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Microsoft Word - H25普通会計決算状況 .docx

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

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公表表紙

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地域支援心理研究センター 紀要 第10号

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性 的 自 己 決 定 と 性 経 験 の 関 連 性 について 田 原 歩 美 福 山 大 学 大 学 院 人 間 科 学 研 究 科 キーワード: 性 的 自 己 決 定, 性 経 験, 性 意 識, 性 行 動 はじめに 近 年, 性 行 動 の 低 年 齢 化 や 活 発 化 にともなう,10 代 の 人 工 妊 娠 中 絶 や 性 感 染 症 の 増 加, 恋 愛 中 のカップルの 支 配 従 属 関 係 によるデート DV, 性 関 係 の 多 様 化 に 即 応 しない 性 的 マイノリティへの 偏 見 など, 性 にまつわる 問 題 は 多 様 である その 原 因 のひとつとして, 性 に 対 する 正 しい 知 識 を 有 していないことがあげられる 若 者 の 性 に 関 する 相 談 相 手 や 情 報 の 入 手 経 路 は, 友 人 やマスメディアが 多 く, 性 に 関 する 情 報 の 入 手 は 容 易 になってきて いる( 忠 津 梶 原 篠 原 長 尾 進 藤 新 山 高 谷,2008) しかし,マスメディアによる 情 報 は 興 味 本 位 のもの が 多 く, 正 しい 知 識 ばかりでないにも 関 わらず, 若 者 たちは 情 報 をうまく 取 捨 選 択 できずにいる そのため, 若 者 たちは, 友 人 やマスメディアの 情 報 に 翻 弄 され, 性 に 関 わることを 自 らの 意 思 で 決 定 できず, 自 らの 性 と 他 者 の 性 を 物 象 化 することによる 性 の 商 品 化, 性 的 な 関 係 における 暴 力 の 被 害 と 加 害, 性 にまつわる 多 くのタブーや 偏 見 の 再 生 産 など,さまざまな 問 題 を 抱 えていると 考 えられる( 青 野,2006) 特 に, 若 者 間 の 妊 娠 や 人 工 妊 娠 中 絶 など, 女 性 の 性 に 関 する 問 題 は 社 会 問 題 として 取 り 上 げられることが 多 く, 今 野 (2003)は, 大 学 生 に 避 妊 に 対 する 意 識 と 知 識 の 調 査 を 行 った 結 果, 避 妊 に 対 する 意 識 は 高 く 知 識 も 持 って いながら, 相 手 任 せになっている 面 が 多 く, 確 実 な 避 妊 行 動 をとっているとは 言 いがたいことを 指 摘 している また, 曽 我 部 大 井 岸 早 川 高 村 (2000)は, 性 行 動 から 中 絶 に 至 る 前 の 避 妊 に 女 性 自 身 が 自 覚 を 持 ち, 健 康 に 関 する 管 理 能 力 や 自 己 決 定 能 力 を 高 め, 望 まない 妊 娠 を 避 け, 繰 り 返 さないための 自 己 決 定 と 避 妊 行 動 がと れる 機 会, 動 機 づけとなるような 援 助 が 必 要 であることを 主 張 している このように, 妊 娠 や 中 絶 に 関 すること は, 女 性 に 焦 点 を 当 てられ, 子 どもを 産 み 育 てることが 女 性 の 役 割 であると 捉 えられることが 多 いが, 妊 娠 や 中 絶 は 女 性 だけの 問 題 ではない 妊 娠 は 女 性 と 男 性 の 双 方 に 責 任 があり, 男 性 は 孕 ませる( 産 ませる) 性 であ ることを 自 覚 し, 自 己 の 性 的 衝 動 をコントロールしたり, 相 手 の 自 己 決 定 権 を 尊 重 するなど, 男 性 自 身 の 性 的 自 己 決 定 も 必 要 であろう( 沼 崎,2000) また, 若 者 同 士 のカップル 間 で 問 題 視 されているデート DV についても, 世 間 の 関 心 が 高 まりつつある DV とは, 広 義 の 意 味 では 家 庭 内 でおこる 暴 力 のことであるが, 狭 義 の 意 味 では 配 偶 者 間 や 恋 人 間 でおこる 暴 力 のこ とであり, 身 体 的 暴 力, 精 神 的 暴 力, 性 的 暴 力, 経 済 的 支 配 などさまざまな 暴 力 がある 近 年 は, 一 般 的 に 狭 義 の 意 味 での DV が 用 いられており,2001 年 には DV 防 止 法 が 施 行 され,それまで 潜 んでいた 家 庭 内 暴 力,とりわ け, 夫 婦 間 の 暴 力 が 顕 在 化 されてきた 内 閣 府 の 調 査 では, 配 偶 者 による 暴 力 の 被 害 経 験 は 女 性 24.9%, 男 性 13.6% であることが 明 らかになっており,その 被 害 のほとんどは 女 性 であることが 多 く, 重 要 な 社 会 問 題 となっている しかし,DV 防 止 法 には, 配 偶 者 間 の 暴 力 にのみ 焦 点 が 当 てられており, 婚 姻 関 係 の 有 無 を 前 提 としているため, 交 際 中 のパートナーに 対 する 暴 力 に 対 して 法 は 適 用 されない 小 泉 吉 武 (2008)は, 青 年 期 男 女 におけるデート DV に 関 する 認 識 について 調 査 した 結 果, 男 女 ともに 被 害 者 にも 加 害 者 にもなりうる 可 能 性 があり,DV 神 話 に 関 する 思 い 込 みが DV に 対 する 対 応 や 認 識 を 遅 らせている 可 能 性 を 指 摘 し,DV,デート DV に 関 する 意 識 改 革 や 正 しい 知 識 を 深 めることが 重 要 であることを 示 唆 している また, 山 口 (2004)は, 女 性 差 別 を 温 存 し, 女 性 の 自 立 を 阻 む 社 会 の 仕 組 みを 変 えることや,ジェンダーバイア スに 基 づく 人 々の 意 識 を 改 めることなしにデート DV の 根 絶 はないと 述 べ, 伊 田 (2007)は,デート DV の 被 害 者 は 暴 力 を 愛 と 勘 違 いして 別 れられないという 傾 向 があることを 指 摘 し, 親 密 な 関 係 の 構 築 と 自 己 防 衛 との 両 立 - 59 -

が 重 要 な 課 題 だと 考 えられる そこで, 思 春 期 にある 若 者 たちのリプロダクティブ ヘルス/ライツ( 以 下,リプロ ヘルス/ライツ)に 基 づいた 性 教 育 の 重 要 性 が 主 張 されている リプロ ヘルス/ライツとは, 人 間 の 生 殖 システム,その 機 能 と( 活 動 ) 過 程 のすべての 側 面 において, 単 に 疾 病, 障 害 がないというばかりでなく, 身 体 的, 精 神 的, 社 会 的 に 完 全 に 良 好 な 状 態 にあり, 性 に 関 することを 自 ら 管 理 し, 自 由 かつ 責 任 を 持 って 決 定 する 権 利 という 概 念 である( 柘 植,2000) 日 本 の 現 状 は,リプロ ヘルス/ライツの 根 幹 にある 女 性 の 自 己 決 定 権 という 概 念 が 理 解 されて おらず, 生 殖 やセクシュアリティにおける 問 題 や 困 難 を 抱 えた 人 々が 自 己 決 定 する 状 況 を 保 障 するための 制 度 や, 自 分 のことを 自 分 で 決 めても 良 い と 考 えられるようになれる 人 的 なサポートが 必 要 なのである しかし, 性 に 関 する 問 題 は, 女 性 の 性 に 関 するものだけではない 近 年 では, 性 同 一 性 障 害 や 同 性 愛 といった 性 的 マイノリティの 人 権 を 守 る 立 場 から, 性 的 マイノリティの 社 会 的 認 知 度 や 関 心 も 高 まっている 一 般 にマイ ノリティは 偏 見 や 差 別 の 対 象 になることが 多 く, 対 人 的 にも 経 済 的 にも 社 会 の 中 で 周 辺 的 な 地 位 に 甘 んじている そのため,カミングアウトをするのが 困 難 であり,ますます 偏 見 を 増 大 させている( 石 丸,2004) 杉 山 (2006) は, 同 性 愛 者 である 高 校 生 の 自 己 形 成 過 程 について 調 査 を 行 い, 同 性 愛 の 高 校 生 らは 情 報 アクセスを, 学 校 外 部 にしか 求 められない 状 況 にあり, 問 題 予 知 力 を 備 える 性 的 自 己 決 定 能 力 を 育 むことが 保 障 されずに 性 的 自 己 決 定 を 迫 られることを 示 唆 している また, 和 田 (1996)は, 同 性 愛 に 対 する 態 度 を 調 査 し, 男 性 は 女 性 よりも 同 性 愛 に 否 定 的 であり, 社 会 的 容 認 度 が 低 く, 同 性 愛 者 と 心 理 的 に 距 離 を 置 いていることを 明 らかにし, 石 丸 (2008) は, 同 性 愛 に 対 する 態 度 についてより 詳 細 な 調 査 を 行 い, 同 性 愛 に 対 して, 肯 定 的 な 態 度 であるのは, 女 性 で, 性 的 マイノリティの 知 り 合 いがおり, 固 定 的 な 性 役 割 にとらわれない 考 えをもった 人 で, 状 態 自 尊 感 情 の 高 い 人 であることを 明 らかにした 性 的 マイノリティの 人 々のように, 性 役 割 に 縛 られない 多 様 な 性 の 在 り 方 を 理 解 し 受 容 することは, 自 己 の 性 について 問 い 直 し 柔 軟 な 生 き 方 や 関 係 性 を 考 える 機 会 になるだろう( 上 野,2008) このように, 性 に 関 する 問 題 は 多 面 的 であると 同 時 に,それぞれの 問 題 には 性 的 自 己 決 定 能 力 の 必 要 性 が 問 わ れている 性 的 自 己 決 定 とは, 性 ( 生 殖 と 関 係 した 性 だけでなく, 生 殖 を 目 的 としない 性 も 含 む)に 関 わる 事 柄 について 自 らの 責 任 で 選 択 し 決 定 できることである( 東,2008; 中 里 見,2007) 性 行 動 や 性 意 識 は, 自 分 自 身 の ものであり, 自 分 で 培 っていくべきものである 自 分 自 身 のからだや 心 に 関 する 性 的 変 化 について 理 解 すること や, 自 分 の 性 行 動 をどのように 管 理 し, 自 分 がどのように 性 と 生 について 考 え, 決 定 していくか,そのすべての 決 定 権 は, 自 分 自 身 にある つまり, 性 に 関 することについて, 誰 かに 合 わせたり 従 ったりするのではなく, 自 らが 考 えて 決 定 し, 行 動 するために, 性 的 自 己 決 定 能 力 が 必 要 なのである 草 野 (2006)は, 自 らの 性 を 自 己 管 理 し 決 定 すると 同 時 に, 相 手 との 関 係 をよりよくするためのコミュニケー ション 能 力 を 高 めることで 性 的 リスク 対 処 への 意 識 が 高 まり, 実 際 にパートナーを 得 て,セックスの 関 係 を 持 つ ことは, 性 的 魅 力 に 対 する 自 信 を 高 め, 望 まない 妊 娠 や 性 感 染 症 など 性 的 リスクの 認 識 や 相 手 に 対 する 認 識 を 促 し,リスク 対 処 への 積 極 的 な 態 度 や 自 信 を 育 てることへ 繋 がることを 明 らかにしている また, 薹 荒 賀 (2006) は, 性 的 なパートナーとの 会 話 は,お 互 いの 性 の 情 報 伝 達 の 機 会 となるだけでなく, 適 切 な 性 行 動 のための 自 己 決 定 をする 場 面 であることから,パートナーとのコミュニケーション 能 力 を 高 め, 性 的 自 己 決 定 能 力 を 育 む 必 要 性 があることを 指 摘 している このようなことから, 性 的 なパートナーを 持 つことによって, 性 的 自 己 決 定 が 高 まるのではないかと 考 えられる そこで, 本 研 究 では, 現 在, 若 者 に 求 められている 性 的 自 己 決 定 を 測 定 するための 尺 度 を 作 成 し, 性 経 験 の 有 無 が, 性 的 自 己 決 定 に 関 係 があるかどうかについて 検 討 することを 目 的 とする なお,ここでは 性 的 自 己 決 定 を1 自 分 の 性 を 自 らで 選 択 し 享 受 すること( 性 の 自 己 受 容 )2 性 に 対 してオープンな 態 度 であり, 他 者 と 語 り 合 えること( 性 の 解 放 性 )3 性 の 健 康 や 権 利 について 把 握 し 理 解 すること( 性 の 健 康 と 権 利 )4 多 様 な 性 の 在 り - 60 -

方 を 理 解 し 受 容 すること( 性 の 多 様 性 )の 側 面 から 構 成 されるものとする 方 法 調 査 対 象 者 H 県 内 の 私 立 大 学 で, 心 理 学 に 関 連 する 授 業 を 受 講 している 学 生 のうち, 無 回 答, 記 入 漏 れなどのあるも のを 除 いた, 女 性 60 名 ( 年 齢 :X =20.1, SD=1.24), 男 性 57 名 ( 年 齢 :X =20.4, SD=1.26), 合 計 117 名 ( 年 齢 :X =20.2, SD=1.25)であり, 回 答 率 は 64%(183 名 中 117 名 )であった 調 査 内 容 1. 調 査 対 象 者 の 属 性 について 現 在 もしくは 過 去 にパートナーを 持 つ 人 に 対 しては,デート DV( 身 体 的 言 語 的 心 理 的 暴 力 )の 被 害 経 験 加 害 経 験 があるかどうか( ある ない の 二 件 法 )について 尋 ねた また,パートナーの 有 無 に 関 係 なく, 性 経 験 があるか どうか( ある ない の 二 件 法 )について 尋 ねた 2. 性 的 自 己 決 定 尺 度 について 性 的 自 己 決 定 尺 度 の 項 目 は, 性 に 関 する 意 識 や 行 動 に 関 する 研 究 や 調 査 で 用 いられた 既 存 の 尺 度 や 文 献,また,KJ 法 による 情 報 収 集 により 作 成 した 性 の 自 己 受 容 ( 例 : 自 分 自 身 のことを 理 解 しているなど), 性 の 多 様 性 ( 例 : 女 だ から 男 だからといわれることには 抵 抗 感 があるなど), 性 の 健 康 と 権 利 ( 例 :セックスの 相 手 とエイズ 性 感 染 症 の 予 防 について 話 し 合 うことができると 思 うなど), 性 に 関 する 他 者 とのかかわり ( 例 : 相 手 からの 性 的 な 誘 いを 断 ること ができないなど)の 4 つのカテゴリーに 分 類 し, 合 計 39 項 目 を 性 的 自 己 決 定 尺 度 とした なお, 回 答 は あてはま らない(1) ~ あてはまる(5) の 5 段 階 評 定 とした 3. デート DV に 対 する 自 分 の 行 動 態 度 について 作 成 した 性 的 自 己 決 定 尺 度 に 妥 当 性 があるかどうかの 検 討 を 行 うため, 性 的 自 己 決 定 と 関 連 していると 考 えられる DV に 対 する 行 動 態 度 ( 以 下,デート DV 尺 度 ) ( 例 : 相 手 が, 自 分 の 意 見 に 従 わないとイライラしたり 怒 ったりす るなど)を 測 定 する 尺 度 を 用 いた( 山 口,2004) 回 答 は あてはまらない(1) ~ あてはまる(5) の 5 段 階 評 定 と し,パートナーを 持 ったことがない 調 査 対 象 者 には, 想 像 で 回 答 してもらった 手 続 き 2009 年 7 月 下 旬, 事 前 に 授 業 を 受 け 持 つ 教 員 へ 調 査 依 頼 の 旨 を 伝 え, 許 可 が 得 られた 授 業 で 質 問 紙 を 配 布 し, 授 業 の 初 めもしくは 終 わりに 実 施 した なお, 授 業 時 間 の 関 係 により, 授 業 中 に 実 施 できなかったところについては, 質 問 紙 を 封 筒 に 入 れて 配 布 し, 自 宅 で 回 答 してもらい, 後 日 回 収 もしくは 質 問 紙 回 収 箱 に 投 函 してもらった 質 問 紙 を 配 布 する 際 に, 調 査 内 容 について 理 解 し, 回 答 者 の 同 意 のもとで 回 答 を 行 い, 回 答 したくない 項 目 があった 場 合 は, 無 回 答 無 記 入 でもよいことを 説 明 した 結 果 と 考 察 1. 性 的 自 己 決 定 尺 度 の 因 子 分 析 結 果 まず, 調 査 対 象 者 の 属 性 について,パートナーのいる( 過 去 にパートナーがいるものを 含 む) 女 性 は 51 名 (85%), 男 性 は 37 名 (65%)であり,その 中 でデート DV の 被 害 経 験 があるものは, 女 性 10 名 (20%), 男 性 4 名 (11%), デート DV 経 験 の 加 害 経 験 があるものは, 女 性 6 名 (12%), 男 性 3 名 (8%)であった デート DV の 被 害 経 験, 加 害 経 験 については, 十 分 な 人 数 が 得 られなかったため, 今 回 の 分 析 からは 除 外 した 性 経 験 があるものは, 女 性 39 名 (65%), 男 性 25 名 (44%)であった 次 に, 性 的 自 己 決 定 尺 度 39 項 目 の 平 均 値, 標 準 偏 差 を 算 出 し, 天 井 効 果 およびフロア 効 果 のみられた1 項 目 (Q.4) を 以 降 の 分 析 から 除 外 した 次 に 残 りの 38 項 目 に 対 して 主 因 子 法 Promax 回 転 による 因 子 分 析 を 行 った 固 有 値 の 変 化 は,4.82,3.63,2.75,2.01,1.90, というものであり, 性 的 自 己 決 定 の 解 釈 として 妥 当 であると 考 え - 61 -

られる 4 因 子 とした そこで, 再 度 4 因 子 構 造 を 仮 定 して 主 因 子 法 Promax 回 転 による 因 子 分 析 を 行 い, 因 子 負 荷 量.400 を 基 準 として 項 目 を 取 捨 選 択 した その 結 果,.400 に 満 たなかった 19 項 目 を 除 外 し, 残 りの 19 項 目 で 最 終 の 因 子 分 析 を 行 った( 表 1) 因 子 寄 与 率 は 37.40%であった 表 1 性 的 自 己 決 定 尺 度 の 因 子 分 析 結 果 項 目 内 容 平 均 値 (SD ) 因 子 Ⅰ 因 子 Ⅱ 因 子 Ⅲ 因 子 Ⅳ 8 性 別 は 女 性 男 性 の2つでなくてもいいと 思 う 3.49 (1.42).717.021 -.024 -.079 15 性 的 マイノリティの 人 のそのままを 認 めることができると 思 う 3.80 (1.12).670.023.144.120 16 同 性 を 好 きになるのは 異 常 なことである(R) 3.93 (1.19).662 -.214 -.033.012 11 女 だから 男 だからといわれることには 抵 抗 感 がある 3.38 (1.42).550.047.023 -.122 18 性 的 マイノリティの 人 が 現 実 にたくさんいると 困 る(R) 2.85 (1.35).450.109 -.279.062 14 性 的 マイノリティの 人 がカミングアウトすることは 望 ましいことだと 思 う 3.58 (1.15).446 -.077.072.265 1 自 分 自 身 のことを 理 解 している 3.43 (1.15).008.803.058 -.168 3 自 分 自 身 の 身 体 を 把 握 している 3.46 (1.15) -.055.764 -.096 -.010 2 自 分 の 身 体 を 大 切 にしている 3.37 (1.28) -.134.536 -.403.301 5 らしさ ではなく ありのまま の 自 分 を 受 け 入 れている 3.21 (1.23).145.498.326 -.058 24 エイズ 性 感 染 症 などのリスクから 身 を 守 るために 情 報 を 収 集 していると 思 う 2.83 (1.30).065.428.250.014 33 自 分 が 望 んでいる 性 的 刺 激 を 与 えてくれるように 相 手 に 頼 むことができる 3.00 (1.23) -.136 -.054.701.063 9 性 についてオープンに 話 せる 人 がいる 3.68 (1.42).084 -.050.566.012 37 性 的 な 嫌 がらせをされた 場 合 誰 かに 相 談 できる 3.50 (1.29) -.043.074.523.141 26 セックスの 場 面 では 相 手 任 せになってしまうと 思 う(R) 3.02 (1.20) -.269 -.164.475.116 38 性 的 なことについて 自 分 とは 異 なる 考 え 方 を 持 っている 人 がいても 認 めることができる 4.11 (1.02).246.101.456 -.132 22 セックスの 相 手 とエイズ 性 感 染 症 の 予 防 について 話 し 合 うことができると 思 う 3.80 (1.25) -.034.172.424.355 25 いつ 誰 と 性 関 係 を 持 つか 持 たないかを 自 分 の 意 志 で 決 めることができると 思 う 3.97 (1.13) -.048 -.008.051.700 28 女 性 が 子 どもを 産 むにせよ 産 まないにせよよく 考 えてから 責 任 ある 行 動 をとれると 思 う 3.97 (1.08).083 -.133.026.593 *(R)は 逆 転 項 目 因 子 間 相 関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ -.04 -.07.18 Ⅱ -.21.38 Ⅲ -.10 Ⅳ - 表 1 より, 第 1 因 子 は 6 項 目 で 構 成 されており, 性 別 は 女 性, 男 性 の 2 つでなくてもいいと 思 う, 性 的 マイノリティの 人 のそのままを 認 めることができると 思 う, 同 性 を 好 きになるのは 異 常 なことである( 逆 転 項 目 ) など, 性 に 対 する 多 様 な 考 え 方 や 態 度 についての 傾 向 がみられるため, 性 の 多 様 性 因 子 と 命 名 した 第 2 因 子 は 5 項 目 で 構 成 されており, 自 分 自 身 のことを 理 解 している, 自 分 自 身 の 身 体 を 把 握 している, 自 分 の 身 体 を 大 切 にしている などであり, 自 分 自 身 と 向 き 合 い, 受 容 している 傾 向 がみられるため, 性 の 自 己 受 容 因 子 と 命 名 した 第 3 因 子 は 6 項 目 で 構 成 されており, 自 分 が 望 んでいる 性 的 刺 激 を 与 えてくれるように 相 手 に 頼 むことができ る, 性 についてオープンに 話 せる 人 がいる, 性 的 な 嫌 がらせをされた 場 合 誰 かに 相 談 できる など, 性 に 関 することにおいて, 他 者 に 対 して 解 放 的 である 傾 向 がみられるため, 性 の 解 放 性 因 子 と 命 名 した 第 4 因 子 は 2 項 目 で 構 成 されており, いつ 誰 と 性 関 係 を 持 つか 持 たないかを 自 分 の 意 志 で 決 めることができる と 思 う, 女 性 が 子 どもを 産 むにせよ 産 まないにせよよく 考 えてから 責 任 ある 行 動 をとれると 思 う と, 性 の 健 康 問 題 について, 自 分 自 身 で 決 定 している 傾 向 がみられるため, 性 の 健 康 と 権 利 因 子 と 命 名 した 以 上 より, 性 的 自 己 決 定 尺 度 は, 性 の 多 様 性, 性 の 自 己 受 容, 性 の 解 放 性, 性 の 健 康 と 権 利 の 4 因 子 構 造 となった これは, 当 初 から 想 定 していた 4 因 子 構 造 と 同 様 であり, 性 的 自 己 決 定 には,このような 4 つの 要 素 が 大 き く 関 係 していると 考 えられる それぞれの 下 位 尺 度 の 信 頼 性 について 検 討 するため, 内 的 整 合 性 (α 係 数 )による 方 法 を 用 いて 検 討 を 行 った その 結 果, 性 の 多 様 性 α=.75, 性 の 自 己 受 容 α=.74, 性 の 解 放 性 α=.70, 性 の 健 康 と 権 利 α=.58 であり, - 62 -

十 分 な 信 頼 性 は 認 められなかった そのため, 本 尺 度 を 性 的 自 己 決 定 尺 度 として 使 用 するには, 不 十 分 であると 考 えられるため, 下 位 尺 度 の 項 目 を 増 やすなどして, 精 度 を 高 めていく 必 要 があるだろう また, 性 の 健 康 と 権 利 の 項 目 は 2 つであり, 性 の 自 己 受 容 との 相 関 が r=.23, 性 の 解 放 性 との 相 関 が r=.22 と, 弱 い 正 の 相 関 がみられた このことから, 本 来 性 の 健 康 と 権 利 に 含 まれる 項 目 だったものが, 性 の 自 己 受 容 と 性 の 解 放 性 に 分 散 したのではないかと 考 えられる そのため, 性 の 健 康 と 権 利 因 子 が, 独 自 の 因 子 として 成 立 する かどうかについても 検 討 する 必 要 があるだろう 妥 当 性 については, 基 準 関 連 妥 当 性 による 方 法 を 用 いて 検 討 を 行 った その 結 果, 性 的 自 己 決 定 尺 度 全 体 とデ ート DV 尺 度 の 相 関 は,r=.18 であり, 十 分 な 妥 当 性 は 認 められなかった デート DV 尺 度 と 性 的 自 己 決 定 尺 度 の 下 位 尺 度 である 性 の 健 康 と 権 利 の 相 関 が r=.31 と 正 の 相 関 がみられたことから,デート DV 尺 度 は 自 分 を 守 るために 特 化 しているのに 対 し, 性 的 自 己 決 定 尺 度 は, 自 分 を 守 ることだけではなく, 他 者 の 性 の 理 解 や 自 分 の 性 意 識, 性 行 動 への 決 定 権 を 持 っている,という 多 面 的 な 構 成 となっているためではないかと 考 えられる 2. 性 経 験 の 有 無 と 性 別 による 性 的 自 己 決 定 の 差 についての 検 討 性 経 験 の 有 無 による 性 的 自 己 決 定 の 差 について 検 討 を 行 うため, 性 的 自 己 決 定 の 各 下 位 尺 度 とデート DV 尺 度 について, 性 別 性 経 験 の 2 要 因 分 散 分 析 を 行 った その 結 果 を 表 2 に 示 す 表 2 性 別 性 経 験 の 2 要 因 分 散 分 析 の 結 果 性 別 主 効 果 性 経 験 女 性 男 性 性 別 経 験 交 互 作 用 平 均 SD 平 均 SD F 値 F 値 F 値 多 様 性 有 3.68 0.72 3.21 0.85 * * 40.68 2.09 9.35 無 4.30 0.55 2.99 0.75 自 己 受 容 有 3.32 0.79 3.38 1.07 無 3.13 0.63 3.11 0.82 0.02 2.05 0.08 解 放 性 有 3.61 0.77 3.87 0.74 無 3.03 0.76 3.43 0.76 5.22 * 12.60 * 0.25 健 康 と 権 利 デ ー ト D V 有 有 4.04 3.99 0.98 0.64 3.88 4.10 0.87 0.56 無 無 4.21 4.14 0.70 0.47 3.77 4.06 1.05 0.63 2.84 0.03 0.04 0.26 0.63 0.74 * p.<.05 表 2 より, 性 の 多 様 性 は, 性 別 の 主 効 果 が 有 意 であり(F(1,112)=40.68,p=.000), 男 性 より 女 性 のほう が 有 意 に 高 かった また, 交 互 作 用 も 有 意 であり(F(1,112)=9.35,p=.003), 男 女 別 に 性 経 験 の 下 位 検 定 を 行 った 結 果, 女 性 においてのみ 有 意 であり, 性 経 験 のある 女 性 より 性 経 験 のない 女 性 のほうが 有 意 に 高 かった(F (1,112)=10.07,p=.002) 性 経 験 の 有 無 別 に 性 別 の 下 位 検 定 を 行 った 結 果, 性 経 験 有 と 性 経 験 無 の 両 方 で 有 意 であった 性 経 験 のある 男 性 より 性 経 験 のある 女 性 のほうが, 有 意 に 高 く(F(1,112)=6.11,p=.015), 性 経 験 のない 男 性 より 性 経 験 のない 女 性 のほうが 有 意 に 高 かった(F(1,112)=40.55,p=.000) すなわち, 女 性, 特 に 性 経 験 のない 女 性 のほうが, 男 性 より 多 様 性 を 重 視 していることが 示 された 性 に 対 する 意 識 や 態 度 には, 社 会 からの 性 役 割 期 待 とそれに 結 びついたステレオタイプが 大 きく 影 響 しており, 特 に, 男 性 優 位 社 会 のなかでは, 男 性 に 期 待 される 役 割 を 持 った 者 同 士 が 恋 愛 ( 愛 情 ) 関 係 にあるというのは 非 常 に 結 びつきにくいため( 和 田, 1996), 男 性 のほうが 性 の 多 様 性 の 受 容 度 が 低 いのではないかと 考 えられる また, 林 (2007)の 研 究 では, 恋 愛 に 対 する 態 度 が 消 極 的 であることとジェンダー アイデンティティの 低 さに 関 係 性 があることが 示 唆 されている が,その 観 点 から 本 研 究 の 結 果 を 考 察 すれば, 性 経 験 のないものは, 自 己 の 性 について, 固 定 的 な 性 役 割 にとら - 63 -

われず, 多 面 的 な 側 面 から 捉 えているためではないかと 考 えられる そのため, 性 経 験 のない 女 性 において, 性 の 多 様 性 を 重 視 しているのではないかと 考 えられる 性 の 解 放 性 は, 性 別 の 主 効 果 が 有 意 であり(F(1,112)=5.22,p=.024), 女 性 より 男 性 のほうが 有 意 に 高 かった また, 性 経 験 の 主 効 果 も 有 意 であり(F(1,112)=12.60,p=.001), 性 経 験 のないものより 性 経 験 のあ るもののほうが 有 意 に 高 かった すなわち, 男 性 のほうが 性 について 解 放 的 であり, 性 的 な 経 験 を 持 つ 人 のほう が 解 放 的 であると 考 えられる 解 放 性 において, 男 性 の 方 が 高 かったことは, 高 橋 (2003)が 指 摘 するように, 女 性 の 場 合, 性 に 対 する 羞 恥 心 やタブー 意 識 による 禁 欲 の 必 要 性 意 識 が, 否 定 的 セックス 観 に 結 びついており, 性 に 対 して 解 放 的 であることは 恥 ずかしいことであるといった 意 識 やステレオタイプをもっているためではな いかと 考 えられる また, 性 経 験 を 持 つ 人 のほうが 高 かったのは, 草 野 (2006)や 薹 荒 賀 (2006)の 指 摘 する ように, 実 際 にパートナーを 持 つことで,コミュニケーション 能 力 を 高 め,お 互 いに 性 的 リスク 対 処 への 意 識 を 促 すことができるためではないかと 考 えられる 以 上 の 結 果 より, 性 的 自 己 決 定 における 性 の 多 様 性, 性 の 解 放 性 という 点 においては, 性 経 験 の 有 無 が 関 連 し ているといえるだろう 性 的 自 己 決 定 を 高 めるために 重 要 なことは, 自 己 の 性 について, 性 役 割 にとらわれず, 多 面 的 な 存 在 としてとらえ, 性 について 他 者 と 語 り 合 える 関 係, 理 解 しあえる 関 係 を 築 いていくことが 重 要 であ ると 考 えられる 引 用 文 献 青 野 篤 子 (2006). 社 会 におけるジェンダーの 病 理 福 富 護 ( 編 ) ジェンダー 心 理 学 朝 倉 書 店 pp.157-177. 薹 有 桂 荒 賀 直 子 (2006). 学 生 の 性 に 関 する 情 報 へのニーズとその 伝 達 経 路 医 療 看 護 研 究,2,89-94. 林 寛 子 (2007). ジェンダー アイデンティティと 恋 愛 に 対 する 態 度 臨 床 教 育 心 理 学 研 究,33,59. 東 優 子 (2008). HIV 感 染 への 脆 弱 性 とセクシュアル ヘルス/ライツ 社 會 問 題 研 究,57,27-39. 伊 田 広 行 (2007). デート DV をシングル 単 位 的 恋 愛 論 と 結 びつけて 伝 える SEXUALITY,32,16-21. 今 野 洋 子 (2003). 大 学 生 の 避 妊 に 対 する 意 識 行 動 に 関 する 報 告 A 大 学 の 学 生 を 対 象 とした 調 査 報 告 人 間 福 祉 研 究,6,101-116. 石 丸 径 一 郎 (2004). 性 的 マイノリティにおける 自 尊 心 維 持 他 者 からの 受 容 感 という 観 点 から 心 理 学 研 究,75,191-198. 石 丸 径 一 郎 (2008). 異 性 愛 者 がレズビアン ゲイ バイセクシュアルに 対 して 抱 いているイメージ 同 性 愛 者 に おける 他 者 からの 拒 絶 と 受 容 ダイアリー 法 と 質 問 紙 によるマルチメソッド アプローチ ミネルヴ ァ 書 房 pp.41-60. 小 泉 奈 央 吉 武 久 美 子 (2008). 青 年 期 男 女 におけるデート DV に 関 する 認 識 についての 調 査 純 心 現 代 福 祉 研 究,12,61-75. 草 野 いづみ (2006). 大 学 生 の 性 的 自 己 意 識, 性 的 リスク 対 処 意 識 と 性 交 経 験 との 関 係 青 年 心 理 学 研 究,18, 41-50. 中 里 見 博 (2007). ポスト ジェンダー 期 の 女 性 の 性 売 買 性 に 関 する 人 権 の 再 定 義 社 會 科 學 研 究,58, 39-69. 沼 崎 一 郎 (2000). 男 性 にとってのリプロダクティブ ヘルス/ライツ < 産 ませる 性 >の 義 務 と 権 利 国 立 婦 人 教 育 会 館 研 究 紀 要,4,15-23. 曽 我 部 美 恵 子 大 井 けい 子 岸 恵 美 子 早 川 有 子 高 村 寿 子 (2000). 人 工 妊 娠 中 絶 を 決 定 するまでの 経 緯 と 心 理 的 変 化 日 本 女 性 心 身 医 学 会 雑 誌,5,190-196. - 64 -

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The effect of sexual experience on sexual self-determination Ayumi Tahara The purpose of this study was to construct a sexual self-determination scale and examine the effect of sex experience on sexual self-determination. A questionnaire which included items on sexual experience and dating violence, and sexual self-determination scale was administered to 117 university students as a part of the requirement of a social psychology course. Sexual self-determination was found to be constructed from four factors: sexual diversity, sexual self-receptiveness, sexual liberty, and sexual health/rights. However, both the reliability based on alpha coefficients and the criterion-related validity were not sufficient. It was found that women without sexual experience are able to recognize sexual diversity. In addition, men were found to be more sexually liberated than women, and those who had had sexual experience were more sexually liberated than their counterparts. ( 指 導 教 員 : 青 野 篤 子 ) - 66 -