金 融 資 本 市 場 2013 1 月 17 日 全 8 頁 銀 行 経 営 2013 の 視 点 収 300 万 円 台 の 購 入 者 による 住 宅 ローンが 急 増 するリスクは? 金 融 調 査 部 主 任 研 究 員 菅 野 泰 夫 [ 要 約 ] 金 融 機 関 経 営 に 関 する 2013 のトピックとなるテーマを 解 説 テーマ1:グローバル 金 融 規 制 導 入 元 から 歩 調 合 わず テーマ2:バーゼルⅢの 実 施 と 国 内 基 準 行 への 影 響 テーマ3: 収 300 万 円 台 の 購 入 者 による 住 宅 ローンの 急 増 とそのリスク( 日 本 版 サブ プライムローン 問 題 への 警 鐘 ) 1.グローバル 金 融 規 制 導 入 元 から 歩 調 合 わず:テーマ1 2008 9 月 に 発 生 したリーマン ショック 以 降 金 融 市 場 の 混 乱 が 世 界 的 な 経 済 危 機 に 発 展 してきた 以 降 バーゼル 銀 行 監 督 委 員 会 (Basel Committee on Banking Supervision 以 下 BCBS) や 各 国 金 融 規 制 当 局 は 金 融 危 機 が 繰 り 返 されることを 防 止 するため 国 際 的 な 金 融 規 制 改 革 の 議 論 や 新 しい 規 制 案 を 次 々と 打 ち 出 してきた 今 (2013 )は 順 次 国 際 金 融 規 制 改 革 が 実 施 される 初 度 に 位 置 づけられ その 中 核 であるバーゼルⅢ 規 制 が 各 国 の 銀 行 に 導 入 され 始 めている しかしながら 既 に 各 国 の 歩 調 が 合 わない 状 況 が 鮮 明 になりつつあるのが 実 情 だ 昨 12 月 に 開 催 された BCBS においても スウェーデン 中 央 銀 行 のステファン イングベス 総 裁 (BCBS 議 長 )は ( 今 更 ながら) 実 施 準 備 が 間 に 合 わない 等 の 理 由 により 米 国 及 び EU 加 盟 国 等 のバーゼルⅢ 実 施 の 延 期 を 表 明 した 1 実 際 に 2013 からバーゼルⅢをスタートする 地 域 は 加 盟 30 か 国 中 オーストラリア カナダ 中 国 香 港 インド 日 本 メキシコ サウジアラ ビア シンガポール 南 アフリカ スイスの 11 に 留 まるとの 声 明 が 発 表 されている 過 去 の G20 サミットや 2012 以 降 の BCBS からの 発 表 文 書 においても 欧 米 ( 特 に 米 国 )の 進 捗 状 況 2 の 悪 さ 1 BCBS Implementation of the Basel III Framework 2012 12 月 14 日 2 菅 野 泰 夫 バーゼルⅢに 残 されたリスクシナリオ 2012 6 月 4 日 大 和 総 研 金 融 資 本 市 場 レポート (http://www.dir.co.jp/research/report/capital-mkt/12060401capital-mkt.html) 株 式 会 社 大 和 総 研 丸 の 内 オフィス 100-6756 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 一 丁 目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは 投 資 勧 誘 を 意 図 して 提 供 するものではありません このレポートの 掲 載 情 報 は 信 頼 できると 考 えられる 情 報 源 から 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 を 保 証 する ものではありません また 記 載 された 意 見 や 予 測 等 は 作 成 時 点 のものであり 今 後 予 告 なく 変 更 されることがあります 大 和 総 研 の 親 会 社 である 大 和 総 研 ホールディングスと 大 和 証 券 は 大 和 証 券 グループ 本 社 を 親 会 社 とする 大 和 証 券 グループの 会 社 です 内 容 に 関 する 一 切 の 権 利 は 大 和 総 研 にあります 無 断 での 複 製 転 載 転 送 等 はご 遠 慮 ください
2 / 8 は 再 三 警 告 されていたにもかかわらず 結 果 的 にグローバル 金 融 規 制 導 入 元 から 冷 や 水 を 浴 びせる 格 好 となった バーゼルⅢの 実 施 はシステム 対 応 を 含 めて 追 加 的 な 資 本 コストが 必 要 となり 適 応 する 銀 行 は 国 際 的 な 競 争 力 低 下 も 懸 念 される グローバルにシステム 上 重 要 な 銀 行 (2012 11 月 発 表 :G-SIBs)が 存 在 する 国 の 中 では スイス 中 国 日 本 の 銀 行 のみが 対 象 となり 28 行 中 6 行 の 実 施 に 留 まることとなった( 図 表 1 参 照 ) そもそも 金 融 危 機 の 震 源 地 であった 米 国 欧 州 より 規 制 対 応 が 先 行 することに 対 しては なぜ 日 本 だけが(バーゼルⅡも 含 めて) 規 制 対 応 を 先 行 する 必 要 があるのかなどの 邦 銀 からの 苦 言 も 多 い イングランド 銀 行 から リスクベースでの 資 本 からもっとシンプルな 会 計 上 の 資 本 での 計 測 に 回 帰 する 方 が 良 い など 金 融 規 制 の 根 底 を 揺 るがす 声 明 が 出 されていることに 対 しても 引 き 続 き 注 意 が 必 要 であ ろう 各 国 銀 行 間 の 競 争 条 件 の 公 平 性 の 観 点 からも まだ 適 用 していない 各 国 での 早 急 な 対 応 を 強 く 求 める 必 要 がある 図 表 1 グローバルにシステム 上 重 要 な 銀 行 (G-SIBs)が 存 在 する 国 でのバーゼルⅢ 適 用 状 況 EU 国 No. 銀 行 (G-SIBs) Bucket (サーチャージ) 1 BNP Paribas 2.0% 2 Group Credit Agricole 1.0% フランス 3 Groupe BPCE 1.0% 4 Societe Generale 1.0% ドイツ 1 Deutsche Bank 2.5% イタリア 1 Unicredit Group 1.0% オランダ 1 ING Bank 1.0% 1 Santander 1.0% スペイン 2 BBVA 1.0% スウェーデン 1 Nordea 1.0% 英 国 スイス 1 HSBC 2.5% 2 Barclays 2.0% 3 Royal Bank of Scotland 1.5% 4 Standard Chartered 1.0% 1 Credit Suisse 1.5% 2 UBS 1.5% Basel Ⅲ 延 期 (2014/1を 目 途 ) 実 施 (2013/1) 米 国 日 本 1 Citigroup 2.5% 2 JP Morgan Chase 2.5% 3 Bank of America 1.5% 4 Bank of New York Mellon 1.5% 5 Goldman Sachs 1.5% 6 Morgan Stanley 1.5% 7 State Street 1.0% 8 Wells Fargo 1.0% 1 三 菱 UFJ FG 1.5% 2 みずほ FG 1.0% 3 三 井 住 友 FG 1.0% 延 期 ( 時 期 未 定 ) 実 施 (2013/3) 中 国 香 港 1 Bank of China 1.0% ( 出 所 )2012 11 月 の 金 融 安 定 理 事 会 の 資 料 より 大 和 総 研 作 成 実 施 (2013/1)
3 / 8 2. 国 内 基 準 行 のバーゼルⅢ 新 基 準 の 概 要 :テーマ2 さらに 日 本 では 欧 米 に 先 行 してバーゼルⅢ 規 制 の 国 内 基 準 行 への 適 用 を 進 めている 金 融 庁 は 2012 12 月 12 日 地 方 銀 行 や 信 用 金 庫 など 国 内 基 準 行 を 対 象 としたバーゼルⅢの 新 基 準 案 3 を 発 表 した 資 本 水 準 の 最 低 比 率 は 従 来 通 り 4%を 維 持 するが 従 来 の Tier1 Tier2 Tier3 のフレームワークが 廃 止 となり ( 普 通 株 式 を 中 心 とする) 定 義 付 けを 厳 格 化 したコア 資 本 の 概 念 が 導 入 されることとなった( 図 表 2 参 照 ) また 従 前 から 資 本 としての 役 割 不 足 を 指 摘 さ れてきた 劣 後 債 劣 後 ローン(Tier2)の 廃 止 も 決 定 され 地 域 金 融 機 関 も 含 めて 包 括 的 に 規 制 強 化 を 推 し 進 める 姿 勢 が 見 られた ただし 国 際 基 準 行 の 新 基 準 と 同 様 に 長 期 間 の 経 過 措 置 が 加 わり( 最 長 15 ) 一 部 の 銀 行 を 除 いて 資 本 政 策 を 再 構 築 する 時 間 的 猶 予 は 十 分 ともいえる コア 資 本 の 達 成 水 準 も 現 時 点 では 多 くの 地 域 金 融 機 関 は 十 分 達 成 できる 水 準 であろう ま た のれん 自 己 資 本 の 10% 超 の 繰 延 税 金 資 産 その 他 無 形 固 定 資 産 等 の 調 整 控 除 項 目 に 関 しても 国 際 基 準 行 にほぼ 準 拠 した 内 容 となっているため 大 きな 混 乱 は 無 い 模 様 だ 今 後 は 2013 1 月 18 日 まで 新 基 準 案 に 対 するパブリックコメントを 行 い 2014 3 月 期 決 算 から 段 階 的 に 適 用 を 開 始 する 予 定 となっている 図 表 2 国 内 基 準 行 のバーゼル 規 制 の 変 更 基 本 的 項 目 (Tier1) その 他 の Tier1 項 目 補 完 的 項 目 Tier2 バーゼルⅡ 普 通 株 内 部 留 保 等 優 先 株 SPC 優 先 出 資 証 券 協 同 組 織 金 融 機 関 発 行 の 優 先 出 資 証 券 劣 後 債 劣 後 ローン 一 般 貸 倒 引 当 金 (リスクアセットの0.625%まで) 土 地 再 評 価 差 額 金 の45% 相 当 額 コア 資 本 バーゼルⅢ 普 通 株 内 部 留 保 等 優 先 株 ( 強 制 転 換 条 項 付 のもののみ) 社 債 型 優 先 株 は 除 外 協 同 組 織 金 融 機 関 発 行 の 優 先 出 資 証 券 一 般 貸 倒 引 当 金 ( 信 用 リスク アセットの1.25%まで) 従 来 の0.625%より 上 限 が 引 き 上 げ ± 調 整 控 除 項 目 準 補 完 的 項 目 Tier3 ( 出 所 ) 大 和 総 研 短 期 劣 後 債 等 マイナス 控 除 項 目 調 整 控 除 項 目 のれん 自 己 資 本 の10% 超 の 繰 延 税 金 資 産 その 他 無 形 固 定 資 産 ( 換 金 性 が 無 いソフトウェア 等 )の 控 除 は 国 際 基 準 行 とほぼ 同 一 基 準 また 新 基 準 案 では 国 際 基 準 行 では( 普 通 株 式 等 Tier1 資 本 へ) 算 入 できる 有 価 証 券 評 価 損 益 や 土 地 再 評 価 差 額 金 はコア 資 本 から 除 外 されていることが 分 かる これは 信 用 供 与 以 外 の 項 目 によって( 例 えば 国 債 等 の 含 み 損 益 など) 規 制 資 本 の 水 準 が 不 安 定 になり 貸 し 渋 り 等 の 信 用 収 縮 を 引 き 起 こすことを 抑 制 する 意 図 があるようだ その 一 方 一 般 貸 倒 引 当 金 が(Tier2 から)コア 資 本 に 算 入 可 能 となったことは 重 要 な 事 実 として 認 識 すべきであろう 一 般 貸 倒 引 当 金 はもともと 損 金 算 入 される( 一 度 資 本 が 減 少 する)ため 資 本 の 増 減 には 影 響 はないが 中 3 金 融 庁 自 己 資 本 比 率 規 制 ( 第 1の 柱 )に 関 する 告 示 の 一 部 改 正 ( 案 ) 等 の 公 表 について 2012 12 月 12 日
4 / 8 小 企 業 金 融 円 滑 化 法 の 失 効 を 迎 える 地 域 金 融 機 関 にとって 引 当 金 を 躊 躇 なく 積 み 増 すことが 可 能 となっている 対 象 はリスクアセット 全 体 (オペレーショナルリスク 含 む)から 信 用 リスク アセットのみと 縮 小 されているが 掛 目 は 0.625%から 1.25%と 国 際 基 準 行 と 同 様 の 比 率 まで 引 き 上 げられたことも 地 域 金 融 機 関 の 多 くに 意 味 があるものといえるだろう 3. 国 内 基 準 行 の 資 本 政 策 への 影 響 足 許 国 内 基 準 行 では 好 調 な 株 式 市 場 の 上 昇 に 支 えられていることに 加 えて 4% 程 度 と 既 に 十 分 に 比 率 がクリアされているコア 資 本 を 今 すぐに 積 み 増 す 意 識 は 低 いと 思 われる 一 方 で 自 己 資 本 比 率 の 水 準 は 頻 繁 に 他 行 と 比 較 対 照 されるため 経 過 措 置 の 期 間 中 に 少 しでも 多 くのコア 資 本 調 達 に 踏 み 切 りたいという 意 向 も 見 え 隠 れしている コア 資 本 を 少 しでも 積 み 増 したい 理 由 のひとつに アウトライヤー 規 制 への 対 策 があげられる アウトライヤー 比 率 に 関 しては 2011 度 以 降 日 本 国 債 市 場 の 歴 史 的 低 ボラティリティを 反 映 して 低 下 4 を 続 けている 一 方 何 らかの 要 因 で 一 旦 金 利 のボラティリティが 上 昇 すれば 当 面 (5 間 )の 間 は 比 率 が 高 止 まりする 可 能 性 もあるためだ 乏 しい 資 金 需 要 の 代 替 として 国 債 投 資 に 傾 斜 していた 地 域 金 融 機 関 にとっては 金 利 リスクバッファーを 少 しでも 積 み 増 しておきたいというのが 真 相 の ようだ 図 表 3 バーゼルⅢ 国 内 基 準 行 での 適 格 旧 資 本 調 達 の 経 過 措 置 の 違 い 単 位 : 億 円 規 制 資 本 算 入 可 能 金 額 ( 億 円 ) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 2011 2012 2015 アモチスタート 2024 (ノンステップ 型 コーラ ブル 債 経 過 措 置 終 了 ) 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2011 2012 2013 2014 2019 2020 2021 2022 2015 2023 2024 2025 2026 2027 2016 2017 2018 2019 2028 2029 2029 ( 社 債 型 優 先 株 経 過 措 置 終 了 ) 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 金 利 ステップアップ 条 項 付 き 期 限 付 劣 後 債 (10NC5) 100 100 100 100 90 80 70 60 50 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ノンステップアップ 型 コーラブル 債 (10NC5) 100 100 100 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0 0 0 0 0 社 債 型 優 先 株 100 100 100 100 100 100 100 100 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ( 注 ) 2013 度 に 100 億 円 の 旧 規 制 資 本 を 発 行 したと 仮 定 ( 出 所 ) 大 和 総 研 社 債 型 優 先 株 は 当 初 6 は 全 額 算 入 可 能 (15 かけて 償 却 に) 4 昨 今 では 比 率 がマイナスになっている 金 融 機 関 も 存 在 している
5 / 8 特 に 経 過 措 置 を 視 野 にいれた 社 債 型 優 先 株 ( 適 格 旧 非 累 積 的 永 久 優 先 株 )の 調 達 は 劣 後 債 劣 後 ローン 等 ( 適 格 旧 資 本 調 達 手 段 )と 比 較 すると 新 基 準 案 が 実 施 される 2014 3 月 末 まで の 間 に 少 しでも 規 制 資 本 を 積 み 増 したい 金 融 機 関 にとっては 有 利 な 条 件 となっている 劣 後 債 に 与 えられている 10 間 の 経 過 措 置 に 比 べて 社 債 型 優 先 株 に 関 しては さらに 長 期 間 の 15 間 の 経 過 措 置 が 用 意 されていることも 一 因 である さらに 2019 までの( 実 施 より 6 間 の) 経 過 措 置 期 間 中 は 100%コア 資 本 に 算 入 可 能 となっていることも 追 い 風 となるであろう( 図 表 3 参 照 ) ただし 実 際 は 国 内 基 準 行 の 中 で 社 債 型 優 先 株 による 調 達 に 踏 み 切 ろうとする 銀 行 は 少 数 に 留 まりそうだ 当 面 高 い 調 達 コストを 掛 ける 必 要 性 が 乏 しいことに 加 えて 金 利 ステップア ップ 条 項 付 き 期 限 付 劣 後 債 (10NC5)の 方 が 事 実 上 償 還 期 間 が 決 定 (5 でほぼ 償 還 )してい るため 投 資 家 の 需 要 が 高 く 発 行 しやすい 環 境 にあるためともいわれているからだ 4. 国 内 基 準 行 の 投 資 に 対 する 影 響 ( 劣 後 債 コンティンジェント キャピ タルへの 影 響 ) さらに 今 回 の 新 基 準 案 の 中 でも 最 も 注 目 されたのは ダブルギアリングに 関 する 内 容 と 言 っ ても 過 言 は 無 いであろう とりわけ 各 金 融 機 関 の 間 では 昨 度 の 大 和 総 研 アンケート 結 果 か らも 示 されているように バーゼルⅢの 実 施 に 伴 い 投 資 を 懸 念 する 商 品 としては 圧 倒 的 に 劣 後 債 ( 金 融 機 関 ) (83.6%: 内 訳 総 合 企 画 部 門 26.7% 市 場 金 融 部 門 56.9%)に 回 答 が 集 中 していることがわかる( 図 表 4 参 照 ) 特 に 今 3 月 に 先 行 して 新 基 準 が 実 施 される 国 際 基 準 行 は その 他 Tier1 Tier2 で 義 務 化 されるコンティンジェント キャピタル(CoCos)の 取 り 扱 いに 対 して 国 内 基 準 行 が 今 後 も 安 定 的 な 投 資 家 となりうるのかが 注 目 されていた 図 表 4 バーゼルⅢの 実 施 に 伴 い 投 資 を 懸 念 する 商 品 ( 金 融 法 人 のみ) 金 融 法 人 総 合 企 画 部 門 市 場 金 融 部 門 (34 社 回 答 ) (82 社 回 答 ) 金 融 債 6.0% 7.8% 13.8% (+5.3%) 劣 後 債 ( 金 融 機 関 ) 26.7% 56.9% 83.6%(+1.4%) 劣 後 ローン( 金 融 機 関 ) 12.9% 16.4% 29.3%( 5.4%) 優 先 株 優 先 出 資 証 券 ( 金 融 機 関 ) 8.6% 19.8% 28.4%( 3.5%) 株 式 型 ファンド 株 式 型 投 信 5.2% 16.4% 21.6%(+3.8%) ETF( 株 式 型 ) 3.4% 12.9% 16.4%(+5.7%) その 他 2.6%(+1.2%) ( 注 ) 括 弧 内 は 前 度 比 増 減 ( 出 所 ) 大 和 総 研 オルタナティブ 投 資 サーベイ(2012 度 )
6 / 8 新 基 準 案 を 確 認 すると ダブルギアリング 対 象 の 金 融 機 関 ( 証 券 保 険 ノンバンクも 含 む) が 発 行 する 規 制 資 本 においても 純 投 資 ( 対 応 控 除 アプローチ 5 2 3)に 該 当 する 場 合 は コ ア 資 本 を 構 成 する 他 の 金 融 機 関 等 の 普 通 株 強 制 転 換 条 項 付 優 先 株 のみ 控 除 対 象 となる これ により( 他 の 金 融 機 関 として) 今 後 国 際 基 準 行 が 発 行 するコンティンジェント キャピタル についてはダブルギアリングの 対 象 外 となる 公 算 が 高 い ただし 意 図 的 保 有 ( 対 応 控 除 ア プローチ1に 該 当 )に 該 当 する 場 合 だけは 劣 後 債 劣 後 ローン( 適 格 旧 資 本 調 達 手 段 ) 社 債 型 優 先 株 ( 適 格 旧 非 累 積 的 永 久 優 先 株 )も 経 過 措 置 期 間 中 はコア 資 本 からの 控 除 対 象 とな るようだ 従 って 相 互 にプライマリーで( 生 保 や 銀 行 間 で) 持 ち 合 うケースの 多 い 劣 後 ロー ン 等 の 投 資 に 関 しては 未 だリスクが 払 拭 されなかったことになる さらに 新 基 準 案 では 2014 3 月 以 降 新 規 制 適 格 資 本 ( 生 保 等 が 発 行 している 永 久 劣 後 債 も 対 象 ) 等 への 投 資 に 関 しては リスクウェイトが 100%から 250%へ 引 上 げられることも 重 要 な 事 実 として 認 識 すべきであろう これにより コンティンジェント キャピタルへの 投 資 は 国 内 基 準 行 にとって 現 行 の 株 式 投 資 ( 出 資 :リスクウェイト 100%)より 高 い 掛 け 目 が 要 求 され るため 一 定 程 度 の 投 資 抑 制 効 果 が 働 く 可 能 性 が 高 い そもそも コンティンジェント キャ ピタルはその 内 容 の 複 雑 さから 投 資 に 慎 重 なスタンスを 採 る 機 関 投 資 家 も 少 なくない 個 人 向 けに 発 行 したとしても 適 合 性 の 原 則 をどこまで 担 保 できるかは 懐 疑 的 な 意 見 も 多 いのが 現 実 であろう それ 故 に 新 基 準 案 が 発 表 され 国 内 基 準 行 からの 投 資 が 期 待 出 来 ない 今 となって は 直 ぐにでもコンティンジェント キャピタルの 発 行 に 踏 み 切 る 国 際 基 準 行 は 少 なくなって いるともいえる 5. 収 300 万 円 台 の 住 宅 ローンの 急 増 とそのリスク( 日 本 版 サブプライム ローン 問 題 への 警 鐘 ):テーマ3 不 動 産 経 済 研 究 所 の 調 査 6 によると 近 では 住 居 占 有 面 積 が 30.00~50.99 平 方 メートルのコ ンパクト マンション 7 の 販 売 シェアが 拡 大 傾 向 にあるとのことだ 従 来 の 分 譲 用 マンションと は 違 い 2,000 万 円 台 の 廉 価 な 物 件 も 多 く 存 在 しており 近 は 30 代 の 単 身 者 によるマンショ ン 購 入 が 急 増 している 模 様 だ 購 入 者 は 収 300 万 円 台 から 400 万 円 台 の 世 帯 が 多 く 従 来 で は 賃 貸 を 優 先 して 住 宅 ローンを 組 まなかった 世 帯 も 積 極 的 に 銀 行 への 申 し 込 みを 行 っているこ とが 推 察 される 5 対 応 控 除 アプローチ(corresponding deduction approach)では1 持 合 いのケース 及 び 兄 弟 金 融 機 関 出 資 は 比 率 にかかわ らず 全 額 控 除 2 連 結 外 の 他 の 金 融 機 関 への 出 資 比 率 が 10%を 超 える 部 分 は(+ 繰 延 税 金 資 産 モーゲージサービスライツ の 合 算 で 15%を 下 回 る 場 合 は 対 象 外 ) 当 該 出 資 額 のうち 自 行 の 普 通 株 等 Tier1 比 率 の 10%を 超 える 部 分 が 控 除 3 2 以 外 の 他 の 金 融 機 関 への 出 資 ( 純 投 資 等 )の 合 計 が 普 通 株 等 Tier1 比 率 の 10% 超 える 場 合 は 超 過 額 を 控 除 する 6 不 動 産 経 済 研 究 所 首 都 圏 マンション 市 場 予 測 -2012 の 供 給 予 測 2011 12 月 7 単 身 者 や DINKs 向 けの 30.00~50.99 平 方 メートル 程 度 の 小 面 積 の 分 譲 マンションを 指 す 従 来 は 賃 貸 用 住 宅 として 数 多 く 供 給 されてきたが 分 譲 マンションにおいては 20 平 方 メートル 程 度 の 投 資 用 ワンルームか 家 族 向 け 50 平 方 メートル 以 上 の 住 宅 に 偏 っており 供 給 は 少 なかったと 言 われている
7 / 8 収 300 万 円 台 の 単 身 者 がマンション 購 入 に 踏 み 切 るもう 一 つの 背 景 は 歴 史 的 な 住 宅 ロー ン 金 利 水 準 の 低 さともいわれている 金 利 水 準 の 低 下 は 日 銀 の 金 融 緩 和 の 一 環 である 資 産 買 入 等 の 基 金 の 導 入 の 影 響 も 大 きいといえるであろう 基 金 は 35 兆 円 規 模 で 2011 末 を 期 限 としてスタートしたが 期 限 も 2013 末 まで 延 長 され 前 回 (2012 12 月 )の 長 短 国 債 の 追 加 買 い 入 れを 加 えると 規 模 は 3.1 倍 にまで 膨 らむなど 当 初 予 定 を 大 きく 超 えている 8 この 効 果 は 着 実 に 現 れており 市 場 金 利 動 向 を 反 映 して 銀 行 の 貸 出 金 利 は 低 下 を 続 け 最 近 では 短 期 長 期 とも 1% 程 度 と 歴 史 的 低 水 準 となっている 金 融 機 関 の 貸 出 態 度 も 2000 以 降 の 平 均 水 準 よりも 良 い 状 態 まで 改 善 しているようだ 一 方 で 金 利 水 準 の 低 下 は ますます 銀 行 経 営 を 苦 しいものに 変 えているとの 指 摘 も 多 い なぜなら 融 資 拡 大 の 牽 引 役 となっているのは 利 鞘 が 薄 い 住 宅 ローンと 地 公 体 ローンに 偏 っ ているためだ 図 表 5 は 国 内 銀 行 全 体 の 業 種 別 の 前 同 期 比 貸 出 残 高 の 推 移 を 示 している 2010 度 以 降 残 高 が 増 加 しているものの 地 公 体 向 けや 個 人 向 け( 住 宅 ローン) 融 資 が 中 心 となっていることが 分 かる 絶 対 利 回 り 水 準 やコストを 考 慮 すると 邦 銀 が 収 益 的 には 厳 しい 様 子 が 推 察 できる 図 表 5 国 内 銀 行 業 種 別 貸 出 と 都 市 銀 行 地 方 銀 行 の 比 較 ( 前 同 期 比 ) ( 兆 円 ) 17 15 13 11 9 地 方 公 共 団 体 非 製 造 業 ( 電 力 水 道 業 等 ) 非 製 造 業 ( 含 む 金 融 ) 個 人 ( 住 宅 ローン 等 ) 製 造 業 うち 都 銀 貸 出 うち 地 銀 貸 出 7 5 3 1-1 -3 08/03 08/06 08/09 08/12 09/03 09/06 09/09 09/12 10/03 10/06 10/09 10/12 11/03 11/06 11/09 11/12 12/03 12/06 12/09-5 -7-9 -11-13 -15 ( 出 所 ) 日 本 銀 行 データから 大 和 総 研 作 成 ( / 月 ) 8 また 日 銀 は 資 産 買 入 等 の 基 金 を 通 じて 長 期 短 期 の 国 債 のほか 中 央 銀 行 としては 異 例 の CP 社 債 指 数 連 動 型 上 場 投 資 信 託 (ETF) 不 動 産 投 資 信 託 (J-REIT)といったリスク 性 資 産 を 含 めて 幅 広 く 買 入 れている
8 / 8 さらに 邦 銀 は 将 来 的 には 金 利 上 昇 時 に 大 きく 収 益 機 会 を 奪 われる 固 定 金 利 貸 出 を 縮 小 し 変 動 金 利 貸 出 にシフトする 傾 向 にあるといわれている 昨 今 の 住 宅 ローンの 殆 どが 変 動 金 利 貸 出 ともいわれており これは 過 去 地 域 的 に 固 定 金 利 貸 出 が 多 い 地 区 9 においても 例 外 ではない ようだ しかしながらこの 傾 向 は 邦 銀 が 新 たに 住 宅 ローンに 関 してのリスクの 火 種 を 内 包 し 始 めているともいえよう なぜならば 昨 今 は 収 300 万 円 台 の 層 (いわゆる サブプライム 層 )でも 変 動 金 利 貸 出 レートが 歴 史 的 に 低 い 水 準 ゆえ 長 期 ローンを 組 んで 住 宅 購 入 が 可 能 となっているからだ 特 に 先 のコンパクト マンションの 購 入 者 の 多 くは 変 動 金 利 での 借 り 入 れが 大 宗 を 占 めるともいわれている 収 300 万 円 台 の 層 が 可 処 分 所 得 でみる 貸 出 制 限 まで 信 用 枠 を 獲 得 し 35 の 期 間 で 購 入 に 踏 み 切 るとなると 今 後 継 続 的 な 金 利 上 昇 局 面 が 到 来 した 途 端 に 支 払 に 行 き 詰 る 可 能 性 は 高 い 即 ち こういった 予 備 軍 を 多 く 抱 える 銀 行 で は 住 宅 ローンのデフォルト 率 が 大 幅 に 上 昇 し 与 信 コストが 急 激 に 増 加 する 可 能 性 があると もいわれている この 市 場 環 境 の 変 化 に 伴 い ( 当 局 からの 指 導 の 下 ) 多 くの 銀 行 において 住 宅 ローンのリスク 管 理 を 強 化 しているといわれている しかしながら 住 宅 ローンのリスク 管 理 手 法 に 関 しては 強 化 を 謳 ったところで 現 時 点 では 限 界 があるといわれている なぜならば 過 去 大 きな 金 利 上 昇 局 面 を 経 験 したことが 無 く ストレスデータはあくまで 仮 定 に 過 ぎないからだ それ 故 に 現 段 階 での 最 善 の 住 宅 ローンのリスク 管 理 手 法 は 定 量 的 なリスク 管 理 モデルに 頼 る というより 将 来 デフォルトの 可 能 性 が 少 しでもある 者 に 対 しては むやみに 貸 さない 事 が 主 となる 特 に 余 力 のある 金 融 機 関 ( 主 に 大 手 行 )では いくら 地 域 最 低 金 利 を 謳 ってい ても やみくもに 住 宅 ローン 残 高 を 増 加 させないといった 対 応 10 をとっている 模 様 だ 一 方 で 現 在 の 低 金 利 水 準 を 活 用 し 少 しでも 預 貸 比 率 を 上 昇 させたい 余 力 が 無 い 金 融 機 関 ( 主 に 地 銀 信 金 等 )になるほど 住 宅 ローンが 増 加 する 構 図 となっているようだ 先 の 図 表 5 の 都 銀 貸 出 ( 大 手 行 )の 貸 出 残 高 増 減 が 低 調 な 一 方 地 銀 貸 出 が 個 人 ( 住 宅 ローン 等 ) 向 け 貸 出 と 同 様 に 増 加 している 所 からもこうした 傾 向 が 読 み 取 れる 2013 の 銀 行 経 営 の 視 点 としては 住 宅 ローンにおける 貸 出 残 高 や 与 信 コストにおいては 余 力 が ある 銀 行 と 無 い 銀 行 で 二 極 化 が 進 むことが 予 想 される 昨 今 の 歴 史 的 低 金 利 水 準 を 手 放 しに 喜 んでいる 間 に 余 力 が 無 い 銀 行 が 発 端 となり さながら 日 本 版 サブプライムロー ン 問 題 の 様 相 に 転 じる 可 能 性 に 警 鐘 を 鳴 らす 必 要 が 出 てくるかもしれない ( 了 ) 9 九 州 地 区 等 が 特 に 顕 著 であった 参 考 : 菅 野 泰 夫 拡 大 する 銀 行 貸 出 における 金 利 リスク 2012 5 月 2 日 大 和 総 研 金 融 資 本 市 場 レポート(http://www.dir.co.jp/research/report/capital-mkt/12050201capital-mkt.html) 10 既 に 大 手 行 の 一 部 では 住 宅 ローンの 審 査 は 半 分 程 度 しか 通 さないといった 対 応 に 踏 み 切 っている 模 様 だ