ーん SRS までやるとしたら なにが 障 害 になるのか なぁ とつぶやかれました わたしは え! と 思 いました SRS なんて 遠 い 世 界 のことだとわたしは 思 っていました ところが 突 然 SRS という 言 葉 が 目 の 前 にあらわれたのです しかし 次 の 瞬 間 わ たしの 前 にはたくさんの 扉 がある SRS はその 向 こう にある その 扉 をあけるのは わたし 自 身 だ 中 島 さ んはきっとその 扉 を 開 ける 手 助 けをしてくれる と 直 感 しました わたしは 意 を 決 して わたしは 性 同 一 性 障 害 なんでしょうか? と 聞 いてみました すると 1 回 の 診 断 で 100%とは 言 い 切 れませんが おそらく そうでしょう と 言 われました 最 後 に 来 月 までの 宿 題 はなんですか? とたずねると 家 族 としっ かりと 話 しあって 下 さい と 言 われました 病 院 からの 帰 り 道 わたしは とうとう 性 同 一 性 障 害 になってしまった という 気 持 ちと 宙 ぶらりんを 脱 出 した という 気 持 ちの 狭 間 の なんとも 言 えない 複 雑 な 思 いを 感 じていました それでも 岡 山 駅 に 向 か う 途 中 記 念 に 安 物 の 小 さなネックレスを 買 いまし た こうしてはじめての 診 察 が 終 わりました 9

閉経記 伊藤比呂美 中央公論新社 1,470 円 税込み ユダヤ系イギリス人との再婚 南カリフォルニアへの 加齢 閉経に効くエッセイ 移住などと 怒濤の日々を送ってきた 親の介護のた め熊本と往復し 看取りや親の家の片付けもした 遺 書を書き 孫も生まれた 母と同じく摂食障害になっ 友だちの漫画研究家から 私 性別違和 ならぬ たりと 思春期に翻弄させられた娘たちも独立し 犬 年齢違和 があるの 39 歳から歳とらないことに決 も亡くなり 残るのはかなり年上の老いた夫のみ めたから と高らかに宣言されたのは 何年前か アラフォーだの アラフィフ 美魔女等々 商業主義 ラブラブな夫ならば楽しいだろうが かなしいこ がにおう新語で上書きされても 加齢に対するたじろ とにそうとは言い切れない関係性をひきずっている ぎや抵抗 違和っていうやつは アタマとは違う次元 まあ それでもやっていくのである 日本語を解さ で ひとを揺るがす 若く見られたいとか もてたい ず 食の好みも違い ワーカホリックの画家だという とか そもそも自分の気持ちが年齢に付いていかない 満身創痍も生きた証 あたしは何にでも溺れずに とか 加齢 閉経につきまとうネガティブなもやもや はおれない と自覚し 経験を積み 溺れても はい を 伊藤比呂美は スパッスパッと切り裂いて そこ あがるすべを身につけておる ほかのものに溺れて執 には青い空が見えてくる 着を分散させればいいのだ と 心得た 摂食障害か おとこ 漢 という男性の美徳を象徴する文字にあえて ら 依存の対象を より自分を害さない むしろ自信 おんな というルビをふって 漢である という勇 と社会的承認の得られる 著述へとシフトしてくれた ましいタイトルで 婦人公論 に連載した歯に衣着 おかげで 私たちは彼女の悪戦苦闘の軌跡を共有する せない身辺雑記 女たち 俗にいうおばさんと呼ば ことが可能だ 普遍的な気づきだの 熱いシスターフ れるわれわれの持っている正義感 行動力 そして人 ッドのエールも汲み取ることができる きぬ 確執の多かった母とは 病床で あんたがいて楽し 生に対する覚悟と矜持をあらわした という 初冬やくそ暑いのは我ばかり そばに寄るだけで かったよ の一言で 呪いが解けた 父の娘 と自 蒸し蒸しと夫かな と タイトルにした俳句だけでも 認していた父子関係は 父の晩年 むしろ母以上に心 身につまされたり 笑わされたり 詩人の感性にかか を通わすのが困難になってしまった 時は移ろい 海 ると 台所でのたうっていた巨大などぶねずみの死に 千山千のおばさんとなった今 変化を楽しむ心の余裕 母の死ぬ瞬間にそばにいられなかった無念が重ねあわ も生まれている 年をとることを しみじみと肯定す されたり ホルモン補充療法による月経の一時的再開 る気持ちが伝染してくる 本著を舐めるように読了して 初潮の頃から閉経の が 真っ赤な血は 夜空いっぱいの打ち上げ花火や運 動会にはためく国旗みたいに 祝祭的 だったりする 頃のことを知っておきたかったなと思う ライフコー 女を武器 といっても セクシーでウッフン で スとしての閉経 実際の心身の変化や その時期 はなく 鬼子母神か山姥路線は 閉経前後の女の体を に直面するであろう社会的課題だの 心がまえがあっ めぐって ますます冴え渡る 思えば伊藤は 肯定感 たら その後の人生はずいぶん違うのではないか 読 や居場所を手に入れるために 四苦八苦してきた 者が同世代の女たちだけでは もったいない 若い世 摂食障害等の嗜癖人生から 胎児は実はうんこで 代にも 老いからは逃れられない男たちにも 読んで ある と発見する妊娠 出産 子育て そして離婚 ほしい フリーライター まつばら けい 10

研究会 研修会等の情報を下記まで 郵送または Fax03-5800-0478でお寄せください 112-0002 文京区小石川 2-3-23春日尚学ビル B1 日本性教育協会 JASE ジャーナル 係 6 2 日 10 30 16 20 6 平成 25 年度 第11回思春期保健相談士 16 日 13 30 16 50 学術研究大会 体験型講座 ホワイトハンズ大学 仙台 障がい者の性 白熱教室 性護のケーススタディを通して 内 容 性護基礎講義 ワークショップ 障がい者の性 白熱教 内 容 室 ケーススタディ① 障がい者の恋愛 セックス問題 基調講演 働くことと子育て 辰巳渚 社 家事塾 特別 ② 介護現場でのセクハラ問題 ③ 知的 発達障がい 講演 一般学術演題報告 ほか 児者への自慰指導 性的迷惑行為の防止問題 ④ 障が い者及び患者 がん 脳卒中 神経難病 の性生活問題 会 場 マツダ八重洲通ビル 9階マツダホール 東京都中央区八丁堀1 10 7 ⑤ 障がい者の家庭内での性的虐待問題 ⑥ 夜の世 界 における 女性障がい者の問題 主 催 社 日本家族計画協会 主催 問い合せ先等 会 場 仙台市青葉カルチャーセンター4階 404 号室 宮城県仙台市青葉区一番町2ー3ー 10 カルチャー仙台ビル 参加費 10,500 円 税込み 演題発表者は 7,350 円 税込み 定 員 200 名 受講資格 思春期保健相談士 上級含む 保健師 助産師 看 主催 問い合せ先等 護師 養護教諭 看護教諭 教職員等 その他の職種 参加費 初回の方 6,000 円 税 テキスト代 送料込み 2回目 の方の参加希望者は 要事前問い合わせ 問合せ先 社 日本家族計画協会 研修課 以降の方 3,000 円 税込み 事前配付テキストなし 学生 3,000 円 税 162-0843 東京都新宿区市谷田町1 10 保健会館新館 込み 事前配付テキストなし ホワイトハンズ会員は無料 TEL 03-3269-4785 FAX 03-3267-2658 定 員 20 名 問合せ先 一般社団法人ホワイトハンズ ホームページのフォームより申し込み URL http://www.privatecare.jp/20130616.html 6 22 土 9 00 17 30 日本 性とこころ 関連問題学会 6月 22 日 土 13 00 16 50 第5回学術研究大会 第1回 熊本県性教育研究会 ともに拓く LGBTIQ の会くまもと合同セミナー テーマ アディクションとセクシュアリティ 性的マイノリティの子どもたちにとって居心地のいい 学校環境を考える 内 容 講演 アディクションとセクシュアリティ 松下年子 横浜市立大学 おたくのセクシュアリティ 斉藤環 佐々木病院 自傷する女たち 現代社会にお 内 容 ける女の生きづらさ 上野千鶴子 ウィメンズアクションネ 基礎講座 LGBTIQ を正しく理解するために 大 橋勇一 熊本県性教育研究会 スピーチ及びディスカ ットワーク シンポジウム ほか ッション① 米国 日本 そして世界の LGBT 人権向上 ダニエル C キャラハン 在福岡米国領事館政治 経済担当領事 会 場 ホテルメトロポリタン 東京都豊島区西池袋1 6 1 ② 教育現場におけるジェンダー二元論 GID である僕が 主催 問い合せ先等 会 場 感じたこと 池袋真 GID 当事者 ほか 熊本大学医学部保健学科 E 棟5階 506 講義室 熊本市中央区九品寺4 24 1 主 催 日本 性とこころ 関連問題学会 参加費 一般 事前 5,000 円 当日 6,000 円 学生 事前 2,000 円 主催 問い合わせ等 当日 3,000 円 問合せ先 171-0021 東京都豊島区西池袋1 2 5 参加費 一般 1,500 円 資料代 会員 学生無料 医療法人榎本クリニック 日本 性とこころ 関連問題学会 主 催 熊本県性教育研究会 第5回学術研究大会事務局 担当 山崎 中嶋 共 催 ともに拓く LGBTIQ の会くまもと TEL 03-3982-5345 FAX 03-3982-6089 問合せ先 ともに拓く LGBTIQ の会くまもと事務局 担当 高瀬 E-mail sei-kokoro1@enomoto-clinic.jp TEL 080-5606-3525 E-mail hirakukai@i.softbank.jp 氏名 所属 メールアドレス等の連絡先を添えてお申し込み下さい 11

全国性教育研究団体連絡協議会 8月 8 日 木 12 30 16 30 8月 9 日 金 9 00 16 30 第 43 回 全国性教育研究大会 第 21 回 近畿 北陸 東海地区性教育研究大会 テーマ 主体的にいきることから 生き方を考える いのちをはぐくみ 人との絆を築くために 内 容 1日目 13 00 13 30 開 会 行 事 挨拶 祝辞 次期開催地紹介 13 35 14 05 開催地報告 奈良県性教育研究会の実践 奈良県性教育研究会 14 10 14 50 基 調 講 演 学校における性に関する指導について 城戸 茂 文部科学省国立教 育政策研究所特別活動調査官 15 00 16 30 記 念 講 演 万葉びとの生と性 上野 誠 奈良大学教授 中学校における性教育の実践 高等 2日目 9 30 12 00 分 科 会 小学校における性教育の実践 学校における性教育の実践 青少年の性教育の実践 性とメディア リテラシー 13 30 15 00 課題別講義 トランスジェンダー生徒交流会からの発信 土肥いつき 京都府立高 等学校教員 女性専用外来から見た性の課題と対応について 島本 郁子 奈良県立医科大学附属病院臨床教授 ライフスキル形成を基礎 とする性教育の理論と実践 川畑徹朗 神戸大学大学院教授 学校 の教育活動全体を通して行う性教育 堀内比佐子 全国性教育研究団 体連絡協議会監事 13 30 15 00 参加型講義 医療職サイドとして 性と生を考える 中谷里子 奈良県助産師会 ハートポケット助産師 15 10 16 40 報 告 青少年の避妊に関する意識と行動の変化 第 7 回 青少年の性行動 全国調査 より 土田陽子 大阪府立大学 非常勤講師 15 10 16 40 実 践 発 表 特別支援教育の視点で行う通常学級における性教育 中学校における実践 異性の友人との関わり 高校生に対する子宮頸がんの予防教育の実践 会 場 奈良市法蓮町 757-2 奈良 公立学校共済組合 春日野荘 定員 参加費 問い合わせ 参加費 一般 6,000 円 学生 4,000 円 1日参加 一般 3,000 円 学生 2,000 円 定員 300 名 主 催 全国性教育研究団体連絡協議会 近畿 北陸 東海地区性教育研究団体連絡協議会 奈良県性教育研究会 協 賛 日本性教育協会 後 援 内閣府 文部科学省 厚生労働省ほか 申込み 連絡先 634-0007 奈良県橿原市葛本町 625 橿原市立耳成小学校 養護教諭 大杉 好 TEL 0744-22-2265 FAX 0744-22-9642 締 切 平成 25 年 7 月 3 日 1