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Transcription:

名 古 屋 学 院 大 学 論 集 言 語 文 化 篇 第 22 巻 第 2 号 (2011 年 3 月 ) 近 代 家 族 の 成 立 をめぐる 覚 書 湯 浅 康 正 はじめに フランスのアナール 学 派 に 始 まる 歴 史 研 究, 社 会 史 は,20 世 紀 の 後 半, 大 きな 成 果 を 生 ん だ 政 治 的, 経 済 的 な 事 件 史, 制 度 史 を 記 述 す る 従 来 の 歴 史 学 への 批 判 として, 出 生, 病 気, 子 育 て, 性, 死 など, 人 々の 日 常 生 活 を 構 成 す るさまざまな 事 象,それらをめぐる 人 々の 意 識 のありようの, 長 期 にわたる 変 容 を 明 るみに 出 し,われわれが 疑 うことなく 用 いている 多 くの 概 念 を, 歴 史 性 の 中 でとらえなおした その 成 果 の 一 つが 近 代 家 族 論 であろう 現 代 人 がよりどころとする 家 族 概 念 が, 実 は 近 代 に 形 成 された 比 較 的 新 しいもの,たかだか200 年 ほどの 歴 史 しか 持 たぬものであることを 明 らか にし,これを 近 代 家 族 とよんだ 現 在, 家 族 の 危 機, 家 族 の 崩 壊 ということが よくいわれる 宗 教 やさまざまな 共 同 体 の 力 が 弱 まり, 心 のよりどころ, 人 生 を 意 味 づけるも のとして, 家 族 が 特 権 的 な 位 置 を 持 つ 時 代 であ るだけに, 危 機 や 崩 壊 はそれだけ 深 刻 に 語 られ る しかし,その 際 の 根 拠 となる 家 族 の 概 念 に どれほどの 普 遍 性 があるのか, 検 証 するのは 避 けて 通 れないところである ここでは,イギリス,フランスを 中 心 とする 西 欧 において, 家 族 がどのような 変 容 を 遂 げ, 近 代 家 族 とよばれる 類 型 が 発 生 したのか, 家 族 の 社 会 史 的 研 究 の 成 果 を, 大 きな 見 取 り 図 にま とめておく Ⅰ 近 代 家 族 の 特 徴 われわれの 持 つ 家 族 概 念 をいくつかの 要 素 に 還 元 し, 歴 史 の 中 におけば 何 がみえてくるだろ うか 家 族 社 会 学 者 の 落 合 恵 美 子 は, 欧 米 の 社 会 史 家 たちの 研 究 を 参 照 し, 近 代 家 族 の 特 徴 を, 次 のように 列 挙 している 1. 家 内 領 域 と 公 共 領 域 の 分 離 2. 家 族 構 成 員 相 互 の 強 い 情 緒 的 関 係 3. 子 ども 中 心 主 義 4. 男 は 公 共 領 域, 女 は 家 内 領 域 という 性 別 分 業 5. 家 族 の 集 団 性 の 強 化 6. 社 交 の 衰 退 とプライバシーの 成 立 7. 非 親 族 の 排 除 8. 核 家 族 ( 落 合,1996) 本 稿 の 目 的 は 近 代 家 族 の 厳 密 な 定 義 ではな く,われわれの 家 族 概 念 が 全 体 として 帯 びてい る 歴 史 性 をみることだから,この8 項 目 のうち 重 なるものは 重 ね,おおまかに, 排 外 的 家 内 領 域, 結 婚 のあり 方, 子 ども 中 心 主 義, 近 代 的 性 別 分 業 の4 点 に 絞 ってみていく Ⅱ 排 外 的 家 内 領 域 Ⅱ 1 中 世 においては 人 々の 意 識 の 中 で, 家 族 と 周 囲 の 共 同 体 との 境 界 がはっきりしておらず, 近 世 になってはじめて, 家 内 領 域 が 確 立 されてい 35

名 古 屋 学 院 大 学 論 集 く 近 代 家 族 論 の 端 緒 を 開 いた,フランスの 史 家 フィリップ アリエス(1914 1984)は,その 著 子 供 の 誕 生 アンシャン レジーム 期 の 子 供 と 家 族 生 活 (1960 以 下 子 供 の 誕 生 )において, 中 世 から 近 代 へかけての 家 族 の 感 情, 私 的 領 域 の 成 立 について 次 のように のべている 中 世 社 会 では, 感 情 の 交 流 や 社 会 的 なコミュ ニケーションは 家 の 外 にあり, 隣 人, 友 人, 親 方, 奉 公 人, 子 どもと 老 人, 女 性, 男 性 によっ て 構 成 される, 濃 密 で 熱 い 環 境 によって 保 証 さ れていた 夫 婦 の 間, 親 子 の 間 での 感 情 は, 家 庭 の 生 活 にとっても,その 均 衡 のためにも, 必 要 とされていなかった 家 屋 構 造 の 上 でも,たとえば13~14 世 紀 フィレンツェの 都 市 貴 族 の 住 宅 には,1 階 に ロッギアとよばれ, 街 路 に 向 かって 開 いてい て, 家 内 と 公 共 が 重 なる 空 間 があった 17 世 紀 の 末 から18 世 紀 の 時 期 に, 街 路, 広 場, 集 合 的 活 動 から 家 族 が 引 きこもり 始 める 家 屋 がしっかり 閉 じられて, 外 部 からの 割 り 込 みを 許 さないものに 変 わり, 家 族 の 親 密 性 を 守 るようになった 壁 によって 四 辺 形 に 仕 切 ら れ, 街 頭 の 騒 音 や 無 遠 慮 さから 遮 断 された 建 物 の 内 部 に, 家 族 の 日 常 生 活 が 集 中 するようにな る 新 しい 私 的 空 間 では, 従 来 のように 部 屋 が 開 いたまま 次 の 部 屋 へと 連 続 するのではなく, 廊 下 をはさんで 独 立 し, 居 間, 食 堂, 寝 室 とい うように, 各 部 屋 が 機 能 的 に 分 化 していった こうして, 私 生 活 化 された 空 間 で, 家 族 たちの 間, 特 に 母 親 と 子 どもの 間 で, 新 しい 感 情 が 発 達 した 時 代 はさかのぼるが, 古 代 ギリシャの 家 族 生 活 について,アメリカのジェンダー 学 研 究 者, マリリン ヤーロムは, 夫 たちが 起 きているほ とんどの 時 間 を 家 でなく,アゴラ( 広 場 ), 市 場,ギュムナシオン( 演 武 場 ), 売 春 宿 で 過 ご していたと 記 している(ヤーロム,2001) Ⅱ 2 前 近 代 的 家 族 においては 非 親 族 が 同 居 してい ることは 珍 しくなかった 領 主 や 有 力 者 たちの 家 には 使 用 人, 親 族, 友 人, 他 家 から 家 庭 奉 公 に 来 ている 少 年 などさまざまなタイプの 同 居 人 がおり, 日 常 的 に 出 入 りする 請 願 者 たちなどの 群 れとともに, 雑 居 状 態 をなしていた 主 人 一 家 と 召 使 たちが 一 つの 大 きな 寝 室 で 休 んでお り, 家 庭 奉 公 に 来 ている 貴 族 の 息 子 と, 貧 しい 召 使 たちの 区 別 がはっきりしなかった ドイツのヴュルツブルクの 州 役 人 が1839 年 に 行 った 報 告 によれば,この 州 では 農 場 主 の 息 子 や 娘 が 農 場 労 働 者 やメイドと 同 じ 部 屋, 同 じ ベッドで 寝 ており,その 結 果, 多 くの 非 嫡 出 子 が 生 まれている 同 じころのドイツやフランス の 下 層 階 級 でも, 家 族 も 家 族 以 外 の 人 も 全 員 が 同 じ 部 屋 で 寝 ていた また 日 常 の 生 活 もすべ てその 同 じ 部 屋 で 行 われていた(ショーター, 1975) Ⅲ 結 婚 のあり 方 Ⅲ 1 前 近 代 的 家 族 においては, 結 婚 は 経 済, 社 会, 政 治 的 な 行 為 だった 社 会 の 上 層 では 子 孫 を 残 し, 家 産 を 管 理 し, 職 業, 家 名 を 引 き 継 いでい くため, 下 層 では 生 活 の 必 要 として, 結 婚 が 行 われた 厳 しい 生 活 条 件 の 中 で, 男 女 とも 孤 立 しては 生 きていけず, 夫 と 妻 で 協 力 する 必 要 が あったのだ また, 古 代 ローマのような, 国 に 兵 士 を 供 給 することを 目 的 として, 結 婚, 再 婚 の 義 務 をもうけた 社 会 もあった 36

近 代 家 族 の 成 立 をめぐる 覚 書 配 偶 者 選 びを 行 ったのは, 多 くの 社 会 で 男 た ち, 花 婿, 花 嫁 の 父 親 や 兄 弟 であり, 花 嫁 の 意 向 は 無 視 された 基 準 は, 家 名, 財 産, 職 業, 身 体 的 健 康, 容 姿, 性 格 の 良 さなどだった したがって, 結 婚 する 男 女 の 関 係 についてい えば, 二 人 が 心 を 通 わせているのは 必 須 条 件 で なく, 愛 情 は 結 婚 してから 発 生 するものと 考 え られた 結 婚 するまで 本 人 同 士 が 互 いに 知 らな いこともあった ヤーロムによれば,フランス 革 命 以 前 の 社 会 では, 社 会 の 上 層, 貴 族 階 級 と 中 産 階 級 上 層 の 妻 たちは,どちらかといえば, 夫 から 離 れた 別 の 生 活 を 送 っており, 夫 婦 が 親 密 な 関 係 や 共 通 の 関 心 事 を 持 つことは 期 待 されていなかった 貴 族 階 級 では, 夫 婦 がお 互 いに 愛 情 を 傾 けすぎ るのは 粋 なことだとはみなされなかった なお, 平 均 寿 命 が30 歳 前 後 と 短 かった 中 世 では, 夫 婦 がいっしょに 暮 らす 期 間 も 大 変 短 く,わずか10 年 か15 年 くらいだった Ⅲ 2 近 世 になり, 結 婚 のあり 方 に 変 化 がおき, 本 人 の 意 向 を 重 んじる 風 潮 が 高 まってきた すでに 一 部 言 及 したが,カナダの 歴 史 家 エド ワード ショーターはその 著 近 代 家 族 の 形 成 (1975)において, 近 代 家 族 の 成 立 をうながし た 三 つの 分 野 での 感 情 の 高 まりの 一 つとして, 男 女 の 関 係 をあげている 1) ロマンチック ラ ブが,かつて 男 女 を 結 びつけていた 実 利 的 な 考 えにとってかわり, 結 婚 の 相 手 を 選 ぶとき, 個 人 の 幸 福 や 自 己 陶 酔 が 優 先 されるようになった のである 恋 愛 感 情 にもとづいて 結 婚 相 手 を 選 択 する 権 利 が 個 人 にあり, 配 偶 者 が, 主 に 愛 情, 友 情, 敬 意, 共 通 の 価 値 観 や 関 心 によって 結 ばれるこ の 新 しい 形 の 結 婚 でも, 財 産, 家 族, 社 会 的 地 位 への 重 視 は 変 わらなかったが,もっとも 大 切 にされる 基 準 が 愛 情 となった 恋 愛 結 婚 の 誕 生 である 現 代 のロマンチック ラブ イデオロ ギー, 恋 愛 と 結 婚 と 性 が 三 位 一 体 になった 規 範 2) はここに 始 まるといえる それまでの 結 婚 が 家 のアイデンティティーを 継 承 するために 行 われたのに 対 し, 新 しい 形 の 結 婚 ではカップッルが 独 自 のアイデンティ ティーを 持 ち, 夫 と 妻 の 横 の 関 係 が 親 と 子 の 縦 の 関 係 に 取 って 代 わる 方 向 へ 動 き 始 め たのだ ヨーロッパではこの 傾 向 は, 大 陸 に 先 行 して まずイングランドに 現 れた 17 世 紀 に 入 るこ ろのイングランドのコンダクトブック( 道 徳 指 南 書 )では, 男 性 は 心 に 従 って 妻 を 選 び, 女 性 は 男 性 のイニシアチブに 応 じる 権 利 があ る,と 仮 定 されている(ヤーロム,2006) モ ンテスキューは 法 の 精 神 (1748)において, イングランドの 娘 たちが 自 らの 恋 慕 に 基 づき, 親 に 相 談 することなく 結 婚 している 一 方, 欧 州 大 陸 の 人 々は 法 律 によって 親 の 同 意 を 得 るこ とが 義 務 づけられているとのべている シェイクスピア 劇 には, ロミオとジュリ エット (1594)のように, 親 の 権 威 とそれに 反 発 する 若 い 恋 人 たちの 意 志 のぶつかり 合 いと いうテーマがある 彼 は 同 時 代 におきた 結 婚 に 対 する 考 え 方 の 変 化 に, 演 劇 の 光 をあてたとい える Ⅳ 子 ども 中 心 主 義 Ⅳ 1 前 近 代 の 家 族 は 子 ども 中 心 ではなかった フィリップ アリエスは 先 にあげた 子 供 の 誕 生 において, 中 世 には 子 どもがいなかっ たとのべて, 世 に 衝 撃 をあたえた 彼 は, 中 世 37

名 古 屋 学 院 大 学 論 集 の 細 密 画, 墓 碑 肖 像, 暦,17 世 紀 以 降 の 家 族 の 肖 像 画,それぞれの 時 代 に 書 かれた 日 記, 書 簡 を 調 査 して, 中 世 社 会 には 子 ども という 概 念 がなかったことを 明 らかにしたのである アリエスによれば, 中 世 では, 子 どもは 特 別 の 存 在 としてみられていなかった ちいさな 大 人 がまだひとりで 自 分 の 用 を 足 すことができ ない 時 期 があるだけだった 幼 児 はスウォドリングとよばれる 身 体 に 巻 き つける 帯 状 の 産 着 の 後, 大 人 と 同 じ 服 を 着 せら れた そして, 子 どもたち 同 士 で,また 時 には 大 人 といっしょに, 大 人 と 同 じ 遊 びをしていた 食 べる, 着 る, 排 泄 するがひとりでできるよう になると,6~7 歳 から, 大 人 の 中 に 入 れられ た 16 世 紀 以 前 には 子 ども 服, 玩 具, 子 ども 用 の 本, 子 どもだけの 遊 びはみられない Ⅳ 2 中 世 においては, 幼 児 死 亡 率 が 極 めて 高 かっ た また, 出 生 率 も 高 かった 多 産 と 高 い 幼 児 死 亡 率 の 併 存 による 人 口 安 定, 多 産 多 死 型 人 口 安 定 の 社 会 だった 17 世 紀 イギリスでは,1 組 の 夫 婦 が 生 涯 にも うける 子 どもの 数 は, 最 低 でも5~7 人, 最 高 で12~20 人 であった 1 人 の 母 親 から14 人 生 まれて,わずか2 人 だけが 成 人 したという 記 録 も 残 っている( 北 本,1993) バダンテールが 引 用 している,F ルブラ ンの 統 計 によれば,18 世 紀 フランスでは, 生 まれて1 年 以 内 の 死 亡 率 が28%,5 年 以 内 が 42%,10 年 以 内 が47% 1000 人 の 子 どものう ちわずか525 人 が10 歳 の 誕 生 日 を 迎 えた(バ ダンテール,1980,pp. 171 2) 死 が 日 常 的 だったので, 親 たちは,いつ 死 ぬ かもしれない 子 どもに 将 来 への 期 待 感 を 抱 いた り, 特 別 な 感 情 投 射 を 行 ったりすることは 少 な かった 新 しく 生 まれた 子 に, 死 んだ 子 の 名 前 をつけることも 広 く 行 われた 中 世 から 近 代 の 始 めにかけてのヨーロッパ 社 会 では, 希 薄 な 母 子 関 係 を 表 す 次 のような 事 象 がみられる 1. 嬰 児 殺 し 事 故 の 形 をとって 行 われ,17 世 紀 終 わりに 至 るまで 大 目 にみられていた 乳 児 たちが 両 親 の 寝 ているベッドの 中 で,ごくふつうに 起 こる 事 故 として 窒 息 して 死 んだ 教 会 は 子 どもたち を 両 親 のベッドに 入 れないよう, 厳 命 してい る 2. 捨 て 子 18 世 紀 には 大 量 の 捨 て 子 が 出 現 した 母 性 愛 を 唱 えたジャン=ジャック ルソーでさえ, 同 棲 していた 女 性 との 間 に 生 まれた6 人 の 子 ど もをすべて 乳 児 院 の 前 に 捨 てた 3. 乳 母 里 子 パリでは13 世 紀 から 乳 母 の 紹 介 所 があった 貴 族 が 利 用 していたが,18 世 紀 になると 子 ど もを 乳 母 にゆだねるのは 一 般 化 した 17 世 紀 ごろから, 里 子 の 習 慣 がブルジョアジーの 間 に 広 がり,18 世 紀 には 都 会 のすべての 階 級 に 浸 透 した 1780 年 のパリでは,1 年 間 に 生 まれた21000 人 の 子 どものうち 母 親 の 手 で 育 てられたのは 1000 人, 住 み 込 みの 乳 母 に 育 てられたのが 1000 人, 他 の19000 人 は 里 子 に 出 されたとい う パリ 市 警 視 総 監 の 報 告 に 残 っている(バダ ンテール,1980) 4. 子 どもの 交 換 子 どもたちは 父 母 が 健 在 であっても, 親 から 離 され, 時 には 何 の 血 縁 もない, 他 人 の 家 で 育 った イギリスでは, 子 どもを7 歳 ないし9 歳 まで 自 分 の 家 で 育 てた 後 は, 男 女 ともに 家 か ら 出 し,7~9 年 間 他 人 の 家 で 奉 公 させ, 召 使 38

近 代 家 族 の 成 立 をめぐる 覚 書 のような 仕 事 をさせた 裕 福 な 家 でも, 自 分 の 子 どもを 他 人 の 家 庭 に 送 り 込 み,その 見 返 りと して, 他 人 の 子 どもを 受 け 入 れた 生 家 におけ る 子 どもへの 溺 愛 を 防 ぐために, 里 子 や 徒 弟 に 出 すのが 賢 明 であると 考 えられていた( 北 本, 1993) Ⅳ 3 子 どもの 教 育 は, 学 校 が 普 及 し 始 めるまで, 中 世 から16 世 紀 ごろまでは,このように 見 習 奉 公 の 形 をとって 行 われた 子 どもたちを 直 接 に 大 人 の 環 境 の 中 で 生 活 させることによって, 労 働 技 術 や 礼 義 作 法, 必 要 な 知 識 を 伝 達 した 年 齢 による 区 分 は 重 要 でなく,ただ 未 熟 な 者 と 熟 達 した 者 があるだけだった 職 人 となるため の 徒 弟 奉 公 に 限 らず, 農 民 の 子 どもは 親 の 家 で,あるいは 他 家 の 召 使 として,また 貴 族 の 子 どもたちは, 他 家 の 行 儀 見 習 の 少 年 として 等 し くこうした 教 育 を 受 けた( 森 田,1986) Ⅳ 4 近 世 になり, 大 人 とは 違 う 固 有 の 価 値 を 持 つ ものとしての 子 どもが 発 見 された 子 供 の 誕 生 である 子 どもは 感 性 的 で 生 き 生 きとし た 生 命 力 にみちた 存 在,それ 自 体 で 価 値 あるも のとしてとらえなおされ, 子 どもに 対 する 愛 情 や 新 たな 教 育 関 心 が 生 まれた アリエスによれば, 子 どもに 対 する 改 まっ た 関 心 が 生 まれたのは17 世 紀 ごろから 長 い 変 化 の 過 程 を 経 て,18 世 紀 後 半 になって,こ の 時 代 に 勃 興 したブルジョワ 階 級 の 家 庭 におい て, 子 どもは 中 心 的 な 位 置 を 占 めるようにな る この 時 代 には 母 性 愛 を 訴 える 著 作 が 多 く 書 かれた ルソーの エミール (1762)がその 代 表 的 なものである 3) Ⅴ 近 代 的 性 別 分 業 V 1 前 近 代 社 会 には 家 事 と 家 業, 家 事 労 働 と 公 的 生 産 労 働 の 区 別 がなく, 労 働 はすべて 再 生 産 の ために 行 われた 子 どもの 世 話, 外 での 仕 事, 洗 濯 などの 仕 事 に 意 味 的 な 違 いはなかった 販 売 交 換 のための 生 産 も, 通 常 は 自 家 用 の 生 産 といっしょに 行 われていた したがって, 家 事 は 女 性, 公 的 生 産 労 働 は 男 性 という 形 での 性 別 分 業 はなく, 男 女 は 多 くの 仕 事 を 共 通 して 行 っていた たとえば,イギリスでは, 工 業 化 以 前 の 主 な 仕 事 である 農 業 と 織 物 において, 女 性 労 働 は 不 可 欠 だった 女 性 は18 世 紀 まで, 屋 根 ふき, 羊 毛 刈 りなどを 含 め,あらゆる 種 類 の 農 作 業 に 従 事 した 16 世 紀 半 ばごろまでは, 農 業 の 賃 労 働 者 としても 男 性 と 同 じ 支 払 いを 受 けてい た 男 女 が 肩 を 並 べて 働 く 伝 統 は,18 世 紀 に 織 物 業 が 工 業 化 した 後 もしばらく 残 っていた また,それ 以 外 にも 多 くの 物 の 製 造, 小 売 に 従 事 し, 男 性 と 対 等 な 立 場 でギルドへの 入 会 も 認 められていた V 2 ちなみに,イギリスでは, 女 性 は 結 婚 しても 経 済 的 には 自 立 していた 産 業 革 命 以 前 には, 女 性 が 結 婚 相 手 の 経 済 力 に 依 存 するという 考 え はなく, 夫 の 義 務 には 妻 と 子 どもの 扶 養 はな かった 女 性 は 子 どもと 自 分 が 食 べる 分 は 自 分 で 稼 ぐのがふつうだった 既 婚 女 性 が 自 分 で 生 計 を 立 てるよう 期 待 されることは, 上 流 階 級 で は17 世 紀 になくなった 労 働 者 階 級 の 間 では 18 19 世 紀 になってもまだ 婚 約 の 前 提 条 件 だっ た(オークレー,1974) 39

名 古 屋 学 院 大 学 論 集 V 3 住 居 の 構 造 も, 家 事 と 家 業 が 未 分 化 の 時 代 に は 単 純 だった Ⅱでも 記 したが, 産 業 革 命 前 の 家 族 の 居 住 空 間 は, 調 理 室, 食 堂, 居 間 など, それぞれ 別 の 機 能 を 持 った 部 屋 として 区 切 られ ていない 玄 関 でもある 広 間 が 家 庭 生 活 の 中 心 で, 料 理, 食 事, 団 らん,すべてそこで 行 って いた イギリスで 台 所 が 独 立 したのは,16 世 紀 末 にジェントリー 層 からである 寝 室 が 独 立 する のは18 世 紀 から 労 働 者 階 級 では, 産 業 革 命 の 前 から 革 命 期 を 経 てしばらくの 間,1 室 から 2 室 の 家 がふつうだった この 階 級 で 台 所 が 独 立 するのは,19 世 紀 末 から20 世 紀 初 めにかけ てである V 4 家 事 の 内 容 も 単 純 だった 料 理 についてみる と,たとえばイギリスの 家 庭 の 食 事 は,19 世 紀 ごろまで, 燻 製 などで 貯 蔵 した 肉,チーズ, パンをテーブルに 置 き, 各 自 がナイフを 手 にし てチーズや 肉 を 削 り 取 りながらパンといっしょ に 食 べるといったふうで, 毎 回 の 調 理 はほとん ど 行 われなかった 食 事 の 準 備 といえば, 大 部 分 は 保 存 食 の 製 造 であり, 季 節 によって 漬 け 物,ソーセージの 製 造 だった 現 在 のように1 日 3 回, 最 初 から 調 理 できるのは, 輸 送 や 貯 蔵 の 技 術, 市 場 の 発 達 があってはじめて 可 能 なこ とである また, 洗 濯 なども 現 在 のように 頻 繁 には 行 われておらず,フランスの 農 村 では20 世 紀 初 めまで, 年 に2 回 の 行 事 であった(ヴェルディ エ,1985) V 5 家 事 労 働 と 公 的 生 産 労 働 が 分 離 したのは, 産 業 革 命 が 生 んだ 新 しい 体 制 においてであった 労 働 はそれ 自 体 が 目 的 ではなく, 金 銭 的 報 酬 を 目 的 として, 家 から 離 れたところで 行 われるよ うになった 労 働 が 直 接 家 族 への 愛 から 出 発 す るのではなく, 効 率 的 に 報 酬 をえる 非 個 人 的 な ものとなったのである 近 代 産 業 にたずさわる 企 業 の 合 理 性 が, 労 働 を 家 庭 の 問 題, 人 間 関 係, 価 値 観 から 分 離 させた 専 業 主 婦 が 誕 生 したのは,この 体 制 において である 西 ヨーロッパでは18 世 紀 ごろ, 富 裕 化 した 産 業 ブルジョアジーが, 生 活 の 場 と 職 業 の 場 を 分 離 し, 郊 外 に 居 住 のための 家 を 構 える ようになった イギリスでは19 世 紀 になると, 工 場, 商 店, 事 務 所 などの 仕 事 場 は 都 市 の 中 心 部 に 置 かれ, 郊 外 の 田 園 都 市 に 生 活 のための 家 が 作 られた そこは 妻 と 子 どもの 領 域 で, 妻 は 子 どもの 世 話 と 洗 濯, 掃 除 などの 家 の 用 事 のみ を 行 って, 夫 の 帰 宅 を 待 つ 存 在 となった そし て, 専 業 主 婦 が 家 で 行 う 仕 事 として, 家 事 労 働 というカテゴリーが 生 まれた 労 働 者 階 級 では,19 世 紀 のころまでは, 生 活 していくために, 女 性 も 子 どもも 外 で 働 かざ るをえず, 家 事 だけをしている 暇 はなかった だからこの 階 級 には 専 業 主 婦 はいなかった 専 業 主 婦, 家 事 のみをする 女 性 は 中 産 階 級 である ことのしるしであり, 妻 のあり 方 の 理 想 だった 専 業 主 婦 があらゆる 階 層 にみられるようになる のはヨーロッパでは20 世 紀 になり, 戦 間 期 の ことである 終 わりに 以 上 みてきたように, 現 代 の 家 族 概 念 を 構 成 している 主 な 要 素 は, 近 代 以 前 にはまったく 異 なる 様 相 を 呈 していた したがって,われわれ が 普 遍 的 なものと 無 意 識 に 想 定 している 家 族 概 40

近 代 家 族 の 成 立 をめぐる 覚 書 念 は, 実 は 近 代 に 始 まる 比 較 的 新 しいものであ ることが 確 認 できる 家 族 のありかたは, 時 代 によって 変 化 する が, 国, 地 方, 社 会 階 層 によってもかなり 異 なっており, 変 化 の 仕 方 にも 時 間 差 がみられ る ここで 記 述 できたのは 西 欧 社 会 の 中 層 を 軸 にした, 大 きな 流 れのみである アジア, 日 本 の 家 族 には 言 及 していない 近 代 家 族 論 が 盛 んになった1980 年 代 には, 近 代 家 族 の 安 定 期 は 世 界 的 に 終 わろうとしてお り, 最 初 から 終 焉 ということばが 付 きまとって いた Ⅳであつかった 専 業 主 婦 などはたとえば 現 代 フランスではむしろ 少 数 派 になってきてい る 心 性 史 のアプローチから 家 族 史 に 大 変 革 をも たらした,フィリップ アリエス,エドワー ド ショーターの 著 作 に,1990 年 代 の 初 頭 に 接 して 衝 撃 を 受 け, 近 代 家 族 論 について 整 理 し てみたいと 考 えていた 今 回 のまとめ 方 につい ては, 落 合 恵 美 子 の 仕 事 から 大 きく 示 唆 を 受 け ている われわれの 感 性 がよって 立 つ 不 動 の 大 地 と 感 じられていたものが, 実 は 歴 史 性 という 名 の 浮 き 雲 であったというアイデアは,われわれの 想 像 力 を 限 りなく 刺 激 し 続 けるように 思 われる 注 1 )ショーターがあげている 感 情 の 高 まりのおきた 三 つの 分 野 とは,1. 男 女 関 係 2. 母 子 関 係 3. 家 族 と 周 囲 の 共 同 体 との 境 界 線 である 2 )ちなみに,このイデオロギーは 次 のような 規 範 を 含 むと 考 えられる 結 婚 は 恋 愛 結 婚 でなければならない / 恋 愛 をした ら 結 婚 しなければならない/ 性 は 結 婚 によって のみ 許 される/ 恋 愛 がなければ 性 はありえない / 結 婚 したら 夫 婦 は 互 いに 愛 し 続 けなければなら ない/ 結 婚 したら 性 がなければならない/ 恋 愛 が 許 されるのは 結 婚 前 の 男 女 だけである 3 )この 章 は 主 としてアリエス,バダンテールの 論 考 に 拠 った アリエスに 対 しては,リンダ A ポロク, 森 洋 子 らからの 批 判 があり,ここでは 比 較 検 討 を 行 っていない 参 考 文 献 アリエス,Ph. 1980 子 供 の 誕 生 アンシャン レジーム 期 の 子 供 と 家 族 生 活 杉 山 光 信 杉 山 恵 美 子 訳.みすず 書 房 上 野 千 鶴 子.1994 近 代 家 族 の 成 立 と 終 焉 岩 波 書 店 ヴェルディエ,Y. 1985 女 のフィジオロジー 大 野 朗 子 訳. 新 評 論 オークレー,A. 1986 主 婦 の 誕 生 岡 島 茅 花 訳. 三 省 堂 落 合 恵 美 子.1989 近 代 家 族 とフェミニズム 勁 草 書 房 落 合 恵 美 子.1994 21 世 紀 家 族 へ 有 斐 閣 落 合 恵 美 子.1996 近 代 家 族 をめぐる 言 説 岩 波 講 座 現 代 社 会 学 19 巻 岩 波 書 店 北 本 正 章.1993 子 ども 観 の 社 会 史 近 代 イギリス の 共 同 体 家 族 子 ども 新 曜 社 シェイクスピア,W. 1594=1983 ロミオとジュリ エット シェイクスピア 全 集 10 小 田 島 雄 志 訳. 白 水 社 ショーター,E. 1987 近 代 家 族 の 形 成 田 中 俊 宏 岩 崎 誠 一 見 崎 恵 子 作 道 潤 訳. 昭 和 堂 バダンテール,E. 1980 母 性 という 神 話 鈴 木 晶 訳. 筑 摩 書 房 ポロク,L. A. 1988 忘 れられた 子 どもたち 1500 ~1900 年 の 親 子 関 係 中 地 克 子 訳. 勁 草 書 房 森 田 伸 子.1986 子 どもの 時 代 新 曜 社 森 洋 子.2002 子 供 とカップルの 美 術 史 日 本 放 送 出 版 協 会 モンテスキュー,C. L. de. 1721=1989 法 の 精 神 野 田 良 之 他 訳 岩 波 書 店 ヤーロム,M.2006 妻 の 歴 史 林 ゆう 子 訳. 41

名 古 屋 学 院 大 学 論 集 慶 應 義 塾 大 学 出 版 会 山 田 昌 弘.1994 近 代 家 族 のゆくえ 新 曜 社 山 田 昌 弘.2005 迷 走 する 家 族 戦 後 家 族 モデルの 形 成 と 解 体 有 斐 閣 ARIES, Phillipe. 1960=1973. L Enfant et la vie familiale sous l Ancien Régime. Editions du Seuil. Paris BADINTER, Elisabeth. 1980. L Amour en plus. FLAMMARION. Paris. Oakley, Ann. 1974. Housewife. Allen Lane. London. Pollock, Linda A. 1983. Forgotten children Parentchild relations from 1500 to 1900. Cam-bridge University Press. Cambridge Shorter,Edward. 1975=1977. The Making of the Modern Familly. Paperback Edition. Basic Books. New York. Yalom, Marilyn. 2001. A History of the Wife. Harper Collins Publichers. New York. 42