母子保 情報 で変化が現われた赤ん坊では 顔が他のどんな 2 非言語性行動の発達 ものよりも強い反応を示した - これま (1) 見ること 見られること から 見られる で赤ん坊に関して行われた実験で この生まれつ こと 見ること き顔に引き付けられる性質が 大脳皮質の下にあ 自 身体イメージ を感じることは まず相 る脳の原始的な部 に促されていることがわかっ 手を見て自 と同じ存在であることを理解するこ たしかし この本能は 赤ん坊が顔の認識に関 とから始まる 見る という行為を意識的に行 して脳を形成していくにしたがい 他の神経細胞 うためには 見られている こと すなわち相 に抑制され少しずつ消えていく脳が 生れた時 手の視線を感じることから始まらなければならな から配線済みで ある特別な領域に情報を記録す いこの時期は まだ感覚として相手を感じる時 る必要があるだけと えることは間違っている 期 中脳 視床レベル であり 見る 行為を 確かに 大脳皮質 思 に関係する脳の領域 に 意識的に行い 形の次元 から 統合され おける神経細胞の基本的な構造はすでに生まれつ た存在としての相手を感じること 大脳皮質レベ きできあがっているしかし 神経細胞どうしの ル から お互いの関係 母子関係 が始まる 細かいつながりは 経験という脳の活動の結果に このことについて マーク ジョンソン よって後につくられる人間の脳の大きさが赤ん は 顔を認知する脳の反応を測定するために 6 坊と大人では4倍の差があるこの差は新しい神 か月の赤ん坊にセンサーがついた曲面の網をかぶ 経細胞どうしのつながりによるものであると え せ 頭の表面の非常に弱い電圧の変化を記録し られている た顔に対する特別な反応は356ミリ秒以降でし か見られなかったしかし 大人では128ミリ秒 - 共同注意の発達 乳児における顔の認知 - 他のパターンよりも顔 の略である二つの目 と一つの口を表す3つ の黒い点に顔を向け注 目するこの視覚の入 力は脳の活動を引き起 こし 結果 大脳皮質 のある部 が発達し 複雑な情報 例えば その人が誰であるか 性別は何か 表情が意 味するものは何か を 処理するように専門化 しはじめる マーク ジョンソン 視線認識の発達 自己認識 (2)同調行動 生体リズムとゆらぎ 新生児期以降 3から4か月頃から母子間に 様々な同調行動が認められる新生児期には母乳 を飲む 抱かれる あやされる 睡眠リズムなど お互いが一体化し一緒にいることが快になる状態 が同調行動である睡眠/覚醒サイクルは 極め 情動のゆらぎ 緊張 て不安定で 生後3か月までは安定しないこの サイクルはランダムな30 50 間隔で 成長する につれて 徐々に間隔が長く 4か月までには 15
母子保 情報 ほとんどの乳児は 中断のない1.5時間周期の睡 (4)こころの理論 信念 願望によるこころの理 眠になり まとめて寝るようになってくるすな 論 わち 生体リズム 揺らぎが母親と同調してきて いると 行動の推論においては 本当の真実 事実 で えることができるこのころ 子どもは はなく その人にとっての真実が問題となるそ 母親を見るとほほえむようになり 喃語をしゃべ の人にとっての真実は 信念であり 他者の心的 るようになってくるすなわち 社会性の始まり 状態の認識とは 信念と願望から行為に至ると であるこの時期は 運動発達のレベルから え えられているフリスは 自閉症においては他者 ると 中脳レベルの時期であるこのことが子ど が何を もをかわいいと思う気持ちすなわち 愛着の形成 意や信念の把握が難しい すなわち他人の立場 と深く関わっている で えることが難しいということを 報告した (3)ミラーニューロン仮説 こころの理論の第一段階である サリーとアンの 他人の動作を見ている時に ミラー" のように えているのかの理解 すなわち 他者の 課題 とは サリーは自 のバスケットの中にボ 同じような反応をする神経細胞で 意味のある複 ールを入れ どこかへ遊びにでかけたそこへア 雑な動作を観察している時に主に活性化するコ ンがやってきて そのボールを自 のバスケット ミュニケーションの送信者と受信者の間をつなぐ の中に入れてしまうその後 サリーが帰ってき 機能がある相手の動作の意味を理解し 理解に た時 どちらのバスケットを見るか という問題 基づいて実行すべき適切な反応を形成する表情 であるもちろん 正しい答えは自 のバスケッ によるコミュニケーションの解釈や表出や 言語 トであるが サリーの立場に立って えないとわ 的ジェスチャー 例 手話 の理解と表現に関与 からない客観的に舞台を見ている観客の立場か しており 動作を認識するメカニズムは言語発達 ら サリー自身になって の一端を担う意を感知するという意味で 無 るこの課題は 早い子では3歳ぐらい 通常4 意識的 自動的に他者に共感する神経細胞である 5歳 遅くとも6歳までには理解できるように とも えられており 10か月頃からの動作模倣の なる 始まりとごっこ遊びなどと関係していると えら 位は 扁桃体に隣接する側頭極 内側前頭前野 れている脳科学的には 運動性言語野 Broca 領域 下頭頂溝周囲などがミラーシステム領域 えることが必要とな こころの理論課題時の脳の活性部 上側頭溝の側頭 頭頂境界領域といわれている と えられている ) (5)ミラーニューロンとこころの理論のミラーニュ ーロンと こころの理論 の共通神経部位と共通 ミラーニューロンの神経部位 しない部位の機能ついては ①遂行機能 ②ワー キングメモリー ③短期記憶の部位である( 自閉症の精神病理 16
母子保 情報 こころの理論 課題時の脳活性部位 6 ワーキングメモリーと遂行機能 ワーキングメモリーについて 我々がスムース 前頭前野には 自 をコントロールする能力す に日常生活を行っていくための様々な行動はどの なわち 社会脳として重要な部位が含まれている ように行われるだろうか例えば ある所へ行こ ことが1848年のフィネス ゲージについての記載 うとしている時に 周りの情景を言語的に える から明らかにされ 前頭前野の機能の重要性に注 以外に この前に行った時は途中の道に変な人が 目が集まるようになってきた いた あるいは 犬が自 に吠えてきたとする 認知神経心理学的には ①遂行機能 ②ワーキ と 少し用心して歩かなくてはいけないと頭の中 ングメモリーが自己コントロールの重要な要素で で言葉として えるこれは 音韻性のワーキン あることが報告されている グメモリーといわれているまた 目の前に見え ている情景以外にその時の過去の状況を頭の中で ミラーニューロンと こころの理論 の 共通神経部位 思い浮かべることも必要である犬の種類 大き さ 道の広さとかが頭の中に映像として浮かばな ければないそれが視覚 空間性のワーキングメ モリーであるすなわち 現在の眼前と過去の経 験と両方を頭の中で言語的に 視覚的に経験し思 い浮かべ ワーキングメモリー 行動していく 遂行機能 ことが必要になる 黄色部 は矢印先端 前頭前野の働き 17 認知神経心理学から見た社会脳