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験 震 時 報 第 71 巻 (2008)43~57 頁 活 火 山 カタログの 改 訂 と 火 山 活 動 度 による 活 火 山 の 分 類 (ランク 分 け)について The Revised List of Active Volcanoes in Japan and Classification (Ranking) of the Volcanoes Based on their Past 10,000 years of Activity 林 豊 1 宇 平 幸 一 Yutaka HAYASHI 1 and Kohichi UHIRA 2 2 (Received April 17, 2007: Accepted July 4, 2007) 1 はじめに 2003 年 1 月, 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 は, 活 火 山 の 定 義 を, 従 来 の 過 去 およそ 2000 年 以 内 に 噴 火 し た 火 山 及 び 現 在 活 発 な 噴 気 活 動 のある 火 山 から, 概 ね 過 去 1 万 年 以 内 に 噴 火 した 火 山, 及 び 現 在 活 発 な 噴 気 活 動 のある 火 山 に 拡 大 した. 新 しい 定 義 に 基 づき, 日 本 の 活 火 山 の 数 は 86 から 108(う ち 海 底 火 山 12, 北 方 領 土 の 火 山 11)に 増 加 した. また, 同 時 に 過 去 の 火 山 活 動 度 を 基 に 活 火 山 をラ ンク A,B,C の 3 つに 分 類 した 結 果 が 公 表 された ( 気 象 庁,2003B).これらの 結 果 の 解 説 はすでに いくつか 公 開 されている( 例 えば,Ui et al.,2003; 宇 井 ほか,2003; 宇 平,2003; 山 里,2004). 本 稿 では, 上 記 活 火 山 の 選 定 及 び 火 山 活 動 度 に よる 分 類 について, 検 討 の 経 緯 に 焦 点 を 当 てて 改 めて 詳 しく 紹 介 するとともに, 成 果 を 活 用 する 際 に 考 慮 すべき 事 柄 を 取 り 上 げる. 火 山 活 動 度 の 算 定 とその 性 質 については, 別 稿 ( 林 宇 平,2008) で 述 べる. 2 背 景 と 経 緯 火 山 に 関 する 基 礎 的 資 料 をカタログとして 整 備 す ることは, 火 山 研 究 を 推 進 し, 火 山 災 害 の 防 止 や 軽 減 のための 施 策 を 検 討 するために 必 要 不 可 欠 な 仕 事 である. 日 本 では, 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 ( 以 下, 予 知 連 )が 会 の 任 務 の 一 環 として,1974 年 の 設 置 当 初 から 活 火 山 カタログの 整 備 を 続 けてきた. 予 知 連 の 二 十 周 年 及 び 三 十 周 年 の 記 念 刊 行 物 の 中 でもこの 経 緯 が 簡 潔 に 解 説 されている( 気 象 庁 地 震 火 山 部 地 震 火 山 業 務 課 火 山 対 策 室,1995; 山 里, 2005). 活 火 山 の 定 義, 活 火 山 の 数, 活 火 山 カタロ グ 及 び 活 火 山 のランク 分 けに 関 する 経 緯 を 年 表 と して 表 1に 示 す. 2.1 活 火 山 の 定 義 とカタログの 変 遷 活 火 山 とは, 本 来 現 在 火 山 活 動 があるか, 過 去 に 火 山 活 動 の 記 録 があって 将 来 も 噴 火 する 可 能 性 のある 火 山 のことを 指 す.しかし, 長 期 にわ たって 活 動 を 休 止 したあと 活 動 を 再 開 する 噴 火 事 例 もあり, 将 来 の 噴 火 の 可 能 性 の 有 無 の 判 定 は 容 易 ではない. 日 本 では,ある 一 定 期 間 内 の 噴 火 活 動 の 有 無 を 中 心 にした 定 義 によって, 活 火 山 が 選 定 されてきた. 1975 年, 予 知 連 は, 当 時 の 活 火 山 の 定 義 であっ た 噴 火 の 記 録 のある 火 山 及 び 現 在 活 発 な 噴 気 活 動 のある 火 山 に 該 当 する 77 活 火 山 に 関 する 資 料 をとりまとめた.この 成 果 は 日 本 活 火 山 要 覧 ( 気 象 庁 編,1975)として, 刊 行 された. 1984 年 には, 基 礎 資 料 が 充 実 し, 一 部 の 火 山 の 名 称 変 更 が 反 映 された 日 本 活 火 山 総 覧 ( 気 象 庁 編,1984)が 刊 行 された. 1991 年, 予 知 連 は, 活 火 山 の 定 義 を 過 去 およ そ 2000 年 以 内 に 噴 火 した 火 山 及 び 現 在 活 発 な 噴 気 活 動 のある 火 山 に 変 更 した.この 定 義 に 該 当 1 気 象 研 究 所 地 震 火 山 研 究 部, Seismology and Volcanology Research Department, Meteorological Research Institute 2 地 震 火 山 部 地 震 津 波 監 視 課,Earthquake and Tsunami Observations Division, Seismological and Volcanological Department -43-

験 震 時 報 71 巻 1~4 号 表 1 日 本 の 活 火 山 の 定 義, 火 山 数 及 びカタログに 関 する 年 表 1952 年 3 月 火 山 観 測 法 ( 初 版 ) ( 気 象 庁,1952)に 日 本 における 活 休 火 山 一 覧 図 と 日 本 における 噴 火 年 代 表 が 収 録 される. 一 覧 図 には, 噴 火 記 録 のある 45 の 火 山 が 記 されているが, 休 火 山 と 活 火 山 は, 区 別 さ れていない. 1968 年 10 月 噴 火 記 録 のある 火 山 はもとより, 噴 火 記 録 はなくても, 過 去 10 世 紀 程 度 までの 間 に 噴 火 したことが 科 学 的 に 立 証 されていたり, 現 に 噴 気 地 熱 活 動 が 認 められたり, 時 には 噴 気 活 発 化 地 震 群 発 など のいわゆる 火 山 性 異 常 現 象 が 発 生 したりする 第 四 紀 火 山 として,63 活 火 山 の 分 布 図 と 概 要 が 火 山 観 測 指 針 の 付 録 ( 気 象 庁,1968)に 収 録 される. 1974 年 1975 年 10 月 1984 年 3 月 1991 年 2 月 1991 年 3 月 1996 年 10 月 1999 年 2 月 1999 年 5 月 2003 年 1 月 2005 年 3 月 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 ( 以 下, 予 知 連 )が 全 国 の 活 火 山 の 活 動 状 況, 噴 火 史 のとりまとめを 開 始 噴 火 の 記 録 がある 火 山,または 噴 気 活 動 が 活 発 な 火 山 として,77 活 火 山 の 概 要 を 含 む 日 本 活 火 山 要 覧 ( 気 象 庁,1975) 刊 行 初 めて 北 方 領 土 の 活 火 山 が 加 わる 各 活 火 山 の 基 礎 資 料 をまとめた 日 本 活 火 山 総 覧 ( 気 象 庁 編,1984) 刊 行 予 知 連 が 過 去 およそ 2000 年 以 内 に 噴 火 した 火 山 及 び 現 在 活 発 な 噴 気 活 動 のある 火 山 からなる 83 活 火 山 のリストを 発 表 連 絡 会 での 検 討 は 活 火 山 検 討 ワーキンググループ (1988~1991)が 中 心 83 活 火 山 の 基 礎 資 料 をまとめた 日 本 活 火 山 総 覧 ( 第 二 版 ) ( 気 象 庁 編,1991) 刊 行 予 知 連 での 検 討 の 結 果, 羅 臼 岳, 燧 ケ 岳, 北 福 徳 堆 が 活 火 山 に 追 加 予 知 連 での 検 討 は 火 山 噴 火 の 長 期 予 測 に 関 するワーキンググループ 活 火 山 サブグループ (1995 ~1999)が 中 心 長 期 予 測 ワーキンググループの 最 終 報 告 を 受 けて, 予 知 連 が, 活 火 山 の 一 万 年 定 義 とランク 分 けの 必 要 性 について 発 表 一 万 年 定 義 による 活 火 山 選 定 とランク 分 けの 検 討 を 目 的 として, 予 知 連 が 活 火 山 ワーキンググルー プ (1999~2003)を 設 置 活 火 山 ワーキンググループの 最 終 報 告 を 受 けて, 予 知 連 が 概 ね 過 去 1 万 年 以 内 に 噴 火 した 火 山, 及 び 現 在 活 発 な 噴 気 活 動 のある 火 山 という 新 しい 定 義 を 公 表,また, 新 定 義 で 選 定 した 108 活 火 山 の ランク 分 け 結 果 を 公 表 108 活 火 山 の 概 要 と 活 火 山 ランクを 含 む 基 礎 資 料 をまとめた 日 本 活 火 山 総 覧 ( 第 三 版 ) ( 気 象 庁 編,2005) 刊 行 - 44 -

活 火 山 カタログの 改 訂 と 火 山 活 動 度 による 活 火 山 の 分 類 (ランク 分 け)について する 83 活 火 山 のカタログ 日 本 活 火 山 総 覧 ( 第 2 版 ) ( 気 象 庁 編,1991)は,1996 年 には 一 部 改 訂 ( 1995 年 までの 火 山 活 動 の 記 述 を 追 加 )した 上 で 大 蔵 省 印 刷 局 から 市 販 され, 広 く 活 用 されるよう になった. 1996 年 には, 定 義 に 該 当 する 3 火 山 が 追 加 され, 活 火 山 の 数 は 86 となった( 気 象 庁,1997).しか し,この 3 火 山 の 詳 しい 情 報 は, 学 術 刊 行 物 や 各 種 報 告 書 にも 紹 介 されず, 広 くは 伝 えられてはい ない. 2003 年, 活 火 山 の 新 しい 定 義 概 ね 過 去 1 万 年 以 内 に 噴 火 した 火 山, 及 び 現 在 活 発 な 噴 気 活 動 の ある 火 山 に 基 づいて 108 の 活 火 山 が 選 定 され, これらの 活 火 山 のランクと 火 山 概 要 を 含 めた 活 火 山 カタログ 日 本 活 火 山 総 覧 ( 第 3 版 ) ( 気 象 庁 編,2005)が 市 販 されている. 各 カタログにおける 活 火 山 リストは 表 2,3 のと おりである. 2.2 新 しい 活 火 山 の 定 義 による 選 定 1995 年 以 降, 活 火 山 の 定 義 や 選 定 に 係 わる 議 論 は, 予 知 連 の 委 員 及 び 臨 時 委 員 の 一 部 で 構 成 され るワーキンググループで 行 われてきた. 予 知 連 の ワーキンググループ( 2007 年 4 月 以 降 は, 検 討 会 ) は, 運 営 要 領 運 営 細 則 に 基 づき, 特 定 の 課 題 に ついて 調 査 する 目 的 で, 期 限 を 定 めて 設 置 される. 2.2.1 火 山 噴 火 の 長 期 予 測 に 関 するワーキンググ ループ での 議 論 1999 年 2 月, 予 知 連 は 火 山 噴 火 の 長 期 的 な 予 測 に 関 するワーキンググループ (1995~ 1999 年 ; 世 話 人 : 井 田 喜 明, 宇 井 忠 英, 岡 田 弘 [1995~ 1997], 藤 井 敏 嗣, 石 原 和 弘 [1997~ 1999])の 最 終 報 告 を 承 認 した.この 報 告 書 ( 気 象 庁,1999)では, 最 近 一 万 年 以 内 の 噴 火 の 有 無 を 基 準 とした 活 火 山 の 定 義 の 必 要 性 について 言 及 している. 定 義 の 変 更 に より, 活 火 山 の 多 様 性 が 著 しく 拡 大 するため, 火 山 に 対 する 施 策 について 総 合 的 に 検 討 するための 手 がかりを 与 える 指 標 が 必 要 になる. 報 告 書 では, さらに, 火 山 固 有 の 要 素 と 社 会 的 要 素 を 定 量 的 な 危 険 度 として 評 価 し, 活 火 山 をランク 分 けする 必 要 性 があることが 指 摘 された. 活 火 山 の 定 義 を 拡 大 する 必 要 があるとされた 理 由 の 一 つは, 日 本 の 火 山 では 2 千 年 を 超 える 休 止 期 間 を 経 て 噴 火 活 動 を 再 開 することがあると 考 え られるためである.Blong(1984)が 世 界 の 火 山 噴 火 についてまとめた 統 計 によれば,1 千 年 を 超 える 休 止 期 間 の 後 に 噴 火 した 実 例 が 少 数 ながらある. 例 えば, 米 国 スミソニアン 発 行 の 世 界 の 火 山 カタ ログ(Simkin and Siebert,1994)では, 御 嶽 山 が 1979 年 に 約 8 千 年 ぶりに 噴 火 したほか, 伊 豆 東 部 火 山 群 が 1989 年 に 約 3 千 年 ぶりに 噴 火 したとある.こ れらの 例 は, 仮 に 過 去 およそ 2000 年 以 内 に 噴 火 した 火 山 だけを 抽 出 したリストを 作 ると,リス ト 外 の 火 山 が 将 来 噴 火 する 事 態 を 生 じる 可 能 性 が あることを 示 している.Simkin and Siebert(1994) によれば, 日 本 に 見 られる 火 山 のタイプでは, 噴 火 の 活 動 間 隔 が, 大 規 模 カルデラを 形 成 する 火 山 では 概 ね 十 万 年 以 下,それを 除 く 多 くの 成 層 火 山 や 単 成 火 山 群 では 1 万 年 以 下 である. 2.2.2 活 火 山 ワーキンググループでの 議 論 上 記 検 討 結 果 を 引 き 継 ぐ 形 で, 予 知 連 は, 同 年 5 月, 新 たに 活 火 山 ワーキンググループ (1999 ~2003 年 ; 世 話 役 : 井 田 喜 明, 宇 井 忠 英 )を 設 置 し, 活 火 山 の 選 定 及 び 長 期 的 な 活 動 特 性 の 評 価 等 について 検 討 を 始 めた. ワーキングループの 設 置 期 間 は 当 初 は 2 年 間 の 予 定 であったが,2000 年 に 噴 火 した 有 珠 山 及 び 三 宅 島 の 火 山 活 動 評 価 等 に 係 る 任 務 を 優 先 したこと もあって, 設 置 期 間 が 2 年 延 長 された. 同 ワーキ ンググループでの 検 討 結 果 は, 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 による 活 火 山 の 選 定 及 び 火 山 活 動 度 による 分 類 (ランク 分 け)について ( 気 象 庁,2003B)と してとりまとめられ,2003 年 1 月 21 日 に 公 表 さ れた. 活 火 山 の 選 定 等 には, 多 岐 にわたる 膨 大 な 検 討 事 項 がある.このため, 火 山 地 質 学 等 の 専 門 家 及 びコンサルタント 会 社 の 協 力 を 得 て, 事 務 局 レベ ルで 基 礎 的 な 準 備 検 討 が 進 められた.また,ワ - 45 -

験 震 時 報 71 巻 1~4 号 表 2 過 去 の 活 火 山 カタログに 記 載 された 活 火 山 のリスト 1952 年 火 山 観 測 法 45 活 休 火 山 ( 陸 上 島 嶼 43, 海 底 火 山 2) 活 火 山 と 休 火 山 の 区 分 はなされていない 硫 黄 山, 十 勝 岳, 樽 前 山, 有 珠 山, 北 海 道 駒 ケ 岳, 北 海 道 大 島, 岩 木 山, 秋 田 焼 山, 岩 手 山, 秋 田 駒 ケ 岳, 鳥 海 山, 須 川 岳 ( 栗 駒 山 ), 藏 王 山, 吾 妻 山, 安 達 太 良 山, 盤 梯 山, 那 須 山, 日 光 白 根 山, 赤 城 山, 草 津 白 根 山, 浅 間 山, 新 潟 焼 山, 焼 岳, 白 山, 富 士 山, 三 原 山, 新 島, 神 津 島, 三 宅 島, 八 丈 島, 青 ケ 島,ベヨネーズ 礁 スミ ス 礁, 鳥 島, 鶴 見 岳, 九 重 山, 阿 蘇 山, 雲 仙 岳, 霧 島 山, 桜 島, 開 聞 岳, 硫 黄 島, 口 之 永 良 部 島, 中 之 島, 諏 訪 之 瀬 島 1968 年 火 山 観 測 指 針 63 活 火 山 ( 陸 上 島 嶼 59, 海 底 火 山 4) このほかに 補 遺 ( 注 ) 知 床 硫 黄 山, 摩 周,アトサヌプリ, 雌 阿 寒 岳, 大 雪 山, 十 勝 岳, 樽 前 山, 有 珠 山, 北 海 道 駒 ケ 岳, 恵 山, 渡 島 大 島, 恐 山, 岩 木 山, 八 甲 田 山, 秋 田 焼 山, 八 幡 平, 岩 手 山, 秋 田 駒 ケ 岳, 鳥 海 山, 栗 駒 山, 鳴 子, 蔵 王 山, 吾 妻 山, 安 達 太 良 山, 磐 梯 山, 那 須 岳, 日 光 白 根 山, 赤 城 山, 草 津 白 根 山, 浅 間 山, 新 潟 焼 山, 妙 高 山, 弥 陀 ケ 原, 焼 岳, 乗 鞍 岳, 御 岳 山, 白 山, 富 士 山, 箱 根 山, 大 室 山, 伊 豆 大 島, 新 島, 神 津 島, 三 宅 島, 八 丈 島, 青 ケ 島,ベヨネイス 列 岩,スミス 島, 伊 豆 鳥 島, 鶴 見 岳, 九 重 山, 阿 蘇 山, 雲 仙 岳, 霧 島 山, 桜 島, 開 聞 岳,トカラ 硫 黄 島, 口 永 良 部 島, 中 之 島, 諏 訪 之 瀬 島, 北 硫 黄 島 付 近 海 底 火 山, 硫 黄 島, 南 硫 黄 島 付 近 海 底 火 山 1975 年 日 本 活 火 山 要 覧 77 活 火 山 ( 陸 上 島 嶼 61, 海 底 火 山 6, 北 方 領 土 10) 変 更 追 加 された 火 山 知 床 硫 黄 山, 摩 周,アトサヌプリ, 雌 阿 寒 岳, 大 雪 山, 十 勝 岳, 樽 前 山, 有 珠 山, 北 海 道 駒 ケ 岳, 恵 山, 渡 島 大 島, 恐 山, 岩 木 山, 八 甲 田 山, 秋 田 焼 山, 八 幡 平, 岩 手 山, 秋 田 駒 ケ 岳, 鳥 海 山, 栗 駒 山, 鳴 子, 蔵 王 山, 吾 妻 山, 安 達 太 良 山, 磐 梯 山, 那 須 岳, 日 光 白 根 山, 赤 城 山, 草 津 白 根 山, 浅 間 山, 新 潟 焼 山, 妙 高 山, 彌 陀 ケ 原 ( 表 記 の 変 更 ), 焼 岳, 乗 鞍 岳, 御 岳 山, 白 山, 富 士 山, 箱 根 山, 大 室 山, 伊 豆 大 島, 新 島, 神 津 島, 三 宅 島, 八 丈 島, 青 ケ 島,ベヨネース 列 岩 ( 表 記 の 変 更 ),スミス 島, 伊 豆 鳥 島, 西 之 島, 北 硫 黄 島 付 近 海 底 火 山, 硫 黄 島, 南 硫 黄 島 付 近 海 底 火 山, 鶴 見 岳, 九 重 山, 阿 蘇 山, 雲 仙 岳, 霧 島 山, 桜 島, 開 聞 岳,トカラ 硫 黄 島, 口 永 良 部 島, 中 之 島, 諏 訪 之 瀬 島, 沖 縄 鳥 島, 西 表 島 北 北 東 海 底 火 山, 南 硫 黄 島 南 東 沖 海 底 火 山, 茂 世 路 岳, 散 布 山, 指 臼 岳, 小 田 萌 山, 小 散 布 山, 阿 登 佐 岳,ベルタルベ, 爺 爺 岳, 羅 臼 山, 泊 山 1984 年 日 本 活 火 山 総 覧 77 活 火 山 ( 陸 上 島 嶼 61, 海 底 火 山 6, 北 方 領 土 10) 変 更 があった 火 山 知 床 硫 黄 山, 摩 周,アトサヌプリ, 雌 阿 寒 岳, 大 雪 山, 十 勝 岳, 樽 前 山, 有 珠 山, 北 海 道 駒 ケ 岳, 恵 山, 渡 島 大 島, 恐 山, 岩 木 山, 八 甲 田 山, 秋 田 焼 山, 八 幡 平, 岩 手 山, 秋 田 駒 ケ 岳, 鳥 海 山, 栗 駒 山, 鳴 子, 蔵 王 山, 吾 妻 山, 安 達 太 良 山, 磐 梯 山, 那 須 岳, 日 光 白 根 山, 赤 城 山, 草 津 白 根 山, 浅 間 山, 新 潟 焼 山, 妙 高 山, 弥 陀 ケ 原 ( 表 記 の 変 更 ), 焼 岳, 乗 鞍 岳, 御 岳 山, 白 山, 富 士 山, 箱 根 山, 大 室 山, 伊 豆 大 島, 新 島, 神 津 島, 三 宅 島, 八 丈 島, 青 ケ 島,ベヨネース 列 岩,スミス 島, 伊 豆 鳥 島, 西 之 島, 北 硫 黄 島 付 近 海 底 火 山, 硫 黄 島, 南 硫 黄 島 付 近 海 底 火 山, 鶴 見 岳, 九 重 山, 阿 蘇 山, 雲 仙 岳, 霧 島 山, 桜 島, 開 聞 岳, 薩 摩 硫 黄 島 (トカラ 硫 黄 島 を 名 称 変 更 ), 口 永 良 部 島, 中 之 島, 諏 訪 之 瀬 島, 硫 黄 鳥 島 ( 沖 縄 鳥 島 を 名 称 変 更 ), 西 表 島 北 北 東 海 底 火 山, 南 硫 黄 島 南 東 沖 海 底 火 山, 茂 世 路 岳, 散 布 山, 指 臼 岳, 小 田 萌 山, 焼 山 ( 択 捉 島 )( 小 散 布 山 を 名 称 変 更 ), 阿 登 佐 岳,ベルタルベ 山, 爺 爺 岳, 羅 臼 山, 泊 山 1991 年 3 月 日 本 活 火 山 総 覧 ( 第 二 版 ) 83 活 火 山 ( 陸 上 島 嶼 66, 海 底 火 山 7, 北 方 領 土 10) 変 更 追 加 された 火 山 知 床 硫 黄 山, 摩 周,アトサヌプリ, 雌 阿 寒 岳, 丸 山, 大 雪 山, 十 勝 岳, 樽 前 山, 恵 庭 岳, 倶 多 楽, 有 珠 山, 北 海 道 駒 ケ 岳, 恵 山, 渡 島 大 島, 恐 山, 岩 木 山, 八 甲 田 山, 十 和 田, 秋 田 焼 山, 八 幡 平, 岩 手 山, 秋 田 駒 ケ 岳, 鳥 海 山, 栗 駒 山, 鳴 子, 蔵 王 山, 吾 妻 山, 安 達 太 良 山, 磐 梯 山, 那 須 岳, 日 光 白 根 山, 赤 城 山, 榛 名 山, 草 津 白 根 山, 浅 間 山, 新 潟 焼 山, 妙 高 山, 弥 陀 ケ 原, 焼 岳, 乗 鞍 岳, 御 嶽 山 ( 表 記 の 変 更 ), 白 山, 富 士 山, 箱 根 山, 伊 豆 東 部 火 山 群, 伊 豆 大 島, 新 島, 神 津 島, 三 宅 島, 八 丈 島, 青 ケ 島,ベヨネース 列 岩, 須 美 寿 島 ( 漢 字 表 記 への 変 更 ), 伊 豆 鳥 島, 西 之 島, 海 徳 海 山, 噴 火 浅 根 ( 北 硫 黄 島 付 近 海 底 火 山 を 2 火 山 に 分 離 ), 硫 黄 島, 福 徳 岡 ノ 場 ( 南 硫 黄 島 付 近 海 底 火 山 を 名 称 変 更 ), 鶴 見 岳, 九 重 山, 阿 蘇 山, 雲 仙 岳, 霧 島 山, 桜 島, 開 聞 岳, 薩 摩 硫 黄 島, 口 永 良 部 島, 中 之 島, 諏 訪 之 瀬 島, 硫 黄 鳥 島, 西 表 島 北 北 東 海 底 火 山, 南 硫 黄 島 南 東 沖 海 底 火 山, 茂 世 路 岳, 散 布 山, 指 臼 岳, 小 田 萌 山, 択 捉 焼 山 ( 焼 山 ( 択 捉 島 )を 名 称 変 更 ), 択 捉 阿 登 佐 岳 ( 阿 登 佐 岳 を 名 称 変 更 ),ベルタルベ 山, 爺 爺 岳, 羅 臼 山, 泊 山 ( 注 ) 火 山 観 測 指 針 には,63 活 火 山 のほか 補 遺 として, 海 底 噴 火 の 記 録 が 残 っているが 信 頼 性 はうすい 地 点 ( 伊 豆 鳥 島 近 海, 北 硫 黄 島 北 西 方 洋 上, 台 湾 ~マリアナ 諸 島 の 中 間 の 洋 上 )が 挙 げられている.これらのうち, 天 文 年 間 の 北 硫 黄 島 北 西 方 洋 上 での 海 底 噴 火 は, 海 徳 海 山 の 活 動 に 対 応 するとも 考 えられるが, 詳 細 は 不 明 である( 気 象 庁,2005). 残 りの 二 地 点 は, 海 底 噴 火 の 記 録 に 対 応 する 海 底 活 火 山 が 知 られていない. - 46 -

活 火 山 カタログの 改 訂 と 火 山 活 動 度 による 活 火 山 の 分 類 (ランク 分 け)について 表 3 2003 年 に 新 たに 追 加 された 活 火 山, 及 び 範 囲 などが 変 更 された 活 火 山 No. 区 分 火 山 名 英 名 所 在 地 北 緯 東 経 標 高 水 深 (m) 活 火 山 の 選 定 等 の 理 由 9 新 利 尻 山 Rishirizan 北 海 道 45 10'43" 141 14'31" 1,721( 利 尻 山 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 14 新 羊 蹄 山 Yoteisan 北 海 道 42 49'36" 140 48'41" 1,898( 羊 蹄 山 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 15 新 ニセコ Niseko 北 海 道 42 53'07" 42 52'30" 140 38'25" 140 39'32" 1,116(イワオヌプリ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 1,308(ニセコアンヌプリ) 30 新 肘 折 Hijiori 山 形 県 38 36'01" 140 09'42" 545( 三 角 山 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 35 新 沼 沢 Numazawa 福 島 県 37 26'40" 139 33'58" 835( 前 山 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 36 57'12" 139 47'19" 1,184( 富 士 山 ) 38 新 高 原 山 Takaharayama 栃 木 県 現 在, 活 発 な 噴 気 活 動 があることから, 新 たに 活 火 山 とする. 36 54'00" 139 46'36" 1,795( 釈 迦 ケ 岳 ) 44 新 横 岳 Yokodake 長 野 県 36 05'14" 138 19'13" 2,480( 横 岳 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 49 新 アカンダナ 山 Akandanayama 55 名 伊 豆 東 部 火 山 群 Izu-Tobu Volcanoes 長 野 県 岐 阜 県 36 12'01" 137 34'22" 2,109(アカンダナ 山 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 東 京 都 34 54'11" 139 05'41" 580( 大 室 山 ) 英 名 を"Izu-Tobu Volcano Group"から 変 更 する. 57 新 利 島 Toshima 東 京 都 34 31'13" 139 16'45" 508( 宮 塚 山 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 61 新 御 蔵 島 Mikurajima 東 京 都 33 52'28" 139 36'07" 851( 御 山 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 62 範 八 丈 島 Hachijojima 東 京 都 33 08'13" 139 45'58" 854( 西 山 ) 西 山 に 加 えて 東 山 においても, 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 がある 33 05'31" 139 48'44" 701( 東 山 ) ことから, 活 火 山 の 範 囲 を 拡 大 する. 67 新 孀 婦 岩 Sofugan 東 京 都 29 47'37" 140 20'32" 99 周 辺 の 水 深 500m 以 浅 の 海 域 で 変 色 水 が 確 認 されていること から, 新 たに 活 火 山 とする. 69 新 海 形 海 山 Kaikata Seamount 東 京 都 26 40' 141 00' -162 水 深 500m 以 浅 の 海 域 で 変 色 水 が 確 認 されていることから, 新 たに 活 火 山 とする. 74 名 福 徳 岡 ノ 場 Fukutoku- Okanoba 東 京 都 24 17.1' 141 28.9' -22 英 名 を"Fukutoku-Oka-no-Ba"から 変 更 する. 75 分 南 日 吉 海 山 Minami-Hiyoshi Seamount 東 京 都 23 30.0' 141 56.1' -84 76 分 日 光 海 山 Nikko Seamount 東 京 都 23 05' 142 18' -612 近 年, 南 日 吉 海 山 では 海 底 噴 火 が, 日 光 海 山 では 変 色 水 が 確 認 されている. 観 測 精 度 が 向 上 し, 両 火 山 の 活 動 が 区 別 で きるようになっていることから, 南 硫 黄 島 南 東 沖 海 底 火 山 の 一 部 を 独 立 して, 南 日 吉 海 山 と 日 光 海 山 をそれぞれ 活 火 山 とす る. 77 新 三 瓶 山 Sanbesan 島 根 県 35 08'26" 132 37'18" 1,126( 男 三 瓶 山 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 78 新 阿 武 火 山 群 Abu Volcanoes 山 口 県 34 26'58" 131 24'07" 112( 笠 山 ) 単 成 火 山 が 分 布 しており, 最 新 の 活 動 が 一 万 年 前 以 降 である ことから, 単 成 火 山 群 として, 新 たに 活 火 山 とする. 79 範 名 鶴 見 岳 伽 藍 岳 Tsurumidake Garandake and 大 分 県 33 17'12" 33 19'03" 131 25'47" 131 25'39" 1,375( 鶴 見 岳 ) 1,045( 伽 藍 岳 ) 鶴 見 岳 に 加 えて 伽 藍 岳 においても, 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 が あることから, 活 火 山 の 範 囲 を 拡 大 する.また, 複 数 の 活 動 中 心 があることを 明 確 にするために, 名 称 を 変 更 する. 80 新 由 布 岳 Yufudake 大 分 県 33 16'56" 131 23'25" 1,583( 由 布 岳 ) 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 84 新 福 江 火 山 群 Fukue Volcanoes 長 崎 県 32 39'23" 128 50'55" 315( 鬼 岳 ) 86 新 米 丸 住 吉 池 Yonemaru Sumiyoshiike and 鹿 児 島 県 31 46'27" 31 46'17" 130 34'05" 130 35'31" 87 新 若 尊 Wakamiko 鹿 児 島 県 31 39.2' 130 45.9' -200 89 新 池 田 山 川 Ikeda and Yamagawa 鹿 児 島 県 31 12'48" 31 12'36" 130 34'02" 130 38'12" 14( 米 丸 中 央 付 近 ) 40( 住 吉 池 中 央 付 近 ) 256( 鍋 島 岳 ) 3( 番 所 鼻 ) 91 範 薩 摩 硫 黄 島 Satsuma-Iojima 鹿 児 島 県 30 47'35" 130 18'19" 704( 硫 黄 岳 ) 93 新 口 之 島 Kuchinoshima 鹿 児 島 県 29 58'05" 29 57'40" 129 55'32" 129 55'58" 628( 前 岳 ) 425( 燃 岳 ) 単 成 火 山 が 分 布 しており, 最 新 の 活 動 が 一 万 年 前 以 降 である ことから, 単 成 火 山 群 として, 新 たに 活 火 山 とする. 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 現 在, 海 底 で 活 発 な 熱 水 活 動 が 認 められることから, 新 たに 活 火 山 とする. 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 薩 摩 硫 黄 島 島 内 に 加 えて 周 辺 の 浅 い 海 域 においても, 海 底 噴 火 があることから, 活 火 山 の 範 囲 を 拡 大 する. 一 万 年 前 以 降 に 噴 火 があることから, 新 たに 活 火 山 とする 北 方 領 土 105 新 ルルイ 岳 Ruruidake 44 27'20" 146 08'21" 1,486 現 在, 活 発 な 噴 気 活 動 があることから, 新 たに 活 火 山 とする. ( 国 後 島 ) 気 象 庁 (2003B)の 表 を, 活 火 山 総 覧 ( 第 3 版 ) ( 気 象 庁 編,2005)をもとに 加 除 修 正 した. ( 注 1) No.は, 表 4 と 同 じ. ( 注 2) 区 分 の 新 は 新 たに 活 火 山 とする 火 山, 範 は 既 存 の 活 火 山 の 範 囲 を 変 更 する 火 山, 分 は 既 存 の 活 火 山 を 分 割 する 火 山, 名 は 名 称 を 変 更 する 火 山. ( 注 3) 緯 度 経 度 は 世 界 測 地 系 による. 標 高 水 深 の 負 の 数 は 水 深 を 示 す. - 47 -

験 震 時 報 71 巻 1~4 号 ーキンググループの 議 論 の 必 要 に 応 じて 委 員 以 外 の 専 門 家 が 招 集 され,さらに, 研 究 集 会 での 発 表 ( 宇 井 ほか, 2002; 千 葉 ほか,2002)を 通 じて, 検 討 段 階 で 研 究 者 からの 意 見 が 収 集 された. 実 際 に 活 火 山 を 選 定 する 作 業 の 最 初 の 段 階 では, 第 四 紀 火 山 カタログ 委 員 会 (1999)が 発 行 した 第 四 紀 火 山 のカタログが 基 礎 資 料 として 用 いられた. これは, 核 燃 料 サイクル 機 構 ( 地 層 の 長 期 安 定 性 に 関 する 検 討 委 員 会 火 山 部 会 )の 調 査 成 果 で, 第 四 紀 つまり 最 近 約 2 百 万 年 以 内 に 火 山 活 動 が 認 め られる 火 山 のカタログである. 約 350 の 第 四 紀 火 山 の 中 から, 数 万 年 以 内 に 火 山 活 動 がなかったこ とが 明 白 な 火 山, 従 来 の 活 火 山 リストに 含 まれて いる 火 山 を 除 くと,60 余 りの 火 山 が 残 る.これら の 火 山 を 個 々に, 過 去 1 万 年 以 内 に 噴 火 活 動 があ るか, 現 在 の 活 動 状 況 はどうかが 検 討 された. 検 討 に 際 しては, 空 中 写 真 と 地 形 図 による 火 山 地 形 の 検 討 を 行 うとともに, 地 質 調 査 に 基 づく 噴 火 履 歴 情 報 や 噴 火 年 代 測 定 等 の 情 報 が 活 用 された. 過 去 約 1 万 年 以 内 とは, 概 ね 最 終 氷 河 期 終 了 後 の 完 新 世 を 指 すことになる. 完 新 世 に 堆 積 した 特 徴 的 な 黒 土 という 土 壌 や, 氷 河 地 形 などの 特 徴 的 な 地 形 が 中 緯 度 地 域 に 広 く 分 布 する 日 本 にとっては, 過 去 約 1 万 年 以 内 の 活 動 の 有 無 というのは, 地 形 と 地 質 の 情 報 を 頼 りにする 活 火 山 かどうかの 選 定 作 業 が 行 いやすい 定 義 でもある. 活 火 山 に 選 定 すべきとされた 火 山 については, ランク 分 けする 方 法 を 検 討 した.ランク 分 けは, 既 往 調 査 から, 噴 火 履 歴 と 近 年 観 測 された 火 山 活 動 の 情 報 を 収 集 し,それらをもとに 長 期 短 期 の 両 面 から 総 合 的 に 検 討 した. 3 報 告 書 の 要 点 平 成 15 年 1 月 21 日 に 公 表 された 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 による 活 火 山 の 選 定 及 び 火 山 活 動 度 によ る 分 類 (ランク 分 け)について の 要 点 は 下 述 の とおりである.なお, 公 表 された 資 料 の 全 文 は, 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 会 報 ( 気 象 庁,2003B)に 掲 載 されている. (1) 活 火 山 の 定 義 活 火 山 の 定 義 を 次 のとおり 変 更 した. 従 来 の 定 義 : 過 去 およそ 2000 年 以 内 に 噴 火 し た 火 山 及 び 現 在 活 発 な 噴 気 活 動 のある 火 山 新 しい 定 義 : 概 ね 過 去 1 万 年 以 内 に 噴 火 した 火 山 及 び 現 在 噴 気 活 動 のある 火 山 (2) 活 火 山 の 選 定 新 しい 定 義 に 従 って, 新 たに 21 の 火 山 を 活 火 山 として 選 定 した. 南 硫 黄 島 南 東 沖 海 底 火 山 と 総 称 されていた 火 山 のうち, 日 本 の 排 他 的 経 済 水 域 内 に 位 置 する 南 日 吉 海 山 と 日 光 海 山 を 分 離 独 立 させ た. 以 上 により, 活 火 山 の 数 は 従 来 の 86 から 108 となった. 過 去 一 万 年 以 内 に 噴 火 した 火 山 が 隣 接 している ことから, 鶴 見 岳, 八 丈 島, 薩 摩 硫 黄 島 の 各 活 火 山 の 範 囲 を 拡 大 し,このうち 鶴 見 岳 は 名 称 を 鶴 見 岳 伽 藍 岳 に 変 更 した. 伊 豆 東 部 火 山 群 と 福 徳 岡 ノ 場 の 英 名 は 適 切 に 改 めた. 新 たに 追 加 された 活 火 山, 及 び 範 囲 や 名 称 など が 変 更 された 活 火 山 は, 表 3 のとおり.また, 全 活 火 山 の 分 布 は 図 1,リストは 表 4 のとおりであ る. (3) 活 火 山 の 分 類 (ランク 分 け) 火 山 学 的 に 評 価 された 火 山 活 動 度 によって 活 火 山 の 分 類 (ランク 分 け)を 行 った. 火 山 活 動 度 は, 長 期 と 短 期 の 両 面 から 検 討 した. 長 期 の 火 山 活 動 度 には 噴 出 物 と 噴 火 履 歴 の 情 報 を, 短 期 の 火 山 活 動 度 には 気 象 庁 等 の 近 代 観 測 による 火 山 活 動 に 関 するデータを 用 いた. 活 火 山 の 分 類 には, 火 山 活 動 以 外 の 社 会 的 な 側 面 などは 加 味 されていない. 具 体 的 には, 火 山 活 動 度 について100 年 活 動 度 指 数 と 1 万 年 活 動 度 指 数 を 定 義 し( 林 宇 平,2008), 両 指 数 によって 活 火 山 をランクA,ランクB,ラ ン ク Cに 分 類 した( 表 4).ただし, 海 底 のみに 火 山 活 動 が 認 められる12の 活 火 山 と, 北 方 領 土 に 位 置 する11の 活 火 山 についてデータが 不 足 しているた め,ランク 分 けの 対 象 外 とした. このように, 活 火 山 の 分 類 には, 社 会 的 な 影 響 を 考 慮 していない. (4) 新 たに 追 加 された 活 火 山 について 新 たに 追 加 されランク 分 けの 対 象 となる17の 活 - 48 -

活火山カタログの改訂と火山活動度による活火山の分類 ランク分け について 図 1 新しい定義に基づいて選定された 108 活火山の分布 (気象庁,2003B) 49

験 震 時 報 71 巻 1~4 号 表 4 新 しい 定 義 に 基 づいて 選 定 された 活 火 山 一 覧 ( 気 象 庁,2003B) (1/3) ラ No. 火 山 名 英 名 ン ク 所 在 地 1 知 床 硫 黄 山 Shiretoko-Iozan B 北 海 道 2 羅 臼 岳 Rausudake B 北 海 道 3 摩 周 Mashu B 北 海 道 4 アトサヌプリ Atosanupuri C 北 海 道 5 雌 阿 寒 岳 Meakandake B 北 海 道 6 丸 山 Maruyama C 北 海 道 7 大 雪 山 Taisetsuzan C 北 海 道 8 十 勝 岳 Tokachidake A 北 海 道 9 利 尻 山 Rishirizan C 北 海 道 活 火 山 として 追 加 10 樽 前 山 Tarumaesan A 北 海 道 11 恵 庭 岳 Eniwadake C 北 海 道 12 倶 多 楽 Kuttara C 北 海 道 13 有 珠 山 Usuzan A 北 海 道 14 羊 蹄 山 Yoteisan C 北 海 道 活 火 山 として 追 加 15 ニセコ Niseko C 北 海 道 活 火 山 として 追 加 16 北 海 道 駒 ケ 岳 Hokkaido-Komagatake A 北 海 道 17 恵 山 Esan B 北 海 道 18 渡 島 大 島 Oshima-Oshima B 北 海 道 19 恐 山 Osorezan C 青 森 県 20 岩 木 山 Iwakisan B 青 森 県 21 八 甲 田 山 Hakkodasan C 青 森 県 22 十 和 田 Towada B 青 森 県 秋 田 県 23 秋 田 焼 山 Akita-Yakeyama B 秋 田 県 24 八 幡 平 Hachimantai C 岩 手 県 秋 田 県 25 岩 手 山 Iwatesan B 岩 手 県 26 秋 田 駒 ケ 岳 Akita-Komagatake B 岩 手 県 秋 田 県 27 鳥 海 山 Chokaisan B 秋 田 県 山 形 県 28 栗 駒 山 Kurikomayama B 岩 手 県 宮 城 県 秋 田 県 29 鳴 子 Naruko C 宮 城 県 30 肘 折 Hijiori C 山 形 県 活 火 山 として 追 加 31 蔵 王 山 Zaozan B 宮 城 県 山 形 県 32 吾 妻 山 Azumayama B 山 形 県 福 島 県 33 安 達 太 良 山 Adatarayama B 福 島 県 34 磐 梯 山 Bandaisan B 福 島 県 35 沼 沢 Numazawa C 福 島 県 活 火 山 として 追 加 36 燧 ケ 岳 Hiuchigatake C 福 島 県 37 那 須 岳 Nasudake B 栃 木 県 38 高 原 山 Takaharayama C 栃 木 県 活 火 山 として 追 加 39 日 光 白 根 山 Nikko-Shiranesan C 栃 木 県 群 馬 県 40 赤 城 山 Akagisan C 群 馬 県 注 1) ランクの - は 海 底 のみに 火 山 活 動 がある 活 火 山 または 北 方 領 土 の 活 火 山 で, 活 動 度 指 数 の 評 価 とランク 分 けの 対 象 外.ランクは 活 動 度 が 高 い 順 にA,B,C. 注 2) 火 山 名 と 英 名 の 太 字 は 変 更 があった 活 火 山. 備 考 - 50 -

活 火 山 カタログの 改 訂 と 火 山 活 動 度 による 活 火 山 の 分 類 (ランク 分 け)について 表 4 新 しい 定 義 に 基 づいて 選 定 された 活 火 山 一 覧 ( 気 象 庁,2003B) (2/3) No. 火 山 名 英 名 ラ ン ク 所 在 地 備 考 41 榛 名 山 Harunasan B 群 馬 県 42 草 津 白 根 山 Kusatsu-Shiranesan B 群 馬 県 43 浅 間 山 Asamayama A 群 馬 県 長 野 県 44 横 岳 Yokodake C 長 野 県 活 火 山 として 追 加 45 新 潟 焼 山 Niigata-Yakeyama B 新 潟 県 46 妙 高 山 Myokosan C 新 潟 県 47 弥 陀 ケ 原 Midagahara C 富 山 県 48 焼 岳 Yakedake B 長 野 県 岐 阜 県 49 アカンダナ 山 Akandanayama C 長 野 県 岐 阜 県 活 火 山 として 追 加 50 乗 鞍 岳 Norikuradake C 長 野 県 岐 阜 県 51 御 嶽 山 Ontakesan B 長 野 県 岐 阜 県 52 白 山 Hakusan C 石 川 県 岐 阜 県 53 富 士 山 Fujisan B 山 梨 県 静 岡 県 54 箱 根 山 Hakoneyama B 神 奈 川 県 55 伊 豆 東 部 火 山 群 Izu-Tobu Volcanoes B 静 岡 県 英 名 をIzu-Tobu Volcano Groupから 変 更 56 伊 豆 大 島 Izu-Oshima A 東 京 都 57 利 島 Toshima C 東 京 都 活 火 山 として 追 加 58 新 島 Niijima B 東 京 都 59 神 津 島 Kozushima B 東 京 都 60 三 宅 島 Miyakejima A 東 京 都 61 御 蔵 島 Mikurajima C 東 京 都 活 火 山 として 追 加 62 八 丈 島 Hachijojima C 東 京 都 活 火 山 の 範 囲 を 拡 大, 呼 称 は 変 更 しない 63 青 ケ 島 Aogashima C 東 京 都 64 ベヨネース 列 岩 Beyonesu (Beyonnaise) 東 京 都 - Rocks 65 須 美 寿 島 Sumisujima (Smith Rocks) - 東 京 都 66 伊 豆 鳥 島 Izu-Torishima A 東 京 都 67 孀 婦 岩 Sofugan - 東 京 都 活 火 山 として 追 加 68 西 之 島 Nishinoshima B 東 京 都 69 海 形 海 山 Kaikata Seamount - 東 京 都 活 火 山 として 追 加 70 海 徳 海 山 Kaitoku Seamount - 東 京 都 71 噴 火 浅 根 Funka Asane - 東 京 都 72 硫 黄 島 Iojima B 東 京 都 73 北 福 徳 堆 Kita-Fukutokutai - 東 京 都 74 福 徳 岡 ノ 場 Fukutoku-Okanoba - 東 京 都 英 名 をFukutoku-Oka-no-Baから 変 更 75 南 日 吉 海 山 Minami-Hiyoshi Seamount - 東 京 都 南 硫 黄 島 南 東 沖 海 底 火 山 の 一 部 を 独 立 76 日 光 海 山 Nikko Seamount - 東 京 都 南 硫 黄 島 南 東 沖 海 底 火 山 の 一 部 を 独 立 77 三 瓶 山 Sanbesan C 島 根 県 活 火 山 として 追 加 78 阿 武 火 山 群 Abu Volcanoes C 山 口 県 活 火 山 として 追 加 79 鶴 見 岳 伽 藍 岳 Tsurumidake and 大 分 県 伽 藍 岳 を 活 火 山 の 範 囲 に 加 え, 鶴 見 岳 から 呼 称 を B Garandake 変 更 80 由 布 岳 Yufudake C 大 分 県 活 火 山 として 追 加 注 1) ランクの - は 海 底 のみに 火 山 活 動 がある 活 火 山 または 北 方 領 土 の 活 火 山 で, 活 動 度 指 数 の 評 価 とランク 分 けの 対 象 外.ランクは 活 動 度 が 高 い 順 に A,B,C. 注 2) 火 山 名 と 英 名 の 太 字 は 変 更 があった 活 火 山. - 51 -

験 震 時 報 71 巻 1~4 号 表 4 新 しい 定 義 に 基 づいて 選 定 された 活 火 山 一 覧 ( 気 象 庁,2003B) (3/3) No. 火 山 名 英 名 ラ ン ク 所 在 地 備 考 81 九 重 山 Kujusan B 大 分 県 82 阿 蘇 山 Asosan A 熊 本 県 83 雲 仙 岳 Unzendake A 長 崎 県 84 福 江 火 山 群 Fukue Volcanoes C 長 崎 県 活 火 山 として 追 加 85 霧 島 山 Kirishimayama B 宮 崎 県 鹿 児 島 県 86 米 丸 住 吉 池 Yonemaru and 鹿 児 島 県 活 火 山 として 追 加 C Sumiyoshiike 87 若 尊 Wakamiko - 鹿 児 島 県 活 火 山 として 追 加 88 桜 島 Sakurajima A 鹿 児 島 県 89 池 田 山 川 Ikeda and Yamagawa C 鹿 児 島 県 活 火 山 として 追 加 90 開 聞 岳 Kaimondake C 鹿 児 島 県 91 薩 摩 硫 黄 島 Satsuma-Iojima A 鹿 児 島 県 活 火 山 の 範 囲 を 拡 大, 呼 称 は 変 更 しない 92 口 永 良 部 島 Kuchinoerabujima B 鹿 児 島 県 93 口 之 島 Kuchinoshima C 鹿 児 島 県 活 火 山 として 追 加 94 中 之 島 Nakanoshima B 鹿 児 島 県 95 諏 訪 之 瀬 島 Suwanosejima A 鹿 児 島 県 96 硫 黄 鳥 島 Io-Torishima B 沖 縄 県 97 西 表 島 北 北 東 海 Submarine Volcano NNE of 底 火 山 Iriomotejima - 沖 縄 県 98 茂 世 路 岳 Moyorodake - 北 方 領 土 ( 択 捉 島 ) 99 散 布 山 Chirippusan - 北 方 領 土 ( 択 捉 島 ) 100 指 臼 岳 Sashiusudake - 北 方 領 土 ( 択 捉 島 ) 101 小 田 萌 山 Odamoisan - 北 方 領 土 ( 択 捉 島 ) 102 択 捉 焼 山 Etorofu-Yakeyama - 北 方 領 土 ( 択 捉 島 ) 103 択 捉 阿 登 佐 岳 Etorofu-Atosanupuri - 北 方 領 土 ( 択 捉 島 ) 104 ベルタルベ 山 Berutarubesan - 北 方 領 土 ( 択 捉 島 ) 105 ルルイ 岳 Ruruidake - 北 方 領 土 ( 国 後 島 ) 活 火 山 として 追 加 106 爺 爺 岳 Chachadake - 北 方 領 土 ( 国 後 島 ) 107 羅 臼 山 Raususan - 北 方 領 土 ( 国 後 島 ) 108 泊 山 Tomariyama - 北 方 領 土 ( 国 後 島 ) 注 1) ランクの - は 海 底 のみに 火 山 活 動 がある 活 火 山 または 北 方 領 土 の 活 火 山 で, 活 動 度 指 数 の 評 価 とランク 分 けの 対 象 外.ランクは 活 動 度 が 高 い 順 に A,B,C. 注 2) 火 山 名 と 英 名 の 太 字 は 変 更 があった 活 火 山. - 52 -

活 火 山 カタログの 改 訂 と 火 山 活 動 度 による 活 火 山 の 分 類 (ランク 分 け)について 火 山 は, 最 近 の 火 山 活 動 において 特 段 の 異 常 現 象 はなく,いずれも 活 動 度 の 低 いランク C に 分 類 さ れた. 4 議 論 と 今 後 の 課 題 4.1 活 火 山 の 定 義 の 国 際 的 な 標 準 現 状, 活 火 山 の 定 義 に 国 際 的 な 標 準 があるとは 言 えず, 各 国 の 主 要 研 究 機 関 が 公 表 している 火 山 カタログに 掲 載 されている 基 準 は, 各 国 で 異 なっ ている.ただし, 最 近 では, 国 際 的 に 広 く 利 用 さ れている 米 国 スミソニアンの 世 界 の 火 山 カタログ ( Simkin and Siebert, 1994)が 原 則 として 過 去 一 万 年 間 の 噴 火 リストを 収 録 するなど, 過 去 一 万 年 間 の 噴 火 の 有 無 によって 活 火 山 を 定 義 する 考 え 方 が 次 第 に 普 及 しつつある. 予 知 連 が, 活 火 山 の 定 義 を 概 ね 過 去 1 万 年 以 内 に 噴 火 した 火 山, 及 び 現 在 噴 気 活 動 のある 火 山 とした 理 由 の 一 つは,こ のような 状 況 を 鑑 みてのことである.この 定 義 は, 今 後, 国 際 的 に 主 流 な 考 え 方 になっていくかもし れない. なお, 活 火 山 (active volcanoes)を 政 府 レベル で 定 義 している 主 要 国 のうち, 日 本 と 同 様 に 過 去 一 万 年 間 の 噴 火 の 有 無 を 基 準 としている 国 は,い まのところ, 日 本 以 外 ではフィリピンだけである. 他 の 火 山 国 は, 第 四 紀 に 活 動 の 記 録 がある 火 山, 噴 火 の 歴 史 記 録 がある 火 山,のように 分 類 して 列 挙 するにとどまっていたり, 研 究 者 あるいは 研 究 機 関 が 研 究 成 果 をある 国 や 地 域 の 活 火 山 リストと して 作 成 したものが 流 通 していたり,という 状 況 にある. 4.2 カルデラ 火 山 の 取 り 扱 い 大 規 模 な 火 砕 流 発 生 とそれに 伴 うカルデラ 形 成 噴 火 は, 稀 な 現 象 ではあるが,きわめて 深 刻 な 災 害 の 要 因 となるため, 重 要 である. 一 般 にこのような 噴 火 の 再 来 間 隔 は 数 万 年 以 上 であるから(Simkin and Siebert,1994), 大 規 模 なカルデラを 形 成 した 火 山 の 中 には, 新 しい 活 火 山 の 定 義 に 当 てはまらない ものが 含 まれる 可 能 性 が 残 されている.しかし, 現 実 には, 日 本 で 見 られるカルデラ 火 山 の 多 くは, 大 規 模 なカルデラ 形 成 噴 火 後 にカルデラ 縁 にポスト カルデラ 火 山 を 形 成 し,ポストカルデラ 火 山 が 過 去 一 万 年 以 内 に 噴 火 した 履 歴 を 有 する 場 合 が 多 い( 表 5). このため,カルデラ 火 山 だけを 対 象 に 別 の 定 義 を 設 けなくても, 活 火 山 リストにない 火 山 からの 巨 大 噴 火 という 事 態 を 避 けるという 観 点 からは, 実 用 上 の 問 題 がないといえる. 4.3 海 底 火 山 の 取 り 扱 い 報 告 書 では, 噴 出 中 心 を 海 底 にのみ 有 する 火 山 が 海 底 火 山 とされた.つまり, 孀 婦 岩 のように 海 面 上 に 岩 礁 として 火 山 体 の 頂 部 が 見 られても, 海 面 上 に 火 山 活 動 が 認 められない 場 合 は, 海 底 火 山 とされた. 海 底 噴 火 の 活 動 年 代 を 特 定 するにはかなりの 困 難 を 伴 う.このため, 活 火 山 の 選 定 基 準 の 適 用 に あたっては, 火 山 防 災 上 の 観 点 も 考 慮 して, 海 底 火 山 の 場 合 は 実 用 的 な 選 定 を 行 う 工 夫 が 施 された. すなわち, 噴 気 活 動 は 海 底 での 熱 水 活 動 と 読 み 替 えられた.また, 海 面 にまで 影 響 を 与 えるよう な 海 底 噴 火 のみを 考 慮 するという 観 点 から, 水 深 500m 以 浅 で 活 動 が 認 められない 海 底 火 山 は, 活 火 山 として 選 定 しないこととされた. 4.4 噴 火 年 代 測 定 の 誤 差 活 火 山 の 選 定 に 際 しては, 最 新 の 噴 火 が 1 万 年 前 より 前 か 後 かを 判 断 する 作 業 が 多 く 行 われるが, 判 断 をする 際 に 重 要 な 数 千 ~ 数 万 年 程 度 の 噴 火 年 代 は, 火 山 堆 積 物 の 上 下 の 地 層 に 含 まれる 有 機 物 の 放 射 性 炭 素 測 定 により 求 められることが 多 い. 放 射 性 炭 素 年 代 の 測 定 原 理 は, 簡 単 に 述 べれば 次 のようなものである. 地 球 大 気 に 含 まれる 炭 素 の 大 多 数 は 分 子 量 が 12 の 元 素 12 C であるが, 一 兆 個 にひとつほど 分 子 量 が 14 の 半 減 期 5730 年 の 放 射 性 炭 素 14 C が 含 ま れている. 試 料 中 の 14 C/ 12 C のモル 比 を 測 定 する ことにより, 閉 じた 系 になった( 例 えば, 木 が 枯 死 後 に 砂 礫 層 に 閉 じ 込 められた) 時 からの 時 間 が 求 められる. - 53 -

験 震 時 報 71 巻 1~4 号 ところが,この 放 射 性 炭 素 測 定 年 代 は 実 際 の 暦 とは 一 致 しない. 放 射 性 炭 素 の 時 計 は, 早 く 進 む 時 代 と, 遅 く 進 む 時 代 ( 例 えば, 約 1 万 年 前 以 前 の 氷 河 期 )がある.これは, 地 球 磁 場 強 度 の 変 化 に 伴 い 宇 宙 線 により 窒 素 分 子 から 地 球 大 気 中 で 生 成 される 14 C の 濃 度 が 変 化 すること, 海 洋 による 炭 素 原 子 の 収 支 が 気 候 等 により 変 動 することなど による. 測 定 年 代 に CalibETH( Niklaus,1991)な どで 補 正 を 適 用 したとしても, 有 史 以 前 の 噴 火 年 代 を 推 定 するには,ある 程 度 の 不 確 実 さを 伴 うこ とが 避 けられない.このため, 最 も 新 しい 噴 出 物 の 年 代 が 1 万 年 前 より 以 前 か 以 後 かを 判 定 するこ とは, 難 しい 場 合 もある. 4.5 火 山 活 動 度 とランクの 性 質 1999 年 までの 火 山 噴 火 の 長 期 的 な 予 測 に 関 す るワーキンググループ での 議 論 ( 気 象 庁,1999) では, 火 山 固 有 の 要 素 と 社 会 的 要 素 を 定 量 的 な 危 険 度 として 評 価 して, 活 火 山 をランク 分 けする 必 要 性 が 指 摘 されていた.しかし, 活 火 山 ワーキン ググループでの 社 会 学 者 防 災 行 政 関 係 者 との 議 論 を 通 じて, 活 火 山 の 重 要 性 が 視 点 によって 異 な ること, 重 要 性 の 高 低 を 検 討 する 上 で 火 山 活 動 度 は 共 通 して 考 慮 すべき 概 念 であることが 明 らかに なった.これを 踏 まえて, 社 会 的 要 因 を 考 慮 に 入 れずにランク 分 けするのが 適 切 な 考 え 方 であると の 結 論 に 達 した( 気 象 庁,2003A).こうして,2003 年 の 予 知 連 の 報 告 書 での 火 山 活 動 度 指 数 には, 過 去 の 火 山 活 動 を 基 にしたものが 採 用 されることと なった. したがって, 火 山 活 動 度 は, 将 来 の 活 火 山 の 活 動 度 の 高 さを 推 定 するものではない.また, 活 火 山 の 地 理 的 条 件, 土 地 利 用 状 況, 火 山 防 災 対 策 の 現 状 を 考 慮 していないため,いわゆる 火 山 活 動 の 危 険 性 や 噴 火 の 切 迫 性 を 示 したものでもない. 火 山 活 動 度 指 数 は, 調 査 研 究 の 不 完 全 性 などに よりその 見 積 もりに 誤 差 があるだけでなく,そも そも 不 変 ではない. 例 えば, 顕 著 な 噴 火 活 動 があ ると,100 年 火 山 活 動 度 指 数 に 大 きな 変 化 が 生 じ る.また, 数 百 年 以 上 の 休 止 期 間 後 の 噴 火 や, 従 来 知 られていない 様 式 の 活 動 が 生 じれば,1 万 年 火 山 活 動 度 に 変 化 を 生 じる. 加 えて,100 年 とい う 区 切 りのために, 火 山 活 動 度 を 評 価 する 時 点 が 変 われば 火 山 活 動 度 が 大 きく 影 響 を 受 けることも 確 かめられている.この 点 については, 別 稿 ( 林 宇 平,2008)で 述 べる. 以 上 の 性 質 を 考 慮 すると, 火 山 活 動 度 指 数 の 小 さな 違 いをもってどちらの 活 火 山 がより 活 動 的 で あるかという 議 論 をすることは, 適 切 でない. また,ランク A,B,C の 分 類 結 果 も, 火 山 活 動 度 指 数 の 大 きさに 基 づいて 行 われているため, 社 会 的 要 因 は 加 味 されていない.ランクが 火 山 リスク や 火 山 の 社 会 的 重 要 性 に 対 比 されるべきものでは ないという 性 格 から, 火 山 監 視 体 制 や 火 山 災 害 対 策 とランクを 一 対 一 に 対 応 させることは 不 適 切 で ある. 活 火 山 のランクは, 各 ユーザが 個 別 の 事 情 を 勘 案 して, 適 切 な 対 応 を 判 断 するための 一 材 料 であるという 考 え 方 を 浸 透 させることが, 検 討 成 果 の 正 しい 利 活 用 に 結 び 付 けていく 上 で 重 要 であ る. 4.6 活 火 山 であるとも 活 火 山 でないとも 断 定 でき ない 火 山 活 火 山 ワーキンググループでの 議 論 を 通 じて, 活 火 山 として 選 定 されなかった 火 山 の 中 には,こ れまでに 得 られている 研 究 情 報 だけからではその 精 度 が 十 分 でないなどの 理 由 から, 積 極 的 には 活 火 山 であるとも 活 火 山 ではないとも 断 定 できない 火 山 があった( 表 6).これらの 火 山 がどのような 活 動 履 歴 を 有 するのかについては, 今 後 の 研 究 が 期 待 されている. 将 来 の 調 査 研 究 の 進 展 に 伴 って は, 特 にこのような 火 山 の 中 から,さらに 活 火 山 がいくつか 追 加 されることもありえるので, 最 新 活 動 時 期 等 に 関 する 火 山 学 的 な 知 見 が 蓄 積 されれ ば, 定 期 的 にあるいは 随 時 に 活 火 山 リストが 見 直 されるべきだろう. 4.7 新 たに 追 加 された 活 火 山 の 基 礎 的 な 調 査 研 究 気 象 庁 では, 火 山 情 報 取 扱 規 則 と 機 動 観 測 業 務 実 施 要 領 が 一 部 改 正 され, 新 たに 追 加 された 活 火 - 54 -

活 火 山 カタログの 改 訂 と 火 山 活 動 度 による 活 火 山 の 分 類 (ランク 分 け)について 表 5 活 火 山 の 新 定 義 におけるカルデラ 火 山 の 取 り 扱 い 気 象 庁 (2003B)に 注 の 一 部 を 加 筆 *1 カルデラ 名 称 後 カルデラ 火 山 名 *2 活 火 山 としての 区 分 カルデラ 火 山 の 最 新 噴 火 年 代 屈 斜 路 アトサヌプリ 約 3 万 年 摩 周 カムイヌプリ 約 6 千 年 阿 寒 雌 阿 寒 岳 十 数 万 年 支 笏 恵 庭 岳 樽 前 山 約 4 万 年 倶 多 楽 倶 多 楽 約 4 万 年 洞 爺 有 珠 山 約 10 万 年 十 和 田 - 約 6 千 年 鳴 子 - 約 4 万 5 千 年 箱 根 箱 根 山 約 5 万 年 阿 蘇 阿 蘇 山 約 9 万 年 姶 良 若 尊 桜 島 約 2 万 5 千 年 *3 阿 多 - - 約 11 万 年 鬼 界 薩 摩 硫 黄 島 約 7 千 3 百 年 *1 日 本 の 第 四 紀 火 山 カタログ ( 第 四 紀 火 山 カタログ 委 員 会 編,1999)から, 概 ね 十 数 万 年 以 内 に 大 規 模 な 火 砕 流 噴 火 に よって 形 成 された 大 型 カルデラを 抽 出 して 表 で 示 した *2 気 象 庁 (2003B)の 活 火 山 リストにおける 取 り 扱 い 活 火 山 とされているカルデラ 火 山 後 カルデラ 火 山 が 活 火 山 となっているカルデラ 火 山 - いずれでもない *3 開 聞 岳 と 池 田 山 川 は,Matumoto(1943)により 地 形 的 に 推 定 された 大 型 カルデラ 阿 多 カルデラ の 縁 に 位 置 してい るが, 約 11 万 年 前 の 阿 多 火 砕 流 の 噴 出 源 に 形 成 されたカルデラの 位 置 ( 松 本 宇 井,1997)とは 異 なる. 表 中 では, 後 者 の 意 味 での 阿 多 カルデラについて 記 されている. 表 6 新 しい 定 義 による 活 火 山 の 選 定 作 業 で, 今 後 の 調 査 が 必 要 とされた 火 山 天 頂 山, 屈 斜 路 中 島, 雄 阿 寒 岳, 濁 川, 横 当 島, 三 ツ 岳, 鷲 羽 池, 然 別, 寒 風 山, 志 賀 山, 海 勢 海 丘, 神 鍋 火 山 群, 悪 石 島, 黄 尾 嶼,ラッキベツ 岳, 神 威 岳,トロウ 山, 留 茶 留 山, 本 登 山, 恩 根 登 山, 単 冠 山, 西 単 冠 山, 萌 消, 岩 山 - 55 -

験 震 時 報 71 巻 1~4 号 山 に 対 しては, 気 象 庁 が 火 山 情 報 を 発 表 できる 体 制 を 整 えることとなり,そのうち 陸 上 の 活 火 山 ( 北 方 領 土 を 除 く)は 機 動 観 測 の 対 象 として 追 加 され た. 一 方 で, 新 たに 追 加 された 活 火 山 について,そ の 多 くは 地 震 活 動 地 熱 活 動 の 現 状 など 基 礎 的 な 活 動 状 況 の 調 査 は 現 状 において 十 分 ではない. 海 上 保 安 庁 による 定 期 的 な 航 空 調 査 が 行 われ, 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 に 調 査 の 毎 にその 結 果 が 報 告 され てきた 海 底 火 山 を 除 けば, 調 査 の 対 象 となること がほとんどなかったからである. 新 たに 活 火 山 に 追 加 され, 機 動 観 測 の 対 象 にもなったことから, 今 後 調 査 が 実 施 されれば,そこで 得 られる 成 果 は 火 山 災 害 対 策 のための 基 礎 的 な 情 報 として 有 意 義 なものになるだろう. 4.8 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 火 山 活 動 評 価 検 討 会 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 では, 火 山 活 動 評 価 検 討 会 ( 座 長 : 石 原 和 弘,2006 年 11 月 設 置, 設 置 当 時 の 名 称 は 火 山 活 動 評 価 ワーキンググループ)を 設 置 した. 検 討 会 では, 過 去 の 火 山 活 動 度 による 分 類 を 一 歩 進 めて, 今 後 概 ね 百 年 以 内 の 噴 火 等 の 発 生 可 能 性 を 評 価 し,さらに 社 会 的 影 響 も 考 慮 して, 火 山 監 視 や 火 山 災 害 対 策 が 必 要 な 火 山 を 選 定 する ことが 検 討 されている. 5 まとめ 日 本 では, 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 が 会 の 任 務 の 一 環 として,1974 年 の 設 置 当 初 から 活 火 山 カタログ の 整 備 を 続 けてきた( 表 1,2). 2003 年 1 月 には, 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 での 議 論 の 結 果, 活 火 山 の 定 義 が 概 ね 過 去 1 万 年 以 内 に 噴 火 した 火 山, 及 び 現 在 活 発 な 噴 気 活 動 のある 火 山 に 拡 大 され, 新 たな 活 火 山 が 選 定 されるなど して, 日 本 の 活 火 山 の 数 は 86 から 108 に 増 加 した ( 表 3, 図 1). 定 義 の 改 訂 と 活 火 山 の 追 加 によって, 日 本 の 活 火 山 の 活 動 度 の 幅 は,およそ 一 万 年 前 にたった 一 回 の 噴 火 の 証 拠 が 知 られているだけの 火 山 までに 広 がったことから, 同 時 に 火 山 活 動 度 に 基 づいた ランク A,B,C の 3 つのランクへの 分 類 が 行 われた ( 表 4).しかし, 火 山 活 動 度 には 社 会 的 な 要 因 が 加 味 されていないため, 防 災 対 応 とランクを 一 対 一 に 対 応 させるなどの 利 用 は 適 切 ではない. 活 火 山 の 選 定 作 業 の 過 程 で, 活 火 山 であるとも そうでないとも 判 定 できなかった 火 山 ( 表 6)があ る. 今 後, 火 山 の 最 新 活 動 時 期 等 に 関 する 火 山 学 的 な 知 見 が 蓄 積 されれば, 活 火 山 リストが 見 直 さ れるべきである. 謝 辞 査 読 者 の 山 里 平 氏 の 有 益 な 示 唆 により, 本 稿 は 改 善 されました. 記 して 感 謝 します. 活 火 山 の 定 義 の 見 直 し, 新 定 義 による 活 火 山 の 選 定 及 びランク 分 けは, 火 山 噴 火 予 知 連 絡 会 の 委 員 はじめ 関 係 各 位 による 活 発 な 議 論 を 通 じて 行 わ れました. 当 時 の 事 務 局 メンバーとして, 末 筆 な がらお 礼 を 申 し 上 げます. 文 献 宇 井 忠 英 井 田 喜 明 鎌 田 浩 毅 林 信 太 郎 川 辺 禎 久 加 藤 幸 弘 千 葉 達 朗 藤 田 浩 司 塩 谷 みき 竹 内 勤 (2002): 日 本 の 活 火 山 の 見 直 し:1 万 年 噴 火 履 歴 に 基 づく 新 定 義 の 提 案 (1), 地 球 惑 星 科 学 関 連 学 会 2002 年 合 同 大 会 予 稿 集,V032-005. 宇 井 忠 英 井 田 喜 明 林 信 太 郎 鎌 田 浩 毅 川 辺 禎 久 加 藤 幸 弘 千 葉 達 朗 藤 田 浩 司 塩 谷 みき 林 豊 宇 平 幸 一 (2003): 活 火 山 の 再 定 義 とラン ク 分 け, 地 球 惑 星 科 学 関 連 学 会 2003 年 合 同 大 会 予 稿 集,V055- P031. 宇 平 幸 一 (2003): 活 火 山 の 選 定 及 び 火 山 活 動 度 による 分 類 (ランク 分 け)について, 火 山 防 災 情 報 ワーク ショップ in 桜 島 報 告 書, 京 都 大 学 防 災 研 究 所 21 世 紀 COE プログラム- 災 害 学 理 の 究 明 と 防 災 学 の 構 築 - 火 山 活 動 の 評 価 手 法 の 開 発 と 火 山 防 災 情 報 に 関 する 研 究,1-6. 気 象 庁 (1952): 火 山 観 測 法,pp.66-69. 気 象 庁 (1968): 日 本 の 活 火 山 ( 各 活 火 山 の 特 性 と 活 動 年 代 表 ), 火 山 観 測 指 針,pp.209-223. 気 象 庁 編 (1975): 日 本 活 火 山 要 覧,119p. - 56 -

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